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特開2024-46166管路グルーピング装置、管路グルーピング方法及び管路グルーピングプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046166
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】管路グルーピング装置、管路グルーピング方法及び管路グルーピングプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20240327BHJP
【FI】
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151392
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(72)【発明者】
【氏名】越智 孝敏
(72)【発明者】
【氏名】奥村 勇太
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】管網を構成する複数の管路を自動的にグルーピングでき、その評価結果に基づいてグルーピング処理が更新可能な管路グルーピング装置を提供する。
【解決手段】管網を構成する複数の管路を、所定の指標に基づいてグループ化するグルーピング制御部を備えている管路グルーピング装置であって、前記グルーピング制御部によりグルーピングされた各グループから、同一グループに属する管路を包摂する多角形が互いに重畳するグループを抽出する重畳グループ抽出部と、前記重畳グループ抽出部で抽出され、重畳状態にある多角形同士の重畳面積を算出する重畳面積算出部と、前記重畳面積算出部で算出された前記重畳面積が第1の所定条件を満たす場合に、重畳状態にある多角形に包摂される管路を前記グルーピング制御部で再度グループ化する更新制御部と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管網を構成する複数の管路を、所定の指標に基づいてグループ化するグルーピング制御部を備えている管路グルーピング装置であって、
前記グルーピング制御部によりグルーピングされた各グループから、同一グループに属する管路を包摂する多角形が互いに重畳するグループを抽出する重畳グループ抽出部と、
前記重畳グループ抽出部で抽出され、重畳状態にある多角形同士の重畳面積を算出する重畳面積算出部と、
前記重畳面積算出部で算出された前記重畳面積が第1の所定条件を満たす場合に、重畳状態にある多角形に包摂される管路を前記グルーピング制御部で再度グループ化する更新制御部と、
を備えている管路グルーピング装置。
【請求項2】
前記重畳面積算出部は、前記多角形の輪郭に存在する前記管路の位置情報に基づき重畳状態にある前記多角形同士の交点の座標を算出する処理を含む請求項1記載の管路グルーピング装置。
【請求項3】
前記第1の所定条件は、前記重畳グループ抽出部で抽出され、重畳状態にある二つの多角形のうち面積が小さい方の多角形の面積に対する重畳領域の面積の面積比で規定される請求項1記載の管路グルーピング装置。
【請求項4】
前記所定の指標は、グループを構成する管路の総管路長、布設工事費、標高差、動圧勾配または残留塩素濃度の何れかである請求項1から3の何れかに記載の管路グルーピング装置。
【請求項5】
前記所定の指標が、グループを構成する管路の総管路長または布設工事費であり、
前記管網を構成する各管路を個別に識別する管路識別情報と、各管路の位置情報を含む管路属性情報と、を関連付けた管路情報に基づいて、グルーピング対象となる複数の管路の何れかにグルーピングの基点を設定する基点設定部と、
前記基点を含む一の管路と、前記基点の近傍に位置する候補管路と、を包摂する所定形状の多角形を生成する処理を、事前に設定された第2の所定条件に達するまで繰返し、前記第2の所定条件に達すると、前記多角形に包摂された各管路を同一グループにグルーピングする多角形生成部と、
を備え、
前記グルーピング制御部は、
前記管網を構成しグループ化対象となる全ての管路が何れかにグルーピングされるまで、前記多角形生成部による一つのグルーピングが終了する度に、前記基点設定部を介した、前記基点の近傍で未だグルーピングされていない複数の管路の何れかに新たなグルーピングの基点の更新設定と、更新設定した前記基点に対する前記多角形生成部の実行を繰り返すように制御するように構成されている請求項1記載の管路グルーピング装置。
【請求項6】
管網を構成する複数の管路を、所定の指標に基づいてグループ化するグルーピング制御処理を実行する管路グルーピング方法であって、
前記グルーピング制御処理によりグルーピングされた各グループから、同一グループに属する管路を包摂する多角形が互いに重畳するグループを抽出する重畳グループ抽出処理と、
前記重畳グループ抽出処理で抽出され、重畳状態にある多角形同士の重畳面積を算出する重畳面積算出処理と、
前記重畳面積算出処理で算出された前記重畳面積が第1の所定条件を満たす場合に、重畳状態にある多角形に包摂される管路を前記グルーピング制御部で再度グループ化する更新制御処理と、
を実行する管路グルーピング方法。
【請求項7】
管網を構成する複数の管路をグルーピングするグルーピング方法をコンピュータに実行させる管路グルーピングプログラムであって、
所定の指標に基づいて前記複数の管路をグループ化するグルーピング制御処理と、
前記グルーピング制御処理によりグルーピングされた各グループから、同一グループに属する管路を包摂する多角形が互いに重畳するグループを抽出する重畳グループ抽出処理と、
前記重畳グループ抽出処理で抽出され、重畳状態にある多角形同士の重畳面積を算出する重畳面積算出処理と、
前記重畳面積算出処理で算出された前記重畳面積が第1の所定条件を満たす場合に、重畳状態にある多角形に包摂される管路を前記グルーピング制御部で再度グループ化する更新制御処理と、
