(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046065
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】リレー装置及び車両の電源装置
(51)【国際特許分類】
H01H 50/12 20060101AFI20240327BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20240327BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H01H50/12 G
B60L1/00 L
B60R16/02 645D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151225
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】平田 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 朋也
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BC25
5H125BC28
5H125EE51
5H125EE64
(57)【要約】
【課題】接点に凍結が生じた場合でも動作可能なリレー装置、並びに、寒冷時において動作不良を低減できる車両の電源装置を提供する。
【解決手段】リレー装置(33)は、第1接点(A331)及び第2接点(A332)と、第1接点(A331)と第2接点(A332)とを近接又は離間させる駆動機構(334)と、第1接点(A331)に電気的に接続された第1導体(331)と、第2接点(A332)に電気的に接続された第2導体(332)と、第1導体(331)と第2導体(332)との間に接続された無接点リレー(336)及び電熱体(337)とを備える。そして、電熱体(337)が、第1接点(A331)及び第2接点(A332)の少なくとも一方を加熱可能に配置されている
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接点及び第2接点と、
前記第1接点と前記第2接点とを近接又は離間させる駆動機構と、
前記第1接点に電気的に接続された第1導体と、
前記第2接点に電気的に接続された第2導体と、
前記第1導体と前記第2導体との間に接続された無接点リレー及び電熱体と、
を備え、
前記電熱体が、前記第1接点及び前記第2接点の少なくとも一方を加熱可能に配置されていることを特徴とするリレー装置。
【請求項2】
前記第1導体に電気的に接続された第1端子と、
前記第2導体に電気的に接続された第2端子と、
前記駆動機構に通電するための第3端子及び第4端子と、
前記無接点リレーに制御電圧を送るための第5端子と、
前記第1端子から前記第5端子を外側に露出させ、前記第1導体及び前記第2導体、前記駆動機構、前記無接点リレー、並びに、前記電熱体を内部に収容する筐体と、
を備えることを特徴とする請求項1記載のリレー装置。
【請求項3】
内燃機関であるエンジンと、前記エンジンの補機に電力を供給する第1バッテリと、前記エンジンの再始動モータに電力を供給する第2バッテリとを備えた車両に搭載される車両の電源装置であって、
前記第1バッテリと前記第2バッテリとの間で電力を伝送可能な電力線と、
前記電力線の電路を開閉する請求項1記載のリレー装置と、
を備えることを特徴とする車両の電源装置。
【請求項4】
前記車両は、走行用の電力を蓄積する第3バッテリと、前記第3バッテリの電圧を前記第1バッテリの電圧へ変換するDC/DCコンバータとを更に備え、
前記車両の電源装置は、
前記リレー装置を制御するコントローラを更に備え、
前記コントローラは、前記リレー装置の切替不良が生じた場合に、前記DC/DCコンバータを動作させ、かつ、前記無接点リレーをオン制御することを特徴とする請求項3記載の車両の電源装置。
【請求項5】
前記リレー装置を制御するコントローラを更に備え、
前記コントローラは、前記リレー装置の切替不良を示す第1条件と、前記無接点リレーのオン制御済であることを示す第2条件とに基づいて、あるいは、前記第1条件と、環境温度に関する第3条件とに基づいて、前記リレー装置の故障判定を行うことを特徴とする請求項3記載の車両の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレー装置及び車両の電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リレー接点の氷結を抑制するために、リレーケースの貫通孔の周辺の空気を加熱することで、リレーケース内の相対湿度を低下させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高温から低温まで急激に温度が変化するような環境においてはリレー装置の接点に結露及び凍結が生じる恐れがある。
