(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046085
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】熱処理システム
(51)【国際特許分類】
F27B 9/26 20060101AFI20240327BHJP
F27D 3/12 20060101ALI20240327BHJP
F27B 9/40 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
F27B9/26
F27D3/12 Z
F27B9/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151257
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591076109
【氏名又は名称】エヌジーケイ・キルンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】棚村 雅史
(72)【発明者】
【氏名】大山 智明
(72)【発明者】
【氏名】磯野 隆規
【テーマコード(参考)】
4K050
4K055
【Fターム(参考)】
4K050AA02
4K050BA16
4K050CG04
4K050DA02
4K055AA06
4K055BA03
4K055BA05
4K055HA13
(57)【要約】
【課題】被処理物を熱処理する際に使用した匣鉢の状態を適切に確認する。
【解決手段】熱処理システムは、搬入口から搬出口に匣鉢を搬送する間に匣鉢に収容された被処理物を熱処理する熱処理炉と、熱処理炉の搬出口から搬出された匣鉢を熱処理炉の搬入口まで搬送する搬送装置と、搬送装置の搬送経路上に設けられ、熱処理炉で熱処理された被処理物を匣鉢から回収する回収装置と、搬送装置の搬送経路上であって、回収装置と搬入口との間に設けられ、被処理物が収容されていない匣鉢に、熱処理前の被処理物を供給する供給装置と、搬送経路を覆うフードと、を備えている。搬送経路は、回収装置と供給装置との間の少なくとも一部の領域に設けられる第1搬送経路と、搬送経路のうち、第1搬送経路が設けられた領域以外に設けられる第2搬送経路と、を備えている。フードは、第2搬送経路に設けられていると共に、第1搬送経路には設けられていない。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬入口と搬出口とを備え、前記搬入口から前記搬出口に匣鉢を搬送する間に前記匣鉢に収容された被処理物を熱処理する熱処理炉と、
前記熱処理炉の前記搬出口から搬出された前記匣鉢を前記熱処理炉の前記搬入口まで搬送する搬送装置と、
前記搬送装置の搬送経路上に設けられ、前記熱処理炉で熱処理された前記被処理物を前記匣鉢から回収する回収装置と、
前記搬送装置の前記搬送経路上であって、前記回収装置と前記搬入口との間に設けられ、前記被処理物が収容されていない前記匣鉢に、熱処理前の前記被処理物を供給する供給装置と、
前記搬送経路を覆うフードと、を備えており、
前記搬送経路は、
前記回収装置と前記供給装置との間の少なくとも一部の領域に設けられる第1搬送経路と、
前記搬送経路のうち、前記第1搬送経路が設けられた領域以外に設けられる第2搬送経路と、を備えており、
前記フードは、前記第2搬送経路に設けられていると共に、前記第1搬送経路には設けられていない、熱処理システム。
【請求項2】
前記フードは、前記第1搬送経路と前記第2搬送経路との間に設けられる開口部と、前記開口部に設けられ、前記フードの内側の空間と前記フードの外側の空間とを遮断する遮断部と、を備えている、請求項1に記載の熱処理システム。
【請求項3】
前記第1搬送経路は、前記匣鉢の搬送方向に平行な外縁を備えており、
前記外縁上に物体が位置するか否かを検出するセンサをさらに備えている、請求項1に記載の熱処理システム。
【請求項4】
前記搬送装置は、前記センサが前記物体を検出したときに前記搬送装置による前記匣鉢の搬送を停止し、前記センサが前記物体を検出していないときに前記搬送装置により前記匣鉢を搬送する、請求項3に記載の熱処理システム。
【請求項5】
前記第1搬送経路は、前記匣鉢の搬送方向に平行な外縁を備えており、
前記匣鉢は、前記外縁側に位置する第1側面と、前記第1側面の反対側に位置する第2側面と、を備えており、
