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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046152
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】EGRパイプ
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/35 20160101AFI20240327BHJP
   F02M 26/50 20160101ALI20240327BHJP
【FI】
F02M26/35 A
F02M26/50 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151370
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
(72)【発明者】
【氏名】曹 海翔
(72)【発明者】
【氏名】中島 一真
(72)【発明者】
【氏名】松田 啓佑
【テーマコード(参考)】
3G062
【Fターム(参考)】
3G062AA03
3G062GA10
(57)【要約】
【課題】全周の一部に長手方向に沿って温水通路を設け温水で加熱するように構成したEGRパイプにおいて、その全周で昇温効果を高め、内壁全周にわたって凝縮水の発生を抑制すること。
【解決手段】樹脂製のEGRパイプ18は、EGRガスを流すEGR通路を構成する。EGRパイプ18は、径方向に二分割された第1分割パイプ材21及び第2分割パイプ材22を接合部21b,22bにて接合することにより形成される。第1分割パイプ材21には、EGRパイプ18を加熱するために温水が流れる温水通路23が設けられ、第2分割パイプ材22の厚みT1は、第1分割パイプ材21の厚みT2,T3より薄く形成される。第1分割パイプ材21は、外側パイプ部21aaと内側パイプ部21abとを含み、温水通路23は、外側パイプ部21aaと内側パイプ部21abとの間に形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排気通路へ排出される排気の一部をEGRガスとして前記エンジンの吸気通路へ流すEGR通路に使用される樹脂製のEGRパイプにおいて、
前記EGRパイプは、径方向に二分割された第1分割パイプ材及び第2分割パイプ材を接合部にて接合することにより形成され、
前記第1分割パイプ材には、前記EGRパイプを加熱するために温水が流れる温水通路が設けられ、
前記第2分割パイプ材の厚みは、前記第1分割パイプ材の厚みより薄く形成される
ことを特徴とするEGRパイプ。
【請求項2】
請求項1に記載のEGRパイプにおいて、
前記第1分割パイプ材は、外側パイプ部と内側パイプ部とを含み、前記温水通路は、前記外側パイプ部と前記内側パイプ部との間に形成される
ことを特徴とするEGRパイプ。
【請求項3】
請求項2に記載のEGRパイプにおいて、
前記第1分割パイプ材は、その長手方向と直交する周方向の断面が略U形をなす第1パイプ部と、前記第1パイプ部の前記周方向の両端に形成された第1接合部とを含み、
前記第2分割パイプ材は、その長手方向と直交する周方向の断面が略U形をなす第2パイプ部と、前記第2パイプ部の前記周方向の両端に形成された第2接合部とを含み、
互いに接合された前記第1接合部及び前記第2接合部は、前記EGRパイプの中央よりも前記第2分割パイプ材の側にオフセットして配置される
ことを特徴とするEGRパイプ。
【請求項4】
請求項1に記載のEGRパイプにおいて、
前記温水通路は、前記第1分割パイプ材の長手方向に沿って設けられる金属パイプにより構成される
ことを特徴とするEGRパイプ。
【請求項5】
請求項4に記載のEGRパイプにおいて、
前記第1分割パイプ材は、その長手方向と直交する周方向の断面が略U形をなす第1パイプ部と、前記第1パイプ部の前記周方向の両端に形成された第1接合部とを含み、
前記第2分割パイプ材は、その長手方向と直交する周方向の断面が略U形をなす第2パイプ部と、前記第2パイプ部の前記周方向の両端に形成された第2接合部とを含み、
互いに接合された前記第1接合部及び前記第2接合部は、前記EGRパイプの中央よりも前記第1分割パイプ材の側にオフセットして配置される
ことを特徴とするEGRパイプ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のEGRパイプにおいて、
前記接合部は、前記第1分割パイプ材の第1接合部と前記第2分割パイプ材の第2接合部とにより構成され、
前記第2接合部とその近傍の厚みは前記第2分割パイプ材の他の部位の厚みより大きい
ことを特徴とするEGRパイプ。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載のEGRパイプにおいて、
前記第2分割パイプ材の厚みは、前記第2分割パイプ材の上流側から下流側に向けて段階的に又は徐々に大きくなるように形成される
ことを特徴とするEGRパイプ。
【請求項8】
請求項2又は3に記載のEGRパイプにおいて、
前記内側パイプ部には、その長手方向に沿って、前記外側パイプ部へ向けて少なくとも一つの第1凸条が形成される
ことを特徴とするEGRパイプ。
【請求項9】
請求項8に記載のEGRパイプにおいて、
前記外側パイプ部には、その長手方向に沿って、かつ、前記第1凸条に隣接して、前記内側パイプ部へ向けて少なくとも一つの第2凸条が形成される
ことを特徴とするEGRパイプ。
【請求項10】
請求項9に記載のEGRパイプにおいて、
前記第1凸条は、前記第2凸条よりも凸方向の高さが大きい
ことを特徴とするEGRパイプ。
【請求項11】
請求項1乃至5のいずれかに記載のEGRパイプにおいて、
前記第2分割パイプ材の内壁及び外壁の少なくとも一方には、リブが形成される
ことを特徴とするEGRパイプ。
【請求項12】
請求項1乃至5のいずれかに記載のEGRパイプにおいて、
前記第2分割パイプ材には、部分的に厚肉部が形成される
ことを特徴とするEGRパイプ。
【請求項13】
請求項5に記載のEGRパイプにおいて、
前記接合部のオフセット量は、前記EGRパイプの上流側から下流側に向けて段階的に又は徐々に減少するように設定される
ことを特徴とするEGRパイプ。
【請求項14】
請求項2又は3に記載のEGRパイプにおいて、
前記第1分割パイプ材は、前記温水通路を挟んで前記外側パイプ部と前記内側パイプ部をDSI成形することにより形成される
ことを特徴とするEGRパイプ。
【請求項15】
請求項2に記載のEGRパイプにおいて、
前記第1分割パイプ材は、その長手方向と直交する周方向の断面が略U形をなす第1パイプ部と、前記第1パイプ部の前記周方向の両端に前記長手方向に沿ってフランジ状に形成された第1接合部とを含み、それら両第1接合部より内側に、断面が略U形をなす前記温水通路が配置され、
前記第2分割パイプ材は、その長手方向と直交する周方向の断面が略U形をなす第2パイプ部と、前記第2パイプ部の前記周方向の両端に前記長手方向に沿ってフランジ状形に成された第2接合部とを含み、
前記第1接合部と前記第2接合部は、固定治具と加振治具との協働による振動溶着により接合され、前記第1接合部が前記固定治具の側に配置され、前記第2接合部が前記加振治具の側に配置され、
前記第1接合部は、前記第2接合部に接合される第1接合面と、前記第1接合面の反対側に前記固定治具が接触する第1接触面とを含み、
前記第2接合部は、前記第1接合部に接合される第2接合面と、前記第2接合面の反対側に前記加振治具が接触する第2接触面とを含む
ことを特徴とするEGRパイプ。
【請求項16】
請求項15に記載のEGRパイプにおいて、
前記温水通路の前記略U形をなす断面の両端の位置が、前記固定治具との第1接触面よりも前記第2分割パイプ材に近付けて配置される
ことを特徴とするEGRパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、エンジンのEGR装置に使用され、EGRガスを流すためのEGRパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載される「EGRパイプ」が知られている。この技術は、エンジンから排気通路へ排出される排気の一部をEGRガスとしてエンジンへ還流させるために吸気通路へ流すEGRパイプに関する。このEGRパイプは、高温のEGRガスによる軸方向の伸びと圧力変動の両方に対応して切損のない、かつ可撓性を併せ持つことを目的として、半径方向に変位して、軸方向の変位を吸収する可撓性機構を介装したことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-29197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のEGRパイプにおいては、その内壁でEGRガスから凝縮水が発生するおそれがあり、それを抑制するためにEGRパイプを温水で加熱することが考えられる。この場合、EGRパイプの車両に対する搭載性や製造上の課題から、EGRパイプの全周部に温水通路を設けることは難しく、半周以下の範囲で長手方向に沿って温水通路を一体に成形したり、半周の一部に温水通路のために金属パイプをインサート成形したりすることしかできない場合がある。しかし、この場合は、EGRパイプの温水通路が設けられていない部分に加熱不十分な箇所ができてしまい、凝縮水の発生を十分に抑制できなくなるおそれがあった。
