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特開2024-46102ハイブリット車両用電源装置の安全確保制御方法及びハイブリット車両用電源装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046102
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ハイブリット車両用電源装置の安全確保制御方法及びハイブリット車両用電源装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/04 20060101AFI20240327BHJP
   B60L 58/20 20190101ALI20240327BHJP
【FI】
B60L3/04 E
B60L58/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151285
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】李 岩
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BB09
5H125CD04
5H125EE06
5H125EE16
5H125EE26
5H125EE47
5H125EE48
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両の異常発生時に、従来に比して、さらなるフェイルセーフ機能の確保と、より高いフォールトトレランス性(耐障害性)を備えたハイブリット車両用電源装置を提供する。
【解決手段】ハイブリット車両の運転状態において、モータ制御用電子制御ユニット400により駆動補助用電気モータ1200の不具合が検出され、かつ、バッテリ電子制御ユニット210により48Vバッテリ52の不具合が検出されると共に、出力リレー12の開放失敗が検出された場合に、車両制御用電子制御ユニット300によりパイロヒューズ11が切断され、電源供給を断つことで、車両故障時の安全性の確保が図られる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリット車両用電源装置の安全確保制御方法であって、
前記ハイブリット車両は、前記ハイブリット車両用電源装置により電源供給されて内燃機関(1100)の駆動力不足を補助する駆動補助用電気モータ(1200)が設けられてなり、
前記ハイブリット車両用電源装置は、
第1のバッテリ(51)と、前記第1のバッテリ(51)の出力電圧よりも高い電圧を出力する第2のバッテリ(52)と、昇圧動作と降圧動作を可能に構成されてなるDC/DCコンバータ(100)とを有し、
前記DC/DCコンバータ(100)は、前記昇圧動作により前記第1のバッテリ(51)の出力電圧を基に前記第2のバッテリ(52)の出力電圧と同一の電圧を生成し、前記第2のバッテリ(52)を充電可能とする一方、前記降圧動作により前記第2のバッテリ(52)の出力電圧を基に前記第1のバッテリ(51)の出力電圧と同一の電圧を生成し、前記第1のバッテリ(51)を充電可能に構成されてなり、
前記DC/DCコンバータ(100)の昇圧電圧が得られる昇圧出力段とグランドとの間には、前記昇圧出力段側から、パイロヒューズ(11)、出力リレー(12)、前記第2のバッテリ(52)が順に直列接続されて設けられ、
前記駆動補助用電気モータ(1200)は、前記昇圧出力段に接続されて電源供給可能に設けられ、
前記パイロヒューズ(11)、及び、前記DC/DCコンバータ(100)のそれぞれの動作制御を可能に構成された車両制御用電子制御ユニット(300)と、前記出力リレー(12)の開閉成を制御可能に構成されたバッテリ電子制御ユニット(210)が、それぞれ設けられて構成されてなり、
前記ハイブリット車両の運転状態において、前記駆動補助用電気モータ(1200)の不具合が検出され、かつ、前記第2のバッテリ(52)の不具合が検出され、さらに、前記出力リレー(12)の開放失敗が検出された場合に、前記パイロヒューズ(11)を切断する一方、
前記駆動補助用電気モータ(1200)の不具合が検出された際に、前記第2のバッテリ(52)が正常状態にある場合には、前記DC/DCコンバータ(100)による前記第1のバッテリ(51)の充電動作を維持することを特徴とするハイブリット車両用電源装置の安全確保制御方法。
【請求項2】
前記DC/DCコンバータ(100)による前記第1のバッテリ(51)の充電動作の維持状態にあって、前記第2のバッテリ(52)の不具合が検出され、かつ、前記出力リレー(12)の開放失敗が検出された場合に、前記パイロヒューズ(11)を切断し、
前記DC/DCコンバータ(100)による前記第1のバッテリ(51)の充電動作の維持状態にあって、前記第2のバッテリ(52)が正常状態にある場合に、前記DC/DCコンバータ(100)の不具合が検出され、かつ、前記出力リレー(12)の開放失敗が検出された場合には、前記パイロヒューズ(11)を切断し、
前記DC/DCコンバータ(100)による前記第1のバッテリ(51)の充電動作の維持状態にあって、前記DC/DCコンバータ(100)が正常状態にある場合には、前記駆動補助用電気モータ(1200)の不具合の検出以降の処理を繰り返すことを特徴とする請求項1記載のハイブリット車両用電源装置の安全確保制御方法。
【請求項3】
前記ハイブリット車両の運転状態において、イグニッションスイッチのオフによる前記ハイブリット車両の運転停止の発生検出を行い、前記イグニッションオフが検出され、その後、前記出力リレー(12)の開放失敗が検出された場合、前記パイロヒューズ(11)を動作状態に維持することを特徴とする請求項2記載のハイブリット車両用電源装置の安全確保制御方法。
【請求項4】
前記イグニッションスイッチのオフからオンによる前記ハイブリット車両の運転開始が検出された際に、前記パイロヒューズ(11)、前記出力リレー(12)、前記第2のバッテリ(52)、及び、前記バッテリ電子制御ユニット(210)とを有して構成されるバッテリマネジメントシステム(200)における不具合として、前記出力リレー(12)の溶着のみが検出された場合、前記パイロヒューズ(11)を動作状態に維持し、しかる後、前記イグニッションスイッチのオンからオフへの検出から一連の処理を繰り返す一方、
前記バッテリマネジメントシステム(200)における不具合として、前記出力リレー(12)の溶着を含む複数の不具合が検出された場合、前記パイロヒューズ(11)を切断することを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれか記載のハイブリット車両用電源装置の安全確保制御方法。
【請求項5】
内燃機関の駆動力不足を補助する駆動補助用電気モータ(1200)を有するハイブリット車両に搭載され、前記駆動補助用電気モータ(1200)への電源供給を可能に構成されたハイブリット車両用電源装置であって、
前記ハイブリット車両用電源装置は、
第1のバッテリ(51)と、前記第1のバッテリ(51)の出力電圧よりも高い電圧を出力する第2のバッテリ(52)と、昇圧動作と降圧動作を可能に構成されてなるDC/DCコンバータ(100)とを有し、
前記DC/DCコンバータ(100)は、前記昇圧動作により前記第1のバッテリ(51)の出力電圧を基に前記第2のバッテリ(52)の出力電圧と同一の電圧を生成し、前記第2のバッテリ(52)を充電可能とする一方、前記降圧動作により前記第2のバッテリ(52)の出力電圧を基に前記第1のバッテリ(51)の出力電圧と同一の電圧を生成し、前記第1のバッテリ(51)を充電可能に構成されてなり、
前記DC/DCコンバータ(100)の昇圧電圧が得られる昇圧出力段とグランドとの間には、前記昇圧出力段側から、パイロヒューズ(11)、出力リレー(12)、前記第2のバッテリ(52)が順に直列接続されて設けられ、
前記駆動補助用電気モータ(1200)は、前記昇圧出力段に接続されて電源供給可能に設けられ、
前記パイロヒューズ(11)、及び、前記DC/DCコンバータ(100)のそれぞれの動作制御を可能に構成された車両制御用電子制御ユニット(300)と、
前記出力リレー(12)の開閉成を制御可能に構成されたバッテリ電子制御ユニット(210)と、
前記駆動補助用電気モータ(1200)の動作制御を可能に構成されたモータ制御用電子制御ユニット(400)とが設けられ、
前記第1のバッテリ(51)と前記第2のバッテリ(52)とで、それぞれの電圧を要する回路への電源電圧の供給を可能に構成されてなり、
前記ハイブリット車両の運転状態において、前記モータ制御用電子制御ユニット(400)により前記駆動補助用電気モータ(1200)の不具合が検出され、かつ、前記バッテリ電子制御ユニット(210)により前記第2のバッテリ(52)の不具合が検出されると共に、前記出力リレー(12)の開放失敗が検出された場合に、車両制御用電子制御ユニット(300)により前記パイロヒューズ(11)を切断せしめる一方、
前記モータ制御用電子制御ユニット(400)により前記駆動補助用電気モータ(1200)の不具合が検出された際に、前記第2のバッテリ(52)が正常状態にある場合には、前記DC/DCコンバータ(100)による前記第1のバッテリ(51)の充電動作を維持せしめるよう構成されてなることを特徴とするハイブリット車両用電源装置。
【請求項6】
前記DC/DCコンバータ(100)による前記第1のバッテリ(51)の充電動作の維持状態にあって、前記バッテリ電子制御ユニット(210)により前記第2のバッテリ(52)の不具合が検出され、かつ、前記出力リレー(12)の開放失敗が検出された場合に、車両制御用電子制御ユニット(300)により前記パイロヒューズ(11)を切断せしめ、
前記DC/DCコンバータ(100)による前記第1のバッテリ(51)の充電動作の維持状態にあって、前記第2のバッテリ(52)が正常状態にある場合に、前記DC/DCコンバータ(100)の不具合が検出され、かつ、前記バッテリ電子制御ユニット(210)による前記出力リレー(12)の開放失敗が検出された場合には、前記車両制御用電子制御ユニット(300)により前記パイロヒューズ(11)を切断せしめ、
前記DC/DCコンバータ(100)による前記第1のバッテリ(51)の充電動作の維持状態にあって、前記DC/DCコンバータ(51)が正常状態にある場合には、前記駆動補助用電気モータ(1200)の不具合の検出以降の処理を繰り返すよう構成されてなることを特徴とする請求項5記載のハイブリット車両用電源装置。
【請求項7】
前記ハイブリット車両の運転状態において、イグニッションスイッチのオンからオフへの切り替えによる前記ハイブリット車両の運転停止が前記車両制御用電子制御ユニット(300)によって検出され、その後、バッテリ電子制御ユニット(210)により前記出力リレー(12)の開放失敗が検出された場合、前記車両制御用電子制御ユニット(300)により前記パイロヒューズ(11)を動作状態に維持することを特徴とする請求項6記載のハイブリット車両用電源装置。
