(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046170
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】電源入力回路及びそれを備えた車両用インバータ一体型電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
G05F1/56 310T
G05F1/56 330A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151399
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098361
【弁理士】
【氏名又は名称】雨笠 敬
(72)【発明者】
【氏名】工藤 京也
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 真敏
【テーマコード(参考)】
5H420
5H430
【Fターム(参考)】
5H420BB13
5H420CC02
5H420CC10
5H420DD02
5H420DD10
5H420EA12
5H420EB01
5H430BB01
5H430BB09
5H430BB12
5H430CC03
5H430CC07
5H430EE04
5H430EE12
5H430FF12
(57)【要約】
【課題】直流電源が投入され、平滑用コンデンサが充電される際に発生する過大な突入電流を制限することができる電源入力回路を提供する。
【解決手段】平滑用コンデンサ12を有するEMCフィルタ回路7と、後段側のパワースイッチング素子Q2と、パワースイッチング素子Q2をON/OFFするためのスイッチ回路23と、パワースイッチング素子Q2の制御電極の電圧を調整することで突入電流を制限する後段側の突入電流制限回路9と、EMCフィルタ回路7とバッテリ2の間の導通経路を導通/遮断する前段側のパワースイッチング素子Q4と、パワースイッチング素子Q4のゲートの電圧を調整することにより、バッテリ2が投入されたときの突入電流を制限する前段側の突入電流制限回路10を備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から負荷への電流を制御する電源入力回路において、
平滑用コンデンサを有するフィルタ回路と、
該フィルタ回路と前記負荷の間の導通経路を導通/遮断する後段側のパワースイッチング素子と、
該後段側のパワースイッチング素子をON/OFFするためのスイッチ回路と、
前記後段側のパワースイッチング素子の制御電極の電圧を調整することにより、突入電流を制限する後段側の突入電流制限回路と、
前記フィルタ回路と前記直流電源の間の導通経路を導通/遮断する前段側のパワースイッチング素子と、
該前段側のパワースイッチング素子の制御電極の電圧を調整することにより、前記直流電源が投入されたときの突入電流を制限する前段側の突入電流制限回路を備えたことを特徴とする電源入力回路。
【請求項2】
前記各突入電流制限回路は、
突入電流により両端に発生する電圧で電流を検出する電流検出抵抗と、
制御電極及び一対の主電極を有し、一方の主電極が前記パワースイッチング素子の制御電極に接続された電流制限制御素子をそれぞれ有し、
各電流制限制御素子は、当該電流制限制御素子の制御電極の電圧が前記電流検出抵抗の両端に誘起される電圧に応じて変化し、前記各パワースイッチング素子の制御電極の電圧をそれぞれ調整して定電流動作を行わせると共に、
前記各電流検出抵抗の一端と前記各電流制限制御素子の制御電極間には抵抗素子がそれぞれ接続され、前記各電流制限制御素子の制御電極と一方の主電極間には、容量素子がそれぞれ接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電源入力回路。
【請求項3】
前記前段側のパワースイッチング素子の制御電極と、当該パワースイッチング素子と接続されない側の前記直流電源間には第1の抵抗が接続され、
前記スイッチ回路は、前記後段側のパワースイッチング素子の制御電極と、当該パワースイッチング素子と接続されない側の前記直流電源間に、もう一つの第1の抵抗を介して接続されており、
前記各パワースイッチング素子の一方の主電極と制御電極間には、第2の抵抗がそれぞれ接続されていることを特徴とする請求項2に記載の電源入力回路。
【請求項4】
前記直流電源が投入された直後、前記前段側のパワースイッチング素子の制御電極の電圧は、当該パワースイッチング素子のON電圧に到達せず、前記前段側の突入電流制限回路の電流制限制御素子の制御電極の電圧は、当該電流制限制御素子のON電圧に達すると共に、
前記スイッチ回路が導通した直後、前記後段側のパワースイッチング素子の制御電極の電圧は、当該後段側のパワースイッチング素子のON電圧に到達せず、前記後段側の突入電流制限回路の電流制限制御素子の制御電極の電圧は、当該電流制限制御素子のON電圧に達することを特徴とする請求項3に記載の電源入力回路。
【請求項5】
前記各パワースイッチング素子は、前記制御電極としてのゲートを有する電圧駆動型のスイッチング素子であり、
前記各電流制限制御素子は、前記制御電極としてのベースと前記主電極としてのコレクタ及びエミッタを有するバイポーラトランジスタであり、
前記各電流制限制御素子の一方の主電極としての前記コレクタが前記各パワースイッチング素子の制御電極にそれぞれ接続され、前記各電流制限制御素子のベースとコレクタ間に前記各容量素子がそれぞれ接続されていることを特徴とする請求項2に記載の電源入力回路。
【請求項6】
前記直流電源と前記前段側の突入電流制限回路の間には、もう一つのフィルタ回路が接続されており、前記各フィルタ回路はインダクタンス分を有することを特徴とする請求項2に記載の電源入力回路。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のうちの何れかに記載の電源入力回路と、インバータを制御する制御回路を前記負荷として有することを特徴とする車両用インバータ一体型電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源から負荷への電源入力回路、及び、それを備えた車両用インバータ一体型電動圧縮機であって、突入電流を制限するものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に搭載されるインバータ一体型の電動圧縮機では、低電圧(LV)電源となるバッテリ(直流電源)からDC/DCコンバータ等の負荷への電源供給をON/OFFする場合、出力コンデンサに充電するために突入電流が流れる。そのため、パワースイッチング素子の制御電極の電圧を調整してこの突入電流を制限し、定電流動作を行わせる電源入力回路が設計されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-205286号公報
