(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046088
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】水処理システム及び水処理方法、並びに、藻類回収システム及び藻類回収方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/08 20230101AFI20240327BHJP
C02F 3/10 20230101ALI20240327BHJP
C02F 3/32 20230101ALI20240327BHJP
【FI】
C02F3/08 B
C02F3/10 A
C02F3/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151260
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 覚
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】野口 基治
(72)【発明者】
【氏名】堀野 太郎
(72)【発明者】
【氏名】高部 祐剛
【テーマコード(参考)】
4D003
4D040
【Fターム(参考)】
4D003AA01
4D003AA12
4D003DA21
4D003EA14
4D003EA19
4D003EA28
4D003EA30
4D040CC03
(57)【要約】
【課題】遠心分離機を用いなくても容易に水中の藻類を回収することが可能な水処理システム、水処理方法、藻類回収システム及び藻類回収方法を提供する。
【解決手段】水処理システム1は、藻類によって生物処理が実施される被処理水21と、少なくとも一部が被処理水21に浸漬された基体22とを収容する反応槽20を備え、基体22によって藻類のフロックが生成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
藻類によって生物処理が実施される被処理水と、少なくとも一部が前記被処理水に浸漬された基体とを収容する反応槽を備え、
前記基体によって前記藻類のフロックが生成される、水処理システム。
【請求項2】
前記基体に付着した前記藻類の少なくとも一部が前記基体から脱離することにより、前記藻類のフロックが生成される、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記基体は連続気泡を有する多孔質体である、請求項1又は2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記基体はスポンジである、請求項1又は2に記載の水処理システム。
【請求項5】
藻類によって生物処理が実施される被処理水の水処理方法であって、
前記被処理水に基体の少なくとも一部を浸漬させる浸漬工程を含み、
前記基体によって前記藻類のフロックが生成される、水処理方法。
【請求項6】
前記浸漬工程は、前記基体に藻類を付着させる付着工程と、付着した前記藻類の少なくとも一部を前記基体から脱離する脱離工程とを含んでいる、請求項5に記載の水処理方法。
【請求項7】
前記脱離工程における撹拌強度は、前記付着工程における撹拌強度よりも強い、請求項6に記載の水処理方法。
【請求項8】
藻類が培養される培養液と、少なくとも一部が前記培養液に浸漬された基体とを収容する培養槽を備え、
前記基体によって前記藻類のフロックが生成される、藻類回収システム。
【請求項9】
藻類を培養液で培養し、前記培養液に基体の少なくとも一部を浸漬させる浸漬工程を含み、
前記基体によって前記藻類のフロックが生成される、藻類回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システム及び水処理方法、並びに、藻類回収システム及び藻類回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、好気性微生物の生物処理により、水中の有機物を分解する水処理方法が知られている。このような活性汚泥法では、生物処理の後、増殖した好気性微生物を沈降分離によって回収することで浄化された処理水を得ることができる。一方、生物処理を微細藻類で実施し、水処理する方法も知られている。
【0003】
特許文献1には、希釈前の原液状態において排水中のアンモニア性窒素の濃度を低下させる能力を有する2種の藻類を併用することによって、排水の処理を効果的に行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
活性汚泥法で用いられる好気性微生物は、粘着性の細胞外ポリマーを排出し、フロックを生成する。そのため、沈降したフロックを回収することによって水を浄化することができる。しかしながら、藻類は細胞外ポリマーを排出する種類が少ないため、フロックが生成されにくい。また、藻類のサイズは小さく、藻類の密度は水と同程度であるため、藻類を重力沈降によって効率的に回収することは容易ではない。
【0006】
