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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046113
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】高炉操業方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 5/00 20060101AFI20240327BHJP
   C21B 7/24 20060101ALI20240327BHJP
   C21B 7/00 20060101ALI20240327BHJP
   C21B 7/16 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C21B5/00 315
C21B7/24
C21B7/00 311
C21B7/16 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151305
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 雅史
(72)【発明者】
【氏名】岡本 悠揮
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 大二郎
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 健也
【テーマコード(参考)】
4K015
【Fターム(参考)】
4K015FC08
4K015FD02
4K015KA01
(57)【要約】
【課題】高炉の長時間休風や休止中の閉塞羽口からの漏風を、高炉立ち上げ前に正確に判断することができる、高炉操業方法を提案する。
【解決手段】高炉を長期休風又は休止中の閉塞羽口の漏風判断を行う高炉操業方法であって、羽口を閉塞させたまま送風支管に熱風を導入する送風再開準備工程と、羽口の温度を測定する温度測定工程と、測定した羽口の温度に基づき羽口の漏風の有無を判定する漏風判定工程と、を有する。好ましくは、羽口の温度は、羽口の本体温度、及び羽口内を流れる冷却水の温度の少なくとも一方である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉を長期休風又は休止中の閉塞羽口の漏風判断を行う高炉操業方法であって、羽口を閉塞させたまま送風支管に熱風を導入する送風再開準備工程と、羽口の温度を測定する温度測定工程と、測定した羽口の温度に基づき羽口の漏風の有無を判定する漏風判定工程と、を有する、高炉操業方法。
【請求項2】
前記羽口の温度は、前記羽口の本体温度、及び前記羽口内を流れる冷却水の温度の少なくとも一方である、請求項1に記載の高炉操業方法。
【請求項3】
前記漏風判定工程では、各羽口において、所定の時間間隔で測定した羽口温度が、前回の羽口温度よりも、または、前記送風再開準備工程前における羽口温度よりも、一定温度範囲以上高い場合に、その羽口を漏風有りと判定する、請求項1または2に記載の高炉操業方法。
【請求項4】
前記漏風判定工程では、各羽口において、所定の時間間隔で測定した羽口温度が他の羽口の平均温度よりも一定温度範囲以上高い場合に、その羽口を漏風有りと判定する、請求項1または2に記載の高炉操業方法。
【請求項5】
前記漏風判定工程は、少なくとも2本の羽口の温度を比較し、漏風していない羽口を特定する特定工程と、前記特定された羽口の温度と、前記特定された羽口以外の任意の1本の羽口の温度とを比較することによって、前記任意の1本の羽口の漏風の有無を判定する判定工程と、を有する、請求項1または2に記載の高炉操業方法。
【請求項6】
前記特定工程では、2本の羽口の温度AおよびBの比、A/BおよびB/Aともに0.90~1.1である場合、2本の羽口とも漏風していない羽口と特定する、請求項5に記載の高炉操業方法。
【請求項7】
前記判定工程は、(前記任意の1本の羽口の本体温度/前記特定された羽口の本体温度の平均値)が第1閾値以上か否か、及び(前記任意の1本の羽口内を流れる冷却水の温度/前記特定された羽口内を流れる冷却水の温度の平均値)が第2閾値以上か否か、の少なくとも一方を判定し、第1閾値及び第2閾値の少なくとも一方を超えた場合に前記任意の1本の閉塞羽口が漏風したと判定する、請求項5に記載の高炉操業方法。
