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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046120
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】補聴器
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/00 20060101AFI20240327BHJP
   H04R 25/02 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H04R25/00 Z
H04R25/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151314
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100184712
【弁理士】
【氏名又は名称】扇原 梢伸
(72)【発明者】
【氏名】深渡瀬 智史
(57)【要約】
【課題】シェルからフェースプレートを取り外すことなく、容易に線状部材を交換することができる技術を提供する。
【解決手段】補聴器100は、シェル10と、フェースプレート20と、線状部材ユニット30と、を備えている。フェースプレート20は、シェル10に取り付けられ、凹状の取り付け部21を有する部材である。線状部材ユニット30は、線状部材40と、土台50と、把持部60と、を備えている。土台50は、線状部材40が固定されており、取り付け部21に脱着可能であり、線状部材40専用の電気的要素を含んでいない土台である。補聴器100では、フェースプレート20に線状部材40を直接取り付けるのではなく、線状部材40を土台50(別のパーツ)に取り付け、また、フェースプレート20に土台50用の貫通孔をあけることなく、取り付け部21に土台50を脱着可能な構造で線状部材40を組み込むようにしている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の耳内に挿入されるシェルと、
前記シェルに取り付けられ、凹状の取り付け部を有するフェースプレートと、
取り出し用の線状部材と、
前記線状部材が固定されており、前記取り付け部に脱着可能であり、前記線状部材専用の電気的要素を含んでいない土台と、
を備える補聴器。
【請求項2】
請求項1に記載の補聴器において、
前記フェースプレートは、前記取り付け部の内面と前記フェースプレートの外面との間に形成された貫通孔を備え、
前記線状部材は、前記貫通孔を通して配置されていることを特徴とする補聴器。
【請求項3】
請求項1に記載の補聴器において、
前記土台は、前記フェースプレートに向かって突出する土台突出部を備え、
前記取り付け部は、前記土台突出部を受け入れる取り付け部受け部を備え、
前記取り付け部に前記土台を取り付ける際には、前記土台突出部と前記取り付け部受け部とを係合させることにより前記土台を固定することを特徴とする補聴器。
【請求項4】
請求項1に記載の補聴器において、
前記土台は、前記取り付け部に前記土台が取り付けられた状態で、前記取り付け部と前記土台との間に工具を挿入可能な切り欠き部を備え、
前記取り付け部は、前記切り欠き部に向かって突出する取り付け部突出部を備えることを特徴とする補聴器。
【請求項5】
請求項1に記載の補聴器において、
前記土台は、上壁と、前記上壁に連結された側壁と、を備え、下部に開口が形成され、前記上壁と前記側壁とを連結する部分に前記線状部材を通す挿通孔が形成され、前記上壁と前記側壁との内部に前記線状部材の端部を収納する収納空間が形成された部材であることを特徴とする補聴器。
【請求項6】
請求項1に記載の補聴器において、
前記フェースプレートは、前記取り付け部に隣接して形成され、前記フェースプレートの端部から前記フェースプレートの内側に向かって形成された溝部を備え、
前記線状部材は、前記溝部に配置されていることを特徴とする補聴器。
【請求項7】
請求項1に記載の補聴器において、
前記土台は、前記フェースプレートに向かって突出する土台突出部を備え、
前記フェースプレートは、前記土台突出部を受け入れるフェースプレート受け部を備え、
前記取り付け部に前記土台を取り付ける際には、前記土台突出部と前記フェースプレート受け部とを係合させることにより前記土台を固定することを特徴とする補聴器。
【請求項8】
請求項1に記載の補聴器において、
前記土台は、前記取り付け部に取り付けられた状態で、一部は前記取り付け部の内部に格納され、残りの部分は前記取り付け部の外部に配置されることを特徴とする補聴器。
【請求項9】
請求項1に記載の補聴器において、
前記土台は、前記線状部材を通す第1挿通孔が形成された第1上壁、及び、前記第1上壁から湾曲して連結された第1側壁を有する第1部材と、前記第1側壁の内側に形成され、前記線状部材を通す第2挿通孔が形成された第2上壁、及び、前記第2上壁に連結された第2側壁を有する第2部材と、を備え、前記第2上壁と前記第2側壁との内部に前記線状部材の端部を収納する収納空間が形成された部材であることを特徴とする補聴器。
【請求項10】
請求項1に記載の補聴器において、
前記土台は、左耳用の補聴器に用いる第1土台と、右耳用の補聴器に用いる第2土台と、を備え、
前記第1土台は、第1色で着色され、
前記第2土台は、前記第1色とは異なる第2色で着色されていることを特徴とする補聴器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補聴器に関する。