前記第1搬送経路を搬送される前記匣鉢の前記第2側面側に配置され、前記匣鉢を前記第1側面側から見たときに、前記第2側面を反射させる反射板をさらに備えている、請求項1に記載の熱処理システム。
【請求項6】
前記第1搬送経路に設けられ、前記第1搬送経路を搬送される前記匣鉢を撮像する撮像装置をさらに備えている、請求項1に記載の熱処理システム。
【請求項7】
前記撮像装置は、前記第1搬送経路に複数配置されている、請求項6に記載の熱処理システム。
【請求項8】
前記第1搬送経路に設けられ、前記第1搬送領域を搬送される前記匣鉢を清掃する清掃装置をさらに備えている、請求項1に記載の熱処理システム。
【請求項9】
前記清掃装置は、前記匣鉢に付着している付着物を吸引する吸引ノズルである、請求項8に記載の熱処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、被処理物を熱処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱処理炉(例えば、ローラーハースキルンやプッシャーキルン等)を用いて、被処理物を熱処理することがある。例えば、粉体等の被処理物を熱処理炉で熱処理する際には、被処理物は匣鉢に収容された状態で熱処理される。匣鉢は、再利用して繰り返し用いられる。例えば、特許文献1には、熱処理炉と、熱処理炉の搬出口から搬入口まで匣鉢を搬送する搬送装置を備える熱処理システムが開示されている。熱処理システムでは、搬送装置の搬送経路上に、匣鉢内から被処理物を回収する回収装置と、匣鉢に被処理物を供給する供給装置が設置されている。また、特許文献1では、搬送装置の搬送経路を覆うフードが設けられている。これにより、匣鉢が搬送装置で搬送経路を搬送される間に、匣鉢内に異物が混入することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の熱処理システムでは、被処理物の熱処理に使用した匣鉢を再利用する。匣鉢を繰り返し使用すると、匣鉢が割れてしまうことがある。また、回収装置で被処理物を回収した後で匣鉢を再利用するが、匣鉢内に熱処理後の被処理物が残っていることがある。このような場合、供給装置で匣鉢に熱処理前の被処理物を供給する前に、割れた匣鉢を排除する処理や、被処理物が残っている匣鉢から匣鉢内の被処理物を除く処理を行う必要がある。このため、回収装置で被処理物を回収した後の匣鉢の状態を確認することが求められる。例えば、回収装置で被処理物を回収した後の匣鉢をレーザ等を用いて確認すれば、匣鉢の状態を自動で確認することも可能だが、より精度よく匣鉢の状態を確認するためには、匣鉢を目視で確認する必要がある。しかしながら、特許文献1の熱処理システムでは、搬送経路がフードで覆われているため、匣鉢の状態を目視することができないという問題があった。
【0005】
本明細書は、被処理物を熱処理する際に使用した匣鉢の状態を適切に確認するための技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示する技術の第1の態様では、熱処理システムは、熱処理炉と搬送装置と回収装置と供給装置とフードを備えている。熱処理炉は、搬入口と搬出口とを備え、搬入口から搬出口に匣鉢を搬送する間に匣鉢に収容された被処理物を熱処理する。搬送装置は、熱処理炉の搬出口から搬出された匣鉢を熱処理炉の搬入口まで搬送する。回収装置は、搬送装置の搬送経路上に設けられ、熱処理炉で熱処理された被処理物を匣鉢から回収する。供給装置は、搬送装置の搬送経路上であって、回収装置と搬入口との間に設けられ、被処理物が収容されていない匣鉢に、熱処理前の被処理物を供給する。フードは、搬送経路を覆う。搬送経路は、回収装置と供給装置との間の少なくとも一部の領域に設けられる第1搬送経路と、搬送経路のうち、第1搬送経路が設けられた領域以外に設けられる第2搬送経路と、を備えている。フードは、第2搬送経路に設けられていると共に、第1搬送経路には設けられていない。
【0007】
上記の熱処理システムでは、回収装置と供給装置の間の一部の領域に設けられる第1搬送経路をフードで覆わないことにより、回収装置と供給装置との間に匣鉢の状態を目視可能な領域を設けることができる。これにより、回収装置で被処理物を回収した後の匣鉢の状態を確認することが容易となり、匣鉢が再利用可能な状態であるかどうかをより正確に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1に係る熱処理システムの概略構成を示す図。
