(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046172
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】無線通信装置およびその制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20240327BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20240327BHJP
H04B 17/24 20150101ALI20240327BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20240327BHJP
H04W 88/10 20090101ALI20240327BHJP
H04W 76/10 20180101ALI20240327BHJP
H04W 84/10 20090101ALN20240327BHJP
【FI】
H04B7/06 956
H04B7/08 804
H04B17/24
H04W16/28
H04W88/10
H04W76/10
H04W84/10 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151404
(22)【出願日】2022-09-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5Gに向けたテラヘルツ帯を活用した端末拡張型無線通信システム実現のための研究開発 研究開発項目1 端末拡張のためのテラヘルツ帯RF構成技術 副題:Beyond5Gに向けたテラヘルツ帯を活用するユーザセントリックアーキテクチャ実現に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 竜也
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA01
5K067DD34
5K067EE02
5K067EE25
5K067EE56
5K067JJ21
5K067KK02
(57)【要約】
【課題】無線通信における初期アクセスを高速化する。
【解決手段】無線通信装置は、マルチビームアンテナを利用する第1の通信規格に基づく無線通信を行う第1の通信手段と、第1の通信規格とは異なる第2の通信規格に基づく無線通信を行う第2の通信手段と、を有する。無線通信装置は、第1の通信手段が初期アクセス動作を実行する期間に、第2の通信手段を介して通信接続している相手装置において利用されることになる設定情報を、第2の通信手段を介して相手装置に送信する送信手段と、第1の通信手段が初期アクセス動作を実行した期間に相手装置において当該初期アクセス動作に関して得られた相手装置側情報を受信する受信手段と、相手装置側情報と、第1の通信手段が実行した初期アクセス動作に関する自装置側情報と、に基づいて、第1の通信手段が自装置マルチビームアンテナで使用する自装置側ビーム設定と、相手装置が相手装置マルチビームアンテナで使用する相手装置側ビーム設定と、を決定する決定手段と、をさらに有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチビームアンテナを利用する第1の通信規格に基づく無線通信を行う第1の通信手段と、
前記第1の通信規格とは異なる第2の通信規格に基づく無線通信を行う第2の通信手段と、
前記第1の通信手段が初期アクセス動作を実行する期間に、前記第2の通信手段を介して通信接続している相手装置において利用されることになる設定情報を、前記第2の通信手段を介して前記相手装置に送信する送信手段と、
前記第1の通信手段が前記初期アクセス動作を実行した期間に前記相手装置において該初期アクセス動作に関して得られた相手装置側情報を受信する受信手段と、
前記相手装置側情報と、前記第1の通信手段が実行した前記初期アクセス動作に関する自装置側情報と、に基づいて、前記第1の通信手段が自装置マルチビームアンテナで使用する自装置側ビーム設定と、前記相手装置が相手装置マルチビームアンテナで使用する相手装置側ビーム設定と、を決定する決定手段と、
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記無線通信装置と前記相手装置とは時刻同期されており、
前記自装置側情報は、前記初期アクセス動作を実行した際の前記自装置マルチビームアンテナの送信ビーム設定と時刻情報とを関連づけた1以上のレコードを含み、