【背景技術】
【0002】
耳あな型補聴器の取り出し用の線状部材は、耳内から補聴器を取り出す手段として広く用いられている。一般的に取り出し用の線状部材は、オーダーメイド補聴器をより小さく作製するためなどの理由でフェースプレート(FP)に直接接着されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記のように取り出し用の線状部材は、耳あな型補聴器(オーダーメイド補聴器を含む)の耳からの取り出しのために補聴器に取り付けられた糸状の物である。
【0004】
一般的に上述の取り出し用の線状部材は、取り出しテグス、テグス、取り出しワイヤー、取り出しコード、引っ張り紐などと呼ばれ、ナイロンなどの化学繊維製の釣り糸状もの(例えばナイロンテグス)を用いる。
【0005】
一般的な耳あな型補聴器の取り出し用の線状部材(以下、線状部材)は、片側を補聴器のフェースプレート側に埋め込み、もう片側は線状部材にビーズを取り付けたり、線状部材の先端を溶かして丸めたりして引っ掛かりを作ったりして、使用者が把持しやすいようになっている。
【0006】
一方、特許文献2及び特許文献3では、線状部材を付けた小さな部品をフェースプレートとは別部材のカバーに取り付けて固定することが開示されている。
また、特許文献4や特許文献5では、補聴器のフェースプレートに設けられた電池ホルダに線状部材を取り付け、電池ホルダごと交換可能な構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許6143343号公報
【特許文献2】特表2006-502619号公報
【特許文献3】特開2007-124022号公報
【特許文献4】特許4764887号公報
【特許文献5】特許6184295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
線状部材は、長期使用などにより破断する可能性がある。線状部材をフェースプレートに直接取り付けた補聴器の場合、線状部材が破断した際の修理はシェルからフェースプレートを取り外す必要があるが、この作業は修理業の無い販売店では対応ができず、工場などで修理を行う必要がある。この場合、品物の送付などで修理完了までに時間が掛かり、その間、使用者は補聴器を使用することができない。
【0009】
特許文献2、3の技術は、着脱可能な線状部材構造の一例を開示しているが、シェルにカバーを取り付ける構造であり、カバーの分だけ補聴器の大きさが大きくなる。特に、特許文献3の技術では、耳内から補聴器を取り出そうとした際にカバーが外れてしまう可能性もある。
【0010】
一方、電池ホルダを搭載した補聴器の場合には、特許文献4、5に示す構造により、電池ホルダに線状部材を取り付けることで、販売店での交換が可能になるが、充電式補聴器のような電池ホルダを持たない製品では採用できないため、この場合、線状部材の交換修理は、従来通りの対応が必要となる。
【0011】
そこで本発明は、シェルからフェースプレートを取り外すことなく、容易に線状部材を交換することができる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するため以下の解決手段を採用する。なお、以下の解決手段はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
解決手段1:本解決手段の補聴器は、使用者の耳内に挿入されるシェルと、前記シェルに取り付けられ、凹状の取り付け部を有するフェースプレートと、取り出し用の線状部材と、前記線状部材が固定されており、前記取り付け部に脱着可能であり、前記線状部材専用の電気的要素を含んでいない土台と、を備える補聴器である。
【0014】
本解決手段によれば、線状部材が切れた場合、フェースプレートから土台を外して、切れた線状部材を新しい線状部材に交換することができ、シェルからフェースプレートを取り外すことなく、容易に線状部材を交換することができる。
【0015】
また、本解決手段によれば、取り付け部が、凹状となっているため、取り付け部からフェースプレートの内部に気体や水分が進入しづらくなっており、補聴器の故障を回避して、補聴器の信頼性を向上させることができる。
【0016】
解決手段2:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記フェースプレートは、前記取り付け部の内面と前記フェースプレートの外面との間に形成された貫通孔を備え、前記線状部材は、前記貫通孔を通して配置されていることを特徴とする補聴器である。
【0017】
本解決手段によれば、線状部材は、フェースプレートの貫通孔を通して配置されているため、線状部材をフェースプレートでしっかりと押さえることができ、線状部材や土台の脱落を防止することができる。
【0018】
解決手段3:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記土台は、前記フェースプレートに向かって突出する土台突出部を備え、前記取り付け部は、前記土台突出部を受け入れる取り付け部受け部を備え、前記取り付け部に前記土台を取り付ける際には、前記土台突出部と前記取り付け部受け部とを係合させることにより前記土台を固定することを特徴とする補聴器である。
【0019】
本解決手段によれば、土台突出部と取り付け部受け部とによって簡単かつ強固に土台を固定することができる。
【0020】