【
図2】実施例1に係る熱処理システムの制御系を示すブロック図。
【
図3】熱処理炉の概略構成を示す図であり、匣鉢の搬送方向に平行な平面で熱処理炉を切断したときの縦断面図。
【0009】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0010】
本明細書に開示する技術の第2の態様では、上記の第1の態様において、フードは、第1搬送経路と第2搬送経路との間に設けられる開口部と、開口部に設けられ、フードの内側の空間とフードの外側の空間とを遮断する遮断部と、を備えていてもよい。このような構成によると、フードがなく開放された第1搬送経路側の空間からフードに覆われた第2搬送経路内の空間に異物等が侵入することを抑制することができる。
【0011】
本明細書に開示する技術の第3の態様では、上記の第1又は第2の態様において、第1搬送経路は、匣鉢の搬送方向に平行な外縁を備えていてもよい。熱処理システムは、外縁上に物体が位置するか否かを検出するセンサをさらに備えていてもよい。このような構成によると、フードのない第1搬送経路内に作業者が侵入したことを検出することができる。
【0012】
本明細書に開示する技術の第4の態様では、上記の第3の態様において、搬送装置は、センサが物体を検出したときに搬送装置による匣鉢の搬送を停止し、センサが物体を検出していないときに搬送装置により匣鉢を搬送してもよい。このような構成によると、第1搬送経路に作業者が侵入した場合に、搬送装置による匣鉢の搬送を自動で停止することができる。
【0013】
本明細書に開示する技術の第5の態様では、上記の第1~4の態様のいずれか1つにおいて、第1搬送経路は、匣鉢の搬送方向に平行な外縁を備えていてもよい。匣鉢は、外縁側に位置する第1側面と、第1側面の反対側に位置する第2側面と、を備えていてもよい。熱処理システムは、第1搬送経路を搬送される匣鉢の第2側面側に配置され、匣鉢を第1側面側から見たときに、第2側面を反射させる反射板をさらに備えていてもよい。このような構成によると、反射板を設けることにより、匣鉢の第1側面側から、第1側面を直接目視できると共に、反射板に反射された匣鉢の第2側面も目視することができる。これにより、第1側面側から死角となる第2側面も目視することができる。
【0014】
本明細書に開示する技術の第6の態様では、上記の第1~5の態様のいずれか1つにおいて、熱処理システムは、第1搬送経路に設けられ、第1搬送経路を搬送される匣鉢を撮像する撮像装置をさらに備えていてもよい。このような構成によると、撮像装置で撮像することによって、匣鉢の状態を確認することができる。また、第1搬送領域にはフードがないため、フードで覆われた第2搬送領域と異なり、照明等の撮像条件に制限が少ない。このため、匣鉢を適切に撮像することができる。
【0015】
本明細書に開示する技術の第7の態様では、上記の第6の態様において、撮像装置は、第1搬送経路に複数配置されていてもよい。このような構成によると、複数の撮像装置で匣鉢を撮像することができ、匣鉢の状態をより正確に確認することができる。
【0016】
本明細書に開示する技術の第8の態様では、上記の第1~7の態様のいずれか1つにおいて、熱処理システムは、第1搬送経路に設けられ、第1搬送領域を搬送される匣鉢を清掃する清掃装置をさらに備えていてもよい。このような構成によると、匣鉢に被処理物や異物等が付着していた場合に、匣鉢を清掃することができる。これにより、匣鉢に付着する被処理物や異物等を第1搬送経路で排除することができ、匣鉢を搬送経路から取り出すことなく、被処理物や異物等を排除した状態の匣鉢を供給装置に搬送することができる。
【0017】
本明細書に開示する技術の第9の態様では、上記の第6の態様において、清掃装置は、匣鉢に付着している付着物を吸引する吸引ノズルであってもよい。
【実施例0018】
図面を参照して、本実施例に係る熱処理システム1について説明する。
図1及び
図2に示すように、熱処理システム1は、熱処理炉10と、循環搬送装置30と、供給装置40と、回収装置42と、清掃装置44と、割れ検知装置46と、管理装置48を備えている。
【0019】
熱処理システム1は、匣鉢2(
図3参照)に収容された被処理物を熱処理する。本実施例では、匣鉢2に収容される被処理物は、リチウムイオン電池正極材の粉体である。本実施例の熱処理システム1では、匣鉢2は、供給装置40、熱処理炉10、回収装置42、清掃装置44及び割れ検知装置46の間を循環するように構成されている。被処理物は、匣鉢2が熱処理炉10内を搬送される間に熱処理される。