【0005】
本発明は、接点に凍結が生じた場合でも動作可能なリレー装置、並びに、寒冷時において動作不良を低減できる車両の電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のリレー装置は、
第1接点及び第2接点と、
前記第1接点と前記第2接点とを近接又は離間させる駆動機構と、
前記第1接点に電気的に接続された第1導体と、
前記第2接点に電気的に接続された第2導体と、
前記第1導体と前記第2導体との間に接続された無接点リレー及び電熱体と、
を備え、
前記電熱体が、前記第1接点及び前記第2接点の少なくとも一方を加熱可能に配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様の車両の電源装置は、
内燃機関であるエンジンと、前記エンジンの補機に供給される電力を蓄積する第1バッテリと、前記エンジンの再始動モータに供給される電力を蓄積する第2バッテリとを備えた車両に搭載される車両の電源装置であって、
前記第1バッテリと前記第2バッテリとの間で電力を伝送可能な電力線と、
前記電力線の電路を開閉する請求項1記載のリレー装置と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のリレー装置によれば、第1接点又は第2接点に凍結が生じた場合でも、電熱体による加熱によって凍結を解除し、開閉状態を切り替えることができる。本発明の車両の電源装置によれば、リレー装置の第1接点又は第2接点に凍結が生じるような寒冷地においても、上記の凍結を解除して電源装置の動作不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両及び電源装置を示すブロック図である。
【
図3】コントローラが実行する電源装置の制御処理の示すフローチャートの一部である。
【
図4】コントローラが実行する電源装置の制御処理の示すフローチャートの残りの一部である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両及び電源装置を示すブロック図である。
【0011】
本発明の実施形態に係る車両1は、
図1に示すように、駆動輪2と、駆動輪2に動力を送る走行用モータ3と、走行用モータ3を駆動するインバータ4と、走行用の電力を蓄積する走行用バッテリ(第3バッテリに相当)5と、内燃機関であるエンジン11と、エンジン11を駆動するための補機12と、エンジン11を始動するスタータモータ13と、補機12を駆動するための電力を蓄積する補機バッテリ(第1バッテリに相当)17と、エンジン11の動力で補機12を駆動するための電力を生成するジェネレータ15と、アイドリングストップ後のエンジン11の再始動用に発電と動力の出力とを行うモータ機能付き発電機(具体的にはISG:Integrated Starter Generator、再始動モータに相当)21と、モータ機能付き発電機21の電力を蓄積する再始動バッテリ(第2バッテリに相当)23と、を備える。
【0012】
補機バッテリ17と再始動バッテリ23とは、第1電圧系(例えば12V系)の電圧で電力を蓄積及び供給する。走行用バッテリ5は、第1電圧系よりも高い第2電圧系(例えば100V系又は200V系等)の電圧で電力を蓄積及び供給する。
【0013】
車両1は、さらに、走行用バッテリ5の電圧を第1電圧系の電圧に変換し、補機12の電力線31に電力を供給可能なDC/DCコンバータ19を備える。
【0014】
さらに、車両1は、運転者が操作を行う運転操作部26と、車両1の走行用の制御を行う車両コントローラ28とを備える。
【0015】
運転操作部26は、操舵部26a、アクセル操作部26b及びブレーキ操作部26cを含み、アクセル操作部26b及びブレーキ操作部26cの操作信号が車両コントローラ28に送られる。運転操作部26は、自動運転システムが操作する構成が適用されてもよい。
【0016】
車両コントローラ28は、1つのECU(Electronic Control Unit)、あるいは、互いに通信を行って協働する複数のECUである。車両コントローラ28、運転操作部26からの操作信号と、他のECUから送られた通信情報と、図示略のセンサによって検出される車両状態等の各種情報とに基づいて、車両1の走行制御を行う。具体的には、車両コントローラ28は、補機12、スタータモータ13、インバータ4、DC/DCコンバータ19及びモータ機能付き発電機21を制御する。