解決手段4:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記土台は、前記取り付け部に前記土台が取り付けられた状態で、前記取り付け部と前記土台との間に工具を挿入可能な切り欠き部を備え、前記取り付け部は、前記切り欠き部に向かって突出する取り付け部突出部を備えることを特徴とする補聴器である。
【0021】
本解決手段によれば、切り欠き部に工具を挿入して、簡単に土台を取り外すことができる。
また、本解決手段によれば、取り付け部突出部によって、土台が不用意に脱落することを回避することができる。
【0022】
解決手段5:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記土台は、上壁と、前記上壁に連結された側壁と、を備え、下部に開口が形成され、前記上壁と前記側壁とを連結する部分に前記線状部材を通す挿通孔が形成され、前記上壁と前記側壁との内部に前記線状部材の端部を収納する収納空間が形成された部材であることを特徴とする補聴器である。
【0023】
本解決手段によれば、上壁及び側壁といった少ない部品を備える土台で線状部材を固定することができる。
【0024】
解決手段6:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記フェースプレートは、前記取り付け部に隣接して形成され、前記フェースプレートの端部から前記フェースプレートの内側に向かって形成された溝部を備え、前記線状部材は、前記溝部に配置されていることを特徴とする補聴器である。
【0025】
本解決手段によれば、線状部材は、フェースプレートの溝部に配置されているため、線状部材を貫通孔に通す場合と比較して、線状部材をフェースプレートに簡単に取り付けることができる。
【0026】
解決手段7:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記土台は、前記フェースプレートに向かって突出する土台突出部を備え、前記取り付け部に前記土台を取り付ける際には、前記土台突出部と前記フェースプレート受け部とを係合させることにより前記土台を固定することを特徴とする補聴器である。
【0027】
本解決手段によれば、土台突出部とフェースプレート受け部とによって簡単かつ強固に土台を固定することができる。
【0028】
解決手段8:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記土台は、前記取り付け部に取り付けられた状態で、一部は前記取り付け部の内部に格納され、残りの部分は前記取り付け部の外部に配置されることを特徴とする補聴器である。
【0029】
本解決手段によれば、土台の一部を取り付け部の内部に格納して、土台の取り付けを安定させつつ、土台の残りの部分を取り付け部の外部に配置して、外側からもしっかりと土台を固定することができる。
【0030】
解決手段9:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記土台は、前記線状部材を通す第1挿通孔が形成された第1上壁、及び、前記第1上壁から湾曲して連結された第1側壁を有する第1部材と、前記第1側壁の内側に形成され、前記線状部材を通す第2挿通孔が形成された第2上壁、及び、前記第2上壁に連結された第2側壁を有する第2部材と、を備え、前記第2上壁と前記第2側壁との内部に前記線状部材の端部を収納する収納空間が形成された部材であることを特徴とする補聴器である。
【0031】
本解決手段によれば、第1部材及び第2部材といった少ない部品を備える土台で線状部材を固定することができる。
【0032】
解決手段10:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記土台は、左耳用の補聴器に用いる第1土台と、右耳用の補聴器に用いる第2土台と、を備え、前記第1土台は、第1色で着色され、前記第2土台は、前記第1色とは異なる第2色で着色されていることを特徴とする補聴器である。
【0033】
本解決手段によれば、第1土台と第2土台とは異なる色で着色されているため、色によって左右の補聴器を区別することができる。
【0034】
その他の解決手段:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記取り付け部に前記土台が取り付けられた状態で、前記切り欠き部と前記取り付け部突出部との間には、隙間が形成されていることを特徴とする補聴器である。
【0035】
本解決手段によれば、切り欠き部と取り付け部突出部との間にある隙間に工具を挿入して、簡単に土台を取り外すことができる。
【0036】
その他の解決手段:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記取り付け部に前記土台が取り付けられた状態で、前記フェースプレートの外面と前記土台の外面とは、連続した面を形成していることを特徴とする補聴器である。
【0037】
本解決手段によれば、フェースプレートの外面と土台の外面とは、連続した面を形成しているため、補聴器の外観を滑らかな形状にすることができ、補聴器のデザイン性を向上させることができる。
【0038】
その他の解決手段:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記土台は、前記取り付け部に取り付けられた状態で、一の側壁以外は前記取り付け部の内部に格納されることを特徴とする補聴器である。
【0039】
本解決手段によれば、土台の一の側壁以外は取り付け部の内部に格納されるため、土台の大部分を取り付け部の内部に格納することができ、補聴器の外観を綺麗にすることができる。