前記相手装置側情報は、前記初期アクセス動作を実行した際の前記相手装置マルチビームアンテナの受信ビーム設定と時刻情報と受信電力情報とを関連づけた1以上のレコードを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記自装置側情報に含まれるレコードと前記相手装置側情報に含まれるレコードとを前記時刻情報に基づいて結合し、前記受信電力情報が最大となる前記送信ビーム設定と前記受信ビーム設定との組み合わせに基づいて、前記自装置側ビーム設定と前記相手装置側ビーム設定とを決定する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記第2の通信規格はBluetooth(登録商標)規格であり、
前記無線通信装置と前記相手装置とはペアリングされており、
前記無線通信装置と前記相手装置とは前記ペアリングの際に時刻同期される
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記無線通信装置は、前記ペアリングの際に、前記相手装置から前記相手装置マルチビームアンテナで利用可能なビーム設定の個数に関する情報を取得する
ことを特徴とする請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記自装置マルチビームアンテナはM個(Mは正整数)の異なるビーム設定が可能であり、
前記第1の通信手段は、前記初期アクセス動作において、m個(mは1以上M以下の正整数)の異なるビーム設定を順次切り替えてビーム掃引を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記相手装置マルチビームアンテナはN個(Nは正整数)の異なるビーム設定が可能であり、
前記第1の通信手段は、前記ビーム掃引を、前記相手装置マルチビームアンテナにおけるn個(nは1以上N以下の正整数)の異なるビーム設定それぞれに対して行う
ことを特徴とする請求項6に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記ビーム掃引におけるビーム設定の切り替え速度は、前記無線通信装置と前記相手装置との間の時刻同期の精度に依存する
ことを特徴とする請求項6に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記第1の通信規格は、テラヘルツ帯の電波を用いる通信規格である
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項10】
マルチビームアンテナを利用する第1の通信規格に基づく無線通信を行う第1の通信手段と、前記第1の通信規格とは異なる第2の通信規格に基づく無線通信を行う第2の通信手段と、を有する無線通信装置の制御方法であって、
前記第1の通信手段が初期アクセス動作を実行する期間に、前記第2の通信手段を介して通信接続している相手装置において利用されることになる設定情報を、前記第2の通信手段を介して前記相手装置に送信する送信工程と、
前記第1の通信手段が前記初期アクセス動作を実行した期間に前記相手装置において該初期アクセス動作に関して得られた相手装置側情報を受信する受信工程と、
前記相手装置側情報と、前記第1の通信手段が実行した前記初期アクセス動作に関する自装置側情報と、に基づいて、前記第1の通信手段が自装置マルチビームアンテナで使用する自装置側ビーム設定と、前記相手装置が相手装置マルチビームアンテナで使用する相手装置側ビーム設定と、を決定する決定工程と、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
マルチビームアンテナを利用する第1の通信規格に基づく無線通信を行う第1の通信部と、前記第1の通信規格とは異なる第2の通信規格に基づく無線通信を行う第2の通信部と、に接続されたコンピュータに、請求項10に記載の制御方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信における初期アクセス動作の高速化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP(登録商標))において開発が続けられている5Gを更に高度化したBeyond5Gや6G(B5G/6G)の検討が始まってきている。B5G/6Gでは、より高速な通信を実現すべく、現在無線通信に使用されている周波数帯より高いテラヘルツ帯の利用も検討されている。一例として、ユーザ端末と周辺デバイス(ウェアラブルデバイス等)をテラヘルツ帯で接続する「仮想化端末」が提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】KDDI、「B5G/6Gホワイトペーパー 2.0.1版」、2021年10月、第43頁~第45頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、テラヘルツ帯は、電波の直進性が高く伝搬損失が大きいといった性質があり、送受信ともに高利得・狭ビームなマルチビームアンテナの利用が想定される。マルチビームアンテナを用いて通信を確立するには、送受信の双方が最適なビームとなるよう制御が必要である。そのため、マルチビームアンテナを用いた通信の初期アクセスに、無指向性のアンテナを前提とした既存の無線通信における手順(例えばランダムアクセス手順)を用いると、通信を確立するまでに長い時間を要することになる。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、無線通信における初期アクセス動作を高速化する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の問題点を解決するため、本発明に係る無線通信装置は以下の構成を備える。すなわち、無線通信装置は、