【特許文献2】特開2012-143114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
係る従来の電源入力回路によれば、パワースイッチング素子をONしたときの突入電流の立ち上がりを緩やかにして、出力コンデンサに充電する電流のピーク値が、所定の制限電流値を超えてしまうことを防止することができる。
【0005】
一方、この種電源入力回路には、ノイズ抑制を目的としたEMC回路等のフィルタ回路が用いられ、フィルタ回路には平滑用コンデンサが設けられる。そして、車両のイグニッションがONされ、或いは、アクセサリがONされて直流電源(バッテリ)が電源入力回路に投入されると、この平滑用コンデンサの充電が始まるが、その際に過大な突入電流が発生し、ピーク値が要求される制限電流値を超えてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、直流電源が投入され、平滑用コンデンサが充電される際に発生する過大な突入電流を制限することができる電源入力回路、及び、それを備えた車両用インバータ一体型電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電源入力回路は、直流電源から負荷への電流を制御するものであって、平滑用コンデンサを有するフィルタ回路と、このフィルタ回路と負荷の間の導通経路を導通/遮断する後段側のパワースイッチング素子と、この後段側のパワースイッチング素子をON/OFFするためのスイッチ回路と、後段側のパワースイッチング素子の制御電極の電圧を調整することにより、突入電流を制限する後段側の突入電流制限回路と、フィルタ回路と直流電源の間の導通経路を導通/遮断する前段側のパワースイッチング素子と、この前段側のパワースイッチング素子の制御電極の電圧を調整することにより、直流電源が投入されたときの突入電流を制限する前段側の突入電流制限回路を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明の電源入力回路は、上記発明において各突入電流制限回路は、突入電流により両端に発生する電圧で電流を検出する電流検出抵抗と、制御電極及び一対の主電極を有し、一方の主電極がパワースイッチング素子の制御電極に接続された電流制限制御素子をそれぞれ有し、各電流制限制御素子は、当該電流制限制御素子の制御電極の電圧が電流検出抵抗の両端に誘起される電圧に応じて変化し、各パワースイッチング素子の制御電極の電圧をそれぞれ調整して定電流動作を行わせると共に、各電流検出抵抗の一端と各電流制限制御素子の制御電極間には抵抗素子がそれぞれ接続され、各電流制限制御素子の制御電極と一方の主電極間には、容量素子がそれぞれ接続されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明の電源入力回路は、上記発明において前段側のパワースイッチング素子の制御電極と、当該パワースイッチング素子と接続されない側の直流電源間には第1の抵抗が接続され、スイッチ回路は、後段側のパワースイッチング素子の制御電極と、当該パワースイッチング素子と接続されない側の直流電源間に、もう一つの第1の抵抗を介して接続されており、各パワースイッチング素子の一方の主電極と制御電極間には、第2の抵抗がそれぞれ接続されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明の電源入力回路は、上記発明において直流電源が投入された直後、前段側のパワースイッチング素子の制御電極の電圧は、当該パワースイッチング素子のON電圧に到達せず、前段側の突入電流制限回路の電流制限制御素子の制御電極の電圧は、当該電流制限制御素子のON電圧に達すると共に、スイッチ回路が導通した直後、後段側のパワースイッチング素子の制御電極の電圧は、当該後段側のパワースイッチング素子のON電圧に到達せず、後段側の突入電流制限回路の電流制限制御素子の制御電極の電圧は、当該電流制限制御素子のON電圧に達することを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明の電源入力回路は、請求項2の発明において各パワースイッチング素子は、制御電極としてのゲートを有する電圧駆動型のスイッチング素子であり、各電流制限制御素子は、制御電極としてのベースと主電極としてのコレクタ及びエミッタを有するバイポーラトランジスタであり、各電流制限制御素子の一方の主電極としてのコレクタが各パワースイッチング素子の制御電極にそれぞれ接続され、各電流制限制御素子のベースとコレクタ間に各容量素子がそれぞれ接続されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明の電源入力回路は、請求項2の発明において直流電源と前段側の突入電流制限回路の間には、もう一つのフィルタ回路が接続されており、各フィルタ回路はインダクタンス分を有することを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明の車両用インバータ一体型電動圧縮機は、上記各発明の電源入力回路と、インバータを制御する制御回路を負荷として有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、直流電源から負荷への電流を制御する電源入力回路において、平滑用コンデンサを有するフィルタ回路と、このフィルタ回路と負荷の間の導通経路を導通/遮断する後段側のパワースイッチング素子と、この後段側のパワースイッチング素子をON/OFFするためのスイッチ回路と、後段側のパワースイッチング素子の制御電極の電圧を調整することにより、突入電流を制限する後段側の突入電流制限回路を備えているので、スイッチ回路が導通したときの突入電流の立ち上がりが後段側の突入電流制限回路により抑制される。