【0040】
その他の解決手段:本解決手段の補聴器は、上述したいずれかの解決手段において、前記土台は、前記取り付け部に前記土台が取り付けられた状態で、前記フェースプレートと前記土台との間に工具を挿入可能な面取り部を備えることを特徴とする補聴器である。
【0041】
本解決手段によれば、面取り部に工具を挿入して、簡単に土台を取り外すことができる。
【0042】
その他の解決手段:本解決手段の線状部材ユニットは、上述したいずれかの解決手段に記載の補聴器に脱着可能な線状部材ユニットであって、前記線状部材と、前記土台と、を備える線状部材ユニットである。
【0043】
本解決手段によれば、線状部材及び土台を備えた線状部材ユニットとすることができるため、上述した補聴器に適した線状部材ユニットを提供することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、シェルからフェースプレートを取り外すことなく、容易に線状部材を交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】第1実施形態の補聴器100を示す斜視図である。
図2】第1実施形態の土台50を示す斜視図である。
図3】第1実施形態の線状部材ユニット30の取り付け方法を示す図である。
図4】第1実施形態の線状部材ユニット30の取り付け方法を示す図である。
図5】第1実施形態の線状部材ユニット30の取り付け方法を示す図である。
図6】第1実施形態の線状部材ユニット30の取り付け方法を示す図である。
図7】第1実施形態の線状部材ユニット30の取り付け方法を示す図である。
図8】第1実施形態の線状部材ユニット30の取り外し方法を示す図である。
図9】第1実施形態の線状部材ユニット30の取り外し方法を示す図である。
図10】第1実施形態の線状部材ユニット30の取り外し方法を示す図である。
図11】第2実施形態の補聴器100-2を示す斜視図である。
図12】第2実施形態の線状部材ユニット30-2を示す斜視図である。
図13】第2実施形態の線状部材ユニット30-2の取り付け方法を示す図である。
図14】第2実施形態の線状部材ユニット30-2の取り付け方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態の補聴器100を示す斜視図である。図2は、第1実施形態の土台50を示す斜視図であって、図2(A)は土台50を表側から見た斜視図であり、図2(B)は土台50を裏側から見た斜視図である。
図1に示すように、第1実施形態の補聴器100は、シェル10と、フェースプレート20と、線状部材ユニット30と、を備えている。
【0047】
シェル10は、使用者の耳内に挿入される部材である。
フェースプレート20は、シェル10に取り付けられ、凹状の取り付け部21を有する部材である。
取り付け部21は、フェースプレート20の中心方向(内側の方向)に向かって形成された窪み(凹み)である(図3(B)参照)。取り付け部21は、土台50をはめ込み固定するためのスペースとなっている。フェースプレート20は、図1中上側に膨らんだドーム状の形状となっており、内部には補聴器100に必要となる電気的な配線や充電池といった電気部品等が収納される。
【0048】
線状部材ユニット30は、線状部材40と、土台50と、把持部60と、を備えている。
線状部材40は、使用者の耳内に挿入された補聴器100を取り出すための取り出し用の線状部材(テグス)である。線状部材40の長さは、例えば数ミリから十数ミリ、好ましくは、約10mm程度とすることができる。
【0049】
土台50は、取り付け部21に脱着可能であり、線状部材40専用の電気的要素を含んでいない樹脂製の部材である。「線状部材40専用」とは、線状部材40を取り付けるために用いられるという意味である。また、「電気的要素を含んでいない」とは、電気的な配線や、電気部品などを含んでいないという意味である。土台50には、線状部材40が挿入されて固定されている。土台50の素材は、目立ちにくいことを鑑みてフェースプレート20と同一の素材(同色)とすることが好ましい。土台50は、取り付け部21に少し固めにはめ込める(圧入することができる)ようになっていてもよく、多少の隙間をもってはめ込めるようになっていてもよい。
【0050】
ここで、左耳用の補聴器や右耳用の補聴器といったように、補聴器100が2つある場合には、土台50の色を左右で変えることができる。例えば、左耳用の補聴器100は、土台50の色を青色などとし、右耳用の補聴器100は、土台50の色を赤色などとすることができる。なお、土台の色は、別の異なる2つの色を採用してもよい。また、着色は、補聴器100の外部に表出する部分だけであってもよい。
すなわち、土台50は、左耳用の補聴器に用いる第1土台と、右耳用の補聴器に用いる第2土台と、を備えており、第1土台は、第1色(例えば、青色)で着色され、第2土台は、第1色とは異なる第2色(例えば、赤色)で着色することができる。
【0051】
把持部60は、線状部材40の持ち手側の先端に配置され、補聴器100を耳内から引っ張る際に滑らずに力が十分に伝わるようにする目的で使用される。把持部60は、例えば、線状部材40の先端にビーズを付けることで形成してもよいし、線状部材40の先端を熱などで溶かして球状にして形成してもよい。
【0052】
フェースプレート20は、取り付け部21の内面とフェースプレート20の外面との間に形成された貫通孔22を備えている。そして、線状部材40は、貫通孔22を通して配置されている(図7(B)参照)。