一方、遠心分離機によって藻類に遠心力を加え、藻類を沈降させて回収することもできる。しかしながら、遠心分離機を導入するためのコストは高く、遠心分離機を稼働させるためには多くの動力が必要になる。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、遠心分離機を用いなくても容易に水中の藻類を回収することが可能な水処理システム及び水処理方法、並びに、藻類回収システム及び藻類回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の態様に係る水処理システムは、藻類によって生物処理が実施される被処理水と、少なくとも一部が被処理水に浸漬された基体とを収容する反応槽を備え、基体によって藻類のフロックが生成される。
【0009】
基体に付着した藻類の少なくとも一部が基体から脱離することにより、藻類のフロックが生成されてもよい。
【0010】
基体は連続気泡を有する多孔質体であってもよい。
【0011】
基体はスポンジであってもよい。
【0012】
本発明の態様に係る水処理方法は、藻類によって生物処理が実施される被処理水の水処理方法であって、被処理水に基体の少なくとも一部を浸漬させる浸漬工程を含み、基体によって藻類のフロックが生成される。
【0013】
浸漬工程は、基体に藻類を付着させる付着工程と、付着した藻類の少なくとも一部を基体から脱離する脱離工程とを含んでいてもよい。
【0014】
脱離工程における撹拌強度は、付着工程における撹拌強度よりも強くてもよい。
【0015】
本発明の態様に係る藻類回収システムは、藻類が培養される培養液と、少なくとも一部が培養液に浸漬された基体とを収容する培養槽を備え、基体によって藻類のフロックが生成される。
【0016】
本発明の態様に係る藻類回収方法は、藻類を培養液で培養し、培養液に基体の少なくとも一部を浸漬させる浸漬工程を含み、基体によって藻類のフロックが生成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、遠心分離機を用いなくても容易に水中の藻類を回収することが可能な水処理システム及び水処理方法、並びに、藻類回収システム及び藻類回収方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る水処理システムの一例を示す概略図である。
【
図2】実施例に係る藻類の培養後の様子を示す写真である。
【
図3】比較例に係る藻類の培養後の様子を示す写真である。
【
図4】実施例及び参考例における沈降時間と沈降割合との関係を示すグラフである。
【
図5】比較例における沈降時間と沈降割合との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本実施形態に係る水処理システム及び水処理方法、並びに、藻類回収システム及び藻類回収方法について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0020】
まず、本実施形態に係る水処理システム及び水処理方法について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る水処理システム1は、第1汚泥除去槽10と、反応槽20と、第2汚泥除去槽30とを備えている。第1汚泥除去槽10と、反応槽20と、第2汚泥除去槽30とは、上流からこの順番で配置されている。第1汚泥除去槽10と反応槽20とは配管L1を介して接続されている。反応槽20と第2汚泥除去槽30とは配管L2を介して接続されている。第1汚泥除去槽10内の液体分12は、配管L1を介して反応槽20に供給される。反応槽20で処理された処理液は配管L2を介して第2汚泥除去槽30へ供給される。
【0021】
第1汚泥除去槽10は、本実施形態において、例えば最初沈殿池のような沈殿槽である。第1汚泥除去槽10には、被処理水が供給される。第1汚泥除去槽10では、例えば重力沈降により、水よりも比重が大きい固形分11である汚泥が沈降し、固形分11と液体分12とに固液分離される。固形分11は、第1汚泥除去槽10から除去され、処分される。汚泥が除去された被処理水は、配管L1を介して反応槽20に供給される。なお、第1汚泥除去槽10は、沈殿槽に限られず、濾過槽であってもよい。また、水処理システム1は第1汚泥除去槽10を備えていなくてもよい。
【0022】
反応槽20は、被処理水21と、基体22とを収容している。被処理水21は、藻類によって生物処理が実施される。被処理水21は特に限定されないが、例えば、下水、し尿、生活排水、並びに、農業廃水及び工場排水などの産業排水などが挙げられる。これらの被処理水21は、藻類の栄養源が含まれているため、藻類を容易に培養することができる。被処理水のpHは特に限定されず、藻類に適したpHに調製することができる。
【0023】