【0015】
加えて、フィルタ回路と直流電源の間の導通経路を導通/遮断する前段側のパワースイッチング素子と、この前段側のパワースイッチング素子の制御電極の電圧を調整することにより、直流電源が投入されたときの突入電流を制限する前段側の突入電流制限回路を備えているので、直流電源が投入されたときの突入電流の立ち上がりも前段側の突入電流制限回路により抑制されるようになる。
【0016】
これにより、直流電源が投入されて平滑用コンデンサが充電される際に発生する過大な突入電流を制限することができるようになり、ピーク値が要求される制限電流値を超えてしまう不都合を効果的に解消することが可能となる。
【0017】
特に、請求項2の発明の如く各突入電流制限回路が、突入電流により両端に発生する電圧で電流を検出する電流検出抵抗と、制御電極及び一対の主電極を有し、一方の主電極がパワースイッチング素子の制御電極に接続された電流制限制御素子をそれぞれ有し、各電流制限制御素子は、当該電流制限制御素子の制御電極の電圧が電流検出抵抗の両端に誘起される電圧に応じて変化し、各パワースイッチング素子の制御電極の電圧をそれぞれ調整して定電流動作を行わせると共に、各電流検出抵抗の一端と各電流制限制御素子の制御電極間には抵抗素子がそれぞれ接続され、各電流制限制御素子の制御電極と一方の主電極間には、容量素子がそれぞれ接続される構成とすることで、請求項6の発明の如くインダクタンス分を有するフィルタ回路が設けられる場合であっても、電流の振動現象を抑制してピーク値を効果的に制限することが可能となる。
【0018】
例えば請求項3の発明の如く、前段側のパワースイッチング素子の制御電極と、当該パワースイッチング素子と接続されない側の直流電源間に第1の抵抗が接続され、スイッチ回路は、後段側のパワースイッチング素子の制御電極と、当該パワースイッチング素子と接続されない側の直流電源間に、もう一つの第1の抵抗を介して接続され、各パワースイッチング素子の一方の主電極と制御電極間に、第2の抵抗がそれぞれ接続される構成とする。
【0019】
そして、請求項4の発明の如く直流電源が投入された直後、前段側のパワースイッチング素子の制御電極の電圧が、当該パワースイッチング素子のON電圧に到達せず、前段側の突入電流制限回路の電流制限制御素子の制御電極の電圧が、当該電流制限制御素子のON電圧に達すると共に、スイッチ回路が導通した直後、後段側のパワースイッチング素子の制御電極の電圧が、当該後段側のパワースイッチング素子のON電圧に到達せず、後段側の突入電流制限回路の電流制限制御素子の制御電極の電圧が、当該電流制限制御素子のON電圧に達するようにすることで、直流電源が投入された際と、スイッチ回路が導通した際の各突入電流の立ち上がりを効果的に抑制することができるようになる。
【0020】
具体的には、請求項5の発明の如く各パワースイッチング素子を、制御電極としてのゲートを有する電圧駆動型のスイッチング素子で構成し、各電流制限制御素子を、制御電極としてのベースと主電極としてのコレクタ及びエミッタを有するバイポーラトランジスタで構成し、各電流制限制御素子の一方の主電極としてのコレクタを各パワースイッチング素子の制御電極にそれぞれ接続し、各電流制限制御素子のベースとコレクタ間に各容量素子をそれぞれ接続する。
【0021】
また、請求項6の発明の如く直流電源と前段側の突入電流制限回路の間に、もう一つのフィルタ回路を接続することで、前段側の突入電流制限回路の各素子を保護することができるようになる。
【0022】
特に、各電流制限制御素子の制御電極と一方の主電極間に接続する各容量素子が小さい値のものであっても、各突入電流のピーク値を所定の電流値に効果的に制限できるようになる。これにより、電源OFFの信号に対して過剰な遅れを生ずること無く負荷への電源供給を停止できるようになるので、請求項7の発明の如き車両用インバータ一体型電動圧縮機において、極めて好適なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明を適用した一実施例の電源入力回路の電気回路図である。
【
図2】前段側の突入電流制限回路を設けない場合と設けた場合の電源入力回路の直流電源の投入、平滑用コンデンサの充電電流、ON/OFF信号、及び、出力コンデンサの充電電流を比較して説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
(1)電源入力回路1
図1は本発明を適用した一実施例の電源入力回路1の電気回路図を示している。この図において、実施例の電源入力回路1は、車両に搭載されたバッテリ(例えば、DC12Vの低電圧(LV)電源。本発明における直流電源)2から、同じく車両に搭載されたエアコンの車両用インバータ一体型電動圧縮機(図示せず)の制御回路を構成するDC/DCコンバータ3(本発明における負荷)に直流電圧を供給するものであり、バッテリ2からDC/DCコンバータ3への電流を制御する。
【0025】
実施例の電源入力回路1は、本発明における導通経路を構成する正側電源ライン4(+)及び負側電源ライン6(-)に接続されたEMCフィルタ回路7(本発明におけるフィルタ回路の一例)と、図中Cinで表記する入力コンデンサ8と、EMCフィルタ回路7と入力コンデンサ8の後段側に接続された後段側の突入電流制限回路9と、この後段側の突入電流制限回路9の後段側に接続された後段側のパワースイッチング素子Q2と、スイッチ回路23と、後段側のパワースイッチング素子Q2と負荷3の間に接続された図中Coutで表記する出力コンデンサ11と、EMCフィルタ回路7の前段側に接続された前段側のパワースイッチング素子Q4と、この前段側のパワースイッチング素子Q4の前段側に接続された前段側の突入電流制限回路10と、この前段側の突入電流制限回路10と直流電源2の間に接続されたEMCフィルタ回路15(本発明におけるもう一つのフィルタ回路の一例)を備えている。
【0026】
尚、実施例の場合、正側電源ライン4と負側電源ライン6はコネクタ20を備えたケーブル25を介してバッテリ2の正側(+)と負側(-)にそれぞれ接続されている。また、