【0053】
図1に示すように、取り付け部21に土台50が取り付けられた状態で、フェースプレート20の外面Aと土台50の外面Bとは、連続した面(滑らかな湾曲した面)を形成している。
また、土台50は、取り付け部21に取り付けられた状態で、一の側壁(図2(A)の正面に位置する側壁53)以外は取り付け部21の内部に格納される。
【0054】
図2に示すように、土台50は、フェースプレート20に向かって突出する土台突出部51を備えている。土台突出部51は、円錐の頂点を除いた形状や円柱形状、半球形状などとすることができる。土台突出部51は、上壁52の中央付近と、正面に位置する側壁53の裏側に1つずつ形成されている。土台突出部51は、取り付け部21に土台50を固定する役割と、取り付け部21に取り付けた土台50が取り付け部21の内部で動かないようにする役割とを果たしている。
【0055】
一方、取り付け部21は、土台突出部51を受け入れる取り付け部受け部23を備えている(図3(B)参照)。取り付け部受け部23は、取り付け部21(フェースプレート20)に形成された窪みである。取り付け部受け部23は、土台突出部51に対応して2つ形成されており、1つ目は取り付け部21の内部の天井に形成され、2つ目は取り付け部21の入口付近の底面に形成されている(図3(B)参照)。
そして、取り付け部21に土台50を取り付ける際には、土台突出部51と取り付け部受け部23とを係合させることにより土台50を固定する。
【0056】
図2(A)に示すように、土台50は、上壁52と、上壁52に連結された4つの側壁53と、を備える部材である。
図2(B)に示すように、土台50の下部には、開口54が形成されている。また、上壁52と側壁53とを連結する部分には(図2(B)の上壁52と、奥側に位置する側壁53とに跨る部分には)、線状部材40を通す挿通孔55が形成されている。さらに、上壁52と側壁53との内部には、線状部材40の端部を収納する収納空間56が形成されている。
【0057】
このように、本実施形態では、フェースプレート20に線状部材40を直接取り付けるのではなく、線状部材40を土台50(別のパーツ)に取り付け、また、フェースプレート20に土台50用の貫通孔をあけることなく、土台50の取り付け部21を設けて、取り付け部21に土台50を脱着可能な構造で線状部材40を組み込むようにしている。
【0058】
図3図7は、第1実施形態の線状部材ユニット30の取り付け方法を示す図である。各図(A)は、フェースプレート20を示す斜視図である。図3(B)、図6(B)、図7(B)は、取り付け部21付近の縦断面図である。図4(B)、図5(B)は、土台50の縦断面図である。
以下に示す取り付けの第1手順から第5手順を順番に行うことにより、フェースプレート20に線状部材ユニット30(線状部材40)を取り付けることができる。なお、図3図7で示しているフェースプレート20は、製造段階のものであり、周囲に、フェースプレート20を延長した円盤状の部材70や3本の脚部71が付属しているが、これらは最終的には取り除かれる。なお、脚部71は、製造段階のフェースプレート20(円盤状の部材70)の上に、別のフェースプレート20(円盤状の部材70)を重ねる際に使用する。
【0059】
〔取り付けの第1手順(図3)〕
図3(A):フェースプレート20の貫通孔22に、線状部材40を通す。
図3(B):線状部材40は、フェースプレート20の上面から侵入し、貫通孔22を通り抜けて、取り付け部21の内部に進入する。取り付け部21の内部に進入した線状部材40は、取り付け部21の底面にあたって図中左方向に曲がり、取り付け部21を通り抜けて、取り付け部21の外側に配置される。
【0060】
〔取り付けの第2手順(図4)〕
図4(A):土台50に、線状部材40を通す。
図4(B):線状部材40は、土台50の上側から、上壁52及び側壁53に跨って形成された挿通孔55を通り抜けて土台50の内部に進入し、土台50の開口54を通り抜けて土台50に外側に配置される。
【0061】
〔取り付けの第3手順(図5)〕
図5(A):土台50に、線状部材40を接着する。
図5(B):線状部材40の先端を火や熱した鏝などであぶり、小さな球を作り、土台50の内部に瞬間接着剤などで固定する。これにより、線状部材40は、収納空間56に収納され、挿通孔55から抜けないようになる。
【0062】
〔取り付けの第4手順(図6)〕
図6(A):フェースプレート20に、土台50を取り付ける。
図6(B):フェースプレート20の取り付け部21に、線状部材40を取り付けた土台50を押し込む。この際、2つの土台突出部51が、それぞれ対応する取り付け部受け部23にはまるため、フェースプレート20に対して土台50がしっかりと固定される。
【0063】
〔取り付けの第5手順(図7)〕
図7(A):線状部材40に、把持部60を取り付ける。
図7(B):線状部材40の持ち手側も火や熱した鏝などであぶり、小さな球を作る。使いやすさを考慮して、球にビーズなどを取り付けてもよい。
【0064】
この後は、フェースプレート20にシェル10(図1参照)を取り付け、シェル10からはみ出しているフェースプレート20の余分な部分をカットする(削る、トリミングする)。これにより、フェースプレート20をシェル10の外形に沿った形状とし、図1に示す補聴器100を完成させることができる。
【0065】
フェースプレート20に線状部材ユニット30(土台50)を取り付けるタイミングは、テグスを傷つけてしまう可能性を考慮して、フェースプレート20の余分な部分をカットした後であることが好ましい。