ここで、生物処理とは、藻類を用い、被処理水21を浄化することをいう。藻類は、例えば、被処理水21中の有機物又はアンモニアなどを分解及び除去の少なくともいずれか一方によって処理してもよい。藻類は、例えば、被処理水21中の有機物又はアンモニアを分解してもよく、体内に取り入れて保持してもよい。被処理水21中の有機物は、糖類、タンパク質、脂質、有機酸及びリン化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。
【0024】
藻類は、酸素を発生する光合成を行う光合成藻類、及び光合成を行わない非光合成藻類の少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。藻類は、例えば微細藻類であり、0.1μm~100μm程度の大きさを有していてもよく、10μm~20μm程度の大きさを有していてもよい。反応槽20において生物処理を実施する藻類は、複数種類の藻類であってもよい。藻類は、例えば土着藻類であってもよい。藻類は、例えばシアノバクテリア(藍藻)、珪藻、黄緑藻、渦鞭毛藻、紅藻、褐藻、及び緑藻からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。
【0025】
藻類には、光源からの光が照射されてもよい。光源は、蛍光灯、LED及び電球などからなる群より選択される少なくとも一種を備える光照射装置であってもよく、太陽光であってもよい。藻類に照射される光量は特に限定されず、藻類の状態に適合するように適宜調節することができる。
【0026】
反応槽20内の水中における藻類の量は、例えば100mg/L以上2000mg/L以下であってもよい。藻類の量を100mg/L以上とすることにより、生物処理の効率を向上させることができる。また、藻類の量を2000mg/L以下とすることにより、藻類の活性が低下するのを抑制することができる。なお、藻類の量は、水1Lにおける藻類の乾燥重量を意味する。
【0027】
基体22は、少なくとも一部が被処理水21に浸漬されている。そして、基体22によって藻類のフロックが生成される。上述したように、藻類は細胞外ポリマーを排出しないなどによってフロックが生成されにくい。しかしながら、基体22によって藻類のフロックが生成され、藻類単独よりもフロックの粒子径が大きくなることから、藻類の沈降速度が速くなる。そのため、後述するように、第2汚泥除去槽30において、重力沈降により、藻類と処理水とを容易に固液分離することができる。
【0028】
具体的には、基体22に付着した藻類の少なくとも一部が基体22から脱離することにより、藻類のフロックが生成されてもよい。すなわち、基体22の少なくとも一部が被処理水21に浸漬されていることにより、基体22の表面に藻類が徐々に付着及び堆積する。そして、基体22の表面に付着した藻類の少なくとも一部が、基体22から脱離することにより、藻類のフロックが生成されてもよい。藻類のフロックが生成されたのは、基体22の少なくとも一部が被処理水21に浸漬されることにより、藻類のフロックが生成されるための核が生成されやすくなったためであると考えられる。なお、基体22に付着した藻類の少なくとも一部の脱離は、基体22と基体22に付着した藻類との界面剥離によって脱離してもよく、基体22に付着した藻類の構造破壊による脱離であってもよい。
【0029】
なお、本実施形態において藻類のフロックとは、複数の藻類が集まったものであり、基体22から脱離した粒子状の藻類の集合体をいう。フロックの大きさは特に限定されないが、例えば10μm以上1mm以下であってもよい。
【0030】
本実施形態において、反応槽20は複数の基体22を収容している。そして、複数の基体22は、被処理水21中に分散されている。これにより、被処理水21に均一に基体22が接触するため、基体22によって藻類のフロックが生成されるのを促進することができる。また、基体22は、被処理水21の水流に乗って流動しており、被処理水21中で浮遊している。これにより、基体22と藻類との接触頻度を増加させ、基体22によって藻類のフロックが生成されるのを促進することができる。ただし、反応槽20は少なくとも1つの基体22を収容していればよい。したがって、反応槽20は、1つの基体22を収容していてもよく、複数の基体22を収容していてもよい。
【0031】
また、基体22は、少なくとも一部が被処理水21に浸漬していればよい。したがって、基体22の一部が被処理水に浸漬していてもよく、基体22全体が被処理水に浸漬していてもよい。具体的には、基体22は、水面上に浮かんでいてもよく、全体が被処理水21中に浸かっていてもよい。また、反応槽20が複数の基体22を収容する場合、複数の基体22は、被処理水21中に浸かっている基体22と、水面上に浮かんでいる基体22とを含んでいてもよい。また、反応槽20が複数の基体22を収容する場合、複数の基体22の全てが被処理水21中に浸かっていてもよく、複数の基体22の全てが水面上に浮かんでいてもよい。
【0032】
藻類は基体22に固定されていないことが好ましい。これにより、藻類が基体22から剥離し、基体22を再利用しやすくなる。すなわち、基体22は、藻類を一時的に保持することが好ましい。なお、基体22はろ材であってもよく、微生物が担持されていてもよい。
【0033】