【0005】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、全周の一部に長手方向に沿って温水通路を設けて温水で加熱するように構成したEGRパイプにおいて、その全周にわたって昇温効果を高め、内壁での凝縮水の発生抑制効果を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の技術は、エンジンから排気通路へ排出される排気の一部をEGRガスとしてエンジンの吸気通路へ流すEGR通路に使用される樹脂製のEGRパイプにおいて、EGRパイプは、径方向に二分割された第1分割パイプ材及び第2分割パイプ材を接合部にて接合することにより形成され、第1分割パイプ材には、EGRパイプを加熱するために温水が流れる温水通路が設けられ、第2分割パイプ材の厚みは、第1分割パイプ材の厚みより薄く形成されることを趣旨とする。
【0007】
上記技術の構成によれば、樹脂製のEGRパイプは、径方向に二分割されて接合部で接合された第1分割パイプ材と第2分割パイプ材により形成される。ここで、第1分割パイプ材は、EGRパイプを加熱するために温水通路に温水を流すことでその内壁が温水からの伝熱により昇温する。一方、第2分割パイプ材は、その厚みが第1分割パイプ材の厚みより薄く形成されるので、その内壁がEGRガスの熱により昇温し易くなる。従って、樹脂製のEGRパイプの内壁全体が昇温し易くなる。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、第1分割パイプ材は、外側パイプ部と内側パイプ部とを含み、温水通路は、外側パイプ部と内側パイプ部との間に形成されることを趣旨とする。
【0009】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、温水通路を含む第1分割パイプ材が、別部材を設けることなく外側パイプ部と内側パイプ部により一体形成される。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の技術は、請求項2に記載の技術において、第1分割パイプ材は、その長手方向と直交する周方向の断面が略U形をなす第1パイプ部と、第1パイプ部の周方向の両端に形成された第1接合部とを含み、第2分割パイプ材は、その長手方向と直交する周方向の断面が略U形をなす第2パイプ部と、第2パイプ部の周方向の両端に形成された第2接合部とを含み、互いに接合された第1接合部及び第2接合部は、EGRパイプの中央よりも第2分割パイプ材の側にオフセットして配置されることを趣旨とする。
【0011】
上記技術の構成によれば、請求項2に記載の技術の作用に加え、互いに接合された第1接合部及び第2接合部が第2分割パイプ材の側にオフセットして配置されることで、第2分割パイプ材の第2パイプ部がその周方向に短くなる。従って、周方向に短くなった分だけ第2パイプ部の薄肉化が可能となり、第2分割パイプ材がEGRガスの熱により更に昇温し易くなる。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、温水通路は、第1分割パイプ材の長手方向に沿って設けられる金属パイプにより構成されることを趣旨とする。
【0013】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、第1分割パイプ材の温水通路が、第1分割パイプ材に設けられる金属パイプにより構成されるので、第1分割パイプ材の成形時に金属パイプをインサート成形により一体に成形可能である。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の技術は、請求項4に記載の技術において、第1分割パイプ材は、その長手方向と直交する周方向の断面が略U形をなす第1パイプ部と、第1パイプ部の周方向の両端に形成された第1接合部とを含み、第2分割パイプ材は、その長手方向と直交する周方向の断面が略U形をなす第2パイプ部と、第2パイプ部の周方向の両端に形成された第2接合部とを含み、互いに接合された第1接合部及び第2接合部は、EGRパイプの中央よりも第1分割パイプ材の側にオフセットして配置されることを趣旨とする。
【0015】
上記技術の構成によれば、請求項4に記載の技術の作用に加え、互いに接合された第1接合部及び第2接合部が第1分割パイプ材の側にオフセットして配置されることで、第1分割パイプ材の第1パイプ部がその周方向に短くなる。従って、周方向に短くなった分だけ第1分割パイプ材が、金属パイプの温水通路を流れる温水の熱により更に昇温し易くなる。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項6に記載の技術は、請求項1乃至5のいずれかに記載の技術において、接合部は、第1分割パイプ材の第1接合部と第2分割パイプ材の第2接合部とにより構成され、第2接合部とその近傍の厚みは第2分割パイプ材の他の部位の厚みより大きいことを趣旨とする。
【0017】
上記技術の構成によれば、請求項1乃至5のいずれかに記載の技術の作用に加え、第2接合部は第1接合部と接合することで、第1分割パイプ材が温水通路の温水から受ける熱が伝わり易くなる。また、第2接合部とその近傍の厚みは、第2分割パイプ材の他の部位の厚みより大きいので、この部分の伝熱通路面積が拡大され第2パイプ部へ温水の熱が伝わり易くなる。
【0018】
上記目的を達成するために、請求項7に記載の技術は、請求項1乃至5のいずれかに記載の技術において、第2分割パイプ材の厚みは、第2分割パイプ材の上流側から下流側に向けて段階的に又は徐々に大きくなるように形成されることを趣旨とする。
【0019】
上記技術の構成によれば、請求項1乃至5のいずれかに記載の技術の作用に加え、EGRガスの温度はEGRパイプの下流側ほど低くなり、EGRパイプの内壁のEGRガスの熱による昇温効果は下流側ほど低下する。ここで、第2分割パイプ材の厚みは、第2分割パイプ材の上流側から下流側に向けて段階的に又は徐々に大きくなるので、第2分割パイプ材は下流側ほど伝熱通路面積が拡大されEGRガスからの伝熱量が増える。
【0020】
上記目的を達成するために、請求項8に記載の技術は、請求項2又は3に記載の技術において、内側パイプ部には、その長手方向に沿って、外側パイプ部へ向けて少なくとも一つの第1凸条が形成されることを趣旨とする。
【0021】
上記技術の構成によれば、請求項2又は3に記載の技術の作用に加え、内側パイプ部に外側パイプ部へ向けて第1凸条が形成されるので、第1凸条の分だけ内側パイプ部の温水からの受熱面積が増す。また、温水通路がその長手方向に沿って第1凸条により二つの温水通路部に分離される。
【0022】
上記目的を達成するために、請求項9に記載の技術は、請求項8に記載の技術において、外側パイプ部には、その長手方向に沿って、かつ、第1凸条に隣接して、内側パイプ部へ向けて少なくとも一つの第2凸条が形成されることを趣旨とする。
【0023】
上記技術の構成によれば、請求項8に記載の技術の作用に加え、外側パイプ部には、第1凸条に隣接して、内側パイプ部へ向けて第2凸条が形成されるので、第1凸条と第2凸条との間が迷路構成となり、分離された二つの温水通路部の間で温水が漏れ難くなる。
【0024】
上記目的を達成するために、請求項10に記載の技術は、請求項9に記載の技術において、第1凸条は、第2凸条よりも凸方向の高さが大きいことを趣旨とする。
【0025】
上記技術の構成によれば、請求項9に記載の技術の作用に加え、第1凸条が第2凸条よりも凸方向の高さが大きいので、第1凸条の方が第2凸条よりも温水からの受熱面積が大きくなる。
【0026】
上記目的を達成するために、請求項11に記載の技術は、請求項1乃至5のいずれかに記載の技術において、第2分割パイプ材の内壁及び外壁の少なくとも一方には、リブが形成されることを趣旨とする。
【0027】
上記技術の構成によれば、請求項1乃至5のいずれかに記載の技術の作用に加え、薄く形成される第2分割パイプ材の内壁及び外壁の少なくとも一方にリブが形成されるので、第2分割パイプ材がリブにより補強される。
【0028】