【0066】
図8図10は、第1実施形態の線状部材ユニット30の取り外し方法を示す図である。
各図(A)は、フェースプレート20を示す斜視図である。図8(B)は、線状部材40を切断した状態を示す図である。図9(B)、図10(B)は、土台50の上面よりも少し上の部分のフェースプレート20の横断面図である。
以下に示す取り外しの第1手順から第3手順を順番に行うことにより、フェースプレート20から線状部材ユニット30(線状部材40)を取り外すことができる。補聴器100の使用中に線状部材ユニット30に不具合が発生した場合(線状部材40が切れた場合など)には、以下の手順で線状部材ユニット30を取り外す。
【0067】
〔取り外しの第1手順(図8)〕
図8(A):フェースプレート20の面上Xで、線状部材40をカットする(切る)。
図8(B):線状部材40をカットすると、把持部60を含む線状部材40の上側が分離される。
【0068】
〔取り外しの第2手順(図9)〕
図9(A):土台50の側面から工具200(ピンセットやマイナスの精密ドライバなどの先端が細いもの)を挿入する。
図9(B):土台50を外すときは、土台50とフェースプレート20の隙間Yに、工具200を差し込んで外す。
【0069】
土台50は、取り付け部21に土台が取り付けられた状態で(図9(B)の状態で)、取り付け部21と土台50との間に工具を挿入可能な切り欠き部57を備えている。
土台50は、図9(B)に示すように、真上から見ると、先端(図9(B)の上側)が細くなり後方(図9(B)の下側)が広がる扇状となっており、切り欠き部57は、扇状の上壁52の後方側が、土台50の内側の方向に1段下がったように形成されている。
【0070】
また、取り付け部21は、取り付け部21の入口付近の左右の箇所に、切り欠き部57に向かって突出する取り付け部突出部24を備えている。なお、取り付け部突出部24は、形成しなくてもよい。
取り付け部21に土台50が取り付けられた状態で(図9(B)の状態で)、切り欠き部57と取り付け部突出部24との間には、隙間Yが形成されている。そして、この隙間Yに、工具200を挿入することができる。なお、工具200を挿入する隙間Yが狭い場合には、切り欠き部57の切り欠き量を増やしたり、取り付け部突出部24の突出量を減らしたりして、隙間Yの間隔を調整することができる。
【0071】
〔取り外しの第3手順(図10)〕
図10(A):工具200をさらに奥まで挿入すると、フェースプレート20から土台50が外れる。
図10(B):工具200は、取り付け部21の奥まで進入し、工具200を右方向に移動させることで、土台50を外すことができる。なお、外れた土台50は破棄し、上述した取り付け手順を行って新しい土台50を取り付けることで、線状部材ユニット30を新しいものに交換することができる。
【0072】
ここで、金型を利用してフェースプレート20を製造する場合、取り付け部21のような窪みを形成することが難しい場合がある。そして、このような加工作業の都合などの理由がある場合には、フェースプレート20の取り付け部21の下部を別部材25で作成し、その別部材25をフェースプレート20に取り付けるようにしてもよい(図3(B)参照)。別部材25は、フェースプレート20に接着剤などで接着して固定することができる。なお、このような加工作業の都合などの理由がない場合には、別部材25を設けずに、フェースプレート20の下部を板状に形成してもよい。
【0073】
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)フェースプレート20に線状部材40を取り付ける形状の補聴器100において、補聴器100の密閉構造を保ったまま線状部材40の交換が容易な構造を実現することができる。
(2)線状部材40を交換する際には、シェル10からフェースプレート20を取り外す必要がなく、市販の工具200で線状部材40の交換ができ、特殊な工具も必要ないので一般の販売店で線状部材40の交換作業を行うことができる。
【0074】
(3)仮に、土台50がフェースプレート20から外れても、線状部材40の持ち手側に設けられた把持部60がフェースプレート20に引っ掛かるため、簡単にはフェースプレート20と線状部材ユニット30とが分離しないようになっている。
(4)シェル10にカバーを取り付ける構造ではないため、カバーが外れてしまうという可能性がなく、カバーが存在しない分だけ、補聴器100の大きさも小さくすることができる。
【0075】
(5)第1実施形態によれば、線状部材40が切れた場合、フェースプレート20から土台50を外して、切れた線状部材40を新しい線状部材40に交換することができ、シェル10からフェースプレート20を取り外すことなく、容易に線状部材40を交換することができる。
(6)第1実施形態によれば、取り付け部21が、凹状となっているため、取り付け部21からフェースプレート20の内部に気体や水分が進入しづらくなっており、補聴器100の故障を回避して、補聴器100の信頼性を向上させることができる。
【0076】
(7)第1実施形態によれば、線状部材40は、フェースプレート20の貫通孔22を通して配置されているため、線状部材40をフェースプレート20でしっかりと押さえることができ、線状部材40や土台50の脱落を防止することができる。すなわち、第1実施形態によれば、フェースプレート20に線状部材40が通る貫通孔22が形成されているため、いずれの方向に線状部材40を引っ張っても、フェースプレート20が線状部材40を押さえており、フェースプレート20が壊れない限り、線状部材40が抜けない構造になっている。このため、第1実施形態の補聴器100は、線状部材40が抜けないという信頼性を高めた形態となっている。
