(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046076
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】印刷装置および洗浄液供給方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
B41J2/165 305
B41J2/165 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151247
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】梶原 快晴
(72)【発明者】
【氏名】種本 満
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EB24
2C056EB29
2C056EC23
2C056EC28
2C056FA13
2C056JA01
2C056JA27
2C056JB04
2C056JB09
2C056JB15
2C056JC21
(57)【要約】
【課題】キャップ部材および清掃部材のそれぞれに清浄な洗浄液を供給可能とする。
【解決手段】洗浄液供給機構9(洗浄液吐出ユニット)は、クリーニングローラー81(清掃部材)およびキャップ53(キャップ部材)のうちの一の吐出対象に洗浄液Qを吐出する。特に、この洗浄液供給機構9は、キャップ53およびクリーニングローラー81の間で吐出対象を切り換えて、吐出対象に洗浄液Qを吐出する(第1吐出動作/第2吐出動作)。つまり、キャップ53を吐出対象とする場合には、洗浄液供給機構9から吐出対象のキャップ53に直接洗浄液が吐出され、クリーニングローラー81を吐出対象とする場合には、洗浄液供給機構9から吐出対象のクリーニングローラー81に直接洗浄液が吐出される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクノズルからインクを吐出する印刷ヘッドと、
前記インクノズルに対向しつつ前記印刷ヘッドに当接するキャッピングを実行するキャップ部材と、
前記キャップ部材に接触することで前記キャップ部材を清掃する清掃部材と、
前記清掃部材および前記キャップ部材のうちの一の吐出対象に洗浄液を吐出する洗浄液吐出ユニットと
を備え、
前記洗浄液吐出ユニットは、前記キャップ部材および前記清掃部材の間で前記吐出対象を切り換えて、前記吐出対象に前記洗浄液を吐出可能である印刷装置。
【請求項2】
前記清掃部材および前記キャップ部材の少なくとも一方を駆動することで、前記清掃部材に対して前記キャップ部材を所定の移動方向に相対的に移動させる駆動部をさらに備え、
前記洗浄液吐出ユニットから前記洗浄液が吐出された前記清掃部材が、前記駆動部によって前記移動方向に相対的に移動される前記キャップ部材に接触することで、前記キャップ部材を清掃する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記洗浄液吐出ユニットは、前記清掃部材が配置された第1位置および前記移動方向において前記第1位置と異なる第2位置のうちから前記洗浄液の吐出先を選択可能であり、
前記洗浄液吐出ユニットが前記第1位置に前記洗浄液を吐出することで前記清掃部材に前記洗浄液が吐出され、
前記駆動部が前記キャップ部材を前記第2位置に位置させた状態で、前記洗浄液吐出ユニットが前記第2位置に前記洗浄液を吐出することで前記キャップ部材に前記洗浄液が吐出される請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記洗浄液吐出ユニットは、前記洗浄液を送液する送液配管と、前記送液配管に接続された電磁弁と、前記電磁弁に接続された第1洗浄液ノズルと、前記電磁弁に接続された第2洗浄液ノズルとを有し、
前記第1洗浄液ノズルは、前記第1位置に対向し、
前記第2洗浄液ノズルは、前記第2位置に対向し、
前記電磁弁は、前記送液配管と前記第1洗浄液ノズルとを流路接続するとともに前記送液配管と前記第2洗浄液ノズルとを遮断することで前記送液配管から前記第1洗浄液ノズルに前記洗浄液を送る第1流路接続動作と、前記送液配管と前記第2洗浄液ノズルとを流路接続するとともに前記送液配管と前記第1洗浄液ノズルとを遮断することで前記送液配管から前記第2洗浄液ノズルに前記洗浄液を送る第2流路接続動作とを選択的に実行可能であり、
前記電磁弁が前記第1流路接続動作を実行することで、前記第1洗浄液ノズルから前記第1位置に前記洗浄液が吐出され、
前記電磁弁が前記第2流路接続動作を実行することで、前記第2洗浄液ノズルから前記第2位置に前記洗浄液が吐出される請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記洗浄液吐出ユニットは、前記洗浄液を吐出する洗浄液ノズルと、前記洗浄液ノズルから吐出された前記洗浄液が前記第1位置に向かう第1姿勢および前記洗浄液ノズルから吐出された前記洗浄液が前記第2位置に向かう第2姿勢の間で前記洗浄液ノズルの姿勢を変更する姿勢変更部とを有し、
前記姿勢変更部が前記洗浄液ノズルを前記第1姿勢に位置させることで、前記洗浄液ノズルから前記第1位置に前記洗浄液が吐出され、
前記姿勢変更部が前記洗浄液ノズルを前記第2姿勢に位置させることで、前記洗浄液ノズルから前記第2位置に前記洗浄液が吐出される請求項3に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記洗浄液吐出ユニットは、前記洗浄液を吐出する洗浄液ノズルと、前記洗浄液ノズルから吐出された前記洗浄液が前記第1位置に向かう第1流量および前記洗浄液ノズルから吐出された前記洗浄液が前記第2位置に向かう第2流量の間で前記洗浄液ノズルから吐出される前記洗浄液の流量を変更する流量変更部とを有し、
前記流量変更部が前記洗浄液ノズルから前記洗浄液を前記第1流量で吐出させることで、前記洗浄液ノズルから前記第1位置に前記洗浄液が吐出され、
前記流量変更部が前記洗浄液ノズルから前記洗浄液を前記第2流量で吐出させることで、前記洗浄液から前記第2位置に前記洗浄液が吐出される請求項3に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記清掃部材は、前記キャップ部材の前記移動方向への相対的な移動に従動して回転するクリーニングローラーである請求項2ないし6のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記清掃部材は、前記洗浄液を吸収することで前記洗浄液を保持する保液部材を有し、
前記保液部材が前記キャップ部材に接触することで前記キャップ部材を清掃する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記保液部材は、多孔質部材である請求項8に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記多孔質部材は、スポンジである請求項9に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記キャップ部材は、前記印刷ヘッドに対して開口する貯留部と、前記貯留部の開口の周囲に設けられた周縁部とを有し、
前記キャッピングの実行時には、前記貯留部の開口が前記インクノズルに対向しつつ前記周縁部が前記印刷ヘッドに当接し、
前記清掃部材は、前記キャップ部材の前記周縁部に接触することで前記周縁部を清掃し、
前記洗浄液吐出ユニットは、前記キャップ部材の前記貯留部に前記洗浄液を吐出する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記キャップ部材は、前記洗浄液吐出ユニットから吐出された前記洗浄液を前記貯留部に貯留した状態で前記キャッピングを行う請求項11に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記キャップ部材は、前記洗浄液吐出ユニットから吐出された前記洗浄液を貯留する前記貯留部によって、前記印刷ヘッドの前記インクノズルから吐出されたインクを受ける請求項11に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記印刷ヘッドからインクを拭き取るワイパーと、
前記ワイパーおよび前記印刷ヘッドの少なくとも一方を駆動することで前記ワイパーを前記印刷ヘッドに摺動させるワイパー摺動部と
をさらに備え、
前記洗浄液吐出ユニットは、前記ワイパー摺動部が前記ワイパーを前記清掃部材に接触させた状態で、前記清掃部材に前記洗浄液を吐出し、
前記清掃部材に吐出された前記洗浄液は、前記清掃部材を介して前記ワイパーに到達する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項15】
前記キャップ部材が配置された底面を有するバットをさらに備え、
前記駆動部が前記バットの前記底面を前記第2位置に位置させた状態で前記洗浄液吐出ユニットが前記第2位置に前記洗浄液を吐出することで前記バットの前記底面に前記洗浄液が吐出される請求項3に記載の印刷装置。
【請求項16】
インクノズルからインクを吐出する印刷ヘッドの前記インクノズルに対向しつつ前記印刷ヘッドに当接するキャッピングを実行するキャップ部材と、前記キャップ部材に接触することで前記キャップ部材を清掃する清掃部材とに洗浄液を供給する洗浄液供給方法であって、