上記目的を達成するために、請求項12に記載の技術は、請求項1乃至5のいずれかに記載の技術において、第2分割パイプ材には、部分的に厚肉部が形成されることを趣旨とする。
【0029】
上記技術の構成によれば、請求項1乃至5のいずれかに記載の技術の作用に加え、第2分割パイプ材に、部分的に厚肉部が形成されるので、薄く形成された第2分割パイプ材が厚肉部により補強される。
【0030】
上記目的を達成するために、請求項13に記載の技術は、請求項5に記載の技術において、接合部のオフセット量は、EGRパイプの上流側から下流側に向けて段階的に又は徐々に減少するように設定されることを趣旨とする。
【0031】
上記技術の構成によれば、請求項5に記載の技術の作用に加え、EGRパイプでは、下流側ほどEGRガス温度が低下するが、温水通路の温水温度は上流側又は下流側によらずほぼ変わらない。ここで、接合部がEGRパイプの中央よりも第1分割パイプ材の側にオフセットされるオフセット量は、EGRパイプの上流側から下流側に向けて減少する。これにより、温水通路が設けられた第1分割パイプ材の第1パイプ部が下流側ほど周方向に長くなり、薄肉に形成された第2分割パイプ材の第2パイプ部が下流側ほど周方向に短くなる。従って、第2パイプ部は、下流側ほどEGRガス温度の低下に合わせて熱マスが減少し、EGRガスにより昇温し易くなり、第1パイプ部は、下流側ほど熱マスが増加し、温水の熱が伝わり易くなる。
【0032】
上記目的を達成するために、請求項14に記載の技術は、請求項2又は3に記載の技術において、第1分割パイプ材は、温水通路を挟んで外側パイプ部と内側パイプ部をDSI成形することにより形成されることを趣旨とする。
【0033】
上記技術の構成によれば、請求項2又は3に記載の技術の作用に加え、第1分割パイプ材は、温水通路を挟んで外側パイプ部と内側パイプ部をDSI成形により形成されるので、温水通路を有する第1分割パイプ材の製品信頼性が高まる。
【0034】
上記目的を達成するために、請求項15に記載の技術は、請求項2に記載の技術において、第1分割パイプ材は、その長手方向と直交する周方向の断面が略U形をなす第1パイプ部と、第1パイプ部の周方向の両端に長手方向に沿ってフランジ状に形成された第1接合部とを含み、それら両第1接合部より内側に、断面が略U形をなす温水通路が配置され、第2分割パイプ材は、その長手方向と直交する周方向の断面が略U形をなす第2パイプ部と、第2パイプ部の周方向の両端に長手方向に沿ってフランジ状形に成された第2接合部とを含み、第1接合部と第2接合部は、固定治具と加振治具との協働による振動溶着により接合され、第1接合部が固定治具の側に配置され、第2接合部が加振治具の側に配置され、第1接合部は、第2接合部に接合される第1接合面と、第1接合面の反対側に固定治具が接触する第1接触面とを含み、第2接合部は、第1接合部に接合される第2接合面と、第2接合面の反対側に加振治具が接触する第2接触面とを含むことを趣旨とする。
【0035】
上記技術の構成によれば、請求項2に記載の技術の作用に加え、振動溶着による第1接合部と第2接合部との溶着性を安定させるために、加振治具が接触する第2接合面の幅は、第2接触面の幅内に納める必要があり、これによって第2パイプ部の周方向の両端の位置は、加振治具より第2パイプ部の中央寄りに配置される。これに対し、振動溶着による溶着性を安定させることについては、固定治具が接触する第1接合面の幅は、第1接触面の幅内に厳密に納める必要がなく、第1接合面が第1接触面の外へずれていてもよく、このため第1パイプ部の周方向の両端の位置を、第1接合部の側へ寄せて配置することが可能となる。従って、第1パイプ部と第2パイプ部の周方向両端の内壁の位置を一致させた場合、第1パイプ部の周方向の両端の位置を、第1接合部の側へ寄せた分だけ第1パイプ部の厚みを、第2パイプ部の厚みより大きくすることが可能となり、その分だけ温水通路の幅が拡大可能となる。
【0036】
上記目的を達成するために、請求項16に記載の技術は、請求項15に記載の技術において、温水通路の略U形をなす断面の両端の位置が、固定治具との第1接触面よりも第2分割パイプ材に近付けて配置されることを趣旨とする。
【0037】
上記技術の構成によれば、請求項15に記載の技術の作用に加え、第1分割パイプ材の略U形断面の両端に位置する第1接合部は、第2分割パイプ材の第2接合部に接合される第1接合面と、その第1接合面の反対側に固定治具と接触する第1接触面とを含み、温水通路の略U形断面の両端の位置が、固定治具との第1接触面よりも第2分割パイプ材に近付けて配置される。従って、温水通路の断面の両端の位置が、固定治具との第1接触面よりも第2分割パイプ材に近付けられるので、温水通路の温水の熱が第2分割パイプ材に伝わり易くなる。
【発明の効果】
【0038】
請求項1に記載の技術によれば、全周の一部に長手方向に沿って温水通路を設けて温水で加熱するように構成した樹脂製のEGRパイプにおいて、その全周にわたって昇温効果を高めることができ、内壁での凝縮水の発生抑制効果を向上させることができる。
【0039】
請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、温水通路を含む樹脂製のEGRパイプを、第1分割パイプ材と第2分割パイプ材のみにより形成することができる。
【0040】
請求項3に記載の技術によれば、請求項2に記載の技術の効果に加え、樹脂製のEGRパイプにつき、第2分割パイプ材の内壁における昇温効果を更に高めることができ、この部分での凝縮水の発生抑制効果を更に高めることができる。
【0041】
請求項4に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、樹脂製のEGRパイプに対し温水通路を少ない工数で設けることができる。
【0042】
請求項5に記載の技術によれば、請求項4に記載の技術の効果に加え、樹脂製のEGRパイプにつき、第1分割パイプ材21の内壁における昇温効果を更に高めることができ、この部分での凝縮水の発生抑制効果を更に高めることができる。
【0043】
請求項6に記載の技術によれば、請求項1乃至5のいずれかに記載の技術の効果に加え、樹脂製のEGRパイプにつき、特に第2分割パイプ材の内壁における昇温効果を高めることができ、この部分での凝縮水の発生抑制効果を更に高めることができる。
【0044】
請求項7に記載の技術によれば、請求項1乃至5のいずれかに記載の技術の効果に加え、EGRガスの温度が低くなるEGRパイプの下流側でも第2分割パイプ材の昇温効果の低下を抑えることができ、その内壁での凝縮水の発生抑制効果の低下を抑えることができる。
【0045】
請求項8に記載の技術によれば、請求項2又は3に記載の技術の効果に加え、温水からの受熱面積が増す分だけ内側パイプ部の昇温効果を更に高めることができる。また、分離された二つの温水通路部を下流側で繋ぐことで、温水通路部をUターン流路に構成することができ、これによって温水通路から温水を戻すための配管の付設を省略することができる。
【0046】
請求項9に記載の技術によれば、請求項8に記載の技術の効果に加え、Uターン流路に構成された温水通路での温水の円滑な流れを保つことができる。
【0047】
請求項10に記載の技術によれば、請求項9に記載の技術の効果に加え、内側パイプ部で温水の熱による昇温効果を高め、外側パイプ部からの温水の放熱を抑えることができる。
【0048】
請求項11に記載の技術によれば、請求項1乃至5のいずれかに記載の技術の効果に加え、第2分割パイプ材の強度を向上させることができ、その内壁の昇温性を向上させることができる。
【0049】
請求項12に記載の技術によれば、請求項1乃至5のいずれかに記載の技術の効果に加え、薄肉な第2分割パイプ材の強度不足を抑えることができる。
【0050】
請求項13に記載の技術によれば、請求項5に記載の技術の効果に加え、樹脂製のEGRパイプの全体として温水とEGRガスによる昇温特性を改善することができる。
【0051】
請求項14に記載の技術によれば、請求項2又は3に記載の技術の効果に加え、樹脂製のEGRパイプの製品信頼性を高めることができる。
【0052】
請求項15に記載の技術によれば、請求項2に記載の技術の効果に加え、第1分割パイプ材の1接合部を固定治具の側に配置し、第2分割パイプ材の第2接合部を加振治具の側に配置することで、その逆の配置の場合と比較して、EGRパイプの外径寸法を大きくすることなく温水通路の断面積を大きくすることができ、内壁の昇温性を向上させることができる。
【0053】
請求項16に記載の技術によれば、請求項15に記載の技術の効果に加え、第1分割パイプ材に設けられた温水通路の温水の熱を受けて第2分割パイプ材の昇温性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】第1実施形態に係り、エンジンシステムを示す概略構成図。
図2】第1実施形態に係り、EGRパイプの一部を示す側面図。