【0017】
<車両の電源装置>
本発明の実施形態に係る電源装置30は、補機バッテリ17及びDC/DCコンバータ19から、補機12、スタータモータ13、モータ機能付き発電機21及び車両コントローラ28へ電力を伝送する電力線31と、補機バッテリ17及びDC/DCコンバータ19と再始動バッテリ23とを接続する電力線32と、電力線32の電路を開閉するリレー装置33と、リレー装置33を制御するコントローラ35と、エンジンルームの温度或いは外気温を計測する温度センサ38とを備える。モータ機能付き発電機21は、再始動バッテリ23に接続されていてもよい。温度センサ38は、コントローラ35に温度を表わす検出信号を送る。
【0018】
図2は、リレー装置を示す構成図である。リレー装置33は、互いに離間した状態と接触した状態とに切り替え可能な第1接点A331及び第2接点A332と、開閉対象の電路の一方と他方とが接続される第1端子T331及び第2端子T332と、第1接点A331と第1端子T331とを電気的に接続する第1導体331と、第2接点A332と第2端子T332とを電気的に接続する第2導体332とを備える。第1導体331の一部が第1接点A331を支持し、第2導体332の一部が第2接点A332を支持する。また、第2導体332の一部が変位可能な構造を有し、当該変位によって第1接点A331及び第2接点A332が離間した状態と接触した状態とに切り替わる。
【0019】
リレー装置33は、さらに、第1接点A331と第2接点A332とを近接又は離間させる駆動機構334と、第1導体331と第2導体332との間に接続された無接点リレー336及び電熱体337と、筐体339とを備える。
【0020】
筐体339は、第1接点A331、第2接点A332、第1導体331、第2導体332、無接点リレー336及び電熱体337を内部に収容する。筐体339は、樹脂から構成され、内部を密閉する構成であってもよい。筐体339の外側には、第1端子T331、第2端子T332に加えて、駆動機構334に電流を流すための第3端子T334a及び第4端子T334bと、無接点リレー336に制御電圧を送るための第5端子T336とが露出される。
【0021】
駆動機構334には、コイル334aと、可動鉄心334bと、固定鉄心334cと、バネ334dとを含む構成が適用されてもよい。当該構成の場合、コイル334aに通電することにより固定鉄心334cと可動鉄心334bとの間に磁力を発生させ、可動鉄心334bを変位させる。そして、可動鉄心334bの変位により、第1接点A331と第2接点A332とが接触した状態(閉状態)と離間した状態(開状態)とに切り替わる。
【0022】
リレー装置33は、開状態に切り替えるときと、閉状態に切り替えるときの両方において通電が必要なラッチリレーであってもよい。ラッチリレーである場合、駆動機構334は、開状態の維持と閉状態の維持とを行うラッチ機構と、開状態から閉状態へ切り替えるための磁力と閉状態から開状態へ切り替えるための磁力を発生させる2系統のコイルとを備える。2系統のコイルの代わりに、電流の向きを変えて流すことが可能な1つのコイルが採用されてもよい。
【0023】
無接点リレー336は、半導体リレー、半導体スイッチ等であり、氷結が生じえる接点を有さない。無接点リレー336は、制御電圧を受ける制御端子と、電流を流す2つの端子とを備える。
【0024】
電熱体337は、抵抗線など、電流により熱を発する素子である。電熱体337は、筐体339内の第1接点A331及び第2接点A332の周辺に配置される。電熱体337は、第1導体331及び第2導体332の少なくとも一方に接触していてもよく、当該接触により第1導体331及び第2導体332を介して熱を第1接点A331及び第2接点A332に高効率に導くことができる。電熱体337は、その他、赤外線又は可視光の放射によって第1接点A331及び第2接点A332の少なくとも一方を加熱する構成であってもよい。
【0025】
無接点リレー336と電熱体337とは、第1導体331と第2導体332との間に直列に接続される。当該構成により、無接点リレー336がオンされ、かつ、第1導体331と第2導体332との間に電圧差があるときに、電熱体337に電流が流れる。このような構成によれば、電熱体337を駆動するために駆動回路を用意することなく、無接点リレー336を切り替える制御電圧を送るのみで、電熱体337を駆動することができる。
【0026】