【請求項8】
前記イグニッションスイッチのオフからオンによる前記ハイブリット車両の運転開始が前記車両制御用電子制御ユニット(300)により検出された際に、前記パイロヒューズ(11)、前記出力リレー(12)、前記第2のバッテリ(52)、及び、前記バッテリ電子制御ユニット(210)とを有して構成されるバッテリマネジメントシステム(200)における不具合として、前記出力リレー(12)の溶着のみが前記バッテリ電子制御ユニット(210)により検出された場合、前記車両制御用電子制御ユニット(300)により前記パイロヒューズ(11)を動作状態に維持せしめ、しかる後、前記イグニッションスイッチのオンからオフへの検出から一連の処理を繰り返す一方、
前記バッテリマネジメントシステム(200)における不具合として、前記出力リレー(12)の溶着を含む複数の不具合が前記バッテリ電子制御ユニット(210)により検出された場合、前記車両制御用電子制御ユニット(300)により前記パイロヒューズ(11)を切断せしめることを特徴とする請求項5乃至請求項7いずれか記載のハイブリット車両用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるハイブリット車両において用いられるハイブリット車両用電源装置に係り、特に、故障に起因する過電流や感電等の発生を確実に回避、防止し、安全性、信頼性の向上等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の電源装置においては、複数の電源電圧が必要とされる構成となることがあり、例えば、内燃機関の駆動力の補助のための電気モータを有する、いわゆるハイブリット車両などにおいては、車両駆動用バッテリ電圧系統としての高電圧系(例えば、48V系)と、種々の制御装置への電源供給を担う低電圧系(例えば、12V系)を設けた構成が良く知られているところである。
【0003】
このような電源装置の構成における従来の故障時の安全対策としては、48Vバッテリの正極側出力端に出力リレーを設け、48V電源供給を断つ必要がある場合に、リレーを開放して強制的に48V電圧の供給を停止可能とすると共に、出力リレーにおける開閉接点の溶着時の対策として、出力リレーと直列にヒューズを設ける構成が用いられることがある。
また、近年、車両電源の高電圧化によるさらなる安全性の確保等の観点から、従来の溶断型のヒューズに対して、電気信号を用いて意図的に回路遮断を可能としたパイロヒューズを用いた電源装置なども提案、実用化されている(例えば、特許文献1、特許文献2等参照)。
【0004】
ところで、上述のような従来の電源装置、すなわち、出力リレーと溶断型の従来のヒューズが直列接続されて設けられた構成においては、出力リレーの溶着が発生した場合、基本的には、いわゆるディーラーでの修理が必要となる。
そのため、緊急的な暫定処置として、ディーラ-まで必要最低限の走行能力を維持しつつ、走行を確保することが望まれるが、上述の高電圧系(48V系)におけるフェイルセーフ機能としては、上述の溶断型ヒューズ以外は殆ど機能しない状態となるため、安全性の観点からは十分満足できるとは言い難く、そのため、通常、48V系の使用を停止した状態での緊急走行となることが殆どである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-059202号公報
【特許文献2】特開2020-124007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のように一律に高電圧系電源の使用を停止するだけでは、局所的なフェイルセーフの確保はできるとしても、車両運転における操作性や利便性、さらには、フォールトトレランス性(耐障害性)の確保等の観点からは、より柔軟性の高い方策が採られることが望まれる。
【0007】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、車両の異常発生時に、従来に比して、フェイルセーフ機能の確保とフォールトトレランス性(耐障害性)のさらなる向上を図ることのできるハイブリット車両用電源装置の安全確保制御方法及びハイブリット車両用電源装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係るハイブリット車両用電源装置の安全確保制御方法は、
ハイブリット車両用電源装置の安全確保制御方法であって、
前記ハイブリット車両は、前記ハイブリット車両用電源装置により電源供給されて内燃機関(1100)の駆動力不足を補助する駆動補助用電気モータ(1200)が設けられてなり、
前記ハイブリット車両用電源装置は、
第1のバッテリ(51)と、前記第1のバッテリ(51)の出力電圧よりも高い電圧を出力する第2のバッテリ(52)と、昇圧動作と降圧動作を可能に構成されてなるDC/DCコンバータ(100)とを有し、
前記DC/DCコンバータ(100)は、前記昇圧動作により前記第1のバッテリ(51)の出力電圧を基に前記第2のバッテリ(52)の出力電圧と同一の電圧を生成し、前記第2のバッテリ(52)を充電可能とする一方、前記降圧動作により前記第2のバッテリ(52)の出力電圧を基に前記第1のバッテリ(51)の出力電圧と同一の電圧を生成し、前記第1のバッテリ(51)を充電可能に構成されてなり、
前記DC/DCコンバータ(100)の昇圧電圧が得られる昇圧出力段とグランドとの間には、前記昇圧出力段側から、パイロヒューズ(11)、出力リレー(12)、前記第2のバッテリ(52)が順に直列接続されて設けられ、
前記駆動補助用電気モータ(1200)は、前記昇圧出力段に接続されて電源供給可能に設けられ、
前記パイロヒューズ(11)、及び、前記DC/DCコンバータ(100)のそれぞれの動作制御を可能に構成された車両制御用電子制御ユニット(300)と、前記出力リレー(12)の開閉成を制御可能に構成されたバッテリ電子制御ユニット(210)が、それぞれ設けられて構成されてなり、
前記ハイブリット車両の運転状態において、前記駆動補助用電気モータ(1200)の不具合が検出され、かつ、前記第2のバッテリ(52)の不具合が検出され、さらに、前記出力リレー(12)の開放失敗が検出された場合に、前記パイロヒューズ(11)を切断する一方、
前記駆動補助用電気モータ(1200)の不具合が検出された際に、前記第2のバッテリ(52)が正常状態にある場合には、前記DC/DCコンバータ(100)による前記第1のバッテリ(51)の充電動作を維持するよう構成されてなるものである。
また、上記本発明の目的を達成するため、本発明に係るハイブリット車両用電源装置は、
内燃機関の駆動力不足を補助する駆動補助用電気モータ(1200)を有するハイブリット車両に搭載され、前記駆動補助用電気モータ(1200)への電源供給を可能に構成されたハイブリット車両用電源装置であって、
前記ハイブリット車両用電源装置は、
第1のバッテリ(51)と、前記第1のバッテリ(51)の出力電圧よりも高い電圧を出力する第2のバッテリ(52)と、昇圧動作と降圧動作を可能に構成されてなるDC/DCコンバータ(100)とを有し、
前記DC/DCコンバータ(100)は、前記昇圧動作により前記第1のバッテリ(51)の出力電圧を基に前記第2のバッテリ(52)の出力電圧と同一の電圧を生成し、前記第2のバッテリ(52)を充電可能とする一方、前記降圧動作により前記第2のバッテリ(52)の出力電圧を基に前記第1のバッテリ(51)の出力電圧と同一の電圧を生成し、前記第1のバッテリ(51)を充電可能に構成されてなり、
前記DC/DCコンバータ(100)の昇圧電圧が得られる昇圧出力段とグランドとの間には、前記昇圧出力段側から、パイロヒューズ(11)、出力リレー(12)、前記第2のバッテリ(52)が順に直列接続されて設けられ、
前記駆動補助用電気モータ(1200)は、前記昇圧出力段に接続されて電源供給可能に設けられ、
前記パイロヒューズ(11)、及び、前記DC/DCコンバータ(100)のそれぞれの動作制御を可能に構成された車両制御用電子制御ユニット(300)と、
前記出力リレー(12)の開閉成を制御可能に構成されたバッテリ電子制御ユニット(210)と、
前記駆動補助用電気モータ(1200)の動作制御を可能に構成されたモータ制御用電子制御ユニット(400)とが設けられ、
前記第1のバッテリ(51)と前記第2のバッテリ(52)とで、それぞれの電圧を要する回路への電源電圧の供給を可能に構成されてなり、
前記ハイブリット車両の運転状態において、前記モータ制御用電子制御ユニット(400)により前記駆動補助用電気モータ(1200)の不具合が検出され、かつ、前記バッテリ電子制御ユニット(210)により前記第2のバッテリ(52)の不具合が検出されると共に、前記出力リレー(12)の開放失敗が検出された場合に、車両制御用電子制御ユニット(300)により前記パイロヒューズ(11)を切断せしめる一方、
前記モータ制御用電子制御ユニット(400)により前記駆動補助用電気モータ(1200)の不具合が検出された際に、前記第2のバッテリ(52)が正常状態にある場合には、前記DC/DCコンバータ(100)による前記第1のバッテリ(51)の充電動作を維持せしめるよう構成されてなるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高電圧系バッテリの即時遮断は必要でないと判断された場合には、パイロヒューズを切断することなく、DC/DCコンバータの降圧動作による低電圧系バッテリの充電を継続可能とすることで、低電圧系の電源供給を受ける各種の電子制御ユニットなどの動作を確保できるため、従来に比して、より確実に車両のフェイルセーフ機能を維持しつつ、内燃機関単独での緊急的な自力走行を安全に実施することができ、しかも、低電圧系バッテリの充電が継続されるので、緊急的な自力走行の継続時間を、低電圧系バッテリの充電継続ができない構成の従来装置に比して、確実に延長することが可能となるという効果を奏するものである。
【0010】
また、出力リレーの溶着状態にあって、ディーラーにおける修理作業を開始する際に、テスターから車両制御用電子制御ユニットを介してのパイロヒューズの切断を可能としたので、いわゆる活性状態での作業を回避でき、より安全性の高い修理作業の実施が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態におけるハイブリット車両用電源装置が設けられるハイブリット車両の構成例を示す構成図である。
図2】本発明の実施の形態におけるハイブリット車両用電源装置の回路構成例を示す回路図である。
図3】本発明の実施の形態におけるハイブリット車両用電源装置において実行される安全確保制御処理の概略処理手順を示すフローチャートである。
図4】サブルーチン1の具体的な処理手順を示すフローチャートである。
図5】サブルーチン2の具体的な処理手順を示すフローチャートである。
図6】サブルーチン3の具体的な処理手順を示すフローチャートである。
