(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004609
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】成形型、樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/36 20060101AFI20240110BHJP
B29C 33/10 20060101ALI20240110BHJP
B29C 33/20 20060101ALI20240110BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B29C43/36
B29C33/10
B29C33/20
B29C43/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104296
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】八木 俊洋
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
4F202AB02
4F202AG20
4F202AJ08
4F202AR02
4F202CA09
4F202CB01
4F202CK15
4F202CK17
4F202CK42
4F202CK75
4F202CP00
4F202CP04
4F204AC05
4F204AJ08
4F204AR02
4F204FA01
4F204FB01
4F204FN11
4F204FQ15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】樹脂漏れを防止できる、成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】圧縮成形に用いられる成形型1000であって、互いに対向して配置される第1型200及び第2型100を有し、第1型200は、型キャビティ204の底面又は上面となる主面を構成する型主面部材202と、型キャビティ204の側面を構成する型側面部材201とを備え、型主面部材202と、型側面部材201とで囲まれた空間により型キャビティ204が形成され、型キャビティ204内に樹脂材料20を収容可能であり、型側面部材201は、型主面部材202に対し、相対的に上下動可能であり、型側面部材201の第2型100に面する側とは反対側に弾性部材203a及び203bが配置され、弾性部材203a及び203bは、型キャビティ204の平面形状の外周に沿って力のかかる状態を部分的に異ならせることが可能なように配置される、成形型。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮成形に用いられる成形型であって、
前記成形型は、互いに対向して配置される第1型及び第2型を有し、
前記第1型は、型キャビティの底面又は上面となる主面を構成する型主面部材と、前記型キャビティの側面を構成する型側面部材とを備え、
前記型主面部材と、前記型側面部材とで囲まれた空間により前記型キャビティが形成され、
前記型キャビティ内に樹脂材料を収容可能であり、
前記型側面部材は、前記型主面部材に対し、相対的に上下動可能であり、
前記型側面部材の前記第2型に面する側とは反対側に弾性部材が配置され、
前記弾性部材は、前記型キャビティの平面形状の外周に沿って力のかかる状態を部分的に異ならせることが可能なように配置される、成形型。
【請求項2】
前記弾性部材が、初期撓み量を異ならせた2種類の弾性部材を含む請求項1に記載の成形型。
【請求項3】
前記キャビティ内に収容される前記樹脂材料が発泡性樹脂材料である請求項1又は2記載の成形型。
【請求項4】
前記弾性部材が、前記型キャビティの平面形状に応じて力のかかる状態が部分的に異なるように配置される請求項1から3のいずれか一項に記載の成形型。
【請求項5】
前記型キャビティの平面形状が、コーナ部と直線部とを有し、
前記弾性部材が、前記コーナ部に対応する部分の力が前記直線部に対応する部分の力よりも弱くなるように配置されている請求項1から4のいずれか一項に記載の成形型。
【請求項6】
前記型キャビティの平面形状が、互いに直交する2方向において長さが異なり、
前記弾性部材が、前記平面形状の長手方向に沿う部分において、その端部の力が中央部の力よりも弱くなるように配置されている請求項1から5のいずれか一項に記載の成形型。
【請求項7】
前記型側面部材にエアベント溝が形成されている請求項1から6のいずれか一項に記載の成形型。
【請求項8】
