(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046077
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷装置における清掃方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
B41J2/165 303
B41J2/165 101
B41J2/165 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151248
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】大西 秀明
(72)【発明者】
【氏名】種本 満
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA27
2C056EC36
2C056FA13
2C056HA08
2C056JA04
2C056JA08
2C056JA13
2C056JA14
2C056JA21
2C056JA27
2C056JB04
2C056JB09
2C056JB15
2C056JB18
2C056JC06
2C056JC13
2C056JC21
2C056JC23
(57)【要約】
【課題】印刷ヘッドからインクを払拭するワイパーから落下したインクを回収するパンに供給する洗浄液の量を抑えつつ、固化したインクをパンから排出可能とする。
【解決手段】ワイパーブレード59への洗浄液Qの供給およびワイパーブレード59からの液体の排出が停止している状態を維持する待機処理を実行してから(待機期間Tw)、バット57から液体(洗浄液・インク)を排出する排出処理が実行される(期間T7)。つまり、洗浄液Qをバット57に継続的に供給するのではなく、バット57に貯留された洗浄液Qにインクが溶解するのを待機期間Twにおいて待機することで、洗浄液Qの供給量を抑えつつインクを溶解させることができる。しかも、ワイパーブレード59の清掃のためにワイパーブレード59に供給された洗浄液Qがバット57に貯留されて、インクの溶解に再利用されており、洗浄液Qの供給量の抑制が効果的に図られている。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル開口平面で開口するインクノズルを有して、前記インクノズルからインクを吐出する印刷ヘッドと、
前記ノズル開口平面を払拭するワイパーと、
前記ワイパーから落下した液体を回収するパンと、
前記ワイパーおよび前記パンを一体的に所定の移動方向に移動させる移動手段と、
所定の洗浄位置に位置する前記ワイパーに対して洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、
前記パンから液体を排出する排出手段と
を備え、
前記移動手段が前記ノズル開口平面に接触する前記ワイパーを前記移動方向に移動させることで、前記ノズル開口平面に付着したインクを前記ワイパーによって払拭して前記パンに回収するワイピングが実行され、
前記ワイピングの終了後に、前記移動手段が前記洗浄位置に前記ワイパーを位置させた状態で前記洗浄液供給手段が前記ワイパーに前記洗浄液を供給する洗浄液供給処理が実行され、
前記洗浄液供給処理の終了後に、前記洗浄液供給手段による前記洗浄液の供給および前記排出手段による前記パンからの液体の排出が停止している状態を維持する待機処理が実行され、
前記待機処理に続いて、前記排出手段によって前記パンから液体を排出する排出処理が実行される印刷装置。
【請求項2】
前記洗浄位置は、前記移動方向において前記印刷ヘッドの一方側に設けられ、
前記移動手段が前記移動方向において前記印刷ヘッドの他方側に設けられた原点位置から前記洗浄位置に前記ワイパーを移動させることで前記ワイピングが実行され、
前記洗浄液供給処理では、前記ワイピングの実行に伴って前記洗浄位置に到達した前記ワイパーに前記洗浄液が供給され、
前記待機処理では、前記ワイパーを前記洗浄位置から前記原点位置に移動させる移動方向原点復帰が実行される請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記ワイパーおよび前記パンと一体的に前記移動方向に移動するキャップ部材をさらに備え、
前記ワイパーが前記原点位置に位置する状態において、前記キャップ部材は前記ノズル開口平面に下側から対向し、
前記待機処理では、前記移動方向原点復帰の終了後に、前記ノズル開口平面に対向する前記キャップ部材を前記印刷ヘッドに当接させるキャッピングが実行される請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記ワイパーが前記ノズル開口平面に下側から接触するワイピング高さと、前記ワイピング高さより低い原点高さとの間で、前記ワイパーを昇降させる昇降手段をさらに備え、
前記ワイピングでは、前記昇降手段は、前記ワイパーを前記ワイピング高さに位置させ、
前記待機処理では、前記移動方向原点復帰の開始前に、前記昇降手段が前記ワイパーを前記原点高さに下降させる高さ方向原点復帰が実行される請求項2または3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記ワイピングの終了後に、前記排出手段によって前記パンから液体を排出するプレ排出処理が実行され、
前記プレ排出処理は、前記洗浄液供給処理と並行して実行され、前記洗浄液供給処理の終了より前に終了する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記洗浄位置に位置する前記ワイパーに接触するクリーニングローラーをさらに備え、
前記洗浄液供給処理では、前記洗浄液供給手段は前記クリーニングローラーを介して前記ワイパーに前記洗浄液を供給する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記排出手段は、ポンプと、前記ポンプと前記パンとを連通させる連通管とを含み、
前記待機処理の実行によって、前記連通管に前記洗浄液が進入した状態が前記排出処理の開始まで継続される請求項1に記載の印刷装置。
【請求項8】
ノズル開口平面で開口するインクノズルを有して、前記インクノズルからインクを吐出する印刷ヘッドを備える印刷装置における清掃方法であって、
前記ノズル開口平面を払拭するワイパーおよび前記ワイパーから落下した液体を回収するパンを一体的に所定の移動方向に移動させる移動手段が、前記ノズル開口平面に接触する前記ワイパーを前記移動方向に移動させることで、前記ノズル開口平面に付着したインクを前記ワイパーによって払拭して前記パンに回収するワイピングを実行する工程と、
前記ワイピングの終了後に、前記移動手段が所定の洗浄位置に前記ワイパーを位置させた状態で前記ワイパーに洗浄液を供給する洗浄液供給処理を実行する工程と、
前記洗浄液供給処理の終了後に、前記ワイパーへの前記洗浄液の供給および前記パンからの液体の排出が停止している状態を維持する待機処理を実行する工程と、
前記待機処理に続いて、前記パンから液体を排出する排出処理を実行する工程と
を備える印刷装置における清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノズル開口平面で開口するインクノズルからインクを吐出する印刷ヘッドのノズル開口平面からインクを払拭するワイパーから落下したインクをパンにより回収する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズル開口平面で開口するインクノズルからインクを吐出する印刷ヘッドを用いて画像を印刷する印刷装置が知られている。かかる印刷装置では、ノズル開口平面を清浄に保つために、ワイピングが適宜実行される。このワイピングでは、ノズル開口平面にワイパーを摺動させることで、ワイパーによってノズル開口平面からインクが払拭される。また、ノズル開口平面から払拭されてワイパーから落下するインクによって印刷装置の内部が汚染されるのを抑止するためには、次のような対策を取ることができる。つまり、ワイパーから落下するインクを受けるパンと、パンに回収されたインクをパンから排出する排出手段とによって対策することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、パンに付着したインクが時間経過に伴って固化したために、排出手段によるパンからのインクの排出が難しくなる場合がった。