図7】サブルーチン4の具体的な処理手順を示すフローチャートである。
図8】サブルーチン5の具体的な処理手順を示すフローチャートである。
図9】故障診断装置を接続して行われるパイロヒューズ切断処理の手順を示すフローチャートである。
図10】サブルーチン1の処理の中でパイロヒューズ切断に至る過程におけるハイブリット車両用電源装置の主要部における各種信号などの模式的なタイミング図である。
図11】サブルーチン1の処理の中で降圧充電維持に至る過程におけるハイブリット車両用電源装置の主要部における各種信号などの模式的なタイミング図である。
図12】サブルーチン2の処理過程におけるハイブリット車両用電源装置の主要部における各種信号などの模式的なタイミング図である。
図13】サブルーチン3の処理過程におけるハイブリット車両用電源装置の主要部における各種信号などの模式的なタイミング図である。
図14】サブルーチン4の処理過程における車両用電源装置の主要部における各種信号などの模式的なタイミング図である。
図15】サブルーチン5の処理過程におけるハイブリット車両用電源装置の主要部における各種信号などの模式的なタイミング図である。
図16】サブルーチン4の処理過程におけるハイブリット車両用電源装置の主要部における各種信号などの模式的なタイミング図である。
図17図9に示されたフローチャートに基づく一連の処理過程における主要部の各種信号などの模式的なタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図17を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態におけるハイブリット車両用電源装置が用いられるハイブリット車両の概略構成について、図1を参照しつつ説明する。
図1に示されたハイブリット車両は、内燃機関としてのエンジン1100と、駆動補助用電気モータ(図1においては「48V M」と表記)1200とを、車輪の駆動源として有している。
エンジン1100と駆動補助用電気モータ1200は、ベルト1110を介して変速機(図1においては「TM」と表記)1300と接続されており、エンジン1100の駆動力が不足する場合、駆動補助用電気モータ1300による駆動力がエンジン1100の駆動力と共に、駆動輪1400a,1400bに伝達可能に構成されたものとなっている。
また、車両用空調装置に用いられるコンプレッサ(図1においては「COMP」と表記)1500は、ベルト1100を介してエンジン1100からの回転力を得ることができよう構成されている。
さらに、スターターモータ(図1においては「ST」と表記)1600が、ベルト1100を介してエンジン始動時に回転力をエンジン1100へ与えることができるよう設けられている。
【0013】
このハイブリット車両においては、駆動補助用電気モータ1200として48V交流モータが用いられている。
この駆動補助用電気モータ1200は、インバータ(図1においては「48V INV」と表記)1250により、リチウム電池を用いた48Vバッテリ(図1においては「48V BT」と表記)52の直流出力電圧を交流変換して得られた交流電圧が供給されるようになっている。
【0014】
このハイブリット車両には、12Vバッテリ(図1においては「12V BT」と表記)51が搭載されており、DC/DCコンバータ(図1においてはDC/DCと表記)100の昇圧動作により48Vバッテリ52の充電を可能としている。
なお、詳細は後述するように、これら12Vバッテリ51、DC/DCコンバータ100などにより、本発明の実施の形態におけるハイブリット車両用電源装置が構成されるものとなっている。
【0015】
次に、本発明の実施の形態におけるハイブリット車両用電源装置の構成例について、図2を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態におけるハイブリット車両用電源装置は、DC/DCコンバータ100と、バッテリマネジメントシステム(図2においては「BMS」と表記)200と、車両制御用電子制御ユニット(図2においては「VCU」と表記)300と、モータ制御用電子制御ユニット(図2においては「M-ECU」と表記)400と、12Vバッテリ51とを、主たる構成要素として構成されたものとなっている。
【0016】
本発明の実施の形態におけるDC/DCコンバータ100は、双方向DC/DCコンバータであり、具体的には、12Vを昇圧することで48V(昇圧電圧)を得ることができる一方、48Vを降圧することで12V(降圧電圧)を得ることが可能に構成されている。かかるDC/DCコンバータ100は、上述の昇圧、降圧動作に加え、内部の種々の回路故障や動作異常などを自己診断可能に構成される一方、始動や動作停止が、車両制御用電子制御ユニット300によって制御可能に構成されている。なお、このような構成自体は、本発明特有のものではなく、基本的に従来と同様のものである。
DC/DCコンバータ100の降圧出力段に接続された12V高圧ライン1と、グランドライン3との間には、鉛電池を用いた12Vバッテリ51が接続されると共に、12Vの電源供給を必要とする負荷50が接続されている。
なお、負荷50は、12Vの電源供給を受ける複数の機器、装置等を概念的に表したものである。
【0017】
また、DC/DCコンバータ100の昇圧出力段に接続された48V高圧ライン2と、グランドライン3との間には、48Vの電源供給を必要とする駆動補助用電気モータ1200が接続されている。
なお、駆動補助用電気モータ1200は、モータ制御用電子制御ユニット400により、その動作が制御されると共に、回路故障や動作異常の診断処理が実行されるものとなっている。かかるモータ制御用電子制御ユニット400は、例えば、公知・周知の構成を有してなるマイクロコンピュータを中心にRAMやROM等の記憶素子(図示せず)を備え、上述のようなモータの動作制御や故障等の診断処理が実行可能に構成されたもので、そのような構成自体は、従来から良く知られているものである。
【0018】
一方、バッテリマネジメントシステム200は、48Vバッテリ52、パイロヒューズ11、出力リレー12、及び、バッテリ電子制御ユニット(図2においては「B-ECU」と表記)210とを有して、従来同様の48V電圧の出力制御に加えて、本発明の実施の形態における安全確保制御が実行可能に構成されてなるものである。
【0019】
以下、かかるバッテリマネジメントシステム200の具体的な回路構成について説明すれば、まず、48V高圧ライン2とグランドライン3との間には、48V高圧ライン2側から、パイロヒューズ11、出力リレー12、48Vバッテリ52の順で、これらが直列接続されて設けられている。
パイロヒューズ11は、外部からの制御信号によって機械的に切断可能に構成されたものである。
【0020】
かかるパイロヒューズ11の構成としては、例えば、外部からの制御信号によって点火器と称される火薬を用いた部品に点火電流を流して燃焼させ、それによってガスを発生させ、そのガス圧によってピストンを変位させることでヒューズ部分を機械的に切断可能に構成されたものなどがあるが、これは、あくまでも一例であり、特定の構成に限定される必要はないものである。
本発明の実施の形態においては、後述するように、車両制御用電子制御ユニット300による制御信号によって、パイロヒューズ11の切断が行われるようになっている。
【0021】
出力リレー12は、48V高圧ライン2への48V電圧の印加の有無を制御するもので、後述するバッテリ電子制御ユニット210により、その開閉が制御されるようになっている。
本発明の実施の形態における48Vバッテリ52は、リチウム電池を用いたもので、その構成自体は、従来から良く知られている通りのものと同様である。
バッテリ電子制御ユニット210は、例えば、公知・周知の構成を有してなるマイクロコンピュータを中心にRAMやROM等の記憶素子(図示せず)を備え、出力リレー12の開閉成制御が実行可能に構成されると共に、後述するようなバッテリマネジメントシステム200における各種のエラー検出、すなわち、出力リレー12の溶着の検出、48Vバッテリ52の温度異常や出力電圧異常などの検出が可能に構成されたものとなっている。
【0022】
上述のバッテリ電子制御ユニット210、車両制御用電子制御ユニット300、及び、モータ制御用電子制御ユニット400は、CAN(Controller Area Network)ケーブル4を介してCAN通信が可能に設けられており、後述する本発明の実施の形態におけるハイブリット車両用電源装置の安全確保制御処理の実行に必要な情報等の相互間の授受を可能としている。
【0023】
次に、上述した構成におけるハイブリット車両用電源装置において実行される安全確保制御の処理手順について、図3乃至図8に示されたフローチャートを参照しつつ説明する。
まず、図3乃至図8に示された本発明の実施の形態におけるハイブリット車両用電源装置の安全確保制御処理は、以下説明するように車両制御用電子制御ユニット300と、バッテリ電子制御ユニット210と、モータ制御用電子制御ユニット400の協動動作により実行されるものとなっている。
図3に示されたフローチャートは、本発明の実施の形態におけるハイブリット車両用電源装置の安全確保制御処理の全体の概略の手順を示しており、同図において、”SUB”の表記は、”サブルーチン”を意味し、その後の数字は、各サブルーチンを区別するためのものである。
【0024】
図4乃至図8の各フローチャートには、上述の各サブルーチン(SUB1~SUB5)の具体的な処理内容が、それぞれ示されている。
なお、図4乃至図8に示されたフローチャートにおいては、車両制御用電子制御ユニット300において実行される処理については、括弧書きで”VCU”の表記を、また、バッテリ電子制御ユニット210において実行される処理については、括弧書きで”BMS”の表記を、モータ制御用電子制御ユニット400において実行される処理については、括弧書きで”M-ECU”の表記を、DC/DCコンバータ100において実行される処理については、括弧書きで”DC/DC”の表記を、それぞれ付している。
【0025】
最初に、本発明の実施の形態におけるハイブリット車両用電源装置の安全確保制御処理の全体の概略の手順について、図3を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態におけるハイブリット車両用電源装置の安全確保制御処理の開始は、いわゆる電装品への電源供給が開始された状態、すなわち、車両制御用電子制御ユニット300、バッテリ電子制御ユニット210、モータ制御用電子制御ユニット400、DC/DCコンバータ100等に所要の電源電圧が供給されて動作状態にあることが前提である。
そして、上述のように所要の電源電圧の供給がなされると、ステップS100においてサブルーチン1が、ステップ700においてサブルーチン4が、ステップS900においてサブルーチン5が、同時並行的に実行されるものとなっている(図3参照)。
【0026】