をコンピュータに実行させる管路グルーピングプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水道など管網を構成する管路をグルーピングする管路グルーピング装置、管路グルーピング方法及び管路グルーピングプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
既設管路の新管路への布設替えなどの配管工事において、更新優先度の高い管路が点在している中、工事効率が悪化しないよう作業者が更新優先度の高い管路を含むよう配管工事区間の設定(グルーピング)を行なっている。
【0003】
従来は、コンピュータマッピングで管理された管網に対して、作業者が経験値に基づいて各管路を紐づけするように端末を操作することで、管網の一部を複数の管路群にグルーピングしていた。しかし、このようなグルーピング作業は非常に煩雑であり、或る程度の長い時間と労力を要するものであるばかりでなく、グルーピング結果の再現性に欠けるという課題があった。
【0004】
なお、特許文献1には、管網に対する水理解析に先立ち、管網を構成する各管路について、流速係数を設定する水理解析方法が提案されている。
【0005】
当該水理解析方法は、多数の管路によって構成される管網を、水理的影響度が同等であると判断される管路ごとの複数のグループに分け、グループごとにそのグループを構成する管路がとり得ると予測される水理的影響度の数値について複数の仮定値を設定し、前記複数の仮定値のそれぞれにもとづき前記管網における任意の水需要点での水頭の計算値を求め、前記管網における前記水需要点での水頭の実測値を求め、グループごとに与えられた複数の仮定値の中から、前記水頭の計算値と実測値との分散値が最小となる仮定値をそれぞれ選択して、これら選択された仮定値の組み合わせを求めることを特徴とする。
【0006】
そして、当該水理解析方法では、水理的影響度が同等であると判断される管路として、管種、敷設期間、口径が共通する管路がグループ化の基準に設定されている。
【0007】
特許文献2には、複数のコンピュータによって複数のメッシュに渡るパイプやバルブからなる供給系統から供給不能区域を抽出する抽出システムが提案されている。当該抽出システムは、前記パイプやバルブ等の設備データを保持する設備データ保持手段と、前記メッシュの境界と前記パイプとの交点を示す境界ノードに関する情報を記憶する記憶手段と、前記境界ノードに属性を付与する属性付与手段と、前記属性付与手段によって付与された属性を用いて、前記供給系統から供給不能区域を抽出する抽出手段と、を具備し、前記設備データ保持手段は、前記複数のコンピュータが領域を分割して設備データを保持するものであり、前記記憶手段は、前記複数のコンピュータの全てが前記境界ノードに関する情報を保持し、前記コンピュータのいずれかが、前記属性付与手段または前記抽出手段として機能することを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-57142号公報
【特許文献2】特開2001-282891号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1には、管種、敷設期間、口径などの管路属性によってグルーピングする手法が開示されている。また、特許文献2には、バルブを境界としてメッシュ単位で供給系統から供給不能区域を抽出する手法が開示されている。
【0010】
しかし、何れの文献にも、既設管路の新管路への布設替え等の配管工事において、更新優先度の高い管路が点在している中、工事効率が悪化しない最適な工事区間の設定(グルーピング)を自動的に実行する手法については開示されていない。
【0011】
また、コンピュータマッピングシステムを作業者が経験値に基づいて手動操作することでグルーピングする場合には、その結果が適正であるか否かを評価することができないという問題があり、市町村などで管理される規模の大きな管網に対して、全てを一括してグルーピングし、その結果を評価するのは困難であった。
【0012】
そこで、本願発明者らは、管網を構成する複数の管路を自動的にグルーピングでき、またその評価も可能となる管路グルーピング装置、管路グルーピング方法及び管路グルーピングプログラムを提案している(特願2022-97935号)。
【0013】
当該管路グルーピング装置は、各管路を個別に識別する管路識別情報と、各管路の位置情報を含む管路属性情報と、を関連付けた管路情報を記憶する管路情報記憶部と、前記管路情報に基づいて、グルーピング対象となる複数の管路の何れかにグルーピングの基点を設定する基点設定部と、前記基点を含む一の管路と、前記基点の近傍に位置する候補管路と、を包摂する所定形状の多角形を生成する処理を、事前に設定された所定条件に達するまで繰返し、前記所定条件に達すると前記多角形に包摂された各管路を同一グループにグルーピングする多角形生成部と、前記管網を構成する全ての管路が何れかにグルーピングされるまで、前記多角形生成部による一つのグルーピングが終了する度に、前記基点設定部を介した、前記基点の近傍で未だグルーピングされていない複数の管路の何れかに新たなグルーピングの基点の更新設定と、更新設定した前記基点に対する前記多角形生成部の実行を繰り返すように制御するグルーピング制御部と、を備えている。
【0014】
しかし、上述したグルーピング制御部によりグルーピングされた管路群を単位に管路の布設替え等の工事を行なう場合に、近接したグループ同士の多角形に重畳する領域が存在すると、必ずしも工事を効率的に進めることができず、却って手間取る場合がある。例えば、異なるグループに属する管路が入り組んだ地域で、異なる工事日程で工事が行われるような場合には、長期に亘り交通規制が必要となり、同じ地域で掘削と埋め戻しが繰り返される等の不都合な事態が生じることになる。