【0077】
(8)第1実施形態によれば、土台突出部51と取り付け部受け部23とによって簡単かつ強固に土台50を固定することができる。また、取り付け部21側ではなく、土台50側の方が突出しているので、突出している部分がすり減ってきた場合に交換を行いやすい(フェースプレート20を交換するのは時間も労力もかかる)。
【0078】
(9)第1実施形態によれば、切り欠き部57に工具200を挿入して、簡単に土台50を取り外すことができる。
(10)第1実施形態によれば、取り付け部突出部24によって、土台50が不用意に脱落することを回避することができる。
【0079】
(11)第1実施形態によれば、切り欠き部57と取り付け部突出部24との間にある隙間Yに工具200を挿入して、簡単に土台50を取り外すことができる。
(12)第1実施形態によれば、フェースプレート20の外面Aと土台50の外面Bとは、連続した面を形成しているため、補聴器100の外観を滑らかな形状にすることができ、補聴器100のデザイン性を向上させることができる。
【0080】
(13)第1実施形態によれば、土台50の一の側壁以外は取り付け部21の内部に格納されるため、土台50の大部分を取り付け部21の内部に格納することができ、補聴器100の外観を綺麗にすることができる。
(14)第1実施形態によれば、上壁52及び側壁53といった少ない部品を備える土台50で線状部材40を固定することができる。
(15)第1実施形態によれば、第1土台と第2土台とは異なる色で着色することができるため、色によって左右の補聴器10を区別することができる。
【0081】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態と同様の内容については説明を省略する。
図11は、第2実施形態の補聴器100-2を示す斜視図である。図12は、第2実施形態の線状部材ユニット30-2を示す斜視図である。
【0082】
図11に示すように、第2実施形態の補聴器100-2は、シェル10と、フェースプレート20-2と、線状部材ユニット30-2と、を備えている。
第1実施形態と第2実施形態との異なる点は、主に、フェースプレート20-2の形状が異なる点と、線状部材ユニット30-2(土台50-2)の形状が異なる点である。
【0083】
図12に示すように、第2実施形態の線状部材ユニット30-2は、線状部材40と、土台50-2と、把持部60と、を備えている。
線状部材40及び把持部60は、第1実施形態のものと同様であるため、説明を省略し、以下、第2実施形態の土台50-2について説明する。
【0084】
第2実施形態の土台50-2は、第1部材80と、第2部材90と、を備えている。
第1部材80は、線状部材40を通す第1挿通孔81が形成された第1上壁82、及び、第1上壁82から湾曲して連結された第1側壁83を有する。
第2部材90は、第1側壁83の内側に形成され、線状部材40を通す第2挿通孔91が形成された第2上壁92、及び、第2上壁92に連結された第2側壁93を有する。第2上壁92と第2側壁93との内部には、線状部材40の端部を収納する収納空間94が形成されている。
【0085】
土台50-2は、取り付け部21-2に土台50-2が取り付けられた状態で、フェースプレート20-2と土台50-2との間に工具を挿入可能な面取り部84を備えている。面取り部84は、第1上壁82の裏側の左右に、斜めに削られたカット面として2つ形成されている。
【0086】
土台50-2は、フェースプレート20-2に向かって突出する土台突出部85(抜け止め形状)を備えている。一方、フェースプレート20-2は、土台突出部85を受け入れるフェースプレート受け部26(窪み)を備えている(図13参照)。
そして、取り付け部21-2に土台50-2を取り付ける際には、土台突出部85(図12参照)とフェースプレート受け部26(図13参照)とを係合させることにより土台50-2を固定する。
【0087】
土台50-2は、取り付け部21-2に取り付けられた状態で、一部(第2部材90)は取り付け部21-2の内部に格納され、残りの部分(第1部材80)は取り付け部21-2の外部に配置される(図14参照)。
【0088】
次に、第2実施形態のフェースプレート20-2について説明する。
図13(B)に示すように、第2実施形態のフェースプレート20-2は、取り付け部21-2を備えている。第2実施形態の取り付け部21-2は、第1実施形態と同様に、凹状の窪みであるが、第1実施形態の取り付け部よりも小さい窪みとなっている。この理由は、第2実施形態の取り付け部21-2は、第2実施形態の土台50-2の一部だけを内部に収納するからである。
【0089】
また、図13(B)に示すように、第2実施形態のフェースプレート20-2は、溝部27を備えている。溝部27は、取り付け部21-2の上部に隣接して形成され、フェースプレート20-2の端部Cからフェースプレート20-2の内側Dに向かって形成された溝(切り欠き)である。そして、線状部材40(第1部材80と第2部材90との間に配置された線状部材40)は、溝部27に配置される。
【0090】
このように、第2実施形態のフェースプレート20-2には、土台50-2を取り付ける取り付け部21-2(スペース)があり、取り付け部21-2の上部には溝部27が形成されている。また、取り付け部21-2の上部であって溝部27の後側(溝部27よりも内側)には、土台50-2を固定するためのフェースプレート受け部26(窪み)が形成されている。
