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特開2024-46174摺動式等速自在継手および動力伝達機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046174
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】摺動式等速自在継手および動力伝達機構
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/227 20060101AFI20240327BHJP
   F16C 11/06 20060101ALI20240327BHJP
   F16C 11/10 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
F16D3/227 G
F16C11/06 Z
F16C11/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151407
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】小林 礼宜
(72)【発明者】
【氏名】松尾 茂寛
【テーマコード(参考)】
3J105
【Fターム(参考)】
3J105AA23
3J105AB03
3J105AC10
3J105CA04
3J105CA06
3J105CC05
3J105DA15
(57)【要約】
【課題】作動角が発生しても、伸縮自在とする弾性部材が座屈や変形することがなく、駆動軸と従動軸との間に介装しても、相対的に軸方向移動の不可状態とならない摺動式等速自在継手を提供する。
【解決手段】動力伝達部材に連結される外側継手部材と、シャフトの端部に連結される内側継手部材を有し、外側継手部材と内側継手部材との間で、角度変位及び軸方向変位を許容しつつトルク伝達可能に構成された摺動式等速自在継手である。シャフトの端部に形成される軸方向孔部に、軸方向に伸縮可能な弾性部材を収納する。内側継手部材を含む内部部品が収納される収納部の底壁部と弾性部材とを、角度変位に追従する連結棒部材にて連結する。弾性部材の伸縮に伴って、連結棒部材の往復動を可能とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達部材に連結される外側継手部材と、シャフトの端部に連結される内側継手部材を有し、前記外側継手部材と内側継手部材との間で、角度変位及び軸方向変位を許容しつつトルク伝達可能に構成された摺動式等速自在継手において、
前記シャフトの端部に形成される軸方向孔部に、軸方向に伸縮可能な弾性部材を収納するとともに、前記内側継手部材を含む内部部品が収納される収納部の底壁部と前記弾性部材とを、角度変位に追従する連結棒部材にて連結し、前記弾性部材の伸縮に伴って、前記連結棒部材の往復動を可能としたことを特徴とする摺動式等速自在継手。
【請求項2】
連結棒部材の弾性部材側の端部は、弾性部材と結合される第1結合構造が設けられるとともに、連結棒部材における収納部の底壁部側の端部は、前記底壁部と結合される第2結合構造が設けられることを特徴とする請求項1に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項3】
前記連結棒部材は、その両端にそれぞれ球体を有し、前記第1・第2結合構造にそれぞれ前記球体が回動可能に収容されて、角度変位および軸方向変に対する前記連結棒部材の追従を可能としたことを特徴とする請求項2に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項4】
前記第1・第2結合構造の各部材は、金属製や非鉄金属製、又は樹脂製であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項5】
所定間隔に離間した二つの動力伝達部材の間に配置されるシャフトの両端に前記動力伝達部材の夫々に首振り自在に連結する等速自在継手が取り付けられた動力伝達機構であって、
前記等速自在継手に、前記請求項1又は請求項2に記載の摺動式等速自在継手を用いたことを特徴とする動力伝達機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や各種産業機械の動力伝達系において使用される摺動式等速自在継手および動力伝達機構、より詳しくは、連結すべき駆動軸と従動軸とが角度(作動角)をなした状態でも等速度で回転運動を伝えることができ、かつ駆動軸と従動軸との間で相対的に軸方向移動が可能な摺動式等速自在継手および動力伝達機構に関する。