前記清掃部材および前記キャップ部材のうちの一の吐出対象に洗浄液を吐出する洗浄液吐出ユニットから前記吐出対象に前記洗浄液を吐出する工程と、
前記キャップ部材および前記清掃部材の間で前記吐出対象を切り換える工程と
を備える洗浄液供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インクノズルからインクを吐出する印刷ヘッドのインクノズルに対向しつつ印刷ヘッドに当接するキャッピングを実行するキャップ部材と、キャップ部材に接触することでキャップ部材を清掃する清掃部材とに洗浄液を供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクノズルからインクを吐出する印刷ヘッドによって印刷を行う印刷装置では、インクノズルをキャップするキャップ部材が印刷ヘッドのメンテナンスのために用いられる。かかるキャップ部材はインクによって汚染されるため、キャップ部材の清掃を適宜実行する必要がある。また、特許文献1、2に記載されているように、キャップ部材の清掃には洗浄液を用いることができる。例えば特許文献1では、洗浄液タンクからキャップ部材の液体収容凹部に洗浄液が送液され、この洗浄液によってキャップ部材の液体収容凹部が清掃される。また、特許文献2では、クリーニングローラーを用いてキャップ部材が清掃される。具体的には、キャップ部材内に配置されたキャップシートに洗浄液が滴下されて、クリーニングローラーが回転しながらキャップシートを押圧する。これによって洗浄液が付着したクリーニングローラーが、キャップ部材の内部および上面を清掃する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-168798号公報
【特許文献2】特開2015-217593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クリーニングローラー等の清掃部材に付着した洗浄液で清掃を行うにあたっては、清浄な洗浄液を清掃部材に供給することが好ましい。しかし、特許文献2の方法によれば、洗浄液はキャップシートを介して清掃部材(クリーニングローラー)に供給される。そのため、清掃部材に供給される洗浄液には、キャップシートから溶け出したインク等が含まれる。そこで、キャップ部材および清掃部材のそれぞれに清浄な洗浄液を供給可能とする技術が求められていた。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、キャップ部材および清掃部材のそれぞれに清浄な洗浄液を供給可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る印刷装置は、インクノズルからインクを吐出する印刷ヘッドと、インクノズルに対向しつつ印刷ヘッドに当接するキャッピングを実行するキャップ部材と、キャップ部材に接触することでキャップ部材を清掃する清掃部材と、清掃部材およびキャップ部材のうちの一の吐出対象に洗浄液を吐出する洗浄液吐出ユニットとを備え、洗浄液吐出ユニットは、キャップ部材および清掃部材の間で吐出対象を切り換えて、吐出対象に洗浄液を吐出可能である。
【0007】
本発明に係る洗浄液供給方法は、インクノズルからインクを吐出する印刷ヘッドのインクノズルに対向しつつ印刷ヘッドに当接するキャッピングを実行するキャップ部材と、キャップ部材に接触することでキャップ部材を清掃する清掃部材とに洗浄液を供給する洗浄液供給方法であって、清掃部材およびキャップ部材のうちの一の吐出対象に洗浄液を吐出する洗浄液吐出ユニットから吐出対象に洗浄液を吐出する工程と、キャップ部材および清掃部材の間で吐出対象を切り換える工程とを備える。
【0008】
このように構成された本発明(印刷装置、洗浄液供給方法)では、洗浄液吐出ユニットは、清掃部材およびキャップ部材のうちの一の吐出対象に洗浄液を吐出する。特に、この洗浄液吐出ユニットは、キャップ部材および清掃部材の間で吐出対象を切り換えて、吐出対象に洗浄液を吐出する。つまり、キャップ部材を吐出対象とする場合には、洗浄液吐出ユニットから吐出対象のキャップ部材に直接洗浄液が吐出され、清掃部材を吐出対象とする場合には、洗浄液吐出ユニットから吐出対象の清掃部材に直接洗浄液が吐出される。ここで、洗浄液吐出ユニットから吐出対象に直接洗浄液が吐出されるとは、洗浄液吐出ユニットから吐出された洗浄液が吐出対象とは異なる部材を介さずに吐出対象に到達することを示す。こうして、本発明では、キャップ部材および清掃部材のそれぞれに清浄な洗浄液を供給することが可能となっている。
【0009】
また、清掃部材およびキャップ部材の少なくとも一方を駆動することで、清掃部材に対してキャップ部材を所定の移動方向に相対的に移動させる駆動部をさらに備え、洗浄液吐出ユニットから洗浄液が吐出された清掃部材が、駆動部によって移動方向に相対的に移動されるキャップ部材に接触することで、キャップ部材を清掃するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、清浄な洗浄液が吐出された清掃部材によってキャップ部材を清掃することができる。
【0010】
また、洗浄液吐出ユニットは、清掃部材が配置された第1位置および移動方向において第1位置と異なる第2位置のうちから洗浄液の吐出先を選択可能であり、洗浄液吐出ユニットが第1位置に洗浄液を吐出することで清掃部材に洗浄液が吐出され、駆動部がキャップ部材を第2位置に位置させた状態で、洗浄液吐出ユニットが第2位置に洗浄液を吐出することでキャップ部材に洗浄液が吐出されるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、清掃部材が配置された第1位置および移動方向において第1位置と異なる第2位置のうちから洗浄液の吐出先を切り換えることで、キャップ部材および清掃部材のそれぞれに清浄な洗浄液を供給することができる。
【0011】
また、洗浄液吐出ユニットは、洗浄液を送液する送液配管と、送液配管に接続された電磁弁と、電磁弁に接続された第1洗浄液ノズルと、電磁弁に接続された第2洗浄液ノズルとを有し、 第1洗浄液ノズルは、第1位置に対向し、第2洗浄液ノズルは、第2位置に対向し、電磁弁は、送液配管と第1洗浄液ノズルとを流路接続するとともに送液配管と第2洗浄液ノズルとを遮断することで送液配管から第1洗浄液ノズルに洗浄液を送る第1流路接続動作と、送液配管と第2洗浄液ノズルとを流路接続するとともに送液配管と第1洗浄液ノズルとを遮断することで送液配管から第2洗浄液ノズルに洗浄液を送る第2流路接続動作とを選択的に実行可能であり、電磁弁が第1流路接続動作を実行することで、第1洗浄液ノズルから第1位置に洗浄液が吐出され、電磁弁が第2流路接続動作を実行することで、第2洗浄液ノズルから第2位置に洗浄液が吐出されるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、洗浄液を送液する送液配管との流路接続先を第1洗浄液ノズルと第2洗浄液ノズルとの間で電磁弁によって切り換えることで、キャップ部材および清掃部材のそれぞれに清浄な洗浄液を供給することができる。
【0012】
また、洗浄液吐出ユニットは、洗浄液を吐出する洗浄液ノズルと、洗浄液ノズルから吐出された洗浄液が第1位置に向かう第1姿勢および洗浄液ノズルから吐出された洗浄液が第2位置に向かう第2姿勢の間で洗浄液ノズルの姿勢を変更する姿勢変更部とを有し、姿勢変更部が洗浄液ノズルを第1姿勢に位置させることで、洗浄液ノズルから第1位置に洗浄液が吐出され、姿勢変更部が洗浄液ノズルを第2姿勢に位置させることで、洗浄液ノズルから第2位置に洗浄液が吐出されるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、洗浄液を吐出する洗浄液ノズルの姿勢を第1姿勢と第2姿勢との間で姿勢変更部によって切り換えることで、キャップ部材および清掃部材のそれぞれに清浄な洗浄液を供給することができる。
【0013】
また、洗浄液吐出ユニットは、洗浄液を吐出する洗浄液ノズルと、洗浄液ノズルから吐出された洗浄液が第1位置に向かう第1流量および洗浄液ノズルから吐出された洗浄液が第2位置に向かう第2流量の間で洗浄液ノズルから吐出される洗浄液の流量を変更する流量変更部とを有し、流量変更部が洗浄液ノズルから洗浄液を第1流量で吐出させることで、洗浄液ノズルから第1位置に洗浄液が吐出され、流量変更部が洗浄液ノズルから洗浄液を第2流量で吐出させることで、洗浄液から第2位置に洗浄液が吐出されるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、洗浄液ノズルから吐出される洗浄液の流量を第1流量と第2流量との間で流量変更部によって切り換えることで、キャップ部材および清掃部材のそれぞれに清浄な洗浄液を供給することができる。
【0014】
また、清掃部材は、キャップ部材の移動方向への相対的な移動に従動して回転するクリーニングローラーであるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、清浄な洗浄液が吐出されたクリーニングローラーによってキャップ部材を清掃することができる。
【0015】