そこで、例えば特許文献1に示されるように、洗浄液を用いることが考えられる。つまり、特許文献1では、インクが付着するヘッドキャップに付着したインクを排出するために、ヘッドキャップへの洗浄液の供給と、キャップ部材からの洗浄液の排出とが連続して実行される。ただし、固化したインクを十分に溶解させることは容易ではない。そこで、特許文献1では、ヘッドキャップに対する洗浄液の供給と排出とが繰り返し実行される。このような方法によれば、十分な量の洗浄液を供給することで、固化したインクの溶解を促進できる一方、洗浄液が大量に消費されてしまうといった問題が生じうる。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、印刷ヘッドのノズル開口平面からインクを払拭するワイパーから落下したインクを回収するパンに供給する洗浄液の量を抑えつつ、固化したインクをパンから排出することを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る印刷装置は、ノズル開口平面で開口するインクノズルを有して、インクノズルからインクを吐出する印刷ヘッドと、ノズル開口平面を払拭するワイパーと、ワイパーから落下した液体を回収するパンと、ワイパーおよびパンを一体的に所定の移動方向に移動させる移動手段と、所定の洗浄位置に位置するワイパーに対して洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、パンから液体を排出する排出手段とを備え、移動手段がノズル開口平面に接触するワイパーを移動方向に移動させることで、ノズル開口平面に付着したインクをワイパーによって払拭してパンに回収するワイピングが実行され、ワイピングの終了後に、移動手段が洗浄位置にワイパーを位置させた状態で洗浄液供給手段がワイパーに洗浄液を供給する洗浄液供給処理が実行され、洗浄液供給処理の終了後に、洗浄液供給手段による洗浄液の供給および排出手段によるパンからの液体の排出が停止している状態を維持する待機処理が実行され、待機処理に続いて、排出手段によってパンから液体を排出する排出処理が実行される。
【0007】
本発明に係る印刷装置における清掃方法は、ノズル開口平面で開口するインクノズルを有して、インクノズルからインクを吐出する印刷ヘッドを備える印刷装置における清掃方法であって、ノズル開口平面を払拭するワイパーおよびワイパーから落下した液体を回収するパンを一体的に所定の移動方向に移動させる移動手段が、ノズル開口平面に接触するワイパーを移動方向に移動させることで、ノズル開口平面に付着したインクをワイパーによって払拭してパンに回収するワイピングを実行する工程と、ワイピングの終了後に、移動手段が所定の洗浄位置にワイパーを位置させた状態でワイパーに洗浄液を供給する洗浄液供給処理を実行する工程と、洗浄液供給処理の終了後に、ワイパーへの洗浄液の供給およびパンからの液体の排出が停止している状態を維持する待機処理を実行する工程と、待機処理に続いて、パンから液体を排出する排出処理を実行する工程とを備える。
【0008】
このように構成された本発明(印刷装置および印刷装置における清掃方法)では、ノズル開口平面に接触するワイパーを移動方向に移動させることで、ノズル開口平面に付着したインクをワイパーによって払拭してパンに回収するワイピングが実行される。このワイピングの終了後に、ワイパーに洗浄液を供給する洗浄液供給処理が実行される。この洗浄液供給処理によって、ワイパーに付着したインクを洗浄液とともに洗い流して、ワイパーを清掃することができる。さらに、この洗浄液供給処理でワイパーに供給された洗浄液は、ワイパーから落下してパンに回収される。こうして、パンには、洗浄液が貯留されることとなる。そして、ワイパーへの洗浄液の供給およびパンからの液体の排出が停止している状態を維持する待機処理を実行してから、パンから液体(洗浄液・インク)を排出する排出処理が実行される。つまり、洗浄液をパンに継続的に供給するのではなく、パンに貯留された洗浄液にインクが溶解するのを待機することで、洗浄液の供給量を抑えつつインクを溶解させることができる。しかも、ワイパーの清掃のためにワイパーに供給された洗浄液がパンに貯留されて、インクの溶解に再利用されており、洗浄液の供給量の抑制が効果的に図られている。その上で、パンから液体を排出する排出処理が実行される。その結果、印刷ヘッドのノズル開口平面からインクを払拭するワイパーから落下したインクを回収するパンに供給する洗浄液の量を抑えつつ、固化したインクをパンから排出することが可能となっている。
【0009】
また、洗浄位置は、移動方向において印刷ヘッドの一方側に設けられ、移動手段が移動方向において印刷ヘッドの他方側に設けられた原点位置から洗浄位置にワイパーを移動させることでワイピングが実行され、洗浄液供給処理では、ワイピングの実行に伴って洗浄位置に到達したワイパーに洗浄液が供給され、待機処理では、ワイパーを洗浄位置から原点位置に移動させる移動方向原点復帰が実行されるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、少なくとも移動方向原点復帰に要する期間は、パンに貯留された洗浄液のインクへの溶解が待機される。その結果、パンに供給する洗浄液の量を抑えつつ、固化したインクをパンから排出することが可能となっている。
【0010】
また、ワイパーおよびパンと一体的に移動方向に移動するキャップ部材をさらに備え、ワイパーが原点位置に位置する状態において、キャップ部材はノズル開口平面に下側から対向し、待機処理では、移動方向原点復帰の終了後に、ノズル開口平面に対向するキャップ部材を印刷ヘッドに当接させるキャッピングが実行されるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では。少なくともキャッピングに要する期間は、パンに貯留された洗浄液のインクへの溶解が待機される。その結果、パンに供給する洗浄液の量を抑えつつ、固化したインクをパンから排出することが可能となっている。
【0011】
また、ワイパーがノズル開口平面に下側から接触するワイピング高さと、ワイピング高さより低い原点高さとの間で、ワイパーを昇降させる昇降手段をさらに備え、ワイピングでは、昇降手段は、ワイパーをワイピング高さに位置させ、待機処理では、移動方向原点復帰の開始前に、昇降手段がワイパーを原点高さに下降させる高さ方向原点復帰が実行されるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、少なくとも高さ方向原点復帰に要する期間は、パンに貯留された洗浄液のインクへの溶解が待機される。その結果、パンに供給する洗浄液の量を抑えつつ、固化したインクをパンから排出することが可能となっている。
【0012】
また、ワイピングの終了後に、排出手段によってパンから液体を排出するプレ排出処理が実行され、プレ排出処理は、洗浄液供給処理と並行して実行され、洗浄液供給処理の終了より前に終了するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、パンから排出されたインクが排出手段の内部に付着して固化した場合であっても、プレ排出処理によって洗浄液を排出手段の内部に引き込んで、当該インクを溶解させることができる。
【0013】
また、洗浄位置に位置するワイパーに接触するクリーニングローラーをさらに備え、洗浄液供給処理では、洗浄液供給手段はクリーニングローラーを介してワイパーに洗浄液を供給するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、クリーニングローラーおよびワイパーを介してパンに洗浄液が供給される。そのため、洗浄液供給手段により供給される洗浄液の一部は、ワイパーに到達せずにクリーニングローラーによって吸収・保持される。この際、洗浄液の供給量が多いと、クリーニングローラーに多量の洗浄液が保持されることとなる。そのため、衝撃や振動などによって洗浄液がクリーニングローラーから飛散して、印刷装置の内部を汚染するといった問題が発生するおそれがある。これに対して、本発明では、洗浄液の供給量が抑えられているため、かかる問題の発生を抑制することができる。
【0014】