サブルーチン1の実行後には、ステップS200において、また、サブルーチン4の実行後には、ステップS800において、安全処理実行確認フラグS-FLが”1”であるか否かが、それぞれ判定される(図3参照)。
なお、本発明の実施の形態においては、この図3に示された制御処理全体の実行状況を、車両制御用電子制御ユニット300において認識、把握するものとしている。そのため、上述のステップS200、S800におけるフラグ判定は、車両制御用電子制御ユニット300により実行されるものとなっている。
上述の車両制御用電子制御ユニット300による制御処理全体の実行状況の認識、把握は、あくまでも一例であり、これに限定される必要はなく、他のユニット、例えば、バッテリ電子ユニット210等で担うようにしても良いものである。
ここで、安全処理実行確認フラグS-FLは、フェイルセーフの観点から安全確保処理としてのパイロヒューズ切断が実行されたか否かを判定するためのフラグであり、パイロヒューズ切断が実行された場合に”1”に設定されるものである(詳細は後述)。
また、サブルーチン5は、他のサブルーチンにおいてパイロヒューズ切断がなされるまで処理が繰り返されることとなる(詳細は後述)。
【0027】
しかして、ステップS200、又は、ステップS800のいずれかにおいて、S-FL=1と判定された場合(YESの場合)、車両の動作状態は、何らかの故障や異常状態にあるとして一連の処理は終了されることとなる。
このような故障・異常状態の発生に対しては、通常、警報音の発生や警告灯の点灯などを実行するための故障・異常処理などと称される処理が別途実行可能に設けられており、図3の一連の処理の終了後は、そのような故障・異常処理へ移行することとなる。なお、このような故障・異常処理の具体的な処理内容は、車両の仕様等を考慮して適切なものが定められるものであり、上述した処理例に限定されるものではない。
【0028】
一方、先のステップS800において、安全処理実行確認フラグS-FLは”1”ではないと判定された場合(NOの場合)、サブルーチン4が再び実行されることとなる。
また、先のステップS200において、安全処理実行確認フラグS-FLは”1”ではないと判定された場合(NOの場合)、ステップ300においてサブルーチン2が実行されることとなる(図3参照)。
【0029】
サブルーチン2の実行後、先のサブルーチン1の場合同様、ステップS400において、車両制御用電子制御ユニット300により、安全処理実行確認フラグS-FLが”1”であるか否かが判定され、S-FL=1と判定された場合(YESの場合)、一連の処理は終了されることとなる(図3参照)。一方、ステップS400において、車両制御用電子制御ユニット300により、S-FL=1ではないと判定された場合(NOの場合)、ステップS500においてサブルーチン3が実行されることとなる(図3参照)。
【0030】
サブルーチン3の実行後、先のサブルーチン2の場合同様、ステップS600において、車両制御用電子制御ユニット300により、安全処理実行確認フラグFLが”1”であるか否かが判定され、S-FL=1と判定された場合(YESの場合)、一連の処理は終了されることとなる。一方、ステップS600において、車両制御用電子制御ユニット300により、S-FL=1ではないと判定された場合(NOの場合)、サブルーチン1以降の処理が繰り返されることとなる(図3参照)。
【0031】
次に、サブルーチン1の具体的な処理内容について、図4を参照しつつ説明する。
最初に、車両制御用電子制御ユニット300により、ステップS105においてIG ON判定が行われる(図4参照)。
すなわち、イグニッションスイッチ(図示せず)がオフ状態からオン状態とされ、エンジン始動状態とされたか否かが判定され、イグニッションスイッチ(図示せず)がオフ状態からオン状態とされたと判定されると次述するステップS110の処理へ進むこととなる。
【0032】
ステップS110においては、バッテリマネジメントシステム200において、48V電源装置始動完了の処理が実行される(図4参照)。すなわち、バッテリ電子制御ユニット210により出力リレー12が閉成され、48Vバッテリ52による48V電圧が48V高圧ライン2に印加されることとなる。
【0033】
次いで、モータ制御用電子制御ユニット400により、ステップS115においてモーターエラー判定が行われる(図4参照)。
すなわち、駆動補助用電気モータ1200の動作に何らかの異常が生じているか否かがモータ制御用電子制御ユニット400により判定される。
その結果、モータ制御用電子制御ユニット400により、駆動補助用電気モータ1200の動作に異常有りと判定された場合(YESの場合)、換言すれば、モーターエラー有りと判定された場合、次述するステップS120の処理へ進むこととなる。一方、モータ制御用電子制御ユニット400により駆動補助用電気モータ1200の動作に異常は無いと判定された場合(NOの場合)、換言すれば、モーターエラー無しと判定された場合、後述するステップS155の処理へ進むこととなる。
【0034】
なお、駆動補助用電気モータ1200の動作の異常としては、過電流や電圧低下等が考えられるが、如何なる動作状態を動作異常とするかは、車両の仕様等を考慮してそれぞれ任意に定められるべきものであり、特定の状態に限定されるべきものではない。
【0035】
なお、図10及び図11には、このサブルーチン1の処理過程における主要部の各種信号等のタイミング図が示されており、図10は、特に、ステップS115からステップS125を経てステップS140へ至るまで、図11は、特に、ステップS115からS150へ至るまで、それぞれの主要部の各種信号等のタイミング図である。なお、いずれの図も横軸は時間の経過を、縦軸は、動作状態や制御信号等を、それぞれ示し、縦軸については、具体的には個別的に後述する通りである。
図10(A)は、上述のモータ制御用電子制御ユニット400によるモーターエラー判定における判定動作のタイミングを示すタイミング図である。
【0036】
すなわち、図10(A)において、”M-DIG”の表記は、「モータ制御用電子制御ユニット400によるモーターエラー判定動作」を意味し、また、”ER”は、モーターエラー有りと判定された場合を、”NO”は、モーターエラーは無いと判定された場合を、それぞれ意味している。
この図10(A)は、モータ制御用電子制御ユニット400によるモーターエラー判定動作が、ステップS115の処理実行のタイミングにおいて、モーターエラー有りと判定された状態となった場合を示している。
【0037】
次いで、ステップS115において、モータ制御用電子制御ユニット400により駆動補助用電気モータ1200の動作に異常有りと判定された場合(YESの場合)、モータ制御用電子制御ユニット400によりステップS120が実行され、車両制御用電子制御ユニット300に対してモータ制御用電子制御ユニット400からモーターエラー通知送信がCANケーブル4を介して行われる(図4参照)。
【0038】
次いで、バッテリ電子制御ユニット210により、ステップS125において、48V電源装置エラー判定が行われる(図4参照)。
すなわち、バッテリマネジメントシステム200において所定の故障、異常などの何らかの不具合、いわゆるエラーが発生しているか否かが、バッテリ電子制御ユニット210により判定される。ここで、所定の故障、異常などの何らかの不具合は、例えば、48Vバッテリ52の電圧低下や過熱などを挙げることができるが、具体的な内容は、これらに限定されるものではなく、個々のバッテリマネジメントシステム毎に任意に定められるべきものである。
【0039】
バッテリ電子制御ユニット210により48V電源装置エラーが発生している、すなわち、上述のような何らかの故障、異常が発生していると判定された場合(YESの場合)、ステップS130の処理へ進むこととなる。一方、バッテリ電子制御ユニット210により48V電源装置エラーは無いと判定された場合(NOの場合)、後述するステップS150の処理へ進むこととなる。
【0040】
次いで、ステップS130においては、バッテリ電子制御ユニット210によりリレー開放が実行されることとなる。
すなわち、バッテリ電子制御ユニット210により出力リレー12を開成状態とする所定の制御信号が出力され、出力リレー12が開成状態とされる。
図10(D)には、バッテリ電子制御ユニット210による出力リレー12の開閉制御動作のタイミングを示すタイミング図が示されている。
【0041】
すなわち、図10(D)において、”BMS-CC”は、「バッテリ電子制御ユニット210による出力リレー12の開閉制御動作」を意味し、また、”CON”は、出力リレー12を閉成状態とする制御信号が出力されている状態を、”DIS”は、出力リレー12を閉成状態とする制御信号の出力が停止された状態を、それぞれ示している。
この図10(D)は、上述のステップS130の処理実行のタイミングにおいて、バッテリ電子制御ユニット210により出力リレー12を閉成状態とする制御信号の出力が停止された状態になることを示している。
【0042】
次いで、バッテリ電子制御ユニット210により、ステップS135において開放成功判定が行われる(図4参照)。
すなわち、出力リレー12が正常に開成状態とされたか否かがバッテリ電子制御ユニット210により判定される。
そして、バッテリ電子制御ユニット210により、開放成功、すなわち、出力リレー12が正常に開成状態とされたと判定された場合(YESの場合)、後述するステップS155の処理へ進むこととなる。一方、バッテリ電子制御ユニット210により、開放不成功(開放失敗)、すなわち、出力リレー12は開成状態とされていないと判定された場合(NOの場合)、バッテリ電子制御ユニット210から車両制御用電子制御ユニット300に対して、出力リレー12の開放が失敗したとするリレー開放エラー通知がCANケーブル4を介して行われ、次述するステップS140の処理へ進むこととなる。
【0043】
なお、図10(C)には、バッテリマネジメントシステム200における開放成功判定動作のタイミングを示すタイミング図が示されている。
すなわち、図10(C)において、”BMS-CDIG”は、「バッテリマネジメントシステム200における開放成功判定動作」を意味し、”ER”は、出力リレー12の開放が失敗と判定された場合を、”NO”は、出力リレー12は正常に開成状態とされたと判定された場合を、それぞれ意味している。
この図10(C)は、ステップS135の処理実行のタイミングにおいて、出力リレー12の開放が失敗と判定された状態となった場合を示している。
【0044】
次に、ステップS140においては、車両制御用電子制御ユニット300によりパイロヒューズ切断が行われる。
すなわち、車両制御用電子制御ユニット300よりパイロヒューズ11に対して、パイロヒューズ切断のための切断制御信号が出力され、パイロヒューズ11は切断状態とされる。
図10(B)には、車両制御用電子制御ユニット300におけるパイロヒューズ切断動作のタイミングを示すタイミング図が示されている。
【0045】