基体22は複数の孔を有する多孔体であってもよい。複数の孔は、開気孔及び貫通孔の少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。基体22は、連続気泡を有する多孔質体であってもよい。基体22は、具体的には、連続した固体物質の中に、複数の気泡が存在し、気泡中の空間が互いに連続して連なっていてもよい。なお、連続気泡は、気泡全体が、それ自身の壁で完全に密閉されず、他の気泡又は外部と相互に繋がっている気泡を意味する。すなわち、連続気泡材料は、複数の開気孔を有している。開気孔は、外気と通じた空孔を意味する。連続気泡を有する多孔質体は、基体22の表面だけでなく、基体22の内部にも藻類を付着させることができる。そのため、基体22によって藻類のフロックが生成されるのを促進することができる。なお、基体22は、例えば貫通孔を有するフィルタであってもよく、具体的には複数の貫通孔を有するフィルタであってもよい。
【0034】
基体22の平均気孔径は特に限定されないが、例えば10μm以上900μm以下であってもよい。平均気孔径が10μm以上であることにより、基体22の内部に藻類が浸入しやすくなり、基体22が多くの藻類を保持することができる。また、平均気孔径が900μm以下であることにより、藻類が基体22内の気孔を通過し、基体22に保持される藻類の量が低減するのを抑制することができる。基体22の平均気孔径は30μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。また、基体22の平均気孔径は500μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。基体22の平均気孔径は、基体22が複数の開気孔を有する場合には、開気孔を体積換算で真球とみなした場合の各球の平均直径を意味する。また、基体22の平均気孔径は、基体22が複数の貫通孔を有する場合には、貫通孔の貫通方向に垂直な面を面積換算で真円とみなした場合の各円の平均直径を意味する。
【0035】
基体22の気孔率は特に限定されないが、例えば20%以上95%以下であってもよい。気孔率が20%以上であることにより、基体22の内部に多くの藻類を保持することができる。また、気孔率が95%以下であることにより、基体22の耐久性を向上させることができる。気孔率は、30%以上であってもよく、40%以上であってもよい。また、気孔率は80%以下であってもよく、70%以下であってもよい。
【0036】
基体22の材料は特に限定されないが、樹脂を含んでいてもよい。基体22が樹脂を含むことにより、基体22に付着した藻類を基体22から容易に脱離させることができる。基体22の材料は、具体的には、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン及びポリスチレンからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含んでいてもよい。これらの中でも、耐久性の観点から、基体22の材料はポリウレタン又はポリエチレンを含むことが好ましい。基体22は、例えばプラスチック製の多孔体であってもよい。
【0037】
基体22の密度は特に限定されない。ただし、基体22は、被処理水21中で分散していることが好ましい。そのため、基体22の比重は水と同程度であることが好ましい。ただし、基体22に藻類が付着することにより、藻類が付着した基体22の比重が水よりも大きくなってもよい。
【0038】
基体22はスポンジであってもよい。スポンジは、基体22の表面及び内部に藻類を容易に保持することができる。また、スポンジは、外部からの力によって容易に変形する。そのため、基体22としてスポンジを用いることにより、基体22の表面及び内部に保持された藻類を基体22から容易に脱離させることができる。
【0039】
基体22の形状は特に限定されず、立方体、直方体、円柱状、平板状、球体状、及び、略円筒状からなる群より選択される少なくとも一種の形状であってもよい。また、基体22の大きさも特に限定されず、例えば基体22の形状が立方体である場合、基体22の大きさは一辺が5mm~30mm程度であってもよい。
【0040】
基体22の充填率は特に限定されないが、1%以上30%以下であってもよい。基体の充填率が1%以上であることにより、藻類のフロックの生成量を向上させることができる。また、基体の充填率が30%以下であることにより、水処理効率を向上させることができる。充填率は10%以上であってもよく、20%以上であってもよい。なお、本明細書において、充填率は、反応槽20内の被処理水21の体積に対する基体22の体積の割合を意味する。
【0041】
本実施形態に係る水処理方法は、被処理水21に基体22の少なくとも一部を浸漬させる浸漬工程を含んでいる。浸漬工程は、基体22に藻類を付着させる付着工程と、付着した藻類の少なくとも一部を基体22から脱離する脱離工程とを含んでいてもよい。脱離工程により、藻類の脱離を促進し、藻類のフロックの生成を促進することができる。
【0042】