図3】第1実施形態に係り、EGRパイプを示す図2のA-A線断面図。
図4】第1実施形態に係り、EGRパイプを示す図2のB-B線断面図。
図5】第2実施形態に係り、EGRパイプを示す図3に準ずる断面図。
図6】第3実施形態に係り、EGRパイプを示す図3に準ずる断面図。
図7】第4実施形態に係り、EGRパイプの第1分割パイプ材の一部を拡大して示す断面図。
図8】第5実施形態に係り、EGRパイプの第1分割パイプ材の一部を拡大して示す断面図。
図9】第6実施形態に係り、EGRパイプの一部を示す側面図。
図10】第6実施形態に係り、EGRパイプを示す図9のC-C線断面図。
図11】第7実施形態に係り、EGRパイプの製造方法を説明するためにEGRパイプを分解して示す断面図。
図12】第8実施形態に係り、第1分割パイプ材と第2分割パイプ材との接合方法を説明するために両分割パイプ材を分解して示す断面図。
図13】第8実施形態に係り、第1分割パイプ材と第2分割パイプ材との接合方法を説明するために両分割パイプ材を接合して示す断面図。
図14】第8実施形態において、図12との対比例を示す断面図。
図15】第8実施形態において、図13との対比例を示す断面図。
図16】第9実施形態に係り、EGRパイプの一部を示す側面図。
図17】第9実施形態に係り、EGRパイプを示す図16のD-D線断面図。
図18】第10実施形態に係り、EGRパイプの一部を示す側面図。
図19】第10実施形態に係り、EGRパイプを示す図18のE-E線断面図。
図20】第10実施形態に係り、EGRパイプを示す図18のF-F線断面図。
図21】第11実施形態に係り、EGRパイプを示す図3に準ずる断面図。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、EGRパイプを車両用エンジンのEGR装置に具体化したいくつかの実施形態について説明する。
【0056】
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態について図1図4を参照して詳細に説明する。
【0057】
[エンジンシステムについて]
図1に、この実施形態のガソリンエンジンシステム(以下、単に「エンジンシステム」と言う。)を概略構成図により示す。自動車に搭載されたエンジンシステムは、複数の気筒を有するエンジン1を備える。このエンジン1は、4気筒、4サイクルのレシプロエンジンであり、ピストン及びクランクシャフト等の周知の構成を含む。エンジン1には、各気筒へ吸気を導入するための吸気通路2と、エンジン1の各気筒から排気を導出するための排気通路3が設けられる。
【0058】
吸気通路2には、エアクリーナ4、スロットル装置5及び吸気マニホールド6が設けられる。吸気マニホールド6は、吸気通路2の一部を構成する。排気通路3には、その上流側から順に排気マニホールド7及び触媒8が設けられる。触媒8には、排気を浄化するために、例えば、三元触媒が内蔵される。加えて、排気通路3と吸気通路2との間には、高圧ループタイプの排気還流装置(EGR装置)11が設けられる。
【0059】
スロットル装置5は、吸気マニホールド6より上流の吸気通路2に配置され、運転者のアクセル操作に応じてバタフライ式のスロットル弁5aを開度可変に開閉駆動させることで、吸気通路2を流れる吸気量を調節するようになっている。吸気マニホールド6は、主として樹脂材より構成され、エンジン1の直上流にて吸気通路2に配置される。吸気マニホールド6は、吸気が導入される一つのサージタンク6aと、サージタンク6aに導入される吸気をエンジン1の各気筒へ分配するためにサージタンク6aから分岐した複数(4つ)の分岐管6bとを含む。
【0060】
エンジン1には、各気筒に対応して燃料を噴射するための燃料噴射装置(図示略)が設けられる。燃料噴射装置は、燃料供給装置(図示略)から供給される燃料をエンジン1の各気筒へ噴射するように構成される。各気筒では、燃料噴射装置から噴射される燃料と吸気マニホールド6から導入される吸気とにより可燃混合気が形成される。
【0061】
また、エンジン1には、各気筒に対応して点火装置(図示略)が設けられる。点火装置は、各気筒で可燃混合気に点火するように構成される。各気筒内の可燃混合気は、点火装置の点火動作により爆発・燃焼し、燃焼後の排気は、各気筒から排気マニホールド7及び触媒8を経て外部へ排出される。このとき、各気筒でピストン(図示略)が上下運動し、クランクシャフト(図示略)が回転することにより、エンジン1に動力が得られる。
【0062】
[EGR装置について]
この実施形態のEGR装置11は、エンジン1の各気筒から排気通路3へ排出される排気の一部を排気還流ガス(EGRガス)として吸気通路2へ流してエンジン1の各気筒へ還流させるように構成される。すなわち、EGR装置11は、排気通路3から吸気通路2へEGRガスを流す排気還流通路(EGR通路)12と、EGR通路12に設けられ、EGR通路12に流入したEGRガスを冷却するための排気還流クーラ(EGRクーラ)13と、EGR通路12を流れるEGRガスの流量を制御(調節)するための排気還流弁(EGR弁)14と、EGR通路12を流れるEGRガスをエンジン1の各気筒へ分配するために、吸気マニホールド6の各分岐管6bへEGRガスを分配するための排気還流ガス分配器(EGRガス分配器)15とを備える。
【0063】
EGR通路12は、入口12aと出口12bを含む。その入口12aは触媒8より下流の排気通路3に接続され、その出口12bはEGRガス分配器15に接続される。EGR通路12は、EGRクーラ13及びEGR弁14の他に、EGRクーラ13より上流のEGRパイプ17と、EGR弁14より下流の樹脂製のEGRパイプ18により構成される。EGRガス分配器15は、EGR通路12の終段を構成する。EGR通路12において、EGR弁14は、EGRクーラ13より下流に設けられ、EGRガス分配器15は、EGR弁14より下流に設けられる。
【0064】
EGRガス分配器15は、主として樹脂材により構成され、全体として横長な形状を有し、その長手方向において、吸気マニホールド6の複数の分岐管6bを横切るように配置される。この実施形態で、EGRガス分配器15は、導入されたEGRガスが集まるガスチャンバ15aと、ガスチャンバ15aから各分岐管6bへEGRガスを分配する複数(4つ)のガス分配通路15bとを含む。
【0065】
このEGR装置11では、EGR弁14が開弁することにより、排気通路3を流れる排気の一部がEGRガスとしてEGR通路12を流れ、EGRクーラ13で冷却され、更にEGR弁14で流量が制御され、EGRガス分配器15を介して吸気マニホールド6の各分岐管6bへ分配され、更にエンジン1の各気筒へ分配されて還流される。
【0066】
[EGRパイプの構成について]
ここで、上記した樹脂製のEGRパイプ18の内壁では、EGR弁14から流入するEGRガスにより凝縮水が発生するおそれがあり、それを抑制するためにEGRパイプ18を温水で加熱するように構成される。この実施形態では、EGRパイプ18の車両搭載性や製造容易性の観点から、EGRパイプ18の外周の半分以下の範囲に長手方向に沿って温水通路23が設けられ、温水通路が設けられていない範囲についても十分な加熱ができるように構成される。
【0067】
図2に、この実施形態のEGRパイプ18の一部を側面図により示す。図3に、この実施形態のEGRパイプ18を、図2のA-A線断面図により示す。図4に、この実施形態のEGRパイプ18を、図2のB-B線断面図により示す。図2図4に示すように、この実施形態のEGRパイプ18は、径方向に二分割された下側の第1分割パイプ材21及び上側の第2分割パイプ材22をそれらの接合部21b,22bにて接合することにより形成される。
【0068】
図3図4に示すように、第1分割パイプ材21は、その長手方向X(図2参照)と直交する周方向の断面が略U形をなす第1パイプ部21aと、第1パイプ部21aの周方向の両端にて長手方向Xに沿って形成されたフランジ状の第1接合部21bとを含む。両接合部21b,21bより内側のパイプ部21aには、断面が略U形をなす温水通路23が設けられる。第2分割パイプ材は、同じくその長手方向Xと直交する周方向の断面が略U形をなす第2パイプ部22aと、第2パイプ部22aの周方向の両端にて長手方向Xに沿って形成されたフランジ状の第2接合部22bとを含む。
【0069】