すなわち、図10(B)において、”PF-CON”は、「車両制御用電子制御ユニット300におけるパイロヒューズ切断制御動作」を意味し、また、”CON”は、パイロヒューズ11を接続状態とするための制御信号が出力されている状態を、”DIS”は、パイロヒューズ11を接続状態とするための制御信号が停止されている状態(換言すれば、パイロヒューズ11が切断された場合)を、それぞれ示している。
この図10(B)は、上述のステップS140の処理タイミングにおいて、パイロヒューズ11を接続状態とするための制御信号が停止されて、パイロヒューズ11が切断状態とされることを示している。
【0046】
また、図10(E)には、48V高圧ライン2と48Vバッテリ52との接続状態のタイミングを示すタイミング図が示されている。
すなわち、図10(E)において、”48V-L”は、「48V高圧ライン2と48Vバッテリ52との接続状態」を意味し、また、”CON”は、48V高圧ライン2と48Vバッテリ52が接続状態にあることを、”DIS”は、48V高圧ライン2と48Vバッテリ52が非接続状態にあることを、それぞれ示している。
この図10(E)は、上述のステップS140の処理タイミングにおいて、パイロヒューズ11が切断された際に、48V高圧ライン2と48Vバッテリ52が接続状態から非接続状態となることを示している。
【0047】
次いで、ステップS145において、車両制御用電子制御ユニット300により、安全処理実行確認フラグS-FLが”1”に設定されると共に、その設定値は、両制御用電子制御ユニット300内の適宜な記憶領域に、記憶、保持されることとなる(図4参照)。
ここで、安全処理実行確認フラグは、本発明の実施の形態において、いわゆるフェイルセーフやフォールトトレランス性(耐障害性)の観点から定められた所定の処理が実行された場合に”1”に設定されるフラグである。このフラグは、上述の所定の処理が実行された場合に、それに対応した他の処理(例えば、警報の発生等)の実行が必要となる場合に、その実行の要否の判定等に用いられるものとなっている。
【0048】
また、フェイルセーフやフォールトトレランス性(耐障害性)の観点から定められた所定の処理は、特定の処理に限定されるものではないが、本発明の実施の形態においては、先のパイロヒューズ切断(図4のステップS140参照)が該当する。
一方、ステップS155においては、車両制御用電子制御ユニット300により、安全処理実行確認フラグS-FLが”0”に設定されると共に、その設定値は、両制御用電子制御ユニット300内の適宜な記憶領域に、記憶、保持されることとなる。
そして、ステップS145、又は、ステップS155の処理実行後は、先に図3で説明した処理手順に沿って、ステップS200の処理へ進こととなる。
【0049】
一方、先のステップS125において、バッテリ電子制御ユニット210により48V電源装置エラーは無いと判定されてステップS150へ進むと、車両制御用電子制御ユニット300により、DC/DCコンバータ100に対して降圧充電維持指令送信が行われる。
すなわち、DC/DCコンバータ100による48Vから12Vへの降圧動作による12Vバッテリ51に対する充電を維持させるに必要な所定の指令信号が、車両制御用電子制御ユニット300からDC/DCコンバータ100に送信されることとなる。
【0050】
その結果、DC/DCコンバータ100においては、48Vから12Vへの降圧動作による12Vバッテリ51への充電が継続されることとなる。
このように、モーターエラーが発生している(図4のステップS120参照)にもかかわらず、DC/DCコンバータ100による12Vバッテリ51の充電を維持するのは、次述する理由によるものである。
すなわち、この場合、48V電源装置エラーは発生しておらず(図4のステップS125参照)、パイロヒューズ切断を必要とする状態ではないと考えることができるため、可能な限り通常の動作状態を維持し、車両の運転に極力支障をきたさないようにするためである。
【0051】
上述のようにステップS150の処理実行後は、先に述べたステップS155の処理へ進むこととなる。
【0052】
なお、図11には、先に述べたようにサブルーチン1の処理過程の内、特に、ステップS115からS150へ至るまでの主要部の各種信号等のタイミング図が示されている。なお、図中の略語については、後述する図11(C)の一部を除き、図10と同一であるので、ここでの再度の説明は省略する。
図11(A)は、先の図10(A)と同様のタイミング図であり、モータ制御用電子制御ユニット400によるモーターエラー判定動作が、テップS115の処理実行によって、モーターエラー有りと判定された状態になる場合を示している。
【0053】
また、図11(C)には、バッテリマネジメントシステム200における48V電源装置エラー判定動作のタイミングを示すタイミング図が示されている。
すなわち、図11(C)において、”BMS-DIG”は、「バッテリマネジメントシステム200における48V電源装置エラー判定動作」を意味し、”ER”は、48V電源装置エラーが発生していると判定された場合を、”NO”は、48V電源装置エラーは発生していないと判定された場合を、それぞれ意味している。
この図11(C)は、バッテリマネジメントシステム200における48V電源装置エラー判定動作が、ステップS125の実行のタイミングにおいて、48V電源装置エラーは発生していないと判定された状態となることを示している。
【0054】
また、図11(B)は、先の図10(B)と同様、車両制御用電子制御ユニット300におけるパイロヒューズ切断動作のタイミングを示すタイミング図であるが、先に説明したようにステップS150が実行された場合は、パイロヒューズ切断は行われないため、 同図は、パイロヒューズ11を接続状態とするための制御信号が継続的に出力されてパイロヒューズ11が接続状態にあることを示している。
さらに、図11(D)は、先の図10(D)と同様、バッテリ電子制御ユニット210による出力リレー12の開閉制御動作のタイミングを示すタイミング図であるが、先のステップS150の実行によりDC/DCコンバータ100の降圧動作が継続されるため、同図は、バッテリ電子制御ユニット210により出力リレー12を閉成状態とする制御信号が出力されている状態を示している。
【0055】
また、図11(E)は、先の図10(E)と同様、48V高圧ライン2と48Vバッテリ52との接続状態のタイミングを示すタイミング図が示されているが、上述のようにステップS150が実行された場合は、48Vが48V高圧ライン2に供給される状態であるため、同図は、48V高圧ライン2と48Vバッテリ52とが接続状態となることを示している。
【0056】
次に、サブルーチン2の具体的な処理内容について、図5を参照しつつ説明する。
最初に、バッテリマネジメントシステム200により、ステップS310において、48V電源装置始動完了の処理が実行される(図5参照)。この48V電源装置始動完了の処理は、先に説明したステップS110(図4参照)の処理内容と同一であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
なお、既に48V電源装置始動完了の処理が実行されて、48V高圧ライン2に48Vの電圧印加がなされている状態にある場合は、特段の処理を実行することなく、次述するステップS320の処理へ進むこととなる。
【0057】
ステップS320においては、バッテリ電子制御ユニット210により48V電源装置エラー判定が行われる。この48V電源装置エラー判定は、先に説明したステップS125(図4参照)の処理内容と同一であるので、ここでの再度の詳細は説明は省略する。
ステップS320において、48V電源装置エラーが発生していると判定された場合(YESの場合)、次述するステップS330の処理へ進むこととなる。一方、ステップS320において、48V電源装置エラーは発生していないと判定された場合(NOの場合)、後述するステップS370の処理へ進むこととなる(図5参照)。
【0058】
次いで、ステップS330において、バッテリ電子制御ユニット210によりリレー開放が実行されることとなる。このリレー開放は、先に説明したステップS130(図4参照)の処理内容と同一であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略する。
ここで、図12には、このサブルーチン2の処理過程における主要部の各種信号等のタイミング図が示されている。なお、図12における略語については、図10と同一であるので、ここでの再度の説明は省略する。
まず、図12(A)には、モータ制御用電子制御ユニット400によるモーターエラー判定における判定動作のタイミングを示すタイミング図が示されているが、このサブルーチン2においては、モーターエラー判定動作が行われないため、同図は、モーターエラーの発生の有無が示されていない状態となっている。
【0059】
図12(D)には、バッテリ電子制御ユニット210による出力リレー12の開閉制御動作のタイミング図が示されており、先に説明した図10(D)のタイミング図と基本的に同様である。すなわち、図12(D)は、ステップS330の処理実行のタイミングにおいて、バッテリ電子制御ユニット210により出力リレー12を閉成状態とする制御信号の出力が停止された状態となることを示している。
【0060】
次いで、バッテリ電子制御ユニット210により、ステップS340において、開放成功判定が行われる(図5参照)。この開放成功判定は、先に説明したステップS135(図4参照)の処理内容と同一であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略する。
ステップS340において、開放成功と判定された場合(YESの場合)、後述するステップS370の処理へ進むこととなる。一方、開放失敗と判定された場合(NOの場合)、次述するステップS350の処理へ進むこととなる。
【0061】
なお、図12(C)には、バッテリマネジメントシステム200における開放成功判定動作のタイミングを示すタイミング図が示されており、同図は、先に説明した図10(C)のタイミング図と基本的に同様である。
すなわち、図12(C)は、バッテリマネジメントシステム200における開放成功判定動作が、ステップS340の処理実行のタイミングにおいて、出力リレー12の開放が失敗と判定された状態になることを示している。
【0062】
次いで、ステップS350においては、車両制御用電子制御ユニット300によりパイロヒューズ切断が行われる。このパイロヒューズ切断は、先に説明したステップS140(図4参照)の処理内容と同一であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略する。
図12(B)には、車両制御用電子制御ユニット300におけるパイロヒューズ切断動作のタイミングを示すタイミング図が示されており、同図は、先に説明した図10(B)のタイミング図と基本的に同様である。
【0063】