藻類を基体22から脱離する方法は特に限定されず、例えば、被処理水21を撹拌して基体22から藻類を脱離させる、基体22に付着した藻類を物理的にそぎ取って脱離させる、藻類が付着した基体22を搾って基体22から藻類を脱離させる、又はこれらの組み合わせであってもよい。また、藻類の脱離は、藻類の付着と同一の空間で実施されてもよく、藻類を付着した空間とは別の反応槽20内における空間で実施されてもよく、反応槽20外の空間で実施されてもよい。
【0043】
被処理水21の撹拌によって藻類の少なくとも一部を基体22から脱離させる場合には、脱離工程における撹拌強度は、付着工程における撹拌強度よりも強くてもよい。基体22の表面に付着した藻類は、撹拌強度を変更しなくても、基体22の表面から脱離してフロックを生成することができる。しかしながら、上記のように撹拌強度を変更することにより、基体22に付着した藻類を、基体22から容易に脱離することができる。
【0044】
なお、撹拌強度の指標として、G値が用いられる場合がある。そのため、本実施形態においても、G値を使用して藻類の脱離を制御してもよい。すなわち、脱離工程におけるG値は、付着工程におけるG値よりも大きくてもよい。なお、G値は、下記数式(1)によって算出することができる。
【0045】
【0046】
上記数式(1)中、GはG値(1/sec)、ρは液体の密度(kg/m3)、Cは撹拌係数、Aは撹拌翼の総面積(m2)、νは撹拌翼の平均速度(m/s)、μは粘性係数(kg/(m・s))、Vは液体容量(m3)を表す。
【0047】
第2汚泥除去槽30は、本実施形態において、沈殿槽である。第2汚泥除去槽30は、生物処理後の処理液から固形分31である汚泥を除去する。藻類はフロックを生成するため、フロックを生成しない場合と比較して沈降速度が速くなっている。第2汚泥除去槽30では、重力沈降により、水よりも比重が大きく、藻類のフロックを含む固形分31が沈降し、固形分31と液体分32とに固液分離される。第2汚泥除去槽30は、配管L3を介して反応槽20に接続されている。沈殿した汚泥は、第2汚泥除去槽30の底部から引き抜かれ、第2汚泥除去槽30で分離された汚泥の一部が、配管L3を介して返送汚泥として反応槽20に返送される。一方、第2汚泥除去槽30で分離された汚泥の一部は、余剰汚泥として排出される。また、第2汚泥除去槽30内の液体分32である処理液は、塩素処理などを経て、水処理システム1外である河川などに放流される。
【0048】
以上説明した通り、本実施形態に係る水処理システム1は、藻類によって生物処理が実施される被処理水21と、少なくとも一部が被処理水21に浸漬された基体22とを収容する反応槽20を備えている。そして、基体22によって藻類のフロックが生成される。
【0049】
また、本実施形態に係る水処理方法は、藻類によって生物処理が実施される被処理水の水処理方法である。水処理方法は、被処理水21に基体22の少なくとも一部を浸漬させる浸漬工程を含んでいる。そして、基体22によって藻類のフロックが生成される。
【0050】
一般的な藻類は、フロックが生成されにくい。これは、藻類は粘着性の細胞外ポリマーを排出するものが少なく、フロックが生成されにくいためである。また、藻類は、藻類のサイズは小さく、藻類の密度は水と同程度である。そのため、藻類を重力沈降によって効率的に回収することは容易ではない。
【0051】
しかしながら、本実施形態に係る水処理システム1では、基体22の少なくとも一部が被処理水21に浸漬されており、基体22によって藻類のフロックが生成される。藻類はフロックを生成することにより、沈降速度が速くなる。したがって、本実施形態に係る水処理システム1及び水処理方法によれば、遠心分離機を用いなくても容易に水中の藻類を回収することができる。
【0052】
ここで、藻類によって生物処理が実施される被処理水は、藻類を培養しているため、藻類が培養される培養液と言い換えることができる。また、同様の理由により、反応槽は、培養槽と言い換えることができる。そして、水処理システム1及び水処理方法は、藻類回収システム及び藻類回収方法とそれぞれ言い換えることができる。
【0053】
すなわち、本実施形態に係る藻類回収システムは、藻類が培養される培養液と、少なくとも一部が培養液に浸漬された基体とを収容する培養槽を備え、基体によって藻類のフロックが生成される。
【0054】
また、藻類回収方法は、藻類を培養液で培養し、培養液に基体の少なくとも一部を浸漬させる浸漬工程を含み、基体によって藻類のフロックが生成される。
【0055】
本実施形態に係る藻類回収システム及び藻類回収方法によれば、上述の通り、遠心分離機を用いなくても容易に水中の藻類を回収することができる。
【0056】
本実施形態によれば、基体22を用いて藻類のフロックを生成するため、凝集剤のような薬剤を用いなくてもフロックを生成することができる。そのため、薬剤を用いることによるコスト及びエネルギーを削減することができる。また、回収した藻類に薬剤が残存することによる不具合を抑制することができ、例えば、回収した藻類を反応槽20に戻して藻類を容易に再利用することができる。また、回収した藻類を、消化槽に投入し、メタン発酵などによりエネルギー回収を行ったり、肥料又は飼料などの用途に利用したりすることもできる。