また、排出手段は、ポンプと、ポンプとパンとを連通させる連通管とを含み、待機処理の実行によって、連通管に洗浄液が進入した状態が排出処理の開始まで継続されるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、排出手段の連通管の内部で固化したインクを、待機処理によって洗浄液に溶解させることができ、連通管を清浄に保つことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、印刷ヘッドのノズル開口平面からインクを払拭するワイパーから落下したインクを回収するパンに供給する洗浄液の量を抑えつつ、固化したインクをパンから排出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る印刷装置の一例を模式的に示す正面図。
【
図3】メンテナンス部の構成を模式的に示す斜視図。
【
図4】メンテナンス部の機能を説明するための模式図。
【
図6】ヘッドユニットの構造および動作を示す側面図。
【
図8A】洗浄液を供給する洗浄液供給機構を模式的に示す図。
【
図8B】
図8Aの洗浄液供給機構において洗浄液の吐出に使用される洗浄液ノズルの構成を模式的に示す図。
【
図10】印刷装置の制御部の構成の一例を示すブロック図。
【
図11】印刷装置で実行されるメンテナンスの一例を示すフローチャート。
【
図12】
図11のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図。
【
図13A】
図11のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図。
【
図13B】
図11のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図。
【
図13C】
図11のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図。
【
図13D】
図11のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図。
【
図13E】
図11のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図。
【
図13F】
図11のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図。
【
図13G】
図11のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図。
【
図13H】
図11のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図。
【
図13I】
図11のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図。
【
図13J】
図11のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図。
【
図13K】
図11のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図。
【
図14】
図11のフローチャートに従って動作が実行されるタイミングを模式的に示すタイミングチャート。
【
図15】メンテナンスの変形例において動作が実行されるタイミングを模式的に示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明に係る印刷装置の一例を模式的に示す正面図である。
図1および以下の図では、水平方向であるX方向、X方向に直交する水平方向であるY方向および鉛直方向であるZ方向を適宜示す。印刷装置1は、ロール・トゥ・ロールで長尺帯状のウェブ(基材)Wを筐体100内で搬送しつつ、インクジェット方式でウェブWにインクを吐出することで、ウェブWに画像を印刷する。ウェブWの素材は紙あるいはフィルムであり、ウェブWは可撓性を有する。印刷装置1は、装置全体を統括的に制御する制御部10を備え、ウェブWに対する印刷動作のために要する制御は制御部10によって実行される。この制御部10はCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成される。
【0018】
印刷装置1は、ウェブWを搬送する搬送部2を備える。搬送部2は、操出ローラー21と巻取ローラー22とを有し、操出ローラー21が繰り出すウェブWを巻取ローラー22により巻き取ることで、ロール・トゥ・ロールでウェブWを搬送する。この搬送部2は、操出ローラー21から繰り出されたウェブWを取り込む取り込み部23を、操出ローラー21と巻取ローラー22との間に備える。取り込み部23は、2本の駆動ローラー231と、2本のニップローラー232と、2本の駆動ローラー231の間に設けられたエッジ位置調整部234とを有する。各駆動ローラー231はウェブWを巻き掛けつつモーターの駆動力によって回転することで、ウェブWを駆動する。2本のニップローラー232はそれぞれ2本の駆動ローラー231に対応して設けられ、各ニップローラー232は対応する駆動ローラー231との間にウェブWを挟む。エッジ位置調整部234は、ウェブWの幅方向であるX方向において、ウェブWの端の位置を調整する。
【0019】
また、搬送部2は、取り込み部23と巻取ローラー22との間でウェブWを支持する複数の支持ローラー24を有する。これら支持ローラー24は、インクジェット方式でインクが吐出されるウェブWを下方から支持しつつ、ウェブWをY方向へ搬送する。特に、複数の支持ローラー24は、ウェブWの搬送方向(Y方向)の下流側の支持ローラー24ほど高い位置に位置するように、傾斜して配列されている。したがって、これら支持ローラー24によって搬送されるウェブWは、Y方向へ向かうに連れて上昇するように傾斜して搬送される。
【0020】
さらに、搬送部2は、これら支持ローラー24と巻取ローラー22との間でウェブWを支持する複数の支持ローラー25と、これら支持ローラー25と巻取ローラー22との間に配置された乾燥部26を有する。乾燥部26はヒートドラム261と、ヒートドラム261から巻取ローラー22へ向かうウェブWを支持する支持ローラー262とを有する。ヒートドラム261はウェブWの搬送に応じて回転駆動され、内蔵するヒータによってウェブWを加熱することでウェブWを乾燥させる。また、搬送部2は、乾燥部26から巻取ローラー22へ向かうウェブWを支持する複数の支持ローラー27を有する。さらに、搬送部2は、これら支持ローラー27と巻取ローラー22との間に配置された駆動ローラー281とニップローラー282とを有する。駆動ローラー281は、ウェブWを巻き掛けつつモーターの駆動力によって回転することで、ウェブWを駆動する。ニップローラー282は駆動ローラー281との間にウェブWを挟む。
【0021】
このように、搬送部2は複数のローラーの組み合わせによりウェブWの搬送経路を形成し、該搬送経路に沿ってウェブ2を搬送する。搬送経路の大部分は筐体100内の内部空間SPに形成されるが、その一部、例えば繰出ローラー21および巻取ローラー22の少なくとも一方については筐体100の外部に設けられてもよい。こうすることで、繰出ローラー21および巻取ローラー22に対するロール状ウェブWの取り付けおよび取り外しの作業性を高めることができる。
【0022】
印刷装置1は、筐体100内で複数の支持ローラー24によって支持されるウェブWに上方から対向する複数のヘッドユニット3を有する。詳しくは後述するが、各ヘッドユニット3は、下部に設けられた吐出口(ノズル)からインクを下向きに吐出し、下方を搬送されるウェブWに該インクを付着させる印刷ヘッド30を備えている。例えば各ヘッドユニット3に設けられる印刷ヘッド30が互いに異なる色のインクを吐出することで、カラー印刷が実現される。この例では搬送経路に沿って6個のヘッドユニット3が配置されるが、ヘッドユニット3の配設数はこれに限定されず任意である。また、各印刷ヘッド30から吐出されるインクの種類の組み合わせも任意である。
【0023】
図2は印刷ヘッド30の構成を模式的に示す底面図である。印刷ヘッド30は、複数(この例では5個)のノズルブロック31を有する。複数のノズルブロック31はいわゆる千鳥配置でX方向に2行に配列されている。換言すれば、X方向に平行に配列された3個のノズルブロック31からなるノズルブロック列C1と、X方向に平行に配列された2個のノズルブロック31からなるノズルブロック列C2とがY方向に所定の間隔で設けられている。各ノズルブロック31は、ウェブWに上側から対向するノズル開口平面31Pを有し、ノズル開口平面31Pでは複数のノズルNが開口する。複数のノズルNは、X方向に千鳥状に配列され、ウェブWにインクジェット方式でインクを吐出する。また、印刷ヘッド30は、各ノズルブロック31を保持する保持部材32を有する。保持部材32は、複数のノズルブロックに対応して穿設された複数の挿入孔321を有し、複数のノズルブロック31のそれぞれ対応する挿入孔321に挿入された状態で、保持部材32に固定される。かかる保持部材32は、金属あるいは樹脂といった非弾性部材で構成することができる。