第1分割パイプ材21の温水通路23には、EGRパイプ18を加熱するために温水が流れるようになっている。温水通路23は、第1分割パイプ材21の長手方向Xに沿って設けられる。図3に示すように、第1分割パイプ材21は、外側パイプ部21aaと内側パイプ部21abとを含み、温水通路23は、外側パイプ部21aaと内側パイプ部21abとの間に形成される。そして、温水通路23が設けられていない第2分割パイプ材22のパイプ部22aの厚みT1は、第1分割パイプ材21の外側パイプ部21aaの厚みT2及び内側パイプ部21abの厚みT3より薄く形成される。すなわち、第2分割パイプ材22は、その内壁をEGRガスの熱により昇温し易くするために第1分割パイプ材21よりも薄肉化されている。ここで、外側パイプ部21aaの厚みT2は内側パイプ部21abの厚みT3より大きく設定される。また、互いに接合された第1接合部21bと第2接合部22bは、EGRパイプ18の中央P1を基準にそれよりも第2分割パイプ材22の側にオフセットして配置される。この実施形態では、第1接合部21bと第2接合部22bとが振動溶着BWにより接合される。
【0070】
図2において、EGRパイプ18の左側がEGRガスの流れの上流側を示し、右側がEGRガスの流れの下流側を示す。図3図4に示すように、この実施形態の第2分割パイプ材22の厚みT1は、第2分割パイプ材22の上流側から下流側に向けて段階的に又は徐々に大きくなるように形成される。すなわち、図3に示す上流側の第2分割パイプ材22の第2パイプ部22aの厚みT1は薄く、図4に示すように、下流側の第2分割パイプ材22の第2パイプ部22aの厚みT1は、上流側よりも厚くなっている。
【0071】
[EGRパイプの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRパイプ18の構成によれば、樹脂製のEGRパイプ18は、径方向に二分割されて接合部21b,22bで接合された第1分割パイプ材21と第2分割パイプ材22により形成される。ここで、第1分割パイプ材21は、EGRパイプ18を加熱するために温水通路23に温水を流すことでその内壁が温水からの伝熱により昇温する。一方、第2分割パイプ材22は、その厚みが第1分割パイプ材21の厚みより薄く形成されるので、その内壁がEGRガスの熱により昇温し易くなる。従って、EGRパイプ18の内壁全体が昇温し易くなる。このため、全周の一部に長手方向に沿って温水通路23を設けて温水で加熱するように構成した樹脂製のEGRパイプ18において、その全周にわたって昇温効果を高めることができ、内壁での凝縮水の発生抑制効果を向上させることができる。
【0072】
この実施形態の構成によれば、温水通路23を含む第1分割パイプ材21が、別部材を設けることなく外側パイプ部21aaと内側パイプ部21abにより一体形成される。このため、温水通路23を含むEGRパイプ18を、第1分割パイプ材21と第2分割パイプ材22のみにより形成することができる。
【0073】
この実施形態の構成によれば、互いに接合された第1接合部21b及び第2接合部22bが第2分割パイプ材22の側にオフセットして配置されることで、第2分割パイプ材22の第2パイプ部22aがその周方向に短くなる。従って、周方向に短くなった分だけ第2パイプ部22aの薄肉化が可能となり、第2分割パイプ材22がEGRガスの熱により更に昇温し易くなる。このため、樹脂製のEGRパイプ18につき、第2分割パイプ材22の内壁における昇温効果を更に高めることができ、この部分での凝縮水の発生抑制効果を更に高めることができる。
【0074】
この実施形態の構成によれば、第2接合部22bは第1接合部21bと接合することで、第1分割パイプ材21が温水通路23の温水から受ける熱が伝わり易くなる。また、第2接合部22bとその近傍の厚みは、第2分割パイプ材22の他の部位の厚みより大きいので、この部分の伝熱通路面積が拡大され第2パイプ部22aへ温水の熱が伝わり易くなる。このため、樹脂製のEGRパイプ18につき、第2分割パイプ材22の内壁における昇温効果を更に高めることができ、この部分での凝縮水の発生抑制効果を更に高めることができる。
【0075】
この実施形態の構成によれば、EGRガスの温度はEGRパイプ18の下流側ほど低くなり、EGRパイプ18の内壁のEGRガスの熱による昇温効果は下流側ほど低下する。ここで、第2分割パイプ材22の厚みは、第2分割パイプ材22の上流側から下流側に向けて段階的に又は徐々に大きくなるので、第2分割パイプ材22は下流側ほど伝熱通路面積が拡大され温水からの伝熱量が増える。このため、EGRガスの温度が低くなるEGRパイプ18の下流側でも第2分割パイプ材22の昇温効果の低下を抑えることができ、その内壁での凝縮水の発生抑制効果の低下を抑えることができる。
【0076】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について図5を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
【0077】
[EGRパイプの構成について]
この実施形態では、第2分割パイプ材22の構成の点で第1実施形態と異なる。図5に、EGRパイプ18を、図3に準ずる断面図により示す。図5に示すように、この実施形態のEGRパイプ18において、第2分割パイプ材22には、部分的に厚肉部22aaが形成される。すなわち、この実施形態では、第2パイプ部22aの中央が内外へ向けて膨出し、かつ長手方向Xに沿って伸びるように厚肉部22aaが形成される。
【0078】
[EGRパイプの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRパイプ18の構成によれば、第1実施形態の作用及び効果に対し、次のような作用及び効果が得られる。すなわち、第2分割パイプ材22に、部分的に厚肉部22aaが形成されるので、薄く形成された第2分割パイプ材22が厚肉部22aaにより補強される。このため、薄肉な第2分割パイプ材22の強度不足を抑えることができる。
【0079】
この実施形態の第2パイプ部22aの厚肉部22aaは、第2パイプ部22aの補強用のリブとしても機能する。
【0080】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について図6を参照して詳細に説明する。
【0081】
[EGRパイプの構成について]
この実施形態では、第1分割パイプ材21の構成の点で第1実施形態と異なる。図6に、EGRパイプ18を、図3に準ずる断面図により示す。図6に示すように、この実施形態のEGRパイプ18において、第1分割パイプ材21の内側パイプ部21abには、その長手方向Xに沿って、外側パイプ部21aaへ向けて一つの第1凸条21abaが形成される。すなわち、この実施形態では、温水通路23の中にて内側パイプ部21abの中央が外側へ向けて突出し、かつ長手方向Xに沿って伸びるように形成される。
【0082】
この実施形態では、このように温水通路23の中央に第1凸条21abaを形成することで、温水通路23を長手方向Xに沿って二分し、EGRパイプ18の下流側にて二分された温水通路23を互いに連通させている。EGRパイプ18において、温水通路23をUターン構成としている。
【0083】
[EGRパイプの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRパイプ18の構成によれば、第1実施形態の作用及び効果に対し、次のような作用及び効果が得られる。すなわち、内側パイプ部21abに外側パイプ部21aaへ向けて第1凸条21abaが形成されるので、第1凸条21abaの分だけ内側パイプ部21abの温水からの受熱面積が増す。また、温水通路23がその長手方向Xに沿って第1凸条21abaにより二つの温水通路部に分離される。このため、温水からの受熱面積が増す分だけ内側パイプ部21abの昇温効果を更に高めることができる。また、分離された二つの温水通路部を下流側で繋ぐことで、温水通路部をUターン流路に構成することができ、これによって温水通路23から温水を戻すための配管の付設を省略することができる。
【0084】
この実施形態では、内側パイプ部21abに第1凸条21abaを1本形成したが、変形例として、内側パイプ部に2本以上の第1凸条を平行に形成することもできる。
【0085】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について図7を参照して詳細に説明する。
【0086】
[EGRパイプの構成について]
この実施形態では、第1分割パイプ材21の構成の点で第3実施形態と異なる。図7に、EGRパイプ18の第1分割パイプ材21の一部を拡大して断面図により示す。図7に示すように、この実施形態のEGRパイプ18において、第1分割パイプ材21の内側パイプ部21abの中央には、温水通路23の中にて、その長手方向Xに沿って、外側パイプ部21aaへ向けて一つの第1凸条21abaが形成される。加えて、この実施形態では、外側パイプ部21aaの中央には、温水通路23の中にて、その長手方向に沿って、かつ、第1凸条21abaに隣接して、内側パイプ部21abへ向けて二つの第2凸条21aaaが、第1凸条21abaを挟んで平行に形成される。すなわち、この実施形態では、外側パイプ部21aaの中央が第1凸条21abaを挟んで内側へ向けて突出し、かつ長手方向Xに沿って伸びるように形成される。しかも、この実施形態では、第1凸条22abaは、第2凸条21aaaよりも凸方向の高さが大きく、かつ、幅が大きく形成される。