【0057】
また、培養して回収された藻類は、バイオ燃料、バイオプラスチック、食品、及び化粧品など種々の公知の用途に利用することができる。そのため、本実施形態に係る藻類回収システム及び藻類回収方法は、水処理の分野だけでなく、上述した分野における藻類の回収にも用いることができる。
【0058】
本実施形態に係る藻類回収システム及び藻類回収方法では、上述したものの他、上記種々の用途に適した藻類、培養液、培養槽、及び藻類の培養条件などを適宜選択することができる。また、藻類回収システム及び藻類回収方法では、藻類を培養液で培養して回収するものであるため、上述した第1汚泥除去槽10及び第2汚泥除去槽30に相当する構成はなくてもよい。また、浸漬工程における藻類の培養と、培養液への基体22の浸漬とは、同時に実施されていてもよく、藻類の培養の後に基体22を培養液へ浸漬してもよい。
【実施例0059】
以下、本実施形態を実施例、参考例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態はこのような実施例に限定されるものではない。
【0060】
[実施例]
(下水処理水の採取)
まず、下水処理場において、標準活性汚泥法により生物処理した後の下水処理水を採取した。なお、下水処理水のHRT(水理学的滞留時間:Hydraulic retention time)は1.2日とし、下水処理水には塩素添加処理及び微細藻類の植種等の前処理は実施しなかった。
【0061】
(微細藻類の培養)
次に、微細藻類(土着藻類)を培養し、微細藻類が培養された培養液を作製した。具体的には、採取した下水処理水を3Lガラスビーカー内に入れ、温度が25℃に設定されたインキュベータ(日本医化器械製作所製NKsystem)内に18日間載置した。また、培養時には、下水処理水のpHが8.0となるようにCO2を添加し、24本の蛍光灯を用いて光を照射した。なお、光量子計(Apogee社製のMQ-500)で蛍光灯1本当たりの光量子束密度を測定したところ、200μmol/m2/sであった。3Lガラスビーカー内には、1辺が15mmの直方体状をしたポリエチレン製の基体(スポンジ オプセル(登録商標)LC-150A、三和化工株式会社製)を充填率が5%となるように50個投入した。ビーカー内の下水処理水は、撹拌装置(アズワン株式会社製SM-101)を用い、撹拌速度100rpmで撹拌した。なお、攪拌を補助するためビーカーの底面の中央に撹拌羽根(アズワン株式会社製 DF-100)を取り付けた。
【0062】
図2は、実施例に係る藻類の培養後の様子を示す写真である。
図2に示すように、基体22の表面には藻類が付着しており、基体22の周辺には、藻類のフロックFが散らばっていた。
【0063】
(沈降割合の評価)
基体を取り除いた微細藻類の培養液を、直径50mmかつ高さ350mmのメスシリンダに600mLに注ぎ入れた。なお、この時、培養液の液面の高さは、メスシリンダの底面から約300mmの高さであった。次に、メスシリンダの底面から150mmの高さにおいて、微細藻類の濃度を680nmの吸光度(以下、OD680とも言う)で継時的に測定することにより、微細藻類の沈降割合を評価した。そして、以下の数式(2)を算出することにより、沈降割合を算出した。なお、下記数式(2)中、(-)は、単位が無次元量であることを意味する。
【0064】
沈降割合(-)=(沈降時間が0時間の時のOD680(-)-沈降時間が所定時間の時のOD680(-))/沈降時間が0時間の時のOD680(-) (2)
【0065】
[参考例]
微細藻類が付着した基体の沈降割合を目視で評価した。
【0066】
[比較例]
基体を投入せずに微細藻類を培養及び回収し、HRTを2日にした以外は実施例と同様にして沈降割合を評価した。なお、
図3は、比較例に係る藻類の培養後の様子を示す写真である。
図3に示すように、メスフラスコ内の液体は均一な黄緑色をしており、藻類のフロックは肉眼では確認できなかった。
【0067】
図4は、実施例及び参考例における沈降時間と沈降割合との関係を示すグラフである。
図5は、比較例における沈降時間と沈降割合との関係を示すグラフである。なお、
図4及び
図5のグラフは、n=2で評価を行ったものの平均値を示している。
【0068】
図4に示すように、実施例では、沈降時間の経過とともに沈降割合は上昇し、沈降割合は沈降2時間後には0.6を超えており、8時間後には0.8を超えていた。一方、
図5に示すように、比較例でも、沈降時間の経過とともに沈降割合は上昇したが、沈降2時間後での沈降割合は0.2未満であり、沈降8時間後でも沈降割合は0.4未満であった。これらの結果から、培養液に基体を投入することにより、フロックが生成され、重力沈降によって藻類の沈降を促進することができることが分かる。
【0069】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。