マルチビームアンテナを利用する第1の通信規格に基づく無線通信を行う第1の通信手段と、
前記第1の通信規格とは異なる第2の通信規格に基づく無線通信を行う第2の通信手段と、
前記第1の通信手段が初期アクセス動作を実行する期間に、前記第2の通信手段を介して通信接続している相手装置において利用されることになる設定情報を、前記第2の通信手段を介して前記相手装置に送信する送信手段と、
前記第1の通信手段が前記初期アクセス動作を実行した期間に前記相手装置において該初期アクセス動作に関して得られた相手装置側情報を受信する受信手段と、
前記相手装置側情報と、前記第1の通信手段が実行した前記初期アクセス動作に関する自装置側情報と、に基づいて、前記第1の通信手段が自装置マルチビームアンテナで使用する自装置側ビーム設定と、前記相手装置が相手装置マルチビームアンテナで使用する相手装置側ビーム設定と、を決定する決定手段と、
を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、無線通信における初期アクセス動作を高速化する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】UEおよびPDを含む無線通信システムの概略図である。
【
図2】UEおよびPDのハードウェア構成を示す図である。
【
図5】テラヘルツ通信を開始する際の動作シーケンスを示す図である。
【
図6】テラヘルツ通信を開始する際に生成されるデータを示す図である。
【
図7】ランダムアクセス手順による初期アクセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
(第1実施形態)
本発明に係る無線通信装置の第1実施形態として、互いに異なる2つの通信規格に基づく通信が可能な無線通信装置を例に挙げて以下に説明する。
【0011】
<システムの全体構成>
図1は、ユーザ端末(UE)101と周辺デバイス(PD)102とを含む無線通信システム100の概略図である。ここでは、UE101としてスマートフォン、PD102としてウェアラブル端末であるスマートウォッチを想定しているが、これらのデバイスに限定されない。詳細は後述するが、UE101とPD102は、Bluetooth(登録商標)(以下ではBTと呼ぶ)通信およびテラヘルツ通信が可能なように構成されている。
【0012】
テラヘルツ通信においては、UE101およびPD102の双方において、送受信ともに高利得・狭ビーム(例えばビーム幅10°未満)なマルチビームアンテナが利用される。例えば、テラヘルツ通信用のアンテナは、所定の複数の方向に指向性を切り替え可能に構成されており、
図1では、UE101では32方向の狭ビーム、PD102では12方向の狭ビームが例示されている。ここでは、説明を簡単にするために、それぞれの装置において、送信と受信で同様の特性の狭ビームが利用可能であるとする。
【0013】
UE101とPD102との間でテラヘルツ通信を行う際には、それぞれの装置が1方向の狭ビームを選択して通信することになる。すなわち、テラヘルツ通信によるデータ送受信を開始するためには、初期アクセス動作においてビームペア(UE101が利用する狭ビームとPD102が利用する狭ビームのペア)を決定する必要がある。
【0014】
一方、BT通信においては、無指向性アンテナが用いられる。そのため、UE101およびPD102の双方において、通信のためのビーム制御は不要である。
【0015】
<ハードウェア構成>
図2は、UE101のハードウェア構成を示す図である。なお、PD102においても、通信に関係するハードウェア構成は共通であるため、以下では、UE101についてのみ説明する。
【0016】
UE101は、一例において、プロセッサ201、ROM202、RAM203、記憶装置204、第1通信回路205、第2通信回路206を含んで構成される。プロセッサ201は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、後述の各処理を実行する。
【0017】
ROM202は、UE101が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM203は、プロセッサ201がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置204は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。