コントローラ35は、ECUであり、内部に不揮発性の記憶部35aを備え、記憶部35aに記憶された制御プログラムを実行することで、リレー装置33を制御する。コントローラ35は、通信線41を介して、車両コントローラ28又は他のECUと通信を行い、これらと協働してリレー装置33を制御する構成であってもよい。車両コントローラ28又は他のECUは、補機バッテリ17の状態(蓄電量等)と再始動バッテリ23の状態(蓄電量等)を監視し、当該状態等に基づいてリレー装置33の開閉状態を切り替える要求をコントローラ35に送り、コントローラ35は当該要求に基づいてリレー装置33を制御してもよい。
【0027】
なお、補機バッテリ17と再始動バッテリ23の状態(蓄電量等)の監視は、コントローラ35が行ってもよい。また、コントローラ35と車両コントローラ28とが統合され、車両コントローラ28の一部の機能としてコントローラ35の機能があってもよい。
【0028】
車両1は、各部の診断情報を記録する診断情報記憶部29を更に備え、コントローラ35は、診断情報記憶部29にリレー装置33に関する診断情報を書き込むことができる。
【0029】
電力線32は、再始動バッテリ23の蓄電量が枯渇しそうな場合に、補機バッテリ17或いはDC/DCコンバータ19から再始動バッテリ23へ電力を伝送可能な構成である。逆に、電力線32は、補機バッテリ17の蓄電量が枯渇しそうな場合に、再始動バッテリ23から補機バッテリ17へ電力を伝送するために使用されてもよい。電力線32を介した電力の伝送により、再始動バッテリ23又は補機バッテリ17の蓄電量が枯渇することを抑制できる。そして、蓄電量の枯渇により車両1の動作に支障が生じてしまうことを低減し、また、蓄電量の枯渇により再始動バッテリ23又は補機バッテリ17の劣化が進んでしまうことを低減できる。
【0030】
リレー装置33は、電力線32の電路を開閉することで、電力線32を介した一方から他方への電力伝送の実施と停止とを切り替える。また、リレー装置33が電力線32の電路を切断することで、例えばモータ機能付き発電機21が大きな電流を流してエンジン11を再始動する際に、大電流の出力に起因する電圧の降下が、補機12の電力線31に波及してしまうことを抑制できる。
【0031】
補機バッテリ17、再始動バッテリ23、電力線32及びリレー装置33は、エンジン11の近傍(例えばボンネット下のエンジンルーム内)に配置される。補機バッテリ17及び再始動バッテリ23が、上記のように配置されることで、短い電路でスタータモータ13及びモータ機能付き発電機21に電流を出力することができ、電力線31による効率の低下を抑制できる。さらに、電力線32及びリレー装置33が上記のように配置されることで、電力線32の経路を単純化できる。
【0032】
一方、寒冷地においてエンジンルームは、エンジン11の駆動によって高熱になったり、エンジン11の一時的な停止により低温になったり、エンジン11の比較的に長い停止により氷点下になったりと、過酷な温度環境となる。したがって、このような温度環境に置かれたリレー装置33は、筐体339によって内部空間が密閉されていても、経年に伴って水分が内部に浸入することがある。そして、高温時に水分が筐体339内で気化する一方、電力線32又は電力線32に接続された導体が低温になることで、第1導体331及び第2導体332から電力線32へ熱が移動することで、筐体339内の空気の温度よりも第1接点A331及び第2接点A332の温度が先に低下する。すると、第1接点A331及び第2接点A332に結露が生じ、さらに温度が氷点下まで低下することで結露が氷結する恐れがある。
【0033】
コントローラ35は、リレー装置33を次のように制御し、また、リレー装置33の切替状態を次のように判定することができる。
【0034】
まず、リレー装置33がラッチリレーである場合を説明する。コントローラ35は、リレー装置33を開状態から閉状態へ切り替える場合、コイル334aに閉状態へ切り替える電流を流す。これにより、駆動機構334が動作して第1接点A331と第2接点A332とが接触する。また、閉状態から開状態へ切り替える場合、コントローラ35は、コイル334aに開状態へ切り替える電流を流す。これにより、駆動機構334が動作して、第1接点A331と第2接点A332とが離間する。
【0035】
次に、リレー装置33がラッチレスリレーである場合を説明する。コントローラ35は、リレー装置33を開状態から閉状態へ切り替える場合、コイル334aに閉状態へ切り替える電流を流し、当該電流の出力を維持する。これにより、駆動機構334が動作して第1接点A331と第2接点A332とが接触し、この状態が維持される。また、閉状態から開状態へ切り替える場合、コントローラ35は、コイル334aの通電を停止する。これにより、駆動機構334がバネ334dの作用で動作前の状態に戻り、第1接点A331と第2接点A332とが離間する。