【請求項8】
前記判定工程では、前記第1閾値を1.10とし、前記第2閾値を1.010とする、請求項7に記載の高炉操業方法。
【請求項9】
前記判定工程は、(前記任意の1本の羽口の本体温度-前記特定された羽口の本体温度の平均値)が第3閾値以上か否か、及び(前記任意の1本の羽口内を流れる冷却水の温度-前記特定された羽口内を流れる冷却水の温度の平均値)が第4閾値以上か否か、の少なくとも一方を判定し、第3閾値及び第4閾値の少なくとも一方を超えた場合に前記任意の1本の閉塞羽口が漏風したと判定する、請求項5に記載の高炉操業方法。
【請求項10】
前記判定工程では、前記第3閾値を3℃とし、前記第4閾値を0.3℃とする、請求項9に記載の高炉操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉を長期休風又は休止中の閉塞羽口の漏風判断を行う高炉操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉の操業においては、設備補修を伴う短時間の休風が定期的に予定されている。しかしながら、トラブルにより設備の大規模な補修が必要となる場合や、高炉の炉況不調により溶銑温度が著しく低下して高炉が冷え込んだ場合は、長時間の休風が必要となる。また、高炉の出銑量の調整に伴い長期間の休止を余儀なくされることもある。
【0003】
定期的に予定された短時間の休風後は、全ての送風羽口を開口して高炉を立ち上げる。これに対して、長時間休風や休止においては、各送風羽口と出銑口とをつなぐ溶銑滓の流れ道が、溶銑滓の温度低下による凝固によって確保できない場合がある。このような場合において、全ての送風羽口を全開にして熱風を吹き込み、各送風羽口前において溶銑滓を生成させると、生成した溶銑滓が出銑口まで流下しないで送風羽口前面下部に滞留し、送風羽口自体が直接溶銑滓に接触することとなる。各送風羽口は、通常高速水流によって冷却されているが、直接溶銑滓と接触すれば溶損を招く恐れがある。
【0004】
このため、長時間休風や休止時は、多数の送風羽口からの熱風吹き込みによる多量の溶銑滓の生成を抑制する必要がある。そのため、出銑口直上の3~4個の送風羽口を除き、残部の送風羽口内部に耐火物を詰めて遮蔽し、出銑口直上の3~4個の送風羽口以外からの熱風の吹き込みを停止して多量の溶銑滓の生成を抑制しつつ高炉を立ち上げる。
【0005】
長時間休風や休止時の羽口内の耐火物による遮蔽が不十分であると、高炉立ち上げ後に炉内への漏風を招き、羽口と溶融物が接触し、羽口が損傷し、羽口の交換のための休風が必要となる。このため、高炉を立ち上げる前の長時間休風や休止中に、羽口と閉塞用耐火物との間の漏風を確実に検知する必要がある。高炉休風中の閉塞羽口の漏風判定技術の一例として、送風支管と羽口とのすり合わせ部との間の漏風を検知する技術が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-262210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した送風支管と羽口とのすり合わせ部との間の漏風を検知する特許文献1に記載の技術でも、ある程度羽口からの漏風を検知することはできる。しかしながら、羽口と閉塞用耐火物との間の漏風は検知できず、羽口の漏風を正確に判断することができなかった。
【0008】
本発明の目的は、上記の問題点を解決し、高炉の長時間休風や休止中の閉塞羽口からの漏風を、高炉立ち上げ前に正確に判断することができる、高炉操業方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の高炉操業方法は、前述の課題を解決すべく開発されたものであり、高炉を長期休風又は休止中の閉塞羽口の漏風判断を行う高炉操業方法であって、羽口を閉塞させたまま送風支管に熱風を導入する送風再開準備工程と、羽口の温度を測定する温度測定工程と、測定した羽口の温度に基づき羽口の漏風の有無を判定する漏風判定工程と、を有する高炉操業方法である。
【0010】
なお、前記のように構成される本発明に係る高炉操業方法においては、
(1)前記羽口の温度は、前記羽口の本体温度、及び前記羽口内を流れる冷却水の温度の少なくとも一方であること、
(2)前記漏風判定工程では、各羽口において、所定の時間間隔で測定した羽口温度が、前回の羽口温度よりも、または、前記送風再開準備工程前における羽口温度よりも、一定温度範囲以上高い場合に、その羽口を漏風有りと判定すること、