【0015】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、管網を構成する複数の管路を自動的にグルーピングでき、その評価結果に基づいてグルーピング処理が更新可能な管路グルーピング装置、管路グルーピング方法及び管路グルーピングプログラムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の目的を達成するため、本発明による管路グルーピング装置の第一の特徴構成は、管網を構成する複数の管路を、所定の指標に基づいてグループ化するグルーピング制御部を備えている管路グルーピング装置であって、前記グルーピング制御部によりグルーピングされた各グループから、同一グループに属する管路を包摂する多角形が互いに重畳するグループを抽出する重畳グループ抽出部と、前記重畳グループ抽出部で抽出され、重畳状態にある多角形同士の重畳面積を算出する重畳面積算出部と、前記重畳面積算出部で算出された前記重畳面積が第1の所定条件を満たす場合に、重畳状態にある多角形に包摂される管路を前記グルーピング制御部で再度グループ化する更新制御部と、を備えている点にある。
【0017】
グルーピング制御部によって、管網を構成する複数の管路が所定の指標に基づいて複数のグループにグループ化される。重畳グループ抽出部によって、同一グループに属する管路を包摂する多角形が互いに重畳する複数のグループが評価の対象として抽出される。重畳面積算出部で算出された重畳面積によりグループ化の良否が評価され、重畳面積が第1の所定条件を満たす場合に、重畳状態にあるグループに含まれる管路がグルーピング制御部によって再度グルーピング処理される。
【0018】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記重畳面積算出部は、前記多角形の輪郭に存在する前記管路の位置情報に基づき重畳状態にある前記多角形同士の交点の座標を算出する処理を含む点にある。
【0019】
管網を構成する各管路の布設情報は既知であるので、同一グループに属する各管路を包摂する多角形の輪郭も把握できる。従って、多角形の輪郭に存在する管路の位置情報に基づけば、重畳状態にある多角形同士の交点の座標を算出することができ、重畳面積も算出できるようになる。
【0020】
同第三の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記第1の所定条件は、前記重畳グループ抽出部で抽出され、重畳状態にある二つの多角形のうち面積が小さい方の多角形の面積に対する重畳領域の面積の面積比で規定される点にある。
【0021】
再度グループ化するか否かの判定条件として、面積が小さい方の多角形の面積に対する重畳領域の面積の面積比を採用することにより、適切な再グループ化処理が可能になる。
【0022】
同第四の特徴構成は、上述した第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記所定の指標が、グループを構成する管路の総管路長、布設工事費、標高差、動圧勾配または残留塩素濃度の何れかである点にある。
【0023】
グループ化の基準となる指標を、グループを構成する管路の総管路長とすれば、布設替え等に要するグループ毎の工事範囲を適切に調整でき、グループを構成する管路の布設工事費とすれば、布設替え等に要する各グループ毎の工事費用を適切に調整でき、グループを構成する管路の標高差、動圧勾配または残留塩素濃度の何れかにすれば、給水圧力や残留塩素濃度が適切に調整可能なブロック給水が可能なグループに分割できるようになる。
【0024】
同第五の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記所定の指標が、グループを構成する管路の総管路長または布設工事費であり、前記管網を構成する各管路を個別に識別する管路識別情報と、各管路の位置情報を含む管路属性情報と、を関連付けた管路情報に基づいて、グルーピング対象となる複数の管路の何れかにグルーピングの基点を設定する基点設定部と、前記基点を含む一の管路と、前記基点の近傍に位置する候補管路と、を包摂する所定形状の多角形を生成する処理を、事前に設定された第2の所定条件に達するまで繰返し、前記第2の所定条件に達すると、前記多角形に包摂された各管路を同一グループにグルーピングする多角形生成部と、を備え、前記グルーピング制御部は、前記管網を構成しグループ化対象となる全ての管路が何れかにグルーピングされるまで、前記多角形生成部による一つのグルーピングが終了する度に、前記基点設定部を介した、前記基点の近傍で未だグルーピングされていない複数の管路の何れかに新たなグルーピングの基点の更新設定と、更新設定した前記基点に対する前記多角形生成部の実行を繰り返すように制御するように構成されている点にある。
【0025】
管網を構成する個々の管路を個別に識別する管路識別情報と、各管路の位置情報を含む管路属性情報とを関連付けた管路情報が予め準備されている。基点設定部では、グルーピング対象となる複数の管路の何れかにグルーピングの基点が設定され、多角形生成部では、基点を含む一の管路と、基点の近傍に位置する候補管路と、を包摂する所定形状の多角形を生成する処理が、事前に設定された所定の指標に達するまで繰返され、所定の指標に達すると多角形に包摂された各管路が同一グループにグルーピングされる。グルーピング制御部は、管網を構成するグループ化対象となる全ての管路が何れかにグルーピングされるまで、多角形生成部による一つのグルーピングが終了する度に、基点の近傍で未だグルーピングされていない複数の管路の何れかに新たなグルーピングの基点の更新設定を、基点設定部を介して実行させ、更新設定した基点に対する多角形生成部の実行を繰り返すように制御する。このようにして、管網を構成する管路のグルーピングが自動化される。
【0026】