前記型側面部材にエアベント溝が形成されており、
前記長手方向に沿う部分において、最も端の位置の前記エアベント溝の断面積が、最も中心位置に近い前記エアベント溝の断面積よりも広い請求項6記載の成形型。
【請求項9】
前記型側面部材にエアベント溝が形成されており、
前記長手方向に沿う部分において、最も端の位置の前記エアベント溝の前記長手方向の幅が、最も中心位置に近い前記エアベント溝の前記長手方向の幅よりも広い請求項6記載の成形型。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の成形型を有する樹脂成形装置。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の成形型を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記樹脂成形品の製造方法は、
前記型キャビティ内に前記樹脂材料を供給する樹脂材料供給工程と、
前記樹脂材料供給工程後に、前記成形型を用いて、圧縮成形により樹脂成形を行う樹脂成形工程と、を有し、
前記樹脂形成工程は、前記型キャビティの平面形状の外周に沿って力のかかる状態を部分的に異ならせて前記型キャビティ内の排気を行う工程を含む、樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形型、樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮成形は、樹脂成形方法の一つとして広く用いられている。その課題の一つとして、非特許文献1には、圧縮成形に用いられる発泡性樹脂材料が、成形品からはみ出して樹脂漏れを発生させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】襖田光昭ら著、「コンプレッション成形対応グラニュール封止材」、日立化成テクニカルレポートNo.61、2019年1月発行、p.16-17
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1には、粉粒体状樹脂材料で樹脂もれが発生することが記載されているが、常温で液状の液状樹脂材料においても、同様に樹脂もれの問題が発生するおそれがある。液状樹脂材料の場合、加熱された液状樹脂の粘度が低下し、樹脂が発泡して、成形型の隙間からはみ出すことで樹脂もれが発生する。このような発泡性樹脂材料を用いた圧縮成形において、成形型の隙間から発泡性樹脂材料がはみ出すことに起因する、樹脂もれ発生のおそれがあるという第1の問題がある。
【0005】
また、圧縮成形に用いられる樹脂材料には、流動性を与えるために、フィラーと呼ばれるシリカ等の粉粒体を混合することが知られている。近年粒径の小さなフィラーが用いられるようになっている。小さなフィラーが用いられた樹脂材料を用いて圧縮成形を行う場合、例えば、キャビティ内の気体を成形型のエアベント溝から排気する時に、樹脂がキャビティからもれ出すことがある。このような樹脂もれについて、粉粒体状樹脂材料及び液状樹脂のいずれにおいても発生するおそれがあるという第2の問題がある。
【0006】
また、圧縮成形に用いられる樹脂材料には、磁性体等の、樹脂の流動性を低下させる材料が混合されることがある。このような材料に起因して樹脂の成形型のキャビティ内において樹脂が十分に広がらず、樹脂未充填部が発生することがある。このような樹脂未充填について、粉粒体状樹脂材料及び液状樹脂のいずれにおいても発生するおそれがあるという第3の問題がある。
【0007】
例えば、上記の第1から第3の問題に代表されるような樹脂漏れ又は樹脂未充填の問題を防止し、生産性を改善することが求められている。
【0008】
そこで、本発明は、樹脂漏れ又は樹脂未充填を防止できる、成形型、樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明の成形型は、
圧縮成形に用いられる成形型であって、
前記成形型は、互いに対向して配置される第1型及び第2型を有し、
前記第1型は、型キャビティの底面又は上面となる主面を構成する型主面部材と、前記型キャビティの側面を構成する型側面部材とを備え、
前記型主面部材と、前記型側面部材とで囲まれた空間により前記型キャビティが形成され、
前記型キャビティ内に樹脂材料を収容可能であり、
前記型側面部材は、前記型主面部材に対し、相対的に上下動可能であり、
前記型側面部材の前記第2型に面する側とは反対側に弾性部材が配置され、
前記弾性部材は、前記型キャビティの平面形状の外周に沿って力のかかる状態を部分的に異ならせることが可能なように配置される。
【0010】