(3)前記漏風判定工程では、各羽口において、所定の時間間隔で測定した羽口温度が他の羽口の平均温度よりも一定温度範囲以上高い場合に、その羽口を漏風有りと判定すること、
(4)前記漏風判定工程は、少なくとも2本の羽口の温度を比較し、漏風していない羽口を特定する特定工程と、前記特定された羽口の温度と、前記特定された羽口以外の任意の1本の羽口の温度とを比較することによって、前記任意の1本の羽口の漏風の有無を判定する判定工程と、を有すること、
(5)前記特定工程では、2本の羽口の温度AおよびBの比、A/BおよびB/Aともに0.90~1.1である場合、2本の羽口とも漏風していない羽口と特定すること、
(6)前記判定工程は、(前記任意の1本の羽口の本体温度/前記特定された羽口の本体温度の平均値)が第1閾値以上か否か、及び(前記任意の1本の羽口内を流れる冷却水の温度/前記特定された羽口内を流れる冷却水の温度の平均値)が第2閾値以上か否か、の少なくとも一方を判定し、第1閾値及び第2閾値の少なくとも一方を超えた場合に前記任意の1本の閉塞羽口が漏風したと判定すること、
(7)前記判定工程では、前記第1閾値を1.10とし、前記第2閾値を1.010とすること、
(8)前記判定工程は、(前記任意の1本の羽口の本体温度-前記特定された羽口の本体温度の平均値)が第3閾値以上か否か、及び(前記任意の1本の羽口内を流れる冷却水の温度-前記特定された羽口内を流れる冷却水の温度の平均値)が第4閾値以上か否か、の少なくとも一方を判定し、第3閾値及び第4閾値の少なくとも一方を超えた場合に前記任意の1本の閉塞羽口が漏風したと判定すること、
(9)前記判定工程では、前記第3閾値を3℃とし、前記第4閾値を0.3℃とすること、
がより好ましい解決手段となるものと考えられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高炉操業方法によれば、高炉の長時間休風や休止中の閉塞羽口からの漏風を、高炉立ち上げ前に正確に検知することができる。漏風が確認された羽口には、耐火物を新たに詰めて羽口を閉塞することで、羽口の遮断性を高めることができる。その結果、高炉立ち上げ時に、開口羽口以外の閉塞羽口の遮断性が確保されたため、羽口を溶損させることなく、スムーズに高炉を立ち上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】高炉の炉体断面の一部を示す縦断面模式図である。
図2】(a)~(d)は、それぞれ、送風再開準備工程を説明するための模式図である。
図3】温度測定工程において羽口の本体温度を示す模式図である。
図4】温度測定工程において羽口の冷却水温度を示す模式図である。
図5】(a)~(d)は、それぞれ、漏風判定工程の第1実施形態を説明するための図である。
図6】(a)、(b)は、それぞれ、漏風判定工程の第2実施形態を説明するための図である。
図7】漏風判定工程の第3実施形態において、熱風炉からの熱風温度の推移を示す図である。
図8】漏風判定工程の第3実施形態において、漏風していない羽口であることが特定されたことを示す図である。
図9】漏風判定工程の第3実施形態において、羽口からの漏風が判定されたことを示す図である。
図10】漏風判定工程の第3実施形態において、熱風炉からの熱風温度の推移を示す図である。
図11】漏風判定工程の第3実施形態において、漏風していない羽口であることが特定されたことを示す図である。
図12】漏風判定工程の第3実施形態において、羽口からの漏風が判定されたことを示す図である。
図13】(a)、(b)は、それぞれ、漏風判定工程の第4実施形態において、羽口からの漏風が判定されたことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
図1は、高炉の炉体断面の一部を示す縦断面模式図である。図1に示す実施形態において、高炉を長期間休風する場合、高炉内の羽口直上に充填されている原料(コークス充填層)の表面の高さを高炉の朝顔部の上端よりも減じて休風する。休風中は高炉内の全ての羽口に閉塞用の耐火物を詰めて、羽口を閉塞する。その後、全ての羽口を閉塞させたまま送風支管に熱風を導入し、送風再開準備を行う。その後、所定の羽口から熱風を徐々に送風して高炉を通常操業に戻す。本発明の一実施形態は、羽口を閉塞させたまま送風支管に熱風を導入し、送風再開準備を行う工程を対象とする。