すなわち、図12(B)は、ステップS350の処理実行のタイミングにおいて、パイロヒューズ11を接続状態とするための制御信号が停止されて、パイロヒューズ11の切断状態となることを示している。
また、図12(E)には、48V高圧ライン2と48Vバッテリ52との接続状態のタイミングを示すタイミング図が示されており、同図は、先に説明した図10(E)のタイミング図と基本的に同様である。
すなわち、図12(E)は、上述のステップS350の処理タイミングにおいて、パイロヒューズ11が切断された際に、48V高圧ライン2と48Vバッテリ52とが接続状態から非接続状態となることを示している。
【0064】
上述のようにパイロヒューズ切断後は、ステップS360において、車両制御用電子制御ユニット300により、安全処理実行確認フラグS-FLが”1”に設定されると共に、その設定値は、両制御用電子制御ユニット300内の適宜な記憶領域に、記憶、保持されることとなる(図5参照)。
一方、ステップS370においては、車両制御用電子制御ユニット300により、安全処理実行確認フラグS-FLが”0”に設定されると共に、その設定値は、両制御用電子制御ユニット300内の適宜な記憶領域に、記憶、保持されることとなる。
そして、ステップS360、又は、ステップS370の処理実行後は、先に図3で説明した処理手順に沿って、ステップS400の処理へ進むこととなる。
【0065】
次に、サブルーチン3の具体的な処理内容について、図6を参照しつつ説明する。
最初に、バッテリマネジメントシステム200により、ステップS510において、48V電源装置始動完了の処理が実行される(図6参照)。この48V電源装置始動完了の処理は、先に説明したステップS110(図4参照)の処理内容と同一であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
なお、既に48V電源装置始動完了の処理が実行されて、48V高圧ライン2に48Vの電圧印加がなされている状態にある場合は、特段の処理を実行することなく、次述するステップS520の処理へ進むこととなる。
【0066】
ステップS520においては、DC/DCコンバータ100によるDC/DC装置エラー判定が行われる。
すなわち、DC/DCコンバータ100において、所定の故障、異常などの、いわゆるエラーが発生していないか否かが判定される。ここで、所定の故障、異常は、例えば、降圧電圧や昇圧電圧の異常などを挙げることができるが、具体的な内容は、これらに限定されるものではなく、DC/DCコンバータの仕様等に即して任意に定められるべきものである。
【0067】
しかして、DC/DCコンバータ100において、DC/DC装置エラーが発生していると判定された場合(YESの場合)、次述するステップS530の処理へ進むこととなる。一方、DC/DCコンバータ100において、DC/DC装置エラーは無いと判定された場合(NOの場合)、後述するステップS590の処理へ進むこととなる。
【0068】
ここで、図13には、このサブルーチン3の処理過程における主要部の各種信号等のタイミング図が示されており、図13(A)には、上述のDC/DCコンバータ100におけるDC/DC装置エラー判定動作に関するタイミング図が示されている。同図において、”DC-DIG”の表記は、「DC/DCコンバータ100におけるDC/DC装置エラー判定動作」を意味する。また、同図において、”ER”の表記は、DC/DC装置エラーが発生と判定された場合を、”NO”の表記は、DC/DC装置エラーは発生していないと判定された場合を、それぞれ意味している。
この図13(A)は、DC/DCコンバータ100におけるDC/DC装置エラー判定動作が、ステップS520の処理実行のタイミングにおいて、DC/DC装置エラーが発生と判定された状態となったことを示している。
【0069】
次いで、DC/DCコンバータ100により、ステップS530において、車両制御用電子制御ユニット300に対してDC/DCエラー通知が行われる(図6参照)。
すなわち、DC/DC装置エラーが発生したことを、DC/DCコンバータ100から車両制御用電子制御ユニット300へ知らせるための通知が、DC/DCコンバータ100から車両制御用電子制御ユニット300へ出力されることとなる。
【0070】
次いで、車両制御用電子制御ユニット300においては、上述のDC/DCエラー通知を受けて、ステップS540において、バッテリ電子制御ユニット210に対して、CANケーブル4を介してリレー開放要求が送信されることとなる(図6参照)。
なお、ここで、リレー開放要求は、出力リレー12を開成状態とする要求を意味する。
【0071】
次いで、バッテリ電子制御ユニット210により、ステップS550において、リレー開放が実行されることとなる(図6参照)。このリレー開放は、先に説明したステップS130(図4参照)の処理内容と同一であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略する。
なお、図13(D)には、バッテリ電子制御ユニット210による出力リレー12の開閉制御動作のタイミング図が示されており、先に説明した図10(D)のタイミング図と基本的に同様である。
すなわち、図13(D)は、ステップS550の処理実行のタイミングにおいて、バッテリ電子制御ユニット210により出力リレー12を閉成状態とする制御信号の出力が停止された状態にあることを示している。
【0072】
次いで、バッテリ電子制御ユニット210により、ステップS560において、開放成功判定が行われる(図6参照)。この開放成功判定は、先に説明したステップS135(図4参照)の処理内容と同一であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略する。
ステップS560において、開放成功と判定された場合(YESの場合)、後述するステップS590の処理へ進むこととなる。一方、開放失敗と判定された場合(NOの場合)、次述するステップS570の処理へ進むこととなる。
なお、図13(C)には、バッテリマネジメントシステム200における開放成功判定動作のタイミングを示すタイミング図が示されており、同図は、先に説明した図10(C)のタイミング図と基本的に同様である。
すなわち、図13(C)は、バッテリマネジメントシステム200における開放成功判定動作が、ステップS560の処理実行のタイミングにおいて、出力リレー12の開放が失敗と判定された場合を示している。
【0073】
次いで、ステップS570においては、車両制御用電子制御ユニット300によりパイロヒューズ切断が行われる。このパイロヒューズ切断は、先に説明したステップS140(図4参照)の処理内容と同一であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略する。
なお、図13(B)には、車両制御用電子制御ユニット300におけるパイロヒューズ切断動作のタイミングを示すタイミング図が示されており、同図は、先に説明した図10(B)のタイミング図と基本的に同様である。
すなわち、図13(B)は、ステップS570の処理実行のタイミングにおいて、パイロヒューズ11を接続状態とするための制御信号が停止されて、パイロヒューズ11の切断状態となることを示している。
【0074】
また、図13(E)には、48V高圧ライン2と48Vバッテリ52との接続状態のタイミングを示すタイミング図が示されており、同図は、先に説明した9(E)のタイミング図と基本的に同様である。
すなわち、図13(E)は、上述のステップS570の処理実行のタイミングにおいて、パイロヒューズ11が切断された際に、48V高圧ライン2と48Vバッテリ52とが接続状態から非接続状態となることを示している。
【0075】
上述のようにパイロヒューズ切断後は、ステップS580において、車両制御用電子制御ユニット300により、安全処理実行確認フラグS-FLが”1”に設定されると共に、その設定値は、両制御用電子制御ユニット300内の適宜な記憶領域に、記憶、保持されることとなる(図6参照)。
一方、ステップS590においては、車両制御用電子制御ユニット300により、安全処理実行確認フラグS-FLが”0”に設定されると共に、その設定値は、両制御用電子制御ユニット300内の適宜な記憶領域に、記憶、保持されることとなる。
そして、ステップS580、又は、ステップS590の処理実行後は、先に図3で説明した処理手順に沿って、ステップS600の処理へ進むこととなる。
【0076】
次に、サブルーチン4の具体的な処理内容について、図7を参照しつつ説明する。
最初に、車両制御用電子制御ユニット300により、ステップS710において、IG ON判定が行われる(図7参照)。
すなわち、イグニッションスイッチ(図示せず)がオフ状態からオン状態とされたこと(イグニッションオン)が検出された否かが判定される。すなわち、換言すれば、ハイブリット車両の運転が開始されたか否か判定されることとなる。
車両制御用電子制御ユニット300によりイグニッションオンが検出されたと判定された場合(YESの場合)、次述するステップS720の処理へ進むこととなる。一方、イグニッションオンは検出されないと判定された場合(NOの場合)、後述するステップS780の処理へ進むこととなる。
【0077】
次いで、バッテリ電子制御ユニット210により、ステップS720において、リレー溶着単独エラー判定が行われる(図7参照)。
すなわち、まず、ここで、”リレー溶着単独エラー”とは、出力リレー12が、過電流等の原因により開閉接点(図示せず)が溶着状態となり、開閉成制御ができず、閉成状態となったままの故障状態、すなわち、エラーが単独で発生しており、他の故障等のエラーが生じていない状態を意味する。
【0078】
しかして、バッテリ電子制御ユニット210により、リレー溶着単独エラー発生と判定された場合(YESの場合)、次述するステップS730の処理へ進むこととなる。
一方、バッテリ電子制御ユニット210により、リレー溶着単独エラーの発生ではないと判定された場合(NOの場合)、後述するステップS750の処理へ進むこととなる。
【0079】
なお、図14及び図15には、このサブルーチン4の処理過程における主要部の各種信号等のタイミング図が示されており、図14は、特に、ステップS710からステップS720を経てステップS730へ至るまで、図15は、特に、ステップS710からステップS720を経てステップS760へ至るまで、それぞれの主要部の各種信号等のタイミング図である。
【0080】
図14(A)は、イグニッションスイッチ(図示せず)のオン・オフ動作を示すタイミング図である。
すなわち、図14(A)において、”IG”の表記は、「イグニッションスイッチのオン・オフ動作」を意味し、また、”ON”の表記は、イグニッションスイッチが閉成状態であることを、”OFF”の表記は、イグニッションスイッチが開成状態であることを、それぞれ意味している。
この図14(A)は、上述のステップS710の処理実行のタイミングにおいて、イグニッションスイッチ(図示せず)が開成状態から閉成状態となることを示している。