本発明の樹脂成形装置は、前記本発明の成形型を有する。
【0011】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、
前記本発明の成形型を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記樹脂成形品の製造方法は、
前記型キャビティ内に前記樹脂材料を供給する樹脂材料供給工程と、
前記樹脂材料供給工程後に、前記成形型を用いて、圧縮成形により樹脂成形を行う樹脂成形工程と、を有し、
前記樹脂形成工程は、前記型キャビティの平面形状の外周に沿って力のかかる状態を部分的に異ならせて前記型キャビティ内の排気を行う工程を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、樹脂漏れ又は樹脂未充填を防止できる、成形型、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1型が長方形である場合の、弾性部材の配置の一例を示す平面図(スプリング配置図)である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の成形型、及び、それを樹脂成形装置に用いた樹脂成形品の製造方法の一例を示す工程断面図である。
図2(b)は、本発明の成形型、及び、それを樹脂成形装置に用いた樹脂成形品の製造方法の一例を示す別の工程断面図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明の成形型、及び、それを樹脂成形装置に用いた樹脂成形品の製造方法の一例を示す工程断面図である。
図3(b)は、本発明の成形型、及び、それを樹脂成形装置に用いた樹脂成形品の製造方法の一例を示す別の工程断面図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明の成形型、及び、それを樹脂成形装置に用いた樹脂成形品の製造方法の一例を示す工程断面図である。
図4(b)は、本発明の成形型、及び、それを樹脂成形装置に用いた樹脂成形品の製造方法の一例を示す別の工程断面図である。
【
図6】
図6は、
図2~4の第1型の別の一例を示す平面図である。
【
図7】
図7(a)は、側面部材の上面に設けられたエアベント溝の一例を示す断面図である。
図7(b)は、側面部材の上面に設けられたエアベント溝の別の一例を示す断面図である。
図7(c)は、側面部材の上面に設けられたエアベント溝のさらに別の一例を示す断面図である。
【
図8】
図8(a)は、第1型が正方形である場合の、弾性部材の配置の一例を示す平面図(スプリング配置図)である。
図8(b)は、第1型が長方形である場合の、弾性部材の配置の別の一例を示す平面図(スプリング配置図)である。
図8(c)は、第1型が円形である場合の、弾性部材の配置の一例を示す平面図(スプリング配置図)である。
【
図9】
図9は、本発明の樹脂成形装置全体の構成を模式的に例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0015】
本発明において、「成形型」は、例えば金型であるが、これに限定されず、例えば、セラミック型等であってもよい。
【0016】
本発明において、樹脂成形品は、特に限定されず、例えば、単に樹脂を成形した樹脂成形品でもよいし、半導体チップ、抵抗素子、キャパシタ素子等の電子素子を樹脂成形により樹脂封止した樹脂成形品でもよい。本発明において、樹脂成形品は、例えば、電子部品等であってもよい。電子部品としては、特に限定されず任意であり、例えば、半導体チップ、抵抗素子、キャパシタ素子等の任意の電子素子を樹脂封止した任意の電子部品でもよい。電子素子の種類、形態等も特に限定されず、例えば、前述した各種形態(フリップチップを含む)の少なくとも一つであってもよい。また、樹脂成形品は、半導体チップ、抵抗素子、キャパシタ素子等の電子素子を樹脂封止した電子部品をさらに樹脂封止したものであってもよい。
【0017】
本発明において、成形前の樹脂材料及び成形後の樹脂としては、特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。また、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂を一部に含んだ複合材料であってもよい。本発明において、成形前の樹脂材料の形態としては、例えば、粉粒体状樹脂(顆粒状樹脂を含む)、液状樹脂、シート状の樹脂、タブレット状の樹脂等が挙げられる。なお、本発明において、液状樹脂とは、常温で液状であってもよいし、加熱により溶融されて液状となる溶融樹脂も含む。また、本発明において、成形前の樹脂材料は、例えば、発泡性樹脂材料であってもよい。