【0015】
本発明の一実施形態に係る高炉操業方法においては、羽口を閉塞させたまま送風支管に熱風を導入する送風再開準備工程と、羽口の温度を測定する温度測定工程と、測定した羽口の温度に基づき羽口の漏風の有無を判定する漏風判定工程と、を実施する。
【0016】
上記の漏風判定工程を、全ての羽口に適用させることで、高炉の再送風前に、漏風している羽口を特定することができる。漏風が確認された羽口については、閉塞用の耐火物を追加で詰めるか、閉塞用の耐火物を除去してから新規に閉塞用の耐火物を詰めることで、遮断性を高めてから、高炉の再送風を実施する。以下、送風再開準備工程、温度測定工程、漏風判定工程、について説明する。
【0017】
<送風再開準備工程について>
図2(a)~(d)は、送風再開準備工程を説明するための模式図である。図中、21は送風支管5の後端部に設けられた覗き窓である。図2(a)は、休風時ではなく通常操業での熱風の流れを示しており、熱風炉(図示せず)からの熱風は、環状管6および送風支管5を通じて羽口3から高炉の内部に供給されている。高炉の休風時において、まず、図2(b)に示すように、羽口3を不定形耐火物22(例えばキャスタブル)にて閉塞する。次に、図2(c)に示すように、送風支管5の後端部に設けた覗き窓21を開放する。次に、図2(c)に示すように覗き窓21を開放した状態で、図2(d)に示すように、熱風炉からの熱風を、環状管6および送風支管5に供給する。熱風炉の温度は100℃以上900℃以下に調整する。
【0018】
上述した図2(d)に示す実施形態において、羽口3が不定形耐火物22で閉塞されるとともに送風支管5の後端部に設けられた覗き窓21は開放された状態であるため、供給された熱風は、送風支管5の覗き窓21を通じて炉外に放風される。なお、ここで、送風支管5の後端部の覗き窓21から放風したが、これに限るものではなく、高炉に近い位置での配管系統に弁を設けて放風できるようにしてもよいし、放風できる配管ルートを新設してもよい。
【0019】
<温度測定工程について>
本発明の高炉操業方法に係る温度測定工程の一実施形態では、上記送風再開準備工程に続き、全ての閉塞羽口の温度を測定(監視)する。
【0020】
本実施形態では、「羽口の温度」として、「羽口の本体温度(埋込温度)」と「羽口内を流れる冷却水の温度」の双方を測定(監視)する。羽口11の本体温度については、図3に示すように、各羽口11の先端(炉内側)に設けられた先端埋込温度計12によって、各羽口11の本体温度を測定する。また、羽口11内を流れる羽口冷却水13の温度については、図4に示すように、高炉外に設けられた羽口冷却水13の温度を測定する排水温度計16によって、羽口11内を流れた後の羽口冷却水(排水)13の温度を測定する。測定された羽口11の本体温度および冷却水温度は、高炉外の記録装置に時系列データとして記録される。なお、図4において、14は給水ヘッダ、15は給水温度計、17は排水トラフである。
【0021】
<漏風判定工程について>
本発明の高炉操業方法に係る漏風判定工程では、温度測定工程で求めた羽口の温度に基づき、羽口の漏風の有無を判定する。以下、漏風判定工程の第1実施形態~第4実施形態について、各別に説明する。
【0022】
<漏風判定工程の第1実施形態について>
図5(a)~(d)は、それぞれ、漏風判定工程の第1実施形態を説明するための図である。漏風判定工程の第1実施形態では、上記温度判定工程に続き、各羽口において、所定の時間間隔で測定した羽口温度が前回の羽口温度よりも一定温度範囲以上高い場合、または、所定の時間間隔で測定した羽口温度が、熱風炉からの熱風供給開始前の羽口温度よりも一定温度範囲以上高い場合に、その羽口を漏風有りと判定する。
【0023】
具体的には、各羽口において、所定の時間間隔Tで測定した羽口温度Ttrに基づき、測定したTtrが前回測定したTtpよりも一定温度範囲ΔT未満の場合(図5(a)場合)、その羽口は「漏風無し」と判断する。各羽口において、所定の時間間隔Tで測定した羽口温度Ttrに基づき、測定したTtrが前回測定したTtpよりも一定温度範囲ΔT以上の場合(図5(b)場合)、その羽口はその時点で「漏風有り」と判断する。
【0024】
例えば、熱風炉からの熱風供給開始から15分毎の各羽口の本体温度Ttrの推移を監視し、Ttrが前回のTtpよりも3℃以上となった場合に、その羽口はその時点で「漏風有り」と判断する。また、熱風炉からの熱風供給開始から15分毎の各羽口の冷却水温度Ttrの推移を監視し、Ttrが前回のTtpよりも0.3℃以上となった場合に、その羽口はその時点で「漏風有り」と判断する。