また、清掃部材は、洗浄液を吸収することで洗浄液を保持する保液部材を有し、保液部材がキャップ部材に接触することでキャップ部材を清掃するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、保液部材によって保持される清浄な洗浄液によってキャップ部材を清掃することができる。
【0016】
なお、保液部材の具体的構成は種々想定される。例えば、保液部材は多孔質部材であってもよく、 多孔質部材はスポンジであってもよい。
【0017】
また、キャップ部材は、印刷ヘッドに対して開口する貯留部と、貯留部の開口の周囲に設けられた周縁部とを有し、キャッピングの実行時には、貯留部の開口がインクノズルに対向しつつ周縁部が印刷ヘッドに当接し、清掃部材は、キャップ部材の周縁部に接触することで周縁部を清掃し、洗浄液吐出ユニットは、キャップ部材の貯留部に洗浄液を吐出するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、洗浄液吐出ユニットからキャップ部材の貯留部に吐出された清浄な洗浄液によって当該貯留部を清掃できるとともに、洗浄液吐出ユニットから清掃部材に吐出された清浄な洗浄液によって、キャップ部材の周縁部を清掃できる。
【0018】
また、キャップ部材は、洗浄液吐出ユニットから吐出された洗浄液を貯留部に貯留した状態でキャッピングを行うように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、キャッピング中において、貯留部に貯留された洗浄液によってインクノズルの保湿を行うことができる。
【0019】
また、キャップ部材は、洗浄液吐出ユニットから吐出された洗浄液を貯留する貯留部によって、印刷ヘッドのインクノズルから吐出されたインクを受けるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、インクノズルから吐出されたインクがキャップ部材の貯留部の壁面に付着することで、貯留部が汚染されるのを抑制できる。
【0020】
また、印刷ヘッドからインクを拭き取るワイパーと、ワイパーおよび印刷ヘッドの少なくとも一方を駆動することでワイパーを印刷ヘッドに摺動させるワイパー摺動部とをさらに備え、洗浄液吐出ユニットは、ワイパー摺動部がワイパーを清掃部材に接触させた状態で、清掃部材に洗浄液を吐出し、清掃部材に吐出された洗浄液は、清掃部材を介してワイパーに到達するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、ワイパーに洗浄液を供給して、ワイパーを清掃することができる。
【0021】
また、キャップ部材が配置された底面を有するバットをさらに備え、駆動部がバットの底面を第2位置に位置させた状態で洗浄液吐出ユニットが第2位置に洗浄液を吐出することでバットの底面に洗浄液が吐出されるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、バットの底面に清浄な洗浄液を供給することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、キャップ部材および清掃部材のそれぞれに清浄な洗浄液を供給可能とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る印刷装置の一例を模式的に示す正面図。
【
図3】メンテナンス部の構成を模式的に示す斜視図。
【
図4】メンテナンス部の機能を説明するための模式図。
【
図6】ヘッドユニットの構造および動作を示す側面図。
【
図8】洗浄液を供給する洗浄液供給機構を模式的に示す図。
【
図9】
図8の洗浄液供給機構の動作を模式的に示す図。
【
図10A】
図8の洗浄液供給機構において洗浄液の吐出に使用される洗浄液ノズルの構成を模式的に示す図。
【
図10B】
図8の洗浄液供給機構において洗浄液の吐出に使用される洗浄液ノズルの構成を模式的に示す図。
【
図11】印刷装置の制御部の構成の一例を示すブロック図。
【
図12】印刷装置で実行される清掃動作の一例を示すフローチャート。
【
図13A】
図12のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図。
【
図13B】
図12のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図。
【
図13C】
図12のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図。
【
図13D】
図12のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図。
【
図13E】
図12のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図。
【
図13F】
図12のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図。
【
図13G】
図12のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図。
【
図13H】
図12のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図。
【
図14】洗浄液吐出部の第1変形例を模式的に示す図。
【
図15】洗浄液吐出部の第2変形例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は本発明に係る印刷装置の一例を模式的に示す正面図である。
図1および以下の図では、水平方向であるX方向、X方向に直交する水平方向であるY方向および鉛直方向であるZ方向を適宜示す。印刷装置1は、ロール・トゥ・ロールで長尺帯状のウェブ(基材)Wを筐体100内で搬送しつつ、インクジェット方式でウェブWにインクを吐出することで、ウェブWに画像を印刷する。ウェブWの素材は紙あるいはフィルムであり、ウェブWは可撓性を有する。印刷装置1は、装置全体を統括的に制御する制御部10を備え、ウェブWに対する印刷動作のために要する制御は制御部10によって実行される。この制御部10はCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成される。
【0025】
印刷装置1は、ウェブWを搬送する搬送部2を備える。搬送部2は、操出ローラー21と巻取ローラー22とを有し、操出ローラー21が繰り出すウェブWを巻取ローラー22により巻き取ることで、ロール・トゥ・ロールでウェブWを搬送する。この搬送部2は、操出ローラー21から繰り出されたウェブWを取り込む取り込み部23を、操出ローラー21と巻取ローラー22との間に備える。取り込み部23は、2本の駆動ローラー231と、2本のニップローラー232と、2本の駆動ローラー231の間に設けられたエッジ位置調整部234とを有する。各駆動ローラー231はウェブWを巻き掛けつつモーターの駆動力によって回転することで、ウェブWを駆動する。2本のニップローラー232はそれぞれ2本の駆動ローラー231に対応して設けられ、各ニップローラー232は対応する駆動ローラー231との間にウェブWを挟む。エッジ位置調整部234は、ウェブWの幅方向であるX方向において、ウェブWの端の位置を調整する。
【0026】
また、搬送部2は、取り込み部23と巻取ローラー22との間でウェブWを支持する複数の支持ローラー24を有する。これら支持ローラー24は、インクジェット方式でインクが吐出されるウェブWを下方から支持しつつ、ウェブWをY方向へ搬送する。特に、複数の支持ローラー24は、ウェブWの搬送方向(Y方向)の下流側の支持ローラー24ほど高い位置に位置するように、傾斜して配列されている。したがって、これら支持ローラー24によって搬送されるウェブWは、Y方向へ向かうに連れて上昇するように傾斜して搬送される。
【0027】
さらに、搬送部2は、これら支持ローラー24と巻取ローラー22との間でウェブWを支持する複数の支持ローラー25と、これら支持ローラー25と巻取ローラー22との間に配置された乾燥部26を有する。乾燥部26はヒートドラム261と、ヒートドラム261から巻取ローラー22へ向かうウェブWを支持する支持ローラー262とを有する。ヒートドラム261はウェブWの搬送に応じて回転駆動され、内蔵するヒータによってウェブWを加熱することでウェブWを乾燥させる。また、搬送部2は、乾燥部26から巻取ローラー22へ向かうウェブWを支持する複数の支持ローラー27を有する。さらに、搬送部2は、これら支持ローラー27と巻取ローラー22との間に配置された駆動ローラー281とニップローラー282とを有する。駆動ローラー281は、ウェブWを巻き掛けつつモーターの駆動力によって回転することで、ウェブWを駆動する。ニップローラー282は駆動ローラー281との間にウェブWを挟む。
【0028】
このように、搬送部2は複数のローラーの組み合わせによりウェブWの搬送経路を形成し、該搬送経路に沿ってウェブ2を搬送する。搬送経路の大部分は筐体100内の内部空間SPに形成されるが、その一部、例えば繰出ローラー21および巻取ローラー22の少なくとも一方については筐体100の外部に設けられてもよい。こうすることで、繰出ローラー21および巻取ローラー22に対するロール状ウェブWの取り付けおよび取り外しの作業性を高めることができる。
【0029】