図2に示すように、管理装置48は、熱処理炉10と、循環搬送装置30と、供給装置40と、回収装置42と、清掃装置44と、割れ検知装置46と接続している。管理装置48は、熱処理炉10と、循環搬送装置30と、供給装置40と、回収装置42と、清掃装置44と、割れ検知装置46の動作を制御している。
【0020】
熱処理炉10は、匣鉢2内の被処理物を熱処理する。
図3及び
図4に示すように、熱処理炉10は、炉体12と、搬送装置(24、26)を備えている。熱処理炉10は、搬送装置(24、26)によって匣鉢2が炉体12内を搬送される間に、匣鉢2内に収容される被処理物を熱処理する。
【0021】
炉体12は、外形が略直方体形状であり、その内部の熱処理空間が天井壁14aと、底壁14bと、炉入口壁14cと、炉出口壁14dと、側壁14e、14fによって囲まれている。
図3に示すように、天井壁14aは、底壁14bに対して平行に(すなわち、XY平面と平行に)配置されている。炉入口壁14cは、搬送経路の入口端に配置されており、搬送方向に対して垂直に(すなわち、YZ平面と平行に)配置されている。炉出口壁14dは、搬送経路の出口端に配置されており、炉入口壁14cに対して平行に(すなわち、YZ平面と平行に)配置されている。
図4に示すように、側壁14e、14fは、搬送方向に対して平行、かつ、天井壁14a及び底壁14bに対して垂直に(すなわち、XZ平面と平行に)配置されている。炉体12内の熱処理空間には、複数のヒータ16a、16bと、複数の搬送ローラ24が配置されている。ヒータ16aは、搬送ローラ24の上方の位置に搬送方向に所定の間隔で配置され、ヒータ16bは、搬送ローラ24の下方の位置に搬送方向に所定の間隔で配置されている。ヒータ16a、16bが発熱することで、炉体12内の空間18が加熱されると共に匣鉢2内に収容される被処理物が加熱される。
図3に示すように、炉入口壁14cには、開口15aが形成されており、炉出口壁14dには、開口15bが形成されている。匣鉢2は、搬送装置(24、26)によって開口15aから熱処理炉10内に搬送され、開口15bから熱処理炉10外へ搬送される。すなわち、開口15aは搬入口として用いられ、開口15bは搬出口として用いられる。
【0022】
搬送装置(24、26)は、複数の搬送ローラ24と、駆動装置26を備えている。搬送ローラ24は、匣鉢2を搬送する。搬送装置(24、26)は、開口15aから熱処理炉10内に匣鉢2を搬送し、開口15bから匣鉢2を熱処理炉10外に搬送する。搬送ローラ24は円筒状であり、その軸線は搬送方向と直交する方向に(すなわち、Y方向に)伸びている。複数の搬送ローラ24は、全てが同じ直径を有しており、搬送方向に一定のピッチで等間隔に配置されている。搬送ローラ24は、その軸線回りに回転可能に支持されており、駆動装置26の駆動力が伝達されることによって回転する。駆動装置26は、搬送ローラ24を駆動する駆動装置(例えば、モータ)である。駆動装置26は、動力伝達機構を介して、搬送ローラ24に接続されている。駆動装置26の駆動力が動力伝達機構(例えば、スプロケットとチェーンによる機構)を介して搬送ローラ24に伝達されると、搬送ローラ24は回転するようになっている。駆動装置26は、搬送ローラ24が略同一の速度で回転するように、搬送ローラ24のそれぞれを駆動する。駆動装置26は、制御装置28によって制御されている。なお、本実施例では、複数の搬送ローラ24は、全て同じ直径を有しているが、このような構成に限定されない。熱処理炉10内には、異なる直径の搬送ローラが設置されていてもよい。
【0023】
図1に示すように、循環搬送装置30は、熱処理炉10の搬出口(すなわち、開口15b)から搬出された匣鉢2を、熱処理炉10の搬入口(すなわち、開口15a)まで搬送する。循環搬送装置30は、複数の搬送ローラ32(
図5及び
図6参照)と、駆動装置34(