本発明による管路グルーピング方法の特徴構成は、管網を構成する複数の管路を、所定の指標に基づいてグループ化するグルーピング制御処理を実行する管路グルーピング方法であって、前記グルーピング制御処理によりグルーピングされた各グループから、同一グループに属する管路を包摂する多角形が互いに重畳するグループを抽出する重畳グループ抽出処理と、前記重畳グループ抽出処理で抽出され、重畳状態にある多角形同士の重畳面積を算出する重畳面積算出処理と、前記重畳面積算出処理で算出された前記重畳面積が第1の所定条件を満たす場合に、重畳状態にある多角形に包摂される管路を前記グルーピング制御部で再度グループ化する更新制御処理と、を実行する点にある。
【0027】
本発明による管路グルーピングプログラムの特徴構成は、管網を構成する複数の管路をグルーピングするグルーピング方法をコンピュータに実行させる管路グルーピングプログラムであって、所定の指標に基づいて前記複数の管路をグループ化するグルーピング制御処理と、前記グルーピング制御処理によりグルーピングされた各グループから、同一グループに属する管路を包摂する多角形が互いに重畳するグループを抽出する重畳グループ抽出処理と、前記重畳グループ抽出処理で抽出され、重畳状態にある多角形同士の重畳面積を算出する重畳面積算出処理と、前記重畳面積算出処理で算出された前記重畳面積が第1の所定条件を満たす場合に、重畳状態にある多角形に包摂される管を前記グルーピング制御部で再度グループ化する更新制御処理と、をコンピュータに実行させる点にある。
【発明の効果】
【0028】
以上説明した通り、本発明によれば、管網を構成する複数の管路を自動的にグルーピングでき、その評価結果に基づいてグルーピング処理が更新可能な管路グルーピング装置、管路グルーピング方法及び管路グルーピングプログラムを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明による管路グルーピング装置の説明図
図2】(a)はグルーピング対象となる管網の説明図、(b)はグルーピングされた管網の説明図
図3】管路グルーピング装置を用いて実行される管路グルーピング方法の手順を示すフローチャート
図4】(a)は単位管路と管路ユニットの関係の説明図、(b)は単位管路を組み合わせて構成された管路ユニットの説明図
図5】(a)は基点V1に対する最初にグループ化される管路の説明図、(b)は次にグループ化される管路の説明図、(c)は面積の増分に基づいて決定されたグループ化対象管路の説明図
図6】(a)は次にグループ化される管路の説明図、(b)は面積の増分に基づいて決定されたグループ化対象管路の説明図
図7】(a)は基点V1の次に更新設定される基点V1´の説明図、(b)は基点V1´に対するグルーピング処理が終了し、さらに新たに更新設定される基点V1´´の説明図
図8】(a)はグループ化される前の管路の説明図、(b)はグループ化された後の多角形の重畳面積が小さい状態の管路の説明図、(c)はグループ化された後の多角形の重畳面積が大きい状態の管路の説明図、(d)は再グループ化された管路の説明図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明による管路グルーピング装置、管路グルーピング方法及び管路グルーピングプログラムを図面に基づいて説明する。
【0031】
[管路グルーピング装置の構成]
図1には、管路グルーピング装置10の機能ブロックを示す構成が示されている。管路グルーピング装置10は、計算機本体10Aと、計算機本体10Aに接続された入力機器10B、表示機器10C及び管路情報記憶部10Dなどを備えている。
【0032】
計算機本体10Aとして汎用のパーソナルコンピュータやラップトップコンピュータなど、入力機器10Bとしてマウスなどのポインティングデバイスやキーボードなど、表示機器10Cとしてタッチパネル式の液晶ディスプレイやプリンタなど、管路情報記憶部10Dとしてハードディスクなどが好適に用いられる。なお、管路情報記憶部10Dは遠隔地のデータベースサーバに構築され、インターネットなどの通信媒体を介して計算機本体10Aと接続される態様であってもよい。
【0033】
管路情報記憶部10Dには、管網を構成する複数の管路を個別に識別する管路識別情報と、各管路の位置情報を含む管路属性情報と、を関連付けた管路情報が格納されている。管路の位置情報とは、管端位置、管軸に沿う中央位置、屈曲点の位置などを示す座標情報、詳しくは布設位置を示すX,Y,Z三次元座標をX,Y水平面に投影した二次元座標である。管路の属性情報には、位置情報以外に、布設時期、呼び径、管種、継手の種類、外面防食方法の種類(ポリエチレンスリーブの有無)、更新対象管の有無、漏水修繕の有無、管路長、更新履歴などが含まれる。更新履歴に基づいて将来の管路の布設替えの時期、要否などが判断される。
【0034】
計算機本体10Aには、CPUボード、メモリボード、入出力インタフェースや通信インタフェースなど各種のインタフェースボードが搭載されており、メモリボードのメモリに格納されたオペレーションシステムプログラムに基づいて動作するCPUにより、同じくメモリボードのメモリに格納されたアプリケーションプログラムが実行されることにより、所期の機能が実現される。この例では、アプリケーションプログラムとして管路グルーピングプログラムがメモリに格納されることにより管路グルーピング装置10が構成され、CPUにより管路グルーピング方法が実行される。
【0035】
管路グルーピング装置10は、基点設定部11、多角形生成部12、面積算出部13、評価部14、グルーピング制御部15、重畳グループ抽出部16、重畳面積算出部17、更新制御部18の各機能ブロックを備えている。
基点設定部11は、管路情報記憶部10Dに格納された管理情報に基づいて、グルーピング対象となる複数の管路の何れかにグルーピングの基点を設定する機能ブロックである。
【0036】