印刷装置1は、筐体100内で複数の支持ローラー24によって支持されるウェブWに上方から対向する複数のヘッドユニット3を有する。詳しくは後述するが、各ヘッドユニット3は、下部に設けられた吐出口(ノズル)からインクを下向きに吐出し、下方を搬送されるウェブWに該インクを付着させる印刷ヘッド30を備えている。例えば各ヘッドユニット3に設けられる印刷ヘッド30が互いに異なる色のインクを吐出することで、カラー印刷が実現される。この例では搬送経路に沿って6個のヘッドユニット3が配置されるが、ヘッドユニット3の配設数はこれに限定されず任意である。また、各印刷ヘッド30から吐出されるインクの種類の組み合わせも任意である。
【0030】
図2は印刷ヘッド30の構成を模式的に示す底面図である。印刷ヘッド30は、複数(この例では5個)のノズルブロック31を有する。複数のノズルブロック31はいわゆる千鳥配置でX方向に2行に配列されている。換言すれば、X方向に平行に配列された3個のノズルブロック31からなるノズルブロック列C1と、X方向に平行に配列された2個のノズルブロック31からなるノズルブロック列C2とがY方向に所定の間隔で設けられている。各ノズルブロック31は、ウェブWに上側から対向するノズル開口平面31Pを有し、ノズル開口平面31Pでは複数のノズルNが開口する。複数のノズルNは、X方向に千鳥状に配列され、ウェブWにインクジェット方式でインクを吐出する。また、印刷ヘッド30は、各ノズルブロック31を保持する保持部材32を有する。保持部材32は、複数のノズルブロックに対応して穿設された複数の挿入孔321を有し、複数のノズルブロック31のそれぞれ対応する挿入孔321に挿入された状態で、保持部材32に固定される。かかる保持部材32は、金属あるいは樹脂といった非弾性部材で構成することができる。
【0031】
図1に示すように、複数の支持ローラー24によって支持されるウェブWの傾斜に応じて、複数のヘッドユニット3それぞれの姿勢が設定される。つまり、複数のヘッドユニット3のうち、ウェブWの搬送方向の上流側のヘッドユニット3ほどZ方向に対する傾きが大きくなるように、各ヘッドユニット3が配置されている。ただし、ウェブWの搬送方向(Y方向)の最下流のヘッドユニット3は水平に配置されており、Z方向に対して傾いておらず、当該最下流のヘッドユニット3以外のヘッドユニット3が、ウェブWの搬送方向に向かって高くなるように傾く。
【0032】
また、各ヘッドユニット3には、次に説明するように、印刷ヘッド30の下部を覆うようにメンテナンス部50が設けられている。その役割は、印刷ヘッド30のノズルNを清浄に保つとともにその目詰まりを防止し、必要なときに印刷ヘッド30を速やかに印刷動作に供することができるような状態を維持することである。なお、
図1に示すように各ヘッドユニット3は異なる傾き角で配置されるものの、その構成自体は基本的に同じとすることが可能である。そこで、以下におけるヘッドユニット3の説明では、それらのヘッドユニット3を特に区別しない。
【0033】
図3はメンテナンス部50の構成を模式的に示す斜視図である。また、
図4はメンテナンス部50の機能を説明するための模式図であり、
図4の(a)~(c)において、メンテナンス部50はその断面により示されている。なお、両図および以下の図では、X方向の矢印側に向かう(+X)方向および当該(+X)方向の逆側に向かう(-X)方向を適宜示す。メンテナンス部50は、複数のヘッドユニット3のそれぞれにおいて設けられる。ただし、メンテナンス部50の姿勢を除いて、メンテナンス部50の構成は複数のヘッドユニット3で共通する。したがって、以下では、1つのメンテナンス部50について説明を行う。
【0034】
メンテナンス部50は、X方向に長尺な直方体形状を有するベース部材51を有する。このベース部材51には、印刷ヘッド31から吐出されるインクや各種の処理液を受け止めるため、上部が開口する箱型のバット52,57が取り付けられている。バット52およびバット57はX方向に配列されており、大きい方のバット52は、小さい方のバット57の(+X)方向側に配置されている。
【0035】
バット52は、平面視において矩形を有する底板521と、底板521の周縁部から立設された側壁522とを有する。側壁522は、平面視において矩形を有する枠体である。側壁522の上端の全周には弾性部材523が取り付けられている。こうして、バット52では、底板521と側壁522で囲まれて上側に開口する貯留室524が設けられている。バット52の底板521には、複数のキャップ53が配置されている。複数のキャップ53は、印刷ヘッド30における複数のノズルブロック31にそれぞれ対応して配置され、X方向に千鳥状に配列されている。キャップ53は、ノズルブロック31の外形に対応して箱型に形成されたキャップ本体531を有し、キャップ本体531は、上側(ノズルブロック31側)に向かって開口する貯留室531aを有する。さらに、キャップ53は、貯留室531aの開口を取り囲むシール部材532を有する。シール部材532は概略矩形環状に形成された例えばゴム製の部品である。また、メンテナンス部50は、各キャップ53に対応して設けられた弾性部材56を有し、各弾性部材56は対応するキャップ53をバット52の底板521に対して上側へ付勢する。この弾性部材56は例えば圧縮ばねである。
【0036】
なお、
図6を用いて後述するように、メンテナンス部50は、印刷ヘッド30に下側から対向するメンテナンス位置Lmと、メンテナンス位置Lmから(+X)方向側に退避する退避位置Leとの間でX方向に移動する。メンテナンス部50がメンテナンス位置Lmに位置する状態では、
図4(a)あるいは(b)に示すように、複数のキャップ53のそれぞれは、対応するノズルブロック31に下側から対向する。さらに、メンテナンス部50の複数のキャップ53に対して、印刷ヘッド30はZ方向に移動可能である。具体的には、キャップ53から離間する退避高さHe(
図4(a)あるいは(c))と、キャップ53に当接する退避高さHeより低いキャッピング高さHc(
図4(b))との間で印刷ヘッド30はZ方向に移動する。
【0037】
図4(b)に示すように、印刷ヘッド30がキャッピング高さHcに位置することで、各ノズルブロック31の周囲がキャップ53により覆われる。具体的には、シール部材532の内側にノズルブロック31が位置した状態で、シール部材532が印刷ヘッド30に当接する(キャッピング)。このキャッピングでは、シール部材532は、弾性部材56の付勢力によって印刷ヘッド30に押圧されて、弾性的に変形する。こうして、シール部材532によってノズルブロック31の周囲空間が閉塞されて、ノズルブロック31の各ノズルN(
図2)の周辺におけるインクの乾燥が抑制される。また、キャッピングが実行された状態で、各ノズルNからインクを吐出させるパージ処理を行うことができる。ちなみに、キャッピングおよびパージ処理のそれぞれは、キャップ53の貯留室531aに洗浄液Qが貯留された状態で実行される。キャップ53へ洗浄液Qを供給する動作は後に詳述する。
【0038】
キャップ53内に吐出されたインクや洗浄液Qは図示しない排出機構を介して排出される。このような機構およびそれにより実現されるパージ処理については、例えば本願出願人が先に開示した特開2022-052195号公報に記載されたものを好適に適用することが可能である。そこで、この機構およびパージ処理については説明を省略することとする。さらに、
図4(b)の状態において、バット52の弾性部材523は印刷ヘッド30の下面に当接する。
【0039】
バット57は、平面視において矩形を有する底板571と、底板571の周縁部から立設された側壁572とを有する。側壁572は、平面視において矩形を有する枠体である。こうして、バット57では、底板571と側壁572で囲まれて上側に開口する貯留室573が設けられている。このバット57の底板571には、Y方向に配列された2個の昇降機構58が配置されている。さらに、2個の昇降機構58に対応して2個のワイパーブレード59が設けられており、各昇降機構58は対応するワイパーブレード59をZ方向に移動させる。これら2個のワイパーブレード59は、2列のノズルブロック列C1、C2に対応して設けられ、各ワイパーブレード59は、ノズルブロック列C1、C2のうち対応する一のノズルブロック列を構成するノズルブロック31に対してワイピングを実行する。
【0040】
2個のワイパーブレード59によるワイピングの実行態様は共通するため、ここでは、1個のワイパーブレード59によるワイピングについて
図4(c)を示しつつ説明する。
図4(c)では、ノズルブロック列C1に属する3個のノズルブロック31にワイパーブレード59がワイピングを行う様子が示される。印刷ヘッド30は退避高さHeに位置し、ワイパーブレード59は、ノズルブロック31のノズル開口平面31Pにワイピングを実行するためのワイピング高さZwに、昇降機構58によって位置決めされている。ワイピング高さZwに位置するワイパーブレード59の上端は、ノズルブロック31のノズル開口平面31Pより僅かに上側に位置する。また、キャップ53は印刷ヘッド30から下側に離間している。かかる状態において、メンテナンス部50が(+X)方向に移動することで、ワイパーブレード59の上端がノズルブロック31のノズル開口平面31Pに摺動される(ワイピング)。これによって、ノズル開口平面31Pに付着するインクがワイパーブレード59によって払拭されて、バット57の貯留室573に落下する。ワイパーブレード59によるワイピングは、3個のノズルブロック31それぞれのノズル開口平面31Pに対して、(+X)方向の上流側から順番に実行される。