【0018】
また本発明において、「チップ」は、樹脂封止する前のチップをいい、具体的には、例えば、IC、LEDチップ、半導体チップ、電力制御用の半導体素子等のチップが挙げられる。本発明において、樹脂封止する前のチップは、樹脂封止後の電子部品と区別するために、便宜上「チップ」という。しかし、本発明における「チップ」は、樹脂封止する前のチップであれば、特に限定されず、チップ状でなくてもよい。
【0019】
本発明において、「フリップチップ」とは、ICチップ表面部の電極(ボンディングパット)にバンプと呼ばれる瘤状の突起状電極を有するICチップ、あるいはそのようなチップ形態のことをいう。このチップを、下向きに(フェースダウン)してプリント基板などの配線部に接続させる。前記フリップチップは、例えば、ワイヤレスボンディング用のチップあるいは接続方式の一つとして用いられる。
【0020】
本発明において、樹脂成形の成形対象物は、特に限定されないが、例えば、基板であってもよい。また、本発明において、例えば、基板(成形対象物)に固定された電子素子(例えば半導体チップ、抵抗素子、キャパシタ素子等)を樹脂封止(樹脂成形)して樹脂成形品を製造してもよい。本発明において、樹脂成形の成形対象物である基板(インターポーザともいう。)としては、特に限定されないが、例えば、リードフレーム、配線基板、ウェハー、ガラスエポキシ製基板、セラミック製基板、樹脂製基板、金属製基板等であっても良い。基板は、例えば、その一方の面又は両面にチップが固定された実装基板であっても良い。チップの固定方法は、特に限定されないが、例えば、ワイヤーボンディング、フリップチップボンディング等が挙げられる。本発明では、例えば、チップが固定された基板を樹脂封止することにより、チップが樹脂封止された電子部品を製造しても良い。また、本発明の樹脂成形装置により樹脂封止される基板の用途は、特に限定されないが、例えば、LED用基板、携帯通信端末用の高周波モジュール基板、電力制御用モジュール基板、機器制御用基板等が挙げられる。
【0021】
以下、本発明の具体的な実施例を図面に基づいて説明する。各図は、説明の便宜のため、適宜省略、誇張等をして模式的に描いている。
【実施例0022】
本実施例では、本発明の成形型、樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法の一例について説明する。
【0023】
図1に、第1型が長方形である場合の、弾性部材の配置の一例を示す平面図(スプリング配置図)を示す。
図1は、側面部材201及び主面部材202を、弾性部材203が配置された側から見た様子である。弾性部材203は、
図1のとおり高さが異なり、弾性部材203aが高く、弾性部材203bが低い。このように、弾性部材203a及び弾性部材203bは、キャビティ204の平面形状の外周に沿って力のかかる状態を部分的に異ならせることが可能なように配置されている。弾性部材203a及び弾性部材203bは、例えば、キャビティ204の平面形状に応じて力のかかる状態が部分的に異なるように配置することができる。キャビティ204の平面形状が、コーナ部と直線部を有する
図1においては、コーナ部に弾性部材203bが配置され、直線部(
図1において、横方向)に弾性部材203aが配置されている。特に、長方形である
図1においては、キャビティ204の平面形状の長手方向(
図1において、横方向)に沿う部分において、その端部に弾性部材203bが配置され、中央部に弾性部材203aが配置されている。
【0024】
弾性部材203a及び弾性部材203bの高さは、例えば、弾性部材203a及び弾性部材203bを本態様の成形型に取り付ける際に、弾性部材203a及び弾性部材203bの初期撓み量を変えることで調整してもよいし、弾性部材203a及び弾性部材203bが伸縮していない状態での高さを調整してもよい。また、弾性部材203a及び弾性部材203bの高さは、弾性部材203a及び弾性部材203bの伸縮方向の少なくとも一方にスペーサを介在させて調整してもよい。また、キャビティ204の平面形状の外周に沿って力のかかる状態を部分的に異ならせるために、弾性部材203a及び弾性部材203bの高さを異ならせるのに代えて、例えば、弾性部材203a及び弾性部材203bのスプリング径、又はばね定数を変えることで調整してもよい。ただし、後述するように、本態様の成形型の型締め完了時(