図1で示す30はスイッチである。このスイッチ30は車両のイグニッション(IG)がONされた場合、或いは、アクセサリー(ACC)がONされた場合に導通されるスイッチであり、
図1ではスイッチ30をケーブル25に設けているが、スイッチ30の位置はこの例に限られない。そして、例えば車両のイグニッション(IG)がONされ、このスイッチ30が導通されることで、バッテリ2(直流電源)の電圧が電源入力回路1に投入されることになる。
【0027】
(2)EMCフィルタ回路7
前記EMCフィルタ回路7は、正側電源ライン4と負側電源ライン6間に接続された図中Cxで表記する平滑用コンデンサ12と、この平滑用コンデンサ12の後段側で正側電源ライン4及び負側電源ライン6にそれぞれ直列接続された図中Lnで表記するノーマルモードコイル13、14(本発明におけるインダクタンス分)と、これらノーマルモードコイル13、14の後段側に接続された図中Lcで表記するコモンモードコイル16(本発明におけるインダクタンス分)と、このコモンモードコイル16の後段側において、正側電源ライン4及び負側電源ライン6と接地(GND)間にそれぞれ接続された図中Cyで表記するYコンデンサ17、18から構成されている。
【0028】
上記平滑用コンデンサ12はディファレンシャルモードノイズを低減するためのコンデンサであり、Yコンデンサ17、18はコモンモードノイズを低減するためのコンデンサである。
【0029】
そして、このEMCフィルタ回路7の後段側における正側電源ライン4と負側電源ライン6間に前記入力コンデンサ8が接続されており、この入力コンデンサ8の後段側の正側電源ライン4に前記後段側の突入電流制限回路9が接続され、この突入電流制限回路9の後段側の正側電源ライン4と負側電源ライン6間に前記後段側のパワースイッチング素子Q2とスイッチ回路23が接続され、これらの後段側の正側電源ライン4と負側電源ライン6間に前記出力コンデンサ11が接続されている。そして、負荷3は出力コンデンサ11の後段側の正側電源ライン4と負側電源ライン6間に接続されている。
【0030】
(3)後段側のパワースイッチング素子Q2
後段側のパワースイッチング素子Q2はEMCフィルタ回路7と、出力コンデンサ11及び負荷3との間の正側電源ライン4(導通経路)を導通/遮断するスイッチング素子であり、実施例では電圧駆動型のスイッチング素子としてのP型のMOS-FETから構成されている。
【0031】
(4)スイッチ回路23
スイッチ回路23は、上記後段側のパワースイッチング素子Q2をON/OFFするためのものであり、実施例ではNPN型のトランジスタ(バイポーラトランジスタ)Q1とON/OFF信号回路22から構成されている。そして、後段側のパワースイッチング素子Q2の制御電極としてのゲートには図中R1で表記する第1の抵抗24の一端が接続されており、この第1の抵抗24の他端にスイッチ回路23のトランジスタQ1の一方の主電極としてのコレクタが接続されている。
【0032】
このトランジスタQ1の他方の主電極としてのエミッタは負側電源ライン6に接続されており、これにより、スイッチ回路23はパワースイッチング素子Q2のゲートと負側電源ライン6(パワースイッチング素子Q2と接続されない側のバッテリ2)間に、第1の抵抗24を介して接続されたかたちとなる。そして、ON/OFF信号回路22の出力は、トランジスタQ1の制御電極としてのベースに接続されている。
【0033】
(5)後段側の突入電流制限回路9
後段側の突入電流制限回路9は、図中Rsで表記する電流検出抵抗21と、本発明における電流制限制御素子としてのPNP型のトランジスタ(バイポーラトランジスタ)Q3と、図中R2で表記する第2の抵抗26と、図中R3で表記する第3の抵抗(本発明における抵抗素子)27と、図中Csで表記するコンデンサ(本発明における容量素子)28とから構成されている。
【0034】
この場合、電流検出抵抗21は入力コンデンサ8の後段側の正側電源ライン4に直列に接続されており、この電流検出抵抗21の出力コンデンサ11側の端部に後段側のパワースイッチング素子Q2の一方の主電極としてのソースが接続され、このパワースイッチング素子Q2の他方の主電極としてのドレインが出力コンデンサ11の正側電源ライン4側の端部に接続されている。
【0035】
また、トランジスタQ3の一方の主電極としてのコレクタは、後段側のパワースイッチング素子Q2のゲートに接続されており、トランジスタQ3の他方の主電極としてのエミッタは、電流検出抵抗21の入力コンデンサ8側の端部の正側電源ライン4に接続されている。前記第2の抵抗26は、後段側のパワースイッチング素子Q2のソースとゲート間に接続されており、第3の抵抗27は電流検出抵抗21のパワースイッチング素子Q2側の端部の正側電源ライン4とトランジスタQ3の制御電極としてのベースとの間に接続されている。そして、前記コンデンサ28はトランジスタQ3のベースとコレクタ間に接続されている。
【0036】
後段側の突入電流制限回路9は、後段側のパワースイッチング素子Q2のゲート(制御電極)の電圧を調整することにより、後述する如く出力コンデンサ11への突入電流(出力コンデンサ11の充電電流)を制限する。
【0037】
(6)EMCフィルタ回路15
前記EMCフィルタ回路15は、正側電源ライン4及び負側電源ライン6にそれぞれ直列接続された図中Lnで表記するノーマルモードコイル31、32(本発明におけるインダクタンス分)と、これらノーマルモードコイル31、32の後段側に接続された図中Lcで表記するコモンモードコイル33(本発明におけるインダクタンス分)から構成されている。このEMCフィルタ回路15は前段側の突入電流制限回路10の保護のために設けられている。
【0038】
そして、このEMCフィルタ回路15の後段側における正側電源ライン4に前記前段側の突入電流制限回路10が接続されており、この前段側の突入電流制限回路10の後段側の正側電源ライン4に前記前段側のパワースイッチング素子Q4が接続され、この前段側のパワースイッチング素子Q4の後段側の正側電源ライン4と負側電源ライン6間に前記EMCフィルタ回路7の平滑用コンデンサ12が接続されたかたちとなる。
【0039】
(7)前段側のパワースイッチング素子Q4