図2参照)を備えている。搬送ローラ32は円筒状であり、その軸線は搬送方向と直交する方向に伸びている。複数の搬送ローラ32は、全てが同じ直径を有しており、搬送方向に一定のピッチで等間隔に配置されている。搬送ローラ32は、その軸線回りに回転可能に支持されており、駆動装置34の駆動力が伝達されることによって回転する。駆動装置34は、搬送ローラ32を駆動する駆動装置(例えば、モータ)である。駆動装置34は、動力伝達機構を介して、搬送ローラ24に接続されている。駆動装置34の駆動力が動力伝達機構(例えば、スプロケットとチェーンによる機構)を介して搬送ローラ32に伝達されると、搬送ローラ32は回転するようになっている。駆動装置34は、搬送ローラ32が略同一の速度で回転するように、搬送ローラ32のそれぞれを駆動する。なお、本実施例では、複数の搬送ローラ32は、全てが同じ直径を有しているが、このような構成に限定されない。循環搬送装置30の搬送経路には、異なる直径の搬送ローラが設置されていてもよい。
【0024】
図5及び
図6に示すように、循環搬送装置30の搬送経路は、フード54で覆われた領域と、フード54で覆われていない領域がある。詳細には、循環搬送装置30の搬送経路のうち、回収装置42と供給装置40との間にフード54で覆われていない領域がある。以下では、循環搬送装置30の搬送経路のうち、フード54で覆われていない領域に対応する搬送経路を「第1搬送経路50」と称し、フード54で覆われている領域に対応する搬送経路を「第2搬送経路52」と称する。
図1に示すように、本実施例では、第1搬送経路50は、割れ検知装置46と供給装置40との間に設けられている。なお、第1搬送経路50及び第2搬送経路52については、後に詳述する。
【0025】
図1に示すように、供給装置40は、循環搬送装置30の搬送経路上に配置されている。供給装置40は、熱処理炉10の搬入口の上流に配置されており、本実施例では、割れ検知装置46と熱処理炉10の搬入口との間に配置されている。また、本実施例では、供給装置40は、第1搬送経路50(すなわち、搬送経路がフード54で覆われていない領域)の下流に配置されている供給装置40は、匣鉢2内に被処理物(すなわち、粉体)を供給する装置である。なお、供給装置40は、匣鉢2内に粉体を供給するように構成されていればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、供給装置40は、供給部と均し部を備えている。供給部は、匣鉢2の内部に粉体を供給するように構成されている。具体的には、供給部は、匣鉢2の上方から匣鉢2の内部に粉体を落下させる供給口を備えている。供給口は、供給部内に匣鉢2を配置したときに、匣鉢2の中心部の上方に位置するように配置されている。供給部は、位置決め装置を備えており、位置決め装置は、供給部に搬送された匣鉢2を、供給口の下方に位置するように位置決めする。なお、供給部には、複数の供給口が配置されていてもよい。供給部は、粉体を上方から落下させることで匣鉢2内に粉体を供給するため、供給部で匣鉢2に粉体が供給されると、匣鉢2内の粉体の上面は、供給口の下方の位置で盛り上がった状態となる。均し部は、供給部で匣鉢2内に供給された粉体を均す。具体的には、均し部は、平板の側面で匣鉢2内の粉体の上面を押さえることで粉体の上面を均すように構成されている。均し部で粉体の上面を均すことによって、匣鉢2に収容された粉体の上面は略水平面となる。
【0026】
回収装置42は、循環搬送装置30の搬送経路上に配置されている。回収装置42は、熱処理炉10の搬出口の下流に配置されており、本実施例では、熱処理炉10の搬出口と清掃装置44との間に配置されている。回収装置42は、熱処理炉10で熱処理された被処理物(すなわち、粉体)を匣鉢2から回収する装置である。なお、回収装置42は、匣鉢2から粉体を回収するように構成されていればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、回収装置42は、匣鉢2を上下方向に反転させて回収する反転回収部と、匣鉢2の表面に付着した被処理物(本実施例では、粉体)をエアで剥離して回収するエア回収部を備えている。反転回収部は、匣鉢2を上下方向に反転させることによって、匣鉢2内の粉体を回収用容器に移動させる。これにより、匣鉢2内に収容されていた粉体のほぼ全てが回収用容器に移動する。その後、反転回収部は、匣鉢2を再び上下方向に反転させて元の向きに戻す。エア回収部は、反転回収部で匣鉢2内の粉体が回収された後に使用される。エア回収部は、匣鉢2の内表面にエアを吹き付けながら匣鉢2内のエアを吸引する。匣鉢2の内表面にエアを吹き付けることによって、匣鉢2の内表面に付着している粉体が内表面から剥離する。匣鉢2の内表面にエアを吹き付けながら匣鉢2内のエアを吸引すると、匣鉢2の内表面から剥離された粉体がエアと共に吸引される。これにより、匣鉢2の内表面に残留した粉体が回収され、粉体の回収率が上昇する。なお、上記の例では、回収装置42はエア回収部を備えていたが、このような構成に限定されない。例えば、匣鉢2の内表面に残留した粉体は、回転ブラシで匣鉢2の内表面から剥離して回収するように構成されていてもよい。