【0018】
第1通信回路205は、通信の確立にビーム制御が必要となる第1の通信規格に準拠した無線通信用の回路によって構成される。そのため、第1通信回路205は、マルチビームアンテナ(不図示)のビーム制御のための回路を含んでいる。以下の説明では第1の通信規格として、現在検討中のテラヘルツ通信規格を例に挙げて説明するが、初期アクセス動作にビーム制御が必要となる任意の通信規格を適用することが可能である。
【0019】
第2通信回路206は、任意の第2の通信規格に準拠した無線通信用の回路によって構成される。ただし、常時通信が確立される、あるいは、短い初期アクセス動作時間で通信を確立可能(例えば、初期アクセス動作にビーム制御が不要)な通信規格であることが望ましい。以下の説明では第2の通信規格として、BTを例に挙げて説明するが、例えば、無線LAN(IEEE802.11シリーズ)規格、や無線WAN(4G、5Gなど)を用いることも可能である。
【0020】
<UE101の機能構成>
図3は、UE101の機能構成を示す図である。UE101は、その機能として、例えば、第1通信制御部301、第2通信制御部302、制御部303、記憶部304、表示部305を有する。なお、
図3では、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、UE101が有しうる他の各種機能については図示を省略している。例えばUE101がスマートフォンである場合、各種入力機能(GPS受信機、カメラ、マイク)や各種出力機能(バイブレーション、スピーカーなど)など他の機能を当然に有する。
【0021】
また、
図3の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、
図3の各機能は、例えば、プロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよい。また、例えば第1通信回路205および第2通信回路206の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。
【0022】
第1通信制御部301は、第1通信回路205を介した無線通信を制御する。具体的には、制御部303からの指示に従って、第1の通信規格に準拠した無線通信を実行する。特に、相手装置(ここではPD102)との間で通信が確立されていない場合は、初期アクセス動作を実行し、相手装置との通信に使用するビームIDを決定する。ビームIDはビーム方向に対応するインデックスである。例えば、
図1に示されるようなUE101の32方向の狭ビームに対してビームID=#1~#32が設定されている。相手装置との通信に使用するビームIDが決定された後、相手装置とのデータ送受信が実行されることになる。
【0023】
第2通信制御部302は、第2通信回路206を介した無線通信を制御する。具体的には、制御部303からの指示に従って、第2の通信規格に準拠した無線通信を実行する。上述したように、第2通信回路206を介した無線通信においては、無指向性アンテナが用いられるため、通信のためのビーム制御は不要である。また、BT通信においては、予めペアリング(相手装置の登録)を行っていれば、相手装置(ここではPD102)が通信圏内に存在すれば直ちにデータの送受信が可能である。
【0024】
制御部303は、第1通信制御部301および第2通信制御部302の動作を制御する。具体的には、表示部302に表示されたグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を介して、ユーザから、相手装置とのテラヘルツ通信を開始するための指示を受け付けると、第2通信制御部302を介して相手装置に設定情報を送信し、第1通信制御部301に対して初期アクセス動作を開始するよう指示する。設定情報とは、相手装置がテラヘルツ通信の初期アクセス動作を行う際に用いる情報である。そして、初期アクセス動作により得られた情報(UE101およびPD102の両方で得られた結果)に基づいて、ビームペア(UE101が利用するビームIDと相手装置が利用するビームIDのペア)を決定し、決定されたビームペアを用いてテラヘルツ通信によるデータ送受信を開始する。詳細については、
図5および
図6を参照して後述する。
【0025】
記憶部304は、制御部303が第1通信制御部301および第2通信制御部302の動作を制御する際の各種情報を記憶する。詳細については、
図5および
図6を参照して後述する。表示部305は、ユーザからユーザ入力を受け付け、ユーザに各種情報を提供するGUIを表示する。例えばUE101がスマートフォンである場合、テラヘルツ通信を使用する特定のアプリケーションや通信設定のアプリケーションなどのGUIを表示する。