【0081】
また、図14(C)には、バッテリマネジメントシステム200における開放成功判定動作のタイミングを示すタイミング図が、図14(D)には、バッテリ電子制御ユニット210による出力リレー12の開閉制御動作のタイミング図が、それぞれ示されている。
図14(C)は、先に説明した図10(C)のタイミング図と、図14(D)は、先に説明した図10(D)のタイミング図と、それぞれ基本的に同様のものである。
【0082】
すなわち、図14(C)は、ステップS720の処理実行のタイミングにおいて、リレー溶着単独エラー発生と判定された状態となることを示している。
また、図14(D)は、リレー溶着単独エラー発生と判定されたタイミングにおいて、バッテリ電子制御ユニット210により出力リレー12を閉成状態とする制御信号の出力が停止された状態になることを示している。
【0083】
次いで、ステップS730においては、出力リレー12の溶着が発生している状態ではあるが、車両制御用電子制御ユニット300によりパイロヒューズ維持が行われる。すなわち、パイロヒューズ11の切断を行うことなく接続状態が維持されることとなる。
このようにパイロヒューズ維持を行うのは、出力リレー12が溶着状態ではあるものの、他に車両動作上懸念される故障等の発生はないため、パイロヒューズ切断を行うよりも、可能な限り通常の動作状態を維持し、車両の運転に極力支障をきたさないようにするためである。
上述のようにステップS730の処理実行後は、ステップS740において、車両制御用電子制御ユニット300により、安全処理実行確認フラグS-FLが”0”に設定されると共に、その設定値は、両制御用電子制御ユニット300内の適宜な記憶領域に、記憶、保持されることとなる(図7参照)。
【0084】
なお、図14(B)には、車両制御用電子制御ユニット300におけるパイロヒューズ切断動作のタイミングを示すタイミング図が示されており、同図は、先に説明した図11(B)のタイミング図と基本的に同様のものである。
すなわち、図14(B)は、ステップS730の処理によって、パイロヒューズ切断は行われないため、パイロヒューズ11を接続状態とするための制御信号が継続的に出力されてパイロヒューズ11が接続状態にあることを示している。
また、図14(E)には、48V高圧ライン2と48Vバッテリ52との接続状態のタイミングを示すタイミング図が示されており、同図は、先に説明した10(E)のタイミング図と同様のものである。
すなわち、図14(E)は、上述のステップS730の処理によって、48V高圧ライン2と48Vバッテリ52との接続状態が継続されることを示している。
【0085】
一方、先のステップS720において、リレー溶着単独エラーの発生ではないと判定されてステップS750の処理へ進んだ場合、バッテリ電子制御ユニット210によりリレー複合エラー判定が行われる。
すなわち、まず、ここで、”リレー複合エラー”とは、出力リレー12が溶着状態となると共に、バッテリマネジメントシステム200に他の何らかの故障、異常等、すなわちエラーが発生した状態を意味する。バッテリマネジメントシステム200における他の何らかの故障、異常等とは、例えば、48Vバッテリ52の過熱や、電圧異常等である。
【0086】
しかして、バッテリ電子制御ユニット210により、リレー複合エラー発生と判定された場合(YESの場合)、次述するステップS760の処理へ進むこととなる。一方、バッテリ電子制御ユニット210により、リレー複合エラーは発生していないと判定された場合(NOの場合)、ステップS780において、両制御用電子制御ユニット300により、安全処理実行確認フラグS-FLが”0”に設定されると共に、その設定値は、両制御用電子制御ユニット300内の適宜な記憶領域に、記憶、保持されることとなる(図7参照)。
【0087】
なお、図15(A)には、イグニッションスイッチ(図示せず)のオン・オフ動作を示すタイミング図が示されているが、図14(A)と同様であるので、ここでの再度の説明は省略する。
また、図15(C)には、バッテリマネジメントシステム200におけるリレー複合エラー判定動作のタイミングを示すタイミング図が示されている。なお、図15(C)において、”BMS-CDIG”は、「バッテリマネジメントシステム200におけるリレー複合エラー判定動作」を意味し、”ER”は、リレー複合エラー発生と判定された場合を、”NO”は、リレー複合エラーは発生していないと判定された場合を、それぞれ意味するものとする。
この図15(C)は、バッテリマネジメントシステム200におけるリレー複合エラー判定動作が、ステップS750の処理実行のタイミングにおいて、リレー複合エラー発生と判定された状態となることを示している。
【0088】
さらに、図15(D)には、バッテリ電子制御ユニット210による出力リレー12の開閉制御動作のタイミング図が示されており、先に説明した図10(D)のタイミング図と基本的に同様である。
すなわち、図15(D)は、ステップS750の処理実行のタイミングにおいて、リレー複合エラー発生と判定された際に、バッテリ電子制御ユニット210により出力リレー12を閉成状態とする制御信号の出力が停止され、出力リレー12が開成状態となることを示している。
【0089】
次いで、ステップS760においては、車両制御用電子制御ユニット300によりパイロヒューズ切断が行われる。このパイロヒューズ切断は、先に説明したステップS140(図4参照)の処理内容と同一であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略する。
次いで、ステップS770において、車両制御用電子制御ユニット300により、安全処理実行確認フラグS-FLが”1”に設定されると共に、その設定値は、両制御用電子制御ユニット300内の適宜な記憶領域に、記憶、保持されることとなる(図7参照)。
なお、図15(B)には、車両制御用電子制御ユニット300におけるパイロヒューズ切断動作のタイミングを示すタイミング図が示されており、同図は、先に説明した図10(B)のタイミング図と基本的に同様である。
すなわち、図15(B)は、ステップS760の処理実行のタイミングにおいて、パイロヒューズ11を接続状態とするための制御信号が停止されて、パイロヒューズ11の切断が実行されることを示している。
【0090】
また、図15(E)には、48V高圧ライン2と48Vバッテリ52との接続状態のタイミングを示すタイミング図が示されており、同図は、先に説明した9(E)のタイミング図と基本的に同様である。
すなわち、図15(E)は、上述のステップS760の処理実行のタイミングにおいて、パイロヒューズ11が切断された際に、48V高圧ライン2と48Vバッテリ52とが接続状態から非接続状態となることを示している。
そして、ステップS740、ステップS770、又は、ステップS780のいずれかの処理実行後は、先に図3で説明した処理手順に沿って、ステップS800の処理へ進むこととなる。
【0091】
ここで、従来のハイブリット車両用電源装置の典型的な構成例においてリレー溶着が生じた場合の従来の対応例について概括的に説明する。
本発明の実施の形態におけるハイブリット車両用電源装置に対する従来装置の構成例としては、例えば、48Vバッテリと、12Vバッテリと、いわゆる双方向DC/DCコンバータとを有してなるハイブリット車両用電源装置を挙げることができる。
【0092】
この従来装置においては、48Vバッテリ出力によりDC/DCコンバータの降圧動作により12Vバッテリの充電を可能とする一方、12Vバッテリ出力によりDC/DCコンバータの昇圧動作により48Vバッテリの充電を可能としている。また、48VバッテリとDC/DCコンバータとの間には、一つの出力リレーが接続された構成となっている。さらに、フェイルセーフ機能の確保等の観点から出力リレーと直列に従来のいわゆる溶断型ヒューズが直列接続された構成が採られることもある。
【0093】
なお、上述のような従来装置にあっては、48Vが高電圧系の最大電圧となるため、運送車両法関係法令における道路運送車両の保安基準に定める高電圧(直流60V以上)に該当せず、同保安基準に定めるような直列接続した2つのリレーを高電圧系に設けるような構成を採る必要はなく、リレーを1つとするような比較的簡易な構成が認められる。
【0094】
このような従来装置において、リレー溶着が生じた場合、基本的には、部品交換が必要であるため、修理工場等へ緊急走行するのが通常である。
リレー溶着による緊急走行を行う場合、48V電源を用いる駆動補助用電気モータがエンジンと併用できれば望ましい。
しかながら、48Vを高電圧系の電源電圧とする従来装置にあっては、先に述べた60V以上の電源系統に対する安全基準に則した装置構成ではないこと等を考慮し、安全性を優先する観点等から、48Vを要する駆動補助用電気モータが用いられないことが多い。すなわち、この場合、12V電源で動作するいわゆるエンジン制御用電子制御ユニットによりエンジンを緊急的に動作させてエンジン単独での緊急自力走行を行うこととなる。
【0095】
この場合、エンジンに駆動される12V用発電機が設けられた構成の車両であれば、この12V発電機によって12Vバッテリの充電が可能となるため、緊急自力走行中に12Vバッテリが完全放電する心配はない。しかし、12V用発電機が備えられていない車両の場合、緊急自力走行は、バッテリ残量に対応する時間しか確保できなくなるため、目的とする修理工場までの走行が必ずしも確保できなくなる虞もあった。
【0096】
これに対して、本発明の実施の形態においては、先に述べたように、リレー溶着単独エラーの場合(図7のステップS720参照)には、従来と異なり、パイロヒューズ11は、切断されることなく接続状態に維持されるため、48Vバッテリ52による48V電圧の供給が可能となる。
したがって、48Vバッテリ52によるDC/DCコンバータ100を介した12Vバッテリ51の充電が可能となり、従来と異なり、緊急自力走行中に12Vバッテリ51のバッテリ残量が不足することがなくなり、安全、確実な緊急自力走行が確保されることとなる。
【0097】
次に、サブルーチン5の具体的な処理内容について、図8を参照しつつ説明する。
最初に、車両制御用電子制御ユニット300により、ステップS910において、IG OFF判定が行われる(図8参照)。
すなわち、イグニッションスイッチ(図示せず)がオン状態からオフ状態とされ、エンジン1100が駆動状態(運転状態)から停止状態(運転停止)とされたか否かが車両制御用電子制御ユニット300により判定される。
ステップS910において、イグニッションスイッチ(図示せず)がオン状態からオフ状態とされた、換言すれば、イグニッションオフと判定された場合(YESの場合)、次述するステップS920の処理へ進むこととなる。一方、イグニッションスイッチ(図示せず)がオン状態からオフ状態とされてはいないと判定された場合、すなわち、イグニッションオフではないと判定された場合(NOの場合)、このルーチンの処理は一旦終了され、再び、このサブルーチン処理が初めから実行されることとなる。