図4参照)において、キャビティ204の平面形状の外周に沿ってかかる力を均一化するのには、弾性部材203a及び弾性部材203bの初期撓み量を変えることで高さを調整するのが好ましい。なお、弾性部材の高さについて、本態様では2種類の弾性部材の高さを異ならせた例を用いて説明するが、3種類以上の弾性部材の高さを異ならせてもよい。また、弾性部材の高さに代えて、スプリング径又はばね定数を変えることで調整する場合には、3種類以上の弾性部材のスプリング径又はばね定数を異ならせてもよい。ここで、弾性部材の初期撓み量は、弾性部材を成形型に取り付ける際に、弾性部材の収縮量により調整することができ、樹脂成形工程のための型締め動作を開始する前の状態における弾性部材の撓み量と表現することもできる。具体例を挙げれば、初期撓み量を2種類に設定する場合には、収縮量が1mmと2mmとの2種類、収縮量が1mmと3mmとの2種類、又は収縮量が2mmと3mmとの2種類などのように設定することができる。
【0025】
図2~4の工程断面図に、本実施例の成形型、及び、それを樹脂成形装置に用いた樹脂成形品の製造方法の一例を示す。なお、
図2~4に示すA-A断面図、及びB-B断面図はそれぞれ、
図1のスプリング配置図に示すA-A断面、及びB-B断面である。
【0026】
図2に示すとおり、成形型1000は、外気遮断部材4000内に配置されている。外気遮断部材4000は、外気遮断部材4000内部を減圧するためのものである。外気遮断部材4000内部を減圧するために、本態様の樹脂成形装置は、例えばさらに、外気遮断部材内部減圧機構(図示せず)を有してもよい。外気遮断部材内部減圧機構は、例えば、真空ポンプである。外気遮断部材4000は、固定プラテン401と、可動プラテン402とを有する。固定プラテン401と可動プラテン402との間には、それぞれ、弾性力を有するOリング403が設けられている。固定プラテン401の上部には、固定プラテン401の上部を貫通する貫通孔404が設けられている。
【0027】
成形型1000は、第1型200と、第2型100とを有する。第1型200は、側面部材201と主面部材202とを有する。側面部材201は、主面部材202の周囲を囲むように配置されている。側面部材201の上面には、エアベント溝205が設けられている。側面部材201と主面部材202とで囲まれた空間によりキャビティ204が形成される。キャビティ204内には、図示のとおり、発泡性樹脂材料(樹脂材料)20を収容可能である。なお、発泡性樹脂材料20は、
図2で液状樹脂である。しかし、本態様において、成形前の発泡性樹脂材料20の形態は、特に限定されず、例えば、前述のとおり、液状樹脂でもよいし、粉粒体状樹脂(顆粒状樹脂を含む)、シート状の樹脂、タブレット状の樹脂等であってもよい。
【0028】
側面部材201及び主面部材202は、第1型ベース部材300上に配置されている。主面部材202は、第1型ベース部材300上面に直接固定されている。側面部材201は、弾性部材203aを介して第1型ベース部材300上面に取り付けられている。弾性部材203aの伸縮により、側面部材201が上下動可能である。また、第1型ベース部材300には、弾性部材203bが配置されている。第1型ベース部材300の下方には、可動プラテン402が備えられている。可動プラテン402により第1型ベース部材300の昇降が可能である。
【0029】
第2型100は、図示のとおり、その下面に、基板(成形対象物)10を取り付けることができる。第2型100は、その上方にある固定された固定プラテン401に備えられている。
【0030】
成形型1000を用いた樹脂成形品の製造方法は、例えば、以下のようにして行うことができる。まず、キャビティ204内に発泡性樹脂材料20を供給しておく。発泡性樹脂材料20を供給する方法は、特に限定されず、例えば、樹脂材料搬送機構(図示せず)により発泡性樹脂材料20を所定の位置まで搬送し、その後、キャビティ204内に発泡性樹脂材料20を供給してもよい。発泡性樹脂材料20を供給した後、第1型200及び第2型100を加熱し、その熱で発泡性樹脂材料20を加熱する。樹脂材料供給工程を行う前に、あらかじめ第1型200及び第2型100を加熱しておいてもよい。
【0031】
図2に示すように、加熱された発泡性樹脂材料20がキャビティ204内に供給された状態で、可動プラテン402を上昇させる。その後、外気遮断部材内部減圧機構(図示せず)により、外気遮断部材4000内部を減圧する。ここで、
図2(a)に示すように、弾性部材203aは、側面部材201上に配置した離型フィルム11が基板10に接触することで撓み始める。なお、離型フィルム11は、発泡性樹脂材料20が成形型1000のキャビティ204からはみ出さないタイミングで基板10と接触する。弾性部材203aが撓み始めると、離型フィルム11が部分的に押しつぶされた状態となる。