前段側のパワースイッチング素子Q4は、EMCフィルタ回路15と平滑用コンデンサ12(EMCフィルタ回路7)との間の正側電源ライン4(導通経路)を導通/遮断するスイッチング素子であり、実施例では電圧駆動型のスイッチング素子としてのP型のMOS-FETから構成されている。そして、前段側のパワースイッチング素子Q4の制御電極としてのゲートには図中R1で表記する第1の抵抗34の一端が接続されており、この第1の抵抗34の他端は負側電源ライン6に接続されている。
【0040】
(8)前段側の突入電流制限回路10
前段側の突入電流制限回路10は、図中Rsで表記する電流検出抵抗36と、本発明における電流制限制御素子としてのPNP型のトランジスタ(バイポーラトランジスタ)Q5と、図中R2で表記する第2の抵抗37と、図中R3で表記する第3の抵抗(本発明における抵抗素子)38と、図中Csで表記するコンデンサ(本発明における容量素子)39とから構成されている。
【0041】
この場合、電流検出抵抗36はコモンモードコイル33の後段側の正側電源ライン4に直列に接続されており、この電流検出抵抗36の平滑用コンデンサ12側の端部に前段側のパワースイッチング素子Q4の一方の主電極としてのソースが接続され、このパワースイッチング素子Q4の他方の主電極としてのドレインが平滑用コンデンサ12の正側電源ライン4側の端部に接続されている。
【0042】
また、トランジスタQ5の一方の主電極としてのコレクタは、前段側のパワースイッチング素子Q4のゲートに接続されており、トランジスタQ5の他方の主電極としてのエミッタは、電流検出抵抗36のコモンモードコイル33側の端部の正側電源ライン4に接続されている。前記第2の抵抗37は、前段側のパワースイッチング素子Q4のソースとゲート間に接続されており、第3の抵抗38は電流検出抵抗36のパワースイッチング素子Q4側の端部の正側電源ライン4とトランジスタQ5の制御電極としてのベースとの間に接続されている。そして、前記コンデンサ39はトランジスタQ5のベースとコレクタ間に接続されている。
【0043】
前段側の突入電流制限回路10は、前段側のパワースイッチング素子Q4のゲート(制御電極)の電圧を調整することにより、後述する如く平滑用コンデンサ12への突入電流(平滑用コンデンサ12の充電電流)を制限する。
【0044】
(9)電源入力回路1の動作
次に、
図2を参照しながら実施例の電源入力回路1の動作について説明する。先ず、バッテリ(直流電源)2が投入されたときの動作について説明する。尚、
図2中の最上段は電源入力回路1の正側電源ライン4と負側電源ライン6間の電圧、中段は前段側のパワースイッチング素子Q4及び前段側の突入電流制限回路10を接続していない場合の平滑用コンデンサ12の充電電流C1と出力コンデンサ11の充電電流C2、最下段は前段側のパワースイッチング素子Q4及び前段側の突入電流制限回路10が設けられた
図1の電源入力回路1の場合の平滑用コンデンサ12の充電電流C1と出力コンデンサ11の充電電流C2をそれぞれ示している。
【0045】
(9-1)バッテリ(直流電源)2の投入時の動作
例えば、車両のイグニッション(IG)がONされ、
図1中のスイッチ30が導通されると電源入力回路1にバッテリ(直流電源)2が投入(接続)される。
図2中の時刻t1にスイッチ30が導通されると、バッテリ2からの電流がEMCフィルタ回路15を介して電流検出抵抗36、第2の抵抗37、第1の抵抗34に流れる。
【0046】
一方、トランジスタQ5のコレクタとベース間に接続されたコンデンサ39は、スイッチ30が導通した瞬間、初期状態で電荷が蓄えられていないため、第3の抵抗38と第2の抵抗37は並列接続されたのと近い状態となる。従って、トランジスタQ5のベースには、バッテリ2の直流電圧を第1の抵抗34との直列回路で分圧された電流検出抵抗36-並列の第3の抵抗38と第2の抵抗37の直列分の電圧が印加され、この電圧はベース順方向電圧(ON電圧)を超えることは無いため、第2の抵抗37と並列の接続となる前段側のパワースイッチング素子Q4のゲート-ソース間もトランジスタQ5のベース順方向電圧を超える電圧は印加されない。
【0047】
ここで、電流検出抵抗36と、第2の抵抗37と、第3の抵抗38と、第1の抵抗34の各抵抗値は、その抵抗分圧によりトランジスタQ5のベースに印加される電圧が、使用される直流電圧の範囲内においてベース順方向電圧(ON電圧)以上となるように選択されている。また、前段側のパワースイッチング素子Q4としては、当該パワースイッチング素子Q4のゲート-ソース間の閾値電圧Vth1が、トランジスタQ5のベース順方向電圧(ON電圧)より高いものが選択されている。
【0048】
そして、パワースイッチング素子Q4のゲート-ソース間電圧は閾値電圧Vth1を超えない(ソースに対するゲートの電位が閾値Vth1以上低くならない)ので、パワースイッチング素子Q4はOFFしたままとなり、パワースイッチング素子Q4のソース-ドレイン間には電流は流れず、平滑用コンデンサ12にも充電電流は未だ流れない。
【0049】
他方、スイッチ30が導通した後、第3の抵抗38とトランジスタQ5のベースを経由して、コンデンサ39に充電が始まる。それにより、コンデンサ39の端子間の充電電圧は緩やかに上昇し、第2の抵抗37に印加される電圧がコンデンサ39の無い場合の値に徐々に近づいていく。
【0050】
ここで、第2の抵抗37と第1の抵抗34の各抵抗値は、パワースイッチング素子Q4のゲート-ソース間に印加される電圧が、使用される直流電圧の範囲内において閾値電圧Vth1以上となるように選択されているので、やがてパワースイッチング素子Q4のゲート-ソース間電圧が閾値電圧Vth1を超え(パワースイッチング素子Q4のソースに対するゲートの電圧が閾値Vth1以上低くなり)、パワースイッチング素子Q4がONし、前段側のパワースイッチング素子Q4のソース-ドレインを通して、バッテリ2から平滑用コンデンサ12に充電電流C1が徐々に流れ始める。
【0051】
更に、パワースイッチング素子Q4のソース-ドレイン間に充電電流が流れ始めることで、電流検出抵抗36の両端電圧も上昇していくが、電流検出抵抗36の両端電圧がトランジスタQ5のベース順方向電圧(ON電圧)と同じ電圧に近づくに従い、第2の抵抗37を流れる電流(コンデンサ39への充電電流)が減少していく(トランジスタQ5のベース順方向電圧から電流検出抵抗36の両端電圧を差し引いた分しか第2の抵抗37には流れないため)ことで、コンデンサ39への充電が抑えられ、前段側のパワースイッチング素子Q4のゲート-ソース間電圧の上昇は一段と緩やかになる。