【0027】
清掃装置44は、循環搬送装置30の搬送経路上に配置されている。清掃装置44は、回収装置42と割れ検知装置46との間に配置されている。清掃装置44は、回収装置42において被処理物(すなわち、粉体)が回収された後の匣鉢2の内表面を清掃する装置である。なお、清掃装置44は、匣鉢2の内表面を清掃するように構成されていればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、清掃装置44は、回転ブラシを用いて匣鉢2の内表面に付着している物質を剥離させながら、匣鉢2内の空気等を吸引する。吸引した空気等には、剥離された物質が含まれる。清掃装置44で匣鉢2の内表面を清掃することにより、匣鉢2の内表面に残留した粉体等を完全に除去することができる。
【0028】
割れ検知装置46は、循環搬送装置30の搬送経路上に配置されている。割れ検知装置46は、清掃装置44と供給装置40との間に配置されている。また、本実施例では、割れ検知装置46は、第1搬送経路50(すなわち、搬送経路がフード54で覆われていない領域)の上流に配置されている。割れ検知装置46は、匣鉢2の割れを検知することによって、匣鉢2が割れていないか否かを検査するための装置である。匣鉢2は、熱処理炉10において被処理物の熱処理に繰り返し使用される。割れ検知装置46は、匣鉢2が熱処理炉10において被処理物の熱処理に使用された後、再使用する前に割れていないか否かを検査する。なお、割れ検知装置46は、匣鉢2の割れを検知するように構成されていればよく、具体的な構成については特に限定されない。例えば、割れ検知装置46は、レーザを用いて匣鉢2の割れを検出してもよい。また、割れ検知装置46は、匣鉢2にガスを封入し、匣鉢2内の圧力を測定することによって匣鉢2の割れを検出してもよい。匣鉢2の割れが検知された場合、匣鉢2は循環搬送装置30の搬送経路から取り出される。匣鉢2の割れが検知されなかった場合、匣鉢2は、循環搬送装置30によって供給装置40に搬送される。
【0029】
次に、第1搬送経路50及び第2搬送経路52について、さらに詳細に説明する。上述したように、循環搬送装置30の搬送経路は、フード54で覆われていない第1搬送経路50と、フード54で覆われている第2搬送経路52を備えている。
図1に示すように、第1搬送経路50は、割れ検知装置46と供給装置40との間の一部分のみに設けられている。別言すると、循環搬送装置30の搬送経路は、割れ検知装置46と供給装置40との間の一部分のみがフード54で覆われていない第1搬送経路50であり、大部分がフード54で覆われている第2搬送経路52である。第2搬送経路52は、フード54で覆われているため、第2搬送経路52を搬送される匣鉢2内に外部から異物等が侵入することを抑制することができる。一方で、第2搬送経路52は、フード54で覆われているため、第2搬送経路52を搬送されている匣鉢2を目視することができない。
【0030】
第1搬送経路50は、フード54に覆われていない。このため、第1搬送経路50を搬送されている匣鉢2は、循環搬送装置30の搬送経路の外部から目視することができる。回収装置42で匣鉢2内の被処理物が回収された後、匣鉢2は、清掃装置44と割れ検知装置46を通過した後に第1搬送経路50に搬送される。すなわち、匣鉢2は、清掃装置44で清掃され、割れ検知装置46で割れていないか否かが検査された後で、第1搬送経路50に搬送される。このため、第1搬送経路50には、内部が清掃され、かつ、割れていない匣鉢2が搬送される。しかしながら、清掃装置44で清掃しても、匣鉢2内に被処理物が残留していることがある。例えば、矩形の匣鉢2の隅は他の部分と比較して清掃し難く、匣鉢2の隅に被処理物が残留することがある。また、回収装置42で匣鉢2内の被処理物を回収したときに匣鉢2内に残留した被処理物が多いと、清掃装置44で匣鉢2内の被処理物を完全に除去(例えば、吸引等)できないことがある。また、回収装置42では、匣鉢2を反転して匣鉢2から被処理物を回収するため、反転の際に舞い上がった被処理物が匣鉢2の外表面に付着することもある。このような場合に、清掃装置44で匣鉢2を清掃した後であっても、匣鉢2の内部や外表面に被処理物が付着していることがある。また、割れ検知装置46で匣鉢2の割れを検知できないこともある。例えば、匣鉢2に生じた割れが微小である場合や、匣鉢2の角部に割れがある場合、割れ検知装置46では、匣鉢2の割れを検出し難い。このため、本実施例では、清掃装置44と割れ検知装置46を搬送された後に、清掃装置44で清掃されなかった被処理物や、割れ検知装置46で検知されなかった割れがないかどうかを、作業者が匣鉢2を目視することで確認する。第1搬送経路50がフード54に覆われていないことによって、第1搬送経路50を搬送される間に、匣鉢2の状態を目視により確認することができる。