【0026】
<PD102の機能構成>
図4は、PD102の機能構成を示す図である。PD102は、その機能として、例えば、第1通信制御部401、第2通信制御部402、制御部403、記憶部404を有する。なお、
図4では、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、PD102が有しうる他の各種機能については図示を省略している。例えばPD102がスマートウォッチである場合、各種入力機能(GPS受信機、生体センサ)や各種出力機能(バイブレーション、スピーカーなど)など他の機能を当然に有する。なお、UE101(
図3)とは異なり
図4においては表示部が示されていないが、これは通信に関係する機能として表示部が必須ではないことを暗示的に示すのみである。すなわち、周辺デバイス(スマートウォッチ)としての表示部は当然に有し得る。
【0027】
また、
図4の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、
図4の各機能は、例えば、プロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよい。また、例えば第1通信回路205および第2通信回路206の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。
【0028】
第1通信制御部401は、第1通信回路205を介した無線通信を制御する。具体的には、制御部403からの指示に従って、第1の通信規格に準拠した無線通信を実行する。特に、UE101から第2通信回路206を介して受信した設定情報に従って、初期アクセス動作を実行し、結果を記憶部404に格納する。また、UE101から第2通信回路206を介して受信したビームIDに従って、相手装置(ここではUE101)とのテラヘルツ通信によるデータ送受信を実行する。ビームIDはビーム方向に対応するインデックスである。例えば、
図1に示されるようなPD102の12方向の狭ビームに対してビームID=#1~#12が設定されている。
【0029】
第2通信制御部402は、第2通信回路206を介した無線通信を制御する。具体的には、制御部403からの指示に従って、第2の通信規格に準拠した無線通信を実行する。上述したように、第2通信回路206を介した無線通信においては、無指向性アンテナが用いられるため、通信のためのビーム制御は不要である。また、BT通信においては、予めペアリング(相手装置の登録)を行っていれば、相手装置(ここではUE101)が通信圏内に存在すれば直ちにデータの送受信が可能である。
【0030】
制御部403は、第1通信制御部401および第2通信制御部402の動作を制御する。具体的には、UE101から第2通信回路206を介して受信した設定情報に従って、第1通信制御部401に初期アクセス動作を実行させ、結果を記憶部404に格納させる。そして、記憶部404に格納された結果を、第2通信回路206を介してUE101に送信する。また、UE101から第2通信回路206を介して受信したビームIDに従って、第1通信制御部401に相手装置とのテラヘルツ通信によるデータ送受信を開始させる。詳細については、
図5および
図6を参照して後述する。
【0031】
記憶部404は、制御部403が第1通信制御部401および第2通信制御部402の動作を制御する際の各種情報を記憶する。詳細については、
図5および
図6を参照して後述する。
【0032】
<装置の動作>
まず、マルチビームアンテナを用いた通信の初期アクセス動作に、無指向性のアンテナを前提とした既存の無線通信で用いられるランダムアクセス手順を適用した場合について説明する。
図7は、初期アクセスにランダムアクセス手順を用いた場合の動作を示す図である。図示されるように、例えば、ユーザ指示をUE701およびPD702の双方に対して入力することにより、初期アクセス動作が開始されることになる。しかしながら、UE701およびPD702は両方とも相手装置の情報を有さないため、それぞれの装置が自律的な動作としてランダムなタイミングでビーム掃引(ビーム方向の順次切り替え)を実行することになる。そして、双方の装置が、ビーム掃引での送信動作とビーム掃引での受信動作を行うことになる。
【0033】
そのため、UE701が利用する送信(または受信)ビーム方向とPD702が利用する受信(または送信)ビーム方向のペア(ビームペア)が、偶然適切な組み合わせになるまで、ビーム掃引が繰り返し試行されることになる。特に、マルチビームアンテナにおけるビーム方向の数が多くなればなるほど、偶然適切な組み合わせになる確率が低くなり、それだけ初期アクセス動作に時間がかかる(例えば数分)ことになる。さらに、初期アクセス動作の時間が長引くと、その間に(例えばユーザの位置姿勢の変化により)UE701とPD702との間の相対的な位置関係が変化し、ビームペアが適切な組み合わせになるのにさらに時間を要することになる。