【0041】
次に、ヘッドユニット3の構造について、
図5および
図6を参照してより詳しく説明する。
図5はヘッドユニットの構造を示す斜視図である。より詳しくは、
図5(a)がヘッドユニット3の外観を示す斜視図であり、
図5(b)はヘッドユニット3のフレーム70を示す外観斜視図である。ヘッドユニット3は、
図5(b)に示すフレーム70に各種の部品が取り付けられた構造を有している。これらの部品により遮蔽されるフレーム構造を明確に表すために、主要部品を組み付ける前のフレーム70にいくつかの部品を取り付けたときの構造を、
図5(b)に示している。また、
図6はヘッドユニットの構造および動作を示す側面図である。
【0042】
図5(b)に示すように、フレーム70は、X方向を長手方向として平行に延びる1対のフレーム部材71の間を、Y方向に延びるいくつかの横架部材72により結合した構造を有している。フレーム部材71の形状と、横架部材72の形状、配置、配設数等とについては図示に限定されず任意である。ただし、後述するように、対向配置されたフレーム部材71の間をメンテナンス部50が往復動するため、この移動を妨げない構造とすることが望ましい。
【0043】
フレーム部材71の(-X)方向側では、2つの横架部材72(72a,72b)がX方向に所定の間隔を空けて配置されている。この間隔は、印刷ヘッド30のX方向長さより大きい。これらの横架部材72a,72bの上面には、印刷ヘッド30を昇降可能に支持するためのヘッド支持側板73,73が取り付けられている。
【0044】
具体的には、
図6(a)に示すように、ヘッド支持側板73,73には昇降機構74,74がそれぞれ設けられている。昇降機構74は例えばボールねじ機構であり、上下方向に延設されたボールねじ741と、これを回転駆動するモーター742と、ボールねじ741に係合されたナットを有する昇降ブロック743とを備えている。昇降ブロック743は印刷ヘッド30のX方向両端部に取り付けられている。したがって、制御部10からの制御指令に応じてモーター742,742が同調して回転することにより、昇降ブロック743,743が昇降し、これにより印刷ヘッド30がフレーム部材71に対して昇降する。
【0045】
図5(b)に示すように、1対のフレーム部材71の互いに対向する面には、X方向に延びるガイドレール751が取り付けられている。このガイドレール751に対し、スライダー752がX方向に移動自在に係合されるとともに、スライダー752をガイドレール751に沿ってX方向に駆動する駆動源としてのモーター753が結合されている。このスライダー752にメンテナンス部50が取り付けられる。
【0046】
したがって、制御部10からの制御指令に応じてモーター753が作動することにより、メンテナンス部50は、
図6(a)および
図6(b)に示すように、1対のフレーム部材71の間をガイドレール751に沿ってX方向に移動する。つまり、ガイドレール751、スライダー752およびモーター753は、メンテナンス部50をX方向に移動させる直動機構75として機能している。このような直動機構75としては、例えばリニアモーター、ボールねじ機構、エアシリンダー、ベルトドライブ機構等の適宜のものを選択して用いることが可能である。
【0047】
このような構造を有するヘッドユニット3においては、モーター742によって印刷ヘッド30のZ方向への位置(すなわち、高さ)を変更できる。つまり、印刷ヘッド30は、メンテナンス部50の移動範囲から上側に退避した退避高さHe(
図6(a)、(b))と、退避高さHeより下側に設けられてウェブWに近接する印刷高さHp(
図6(c))との間でZ方向に移動する。ウェブWに印刷を行うためにウェブWにインクを吐出する印刷動作時には、印刷ヘッド30は印刷高さHpに位置する。一方、メンテナンス部50のX方向への移動時には、印刷ヘッド30は退避高さHeに位置する。また、
図4を示しつつ上述したように、キャッピング時には、印刷ヘッド30はキャッピング高さHcに位置する。さらに、モーター753によってメンテナンス部50をX方向に駆動することで、退避高さHeに位置するメンテナンス部50に下側から対向するメンテナンス位置Lm(
図6(a))と、メンテナンス位置Lmから(+X)方向側に退避する退避位置Le(
図6(b))との間で、メンテナンス部50を移動させることができる。
【0048】
図5に戻って、ヘッドユニット3の説明を続ける。フレーム部材71の(+X)方向側には、電装ボックス76が取り付けられている。電装ボックス76には、印刷ヘッド30および直動機構75を制御するための制御回路や印刷ヘッド30に向けてインクを送出するポンプ、これらに電力を供給する電源回路等、当該ヘッドユニット3を適正に動作させるための各種の機器が収容されている。これらを備える電装ボックス76を印刷ヘッド30と一体的にフレーム部材71に取り付けることにより、印刷ヘッド30への配管やケーブル類の長さを抑えて安定的な動作を実現することができる。
【0049】
ヘッドユニット3ではさらに、印刷ヘッド30の(+X)方向側にクリーニング部80が設けられている。後述するように、クリーニング部80は、メンテナンス部50に設けられたキャップ53およびワイパーブレード59を払拭しこれらに残留付着するインクを除去する目的で設けられている。
【0050】
図7はクリーニング部80の構成を示す図である。
図7(a)および
図7(b)に示すように、クリーニング部80は、メンテナンス部50が(+X)方向に移動するときの移動経路上に配置されるクリーニングローラー81を有する。
図7(b)に一点鎖線で示すように、Y方向におけるクリーニングローラー80の長さは、クリーニング対象物であるキャップ53およびワイパーブレード59のY方向における分布範囲の全体を含むように設定される。さらに、高さ方向においては、クリーニングローラー80は、メンテナンス部50が(+X)方向に移動するときのキャップ53およびワイパーブレード59各々の上端の軌跡と重なるように配置される。
【0051】
クリーニングローラー81は、その外周面に表面層811を有する。表面層811は、多孔質部材であるスポンジであり、液体を保持する保液性および弾性を有する。具体的には、クリーニングローラー81は、Y方向に平行な円筒形状を有する金属製の芯金812を有し、芯金812の周囲に円筒形状の表面層811が配置されている。芯金812の中心と同軸に回転軸813が設けられ、回転軸813の両端が一対の軸受部材82,82により回転自在に軸支される。軸受部材82については、フレーム部材71およびこれと一体的に結合された部材のいずれかに固定される。
図7(c)に示す例では、1対のヘッド支持側板73のうち(+X)方向側に配置されたヘッド支持側板73の(+X)方向側の側面に、軸受部材82を取り付けるための一対の突出部731,731が設けられている。そして、一対の突出部731,731に対して、一対の軸受部材82,82が例えばねじ等の締結部材83により締結される。このような構造によれば、クリーニング部80は、印刷ヘッド30と一体的にX方向に移動する。なお、固結部材83を突出部731に対して着脱自在とした場合、クリーニングローラー81のヘッド支持側板73に対する交換が容易になる。
【0052】
図8は洗浄液を供給する洗浄液供給機構9を模式的に示す図であり、
図9は
図8の洗浄液供給機構9の動作を模式的に示す図であり、
図10Aおよび
図10Bは
図8の洗浄液供給機構において洗浄液の吐出に使用される洗浄液ノズルの構成を模式的に示す図である。
【0053】
洗浄液供給機構9は、洗浄液貯留部91と、洗浄液貯留部91から吸引した洗浄液Qを送液する送液部92と、送液部92によって洗浄液貯留部91から送られてきた洗浄液Qを吐出する洗浄液吐出部93とを有する。洗浄液貯留部91は、一対のヘッド支持側板73の(-X)方向側に配置された貯留タンク911を有し、貯留タンク911内に洗浄液Qが貯留される。
【0054】
送液部92は、一対のヘッド支持側板73の(-X)方向側から(+X)方向側まで延設された送液配管921を有する。一対のヘッド支持側板73の(-X)方向側に配置された送液配管921の一端には吸引口922が開口する。送液配管921のこの一端は、貯留タンク911内に挿入されており、送液配管921の吸引口922は、貯留タンク911に貯留される洗浄液Q内で開口する。また、一対のヘッド支持側板73の(+X)方向側に配置された送液配管921の他端には排出口923が開口する。さらに、送液部92は、送液配管921に取り付けられた送液ポンプ924を有し、送液ポンプ924は、吸引口922から排出口923に向けて送液配管921内の洗浄液Qを駆動する。したがって、送液ポンプ924が洗浄液Qを駆動すると、貯留タンク911内に貯留された洗浄液Qが吸引口922から送液配管921内に吸引されて、送液配管921によって排出口923まで送られる。
【0055】
洗浄液吐出部93は、一対のヘッド支持側板73の(+X)方向側に配置されている。この洗浄液吐出部93は、送液配管921の排出口923に取り付けられた電磁弁94を有する。電磁弁94は、流入ポート940、第1出力ポート941および第2出力ポート942を有し(