【0025】
あるいは、各羽口において、所定の時間間隔Tで測定した羽口温度Ttrに基づき、測定したTtrが熱風炉からの熱風供給開始前の羽口温度Ttiよりも一定温度範囲ΔT未満の場合(図5(c)場合)、その羽口はその時点で「漏風有り」と判断する。各羽口において、所定の時間間隔Tで測定した羽口温度Ttrに基づき、測定したTtrが熱風炉からの熱風供給開始前の羽口温度Ttiよりも一定温度範囲ΔT以上の場合(図5(d)場合)、その羽口はその時点で「漏風有り」と判断する。
【0026】
例えば、熱風炉からの熱風供給開始から1分毎の各羽口の本体温度Ttrの推移を監視し、Ttrが熱風炉からの熱風供給開始前の羽口の本体温度Ttiよりも10℃以上となった場合に、その羽口はその時点で「漏風有り」と判断する。また、熱風炉からの熱風供給開始から1分毎の各羽口の冷却水温度Ttrの推移を監視し、Ttrが熱風供給開始前の羽口の本体温度Ttiよりも3℃以上となった場合に、その羽口はその時点で「漏風有り」と判断する。
【0027】
<漏風判定工程の第2実施形態について>
図6(a)、(b)は、それぞれ、漏風判定工程の第2実施形態を説明するための図である。漏風判定工程の第2実施形態では、上記温度判定工程に続き、各羽口において、所定の時間間隔で測定した羽口温度が他の羽口の平均温度よりも一定温度範囲以上高い場合に、その羽口を漏風有りと判定する。具体的には、各羽口において、所定の時間間隔Tで測定した羽口温度Ttrに基づき、測定したTtrが他の羽口の平均温度Ttaよりも一定温度範囲ΔT未満の場合(図6(a)場合)、その羽口は「漏風無し」と判断する。各羽口において、所定の時間間隔Tで測定した羽口温度Ttrに基づき、測定したTtrが他の羽口の平均温度Ttaよりも一定温度範囲ΔT以上の場合(図6(b)場合)、その羽口はその時点で「漏風有り」と判断する。
【0028】
例えば、熱風炉からの熱風供給開始から1分間隔で各羽口の本体温度のTtrの推移を監視し、Ttrが他の羽口の平均温度Ttaよりも3℃以上となった場合に、その羽口はその時点で「漏風有り」と判断する。また、熱風炉からの熱風供給開始から1分毎の各羽口の冷却水温度のTtrの推移を監視し、Ttrが他の羽口の平均温度Ttaよりも0.3℃以上となった場合に、その羽口はその時点で「漏風有り」と判断する。
【0029】
<漏風判定工程の第3実施形態について>
漏風判定工程の第3実施形態では、上記温度測定工程に続き、求めた羽口に温度に基づき、以下の特定工程および判定工程を実施する。まず、特定工程では、少なくとも2本の羽口の温度を比較して「漏風無し」の羽口を特定する。次に、判定工程では、特定された羽口以外の任意の羽口の温度を、特定された羽口の温度の平均値により徐した値により比較し、その除した値が閾値以上か否かを判定する。これにより、その羽口の「漏風無し」および「漏風有り」を判断する。
【0030】
羽口の本体温度を用いた特定工程及び判定工程について以下に説明する。羽口からの漏風がない場合は、羽口の本体温度に対する熱風炉からの熱風温度の影響が、配管や羽口を閉塞させている耐火物からの伝熱による影響に限定される。従って、羽口からの漏風がない場合は、熱風炉からの熱風供給開始後の羽口本体の温度変化は限定された変動となる。そこで発明者らは、漏風が確認されなかった羽口のうちの任意の2本を選び出し、熱風炉からの熱風供給開始後の羽口の本体温度の比率の推移を調査すると、0.90以上1.10以下の範囲内となることを見出した。
【0031】
一方で、羽口からの漏風がある場合は、羽口の本体温度は、熱風炉からの熱風温度に大きく影響される。発明者らは、漏風が確認された羽口の本体温度を、漏風が確認されなかった羽口の本体温度で除した値の、熱風炉からの熱風供給開始後の推移を調査すると、1.10を超過することを見出した。
【0032】
一例として、熱風炉からの熱風温度の推移と、羽口Aと羽口Bの本体温度の比率の推移を、それぞれ図7図8に示す。羽口Aと羽口Bの本体温度の比率の推移は0.90以上1.10以下で推移しており、羽口A及び羽口Bは、漏風していない羽口であることが特定された。
【0033】