多角形生成部12は、基点を含む一の管路と、基点の近傍に位置する候補管路と、を包摂する所定形状の多角形を生成する処理を、事前に設定された所定条件を満たすまで繰返し、所定条件に達すると生成した多角形に包摂される各管路を同一グループにグルーピングする機能ブロックである。包摂とは、各管路の位置情報を接続して得られる最大形状の多角形で各管路が内包される状態をいう。
【0037】
所定条件として、少なくとも多角形に含まれる管路の総管路長が設定管路長に達するか否か、または、多角形に含まれる管路に対する工事費が設定工事費に達するか否かの何れかの指標が採用される。なお、工事費として予め単位長さ当たりの工事費を設定しておけば、当該工事費に管路長を乗ずることにより容易に求めることができるが、工事費の算出方法はこれに限るものではない。
【0038】
面積算出部13は、多角形生成部により生成された多角形の面積を算出する機能ブロックである。評価部14は、面積算出部13で算出された面積に多角形に含まれる管路の総管路長を加味してグルーピングの適正度を評価する評価係数を算出する機能ブロックである。
【0039】
グルーピング制御部15は、基点設定部11、多角形生成部12、面積算出部13、評価部14の其々の作動を統括して制御する機能ブロックであり、主に、基点設定部11と多角形生成部12を繰返し作動させるように制御する。
【0040】
即ち、グルーピング制御部15は、基点設定部11および多角形生成部12を初期に作動させて最初のグルーピング処理が終了した後は、多角形生成部12による一つのグルーピングが終了する度に、基点設定部11を介して前回設定した基点の近傍で未だグルーピングされていない複数の管路の何れかに新たなグルーピングの基点を更新設定させ、更新設定させた基点に対する多角形生成部の実行を、管網を構成する全ての管路が何れかにグルーピングされるまで繰り返すように制御する。
【0041】
ところで、近接したグループ同士の多角形に重畳する領域が存在すると、必ずしも工事を効率的に進めることができず、却って手間取る場合がある。例えば、異なるグループに属する管路が入り組んだ地域で、異なる工事日程で工事が行われるような場合には、長期に亘り交通規制が必要となり、重複する工事区域で掘削と埋め戻しが繰り返される等の不都合な事態が生じる虞がある。
【0042】
そのような場合に備えて、重畳グループ抽出部16、重畳面積算出部17、更新制御部18が設けられている。重畳グループ抽出部16は、グルーピング制御部15により管網を構成する全ての管路が何れかにグルーピングされた後に、同一グループに属する管路を包摂する多角形が互いに重畳する複数のグループを抽出する機能ブロックである。
【0043】
重畳面積算出部17は、重畳グループ抽出部16で抽出され、重畳状態にある多角形同士の重畳面積を算出する機能ブロックである。更新制御部18は、重畳面積算出部17で算出された重畳面積が第1の所定条件を満たす場合に、重畳状態にある多角形に包摂される管路を再度グループ化するべく、グルーピング制御部15を起動させる機能ブロックである。
【0044】
重畳面積算出部17は、各多角形の輪郭に存在する管路の位置情報に基づき重畳状態にある多角形同士の交点の座標を算出する処理を含む。管路情報記憶部10Dに管路の位置情報(布設情報)は管理されているが、重畳領域の交点の座標は不明であるため、各グループに属する既知の管路の位置情報(布設情報)に基づいて各グループの多角形の輪郭線が数式で定義できる。当該輪郭線の数式から重畳状態にある多角形同士の交点の座標を求めることができ、交点の座標に基づいて重畳領域の面積が求まる。
【0045】
第1の所定条件として、重畳グループ抽出部16で抽出され、重畳状態にある二つの多角形の面積S1,S2(S1>S2)のうち面積が小さい方の多角形の面積S2に対する重畳領域の面積Sdの面積比Sd/S2が所定の閾値より大であるか否かで規定されることが好ましい。
【0046】
再度グループ化するか否かの判定条件として、上述した面積比Sd/S2を採用すると、面積が小さい方の多角形で示される工事区域に対する他の多角形の占有率が評価できる。当該占有率が大きい場合には工事が効率的に行なえないと評価でき、当該占有率が小さい場合には工事が効率的に行なると評価できる。本実施形態では閾値となる占有率が20%に設定され、面積が小さい方の多角形の面積に対する重畳領域の面積の面積比が20%以上になると、更新制御部18によりグルーピング制御部15が起動される。なお、占有率の数値は20%に限るものではなく、実際の状況に応じて適宜設定される値である。
【0047】
つまり、面積比が20%以上になる二つのグループを構成する全ての管路に対して、上述した基点設定部11、多角形生成部12、面積算出部13、評価部14が繰返し起動することにより、新たなグルーピング処理が実行される。基点設定部11により初期に設定される基点として、例えば面積が小さい方の多角形に対するグループの基点を採用することができる。
【0048】
なお、重畳状態にある多角形が三つ以上の複数存在する場合には、重畳状態にある多角形二つずつに対して、上述の評価を行なうことになる。
【0049】
図2(a)には、グルーピング対象となる管網図PNDが例示されている。図2(a)で、基点V1から基点V4と表記された黒三角印は、基点設定部11で最初に設定される基点で、管網の端部の複数位置、この例では東西南北に離れた位置に設定されている。各基点からグルーピング処理が実行されることで、最終的に4パターンのグルーピング結果が得られる。基点を管網の端部に設定するのは、端部から管網側に向かう方向にグルーピングすることが効率的であることによる。しかし、管網の中央部位に基点を設定して、放射状に広がる方向にグルーピングすることも可能である。
【0050】