【0024】
図1に示すように、複数の支持ローラー24によって支持されるウェブWの傾斜に応じて、複数のヘッドユニット3それぞれの姿勢が設定される。つまり、複数のヘッドユニット3のうち、ウェブWの搬送方向の上流側のヘッドユニット3ほどZ方向に対する傾きが大きくなるように、各ヘッドユニット3が配置されている。ただし、ウェブWの搬送方向(Y方向)の最下流のヘッドユニット3は水平に配置されており、Z方向に対して傾いておらず、当該最下流のヘッドユニット3以外のヘッドユニット3が、ウェブWの搬送方向に向かって高くなるように傾く。
【0025】
また、各ヘッドユニット3には、次に説明するように、印刷ヘッド30の下部を覆うようにメンテナンス部50が設けられている。その役割は、印刷ヘッド30のノズルNを清浄に保つとともにその目詰まりを防止し、必要なときに印刷ヘッド30を速やかに印刷動作に供することができるような状態を維持することである。なお、
図1に示すように各ヘッドユニット3は異なる傾き角で配置されるものの、その構成自体は基本的に同じとすることが可能である。そこで、以下におけるヘッドユニット3の説明では、それらのヘッドユニット3を特に区別しない。
【0026】
図3はメンテナンス部50の構成を模式的に示す斜視図である。また、
図4はメンテナンス部50の機能を説明するための模式図であり、
図4の(a)~(c)において、メンテナンス部50はその断面により示されている。なお、両図および以下の図では、X方向の矢印側に向かう(+X)方向および当該(+X)方向の逆側に向かう(-X)方向を適宜示す。メンテナンス部50は、複数のヘッドユニット3のそれぞれにおいて設けられる。ただし、メンテナンス部50の姿勢を除いて、メンテナンス部50の構成は複数のヘッドユニット3で共通する。したがって、以下では、1つのメンテナンス部50について説明を行う。
【0027】
メンテナンス部50は、X方向に長尺な直方体形状を有するベース部材51を有する。このベース部材51には、印刷ヘッド31から吐出されるインクや各種の処理液を受け止めるため、上部が開口する箱型のバット52,57が取り付けられている。バット52およびバット57はX方向に配列されており、大きい方のバット52は、小さい方のバット57の(+X)方向側に配置されている。
【0028】
バット52は、平面視において矩形を有する底板521と、底板521の周縁部から立設された側壁522とを有する。側壁522は、平面視において矩形を有する枠体である。側壁522の上端の全周には弾性部材523が取り付けられている。こうして、バット52では、底板521と側壁522で囲まれて上側に開口する貯留室524が設けられている。バット52の底板521には、複数のキャップ53が配置されている。複数のキャップ53は、印刷ヘッド30における複数のノズルブロック31にそれぞれ対応して配置され、X方向に千鳥状に配列されている。キャップ53は、ノズルブロック31の外形に対応して箱型に形成されたキャップ本体531を有し、キャップ本体531は、上側(ノズルブロック31側)に向かって開口する貯留室531aを有する。さらに、キャップ53は、貯留室531aの開口を取り囲むシール部材532を有する。シール部材532は概略矩形環状に形成された例えばゴム製の部品である。また、メンテナンス部50は、各キャップ53に対応して設けられた弾性部材56を有し、各弾性部材56は対応するキャップ53をバット52の底板521に対して上側へ付勢する。この弾性部材56は例えば圧縮ばねである。
【0029】
なお、
図6を用いて後述するように、メンテナンス部50は、印刷ヘッド30に下側から対向するメンテナンス位置Lmと、メンテナンス位置Lmから(+X)方向側に退避する退避位置Leとの間でX方向に移動する。メンテナンス部50がメンテナンス位置Lmに位置する状態では、
図4(a)あるいは(b)に示すように、複数のキャップ53のそれぞれは、対応するノズルブロック31に下側から対向する。さらに、メンテナンス部50の複数のキャップ53に対して、印刷ヘッド30はZ方向に移動可能である。具体的には、キャップ53から離間する退避高さHe(
図4(a)あるいは(c))と、キャップ53に当接する退避高さHeより低いキャッピング高さHc(
図4(b))との間で印刷ヘッド30はZ方向に移動する。
【0030】
図4(b)に示すように、印刷ヘッド30がキャッピング高さHcに位置することで、各ノズルブロック31の周囲がキャップ53により覆われる。具体的には、シール部材532の内側にノズルブロック31が位置した状態で、シール部材532が印刷ヘッド30に当接する(キャッピング)。このキャッピングでは、シール部材532は、弾性部材56の付勢力によって印刷ヘッド30に押圧されて、弾性的に変形する。こうして、シール部材532によってノズルブロック31の周囲空間が閉塞されて、ノズルブロック31の各ノズルN(
図2)の周辺におけるインクの乾燥が抑制される。また、キャッピングが実行された状態で、各ノズルNからインクを吐出させるパージ処理を行うことができる。ちなみに、キャッピングおよびパージ処理のそれぞれは、キャップ53の貯留室531aに洗浄液Qが貯留された状態で実行される。キャップ53へ洗浄液Qを供給する動作は後に詳述する。さらに、
図4(b)の状態において、バット52の弾性部材523は印刷ヘッド30の下面に当接する。なお、パージ処理は、キャッピングが実行されていない状態、すなわち、シール部材532が印刷ヘッド30から離隔した状態で行うことも可能である。
【0031】
バット57は、平面視において矩形を有する底板571と、底板571の周縁部から立設された側壁572とを有する。側壁572は、平面視において矩形を有する枠体である。こうして、バット57では、底板571と側壁572で囲まれて上側に開口する貯留室573が設けられている。このバット57の底板571には、Y方向に配列された2個の昇降機構58が配置されている。さらに、2個の昇降機構58に対応して2個のワイパーブレード59が設けられており、各昇降機構58は対応するワイパーブレード59をZ方向に移動させる。これら2個のワイパーブレード59は、2列のノズルブロック列C1、C2に対応して設けられ、各ワイパーブレード59は、ノズルブロック列C1、C2のうち対応する一のノズルブロック列を構成するノズルブロック31に対してワイピングを実行する。
【0032】
2個のワイパーブレード59によるワイピングの実行態様は共通するため、ここでは、1個のワイパーブレード59によるワイピングについて
図4(c)を示しつつ説明する。
図4(c)では、ノズルブロック列C1に属する3個のノズルブロック31にワイパーブレード59がワイピングを行う様子が示される。印刷ヘッド30は退避高さHeに位置し、ワイパーブレード59は、ノズルブロック31のノズル開口平面31Pにワイピングを実行するためのワイピング高さZwに、昇降機構58によって位置決めされている。ワイピング高さZwに位置するワイパーブレード59の上端は、ノズルブロック31のノズル開口平面31Pより僅かに上側に位置する。また、キャップ53は印刷ヘッド30から下側に離間している。かかる状態において、メンテナンス部50が(+X)方向に移動することで、ワイパーブレード59の上端がノズルブロック31のノズル開口平面31Pに摺動される(ワイピング)。これによって、ノズル開口平面31Pに付着するインクがワイパーブレード59によって払拭されて、バット57の貯留室573に落下する。ワイパーブレード59によるワイピングは、3個のノズルブロック31それぞれのノズル開口平面31Pに対して、(+X)方向の上流側から順番に実行される。
【0033】
次に、ヘッドユニット3の構造について、
図5および
図6を参照してより詳しく説明する。
図5はヘッドユニットの構造を示す斜視図である。より詳しくは、
図5(a)がヘッドユニット3の外観を示す斜視図であり、
図5(b)はヘッドユニット3のフレーム70を示す外観斜視図である。ヘッドユニット3は、