図9)、電磁弁94の流入ポート940に送液配管921の排出口923が取り付けられている。この電磁弁94は、流入ポート940と第1出力ポート941とを流路接続しつつ流入ポート940と第2出力ポート942とを遮断する第1流路接続動作と、流入ポート940と第2出力ポート942とを流路接続しつつ流入ポート940と第1出力ポート941とを遮断する第2流路接続動作との一方を選択的に実行する。
【0056】
また、洗浄液吐出部93は、電磁弁94の第1出力ポート941に接続された一端を持つ配管931と、電磁弁94の第2出力ポート942に接続された一端を持つ配管932とを有する。さらに、洗浄液吐出部93は、配管931の他端に接続された洗浄液ノズル951と、配管932の他端に接続された洗浄液ノズル952とを有する。洗浄液ノズル951は、クリーニングローラー81が配置された第1位置L1に上側から対向し、洗浄液ノズル952は、第1位置L1の(+X)方向側の第2位置L2に上側から対向する。
【0057】
図10Aに示すように、洗浄液ノズル951は、Y方向に延設された吐出口951aを有する。この吐出口951aは、第1位置L1に上側から対向し、第1位置L1に配置されたクリーニングローラー81に洗浄液Qを吐出する。また、
図10Bに示すように、洗浄液ノズル952は、Y方向に延設された吐出口952aを有する。この洗浄液ノズル952aは第2位置L2に上側から対向し、第2位置L2を通過するバット52やキャップ53に洗浄液Qを吐出する。ちなみに、バット52の内側では、X方向からの側面視において、2個のキャップ53がY方向に配列されており、Y方向において、これら2個のバット52は吐出口952aの両端の間に位置する。
【0058】
かかる洗浄液供給機構9では、送液ポンプ924が洗浄液Qを駆動しつつ、電磁弁94が第1流路接続動作を実行することで、洗浄液ノズル951から第1位置L1に向けて洗浄液Qが吐出される(
図9の第1吐出動作)。この第1吐出動作では、洗浄液ノズル952からの洗浄液Qの吐出は電磁弁94によって禁止されており、洗浄液ノズル952は洗浄液Qを吐出しない。一方、送液ポンプ924が洗浄液Qを駆動しつつ、電磁弁94が第2流路接続動作を実行することで、洗浄液ノズル952から第2位置L2に向けて洗浄液Qが吐出される(
図9の第2吐出動作)。この第2吐出動作では、洗浄液ノズル951からの洗浄液Qの吐出は電磁弁94によって禁止されており、洗浄液ノズル951は洗浄液Qを吐出しない。こうして、洗浄液供給機構9は、洗浄液ノズル951から第1位置L1に洗浄液Qを吐出する第1吐出動作と、洗浄液ノズル952から第2位置L2に洗浄液Qを吐出する第2吐出動作との一方を、選択的に実行することができる。換言すれば、洗浄液供給機構9は、X方向において互いに異なる第1位置L1と第2位置L2との間で、洗浄液Qの吐出先を切り換えることができる。
【0059】
図11は印刷装置の制御部の構成の一例を示すブロック図である。プロセッサである制御部10は、所定のプログラムを実行することで、モーター制御部11、昇降機構制御部12、ポンプ制御部13および吐出先切換制御部14のそれぞれを内部に構成する。モーター制御部11は、メンテナンス部50をX方向に駆動するモーター753を制御する。昇降機構制御部12は、ワイパーブレード59をZ方向に駆動する昇降機構58を制御する。ポンプ制御部13は、貯留タンク911から洗浄液吐出部93に洗浄液Qを送る送液ポンプ924を制御する。吐出先切換制御部14は、第1位置L1および第2位置L2の間で洗浄液Qの吐出先を切り換える電磁弁94を制御する。
【0060】
図12は印刷装置で実行される清掃動作の一例を示すフローチャートであり、
図13A~
図13Hは
図12のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図である。
図12の清掃動作は、制御部10の制御によって実行される。
【0061】
図12の清掃動作の開始時には、印刷ヘッド30は退避高さHeに位置し、メンテナンス部50はメンテナンス位置Lmに停止している(
図13A)。また、クリーニングローラー81はメンテナンス部50よりも(+X)方向側に位置している。さらに、
図13Aの一点鎖線で示されるように、高さ方向(Z方向)において、キャップ53の上端(より具体的にはシール部材532の上端)およびワイパーブレード59の上端は、クリーニングローラー81の表面層811の下端と上端との間のローラー接触範囲R81内に位置する。特に、昇降機構制御部12は昇降機構58を制御することで、ワイパーブレード59をワイピング高さZwに位置決めする。なお、ワイピング高さZwは、ローラー接触範囲R81内に位置する。
【0062】
ステップS101では、吐出先切換制御部14は、電磁弁94に第1流路接続動作を実行させることで、洗浄液Qの吐出先を第1位置L1に設定する。ステップS102では、ポンプ制御部13は、送液ポンプ924を始動させる。これによって、貯留タンク911から洗浄液吐出部93に送液ポンプ924によって送られた洗浄液Qが洗浄液ノズル951から第1位置L1のクリーニングローラー81に吐出される(
図13B)。そして、所定の洗浄液供給時間が経過すると(ステップS103で「YES」)、ポンプ制御部13は送液ポンプ924を停止させる(ステップS104)。これによって、洗浄液ノズル951から第1位置L1のクリーニングローラー81への洗浄液Qの吐出が停止する。なお、上述の通り、クリーニングローラー81の表面層811は、多孔質性のスポンジであり、液体を保持する保液性を有する。これに対して、ステップS103の洗浄液供給時間は、十分な量の洗浄液Qを表面層811に吸収・保持させるために設けられる。
【0063】
ステップS105では、モーター制御部11は、メンテナンス位置Lmから退避位置Leへのメンテナンス部50の移動をモーター753に開始させる。ステップS105のメンテナンス部50の移動開始に伴って、X方向に移動するキャップ53のシール部材532にクリーニングローラー81の表面層811が接触する(
図13C等)。また、クリーニングローラー81は、Y方向に平行な回転軸を中心に回転可能であるため、X方向に移動するシール部材532に従動回転する。こうして、洗浄液Qを保持するクリーニングローラー81の表面層811によってキャップ53のシール部材532が清掃される。
【0064】
さらに、ステップS105のメンテナンス部50の移動開始に伴って、ワイパーブレード59の上端をノズル開口平面31Pに対してX方向に摺動させるワイピングが実行される(
図13C、
図13D等)。このワイピングによって、ノズル開口平面31Pに付着するインクがワイパーブレード59によって払拭されて、バット57の貯留室573に落下する。
【0065】
ステップS106では、吐出先切換制御部14は、電磁弁94に第2流路接続動作を実行させることで、洗浄液Qの吐出先を第2位置L2に設定する。そして、ステップS107では、メンテナンス部50が第2位置L2に到達したか否かが監視される。ここの例では、メンテナンス部50のうち、バット52の内側(具体的には、バット52の底板521)が第2位置L2に到達したかが監視される。そして、バット52の内側が第2位置L2に到達すると(ステップS107で「YES」)、ポンプ制御部13は、送液ポンプ924を始動させる(ステップS108)。
【0066】
これによって、貯留タンク911から洗浄液吐出部93に送液ポンプ924によって送られた洗浄液Qが洗浄液ノズル952から第2位置L2を通過するバット52の底板521に吐出される(
図13E)。こうして、バット52の底板521に吐出された洗浄液Qは、バット52内に貯留される。なお、バット52の底板521には、例えばスポンジ等の多孔質部材を配置してもよい。この場合、洗浄液Qは多孔質部材に吸収・保持される。
【0067】
さらに、メンテナンス位置Lmから退避位置Leへのメンテナンス部50の移動に伴って、バット52の底板521に配置された複数のキャップ53が第2位置L2を順番に通過する。これに対して、洗浄液ノズル952から吐出される洗浄液Qは、第2位置L2を通過するキャップ53に吐出される(
図13F)。これによって、キャップ53の貯留室531a(
図3、
図4)に洗浄液Qが貯留される。
【0068】
メンテナンス部50が退避位置Leに到達すると(ステップS109で「YES」)、モーター制御部11は、モーター753にメンテナンス部50を停止させる(ステップS110)。こうしてステップS105~S110を通じたメンテナンス部50の移動に伴って、キャップ53およびバット52への洗浄液Qの供給が実行される。さらに、このメンテナンス部50の移動に伴って、ワイピングが実行される。すなわち、複数のノズルブロック31それぞれのノズル開口平面31Pに順番にワイパーブレード59の上端が摺動されることで、各ノズル開口平面31Pに付着するインクがワイパーブレード59に払拭されてバット57に回収される(ワイピング)。また、ステップS110でメンテナンス部50が退避位置Leに停止した状態においては、
図13Gに示すように、クリーニングローラー81の表面層811は、ワイパーブレード59に接触する。
【0069】