【0034】
続いて、本発明の無線通信システムにおいて実行される処理の流れの例について説明する。
図5は、UE101とPD102とがテラヘルツ通信を開始する際の動作シーケンスを示す図である。また、
図6は、テラヘルツ通信を開始する際に生成されるデータを示す図である。S502~S508が初期アクセス動作に対応し、S510以降がテラヘルツ通信による実際の通信に対応する。また、詳細は後述するがS502~S507は繰り返し実行されるため、この部分を以下では初期アクセスループと呼ぶ。
【0035】
なお、以下では、説明を簡単にするために、テラヘルツ通信開始のトリガとなるユーザ入力(GUI操作)可能なUE101が処理を開始する例について説明する。ただし、上述したように、通信機能に関してはUE101とPD102との間で本質的な差はなく、どちらの装置から処理を開始してもよい。
【0036】
ステップS501では、UE101とPD102との間でBTのペアリングを行う。上述したように、ペアリングを行っていれば、相手装置が通信圏内に存在すれば直ちにBT通信によるデータの送受信が可能である。また、UE101とPD102との間で時刻の同期をとるように制御する。併せて、UE101とPD102とは互いに相手装置におけるテラヘルツ通信に関する能力情報を取得するとよい。本実施形態では、相手装置のビームIDの範囲に関する情報を取得するとする。それぞれの装置が利用可能な周波数幅の情報などを追加で取得してもよい。
【0037】
ステップS502では、UE101は、(今回の)初期アクセスループでPD102が使用するビームID(BeamID@PD)を決定する。上述したように、
図1の例では、PD102のビームIDの範囲は#1~#12であり、この中から、1つのビームIDを選択する。
【0038】
上述したように初期アクセスループは繰り返す実行されるが、PD102が使用するビームIDはそれぞれ異なるように決定される。ここでは、
図1に示される12方向のビームを上から順番に順次選択し決定する例について説明するが、他の決定方法によりPD102が使用するビームIDを決定してもよい。
【0039】
ステップS503では、UE101は、BT通信を介して、S502で決定したビームIDをPD102に通知する。ステップS504では、PD102は、BT通信を介して通知されたビームIDを第1通信制御部401に設定する。
【0040】
ステップS505では、UE101は、第1通信制御部301を制御し、ビーム掃引を行う。ステップS506では、PD102は、第1通信制御部401を制御し、UE102により実行されるビーム掃引の受信状況を記録する。
【0041】
具体的には、UE101は、使用するビームID(BeamID@UE)を順次変更(#1~#32)させながら信号の送信を行う。また、各ビームIDに変更した際の時刻情報(タイムスタンプ)を記録する。
図6の記録テーブル601が、この時に記憶部304内に生成されるN個のレコードを含むテーブル(自装置側情報)である。一方、PD102は、S504で設定されたビームIDに固定したまま、時刻情報(タイムスタンプ)と共にUE101から送信される信号の受信電力(RSSIなど)を記録する。
図6の記録テーブル602が、この時に記憶部404内に生成されるテーブル(相手装置側情報)である。なお、PD102は、UE101の全てのビームID(BeamID@UE)の信号を受信可能とは限らないので記録テーブル602はM個以下のレコードを含むテーブルとなる。
【0042】
ステップS507では、PD102は、BT通信を介して、記憶部404内に生成された記録テーブル602をUE101に送信する。
【0043】
上述の初期アクセスループ(S502~S507)を、PD102が受信に使用するビームIDを順次変更し、記録結果(記録テーブル602)を順次UE101に送信する。これにより、UE101は、PD102の12方向全てのビームIDに対して、記録テーブル602および記録テーブル602が得られることになる。
【0044】
ステップS508では、UE101は、得られた24(=12×2)個の記録テーブルのセットから、テーブル603を生成する。テーブル603は、時刻情報(タイムスタンプ)に基づいて24個の記録テーブルを結合したテーブルである。そのため、テーブル603は、UE101のビームID(BeamID@UE)とPD102のビームID(BeamID@PD)の全ての組み合わせが含まれていることになる(全く受信されたかった組み合わせは除く)。そこで、テーブル603を参照し、最も受信状態の良い(例えば、受信電力が最大の)ビームペア(UE101のビームIDとPD102のビームIDのペア)を決定する。
【0045】