【0052】
つまり、トランジスタQ5のベース-コレクタ間にコンデンサ39を挿入することで、スイッチ30が導通された直後から、トランジスタQ5がONした状態を保持したまま前段側のパワースイッチング素子Q4のゲート-ソース間電圧が徐々に上昇し、その後、後述する平滑用コンデンサ12への充電電流(突入電流)の上昇に伴う電流検出抵抗36の両端電圧の上昇に応じた円滑な電流制限動作に移行する作用となる。
【0053】
図1に示す如くトランジスタQ5のコレクタとベース間にコンデンサ39が接続されていると、前述した如くコンデンサ39の端子間の充電電圧が緩やかに上昇することで、前段側のパワースイッチング素子Q4のゲート-ソース間電圧も急激な変化とはならず、平滑用コンデンサ12への充電電流C1も立ち上がりが抑制される(
図2)。
【0054】
このようにして前段側の突入電流制限回路10により前段側のパワースイッチング素子Q4のゲート(制御電極)の電圧が調整されることで、突入電流(平滑用コンデンサ12への充電電流C1)の立ち上がりが抑制されるので、EMCフィルタ回路15にノーマルモードコイル31、32が構成されていても、充電電流C1の振動現象は抑制され、入力電流のピーク値が所定の制限電流値を超えてしまうことが解消される。
【0055】
ここで、後述するエアコンスイッチ(AC)がOFFされている場合、ON/OFF信号22から出力される信号はOFFであり、後段側のパワースイッチング素子Q2もOFFしているので、平滑用コンデンサ12の充電が完了した時点で充電電流C1は流れなくなる(
図2)。
【0056】
尚、パワースイッチング素子Q4のゲート-ソース間(第2の抵抗37と並列)にコンデンサを挿入することでも、突入電流による充電電流の振動現象を抑制することが可能であるが、同じ効果を得るためにはコンデンサ39をトランジスタQ5のベース-コレクタ間に挿入する場合に比して数十倍のコンデンサ容量が必要となる。
【0057】
これは前段側のパワースイッチング素子Q4のゲート-ソース間にコンデンサを挿入した場合、挿入したコンデンサと第1の抵抗34との時定数でコンデンサが充電されることで、パワースイッチング素子Q4のゲート-ソース間の電圧も徐々に上昇するが、電流検出抵抗36の両端電圧がトランジスタQ5のベース順方向電圧に達して初めて突入電流制限動作が開始され、また、パワースイッチング素子Q4のゲート-ソース間電圧が閾値Vth1を超えるとドレイン電流が一気に流れるため、充電電流の振動現象を効果的に抑制するには、第1の抵抗34との時定数を十分に大きく、即ち、挿入するコンデンサの容量を十分に大きくする必要があるためである。
【0058】
そして、イグニッション(IG)がOFFされ、スイッチ30が遮断された後も、パワースイッチング素子Q4のゲート-ソース間に挿入したコンデンサの容量の大きさ故に、電荷が第2の抵抗37を介して放電され、パワースイッチング素子Q4のゲート-ソース間の閾値電圧Vth1を下回り、パワースイッチング素子Q4がOFFするまで、不要に長い時間出力電圧が保持されることになるが、コンデンサ39をトランジスタQ5のベースとコレクタ間に使用することで、コンデンサ39の容量の小ささから放電時間が短くなり、係る問題も解消されることになる。
【0059】
前段側のパワースイッチング素子Q4のソース-ドレイン間に充電電流が流れると、電流検出抵抗36の両端電圧が上昇するので、トランジスタQ5のベースバイアス電圧が上昇してトランジスタQ5がON状態となる。トランジスタQ5がONすると、トランジスタQ5のエミッタ-コレクタに電流が流れる。この電流は第1の抵抗34に流れるので、パワースイッチング素子Q4のゲートの電圧が上昇し、それによって、ソースからドレインに流れる平滑用コンデンサ12への充電電流C1を制限する。つまり、電流検出抵抗36に流れる電流が所定の値を超えない定電流動作となり、前段側のパワースイッチング素子Q4のドレイン電流が制限される。
【0060】
ここで、
図1に示す如く前段側のパワースイッチング素子Q4や突入電流制限回路10、EMCフィルタ回路15が接続されていない場合、イグニッション(IG)がONされ、スイッチ30が導通した直後、バッテリ2から平滑用コンデンサ12に充電電流が突入電流として流れ、電流の立ち上がりも急激なものとなり、充電電流のピーク値が所定の制限電流値を超えてしまうが(
図2の中段に示す)、
図1の回路によれば係る問題を解消することができる(
図2の最下段に示す)。
【0061】
(9-2)スイッチ回路23の導通時の動作
次に、上記のようにバッテリ2が投入され、平滑用コンデンサ12に充電された後の動作について説明する。
図2中の時刻t2に車両のエアコンスイッチ(AC)がONされ、電動圧縮機が起動されるとき、ON/OFF信号回路22から出力される信号がOFFからONに切り替わる。
【0062】
ON/OFF信号回路22から出力される信号がONになると、このON信号出力により、トランジスタQ1(NPN型バイポーラトランジスタ)がON状態となり、スイッチ回路23が導通する。トランジスタQ1がON状態になると、トランジスタQ1のコレクタは第1の抵抗24を介して後段側のパワースイッチング素子Q2のゲートに接続されているので、トランジスタQ1がONした後、バッテリ2からの電流がEMCフィルタ回路7を介して電流検出抵抗21、第2の抵抗26、第1の抵抗24、トランジスタQ1のコレクタに流れる。
【0063】
一方、トランジスタQ3のコレクタとベース間に接続されたコンデンサ28は、トランジスタQ1がONした瞬間、初期状態で電荷が蓄えられていないため、第3の抵抗27と第2の抵抗26は並列接続されたのと近い状態となる。従って、トランジスタQ3のベースには、バッテリ2の直流電圧を第1の抵抗24との直列回路で分圧された電流検出抵抗21-並列の第3の抵抗27と第2の抵抗26の直列分の電圧が印加され、この電圧はベース順方向電圧(ON電圧)を超えることは無いため、第2の抵抗26と並列の接続となる後段側のパワースイッチング素子Q2のゲート-ソース間もトランジスタQ3のベース順方向電圧を超える電圧は印加されない。
【0064】