ステップ111では、吐出先切換制御部14は、電磁弁94に第1流路接続動作を実行させることで、洗浄液Qの吐出先を第1位置L1に設定する。これによって、貯留タンク911から洗浄液吐出部93に送液ポンプ924によって送られた洗浄液Qが洗浄液ノズル951から第1位置L1のクリーニングローラー81に吐出される(
図13H)。これによって、に洗浄液Qがクリーニングローラー81の表面層811に供給されて、表面層811に保持される。また、表面層811によって保持できない洗浄液Qは、ワイパーブレード59に到達した後に、バット57の貯留室573に回収される。
【0070】
ステップS112では、昇降機構制御部12は、昇降機構58にワイパーブレード59を昇降させることで、ワイパーブレード59をクリーニングローラー81の表面層811に摺動させる(ワイパー清掃)。このワイパー清掃では、ワイパーブレード59の上端は、クリーニングローラー81に接触しつつローラー接触範囲R81内で昇降する。そして、所定のワイパー清掃時間が経過すると(ステップS113で「YES」)、昇降機構制御部12がワイパーブレード59の昇降を昇降機構58に停止させ(ステップS114)、ポンプ制御部13が洗浄液Qの送液を送液ポンプ924に停止させる(ステップS115)。
【0071】
図12の清掃動作が終了すると、退避位置Leに位置するメンテナンス部50のキャップ53の貯留室531aおよびバット52には、洗浄液Qが貯留されている。かかる状態から、メンテナンス部50を退避位置Leからメンテナンス位置Lmに移動させることで、
図4(b)を用いて上述したキャッピングやパージ処理を実行することができる。
【0072】
以上のように構成された実施形態では、洗浄液供給機構9(洗浄液吐出ユニット)は、クリーニングローラー81(清掃部材)およびキャップ53(キャップ部材)のうちの一の吐出対象に洗浄液Qを吐出する。特に、この洗浄液供給機構9は、キャップ53およびクリーニングローラー81の間で吐出対象を切り換えて、吐出対象に洗浄液Qを吐出する(第1吐出動作/第2吐出動作)。つまり、キャップ53を吐出対象とする場合には、洗浄液供給機構9から吐出対象のキャップ53に直接洗浄液が吐出され(
図13F)、クリーニングローラー81を吐出対象とする場合には、洗浄液供給機構9から吐出対象のクリーニングローラー81に直接洗浄液が吐出される(
図13B、
図13H)。ここで、洗浄液供給機構9から吐出対象に直接洗浄液Qが吐出されるとは、洗浄液供給機構9から吐出された洗浄液Qが吐出対象とは異なる部材を介さずに吐出対象に到達することを示す。こうして、キャップ53およびクリーニングローラー81のそれぞれに清浄な洗浄液Qを供給することが可能となっている。
【0073】
また、キャップ53(メンテナンス部50)を駆動することで、クリーニングローラー81に対してキャップ53をX方向(移動方向)に移動させるモーター753(駆動部)が具備されている。そして、洗浄液供給機構9から洗浄液Qが吐出されたクリーニングローラー81が、モーター753によってX方向に移動されるキャップ53に接触することで、キャップ53を清掃する。かかる構成では、清浄な洗浄液Qが吐出されたクリーニングローラー81によってキャップ53を清掃することができる。
【0074】
また、洗浄液供給機構9は、クリーニングローラー81が配置された第1位置L1およびX方向において第1位置L1と異なる第2位置L2のうちから洗浄液Qの吐出先を選択する(
図9)。そして、洗浄液供給機構9が第1位置L1に洗浄液Qを吐出することでクリーニングローラー81に洗浄液Qが吐出される(
図13B、
図13H)。一方、モーター753がキャップ53を第2位置L2に位置させた状態で、洗浄液供給機構9が第2位置L2に洗浄液Qを吐出することでキャップ53に洗浄液Qが吐出される(
図13F)。かかる構成では、第1位置L1および第2位置L2のうちから洗浄液Qの吐出先を切り換えることで、キャップ53およびクリーニングローラー81のそれぞれに清浄な洗浄液Qを供給することができる。
【0075】
また、洗浄液供給機構9は、洗浄液Qを送液する送液配管921と、送液配管921に接続された電磁弁94と、電磁弁94に接続された洗浄液ノズル951(第1洗浄液ノズル)と、電磁弁94に接続された洗浄液ノズル952(第2洗浄液ノズル)とを有する。 洗浄液ノズル951は、第1位置L1に対向し、洗浄液ノズル952は、第2位置L2に対向する。これに対して、電磁弁94は、送液配管921と洗浄液ノズル951とを流路接続するとともに送液配管921と洗浄液ノズル952とを遮断することで送液配管921から洗浄液ノズル951に洗浄液Qを送る第1流路接続動作と、送液配管921と洗浄液ノズル952とを流路接続するとともに送液配管921と洗浄液ノズル951とを遮断することで送液配管921から洗浄液ノズル952に洗浄液Qを送る第2流路接続動作とを選択的に実行可能である(
図9)。そして、電磁弁94が第1流路接続動作を実行することで、洗浄液ノズル951から第1位置L1に洗浄液Qが吐出され、電磁弁94が第2流路接続動作を実行することで、洗浄液ノズル952から第2位置L2に洗浄液Qが吐出される。かかる構成では、洗浄液Qを送液する送液配管921との流路接続先を洗浄液ノズル951と洗浄液ノズル952との間で電磁弁94によって切り換えることで、キャップ53およびクリーニングローラー81のそれぞれに清浄な洗浄液Qを供給することができる。
【0076】
また、クリーニングローラー81は、キャップ53のX方向への移動に従動して回転する。かかる構成では、清浄な洗浄液Qが吐出されたクリーニングローラー81によってキャップ53を清掃することができる。
【0077】
また、クリーニングローラー81は、洗浄液Qを吸収することで洗浄液Qを保持する表面層811(スポンジ、保液部材)を有し、表面層811がキャップ53に接触することでキャップ53を清掃する。かかる構成では。クリーニングローラー81の表面層811によって保持される清浄な洗浄液Qによってキャップ53を清掃することができる。
【0078】
また、キャップ53は、印刷ヘッド30に対して開口する貯留室531a(貯留部)と、貯留室531aの開口の周囲に設けられたシール部材532(周縁部)とを有し、キャッピングの実行時には、貯留室531aの開口がノズルN(インクノズル)に対向しつつシール部材532が印刷ヘッド30に当接する(
図4(b))。これに対して、クリーニングローラー81は、キャップ53のシール部材532に接触することでシール部材532を清掃する(
図13C、
図13F)。また、洗浄液供給機構9は、キャップ53の貯留室531aに洗浄液Qを吐出する。かかる構成では、洗浄液供給機構9からキャップ53の貯留室531aに吐出された清浄な洗浄液Qによって当該貯留室531aを清掃できるとともに、洗浄液供給機構9からクリーニングローラー81に吐出された清浄な洗浄液Qによって、キャップ53のシール部材532を清掃できる。
【0079】
また、キャップ53は、洗浄液供給機構9から吐出された洗浄液Qを貯留室531aに貯留した状態でキャッピングを行う(
図4(b))。かかる構成では、キャッピング中において、貯留室531aに貯留された洗浄液QによってノズルNの保湿を行うことができる。
【0080】
また、キャップ53は、洗浄液供給機構9から吐出された洗浄液Qを貯留する貯留室531aによって、パージ処理で印刷ヘッド30のノズルNから吐出されたインクを受ける。かかる構成では、ノズルNから吐出されたインクがキャップ53の貯留室531aの壁面に付着することで、貯留室531aが汚染されるのを抑制できる。
【0081】
また、印刷ヘッド30からインクを拭き取るワイパーブレード59(ワイパー)と、ワイパーブレード59(メンテナンス部50)を駆動することでワイパーブレード59を印刷ヘッド30に摺動させるモーター753(ワイパー摺動部)とが具備されている。これに対して、洗浄液供給機構9は、モーター753がワイパーブレード59をクリーニングローラー81に接触させた状態で(すなわち、メンテナンス部50を退避位置Leに位置させた状態で)、クリーニングローラー81に洗浄液Qを吐出し、クリーニングローラー81に吐出された洗浄液Qは、クリーニングローラー81を介してワイパーブレード59に到達する(
図13H)。かかる構成では、ワイパーブレード59に洗浄液Qを供給して、ワイパーブレード59を清掃することができる。
【0082】
また、キャップ53が配置された底板521を有するバット52が具備されている。そして、モーター753がバット52の底板521を第2位置L2に位置させた状態で洗浄液供給機構9が第2位置L2に洗浄液Qを吐出することでバット52の底板521に洗浄液Qが吐出される(
図13E、
図13G)。かかる構成では、バット52の底板521に清浄な洗浄液Qを供給することができる。
【0083】