【0098】
なお、図16には、このサブルーチン5の処理過程における主要部の各種信号等のタイミング図が示されているが、図中の略語については、図14に示されたものと同一であるので、ここでの再度の説明は省略する。
図16(A)には、イグニッションスイッチ(図示せず)のオン・オフ動作を示すタイミング図が示されている。同図は、上述のステップS910において、イグニッションスイッチオフが検出されたと判定された場合のイグニッションスイッチの動作を示したものである。
【0099】
ステップS920においては、車両制御用電子制御ユニット300により、バッテリ電子制御ユニット210に対して、CANケーブル4を介してリレー開放要求が送信されることとなる。
次いで、バッテリ電子制御ユニット210により、ステップS930において、リレー開放が実行されることとなる(図8参照)。このリレー開放は、先に説明したステップS130(図4参照)の処理内容と同一であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略する。
【0100】
なお、図16(D)には、バッテリ電子制御ユニット210による出力リレー12の開閉制御動作のタイミング図が示されており、先に説明した図10(D)のタイミング図と基本的に同様である。
すなわち、図16(D)は、ステップS930の処理実行のタイミングにおいて、バッテリ電子制御ユニット210により出力リレー12を閉成状態とする制御信号の出力が停止された状態となることを示している。
【0101】
次いで、バッテリ電子制御ユニット210により、ステップS940において、開放成功判定が行われる(図8参照)。この開放成功判定は、先に説明したステップS135(図4参照)の処理内容と同一であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略する。
ステップS940において、開放成功とされたと判定された場合(YESの場合)、このルーチンの処理は一旦終了され、再び、このサブルーチン処理が初めから実行されることとなる。
一方、ステップS940において、開放成功ではない、すなわち、開放失敗と判定された場合(NOの場合)、車両制御用電子制御ユニット300により、ステップS950において、パイロヒューズ維持が行われる(図8参照)。すなわち、パイロヒューズ11の切断を行うことなく接続状態が維持されることとなる。
このように、出力リレー12の開放失敗が生じている、いわゆる故障状態にあってパイロヒューズ維持を行うのは、次に、イグニッションスイッチをオンとした際に、必要最小限の状態での車両運転を可能とし、修理工場への走行等を確保し、安全性、耐障害性の向上を図るためである。
【0102】
なお、図16(C)には、バッテリマネジメントシステム200における開放成功判定動作のタイミングを示すタイミング図が示されており、同図は、先に説明した図10(C)のタイミング図と基本的に同様のものである。
すなわち、図16(C)は、ステップS940の処理実行のタイミングにおいて、出力リレー12の開放失敗と判定された場合を示している。
【0103】
また、図16(B)には、車両制御用電子制御ユニット300におけるパイロヒューズ切断動作のタイミングを示すタイミング図が示されており、同図は、先に説明した図14(B)のタイミング図と基本的に同様のものである。
図16(B)は、ステップS950の処理によって、パイロヒューズ切断は行われず、パイロヒューズ11を接続状態とするための制御信号が継続的に出力されてパイロヒューズ11が接続状態にあることを示している。
さらに、図16(E)には、48V高圧ライン2と48Vバッテリ52との接続状態のタイミングを示すタイミング図が示されており、同図は、先に説明した10(E)のタイミング図と同様のものである。
すなわち、図16(E)は、上述のように、出力リレー12が閉成状態で(図8のステップS940参照)、かつ、パイロヒューズ11が維持された状態にあって、48V高圧ライン2と48Vバッテリ52とが接続状態となることを示している。
【0104】
次に、修理工場などにおいて、車両に、いわゆるテスターと称される故障診断装置を接続して行われるパイロヒューズ切断処理について、図9に示されたフローチャートを参照しつつ説明する。
まず、前提として、テスターは、本発明特有のものではなく、従来から良く知られた構成を有してなるもので、CAN通信により、車両に搭載された各種の電子制御ユニットとのデータやコマンドの授受が可能となっているものであるとする。
また、以下説明する処理を実行する対象となる車両は、出力リレー12の溶着が発生しており、いわゆる活線作業を回避し、安全な修理作業を確保するために通電状態を断つ必要がある状態であることが前提である。
【0105】
しかして、テスター(図示せず)が接続されて、イグニッションスイッチ(図示せず)がオンとされることで、次述するように一連の処理が開始されることとなる。
まず、バッテリ電子制御ユニット210により、ステップS1100において、リレー溶着検出が行われる(図9参照)。
すなわち、バッテリ電子制御ユニット210により出力リレー12が溶着状態であることの検出が行われる。出力リレー12が溶着状態にあることの検出結果は、CAN通信によりテスター(図示せず)へ送信されるようになっている。
【0106】
なお、図17には、図9のフローチャートに示された一連の処理過程における主要部の各種信号等のタイミング図が示されているが、図中の略語については、図14に示されたものと同一であるので、ここでの再度の説明は省略する。
図17(A)には、イグニッションスイッチ(図示せず)のオン・オフ動作を示すタイミング図が示されている。同図は、図9に示された一連の処理開始の際にイグニッションスイッチのオンが検出された際のイグニッションスイッチのオフからオンとなる状態を示したものである。
【0107】
また、図17(C)には、バッテリマネジメントシステム200における開放成功判定動作のタイミングを示すタイミング図が示されており、同図は、バッテリマネジメントシステム200における開放成功判定動作が、上述のステップS1100の処理実行のタイミングにおいて、出力リレー12が溶着状態にあると判定された状態となることを示している。
さらに、図17(D)には、バッテリ電子制御ユニット210による出力リレー12の開閉制御動作のタイミング図が示されており、同図は、バッテリ電子制御ユニット210による出力リレー12の開閉制御動作が、上述のステップS1100の処理実行のタイミングにおいて、バッテリ電子制御ユニット210により出力リレー12を閉成状態とする制御信号の出力が停止された状態となることを示している。
【0108】
次いで、車両制御用電子制御ユニット300により、ステップS1110において、ツールコマンド受信が行われる(図9参照)。
すなわち、上述のリレー溶着検出の通知がテスター(図示せず)において受信されることによって、テスター(図示せず)から車両制御用電子制御ユニット300に対して、パイロヒューズ切断を要求するコマンドが送信され、車両制御用電子制御ユニット300においては、そのパイロヒューズ切断を要求するツールコマンドが受信されることとなる。
【0109】
次いで、車両制御用電子制御ユニット300により、ステップS1120において、パイロヒューズ切断が実行されることとなる(図9参照)。
これによって、48V電圧の供給が断たれるため、通電状態で車両の修理を行うような事態を回避し、電気的な安全を確保した状態での修理作業が可能となる。
【0110】
なお、図17(B)には、車両制御用電子制御ユニット300におけるパイロヒューズ切断動作のタイミングを示すタイミング図が示されており、同図は、ステップS1120の処理実行のタイミングにおいて、パイロヒューズ11を接続状態とするための制御信号が停止されて、パイロヒューズ11の切断状態とされることを示している。
また、図17(E)には、48V高圧ライン2と48Vバッテリ52との接続状態のタイミングを示すタイミング図が示されており、同図は、ステップS1120の処理実行のタイミングにおいて、48V高圧ライン2と48Vバッテリ52とが接続状態から非接続状態となることを示している。
【0111】
上述した本発明の実施の形態においては、出力リレー12の溶着時に車両制御用電子制御ユニット300によりパイロヒューズ切断を実行するよう構成したが、さらに、次述するような構成を追加しても好適である。
すなわち、車両の衝突発生時に衝突検知装置等で生成される衝突信号を、車両制御用電子制御ユニット300が受信した際に、パイロヒューズ11を切断させるようすることで、車両衝突時における高電圧系統の極短時間で切断(緊急切断)が可能となり、高電圧系統による感電や短絡電流の発生等を防止し、より信頼性の高い安全確保が可能となる。
【0112】
これに対して、出力リレーと溶断型のヒューズの直列接続や、出力リレー2個を直列接続して設ける構成の従来装置の場合、上述のような車両衝突などにおいて電源回路の即座の遮断が必要となっても、パイロヒューズを用いた場合に比して、溶断型のヒューズの特性などが要因となり回路切断完了までに時間を要し、極短時間での切断には限界があった。
【0113】
また、本発明の実施の形態におけるハイブリット車両用電源装置は、上述のような車両衝突時における電源回路の緊急切断が可能となる点に加えて、直列接続された2個の出力リレーを設けた従来装置に比して、次述する点で優れる。
まず、出力リレーは最低1個の構成でも可能であるが、さらに1個増やすことにより、既にある出力リレーの駆動回路とは別個に駆動回路を設けると共に、増設された出力リレーの溶着診断等の処理がさらに必要となる。そのため、装置全体として、回路構成や制御処理の複雑化を招くこととなる。
【0114】
これに対して、パイロヒューズは、通常、起爆して回路切断するシンプルな動作原理、構成であるため、これを追加するにしても、従来の出力リレーの追加とは異なり、回路構成や制御処理の複雑化を招くとはない。
また、リレーは、通常、接点駆動用のコイルを必要とする構成であるため、電子部品としては、全体として比較的大型であるのに対して、パイロヒューズは、先に述べたように単純な動作原理であるため、比較的小型化されており、その使用による装置の小型化が容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
車両の異常発生時に、従来に比して、さらなるフェイルセーフ機能の確保と、高いフォールトトレランス性(耐障害性)が所望されるハイブリット車両用電源装置に適用できる。
【符号の説明】
【0116】
11…パイロヒューズ
12…出力リレー
51…12Vバッテリ
52…48Vバッテリ
100…DC/DCコンバータ
200…バッテリマネジメントシステム
210…バッテリ電子制御ユニット
300…車両制御用電子制御ユニット
400…モータ制御用電子制御ユニット
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