【0036】
コントローラ35は、電力線32の一端側と他端側との電圧差を検出するセンサの出力、あるいは、電力線32の電流センサの出力を受け、これらの出力に基づいてリレー装置33の開閉状態を判定できる。なお、リレー装置33の開閉状態の判定方法は、上記の例に限られず、その他の種々の方法が採用されてもよい。
【0037】
前述したように、第1接点A331及び第2接点A332に氷結が生じると、リレー装置33の切替不良が生じる恐れがある。切替不良とは、駆動機構334に通電した場合でも(リレー装置33がノンラッチリレーである場合には通電を停止した場合を含む)、リレー装置33の開閉状態が切り替わらないことを意味する。コントローラ35は、リレー装置33の開閉状態を切り替える制御を行った後、実際の開閉状態を判定することで切り替えが成功したか切替不良であるかを認識することができる。
【0038】
コントローラ35は、第1接点A331と第2接点A332とに(又はその一方に)氷結が生じている場合に、氷結した部分を溶かす制御を実行できる。当該制御は、コントローラ35は、無接点リレー336をオン制御することで、電熱体337が通電により発熱し、第1接点A331及び第2接点A332(又はその一方)を加熱することで実現される。
【0039】
<リレー装置33の制御処理>
続いて、コントローラ35によるリレー装置33の制御処理について一例を説明する。
図3及び
図4は、リレー装置の制御処理を示すフローチャートである。
【0040】
コントローラ35は、電力線32の電路を開状態から閉状態へ切り替える要求が生じた場合に、
図3の制御処理を開始する。制御処理が開始すると、まず、コントローラ35は、リレー装置33を閉状態に切り替えるためにコイル334aに通電する(ステップS1)。そして、コントローラ35は、閉状態に切り替わったか判定し(ステップS2)、YESであれば、当該制御処理を終了する。
【0041】
一方、切替不良が生じてステップS2の判定結果がNOであれば、コントローラ35は、所定回数(例えば3回)繰り返したか判定する(ステップS3)。そして、当該判定結果がNOであればステップS1に処理を戻す。ステップS2のNOの判定結果、又は、ステップS3のYESの判定結果が、本発明に係る第1条件(リレー装置33の開閉状態の切替不良を示す第1条件)の一例に相当する。
【0042】
一方、ステップS3の判定結果がYESであれば、コントローラ35は、温度センサ38が検出した環境温度が閾値温度Tth以上であるか判定する(ステップS4)。閾値温度Tthはリレー装置33内に氷結が生じえない環境温度(例えばその下限)に設定される。ステップS4の判定結果が、本発明に係る第3条件(環境温度に関する第3条件)の一例に相当する。
【0043】
ステップS4の判定結果がYESであれば、コントローラ35は、リレー装置33の故障と判断し、診断情報記憶部29にリレー装置33の故障情報を書き込む(ステップS5)。そして、コントローラ35は、当該制御処理を終了する。
【0044】
一方、ステップS4の判定結果がNOであれば、まず、コントローラ35は、車両コントローラ28に第1時間長のDC/DCコンバータ19の動作を要求する(ステップS6)。上記の第1時間長は、続くステップS7の処理が繰り返し実行される期間長に設定される。
【0045】
続いて、コントローラ35は、所定時間(氷結を溶かすことのできる時間)、無接点リレー336をオン状態に切り替える(ステップS7)。ステップS7の処理により、電熱体337が第1接点A331及び第2接点A332を加熱し、氷結している場合に、氷結の部分を溶かすことができる。さらに、コントローラ35は、電熱体337が使用されたことを、診断情報記憶部29に書き込む(ステップS8)。ステップS7を実行済みであることが本発明に係る第2条件(無接点リレー336のオン制御済であることを示す第2条件)の一例に相当する。
【0046】
その後、コントローラ35は、リレー装置33を閉状態に切り替えるためにコイル334aを通電し(ステップS9)、リレー装置33が閉状態に切り替わったか判定する(ステップS10)。そして、YESであれば(閉状態に切り替わったと判定されたら)、当該制御処理を終了する。一方、NOであれば、コントローラ35は、所定回数(例えば3回)繰り返したか判定し(ステップS11)、NOであればステップS7に処理を戻す。
【0047】
一方、ステップS11の判定結果がYESであれば、コントローラ35は、リレー装置33の故障と判断し、診断情報記憶部29にリレー装置33の故障情報を書き込む(ステップS12)。そして、コントローラ35は、当該制御処理を終了する。