【背景技術】
【0002】
所定間隔で離間した二つの動力伝達部材の間に配置されるシャフトの両端に動力伝達部材の夫々に首振り自在に連結する摺動式等速自在継手を取付けることによって、等速ジョイント構造を構成することができる。
【0003】
そして、従来には、等速自在継手(ジョイント部材)をシャフトに対して前進後退可能に取り付けるとともに、その等速自在継手(ジョイント部材)を相手側の動力伝達部材側へ弾発付勢する弾発力付与手段(圧縮コイルばね)を具備したものがある(特許文献1及特許文献2)。
【0004】
このような等速ジョイント構造は、図12に示すように、シャフト1の両端部に等速自在継手(摺動式等速自在継手)2,2を配設し、各等速自在継手2,2に動力伝達部材3を接続されてなるものである。なお、図12及び図13は、それぞれ断面図であるが、図面の簡略化のために、断面を示すハッチングを省略している。
【0005】
等速自在継手2は、内径面5にトラック溝6が形成された外側継手部材7と、外径面8にトラック溝9が形成された内側継手部材10と、外側継手部材7のトラック溝6と内側継手部材10のトラック溝9との間に介在されるトルク伝達ボール11(以下、単にボールともいう)と、このボール11を収容するポケットを有するとともに外側継手部材7と内側継手部材10との間に介装されるケージ12とを備える。
【0006】
シャフト1と各外側継手部材7との間には、外部からの異物の侵入および内部からのグリースの漏洩を防止するためのブーツ13がそれぞれ装着されている。
【0007】
外側継手部材7は、大径筒部15と小径筒部16とを同軸上に一体成形した部材であり 、小径筒部16は、その内周面に連結すべき動力伝達部材3のスプライン軸17をトルク伝達可能に軸線方向から挿入する嵌合部18を有する。この嵌合部18の内周面には、スプライン軸17の軸方向に設けた雄スプラインと係合する雌スプラインが形成されている。
【0008】
また、外側継手部材7の大径筒部15は、内側継手部材10とボール11とケージ12を備えた内部部品20を収納する収納空間21を有し、その収納空間21を形成する外側継手部材7の内面には、軸方向に延びる複数本のトラック溝(ボール溝)6が周方向で等間隔に形成してある。
【0009】
そして、収納空間21内において、シャフト1と動力伝達部材3のスプライン軸17との間に、弾性部材(コイルばね)25が介在されている。この場合、シャフト1の先端凸部1aに、弾性部材25の一方の端部が外嵌され、外側継手部材7の底壁部(大径筒部15の底壁部)に設けられた受け部材26に、弾性部材25の他方の端部が外嵌されている。
【0010】
このように、弾性部材25を設けることにより、両端の摺動式等速自在継手間の長さが伸縮自在となり、所定間隔に離間した二つ動力伝達部材に、取り付けやすくしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4896670号公報
【特許文献2】特開2018-53983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、図12に示すものでは、弾性部材(コイルばね)25は、両端部が支持されているが、中間部位においては、フリーの状態である。このため、図13に示すように、作動角をとった場合、弾性部材(コイルばね)25に座屈や変形が生じるおそれがあった。
【0013】
このように、弾性部材(コイルばね)25に座屈や変形が生じれば、両端の摺動式等速自在継手の長さを伸縮自在に弾発付勢することが困難となり、駆動軸と従動軸との間で相対的に軸方向移動ができなくなるおそれがある。
【0014】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて、作動角が発生しても、伸縮自在とする弾性部材が座屈や変形することがなく、駆動軸と従動軸との間に介装しても、相対的に軸方向移動の不可状態とならない摺動式等速自在継手を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の摺動式等速自在継手は、動力伝達部材に連結される外側継手部材と、シャフトの端部に連結される内側継手部材を有し、前記外側継手部材と内側継手部材との間で、角度変位及び軸方向変位を許容しつつトルク伝達可能に構成された摺動式等速自在継手において、前記シャフトの端部に形成される軸方向孔部に、軸方向に伸縮可能な弾性部材を収納するとともに、前記内側継手部材を含む内部部品が収納される収納部の底壁部と前記弾性部材とを、角度変位に追従する連結棒部材にて連結し、前記弾性部材の伸縮に伴って、前記連結棒部材の往復動を可能としたものである。
【0016】