【0091】
図13及び図14は、第2実施形態の線状部材ユニット30-2の取り付け方法を示す図である。各図(A)は、フェースプレート20-2を示す斜視図である。各図(B)は、各図(A)の一点鎖線で囲んだ部分を拡大して示す斜視図である。
以下に示す取り付けの第1手順及び第2手順を順番に行うことにより、フェースプレート20-2に線状部材ユニット30-2(線状部材40)を取り付けることができる。
【0092】
〔取り付けの第1手順(図13)〕
まず、土台50-2に線状部材40を取り付け、火や熱した鏝などであぶり、小さな球を作り、瞬間接着剤などで線状部材40と土台50-2を接着する。土台50-2に線状部材40を固定する方法は、第1実施形態の方法と同様である。これにより、土台50-2に線状部材40を取り付けた線状部材ユニット30-2が用意される。ついで、フェースプレート20-2の取り付け部21-2に対して、線状部材ユニット30-2を横から挿し込む。この際、フェースプレート20-2の溝部27に、土台50-2に取り付けられた線状部材40(第1部材80と第2部材90との間に配置された線状部材40)が入り込むようにする。
【0093】
〔取り付けの第2手順(図14)〕
そして、土台50-2の土台突出部85(図12参照)が、フェースプレート受け部26(図13参照)にはまると、フェースプレート20-2に線状部材ユニット30-2が固定される。この際、取り付け部21-2の内部には、第2部材90が格納され、第1部材80がフェースプレート20-2の上面に配置される。そして、第1部材80は中央が湾曲している部材であることから、弾性力が働き、第1部材80と第2部材90とでフェースプレート20-2を挟み込むようにすることができる。
【0094】
フェースプレート20-2に線状部材ユニット30-2を取り付けた後は、第1実施形態と同様に、フェースプレート20-2にシェル10(図11参照)を取り付け、シェル10からはみ出しているフェースプレート20-2の余分な部分をカットする。これにより、フェースプレート20-2をシェル10の外形に沿った形状とし、図11に示す補聴器100-2を完成させることができる。
【0095】
土台50-2を外すときは、工具(ピンセットやマイナスの精密ドライバなどの先端が細いもの)を、フェースプレート20-2と土台50-2との間の面取り部84に差し込んで外す。
【0096】
このように、第2実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、以下のような効果がある。
(1)第2実施形態によれば、線状部材40は、フェースプレート20-2の溝部27に配置されているため、線状部材40をフェースプレートの貫通孔に通す場合と比較して、線状部材40をフェースプレート20-2に簡単に取り付けることができる。
【0097】
(2)第2実施形態によれば、土台突出部85とフェースプレート受け部26とによって簡単かつ強固に土台50-2を固定することができる。
(3)第2実施形態によれば、面取り部84に工具を挿入して、簡単に土台50-2を取り外すことができる。
【0098】
(4)第2実施形態によれば、土台50-2の一部(第2部材90)を取り付け部21-2の内部に格納して、土台50-2の取り付けを安定させつつ、土台50-2の残りの部分(第2部材90)を取り付け部21-2の外部に配置して、外側からもしっかりと土台50-2を固定することができる。
(5)第2実施形態によれば、第1部材80及び第2部材90といった少ない部品を備える土台50-2で線状部材40を固定することができる。
【0099】
本発明は、上述した各実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することができる。
(1)線状部材は、一本テグス(一本の部材)であってもよく、リングテグス(リング状の部材)であってもよい。
【0100】
(2)第1実施形態の土台突出部51は、土台50の上部と下部に2つ形成する例で説明したが、いずれか一方だけに形成してもよい。
【0101】
(3)第1実施形態の土台突出部51に代えて窪み(凹部)を形成し、取り付け部受け部23に代えて突出部(凸部)を形成してもよい。
【0102】
(4)第2実施形態の土台突出部51は、土台50-2の上部にだけ形成する例で説明したが、土台50-2の下部や土台50-2の左右にも形成し、これらの突出部に対応する受け部をフェースプレート20-2側に形成するようにしてよい。
【0103】
(5)各実施形態の補聴器や線状部材ユニットは、それぞれ単独で製造・販売してもよく、両方を組み合わせて製造・販売してもよい。
【符号の説明】
【0104】
10 シェル
20、20-2 フェースプレート
21、21-2 取り付け部
22 貫通孔
23 取り付け部受け部
24 取り付け部突出部
25 別部材
26 フェースプレート受け部
27 溝部
30、30-2 線状部材ユニット
40 線状部材
50、50-2 土台
51、85 土台突出部
52 上壁
54 開口
55 挿通孔
56、94 収納空間
57 切り欠き部
60 把持部
70 円盤状の部材
71 脚部
80 第1部材
81 第1挿通孔
82 第1上壁
83 第1側壁
84 面取り部
90 第2部材
91 第2挿通孔
92 第2上壁
93 第2側壁
100、100-2 補聴器
200 工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14