【0048】
上記のようなリレー装置33の制御処理により、第1接点A331及び第2接点A332に氷結が生じたような場合でも、氷結した部分を溶かしてリレー装置33を閉状態に切り替えることができる。したがって、再始動バッテリ23又は補機バッテリ17の蓄電量が枯渇しそうなときに、電力線32の電路を閉状態にして、上記の枯渇を抑制することができる。
【0049】
さらに、上記のようなリレー装置33の制御処理により、リレー装置33に氷結による切替不良が生じた場合に、氷結を解消することで正常になるのに切替不良のみでリレー装置33の故障と判定されてしまうということが抑制される。したがって、リレー装置33のメンテナンス及び交換等の処理を適正に行うことができる。
【0050】
上述したリレー装置33の制御処理のプログラムは、コントローラ35の記憶部35aなど、非一過性の記憶媒体(non transitory computer readable medium)に記憶されている。コントローラ35は、可搬型の非一過性の記録媒体に記憶されたプログラムを読み込み、当該プログラムを実行するように構成されてもよい。上記の可搬型の非一過性の記憶媒体は、上述したリレー装置33の制御処理のプログラムを記憶していてもよい。
【0051】
以上のように、本実施形態のリレー装置33によれば、無接点リレー336の制御により駆動可能な電熱体337が、第1接点A331及び第2接点A332の少なくとも一方を加熱可能に配置されている。したがって、第1接点A331、第2接点A332に氷結が生じた場合に、電熱体337を駆動することで、上記の氷結の部分を溶かしてリレー装置33を正常に動作させることができる。さらに、本実施形態のリレー装置33によれば、無接点リレー336と電熱体337とが、第1導体331と第2導体332との間に接続されている。したがって、電熱体337の駆動電流を出力可能な駆動回路を、別途、用意する必要がない。さらに、電熱体337の駆動電流を遠い箇所からリレー装置33へ供給する配線が不要となるなど、リレー装置33をシステムに組み込むための配線構造を単純化できる。
【0052】
さらに、本実施形態のリレー装置33によれば、無接点リレー336及び電熱体337が筐体339の中に配置されている。したがって、電熱体337の熱を効率的に第1接点A331又は第2接点A332に送ることができる。さらに、無接点リレー336及び電熱体337が筐体339の外に配置される場合と比較して、無接点リレー336及び電熱体337を含めてリレー装置33が一体的な構成となる。したがって、リレー装置33の取扱いが容易になる。
【0053】
さらに、本実施形態のリレー装置33によれば、筐体339の外側に設けられる接点の構成は、開閉する電路が接続される第1端子T331及び第2端子T332、並びに、駆動機構334に通電するための第3端子T334a及び第4端子T334bに、無接点リレー336に制御電圧を送るための第5端子T336が主に追加された構成となる。したがって、リレー装置33をシステムに組み込むための配線の接続構造を単純化できる。
【0054】
さらに、本実施形態の車両1の電源装置30は、補機バッテリ17と再始動バッテリ23との間で電力を伝送可能な電力線32を備える。そして、リレー装置33は、電力線32の電路を開閉可能なように設けられる。当該構成において、補機バッテリ17、再始動バッテリ23及び電力線32は、エンジン11の近くに配置されることから、リレー装置33もエンジン11の近くに配置できると都合がよい。一方、エンジン11の近傍は過酷な温度環境であり、寒冷地においてリレー装置33が当該環境にあると、筐体339内の空気に湿気が含まれる状態で、第1接点A331及び第2接点A332の温度が筐体339内の気温よりも先に大きく低下することがある。なぜならば、第1接点A331及び第2接点A332は、電力伝送用のハーネスに導体(第1端子T331、第2端子T332、第1導体331及び第2導体332)を介して接続されている。さらに、上記ハーネスは熱伝導率が高く熱容量が大きい。よって、寒冷地の外気によってハーネスが冷やされた場合に、筐体339内の空気よりも、第1接点A331及び第2接点A332からハーネスへ速やかに熱が移動するからである。そして、当該状況においては、第1接点A331及び第2接点A332に結露及び氷結が生じる恐れがある。しかしながら、本実施形態のリレー装置33は、第1接点A331及び第2接点A332に結露及び氷結が生じても、開閉状態の切替えが可能である。したがって、リレー装置33の配置自由度が高くなり、エンジンルームの過酷な温度環境内でもリレー装置33を配置することができる。
【0055】