本発明の摺動式等速自在継手は、弾性部材の伸縮により、シャフトに対して軸方向に変位することができ、しかも、弾性部材は、シャフトの端部の軸方向孔部に収納されているので、作動角が発生した際に、弾性部材が座屈や変形するのを有効に防止できる。
【0017】
連結棒部材の弾性部材側の端部は、弾性部材と結合される第1結合構造が設けられるとともに、連結棒部材における収納部の底壁部側の端部は、収納部の底壁部と結合される第2結合構造が設けられる。このように構成することによって、弾性部材を、シャフトの端部の軸方向孔部に安定して収納することができる。
【0018】
前記連結棒部材は、その両端にそれぞれ球体を有し、前記第1・第2結合構造にそれぞれ前記球体が回動可能に収容されて、角度変位および軸方向変位に対する前記連結棒部材の追従を可能とするのが好ましい。
【0019】
このように構成することによって、連結棒部材が、弾性部材の端部(軸方向孔部の開口側の端部)と、収納部の底壁部との間で、角度変位および軸方向変位に安定して追従することができる。
【0020】
前記第1・第2結合構造の各部材は、金属製や非鉄金属製、又は樹脂製で構成することができる。すなわち、使用環境や摺動式等速自在継手の他の部材の材質等に応じて、金属製としたり、樹脂製としたりできる。金属としては、例えば、機械構造用炭素鋼(S53C等)またはクロムモリブデン鋼(SCM420等)を用いることができる。また、樹脂としては、例えば、POM(ポリアセタール)またはPA(ポリアミド)を用いることができる。
【0021】
本発明の動力伝達機構は、所定間隔に離間した二つの動力伝達部材の間に配置あれるシャフトの両端に前記動力伝達部材の夫々に首振り自在に連結する等速自在継手が取り付けられた動力伝達機構であって、前記等速自在継手に、摺動式等速自在継手を用いたものである。
【0022】
本発明の動力伝達機構では、各等速自在継手(摺動式等速自在継手)がシャフトに対して前進後退でき、シャフトを含む両端の等速自在継手間の全長を収縮延伸することができる。このため、エンジン等の振動等によって二つ動力伝達部材の相対的位置が変動しても、その相対的位置ずれに対応することができる。また、所定間隔に離間した動力伝達部材間に連結作業の容易化を図ることができる。さらには、作動角を取った場合にも、弾性部材が座屈や変形しないので、両端の摺動式等速自在継手の長さを伸縮自在に弾発付勢することができなくなりにくく、駆動軸と従動軸との間で相対的に軸方向移動ができなるのを有効に防止できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、作動角が発生しても、伸縮自在とする弾性部材が座屈や変形することがなく、駆動軸と従動軸との間に介装しても、相対的に軸方向移動の不可状態とならない
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る摺動式等速自在継手を用いた動力伝達機構の断面図である。
図2】本発明に係る摺動式等速自在継手の断面図である。
図3】本発明に係る摺動式等速自在継手の要部拡大断面図である。
図4】連結棒部材の説明図である。
図5】弾性部材を受ける受け部材の側面図である。
図6】第1結合構造の要部分解図である。
図7】第2結合構造の要部分解図である。
図8】弾性部材を縮ませた状態の断面図である。
図9】弾性部材を伸ばした状態の断面図である。
図10】作動角を生じた状態の断面図である。
図11図10の要部拡大断面図である。
図12】従来の動力伝達機構の断面図である。
図13】従来の動力伝達機構において作動角をとった状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下本発明の実施の形態を図1図11に基づいて説明する。図1は、本発明に係る動力伝達機構を示し、動力伝達機構は、乗用自動車や、農機トラクタ等の車両に使用される動力系のジョイント構造であり、一方が駆動軸、他方が従動軸となる二つの動力伝達部材32,32が、所定間隔で離間して同一直線上に配置されている。シャフト31の両端は、等速自在継手(摺動式等速自在継手)33を介して動力伝達部材32の夫々に首振り自在に連結されている。図1に示す如くこのジョイント構造は、左右対称となっているので、一方(図面上の右側)の等速自在継手について図2を参照して説明する。なお、図1は、断面図であるが、図面の簡略化のために、断面を示すハッチングを省略している。
【0026】