図2(b)に示すように、この段階では弾性部材203bには側面部材201が接触せず力が掛かっていないため、弾性部材203bは撓んでいない。弾性部材203aのみが撓んでいる状態であれば、離型フィルム11(側面部材201)と基板10とが接触していても、エアベント溝205からキャビティ204内を排気することができる。すなわち、離型フィルム11が基板10に接触しているため、発泡性樹脂材料20が減圧によって発泡した場合であっても、発泡性樹脂材料20が成形型1000から漏れることを防止することができる。また、離型フィルム11が基板10に接触しながらもキャビティ204内を十分に排気することができるため、成形後の樹脂の内部ボイドも軽減することができる。なお、発泡性樹脂材料20が成形型1000から漏れる前であれば、側面部材201上に配置した離型フィルム11が基板10に接触していない状態で、外気遮断部材4000内部を減圧してもよい。離型フィルム11が基板10に接触していない状態で減圧すれば、離型フィルム11が基板10に接触している状態よりも、キャビティ204内を素早く排気することができる。
【0032】
図2は、弾性部材203a及び弾性部材203bによって、キャビティ204の平面形状の外周に沿って力のかかる状態を部分的に異ならせた様子を示していることになる。また、
図2を用いて説明した内容は、樹脂形成工程において、キャビティ204の平面形状の外周に沿って力のかかる状態を部分的に異ならせてキャビティ204内の排気を行う工程の説明となる。
【0033】
ここで、
図5の第1型平面図により、離型フィルム11を第1型200の型面に吸着させる方法の一例を示す。離型フィルム11を吸着させる方法としては、例えば、
図5に示すように、側面部材201と主面部材202との隙間206(
図2~4では図示せず)や、第1型に形成された吸着孔(図示せず)から、吸引機構(図示せず、例えば真空ポンプ等)により吸引して、第1型200の型面に離型フィルム11を吸着させることができる。このように、第1型200の型面に離型フィルム11を型面に被覆して、側面部材201と主面部材202との隙間に樹脂が入り込むこと(樹脂漏れ)を防止できる。また、離型性が向上する。
【0034】
図3に示すように、
図2の状態からさらに可動プラテン402を上昇させると、弾性部材203bが側面部材201に接触して、弾性部材203bに力が加えられ、弾性部材203bが撓み始める。弾性部材203bが撓み始めると、離型フィルム11が基板10を押し付ける力が強くなるため、エアベント溝205からのキャビティ204内の排気量が少なくなる。したがって、弾性部材203bが撓み始める前に十分に排気が行われるよう、排気の条件を設定する。
【0035】
図3の状態からさらに可動プラテン402を上昇させると、
図4に示すように、弾性部材203bが十分に撓む。この段階で、十分な樹脂圧が掛けられた状態となり、型締めが完了する。その後、発泡性樹脂材料20を硬化(固化)させて硬化樹脂とした後に、第1型200を下降させて型開きをして、基板10が硬化樹脂で封止された樹脂成形品を成形型1000から取り出す。以上のようにして、樹脂成形を行い、樹脂成形品を製造することができる。なお、発泡性樹脂材料20を硬化させる方法は、特に限定されない。例えば、発泡性樹脂材料20が熱硬化性樹脂である場合は、加熱により硬化させてもよい。発泡性樹脂材料20が熱可塑性樹脂である場合は、冷却又は放冷により硬化させてもよい。また、
図2~4では樹脂材料として発泡性樹脂材料20を用いている。しかし、本発明において、樹脂材料は、発泡性樹脂材料のみには限定されない。さらに、
図2~4では、基板10の面上には何も配置されていないが、例えば、基板10の面上にチップ等が配置されていてもよい。そして、そのチップ等を、樹脂成形工程において樹脂封止(樹脂成形)し、チップが樹脂封止された電子部品(樹脂成形品)を製造してもよい。
【0036】
なお、第1型200において、型締め前(弾性部材203a及び弾性部材203bが収縮していない状態)におけるキャビティ204の深さは、特に限定されないが、例えば、1mm以上、3mm以上、5mm以上、又は10mm以上であってもよく、例えば、30mm以下、20mm以下、10mm以下、5mm以下、又は3mm以下であってもよい。型締め後(
図4の状態)におけるキャビティ204の深さは、特に限定されないが、例えば、1mm以上、3mm以上、5mm以上、10mm以上、又は15mm以上であってもよく、例えば、20mm以下、10mm以下、5mm以下、3mm以下、又は1mm以下であってもよい。この型締め後におけるキャビティ204の深さは、成形後の樹脂成形品の樹脂厚み(パッケージ厚み)とほぼ等しくなる。