さらに、本実施形態の車両1の電源装置30によれば、コントローラ35は、リレー装置33に切替不良が生じた場合に、まず、DC/DCコンバータ19を動作させる(動作の要求を車両コントローラ28へ出力する)。次に、コントローラ35は、無接点リレー336をオン制御する。なお、DC/DCコンバータ19の動作と無接点リレー336のオン制御の順番は逆であってもよい。このように、DC/DCコンバータ19を動作させることにより、電力線32の一方(DC/DCコンバータ19が接続されている方)の電圧を上げることができ、当該電圧によりリレー装置33の電熱体337に電流を流すことができる。
【0056】
リレー装置33を閉状態に切り替える状況は、再始動バッテリ23の蓄電量が低下し、その電圧が低下していることが多い。すなわち、電力線32の一方(再始動バッテリ23が接続されている方)の電圧は、第1電圧系の低い電圧になる。よって、DC/DCコンバータ19を動作させて、電力線32の一方の電圧が第1電圧系の高い電圧にすることで、リレー装置33の第1導体331と第2導体332との間の電圧差を予め想定された値にすることができる。したがって、上記のようにDC/DCコンバータ19を動作させることで、電熱体337による発熱量のばらつきを抑制できるという効果も奏される。
【0057】
さらに、本実施形態の車両1の電源装置30によれば、コントローラ35は、リレー装置33の開閉状態の切替不良を示す第1条件と、無接点リレー336のオン制御済みか否かを示す第2条件とに基づいて、リレー装置33の故障判定を行う。また、コントローラ35は、リレー装置33の開閉状態の切替不良を示す第1条件と、環境温度に関する第3条件とに基づいて、リレー装置33の故障判定を行う。したがって、氷結によって開閉状態の切替不良が生じて、氷結を解消することでリレー装置33が正常に動作した場合に、リレー装置33が故障と判定されてしまうことを抑制できる。したがって、故障判定に基づき、リレー装置33のメンテナンス及び交換等の処理を適正に行うことができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、筐体339内に無接点リレー336と電熱体337とが収容される例を示したが、無接点リレー336及び電熱体337の少なくとも一方が筐体339の外に配置されてもよい。例えば電熱体337が第1端子T331又は第2端子T332を加熱するように配置されてもよい。当該配置により、電熱体337は第1導体331又は第2導体332を介して第1接点A331及び第2接点A332を加熱することができる。
【0059】
また、上記実施形態では、リレー装置33が電力線32の電路を開閉するように接続された例を示した。しかし、リレー装置33は、補機バッテリ17と電気機器(補機12又は他の機器)との間に接続されるリレーとして適用されてよいし、走行用バッテリ5の電力線の電路を開閉するリレーとして適用されてもよい。また、上記実施形態では、DC/DCコンバータ19の出力を利用して電熱体337を通電する例を示したが、DC/DCコンバータ19の出力の利用は省略されてもよい。また、リレー装置33が搭載される車両は、上記実施形態の車両1のようにハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)に限られず、エンジン自動車であってもよいし、電気自動車(EV(Electric Vehicle)であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、リレー装置33を車両の電源装置30に搭載する例を示したが、本発明に係るリレー装置は、例えば産業用機械など、様々な装置に搭載されてもよい。当該装置内に過酷な温度環境が生じる箇所があれば、当該箇所に配置されるリレーとして本発明に係るリレー装置を適用することで、本実施形態と同様の効果を奏することができる。その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 車両
2 駆動輪
3 走行用モータ
4 インバータ
5 走行用バッテリ
11 エンジン
12 補機
13 スタータモータ
15 ジェネレータ
17 補機バッテリ
19 DC/DCコンバータ
21 モータ機能付き発電機
23 再始動バッテリ
26 運転操作部
28 車両コントローラ
29 診断情報記憶部
30 電源装置
31、32 電力線
33 リレー装置
A331 第1接点
A332 第2接点
331 第1導体
332 第2導体
T331 第1端子
T332 第2端子
T334a 第3端子
T334b 第4端子
T336 第5端子
336 無接点リレー
337 電熱体
35 コントローラ
38 温度センサ