一方で、羽口C、D、Eの本体温度を、漏風が確認されない羽口AおよびBの本体温度の平均値で除した値の推移を図9に示す。熱風炉からの熱風温度の上昇に追随するように、羽口C、D、Eの本体温度を、羽口AおよびBの本体温度の平均値で除した値が推移しており、第1閾値TH1の1.10を超過したことから、羽口C、D、Eから漏風していることがわかった。これにより、羽口C、D、Eは「漏風有り」の羽口と判定された。
【0034】
羽口の冷却水温度を用いた特定工程及び判定工程について以下に説明する。羽口からの漏風がない場合は、羽口の冷却水温度に対する熱風炉からの熱風温度の影響が、配管や羽口を閉塞させている耐火物からの伝熱による影響に限定される。従って、羽口からの漏風がない場合は、熱風炉からの熱風供給開始後の羽口の冷却水温度変化は限定された変動となる。そこで発明者らは、漏風が確認されなかった羽口のうちの任意の2本を選び出し、熱風炉からの熱風供給開始後の羽口の冷却水温度の比率の推移を調査すると、0.990以上1.010以下の範囲内となることを見出した。
【0035】
一方で、羽口からの漏風がある場合は、羽口の冷却水温度は、熱風炉からの熱風温度に大きく影響される。発明者らは、漏風が確認された羽口の本体温度を、漏風が確認されなかった羽口の冷却水温度で除した値の、熱風炉からの熱風供給開始後の推移を調査すると、1.010を超過することを見出した。
【0036】
一例として、熱風炉からの熱風温度の推移と、羽口Fと羽口Gの冷却水温度の比率の推移を、それぞれ図10図11に示す。羽口Fと羽口Gの冷却水温度の比率の推移は0.990以上1.010以下で推移しており、羽口F及び羽口Gは、漏風していない羽口であることが特定された。
【0037】
一方で、羽口Hの冷却水温度を、漏風が確認されない羽口FおよびGの冷却水温度の平均値で除した値の推移を図12に示す。第2閾値TH2の1.010を超過したことから、羽口Hから漏風していることがわかった。これにより、羽口Hは「漏風有り」の羽口と判定された。
【0038】
<漏風判定工程の第4実施形態について>
漏風判定工程の第4実施形態では、上記温度測定工程に続き、求めた羽口に温度に基づき、以下の特定工程および判定工程を実施する。まず、特定工程では、少なくとも2本の羽口の温度を比較して「漏風無し」の羽口を特定する。次に、判定工程では、特定された羽口以外の任意の羽口の温度と、特定された羽口の温度の平均値との差により比較し、その差の値が閾値以上か否かを判定する。これにより、その羽口の「漏風無し」および「漏風有り」を判断する。第4実施形態における、具体的な特定工程および判定工程は、上述した第3実施形態と、判定工程において比較に用いる「除した値」が「差の値」となる点のみ異なっているが、その他の点は同じである。
【0039】
羽口C、D、Eの本体温度と、漏風が確認されない羽口AおよびBの本体温度の平均値との差の推移を図13(a)に示す。熱風炉からの熱風温度の上昇に追随するように、羽口C、D、Eの本体温度と、羽口AおよびBの本体温度の平均値との差が推移しており、第3閾値TH3の3℃を超過したことから、羽口C、D、Eから漏風していることがわかった。これにより、羽口C、D、Eは「漏風有り」の羽口と判定された。また、羽口Hの冷却水温度と、漏風が確認されない羽口FおよびGの冷却水温度の平均値との差の推移を図13(b)に示す。第4閾値TH4の0.3℃を超過したことから、羽口Hから漏風していることがわかった。これにより、羽口Hは「漏風有り」の羽口と判定された。
【0040】
<その後の工程について>
上述した送風再開工程、温度測定工程、漏風判定工程を行い、漏風が確認された羽口については、閉塞用の耐火物を羽口に追加で詰めるか、閉塞用の耐火物を除去した後に、新たに閉塞用の耐火物を羽口に詰めて羽口を閉塞させる。その後、高炉の再送風を行う。出銑孔直上の複数の羽口の開口が行われた後に、隣接する羽口を順次開口していき、最終的に全ての羽口を開口する。
【0041】
高炉の再送風後は羽口の覗き窓から羽口を監視し、開口羽口から離れた羽口の耐火物が消失して炉内のコークスが露見していた場合は、速やかに休風して、耐火物を新たに詰めて当該羽口を閉塞させた後に再送風する。
【符号の説明】
【0042】
3 羽口
5 送風支管
6 環状管
11 羽口
12 先端埋込温度計
13 羽口冷却水
14 給水ヘッダ
15 給水温度計
16 排水温度計
17 排水トラフ
21 覗き窓
22 不定形耐火物
図1
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