図2(b)には、基点V1に対するグルーピング結果が、グループ毎に色分けされた管路と各グループを表す数値で示されている。なお、図2(b)はグレースケールで示されているので、グループ毎に色分けされた管路が濃淡で示されている。このようなグルーピングパターンが、基点V2,V3,V4についても生成され、評価部14で算出される評価係数に基づいてグルーピング制御部15が四つのグルーピングパターンから一つのグルーピングパターンを決定する。なお、グルーピング対象となる管網図に設定する基点の数は複数である必要はなく、単一の基点V1を設定するものであってもよい。
【0051】
[管路グルーピング方法の説明]
以下、基点設定部11で設定される基点が、図2(a)に示す基点V1である場合を例に、管路グルーピング装置10で実行される管路グルーピング処理の手順を図3に示すフローチャートなどに基づいて具体的に説明する。
【0052】
先ず、以下に説明する一連の前処理がグルーピング制御部15により実行される(SA1)。
管網が複数の水系を備えた規模の大きな管網である場合には、更新工事の作業効率の低下回避などの観点で、管網全体を一括してグルーピング処理するのではなく、水系により管網を複数に分割し、分割した管網単位にグルーピング処理することが好ましい。従前より実際の管路更新計画を策定する際には、水系毎にグルーピングするのが基本であり、一つのグループが水系を跨がないように、つまりグループを構成する管路に異なる水系の管路が混在しないように留意する必要があった。また、管網全体を一括してグルーピング処理する場合には、管路グルーピング装置10による演算時間が長くなり、効率の低下を招く虞もあった。そのため、図2(a)に示す管網は、一つの水系に分割された管網が示されている。
【0053】
管網を構成する単位管路の両端部は、他の管路との交点となるか、バルブ接続点の何れかとなる。そのような単位管路をグルーピングする際に、両端部がバルブ接続点となるように複数の管路を予め組み合わせた管路ユニットを構成し、管路ユニットを単位としてグルーピングすることで、効率化を図ることができる。
【0054】
図4(a)には、複数本の単位管路(管路1から管路9)を接続した管網の一部が示されている。図中、黒丸は交点を示し、白丸はバルブを示す。これらの管路1から管路9で構成される管路群から両端がバルブとなる管路を形成し、それらを管路ユニットとする。
【0055】
図4(b)には、管路1から管路9に基づいて、二本の管路ユニット1,2が形成されたことが示されている。このようにして、一つの単位管路から交点を辿って連結することで複数の管路ユニットが形成される。なお、距離の短い管路ユニットが分散して存在すると後のグルーピング処理の効率が低下するため、予め管路長が所定長さより短い管路ユニットを、バルブを介して連結された他の管路ユニットに統合処理しておくことが好ましい。
【0056】
このように管路ユニットを単位としてグループ化すると、実際の布設替え工事において、各バルブを介した止水処理が容易になるという利点がある。以下では管路ユニットを「管路」として実行されるグルーピング処理を説明するが、単位管路を対象としてグルーピング処理することも当然に可能であり、基本的に手順は同一であることは言うまでもない。
【0057】
このようにして得られた管路(管路ユニット)の各単位管路の布設年度を単位管路の管路情報から取得して、管路(管路ユニット)を構成する単位管路全体の全管路長A2に対する所定の布設年度以前の管路の総管路長A1の比率A1/A2を算出し、所定比率以上となる管路(管路ユニット)をグルーピング処理の対象となる管路(管路ユニット)として選択する。所定の布設年度、所定比率の具体的な値は特に限定するものではなく適宜設定すればよい。
【0058】
配水支管と幹線管路とは工事種別が異なるため、其々でグルーピング処理が実行されるように、例えば、予め管路(管路ユニット)を配水支管(例えば、呼び径250以下)と、幹線管路(例えば、呼び径300以上)に分割してもよい。
【0059】
以上説明した前処理の後に、グルーピング制御部15により基点設定部11が起動されて、基点初期設定処理が実行される(SA2)。この処理により、図2(a)に示した基点V1が設定される。本実施形態では、基点V1として管路(管路ユニット)の端部であるバルブ位置が選択される態様を説明するが、管端、管軸に沿う中央、屈曲点などの座標情報の何れかを基点V1と設定してもよい。
【0060】
次に、グルーピング制御部15により多角形生成部12が起動されて、図5(a)に示すように、基点V1を含む複数の管路(管路ユニット)から管延長が最長となる一の管路(管路ユニット)SG1がグルーピングされる最初の管路(管路ユニット)に組み込まれる。符号As1は、一の管路(管路ユニット)SG1を包摂する所定形状の多角形の面積を示す。なお、単位管路を対象にグルーピングする場合でも、基点V1を含む複数の単位管路から管延長が最長となる一の単位管路がグルーピングされる最初の単位管路に組み込まれるように構成すればよい。
【0061】
さらに、図5(b)に示すように、多角形生成部12は、基点V1に近い所定数の管路(管路ユニット)を候補管路SG2(SG2(1)、SG2(2)、SG2(3))としてピックアップし、一の管路(管路ユニット)SG1と各候補管路SG2(SG2(1)、SG2(2)、SG2(3))を包摂する多角形の面積As2を其々算出し、各候補管路SG2(SG2(1)、SG2(2)、SG2(3))による面積の増分ΔA(=As2-As1)と候補管路SG2の管延長との比[増加面積/追加管延長]が最小となる候補管路SG2を次の管路(管路ユニット)に選定してグルーピングする。この例では、図5(c)に示すように、候補管路SG2(2)が次の管路(管路ユニット)に選定される。
【0062】
この例では、所定数を3に設定している。所定数は適宜設定すればよいのであるが、この数を増やすと、[増加面積/追加管延長]の値が小さくなる直線的な候補管路SG2が選ばれ易くなり、グルーピングされる管路の領域が直線的で歪になる。つまり、グルーピングされた管路単位で管の布設替えを行なう場合に、工事領域が歪になることを回避する目的がある。
【0063】