図5(b)に示すフレーム70に各種の部品が取り付けられた構造を有している。これらの部品により遮蔽されるフレーム構造を明確に表すために、主要部品を組み付ける前のフレーム70にいくつかの部品を取り付けたときの構造を、
図5(b)に示している。また、
図6はヘッドユニットの構造および動作を示す側面図である。
【0034】
図5(b)に示すように、フレーム70は、X方向を長手方向として平行に延びる1対のフレーム部材71の間を、Y方向に延びるいくつかの横架部材72により結合した構造を有している。フレーム部材71の形状と、横架部材72の形状、配置、配設数等とについては図示に限定されず任意である。ただし、後述するように、対向配置されたフレーム部材71の間をメンテナンス部50が往復動するため、この移動を妨げない構造とすることが望ましい。
【0035】
フレーム部材71の(-X)方向側では、2つの横架部材72(72a,72b)がX方向に所定の間隔を空けて配置されている。この間隔は、印刷ヘッド30のX方向長さより大きい。これらの横架部材72a,72bの上面には、印刷ヘッド30を昇降可能に支持するためのヘッド支持側板73,73が取り付けられている。
【0036】
具体的には、
図6(a)に示すように、ヘッド支持側板73,73には昇降機構74,74がそれぞれ設けられている。昇降機構74は例えばボールねじ機構であり、上下方向に延設されたボールねじ741と、これを回転駆動するモーター742と、ボールねじ741に係合されたナットを有する昇降ブロック743とを備えている。昇降ブロック743は印刷ヘッド30のX方向両端部に取り付けられている。したがって、制御部10からの制御指令に応じてモーター742,742が同調して回転することにより、昇降ブロック743,743が昇降し、これにより印刷ヘッド30がフレーム部材71に対して昇降する。
【0037】
図5(b)に示すように、1対のフレーム部材71の互いに対向する面には、X方向に延びるガイドレール751が取り付けられている。このガイドレール751に対し、スライダー752がX方向に移動自在に係合されるとともに、スライダー752をガイドレール751に沿ってX方向に駆動する駆動源としてのモーター753が結合されている。このスライダー752にメンテナンス部50が取り付けられる。
【0038】
したがって、制御部10からの制御指令に応じてモーター753が作動することにより、メンテナンス部50は、
図6(a)および
図6(b)に示すように、1対のフレーム部材71の間をガイドレール751に沿ってX方向に移動する。つまり、ガイドレール751、スライダー752およびモーター753は、メンテナンス部50をX方向に移動させる直動機構75として機能している。このような直動機構75としては、例えばリニアモーター、ボールねじ機構、エアシリンダー、ベルトドライブ機構等の適宜のものを選択して用いることが可能である。
【0039】
このような構造を有するヘッドユニット3においては、モーター742によって印刷ヘッド30のZ方向への位置(すなわち、高さ)を変更できる。つまり、印刷ヘッド30は、メンテナンス部50の移動範囲から上側に退避した退避高さHe(
図6(a)、(b))と、退避高さHeより下側に設けられてウェブWに近接する印刷高さHp(
図6(c))との間でZ方向に移動する。ウェブWに印刷を行うためにウェブWにインクを吐出する印刷動作時には、印刷ヘッド30は印刷高さHpに位置する。一方、メンテナンス部50のX方向への移動時には、印刷ヘッド30は退避高さHeに位置する。また、
図4を示しつつ上述したように、キャッピング時には、印刷ヘッド30はキャッピング高さHcに位置する。さらに、モーター753によってメンテナンス部50をX方向に駆動することで、退避高さHeに位置するメンテナンス部50に下側から対向するメンテナンス位置Lm(
図6(a))と、メンテナンス位置Lmから(+X)方向側に退避する退避位置Le(
図6(b))との間で、メンテナンス部50を移動させることができる。
【0040】
図5に戻って、ヘッドユニット3の説明を続ける。フレーム部材71の(+X)方向側には、電装ボックス76が取り付けられている。電装ボックス76には、印刷ヘッド30および直動機構75を制御するための制御回路や印刷ヘッド30に向けてインクを送出するポンプ、これらに電力を供給する電源回路等、当該ヘッドユニット3を適正に動作させるための各種の機器が収容されている。これらを備える電装ボックス76を印刷ヘッド30と一体的にフレーム部材71に取り付けることにより、印刷ヘッド30への配管やケーブル類の長さを抑えて安定的な動作を実現することができる。
【0041】
ヘッドユニット3ではさらに、印刷ヘッド30の(+X)方向側にクリーニング部80が設けられている。後述するように、クリーニング部80は、メンテナンス部50に設けられたキャップ53およびワイパーブレード59を払拭しこれらに残留付着するインクを除去する目的で設けられている。
【0042】
図7はクリーニング部80の構成を示す図である。
図7(a)および
図7(b)に示すように、クリーニング部80は、メンテナンス部50が(+X)方向に移動するときの移動経路上に配置されるクリーニングローラー81を有する。
図7(b)に一点鎖線で示すように、Y方向におけるクリーニングローラー80の長さは、クリーニング対象物であるキャップ53およびワイパーブレード59のY方向における分布範囲の全体を含むように設定される。さらに、高さ方向においては、クリーニングローラー80は、メンテナンス部50が(+X)方向に移動するときのキャップ53およびワイパーブレード59各々の上端の軌跡と重なるように配置される。
【0043】
クリーニングローラー81は、その外周面に表面層811を有する。表面層811は、多孔質部材であるスポンジであり、液体を保持する保液性および弾性を有する。具体的には、クリーニングローラー81は、Y方向に平行な円筒形状を有する金属製の芯金812を有し、芯金812の周囲に円筒形状の表面層811が配置されている。芯金812の中心と同軸に回転軸813が設けられ、回転軸813の両端が一対の軸受部材82,82により回転自在に軸支される。軸受部材82については、フレーム部材71およびこれと一体的に結合された部材のいずれかに固定される。
図7(c)に示す例では、1対のヘッド支持側板73のうち(+X)方向側に配置されたヘッド支持側板73の(+X)方向側の側面に、軸受部材82を取り付けるための一対の突出部731,731が設けられている。そして、一対の突出部731,731に対して、一対の軸受部材82,82が例えばねじ等の締結部材83により締結される。このような構造によれば、クリーニング部80は、印刷ヘッド30と一体的にX方向に移動する。なお、固結部材83を突出部731に対して着脱自在とした場合、クリーニングローラー81のヘッド支持側板73に対する交換が容易になる。
【0044】
図8Aは洗浄液を供給する洗浄液供給機構9を模式的に示す図であり、
図8Bは
図8Aの洗浄液供給機構9において洗浄液の吐出に使用される洗浄液ノズルの構成を模式的に示す図である。洗浄液供給機構9は、洗浄液貯留部91と、洗浄液貯留部91から吸引した洗浄液Qを送液する送液部92と、送液部92によって洗浄液貯留部91から送られてきた洗浄液Qを吐出する洗浄液吐出部93とを有する。洗浄液貯留部91は、一対のヘッド支持側板73の(-X)方向側に配置された貯留タンク911を有し、貯留タンク911内に洗浄液Qが貯留される。
【0045】
送液部92は、一対のヘッド支持側板73の(-X)方向側から(+X)方向側まで延設された送液配管921を有する。一対のヘッド支持側板73の(-X)方向側に配置された送液配管921の一端には吸引口922が開口する。送液配管921のこの一端は、貯留タンク911内に挿入されており、送液配管921の吸引口922は、貯留タンク911に貯留される洗浄液Q内で開口する。また、一対のヘッド支持側板73の(+X)方向側に配置された送液配管921の他端には排出口923が開口する。さらに、送液部92は、送液配管921に取り付けられた送液ポンプ924を有し、送液ポンプ924は、吸引口922から排出口923に向けて送液配管921内の洗浄液Qを駆動する。したがって、送液ポンプ924が洗浄液Qを駆動すると、貯留タンク911内に貯留された洗浄液Qが吸引口922から送液配管921内に吸引されて、送液配管921によって排出口923まで送られる。
【0046】