等速自在継手33は、いわゆるダブルオフセット型の摺動式等速自在継手であり、内径面41にトラック溝42が形成された外側継手部材43と、外径面44にトラック溝45が形成された内側継手部材46と、外側継手部材43のトラック溝42と内側継手部材46のトラック溝45との間に介在されるトルク伝達ボール47(以下、単にボールともいう)と、このボール47を収容するポケット48を有するとともに外側継手部材43と内側継手部材46との間に介装されるケージ49とを備える。ケージ49の外球面49aの曲率中心と内球面49bの曲率中心とが、継手中心に対し、軸方向反対側に等距離だけオフセットしている。
【0027】
ところで、シャフト31は、大径中間筒部31aと、この大径中間筒部31aの両端部に接続される小径軸部31b、31bとを有するものであり、小径軸部31bの端部が内側継手部材46に嵌入固定される。この場合、内側継手部材46の軸心孔に雌スプラインが形成され、小径軸部31bの端部には雄スプラインが形成され、内側継手部材46の軸心孔に小径軸部31bの端部が嵌入され、この嵌入で、内側継手部材46の雌スプラインに小径軸部31bの雄スプラインが嵌合する。
【0028】
なお、外側継手部材43の開口部には、図2に示すように、周方向凹溝51が形成され、この周方向凹溝51に、内側継手部材46とボール47とケージ49等で構成される内部部品50の抜け止め用のストッパリング52が嵌合されている。また、シャフト31の雄スプラインの端部には周方向溝53が設けられ、この周方向溝53に内側継手部材46の端面46dに係止するストッパとしての止め輪54が装着されている。
【0029】
外側継手部材43は、外径部に大径筒部56と小径筒部57とを有し、大径筒部56の内部が、内部部品50を収納する収納部55で構成される。そして、小径筒部57の内径面には、雌スプライン60が形成されている。また、動力伝達部材32は、等速自在継手側に外周面に雄スプライン61が形成されたスプライン軸部62を有し、このスプライン軸部62が小径筒部57に挿入されることにより、スプライン軸部62の雄スプライン61が小径筒部57の雌スプライン60に嵌合する。
【0030】
外側継手部材43の開口部、つまり大径筒部56の開口部は、外部からの異物の侵入および内部からのグリースの漏洩を防止するためのブーツ70にて密封されている。ブーツ70は、大径端部70aと、小径端部70bと、大径端部70aと小径端部70bとを連結する蛇腹部70cとからなる。ブーツ70の大径端部70aは外側継手部材43の開口端でブーツバンドにより締め付け固定され、その小径端部70bはシャフト31のブーツ装着部31b1でブーツバンドにより締め付け固定されている。
【0031】
シャフト31の端部には、図3に示すように、収納部55の底壁部側に開口する軸方向孔部80が設けられ、この軸方向孔部80に軸方向に伸縮可能な弾性部材82としてのコイルばね83が収納されている。また、このコイルばね83は、連結棒部材84を介して収納部55の底壁部側と連結されている。連結棒部材84は、図4に示すように、棒部材本体85と、この棒部材本体85の端部に装着される球体86(86A),86(86B)とを有する。この場合、棒部材本体85の両端部は、小径の支持軸部85a、85bが設けられ、この支持軸部85a、85bに球体86(86A),86(86B)が装着されている。このため、弾性部材82の伸縮に伴って、連結棒部材84の軸方向孔部80での侵入方向・退出方向の往復動を可能としている。
【0032】
また、コイルばね83の一方の端部83a(軸方向孔部80の奥側の端部)は、支持体87にて支持されている。支持体87は、軸方向孔部80の奥部に配置され、図3図5に示すように、外周面が円筒面とされた本体部87aと、この本体部87aから反ばね側へ突出する円すい形部87bと、この本体部87aからばね側へ突出するばね嵌合部87cとからなる。嵌合部87cの外周面には、周方向凹溝87c1が設けられ、この周方向凹溝87c1のコイルばね83の一方の端部83aが嵌合している。そして、支持体87の本体部87aの大半部乃至円すい形部87bは、軸方向孔部80の奥部の嵌入孔(止め穴)80bに嵌入され、支持体87は軸方向孔部80の奥部に固定される。
【0033】
また、コイルばね83の他方の端部83bは、第1結合構造M1にて連結(結合)されている。この第1結合構造M1は、図3及び図6に示すように、第1部材89と第2部材90とを有し、第1部材89は内部に球体86が嵌合される断面円すい台形状の孔部88を有し、外径面が円筒面とされた本体部89aと、第2部材90が係合する係合部89bと、本体部89aからばね側に突出されるばね嵌合部89cとからなる。第1部材89の係合部89bは係合爪部89b1を有するものである。ばね嵌合部89cの外周面には、周方向凹溝89c1が設けられ、この周方向凹溝89c1のコイルばね83の他方の端部が嵌合している。