ステップS509では、UE101は、BT通信を介して、S508で決定したビームID(BeamID@PD;相手装置側ビーム設定)をPD102に通知する。ステップS510では、UE101は、S508で決定したビームID(BeamID@UE;自装置側ビーム設定)を第1通信制御部301に設定する。また、ステップS511では、PD102は、BT通信を介して通知されたビームIDを第1通信制御部401に設定する。その後、ステップS512では、UE101とPD102との間でテラヘルツ通信によるデータ送受信を開始する。
【0046】
このような手順を経ることで、最も受信状態の良いビームペアを決定することが可能となる。特に、UE101においてビーム掃引をしている間、PD102は固定の1つのビーム方向で信号を待ち受け受信状態の記録を行うため、時刻同期の精度に依存してUE101のビーム掃引を非常に高速(例えば、数ミリ秒/ビームID)に行うことが可能となる。そのため、PD102におけるビームIDの数だけ初期アクセスループを繰り返したとしても、ランダムアクセス手順を用いた場合に比較し、大幅に初期アクセス動作の時間を短縮することが可能となる(例えば、数秒~数10秒オーダ)。なお、許容可能な初期アクセス動作の時間から逆算してビーム掃引の速度を決定してもよい。
【0047】
上述の説明では、テラヘルツ通信開始のトリガとなるユーザ入力(GUI操作)がなされた際に
図5のシーケンスを実行するとして説明したが、他のタイミングで実行してもよい。例えば、ユーザによるUE101に対する任意の操作をトリガに、事前に
図5のシーケンスを実行してもよい。また、テラヘルツ通信によるデータの送受信を実行中に(例えばユーザの位置姿勢の変化により)テラヘルツ通信の通信断が発生した場合に、
図5のシーケンスを再度実行してもよい。
【0048】
以上説明したとおり第1実施形態によれば、各ビームが狭ビームであるマルチビームアンテナを利用する第1の通信部(テラヘルツ通信)による初期アクセス動作を、第1の通信部とは異なる第2の通信部による通信を介して制御する。これにより、第1の通信部による初期アクセス動作に要する時間を短縮することが可能となる。
【0049】
(変形例)
上述の第1実施形態においては、UE101およびPD102のすべてのビーム方向(ビームID)の組み合わせについて受信状態を検出する形態について説明した。しかし、UE101およびPD102の少なくとも一方に関して、ビーム方向(ビームID)を間引いて受信状態を検出するよう構成してもよい。例えば、UE101において5個間隔のビームID(#1→#6→#11...)でビーム掃引を行ってもよい。この場合、1回あたりのビーム掃引(S505)に要する時間を約1/5に短縮することが可能となる。
【0050】
また、PD102において、例えば所定の3個のビームIDでビーム掃引の受信を行ってもよい。例えば、S501において、PD102は、自身が3個のビームIDを有するとUE101に報告する。この場合、UE101により実行される初期アクセスループ(S502~S507)の繰り返し回数が3回まで減り、初期アクセス動作全体に要する時間をさらに短縮することが可能となる。
【0051】
さらに、上述の第1実施形態においては、初期アクセスループ(S502~S507)をPD102のビームIDの個数分繰り返した後、ビームペアを決定する(S508)形態について説明した。しかし、1回の初期アクセスループが終わるたびにビームペアを決定する構成としてもよい。その場合、例えば、所定閾値以上のRSSI値を有するビームペアが検出された段階で初期アクセスループの実行を打ち切り、S509以降の動作に移行するよう構成してもよい。
【0052】
さらにまた、上述の第1実施形態においては、初期アクセスループにおいて、UE101がビーム掃引の送信を行い、PD102がビーム掃引の受信を行う形態について説明した。しかし、逆に、初期アクセスループにおいて、UE101がビーム掃引の受信を行い、PD102がビーム掃引の送信を行う形態としてもよい。この場合、S501では、UE101は、自身が使用するビームID(BeamID@UE)を決定し使用する。そして、UE101において記録テーブル602に相当するテーブルが生成され、PD102において記録テーブル601に相当するテーブルが生成される。そのため、PD102においてビームペアを決定する(S508)ように構成してもよいし、PD102で生成された情報(記録テーブル601に相当)をUE101に送信し、UE101においてビームペアを決定する(S508)ように構成してもよい。
【0053】
なお、本発明により、無線通信における初期アクセス動作の高速化が可能となる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0054】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
101 ユーザ端末(UE); 102 周辺デバイス(PD); 301 第1通信制御部; 302 第2通信制御部; 303 制御部; 304 記憶部; 305 表示部