基点V1に近い管路(管路ユニット)とは、基点V1と各管路(管路ユニット)との最短距離に基づいて、最も近い管路(管路ユニット)から順番に選択される。
【0064】
図6(a),(b)に示すように、多角形生成部12は、基点V1についてグルーピングされた管路(管路ユニット)SG1,SG2を包摂する多角形の面積As2を基準にして、基点V1に近い所定数の管路(管路ユニット)を候補管路SG3(SG3(1)、SG3(2)、SG3(3))としてピックアップし、既にグルーピングされた管路(管路ユニット)SG1,SG2と候補管路SG3(SG3(1)、SG3(2)、SG3(3))を包摂する多角形の面積As3を算出し、候補管路SG3(SG3(1)、SG3(2)、SG3(3))による面積の増分ΔA(=As3-As2)と候補管路SG3の管延長との比[増加面積/追加管延長]が最小となる候補管路SG3を次の管路(管路ユニット)に選定してグルーピングする。
【0065】
同一のグループに組み込まれた管路(管路ユニット)SG1,SG2,・・・に対して、所定条件が成立するまでステップSA3の多角形処理が繰り返される(SA4)。
【0066】
多角形に含まれる管路の総管路長が設定管路長に達するか否かが所定条件として規定されている。グループ内の総管路長が設定管路長を超えるまで、同様の処理が繰り返され、総管路長が設定管路長を超える場合に、その直前の管路(管路ユニット)SGnまでが同一グループに組み込まれる。設定管路長は、管路の布設替え工事の工程になどに基づいて適宜設定される。
【0067】
なお、設定管路長に代えて、多角形に含まれる管路に対する工事費が設定工事費に達するか否かが所定条件として規定されていてもよい。一区画の管路の布設替え工事に要する費用を規定することで、工事費の管理を適切に行えるようになる。
【0068】
所定条件が満たされると(SA4,Y)、グルーピング制御部15により起動された面積算出部13により、同一グループに組み込まれた全ての管路を包摂する多角形の面積Agが算出されるとともに(SA5)、評価部14により、当該面積Agを当該グループに属する管路の合計値である総管路長で除した値がグループ単位の評価値Vgとして算出される(SA6)。つまり、単位管路長当たりの面積が評価値Vgとなり、評価値Vgが小さいほど適正度の高いグルーピング処理と評価される。
【0069】
なお、評価値Vgは、面積Agに総管路長を加味した値であればよく、面積Agを多角形に含まれる管路の総管路長で除した値に限るものではい。
【0070】
さらに、所定条件が満たされたグループが生成される度に、以前に生成されたグループ単位の評価値Vgの相加平均値がグループ全体の評価値VGとして算出されて管路情報記憶部10Dに記憶され(SA7)。なお、最初のグループの生成時には、評価値Vgとグループ全体の評価値VGは同値となる。
【0071】
グルーピング制御部15は、多角形生成部12で所定条件を満たしたグループが生成され、評価部14で評価値VGが算出される度に(SA4,Y~SA7)、管網を構成する全ての管路(管路ユニット)が何れかにグルーピングされたか否かを判断し(SA8)、グルーピングされていない管路(管路ユニット)が存在する場合に(SA8,N)、基点設定部11を介して基点更新設定処理を実行する(SA15)。
【0072】
全ての管路が何れかのグループにグルーピングされると(SA8,Y)、重畳グループ抽出部16により、同一グループに属する管路を包摂する多角形同士の間で、互いに多角形が重畳するグループが存在するか否かが判断され、存在する場合には互いに重畳する多角形に対応するグループが抽出され(SA9)、重畳面積算出部17で重畳面積が算出される(SA10)。
【0073】
更新制御部18は、重畳面積算出部17で算出された重畳面積を評価し、重畳面積が第1の所定条件を満たす場合、つまり重畳状態にある二つの多角形の面積のうち面積が小さい方の多角形の面積に対する重畳領域の面積の面積比が所定の閾値より大であると(SA11,NG)、重畳状態にある多角形に包摂される管路を再度グループ化するべく、グルーピング制御部15を介して基点更新設定処理を起動する(SA15)。重畳面積が第1の所定条件を満たさない場合、つまり重畳状態にある二つの多角形の面積のうち面積が小さい方の多角形の面積に対する重畳領域の面積の面積比が所定の閾値より小であると(SA11,OK)、一連のグルーピング処理を終了して、生成された全てのグルーピング情報が管路情報記憶部10Dに記憶される(SA12)。
【0074】
図8(a)には、グルーピングされる前の管網図PNDの一部が示され、図8(b)には、グループGA1,GB1の二つのグループに対応する多角形が重畳した状態の管網図PNDが示され、図8(c)には、グループGA2,GB2の二つのグループに対応する多角形が重畳した状態の管網図が例示されている。
【0075】
図8(b)では、グループGA1の多角形の面積S(GA1)とグループGB1の多角形の面積S(GB1)との関係がS(GA1)<S(GB1)となり、面積が小さい方の多角形の面積S(GA1)に対する重畳領域d1(ハッチングされている。)の面積S(d1)の面積比S(d1)/S(GA1)が、閾値0.2(=20%)より小となる。
【0076】
図8(c)では、グループGA2の多角形の面積S(A2)、グループGB2の多角形の面積S(GB2)との関係がS(GA2)<S(GB2)となり、面積が小さい方の多角形の面積S(GA2)に対する重畳領域d2(ハッチングされている。)の面積S(d2)の面積比S(d2)/S(GA1)が、閾値0.2(=20%)より大となる。
【0077】
図8(b)の例では、グループGA1,GB1が維持され、図8(c)の例ではグループGA2,GB2に属する管路が再度グルーピングされる。図8(d)には、再度のグルーピング処理でグループGA3とグループGB3が生成される。グループGA3とグループGB3の重畳面積S(d3)は閾値0.2(=20%)より小となる。
【0078】