【0034】
第2部材90は、内部に球体86の一部が嵌合される嵌合部90aを有するとともに、外径面に、第1部材89の係合部89bの係合爪部89b1が係合する周方向切欠き部90bを有するリング体である。すなわち、第1部材89の係合部89bの係合爪部89b1が第2部材90の周方向切欠き部90bに係合することによって、第1部材89と第2部材90とが一体化し、この状態で、連結棒部材84の一方の球体86が、嵌合する嵌合部92が形成される。連結棒部材84の一方の球体86(86A)が嵌合部92に嵌合状態では、球体86Aの嵌合部92からの抜けが防止されるが、嵌合部92内での球体86Aの回動が許容される。このため、連結棒部材84の弾性部材側の端部は、弾性部材82であるコイル83と結合される第1結合構造M1が構成される。すなわち、第1結合構造M1は、第1部材89と第2部材90を備え、コイルばね83は、支持体87と第1結合構造M1とに連結されることになる。なお、第2部材90の内部には、前記嵌合部90aと、テーパ部90cが設けられている。このテーパ部90cは、後述するように、作動角θをとった際に、連結棒部材84の棒部材本体85が接触するものである。このため、このテーパ部90cは、第2部材90の内部側から底壁部58に向かって拡径するものである。
【0035】
連結棒部材84の他方側の端部は、収納部55の底壁部58(大径筒部56と小径筒部57との間の段付き部)に設けられる第2結合構造M2に結合されている。第2結合構造M2は、構造本体部95と、構造本体部95に係合する副部96とを備えるものである。
【0036】
第2結合構造M2の構造本体部95は、図7に示すように、副部96および球体86Bが嵌入する孔部93と有する円盤体からなり、収納部55の底壁部58に設けられた嵌合孔部94に埋設状に嵌合されている。また、構造本体部95の孔部93は、球体86Bの一部が嵌合する円すい台形状の第1孔部93aと、この第1孔部93aの開口部から孔部開口側に向かって拡径するテーパ孔部93bと、副部96が嵌合する副部嵌合部93cとを備える。
【0037】
また、副部96は、中心孔98が設けられるとともに、構造本体部95に係合する係合爪99が設けられている。中心孔98は、副部軸方向内部側から反シャフト側に向かって順次拡径する第1テーパ部98aと、副部軸方向内部側からシャフト側に向かって順次拡径する第2テーパ部98bとからなる。また、構造本体部95の副部嵌合部93cには、副部96の係合爪99が係合する係合孔100が連通されている。
【0038】
このため、構造本体部95の係合孔100に副部96の係合爪99が係合することにより、構造本体部95と副部96とが一体化し、球体86Bが嵌合する嵌合部97が、副部96の第1テーパ部98aと構造本体部95の第1孔部93aとで形成される。このように、嵌合部97に球体86Bが嵌合した状態では、球体86Bの嵌合部97からの抜けが規制されるが、嵌合部97に球体86Bが嵌合した状態では、球体86Bの回動が許容させている。また、収納部55の底壁部58の嵌合孔部94の開口側には、周方向凹溝102が設けられ、この周方向凹溝102に止め輪103が嵌合されている。すなわち、構造本体部95の抜け止めが形成されている。
【0039】
ところで、図1及び図2が、コイルばね83が自由状態を示す。図8では、コイルばね83が縮んだ状態を示し、図9では、コイルばね83が伸びた状態を示している。なお、図8に示す状態では、内部部品50が外側継手部材43の収納部55の奥側に位置し、図9に示す状態では、内部部品50が外側継手部材43の収納部55の開口側に位置する。そして、図8に示すように、コイルばね83が縮んだ状態では、等速自在継手33の小径筒部57の外端面57aと、動力伝達部材32のスプライン軸部62の端面62aとの間に所定寸の隙間Sを設けることができる。
【0040】
このため、シャフト31の両端に摺動式等速自在継手33,33を取り付けた状態で、所定間隔で配置された動力伝達部材32,32に取り付けることが可能となる。すなわち、両端の摺動式等速自在継手33,33を、その軸心方向に沿って接近・離間させることができ、両端の摺動式等速自在継手33,33間の長さを伸縮可能となり、所定間隔で配置された動力伝達部材32,32への取り付け作業が容易に行うことができる。
【0041】
なお、図9に示すように、コイルばね83が伸びた状態では、ボール47がストッパリング52に当接して、ボール47延いては内部部品50の外側継手部材43からの抜けを防止することができる。また、コイルばねが伸びた状態では、第1結合構造M1がシャフト31の軸方向孔部80から抜け出ないように連結棒部材84、コイルばね83、軸方向孔部80等の長さを設定している。