洗浄液吐出部93は、一対のヘッド支持側板73の(+X)方向側に配置されている。この洗浄液吐出部93は、送液配管921の排出口923に取り付けられた電磁弁94を有する。電磁弁94は、流入ポート940および出力ポート941を有し、電磁弁94の流入ポート940に送液配管921の排出口923が取り付けられている。この電磁弁94は、流入ポート940と出力ポート941とを流路接続する接続動作と、流入ポート940と出力ポート941とを遮断する遮断動作を実行する。また、洗浄液吐出部93は、電磁弁94の出力ポート941に接続された一端を持つ配管931と、配管931の他端に接続された洗浄液ノズル951とを有する。洗浄液ノズル951は、クリーニングローラー81に上側から対向する。
図8Bに示すように、洗浄液ノズル951は、Y方向に延設された吐出口951aを有する。この吐出口951aは、クリーニングローラー81に上側から対向し、当該クリーニングローラー81に洗浄液Qを吐出する。かかる洗浄液供給機構9では、送液ポンプ924が洗浄液Qを駆動しつつ、電磁弁94が接続動作を実行することで、洗浄液ノズル951からクリーニングローラー81に向けて洗浄液Qが吐出される。
【0047】
ところで、上述の通り、メンテナンス部50では、バット57が設けられている。これに対して、ヘッドユニット3では、バット57に貯留された液体(インク・洗浄液)をバット57から排出する液体排出機構97(
図9A)が具備されている。
【0048】
図9Aは液体排出機構97の第1例を模式的に示す図である。
図9Aに示すように、バット57の底板571には、貯留室573に連通する排出口57hが貫通しており、液体排出機構97は、排出口57hを介してバット57の貯留室573から液体を排出する。具体的には、液体排出機構97は、バット57から排出された液体を貯留する貯留タンク971と、バット57の貯留室573から貯留タンク971に液体を送る送液配管972とを有する。送液配管972の一端には、吸引口973が開口する。送液配管972のこの吸引口973は、バット57の排出口57hに流路接続されている。また、送液配管972の他端には、排出口974が開口する。送液配管972のこの他端は、貯留タンク971内に挿入されており、送液配管972の排出口974は、貯留タンク971内で開口する。
【0049】
さらに、液体排出機構97は、送液配管972に取り付けられた排液ポンプ975を有し、排液ポンプ975は、吸引口973から排出口974に向けて送液配管972内の液体を駆動する。したがって、排液ポンプ975が液体を駆動すると、バット57の貯留室573に貯留された液体が排出口57hから吸引口973を介して送液配管972内に吸引されて、送液配管972によって排出口974まで送られる。そして、排出口974に到達した液体は、排出口974から貯留タンク971内に排出される。
【0050】
なお、液体排出機構97の具体的構成は、
図9Aに示す例に限られず、
図9Bに示す例のように液体排出機構97を構成してもよい。
図9Bは液体排出機構の第2例を模式的に示す図である。
図9Aの第1例と
図9Bの第2例との違いは、バット57の排出口57hの位置のみである。つまり、
図9Bの第2例では、排出口57hは、バット57の側壁572を貫通するように設けられ、液体排出機構97の送液配管972の吸引口973は、この排出口57hに流路接続される。
【0051】
図10は印刷装置の制御部の構成の一例を示すブロック図である。プロセッサである制御部10は、所定のプログラムを実行することで、モーター制御部11、モーター制御部12、昇降機構制御部13、送液ポンプ制御部14、電磁弁制御部15、排液ポンプ制御部16およびヘッド制御部17のそれぞれを内部に構成する。モーター制御部11は、印刷ヘッド30をZ方向に駆動するモーター742を制御する。モーター制御部12は、メンテナンス部50をX方向に駆動するモーター753を制御する。昇降機構制御部13は、ワイパーブレード59をZ方向に駆動する昇降機構58を制御する。送液ポンプ制御部14は、貯留タンク911から洗浄液吐出部93に洗浄液Qを送る送液ポンプ924を制御する。電磁弁制御部15は、電磁弁94の開閉を制御することで上記の接続動作および遮断動作の一方を選択的に電磁弁94に実行させる。排液ポンプ制御部16は、バット57から液体を排出する排液ポンプ975を制御する。ヘッド制御部17は、印刷ヘッド30を制御することで、印刷ヘッド30に所定の動作を実行させる。
【0052】
図11は印刷装置で実行されるメンテナンスの一例を示すフローチャートであり、
図12および
図13A~
図13Kは
図11のフローチャートに従って実行される動作を模式的に示す図であり、
図14は
図11のフローチャートに従って動作が実行されるタイミングを模式的に示すタイミングチャートである。
図11のメンテナンスは、制御部10の制御によって実行される。
【0053】
図11のメンテナンスの開始時には、
図13Aに示すように、印刷ヘッド30はキャッピング高さHcに位置し、メンテナンス部50はメンテナンス位置Lmに停止している(
図13A)。つまり、印刷ヘッド30に対してはキャップ53によるキャッピングが実行されており、各キャップ53のシール部材532の内側にノズルブロック31が位置した状態で、各キャップ53のシール部材532が印刷ヘッド30に当接する。また、クリーニングローラー81はメンテナンス部50よりも(+X)方向側に位置している。さらに、ワイパーブレード59は、X方向において、印刷ヘッド30の(-X)方向側に設けられた原点位置Loに位置するとともに、Z方向において原点高さZoに位置する。ここで、原点高さZoは、クリーニングローラー81の表面層811の下端と上端との間のローラー接触範囲R81より下側の位置であり(
図12)、換言すれば、ワイパーブレード59をローラー接触範囲R81より下側に退避させるための位置である。
【0054】
図11のステップS101では、キャッピングが実行された状態で、ヘッド制御部17が印刷ヘッド30にパージ処理を実行させて、印刷ヘッド30の各ノズルNからキャップ53にインクが吐出される。こうして、メンテナンスの開始に伴って、期間T1においてパージ処理が実行される。
【0055】
期間T1におけるパージ処理が終了すると、モーター制御部11は、印刷ヘッド30をキャッピング高さHcから退避高さHeまで上昇させるキャッピング解除をモーター742に実行させる(ステップS102、
図13B)。さらに、ステップS102では、昇降機構制御部13が昇降機構58を制御して、ワイパーブレード59を原点高さZoからワイピング高さZwまで上昇させる(
図13B)。
図12に示すように、ワイピング高さZwのワイパーブレード59の上端は、ローラー接触範囲R81内に位置するとともに、退避高さHeに位置する印刷ヘッド30のノズル開口平面31Pより僅かに上側に位置する。また、
図13Bの状態では、キャップ53のシール部材532の上端は、クリーニングローラー81の下端(一点鎖線)より僅かに上側に位置する。また、弾性部材523の上端は、クリーニングローラー81の下端より僅かに下側に位置する。
【0056】
続いて、モーター制御部11は、メンテナンス位置Lmから退避位置Leへのメンテナンス部50の移動をモーター753に開始させる(ステップS103)。ステップS103で開始されるメンテナンス部50の移動に伴って、X方向に移動するキャップ53のシール部材532にクリーニングローラー81の表面層811が接触する(
図13C、
図13E)。また、クリーニングローラー81は、Y方向に平行な回転軸を中心に回転可能であるため、X方向に移動するシール部材532に従動回転する。こうして、クリーニングローラー81の表面層811によってキャップ53のシール部材532が清掃される。
【0057】
さらに、ステップS103で開始されるメンテナンス部50の移動に伴って、ワイパーブレード59は、原点位置Loから、印刷ヘッド30の(+X)方向側に設けられた洗浄位置LwまでX方向に移動する。さらに、ワイパーブレード59が原点位置Loから洗浄位置Lwに移動する途中において、ワイパーブレード59の上端をノズル開口平面31Pに対してX方向に摺動させるワイピングが実行される(
図13C、
図13D、
図13E)。このワイピングによって、ノズル開口平面31Pに付着するインクがワイパーブレード59によって払拭されて、バット57の貯留室573に落下する。そして、メンテナンス部50が退避位置Leに到着すると(ステップS104で「YES」)、モーター制御部12はモーター753にメンテナンス部50の移動を停止させる。このように、メンテナンス部50の退避位置Leからメンテナンス位置Lmへの移動に伴って、期間T2においてワイピングが実行される。