ここで、電流検出抵抗21と、第2の抵抗26と、第3の抵抗27と、第1の抵抗24の各抵抗値は、その抵抗分圧によりトランジスタQ3のベースに印加される電圧が、使用される直流電圧の範囲内においてベース順方向電圧(ON電圧)以上となるように選択されている。また、後段側のパワースイッチング素子Q2としては、当該パワースイッチング素子Q2のゲート-ソース間の閾値電圧Vth2が、トランジスタQ3のベース順方向電圧(ON電圧)より高いものが選択されている。
【0065】
そして、後段側のパワースイッチング素子Q2のゲート-ソース間電圧は閾値電圧Vth2を超えない(ソースに対するゲートの電位が閾値Vth2以上低くならない)ので、後段側のパワースイッチング素子Q2はOFFしたままとなり、パワースイッチング素子Q2のソース-ドレイン間には電流は流れず、出力コンデンサ11にも充電電流は未だ流れない。
【0066】
他方、トランジスタQ1がONした後、第3の抵抗27とトランジスタQ3のベースを経由して、コンデンサ28に充電が始まる。それにより、コンデンサ28の端子間の充電電圧は緩やかに上昇し、第2の抵抗26に印加される電圧がコンデンサ28の無い場合の値に徐々に近づいていく。ここで、第2の抵抗26と第1の抵抗24の各抵抗値は、後段側のパワースイッチング素子Q2のゲート-ソース間に印加される電圧が、使用される直流電圧の範囲内において閾値電圧Vth2以上となるように選択されているので、やがて後段側のパワースイッチング素子Q2のゲート-ソース間電圧が閾値電圧Vth2を超え(パワースイッチング素子Q2のソースに対するゲートの電圧が閾値Vth2以上低くなり)、後段側のパワースイッチング素子Q2がONし、パワースイッチング素子Q2のソース-ドレインを通して、バッテリ2から出力コンデンサ11に充電電流C2が徐々に流れ始める。
【0067】
更に、後段側のパワースイッチング素子Q2のソース-ドレイン間に充電電流C2が流れ始めることで、電流検出抵抗21の両端電圧も上昇していくが、電流検出抵抗21の両端電圧がトランジスタQ3のベース順方向電圧(ON電圧)と同じ電圧に近づくに従い、第2の抵抗26を流れる電流(コンデンサ28への充電電流)が減少していく(トランジスタQ3のベース順方向電圧から電流検出抵抗21の両端電圧を差し引いた分しか第2の抵抗26には流れないため)ことで、コンデンサ28への充電が抑えられ、後段側のパワースイッチング素子Q2のゲート-ソース間電圧の上昇は一段と緩やかになる。
【0068】
つまり、トランジスタQ3のベース-コレクタ間にコンデンサ28を挿入することで、トランジスタQ1がONした直後から、トランジスタQ3がONした状態を保持したまま後段側のパワースイッチング素子Q2のゲート-ソース間電圧が徐々に上昇し、その後、後述する出力コンデンサ11への充電電流C2(突入電流)の上昇に伴う電流検出抵抗21の両端電圧の上昇に応じた円滑な電流制限動作に移行する作用となる。
【0069】
図1に示す如くトランジスタQ3のコレクタとベース間にコンデンサ28が接続されていると、前述した如くコンデンサ28の端子間の充電電圧が緩やかに上昇することで、後段側のパワースイッチング素子Q2のゲート-ソース間電圧も急激な変化とはならず、出力コンデンサ11への充電電流C2も立ち上がりが抑制される(
図2)。
【0070】
このようにして後段側の突入電流制限回路9により後段側のパワースイッチング素子Q2のゲート(制御電極)の電圧が調整され、突入電流(出力コンデンサ11への充電電流C2)の立ち上がりが抑制されるので、EMCフィルタ回路7にノーマルモードコイル13、14が構成されていても、充電電流C2の振動現象は抑制され、入力電流のピーク値が所定の制限電流値を超えてしまうことが解消される。
【0071】
尚、後段側のパワースイッチング素子Q2のゲート-ソース間(第2の抵抗26と並列)にコンデンサを挿入することでも、突入電流による入力電流の振動現象を抑制することが可能であるが、同じ効果を得るためにはコンデンサ28をトランジスタQ3のベース-コレクタ間に挿入する場合に比して数十倍のコンデンサ容量が必要となる。
【0072】
これは後段側のパワースイッチング素子Q2のゲート-ソース間にコンデンサを挿入した場合、挿入したコンデンサと第1の抵抗24との時定数でコンデンサが充電されることで、パワースイッチング素子Q2のゲート-ソース間の電圧も徐々に上昇するが、電流検出抵抗21の両端電圧がトランジスタQ3のベース順方向電圧に達して初めて突入電流制限動作が開始され、また、パワースイッチング素子Q2のゲート-ソース間電圧が閾値Vth2を超えるとドレイン電流が一気に流れるため、入力電流の振動現象を効果的に抑制するには、第1の抵抗24との時定数を十分に大きく、即ち、挿入するコンデンサの容量を十分に大きくする必要があるためである。
【0073】
そして、ON/OFF信号回路22からOFF信号が出力された後も、後段側のパワースイッチング素子Q2のゲート-ソース間に挿入したコンデンサの容量の大きさ故に、電荷が第2の抵抗26を介して放電され、後段側のパワースイッチング素子Q2のゲート-ソース間の閾値電圧Vth2を下回り、パワースイッチング素子Q2がOFFするまで、不要に長い時間出力電圧が保持されることになるが、コンデンサ28をトランジスタQ3のベースとコレクタ間に使用することで、コンデンサ28の容量の小ささから放電時間が短くなり、係る問題も解消されることになる。
【0074】
後段側のパワースイッチング素子Q2のソース-ドレイン間に充電電流C2が流れると、電流検出抵抗21の両端電圧が上昇するので、トランジスタQ3のベースバイアス電圧が上昇してトランジスタQ3がON状態となる。トランジスタQ3がONすると、トランジスタQ3のエミッタ-コレクタに電流が流れる。この電流は第1の抵抗24を経てトランジスタQ1のコレクタに流れるので、後段側のパワースイッチング素子Q2のゲートの電圧が上昇し、それによって、ソースからドレインに流れる出力コンデンサ11への充電電流を制限する。つまり、電流検出抵抗21に流れる電流が所定の値を超えない定電流動作となり、パワースイッチング素子Q2のドレイン電流が制限される。
【0075】
ここで、トランジスタQ3のコレクタとベース間にコンデンサ28が接続されていない場合、時刻t2にON/OFF信号回路22から出力される信号がOFFからONになり、トランジスタQ1がONした直後、第2の抵抗26の両端電圧が後段側のパワースイッチング素子Q2のゲート-ソース間電圧の閾値電圧Vth2を超えるので、パワースイッチング素子Q2がONし、パワースイッチング素子Q2のソース-ドレインを通して、バッテリ2から出力コンデンサ11に充電電流が突入電流として流れ、電流の立ち上がりも急激なものとなる。