【0087】
このように、温水通路23の中央にて、第1凸条21abaと第2凸条21aaaが隣接し、かつ、交互に向きを替えて設けられることで、両凸条21aba,21aaaの間には、温水が遮断されない程度の僅かな迷路状の隙間が形成され、温水の流通が可能となっている。
【0088】
[EGRパイプの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRパイプ18の構成によれば、第3実施形態の作用及び効果に対し、次のような作用及び効果が得られる。すなわち、第1分割パイプ材21の外側パイプ部21aaには、第1凸条21abaに隣接して、内側パイプ部21abへ向けて第2凸条21aaaが形成されるので、第1凸条21abaと第2凸条21aaaとの間が迷路構成となり、分離された二つの温水通路部の間で温水が漏れ難くなる。このため、Uターン流路に構成された温水通路23での温水の円滑な流れを保つことができる。
【0089】
この実施形態の構成によれば、第1凸条21abaが第2凸条21aaaよりも凸方向の高さが大きいので、第1凸条21abaの方が第2凸条21aaaよりも温水からの受熱面積が大きくなる。このため、内側パイプ部21abで温水の熱による昇温効果を高め、外側パイプ部21aaからの温水の放熱を抑えることができる。
【0090】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態について図7を参照して詳細に説明する。
【0091】
[EGRパイプの構成について]
この実施形態では、第1分割パイプ材21の構成の点で第4実施形態と異なる。図8に、EGRパイプ18の第1分割パイプ材21の一部を拡大して断面図により示す。図8に示すように、この実施形態のEGRパイプ18では、2本の第1凸条21abaが、1本の第2凸条21aaaを挟んで、温水通路23の中央に隣接して形成される。この実施形態では、第4実施形態と異なり、第1凸条21abaと第2凸条21aaaの凸方向の高さと幅が互いにほぼ同じに設定される。これにより、第1凸条21abaと第2凸条21aaaとの間の隙間の迷路が、第4実施形態のそれよりも深くなっている。
【0092】
[EGRパイプの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRパイプ18の構成によれば、第5実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。加えて、この実施形態では、第1凸条21abaと第2凸条21aaaとの間の隙間の迷路が、第4実施形態のそれよりも深いので、分離された二つの温水通路部の間で温水が更に漏れ難くなる。この意味で、Uターン流路に構成された温水通路23で温水の流れを更に円滑なものにすることができる。
【0093】
<第6実施形態>
次に、第6実施形態について図9図10を参照して詳細に説明する。
【0094】
[EGRパイプの構成について]
この実施形態では、第2分割パイプ材22の構成の点で第1実施形態と異なる。図9に、この実施形態のEGRパイプ18の一部を側面図により示す。図10に、この実施形態のEGRパイプ18を、図9のC-C線断面図により示す。図9図10に示すように、この実施形態のEGRパイプ18では、第2分割パイプ材22の外壁に、複数のリブ22cが形成される。この実施形態では、リブ22cは第2分割パイプ材22の外壁にて周方向に沿って形成され、複数のリブ22cが、EGRパイプ18の長手方向にて等間隔に配置される。
【0095】
[EGRパイプの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRパイプ18の構成によれば、第1実施形態の作用及び効果に対し、次のような作用及び効果が得られる。すなわち、薄く形成される第2分割パイプ材22の外壁にリブ22cが形成されるので、第2分割パイプ材22がリブ22cにより補強される。このため、第2分割パイプ材22の強度を向上させることができ、その内壁の昇温性を向上させることができる。
【0096】
[変形例について]
この実施形態では、第2分割パイプ材22の外壁のみにリブ22cを形成したが、第2分割パイプ材の内壁のみにリブを形成したり、第2分割パイプ材の外壁及び内壁の両方にリブを形成したりすることもできる。
【0097】
<第7実施形態>
次に、第7実施形態について図11を参照して詳細に説明する。
【0098】
[EGRパイプの構成について]
この実施形態では、上記各実施形態のEGRパイプの製造方法の一例についてその概略を説明する。図11に、EGRパイプ18の製造方法を説明するためにEGRパイプ18を分解した断面図により示す。図11に示すように、この実施形態のEGRパイプを構成する第1分割パイプ材21は、温水通路23を挟んで外側パイプ部21aaと内側パイプ部21abを「DSI成形」することにより成形される。
【0099】
DSI成形(ダイスライドインジェクション成形)は、「株式会社日本製鋼所」で開発された中空体・積層構造体を射出成形する技術であり、内部構造の複雑な中空体を正確に早く成形できる射出成形工法である。その原理は、半割り中空体の一次成形品部を金型内でスライドさせ、型開き後それらの接合面に二次樹脂を射出接合させて中空体を得る工法を含む。成形機は、油圧機器によりスライドする金型構造を有し、2種類の原料を組み合わせて成形することが可能である。
【0100】
すなわち、図11に示す外側パイプ部21aaと内側パイプ部21abについては、同一の固定型及び可動型を使用し、先ず、1次射出の工程で、中空体である外側パイプ部21aaと内側パイプ部21abの成形品を同時に成形する。次に、ダイスライドの工程で、型開きし、一次成形品である外側パイプ部21aa又は内側パイプ部21abを金型内でスライドさせる。次に、二次射出の工程で、二次樹脂を射出し、図11に示す外側パイプ部21aaと内側パイプ部21abとを接合B1させ、冷却後に型開きすることで、温水通路23、外側パイプ部21aa、内側パイプ部21ab及び第1接合部21bを含む第1分割パイプ材21を得る。(参考:吉山プラスチック工業株式会社の解説記事)
【0101】
また、この実施形態では、図11に示す第1分割パイプ材21の第1接合部21bと第2分割パイプ材22の第2接合部22bとの接合B2は、「振動溶着」により行う。ここで、振動溶着は、固定治具と加振治具との間に第1接合部21bと第2接合部22bを挟んで加振治具により加振することで行う。振動溶着の具体例については後述する。
【0102】
[EGRパイプの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRパイプ18の構成によれば、前記各実施形態の作用及び効果に対し、次のような作用及び効果が得られる。すなわち、第1分割パイプ材21は、温水通路23を挟んで外側パイプ部21aaと内側パイプ部21abをDSI成形により形成されるので、温水通路23を有する第1分割パイプ材21の製品信頼性が高まる。このため、樹脂製のEGRパイプ18の製品信頼性を高めることができる。
【0103】
<第8実施形態>
次に、第8実施形態について図12図15を参照して詳細に説明する。
【0104】
[EGRパイプの構成について]
この実施形態では、上記各実施形態のEGRパイプの製造方法の一例について説明する。図12に、第1分割パイプ材21と第2分割パイプ材22との接合方法を説明するために両分割パイプ材21,22を分解して断面図により示す。図13に、第1分割パイプ材21と第2分割パイプ材22との接合方法を説明するために両分割パイプ材21,22を接合して断面図により示す。図12図13に示すように、第1分割パイプ材21の第1接合部21bと第2分割パイプ材22の第2接合部22bは、下側の固定治具31と上側の加振治具32との協働による振動溶着により接合される。ここで、第1分割パイプ材21は固定治具31の側(下側)に配置され、第2分割パイプ材22は加振治具32の側(上側)に配置される。
【0105】