【0058】
期間T2におけるワイピングが終了して、メンテナンス部50が退避位置Leに停止した状態においては、ワイパーブレード59は、クリーニングローラー81に下側から接触する洗浄位置Lwに停止する(
図13F)。これに対して、ステップS105では、洗浄位置Lwに停止するワイパーブレード59に洗浄液Qを供給する洗浄液供給処理が実行される。つまり、送液ポンプ制御部14が送液ポンプ924に洗浄液Qを駆動させつつ、電磁弁制御部15が電磁弁94に上記の接続動作を実行させることで、洗浄液ノズル951からクリーニングローラー81に洗浄液Qが吐出される(
図13G)。これによって、洗浄液ノズル951から吐出された洗浄液Qがクリーニングローラー81を介してワイパーブレード59に供給される。なお、クリーニングローラー81は保液性を有するため、洗浄液ノズル951から吐出された洗浄液Qの一部は、クリーニングローラー81に吸収・保持される。さらに、ワイパーブレード59から流れ落ちた洗浄液Qは、バット57の貯留室573に貯留される。こうして、期間T3において洗浄液供給処理が実行されることで、バット57の貯留室573には所定量の洗浄液Qが貯留される。
【0059】
また、ワイパーブレード59に洗浄液Qが供給される期間T3に並行して、昇降機構制御部13が昇降機構58によってワイパーブレード59を昇降させる(ステップS105)。これによって、ワイパーブレード59がクリーニングローラー81に接触した状態で、ワイパーブレード59がクリーニングローラー81に対して昇降する。すなわち、ワイパーブレード59がクリーニングローラー81に摺動される。なお、ワイパーブレード59の昇降は、ワイパーブレード59の上端がローラー接触範囲R81に収まる昇降範囲において実行される。
【0060】
期間T3における洗浄液供給処理(ステップS105)が終了すると(
図13H)、昇降機構制御部13は、ワイパーブレード59を原点高さZoまで下降させるワイパー原点復帰を昇降機構58に実行させる(ステップS106)。こうして、期間T4においてワイパー原点復帰が実行されることで、クリーニングローラー81から下側に離間する原点高さZoにワイパーブレード59が位置する(
図13I)。
【0061】
期間T4におけるワイパー原点復帰(ステップS106)が終了すると、モーター制御部12は、退避位置Leからメンテナンス位置Lmにメンテナンス部50を移動させるキャップ原点復帰をモーター753に実行させる(ステップS107)。こうして、期間T5においてキャップ原点復帰が実行されることで、メンテナンス部50の複数のキャップ53がそれぞれに対応する複数のノズルブロック31のノズル開口平面31Pに対向するとともに、ワイパーブレード59は洗浄位置Lwから原点位置Loに移動する(
図13J)。
【0062】
期間T5におけるキャップ原点復帰(ステップS107)が終了すると、モーター制御部11は、印刷ヘッド30を退避高さHeからキャッピング高さHcに下降させるキャッピングをモーター742に実行させる(ステップS108)。こうして、期間T6においてキャッピングが実行されることで、各キャップ53のシール部材532の内側にノズルブロック31が位置した状態で、各キャップ53のシール部材532が印刷ヘッド30に当接する(
図13K)。
【0063】
印刷ヘッド30がキャッピング高さHcに下降して、期間T6におけるキャッピングが完了すると、排液ポンプ制御部16は、バット57の貯留室573から液体(インクおよび洗浄液Q)を排出する排出処理を排液ポンプ975に実行させる(ステップS109)。この排出処理では、排液ポンプ975の能力によって吸引可能な全ての洗浄液Qを、貯留室573から吸引して貯留タンク971に排出する。こうして、期間T7において排出処理が実行されることで、期間T3の洗浄液供給処理でバット57に貯留された洗浄液Qがバット57から排出される。特に、期間T3の洗浄液供給処理が終了してから期間T7の排出処理が開始するまでの待機期間Twにおいては、洗浄液供給機構9による洗浄液Qのバット57への供給および液体排出機構97によるバット57からの液体の排出が停止した状態が維持される。したがって、待機期間Twにおいて、バット57に貯留された洗浄液Qへの固化インクの溶解が図られている。
【0064】
以上に説明する実施形態では、ノズル開口平面31Pに接触するワイパーブレード59(ワイパー)をX方向(移動方向)に移動させることで、ノズル開口平面31Pに付着したインクをワイパーブレード59によって払拭してバット57(パン)に回収するワイピングが実行される(期間T2)。このワイピングの終了後に、ワイパーブレード59に洗浄液Qを供給する洗浄液供給処理が実行される(期間T3)。この洗浄液供給処理によって、ワイパーブレード59に付着したインクを洗浄液Qとともに洗い流して、ワイパーブレード59を清掃することができる。さらに、この洗浄液供給処理でワイパーブレード59に供給された洗浄液Qは、ワイパーブレード59から落下してバット57に回収される。こうして、バット57には、洗浄液Qが貯留されることとなる。そして、ワイパーブレード59への洗浄液Qの供給およびバット57からの液体の排出が停止している状態を維持する待機処理を実行してから(待機期間Tw)、バット57から液体(洗浄液・インク)を排出する排出処理が実行される(期間T7)。つまり、洗浄液Qをバット57に継続的に供給するのではなく、バット57に貯留された洗浄液Qにインクが溶解するのを待機期間Twにおいて待機することで、洗浄液Qの供給量を抑えつつインクを溶解させることができる。しかも、ワイパーブレード59の清掃のためにワイパーブレード59に供給された洗浄液Qがバット57に貯留されて、インクの溶解に再利用されており、洗浄液Qの供給量の抑制が効果的に図られている。その上で、バット57から液体を排出する排出処理が実行される。その結果、印刷ヘッド30のノズル開口平面31Pからインクを払拭するワイパーブレード59から落下したインクを回収するバット57に供給する洗浄液Qの量を抑えつつ、固化したインクをバット57から排出することが可能となっている。
【0065】
また、洗浄位置Lwは、X方向において印刷ヘッド30の(+X)方向側(一方側)に設けられ、モーター753(移動手段)がX方向において印刷ヘッド30の(-X)方向側(他方側)に設けられた原点位置Loから洗浄位置Lwにワイパーブレード59を移動させることでワイピングが実行される(期間T2)。また、洗浄液供給処理(期間T3)では、ワイピングの実行に伴って洗浄位置Lwに到達したワイパーブレード59に洗浄液Qが供給される。そして、待機処理(期間Tw)では、ワイパーブレード59を洗浄位置Lwから原点位置Loに移動させるキャップ原点復帰(移動方向原点復帰)が実行される(期間T5)。かかる構成では、少なくともキャップ原点復帰に要する期間T5は、バット57に貯留された洗浄液Qのインクへの溶解が待機される。その結果、バット57に供給する洗浄液Qの量を抑えつつ、固化したインクをバット57から排出することが可能となっている。
【0066】
また、ワイパーブレード59およびバット57と一体的にX方向に移動するキャップ53(キャップ部材)が設けられており、ワイパーブレード59が原点位置Loに位置する状態において、キャップ53はノズル開口平面31Pに下側から対向する(
図13J)。そして、待機処理(待機期間Tw)では、キャップ原点復帰の終了後に、ノズル開口平面31Pに対向するキャップ53を印刷ヘッド30に当接させるキャッピングが実行される(
図13K、期間T6)。かかる構成では。少なくともキャッピングに要する期間T6は、バット57に貯留された洗浄液Qのインクへの溶解が待機される。その結果、バット57に供給する洗浄液Qの量を抑えつつ、固化したインクをバット57から排出することが可能となっている。
【0067】
また、ワイパーブレード59がノズル開口平面31Pに下側から接触するワイピング高さZwと、ワイピング高さZwより低い原点高さZoとの間で、ワイパーブレード59を昇降させる昇降機構58が設けられている。ワイピングでは、昇降機構58は、ワイパーブレード59をワイピング高さZwに位置させる。また、待機処理(待機期間Tw)では、キャップ原点復帰の開始前に、昇降機構58がワイパーブレード59を原点高さZoに下降させるワイパー原点復帰が実行される(期間T4)。かかる構成では、少なくともワイパー原点復帰に要する期間T4は、バット57に貯留された洗浄液Qのインクへの溶解が待機される。その結果、バット57に供給する洗浄液Qの量を抑えつつ、固化したインクをバット57から排出することが可能となっている。