【0037】
第1型200の形状は、特に限定されないが、例えば、
図5に示すように、長方形であってもよい。また、
図6に示すように、正方形であってもよい。さらに、図示していないが、例えば、円形であってもよい。
【0038】
図5において、エアベント溝205は、キャビティ204(主面部材202)を囲うように側面部材201上に設けられている。ここで、キャビティ204の長手方向(
図5において、横方向)に沿って設けられているエアベント溝205は、キャビティ204の長手方向の最も端に位置するものと、最も中心位置に近いものとで形状が異なる(エアベント溝205a、エアベント溝205b)。
図5においては、エアベント溝205aのキャビティ204の長手方向の幅が、エアベント溝205bのキャビティ204の長手方向のよりも広いが、これに限定されない。エアベント溝205aと205bとで、例えば、前述のように、幅(
図7において、横方向)だけを変えてもよいし(
図5、
図7(a))、深さ(
図7において、縦方向)だけを変えてもよいし(
図7(b))、幅と深さの両方を変えてもよい(
図7(c))。すなわち、エアベント溝205aの断面積が、エアベント溝205bの断面積よりも広くてもよい。エアベント溝の断面積を調整すれば、キャビティ204の排気量を容易に調整することができる。また、キャビティ204内に供給された発泡性樹脂材料20は、流動性を有する。キャビティ204の平面形状が矩形である場合、矩形のコーナ部分は樹脂が未充填となりやすい。これは、例えば、キャビティ204の内側から外側へと発泡性樹脂材料20が流動するため、コーナ部まで十分に樹脂が行き渡らないことが原因として考えられる。したがって、キャビティ204の長手方向の最も端に位置するエアベント溝205aの断面積を、最も中心位置に近いエアベント溝205bの断面積よりも広くすれば、キャビティ204内の排気(脱気)によってコーナ部にも十分に樹脂が行きわたらせることができる。
【0039】
第1型200の形状が正方形である場合のエアベント溝205の配置を、
図6に示す。
図5と同様、エアベント溝205は、キャビティ204’(主面部材202’)を囲うように側面部材201’上に設けられている。また、エアベント溝205aの断面積は、エアベント溝205bの断面積よりも広い。ここで、第1型200の形状が正方形である場合、キャビティ204’の四辺の長さは同じである。この場合、エアベント溝205aは、キャビティ204’の4つの角(コーナ部)に近い位置に設けられていることが好ましい。
【0040】
第1型200の形状が円形である場合(図示せず)、例えば、円形のキャビティを囲うよう、放射線状に複数のエアベント溝が設けられていることが好ましい。この場合、エアベント溝の数は、キャビティのサイズに応じて適宜選択することができる。
【0041】
第1型200の形状が、
図5の形状(長方形)である場合、例えば、弾性部材203a及び弾性部材203bは、
図1のように配置することができる。前述のとおり、キャビティのコーナ部は、発泡性樹脂材料が十分に行き渡りにくい。そのため、例えば、エアベント溝205aが位置する下方に弾性部材203bを設ければ、
図2の排気の段階ではエアベント溝205bと比べてエアベント溝205aには力が掛かっていないため、エアベント溝205aからの排気効率が向上する。
【0042】
第1型200の形状が、
図6の形状(正方形)である場合、例えば、弾性部材203a及び弾性部材203bは、
図8(a)のように配置することができる。第1型200の形状が長方形である場合と同じく、エアベント溝205aが位置する下方に弾性部材203bを設ければ、
図2の排気の段階ではエアベント溝205bと比べてエアベント溝205aに力が掛かっていないため、エアベント溝205aからの排気効率が向上する。
【0043】
弾性部材203a及び弾性部材203bの配置は、例えば、
図8(b)(c)のように、弾性部材203aと弾性部材203bとを交互に配置してもよい。この場合、例えば、弾性部材203aの上方にエアベント溝205bを設け、弾性部材203bの上方にエアベント溝205aを設けてもよい。
【0044】
なお、上記説明では、樹脂材料として発泡性樹脂材料を用いた例について説明した。樹脂材料として発泡性樹脂材料を用いた場合には、本発明を適用することにより、成形型の隙間からの発泡性樹脂材料のはみ出しに起因する樹脂もれを防止することができる。
【0045】
また、樹脂材料として、比較的粒径の小さいフィラーを混合した樹脂材料を用いてもよい。この場合、