図12図13に示すように、第1分割パイプ材21は、その長手方向Xと直交する周方向の断面が略U形をなす第1パイプ部21aと、第1パイプ部21aの周方向の両端に長手方向Xに沿ってフランジ状に形成された第1接合部21bとを含み、それら両第1接合部21bより内側に、断面が略U形をなす温水通路23が配置される。また、第2分割パイプ材22は、その長手方向Xと直交する周方向の断面が略U形をなす第2パイプ部22aと、第2パイプ部22aの周方向の両端に長手方向Xに沿ってフランジ状形に成された第2接合部22bとを含む。そして、第1接合部21bと第2接合部22bは、固定治具31と加振治具32との協働による振動溶着により接合される。ここで、第1接合部21bが固定治具31の側に配置され、第2接合部22bが加振治具32の側に配置される。第1接合部21bは、第2接合部22bに接合される第1接合面21baと、第1接合面21baの反対側に固定治具31が接触する第1接触面21bbとを含む。また、第2接合部22bは、第1接合部21bに接合される第2接合面22baと、第2接合面22baの反対側に加振治具32が接触する第2接触面22bbとを含む。そして、温水通路23の略U形をなす断面の両端23aの位置は、固定治具31との第1接触面21bbよりも第2分割パイプ材22に近付けて配置される。
【0106】
[EGRパイプの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRパイプ18の構成によれば、前記各実施形態の作用及び効果に対し、次のような作用及び効果が得られる。すなわち、振動溶着による第1接合部21bと第2接合部22bとの溶着性を安定させるためには、図12において、加振治具32が接触する第2接合面22baの幅W1は、第2接触面22bbの幅W2内に納める必要があり、これによって第2パイプ部22aの周方向の両端の位置P2は、加振治具32より第2パイプ部22aの中央寄り(図12の右側寄り)に配置される。これに対し、振動溶着による溶着性を安定させることについては、固定治具31が接触する第1接合面21baの幅W3は、第1接触面21bbの幅W4内に厳密に納める必要はなく、第1接合面21baが第1接触面21bbの外へずれていてもよい。このため第1パイプ部21aの周方向の両端の位置P3を、第1接合部21bの側へ寄せて配置することが可能となる。図12では、第1パイプ部21aの位置P3が、第2パイプ部22aの位置P2よりも左側へ変位している。従って、図12において、第1パイプ部21aと第2パイプ部22aの周方向両端の内壁の位置P4を一致させた場合、第1パイプ部21aの周方向の両端の位置P3を、第1接合部21bの側へ寄せた分だけ第1パイプ部21aの厚みT5を、第2パイプ部22aの厚みT6より大きくすることが可能となり、その分だけ温水通路23の幅W5が拡大可能となる。このため、第1分割パイプ材21の第1接合部21bを固定治具31の側に配置し、第2分割パイプ材22の第2接合部22bを加振治具32の側に配置することで、その逆の配置の場合と比較して、EGRパイプ18の外径寸法を大きくすることなく温水通路23の断面積を大きくすることができ、内壁の昇温性を向上させることができる。
【0107】
図14及び図15には、図12及び図13に示す場合との対比例を示す。この対比例では、上記場合の逆の場合であって、第2接合部22bを加振治具32で加振する第2分割パイプ材22の側に温水通路23を配置した場合を示す。この対比例では、図14において、加振治具32が接触する第2接合面22baの幅W1を、第2接触面22bbの幅W2内に納める必要があることから、第2パイプ部22aの周方向の両端の位置P2を、第2接合部22bの側へ寄せて配置することができず、第2パイプ部22aの厚みを大きくすることができないことがわかる。
【0108】
この実施形態の構成によれば、第1分割パイプ材21の略U形断面の両端に位置する第1接合部21bは、第2分割パイプ材22に接合される接合面21baと、その接合面21baの反対側に固定治具31と接触する第1接触面21bbとを含み、温水通路23の略U形断面の両端の位置が、固定治具31との第1接触面21bbよりも第2分割パイプ材22に近付けて配置される。従って、図12図13に示すように、温水通路23の断面の両端23aの位置が、固定治具31との第1接触面21bbよりも第2分割パイプ材22に近付けられるので、温水通路23の温水の熱が第2分割パイプ材22に伝わり易くなる。このため、第1分割パイプ材21に設けられた温水通路23の温水の熱を受けて第2分割パイプ材22の昇温性を向上させることができる。
【0109】
<第9実施形態>
次に、第9実施形態について図16図17を参照して詳細に説明する。
【0110】
[EGRパイプの構成について]
この実施形態では、EGRパイプ18の構成の点で前記各実施形態と異なる。図16に、この実施形態のEGRパイプ18の一部を側面図により示す。図17に、この実施形態のEGRパイプ18を、図16のD-D線断面図により示す。図16図17に示すように、この実施形態のEGRパイプ18も、径方向に二分割された下側の第1分割パイプ材21及び上側の第2分割パイプ材22をそれらの接合部21b,22bにて接合することにより形成される。
【0111】
図16図17に示すように、この実施形態の第1分割パイプ材21も、その長手方向と直交する方向の断面が略U形をなし、その断面の幅方向の両端にて長手方向に沿って形成されたフランジ状の第1接合部21bと、それら両接合部21b,21bの間で長手方向に沿って形成された第1パイプ部21aとを含む。第1パイプ部21aには、その中央部に長手方向に沿って金属パイプ36がインサート成形により設けられる。この実施形態で、温水通路23は、金属パイプ36により構成される。第2分割パイプ材22は、同じく、その長手方向と直交する方向の断面が略U形をなし、その断面の幅方向の両端にて長手方向に沿って形成されたフランジ状の第2接合部22bと、それら両第2接合部22b,22bの間で長手方向に沿って形成された第2パイプ部22aとを含む。
【0112】
図17に示すように、この実施形態でも、温水通路23が設けられていない第2分割パイプ材22の第2パイプ部22aの厚みT1は、第1分割パイプ材21の第1パイプ部21aの厚みT2より薄く形成される。ここで、第1接合部21bと第2接合部22bは、EGRパイプ18の中央P1を基準にそれよりも第1分割パイプ材21の側にオフセットして配置される。そして、両第2接合部22b,22bの間の第2パイプ部22aは、薄肉化されているが、第2接合部22bとその近傍(鎖線円S1で囲った部分)の第2パイプ部22aの厚みT4は、同パイプ部22aの他の部位の厚みT1より大きくなっている。この実施形態のEGRパイプ18でも、第2分割パイプ材22の外壁に、複数のリブ22cが形成される。また、この実施形態では、第2分割パイプ材22の内壁にも、リブ22dが形成される。このリブ22dは、内壁の中央にてEGRパイプ18の長手方向に沿って延びるように形成される。この実施形態でも、第1接合部21bと第2接合部22bとが振動溶着BWにより接合される。
【0113】
図17において、EGRパイプ18の左側がEGRガスの流れの上流側を示し、右側がEGRガスの流れの下流側を示す。図17に示すように、この実施形態の第2分割パイプ材22の厚みT1は、第2分割パイプ材22の上流側から下流側に向けて段階的に又は徐々に大きくなるように形成される。すなわち、図17に示すように、上流側の第2分割パイプ材22の第2パイプ部22aの厚みT1は薄く、下流側の第1分割パイプ材21の第1パイプ部21aの厚みT2は、上流側よりも厚くなっている。
【0114】
[EGRパイプの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRパイプ18の構成によれば、次のような点で前記各実施形態と作用及び効果が異なる。すなわち、この実施形態では、第1分割パイプ材21の温水通路23が、第1分割パイプ材21に設けられる金属パイプ36により構成されるので、第1分割パイプ材21の成形時に金属パイプ36をインサート成形により一体に成形可能である。このため、樹脂製のEGRパイプ18に対し温水通路23を少ない工数で設けることができる。
【0115】
この実施形態の構成によれば、互いに接合された第1接合部21b及び第2接合部22bが第1分割パイプ材21の側にオフセットして配置されることで、第1分割パイプ材21の第1パイプ部21aがその周方向に短くなる。従って、周方向に短くなった分だけ第1分割パイプ材21が、金属パイプ36の温水通路23を流れる温水の熱により更に昇温し易くなる。一方、金属パイプ36が設けられていない第2分割パイプ材22は、その薄肉化により、EGRガスの熱により昇温する。このため、樹脂製のEGRパイプ18につき、第1分割パイプ材21の内壁における昇温効果を更に高めることができ、この部分での凝縮水の発生抑制効果を更に高めることができる。
【0116】
<第10実施形態>
次に、第10実施形態について図18図20を参照して詳細に説明する。
【0117】
[EGRパイプの構成について]
この実施形態では、EGRパイプ18の第1接合部21b及び第2接合部22bの構成の点で第9実施形態と異なる。図18に、この実施形態のEGRパイプ18の一部を側面図により示す。図19に、この実施形態のEGRパイプ18を、図18のE-E線断面図により示す。図20に、この実施形態のEGRパイプ18を、図18のF-F線断面図により示す。