上述の様に、本実施形態では、印刷装置1が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、印刷ヘッド30が本発明の「印刷ヘッド」の一例に相当し、バット52が本発明の「バット」の一例に相当し、底板521が本発明の「底面」の一例に相当し、キャップ53が本発明の「キャップ部材」の一例に相当し、貯留室531aが本発明の「貯留部」の一例に相当し、シール部材532が本発明の「周縁部」の一例に相当し、ワイパーブレード59が本発明の「ワイパー」の一例に相当し、モーター753が本発明の「駆動部」の一例に相当し、モーター753が発明の「ワイパー摺動部」の一例に相当し、クリーニングローラー81が本発明の「クリーニングローラー」の一例に相当し、クリーニングローラー81が本発明の「清掃部材」の一例に相当し、表面層811が本発明の「保液部材」の一例に相当し、洗浄液供給機構9が本発明の「洗浄液吐出ユニット」の一例に相当し、送液配管921が本発明の「送液配管」の一例に相当し、電磁弁94が本発明の「電磁弁」の一例に相当し、洗浄液ノズル951が本発明の「第1洗浄液ノズル」の一例に相当し、洗浄液ノズル952が本発明の「第2洗浄液ノズル」の一例に相当し、第1位置L1が本発明の「第1位置」の一例に相当し、第2位置L2が本発明の「第2位置」の一例に相当し、ノズルNが本発明の「インクノズル」の一例に相当し、洗浄液Qが本発明の「洗浄液」の一例に相当し、X方向が本発明の「移動方向」の一例に相当する。
【0084】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、第1位置L1および第2位置L2の間で洗浄液Qの吐出先を変更する洗浄液吐出部93の構成は、電磁弁94を用いた
図9の例に限られない。
【0085】
図14は洗浄液吐出部の第1変形例を模式的に示す図である。
図14の洗浄液吐出部93は、単一の洗浄液ノズル951が送液配管921に流路接続されている。したがって、送液ポンプ924によって貯留タンク911から送液配管921に沿って送られてきた洗浄液Qは、洗浄液ノズル951から吐出される。
【0086】
また、洗浄液ノズル951は、Y方向に平行な回転軸を中心とする回転方向に回転可能に軸支されている。これに対して、洗浄液吐出部93は、洗浄液ノズル951を回転方向に駆動するノズル駆動部96を有する。ノズル駆動部96は、アクチュエータ961と、アクチュエータ961によってX方向に駆動されるロッド962とを有する。また、洗浄液ノズル951の周面には係合長孔951bが設けられており、ロッド962の先端が係合長孔951bに係合する。したがって、ノズル駆動部96は、洗浄液ノズル951を駆動することで、第1姿勢と、当該第1姿勢から角度θだけ回転する第2姿勢との間で、洗浄液ノズル951の姿勢を変更できる。そして、第1姿勢の洗浄液ノズル951は、第1位置L1に洗浄液Qを吐出し、第2姿勢の洗浄液ノズル951は、第2位置L2に洗浄液Qを吐出する。ちなみに、ノズル駆動部96による洗浄液ノズル951の駆動は、吐出先切換制御部14によって制御される。
【0087】
かかる第1変形例では、洗浄液供給機構9は、洗浄液Qを吐出する洗浄液ノズル951と、洗浄液ノズル951から吐出された洗浄液Qが第1位置L1に向かう第1姿勢および洗浄液ノズル951から吐出された洗浄液Qが第2位置L2に向かう第2姿勢の間で洗浄液ノズル951の姿勢を変更するノズル駆動部96(姿勢変更部)とを有する。そして、ノズル駆動部96が洗浄液ノズル951を第1姿勢に位置させることで、洗浄液ノズル951から第1位置L1に洗浄液Qが吐出され、ノズル駆動部96が洗浄液Qを第2姿勢に位置させることで、洗浄液ノズル951から第2位置L2に洗浄液Qが吐出される。かかる構成では、洗浄液Qを吐出する洗浄液ノズル951の姿勢を第1姿勢と第2姿勢との間でノズル駆動部96によって切り換えることで、キャップ53およびクリーニングローラー81のそれぞれに清浄な洗浄液Qを供給することができる。
【0088】
図15は洗浄液吐出部の第2変形例を模式的に示す図である。
図15の洗浄液吐出部93は、単一の洗浄液ノズル951が送液配管921に流路接続されている。したがって、送液ポンプ924によって貯留タンク911から送液配管921に沿って送られてきた洗浄液Qは、洗浄液ノズル951から吐出される。
【0089】
また、ポンプ制御部13が送液ポンプ924によって、洗浄液ノズル951から吐出される洗浄液Qの流量を、第1流量と第2流量との間で変更する。洗浄液ノズル951から第1流量で吐出された洗浄液Qは、第1位置L1に吐出される。一方、洗浄液ノズル951から第2流量で吐出された洗浄液Qは、第2位置L2に吐出される。
【0090】
かかる第2変形例では、洗浄液供給機構9は、洗浄液Qを吐出する洗浄液ノズル951と、洗浄液ノズル951から吐出された洗浄液Qが第1位置L1に向かう第1流量および洗浄液ノズル951から吐出された洗浄液Qが第2位置L2に向かう第2流量の間で洗浄液ノズル951から吐出される洗浄液Qの流量を変更する送液ポンプ924(流量変更部)とを有する。そして、送液ポンプ924が洗浄液ノズル951から洗浄液Qを第1流量で吐出させることで、洗浄液ノズル951から第1位置L1に洗浄液Qが吐出され、送液ポンプ924が洗浄液ノズル951から洗浄液Qを第2流量で吐出させることで、洗浄液Qから第2位置L2に洗浄液Qが吐出される。かかる構成では、洗浄液ノズル951から吐出される洗浄液Qの流量を第1流量と第2流量との間で送液ポンプ924によって切り換えることで、キャップ53およびクリーニングローラー81のそれぞれに清浄な洗浄液を供給することができる。
【0091】
また、キャップ53を清掃する清掃部材の具体的構成を適宜変更してもよい。つまり、クリーニングローラー81に代えて、洗浄液吐出部93から吐出された洗浄液Qを保持できるブラシ(保液部材)を配置してもよい。
【0092】
また、クリーニングローラー81に対してメンテナンス部50をX方向に相対的に移動させる具体的構成は、上記の例に限られない。つまり、メンテナンス部50をX方向に駆動するのに代えて、クリーニングローラー81をX方向に駆動してもよい。要するに、クリーニングローラー81およびメンテナンス部50の少なくとも一方を駆動することで、これらの間の相対移動を実行できる。
【0093】
また、第1位置L1に洗浄液Qを吐出する流量と、第2位置L2に洗浄液Qを吐出する流量との関係を適宜設定できる。つまり、前者と後者が等しい、前者が後者より少ないあるいは前者が後者より多いといったバリエーションが考えられる。特に、第1位置L1に洗浄液Qを吐出する流量が、第2位置L2に洗浄液Qを吐出する流量より少ない場合には、次のような利点がある。つまり、第1位置L1に位置するクリーニングローラー81には、低い流量で洗浄液Qが吐出される。そのため、クリーニングローラー81が洗浄液Qを吸収する速度に対して、クリーニングローラー81への洗浄液Qの吐出流量が過剰になって、洗浄液Qの多くがクリーニングローラー81に保持されずに落下してしまい、洗浄液Qの消費量が多くなるのを抑えることができる。また、第2位置L2のキャップ53あるいはバット52には、高い流量で洗浄液Qが吐出されるため、これらに十分な量の洗浄液Qを速やかに供給できる。
【0094】
また、モーター742によって駆動される印刷ヘッド30とともにクリーニングローラー81がZ方向に移動(すなわち、昇降)するように構成してもよい。かかる構成では、ステップS113において、ワイパーブレード59をクリーニングローラー81に摺動させる動作を、クリーニングローラー81を昇降させることで実行してもよい。あるいは、昇降機構58によるワイパーブレード59の昇降と、モーター742によるクリーニングローラー81の昇降とを併せて実行することで、ワイパーブレード59をクリーニングローラー81に摺動させてもよい。
【0095】
また、洗浄液供給機構9の具体的構成を適宜変更してもよい。例えば、洗浄液貯留部91を、印刷ヘッド30の(―X)方向側ではなく、印刷ヘッド30の(+X)方向側に配置してもよい。
【0096】
また、Y方向に設けられた2個のキャップ53(
図10B)に対応して2個の洗浄液ノズル952を設けてもよい。この場合、各洗浄液ノズル952は対応するキャップ53に上側から対向して、当該キャップ53に洗浄液Qを吐出する。また、バット52の底板521に対する洗浄液Qの吐出は、2個の洗浄液ノズル952のそれぞれによって実行できる。
【0097】
また、
図12の清掃動作における各動作のタイミングは適宜変更が可能である。例えば、ステップS104の送液ポンプの停止の前に、ステップS105のメンテナンスユニットの移動を開始してもよい。また、ステップS106の吐出先の第2位置への設定は、メンテナンス部50の内側が第2位置L2に到達したのをステップS107で確認してから実行してもよい。さらに、その他の動作のタイミングを、必要に応じて変更してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、インクノズルからインクを吐出する印刷ヘッドのインクノズルに対向しつつ印刷ヘッドに当接するキャッピングを実行するキャップ部材と、キャップ部材に接触することでキャップ部材を清掃する清掃部材とに洗浄液を供給する技術の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
1…印刷装置
30…印刷ヘッド
52…バット
521…底面
53…キャップ(キャップ部材)
531a…貯留室
532…シール部材(周縁部)
59…ワイパーブレード(ワイパー)
753…モーター(駆動部、ワイパー摺動部)
81…クリーニングローラー(清掃部材)
811…表面層(スポンジ、保液部材)
9…洗浄液供給機構(洗浄液吐出ユニット)
921…送液配管
94…電磁弁
951…洗浄液ノズル(第1洗浄液ノズル)
952…洗浄液ノズル(第2洗浄液ノズル)
L1…第1位置
L2…第2位置
N…ノズル(インクノズル)
Q…洗浄液
X…X方向(移動方向)