【0031】
フード54には、第1搬送経路50と第2搬送経路52との間に、開口54aが設けられている。開口54aは、匣鉢2の搬送方向に直交するように設けられる。開口54aを設けることによって、匣鉢2が第1搬送経路50と第2搬送経路52との間を通過することができる。
【0032】
また、開口54aには、扉56が設置されている。扉56は、平板上であり、開口54aを覆う形状を有している。扉56は、図示しない駆動装置によって上下方向に移動可能である。扉56は、下方に位置するときに開口54aを覆う閉状態となり、上方に位置するときに開口54aが開放された開状態となる。扉56は、匣鉢2が第1搬送経路50と第2搬送経路52との間を搬送されるときに開状態にされ、匣鉢2が第1搬送経路50と第2搬送経路52との間を搬送されないときに閉状態にされる。開口54aに扉56を設置することによって、匣鉢2が第1搬送経路50と第2搬送経路52との間の開口54aを搬送可能であると共に、フード54の外部から開口54aを通って第2搬送経路52内に異物等が侵入することを抑制することができる。
【0033】
なお、本実施例では、開口54aに扉56が設置されているが、このような構成に限定されない。フード54の外部から第2搬送経路52内への異物等の侵入を抑制するように構成されていればよく、例えば、開口54aにエアカーテンが設置されていてもよい。エアカーテンは、エア吹出口を備えている。エア吹出口は、開口54aに沿って、エア吹出口から匣鉢2の搬送方向に直交する方向にエアを吹き出すように構成されている。エアは、匣鉢2が第1搬送経路50と第2搬送経路52との間を搬送される間も常にエア吹出口から吹き出されている。開口54aにエアカーテンを設置した場合にも、匣鉢2が第1搬送経路50と第2搬送経路52との間を搬送可能であると共に、フード54の外部から開口54aを通って第2搬送経路52内に異物等が侵入することを抑制することができる。
【0034】
第1搬送経路50には、センサ(58a、58b)が設置されている。センサ(58a、58b)は、発光部58aと受光部58bを備える光学式のセンサである。第1搬送経路50は、匣鉢2の搬送方向と平行な2つの外縁50a、50bを備えている。センサ(58a、58b)は、第1搬送経路50の外縁50a、50b上に位置する物体を検出するように配置されている。すなわち、発光部58aと受光部58bは、外縁50a側と外縁50bにそれぞれ設置されている。また、発光部58aは、外縁50a、50bの下流側に配置され、受光部58bは、外縁50a、50bの上流側に配置されている。発光部58aは、外縁50a、50bに沿って光を照射するように設置され、受光部58bは、発光部58aから照射される光を受光するように配置される。なお、発光部58aが外縁50a、50bの上流側に配置され、受光部58bが外縁50a、50bの下流側に配置されていてもよい。第1搬送経路50はフード54で覆われていないため、作業者が第1搬送経路50内に侵入する虞がある。作業者が、第1搬送経路50外から外縁50a、50bを超えて、第1搬送経路50内に侵入すると、発光部58aからの光が作業者によって遮られ、センサ(58a、58b)は、外縁50a、50b上に位置する作業者を検出する。なお、センサ(58a、58b)は、外縁50a、50b上に位置する作業者だけでなく、外縁50a、50b上に位置する匣鉢2も検出してもよい。
【0035】
センサ(より詳細には、受光部58b)は、検出結果を循環搬送装置30の制御部(図示省略)に出力する。循環搬送装置30の制御部は、外縁50a、50b上に物体(例えば、作業者等)が位置するという検出結果を取得すると、搬送ローラ32による匣鉢2の搬送を停止する。具体的には、駆動装置34の駆動を停止し、搬送ローラ32の回転を停止させる。これにより、匣鉢2の搬送が停止される。第1搬送経路50内に作業者が侵入した場合には、搬送ローラ32による匣鉢2の搬送を停止することによって、搬送中の匣鉢2が作業者に接触することを回避することができる。循環搬送装置30の制御部は、外縁50a、50b上に物体(例えば、作業者等)が位置しないという検出結果を取得すると、搬送ローラ32により匣鉢2を搬送させる。これにより、第1搬送経路50内に作業者が侵入した状態が解消されたときに、匣鉢2の搬送を自動で再開することができる。