【0076】
急激な立ち上がりの突入電流が流れると、入力部にEMCフィルタ回路7など図中Lnで表記するノーマルモードコイル13、14が構成される場合、入力コンデンサ8との共振により、入力電流が振動波形となり、入力電流のピーク値が所定の制限電流値を超えてしまうが(直流電源からの入力電流経路に寄生インダクタンスが含まれる場合も同様である)、
図1の回路によれば係る問題を解消することができる。
【0077】
以上詳述した如く本発明によれば、バッテリ(直流電源)2から負荷3への電流を制御する電源入力回路1において、平滑用コンデンサ12を有するEMCフィルタ回路7と、このEMCフィルタ回路7と負荷3の間の導通経路を導通/遮断する後段側のパワースイッチング素子Q2と、この後段側のパワースイッチング素子Q2をON/OFFするためのスイッチ回路23と、後段側のパワースイッチング素子Q2のゲート(制御電極)の電圧を調整することにより、突入電流を制限する後段側の突入電流制限回路9を備えているので、スイッチ回路23が導通したときの突入電流の立ち上がりが後段側の突入電流制限回路9により抑制される。
【0078】
加えて、EMCフィルタ回路7とバッテリ2の間の導通経路を導通/遮断する前段側のパワースイッチング素子Q4と、この前段側のパワースイッチング素子Q4のゲート(制御電極)の電圧を調整することにより、バッテリ2が投入されたときの突入電流を制限する前段側の突入電流制限回路10を備えているので、バッテリ2が投入されたときの突入電流の立ち上がりも前段側の突入電流制限回路10により抑制されるようになる。
【0079】
これにより、バッテリ2が投入されて平滑用コンデンサ12が充電される際に発生する過大な突入電流を制限することができるようになり、ピーク値が要求される制限電流値を超えてしまう不都合を効果的に解消することが可能となる。
【0080】
特に、実施例では各突入電流制限回路9、10が、突入電流により両端に発生する電圧で電流を検出する電流検出抵抗21、36と、コレクタがパワースイッチング素子Q2、Q4のゲートに接続されたトランジスタQ3、Q5をそれぞれ有し、各トランジスタQ3、Q5は、当該トランジスタQ3、Q5のベースの電圧が電流検出抵抗21、36の両端に誘起される電圧に応じて変化し、各パワースイッチング素子Q2、Q4のゲートの電圧をそれぞれ調整して定電流動作を行わせると共に、各電流検出抵抗21、36の一端と各トランジスタQ3、Q5のベース間には第3の抵抗27、38がそれぞれ接続され、各トランジスタQ3、Q5のベースとコレクタ間には、コンデンサ28、39がそれぞれ接続される構成としているので、インダクタンス分を有するEMCフィルタ回路7、15が設けられる場合であっても、電流の振動現象を抑制してピーク値を効果的に制限することが可能となる。
【0081】
また、実施例では前段側のパワースイッチング素子Q4のゲートと、当該パワースイッチング素子Q4と接続されない側のバッテリ2間に第1の抵抗34が接続され、スイッチ回路23は、後段側のパワースイッチング素子Q2のゲートと、当該パワースイッチング素子Q2と接続されない側のバッテリ2間に、もう一つの第1の抵抗24を介して接続され、各パワースイッチング素子Q4、Q2のソースとゲート間に、第2の抵抗37、26がそれぞれ接続される構成とされ、バッテリ2が投入された直後、前段側のパワースイッチング素子Q4のゲートの電圧が、当該パワースイッチング素子Q4のON電圧に到達せず、前段側の突入電流制限回路10のトランジスタQ5のベースの電圧が、当該トランジスタQ5のON電圧に達すると共に、スイッチ回路23が導通した直後、後段側のパワースイッチング素子Q2のゲートの電圧が、当該後段側のパワースイッチング素子Q2のON電圧に到達せず、後段側の突入電流制限回路9のトランジスタQ3のベースの電圧が、当該トランジスタQ3のON電圧に達するようにすることで、バッテリ2が投入された際と、スイッチ回路23が導通した際の各突入電流の立ち上がりを効果的に抑制することができるようになる。
【0082】
更に、実施例の如くバッテリ2と前段側の突入電流制限回路10の間に、EMCフィルタ回路15を接続することで、前段側の突入電流制限回路10の各素子を保護することができるようになる。
【0083】
特に、実施例の回路構成によれば、各トランジスタQ3、Q5のベースとコレクタ間に接続するコンデンサ28、39が小さい容量のものであっても、各突入電流のピーク値を所定の電流値に効果的に制限できるようになる。これにより、電源OFFの信号に対して過剰な遅れを生ずること無く負荷3への電源供給を停止できるようになるので、実施例の如き車両用インバータ一体型電動圧縮機において、極めて好適なものとなる。
【0084】
尚、実施例では車両用インバータ一体型電動圧縮機の制御回路を構成するDC/DCコンバータ(負荷)を例にとって説明したが、請求項7以外の発明ではそれに限らず、直流電源から負荷への電流を制御するもの全般に本発明は有効である。
【0085】
また、実施例ではパワースイッチング素子Q2、Q4としてP型のMOS-FETを採用したが、パワースイッチング素子Q2、Q4やトランジスタQ1(NPN型)、Q3、Q5(PNP型)の極性は実施例に限定されるものでは無く、接続箇所を負側電源ライン6として逆の極性の素子を使用しても実現可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 電源入力回路
2 バッテリ(直流電源)
3 DC/DCコンバータ(負荷)
4 正側電源ライン
6 負側電源ライン
7 EMCフィルタ回路(フィルタ回路)
9 後段側の突入電流制限回路
10 前段側の突入電流制限回路
11 出力コンデンサ
15 EMCフィルタ回路(もう一つのフィルタ回路)
21、36 電流検出抵抗
23 スイッチ回路
24、34 第1の抵抗
26、37 第2の抵抗
27、38 第3の抵抗(抵抗素子)
28、39 コンデンサ(容量素子)
Q1 トランジスタ
Q2 後段側のパワースイッチング素子
Q3、Q5 トランジスタ(電流制限制御素子)
Q4 前段側のパワースイッチング素子