【0118】
図18において、EGRパイプ18の左側がEGRガスの流れの上流側を示し、右側がEGRガスの流れの下流側を示す。図18図20に示すように、この実施形態の二つの接合部21b,22bのオフセット量OF1,OF2(矢印で示す)は、EGRパイプ18の上流側から下流側に向けて徐々に減少するように設定される。すなわち、EGRパイプ18の上流側では、図19に示すように、第1接合部21bと第2接合部22bは、EGRパイプ18の中央P1を基準にそれよりも第1分割パイプ材21の側にオフセットして配置される。一方、EGRパイプ18の下流側では、図20に示すように、第1接合部21bと第2接合部22bは、EGRパイプ18の中央P1を基準にそれよりも第2分割パイプ材22の側にオフセットして配置される。そして、EGRパイプ18の上流側と下流側との間では、第1分割パイプ材21の側へ向かう正向きオフセット量OF1が徐々に短くなり、更には、図20に示すように、オフセットの向きが反対となり、逆向きのオフセット量OF2が徐々に大きくなっている。
【0119】
[EGRパイプの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRパイプ18の構成によれば、次のような点で第9実施形態と作用及び効果が異なる。すなわち、この実施形態のEGRパイプ18では、下流側ほどEGRガス温度が低下するが、温水通路23の温水温度は上流側又は下流側によらずほぼ変わらない。ここで、第1接合部21b及び第2接合部22bがEGRパイプ18の中央よりも第1分割パイプ材21の側にオフセットされるオフセット量OFは、EGRパイプ18の上流側から下流側に向けて減少する。これにより、温水通路23が設けられた第1分割パイプ材21の第1パイプ部21aが下流側ほど周方向に長くなり、薄肉に形成された第2分割パイプ材22の第2パイプ部22aが下流側ほど周方向に短くなる。従って、第2パイプ部22aは、下流側ほどEGRガス温度の低下に合わせて熱マスが減少し、EGRガスにより昇温し易くなり、第1パイプ部21aは、下流側ほど熱マスが増加し、温水の熱が伝わり易くなる。このため、樹脂製のEGRパイプ18の全体として温水とEGRガスによる昇温特性を改善することができる。
【0120】
[変形例について]
この実施形態では、二つの接合部21b,22bのオフセット量OFが、EGRパイプ18の上流側から下流側に向けて徐々に減少したが、そのオフセット量OFが、EGRパイプ18の上流側から下流側に向けて段階的に減少するように設定することもできる。
【0121】
<第11実施形態>
次に、第10実施形態について図21を参照して詳細に説明する。
【0122】
[EGRパイプの構成について]
この実施形態では、EGRパイプ18の、特に第1分割パイプ材21の構成の点で前記各実施形態と異なる。図21に、この実施形態のEGRパイプ18を、図3に準ずる断面図により示す。図21に示すように、この実施形態でも、エンジン1から排気通路3へ排出される排気の一部をEGRガスとしてエンジン1の吸気通路2へ流すEGR通路12を構成するために樹脂製のEGRパイプ18が使用される。また、そのEGRパイプ18が、径方向に二分割された第1分割パイプ材21及び第2分割パイプ材22を接合部21b,22bにて振動溶着により接合することにより形成される。そして、第1分割パイプ材21及び第2分割パイプ材22は、熱マスを低減するために、第1パイプ部21a及び第2パイプ部22aのそれぞれが可能な限り肉薄に形成される。すなわち、この実施形態では、第2分割パイプ材22は、前記各実施形態と同様に肉薄に形成されるが、第1分割パイプ材21については、前記各実施形態と異なり温水通路23は設けられておらず、第1パイプ部21aが第2パイプ部22aと同じ薄肉に形成される。また、図21に示すように、第1パイプ部21a及び第2パイプ部22aの外壁及び内壁には、リブ21c,21d,22c,22dが形成される。更には、二つの接合部21b,22bは、EGRパイプ18の中央P1からオフセットして配置されず、その中央P1と一致する位置に配置される。
【0123】
[EGRパイプの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態のEGRパイプ18の構成によれば、樹脂製のEGRパイプ18を構成する第1分割パイプ材21及び第2分割パイプ材22は、熱マスを低減するために可能な限り肉薄に形成されるので、EGRパイプ18を流れるEGRガスの熱により第1分割パイプ材21及び第2分割パイプ材22が加熱され易くなる。また、第1分割パイプ材21及び第2分割パイプ材22は、それらの外壁に形成されたリブ21c,22cにより補強されると共に、それらの受熱面積がリブ21c,22cの分だけ増す。このため、樹脂製のEGRパイプ18において、その全周にわたって昇温効果を高めることができ、内壁での凝縮水の発生抑制効果を向上させることができる。
【0124】
[変形例について]
この実施形態では、第1分割パイプ材21及び第2分割パイプ材22の外壁のみにリブ21c,22cを形成したが、第1分割パイプ材及び第2分割パイプ材の内壁のみにリブを形成したり、第1分割パイプ材及び第2分割パイプ材の外壁及び内壁の両方にリブを形成したりすることもできる。
【0125】
<別の実施形態>
なお、この開示技術は前記実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0126】
(1)前記各実施形態では、この開示技術をEGR通路12を構成する下流側のEGRパイプ18に具体化したが、上流側のEGRパイプ17に具体化することもできる。
【0127】
(2)前記各実施形態では、ガスチャンバ15aと、ガスチャンバ15aから各分岐管6bへ分岐する複数のガス分配通路15bとを含むEGRガス分配器15を使用した。これに対し、ガスチャンバを持たず、トーナメント形状に分岐するガス分配通路を有するEGRガス分配器を使用することもできる。
【0128】
<付記的記載>
上記明細書には、特許請求の範囲に記載の技術の他に、次のような構成の開示技術を含むことから、以下にその開示技術を付記的に記載する。
【0129】
[付記請求項1]
エンジンから排気通路へ排出される排気の一部をEGRガスとして前記エンジンの吸気通路へ流すEGR通路を構成するために使用される樹脂製のEGRパイプにおいて、
前記EGRパイプは、径方向に二分割された第1分割パイプ材及び第2分割パイプ材を接合部にて接合することにより形成され、
前記第1分割パイプ材及び前記第2分割パイプ材は、熱マスを低減するために可能な限り肉薄に形成され、
前記第1分割パイプ材及び前記第2分割パイプ材につき、それらの内壁及び外壁の少なくとも一方にリブが形成される
ことを特徴とするEGRパイプ。
【0130】
上記の構成によれば、EGRパイプを構成する第1分割パイプ材及び第2分割パイプ材は、熱マスを低減するために可能な限り肉薄に形成されるので、EGRパイプを流れるEGRガスの熱により第1分割パイプ材及び第2分割パイプ材が加熱され易くなる。また、第1分割パイプ材及び第2分割パイプ材は、それらの内壁及び外壁の少なくとも一方に形成されたリブにより補強されると共に、それらの受熱面積がリブの分だけ増す。このため、EGRパイプにおいて、その全周にわたって昇温効果を高めることができ、内壁での凝縮水の発生抑制効果を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
この開示技術は、エンジンに設けられるEGR装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0132】
1 エンジン
2 吸気通路
3 排気通路
11 EGR装置
12 EGR通路
18 EGRパイプ(下流側)
21 第1分割パイプ材
21a 第1パイプ部
21aa 外側パイプ部
21aaa 第2凸条
21ab 内側パイプ部
21aba 第1凸条
21b 第1接合部
21ba 第1接合面
21bb 第1接触面
22 第2分割パイプ材
22a 第2パイプ部
22b 第2接合部
22ba 第2接合面
22bb 第2接触面
22aa 厚肉部
22c リブ
22d リブ
23 温水通路
23a 端
31 固定治具
32 加振治具
36 金属パイプ
X 長手方向
T1 厚み(第2分割パイプ材の)
T2 厚み(外側パイプ部の)
T3 厚み(内側パイプ部の)
T4 厚み(第2接合部接合部近傍の)
P1 中央
OF オフセット量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
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図16
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図21