図7(a)に示すように、基点更新設定処理とは、新たなグループを生成するための基点を更新設定する処理で、既にグルーピングされた管路(管路ユニット)を除いて、最初の基点V1から直線距離で最も近い管路(管路ユニット)のバルブ位置を新たな基点V1´として更新設定する処理である(SA15)。
【0079】
そして、更新設定された基点V1´に対して、上述したステップSA3からステップSA8のグルーピング処理が繰り返される。
図7(b)には、基点V1´に対するグルーピング処理が終了し、さらに新たな基点V1´´が更新設定された状態が示されている。
上述した再グループ化の際に、基点設定部11により初期に設定される基点として、例えば面積が小さい方の多角形に対するグループの基点を採用することが好ましいが、面積が大きい方の多角形に対するグループの基点を採用してもよい。
【0080】
このようにして、図2(a)に示す基点V1についてグルーピング処理が終了すると、次の基点V2について同様のグルーピング処理が実行され、さらに次の基点V3,V4についても同様のグルーピング処理が実行される(SA10)。
【0081】
グルーピング制御部15は、基点V1からV4の4つの基点に対するグルーピング処理が終了すると、ステップSA7で算出され、管路情報記憶部10Dに記憶された各グループ全体の評価値を参照して、最も評価値の高いグルーピング処理結果を最終のグルーピングパターンに決定する(SA13)。
【0082】
以上、説明した通り、本発明の管路グルーピング方法は、管網を構成する複数の管路を、所定の指標に基づいてグループ化するグルーピング制御処理を実行する管路グルーピング方法であって、グルーピング制御処理によりグルーピングされた各グループから、同一グループに属する管路を包摂する多角形が互いに重畳するグループを抽出する重畳グループ抽出処理と、重畳グループ抽出処理で抽出され、重畳状態にある多角形同士の重畳面積を算出する重畳面積算出処理と、重畳面積算出処理で算出された前記重畳面積が第1の所定条件を満たす場合に、重畳状態にある多角形に包摂される管路をグルーピング制御部で再度グループ化する更新制御処理と、を実行するように構成されている。
【0083】
所定の指標が、グループを構成する管路の総管路長または布設工事費であり、管路グルーピング方法は、さらに、管網を構成する各管路を個別に識別する管路識別情報と、各管路の位置情報を含む管路属性情報と、を関連付けた管路情報に基づいて、グルーピング対象となる複数の管路の何れかにグルーピングの基点を設定する基点設定処理と、基点を含む一の管路と、基点の近傍に位置する候補管路と、を包摂する所定形状の多角形を生成する処理を、事前に設定された第2の所定条件に達するまで繰返し、第2の所定条件に達すると、多角形に包摂された各管路を同一グループにグルーピングする多角形生成処理と、を備え、グルーピング制御処理は、管網を構成しグループ化対象となる全ての管路が何れかにグルーピングされるまで、多角形生成処理による一つのグルーピングが終了する度に、基点設定処理を介した、基点の近傍で未だグルーピングされていない複数の管路の何れかに新たなグルーピングの基点の更新設定処理と、更新設定した基点に対する多角形生成処理の実行を繰り返すように制御するように構成されている。
【0084】
第2の所定条件は、総管路長が設定管路長に達し、または、布設工事費が設定工事費に達するか否かである。
【0085】
また、本発明による管路グルーピングプログラムは、管網を構成する複数の管路をグルーピングするグルーピング方法をコンピュータに実行させる管路グルーピングプログラムであって、所定の指標に基づいて複数の管路をグループ化するグルーピング制御処理と、グルーピング制御処理によりグルーピングされた各グループから、同一グループに属する管路を包摂する多角形が互いに重畳するグループを抽出する重畳グループ抽出処理と、重畳グループ抽出処理で抽出され、重畳状態にある多角形同士の重畳面積を算出する重畳面積算出処理と、重畳面積算出処理で算出された重畳面積が第1の所定条件を満たす場合に、重畳状態にある多角形に包摂される管路をグルーピング制御部で再度グループ化する更新制御処理と、をコンピュータに実行させるように構成されている。
【0086】
上述した実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、該記載に基づいて本願発明の技術的範囲が限定されるものではなく、各部の具体的構成は、本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計できることは言うまでもない。
【0087】
例えば、図3に示した管路グルーピング処理のうち、ステップSA3の管路グルーピング処理からステップSA11のグルーピング情報記憶処理の一連の処理またはそのうちの一部の処理を、遺伝的アルゴリズム等のAI技術を用いて最適な組み合わせを求めることで自動化することも可能である。
【0088】
上述した実施形態では、管網を構成する各管路に対して、管路の再布設を目的として、グループを構成する管路の総管路長、布設工事費の何れかを所定の指標としてグループ化する例を説明したが、本発明は、管路の再布設を目的とするものに限らない。例えば、各配水地域における水圧や残留塩素濃度を安定した状態に維持するために、配水区域をブロック化して管理する構成を採用する場合には、所定の指標として標高差、動圧勾配または残留塩素濃度の何れかを採用することが好ましい。
【符号の説明】
【0089】
10:管路グルーピング装置
10A:計算機本体
10B:入力機器
10C:表示機器
10D:管路情報記憶部
11:基点設定部
12:多角形生成部
13:面積算出部
14:評価部
15:グルーピング制御部
16:重畳グループ抽出部
17:重畳面積算出部
18:更新制御部
V1:基点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8