【0068】
また、洗浄位置Lwに位置するワイパーブレード59に接触するクリーニングローラー81が設けられている。そして、洗浄液供給処理(期間T3)では、洗浄液供給機構9(洗浄液供給手段)はクリーニングローラー81を介してワイパーブレード59に洗浄液Qを供給する(
図13G)。かかる構成では、クリーニングローラー81およびワイパーブレード59を介してバット57に洗浄液Qが供給される。そのため、洗浄液供給機構9により供給される洗浄液Qの一部は、ワイパーブレード59に到達せずにクリーニングローラー81によって吸収・保持される。この際、洗浄液Qの供給量が多いと、クリーニングローラー81に多量の洗浄液Qが保持されることとなる。そのため、衝撃や振動などによって洗浄液Qがクリーニングローラー81から飛散して、印刷装置1の内部を汚染するといった問題が発生するおそれがある。これに対して、本実施形態は、洗浄液Qの供給量が抑えられているため、かかる問題の発生を抑制することができる。
【0069】
また、液体排出機構97(排出手段)は、排液ポンプ975(ポンプ)と、排液ポンプ975とバット57とを連通させる送液配管972(連通管)とを含む。そして、待機処理(待機期間Tw)の実行によって、送液配管972に洗浄液Qが進入した状態が排出処理(期間T7)の開始まで継続される。かかる構成では、液体排出機構97の送液配管972の内部で固化したインクを、待機処理(待機期間Tw)によって洗浄液Qに溶解させることができ、送液配管972を清浄に保つことができる。
【0070】
上述の様に、本実施形態では、印刷装置1が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、印刷ヘッド30が本発明の「印刷ヘッド」の一例に相当し、ノズル開口平面31Pが本発明の「ノズル開口平面」の一例に相当し、キャップ53が本発明の「キャップ部材」の一例に相当し、バット57が本発明の「パン」に相当し、昇降機構58が本発明の「昇降手段」の一例に相当し、ワイパーブレード59が本発明の「ワイパー」の一例に相当し、モーター753が本発明の「移動手段」の一例に相当し、クリーニングローラー81が本発明の「クリーニングローラー」の一例に相当し、洗浄液供給機構9が本発明の「洗浄液供給手段」の一例に相当し、液体排出機構97が本発明の「排出手段」の一例に相当し、送液配管972が本発明の「連通管」の一例に相当し、排液ポンプ975が本発明の「ポンプ」の一例に相当し、原点位置Loが本発明の「原点位置」の一例に相当し、洗浄位置Lwが本発明の「洗浄位置」の一例に相当し、ノズルNが本発明の「インクノズル」の一例に相当し、洗浄液Qが本発明の「洗浄液」の一例に相当し、インクおよび洗浄液Qが本発明の「液体」に相当し、X方向が本発明の「移動方向」の一例に相当し、ワイピング(T2)が本発明の「ワイピング」の一例に相当し、洗浄液供給処理(T3)が本発明の「洗浄液供給処理」の一例に相当し、ワイパー原点復帰(T4)が本発明の「高さ方向原点復帰」の一例に相当し、キャップ原点復帰(T5)が本発明の「移動方向原点復帰」の一例に相当し、キャッピング(T6)が本発明の「キャッピング」の一例に相当し、排出処理(T7)が本発明の「排出処理」の一例に相当し、待機処理(Tw)が本発明の「待機処理」の一例に相当し、原点高さZoが本発明の「原点高さ」の一例に相当し、ワイピング高さZwが本発明の「ワイピング高さ」の一例に相当する。
【0071】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、
図11のメンテナンスで実行される動作を
図15に示すように変形してもよい。
図15はメンテナンスの変形例において動作が実行されるタイミングを模式的に示すタイミングチャートである。
図15に示す例が
図14に示す例と異なるのは、所定の期間Tpにおいて、液体排出機構97によってバット57から液体を排出するプレ排出処理が実行される点である。つまり、期間T2におけるワイピングが終了すると、期間Tpにおいてプレ排出処理が実行される。このプレ排出処理の期間Tpは、洗浄液供給処理の期間T3の開始と同時あるいは開始後に開始するとともに、洗浄液供給処理の期間T3の終了より前に終了する。
【0072】
この排出処理では、排液ポンプ制御部16が排液ポンプ975を期間Tpの間だけ動作させることで、バット57の貯留室573に貯留される液体が送液配管972に進入する。この際、プレ排出処理の開始時点では、バット57に貯留される洗浄液Qは少なく、バット57から送液配管972には主としてインクが進入する。また、バット57に供給された洗浄液Qの増加に伴って、バット57から送液配管972に進入する洗浄液Qが増大する。したがって、プレ排出処理(期間Tp)の終了時点では、送液配管972内に多くの洗浄液Qが存在することとなる。この送液配管972内の洗浄液Qは、待機処理(待機期間Tw)において、送液配管972内で固化したインクを溶解させることができる。
【0073】
つまり、
図15の変形例では、ワイピング(期間T2)の終了後に、液体排出機構97(排出手段)によってバット57から液体を排出するプレ排出処理(期間Tp)が実行される。このプレ排出処理(期間Tp)は、洗浄液供給処理(期間T3)と並行して実行され、洗浄液供給処理の終了より前に終了する。したがって、バット57から排出されたインクが液体排出機構97の送液配管972の内部に付着して固化した場合であっても、プレ排出処理(期間Tp)によって洗浄液Qを送液配管972の内部に引き込んで、当該インクを溶解させることができる。
【0074】
また、洗浄液Qの具体的な組成については上述していないが、固化したインクを溶解させる機能を有する種々の液体を洗浄液Qとして使用することができる。例えば、インクの成分のうちの色材以外の成分で構成される液体(換言すれば、色材を有さない透明インク)を洗浄液Qとして使用してもよい。
【0075】
また、キャップ53を清掃する清掃部材の具体的構成を適宜変更してもよい。つまり、クリーニングローラー81に代えて、洗浄液吐出部93から吐出された洗浄液Qを保持できるブラシ(保液部材)を配置してもよい。
【0076】
また、クリーニングローラー81に対してメンテナンス部50をX方向に相対的に移動させる具体的構成は、上記の例に限られない。つまり、メンテナンス部50をX方向に駆動するのに代えて、クリーニングローラー81をX方向に駆動してもよい。要するに、クリーニングローラー81およびメンテナンス部50の少なくとも一方を駆動することで、これらの間の相対移動を実行できる。
【0077】
また、モーター742によって駆動される印刷ヘッド30とともにクリーニングローラー81がZ方向に移動(すなわち、昇降)するように構成してもよい。かかる構成では、ステップS105において、ワイパーブレード59をクリーニングローラー81に摺動させる動作を、クリーニングローラー81を昇降させることで実行してもよい。あるいは、昇降機構58によるワイパーブレード59の昇降と、モーター742によるクリーニングローラー81の昇降とを併せて実行することで、ワイパーブレード59をクリーニングローラー81に摺動させてもよい。
【0078】
また、洗浄液供給機構9の具体的構成を適宜変更してもよい。例えば、洗浄液貯留部91を、印刷ヘッド30の(―X)方向側ではなく、印刷ヘッド30の(+X)方向側に配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、ノズル開口平面で開口するインクノズルからインクを吐出する印刷ヘッドのノズル開口平面からインクを払拭するワイパーから落下したインクをパンにより回収する技術の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…印刷装置
30…印刷ヘッド
31P…ノズル開口平面
53…キャップ(キャップ部材)
57…バット(パン)
58…昇降機構(昇降手段)
59…ワイパーブレード(ワイパー)
753…モーター(移動手段)
81クリーニングローラー81が本発明の「クリーニングローラー」の一例に相当し、
9…洗浄液供給機構(洗浄液供給手段)
97…液体排出機構(排出手段)
972…送液配管(連通管)
975…排液ポンプ(ポンプ)
Lo…原点位置
Lw…洗浄位置
N…ノズル(インクノズル)
Q…洗浄液
X…X方向(移動方向)
Zo…原点高さ
Zw…ワイピング高さ