図2により説明した離型フィルム11が基板10に接触するタイミングは、樹脂の発泡によるはみ出しのタイミングと関係なく設定してもよい。樹脂材料として、比較的粒径の小さいフィラーを混合した樹脂材料を用いた場合においても、本発明を適用することにより、樹脂もれを防止することができる。なお、フィラーとしては、例えば、シリカ製の粉粒体を用いることができる。
【0046】
また、樹脂材料として、流動性を低下させる材料を混合した樹脂材料を用いてもよい。この場合、
図2により説明した離型フィルム11が基板10に接触するタイミングは、樹脂の発泡によるはみ出しのタイミングと関係なく設定してもよい。樹脂材料として、流動性を低下させる材料を混合した樹脂材料を用いた場合には、樹脂の流動性が低下しても、本発明を適用することにより、離型フィルム11が基板10に接触した状態で排気し、キャビティ204内において樹脂が広がるのを促進させて、樹脂未充填部の発生を防止することができる。なお、流動性を低下させる材料としては、例えば、磁性体を挙げることができる。
基板供給・収納モジュールAは、基板供給部50と、基板収納部51と、搬送路52a、52bと、検査装置53と、基板搬送機構54と、基板載置部TMと、成形基板載置部WMと、制御部COMとを有する。基板供給部50は、成形前の樹脂成形対象物である基板10を供給する。搬送路52aは、基板供給部50から供給された基板10を、Y方向に搬送するのに用いられる。基板載置部TMは、搬送路52aで搬送された基板10が載置される。
基板搬送機構54は、基板載置部TMに載置された基板10をY方向に移動可能な移動機構(図示せず)から受け取り、基板供給・収納モジュールAおよび樹脂成形モジュールB内においてX方向およびY方向に移動して、基板10を樹脂成形モジュールBの成形型1000に搬送する。さらに、基板搬送機構54は、基板供給・収納モジュールAおよび樹脂成形モジュールB内においてX方向およびY方向に移動して、樹脂成形モジュールBの成形型1000で樹脂成形された樹脂成形基板W(樹脂成形品)を受け取り、基板供給・収納モジュールAに搬送する。
成形基板載置部WMは、基板搬送機構54から移動された樹脂成形基板WがY方向に移動可能な移動機構(図示せず)により載置される。搬送路52bは、成形基板載置部WMに載置された樹脂成形基板Wを、Y方向に搬送するのに用いられる。
検査装置53は、成形基板載置部WMから移動され搬送路52bで搬送されている樹脂成形基板Wの外観を検査する。基板収納部51は、搬送路52bから搬送された樹脂成形基板Wを収納する。
制御部COMは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じて各構成要素の制御を行うように構成されている。制御部COMは、少なくとも検査装置53を制御するように構成されており、樹脂成形装置1全体を制御するように構成されてもよい。
樹脂成形モジュールBは、基板10に樹脂を成形するための樹脂成形部であって、成形型1000と、外気遮断部材4000と有している。樹脂成形モジュールBは、樹脂材料供給部Cにより供給された発泡性樹脂材料20を用いて圧縮形成法によって樹脂成形基板W(樹脂成形品)を製造する。
圧縮成形用の成形型1000としては、たとえば、互いに対向して配置される第2型100および第1型200を備え、第2型100に基板10が供給され、第1型200に発泡性樹脂材料20が供給される構成のものを用いることができる。この例の場合、第1型200としては、キャビティ204の底面又は上面となる主面を構成する主面部材202と型キャビティ側面を構成する側面部材201とを備え、主面部材202と側面部材201とが相対的にスライド可能な構成のものを用いることができる。
樹脂材料供給モジュールCは、移動テーブル60と、移動テーブル60上に載置される樹脂材料収容部61と、樹脂材料収容部61に発泡性樹脂材料20を供給する樹脂材料供給部62と、樹脂材料収容部61を搬送して樹脂成形モジュールBの成形型1000に発泡性樹脂材料20を供給する樹脂材料搬送機構63とを有している。移動テーブル60は、樹脂材料供給モジュールC内においてX方向およびY方向に移動するように構成されている。樹脂材料搬送機構63は、樹脂材料供給モジュールCおよび樹脂成形モジュールB内において、X方向およびY方向に移動する。そして、樹脂材料搬送機構63は、発泡性樹脂材料20を収容した樹脂材料収容部61を成形型1000に搬送して発泡性樹脂材料20を供給する。樹脂材料収容部61としては、一例として、枠状部材の開口した下面を塞ぐように離型フィルムを配置して構成することができる。
さらに、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。