【0036】
第1搬送経路50には、反射板60と、撮像装置62と、吸引ノズル64が設置されている。
【0037】
反射板60は、2つの外縁50a、50bのうちの1つ(
図5では、外縁50a)と、搬送ローラ32上を搬送される匣鉢2との間に配置される。本実施例では、第1搬送経路50は、-Y方向側から作業者が第1搬送経路50を目視できるように構成されている。反射板60は、作業者が第1搬送経路50を目視する位置(本実施例では、-Y方向側)から離れた位置にある外縁50b(すなわち、-Y方向側の外縁50b)の近傍に配置される。
【0038】
反射板60は、第1搬送経路50を搬送される匣鉢2の反射板60側の側面4aを、作業者が第1搬送経路50を目視する位置(本実施例では、-Y方向側)に向かって反射するように配置されている。反射板60を配置することによって、作業者は、匣鉢2の反射板60側の側面4aとは反対の側面4bを直接目視すると共に、匣鉢2の反射板60側の側面4aを反射板60を介して目視することができる。このため、作業者は、2つの外縁50a、50bのうちの一方(
図5では、外縁50a)側から、匣鉢2の搬送方向と平行な両側面4a、4bを同時に確認することできる。第1搬送経路50に反射板60を設置することによって、作業者は、匣鉢2の作業者からは死角となる部分を確認することができる。本実施例では、2つの反射板60が配置されている。第1搬送経路50に複数(本実施例では、2つ)の反射板60を配置することによって、2つの外縁50a、50bのうちの一方側から匣鉢2全体を確認し易くなる。なお、反射板60の設置数は限定されるものではなく、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0039】
撮像装置62は、第1搬送経路50を搬送される匣鉢2を撮像するように配置されている。第1搬送経路50には、複数(本実施例では、2つ)の撮像装置62が配置されている。
図5に示すように、撮像装置62は、作業者が第1搬送経路50を目視する位置(本実施例では、-Y方向側)から離れた位置にある外縁50a(すなわち、+Y方向側の外縁50a)の近傍に配置されており、匣鉢2を外縁50a側から撮像する。上述したように、作業者は、外縁50b側から第1搬送経路50を視認するため、匣鉢2の外縁50b側は直接目視できる一方で、匣鉢2の外縁50a側は目視し難い。撮像装置62で匣鉢2を外縁50a側から撮像することによって、匣鉢2の作業者からは死角となる部分を確認することができる。また、
図6に示すように、撮像装置62は、第1搬送経路50を搬送される匣鉢2を上方から撮像する。これにより、匣鉢2の内部が確認し易くなる。なお、撮像装置62の設置数は限定されるものではなく、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0040】
吸引ノズル64は、作業者によって第1搬送経路50を搬送される匣鉢2を清掃するために用いられる。吸引ノズル64は、集塵機66に接続されている。上述したように、第1搬送経路50に搬送される匣鉢2の内部や外表面には、被処理物が付着していることがある。第1搬送経路50に搬送される匣鉢2に被処理物が付着している場合、作業者は、匣鉢2を直接目視したり、反射板60を介して匣鉢2を目視したり、撮像装置62による撮像画面から匣鉢2の状態を確認したりすることによって、匣鉢2に被処理物が付着していることを発見する。このような場合に、作業者は、吸引ノズル64を用いて匣鉢2に付着した被処理物を吸引する。これにより、第1搬送経路50において匣鉢2に付着している被処理物を除去することができ、被処理物が除去された状態の匣鉢2を、供給装置40に搬送することができる。
【0041】
実施例で説明した熱処理システム1に関する留意点を述べる。実施例の循環搬送装置30は、「搬送装置」の一例であり、扉56は、「遮断部」の一例である。
【0042】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。