【0042】
ところで、図10及び図11は作動角θをとった状態を示し、この場合、連結棒部材84の各球体86A、86Bがそれぞれの嵌合部内で回動可能となっているので、外側継手部材43に対してシャフト31の傾斜に対して、連結棒部材84が傾斜して追従することができる。この場合、作動角θの可動域、つまり、シャフト31の許容角度は、連結棒部材84と、第1結合構造M1の第2部材90のテーパ部90c、シャフト31の軸方向孔部の開口部に形成された入口チャンファ80a、第2結合構造の副部96の第2テーパ部98bとの接触によって決定される。また、連結棒部材84が接触する接触部位(第1結合構造の第2部材90のテーパ部90c等)は、相手軸(動力伝達部材)との取り付け寸法によるジョイントCL位置(内部部品50のセンター位置)や、コイルばね83の伸縮状態等に応じて変動する。
【0043】
本発明の摺動式等速自在継手は、弾性部材82の伸縮により、シャフト31に対して軸方向に変位することができ、しかも、弾性部材82は、シャフト31の端部の軸方向孔部80に収納されているので、作動角θが発生した際に、弾性部材82が座屈や変形を有効に防止できる。このため、本摺動式等速自在継手では、作動角θが発生しても、伸縮自在とする弾性部材82が座屈や変形することがなく、駆動軸と従動軸との間に介装しても、相対的に軸方向移動の不可状態とならない。
【0044】
連結棒部材84の弾性部材側の端部は、弾性部材82と結合される第1結合構造M1が設けられるとともに、連結棒部材84の収納部55の底壁部側の端部は、底壁部58と結合される第2結合構造M2が設けられる。このように構成することによって、弾性部材82を、シャフト31の端部の軸方向孔部80に安定して収納することができる。
【0045】
前記連結棒部材84は、その両端にそれぞれ球体86(86A)、86(86B)を有し、前記第1・第2結合構造M1、M2にそれぞれ球体86(86A)、86(86B)が回動可能に収容されて、角度変位および軸方向変に対する連結棒部材84の追従を可能としている。
【0046】
このように構成することによって、連結棒部材84が、弾性部材82の端部(軸方向孔部80の開口側の端部)と、底壁部58との間で、角度変位および軸方向変位に安定して追従することができる。
【0047】
前記第1・第2結合構造M1,M2の各部材(第1結合構造M1の第1部材89及び第2部材90と、第2結合構造Mの構造本体部95および副部96)は、金属製又は樹脂製で構成することができる。すなわち、使用環境や摺動式等速自在継手の他の部材の材質等に応じて、金属製としたり、樹脂製としたりできる。金属としては、例えば、機械構造用炭素鋼(S53C等)またはクロムモリブデン鋼(SCM420等)を用いることができる。また、樹脂としては、例えば、POM(ポリアセタール)またはPA(ポリアミド)を用いることができる。
【0048】
本発明の動力伝達機構では、各等速自在継手(摺動式等速自在継手)33,33がシャフト31に対して前進後退でき、シャフト31を含む両端の等速自在継手33,33間の全長を収縮延伸することができる。このため、エンジン等の振動等によって二つ動力伝達部材32,32の相対的位置が変動しても、その相対的位置ずれに対応することができる。また、所定間隔に離間した動力伝達部材32,32間に連結作業の容易化を図ることができる。さらには、作動角θを取った場合にも、弾性部材82が座屈や変形しないので、両端の摺動式等速自在継手33,33の長さを伸縮自在に弾発付勢することができ、駆動軸と従動軸との間で相対的に軸方向移動ができなくなるのを防止できる。
【0049】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、動力伝達機構として、前記実施形態では、両摺動式等速自在継手に、弾性部材を用いた本発明に係る摺動式等速自在継手を用いたが、いずれか一方を、弾性部材を用いない等速自在継手を用いてもよい。この場合のいずれか一方の等速自在継手としては、固定式であっても摺動式であってもよい。また、本発明に係る摺動式等速自在継手として、ダブルオフセット型(DOJ)に限定されず、トリポード型(TJ)、クロスグルーブ型(LJ)などであってもよい。
【0050】
弾性部材82として、実施形態では、コイルばね83(圧縮コイルばね)を用いたが、このコイルばね83の大きさや弾性付勢力等は、コイルばね83が縮んだ状態での、等速自在継手33の小径筒部57の外端面57aと、動力伝達部材32のスプライン軸部62の端面62aとの間に形成される隙間Sの寸法や連結棒部材84の長さ等に応じて種々変更でき、また、連結棒部材84の長さも種々変更できる。すなわち、所定間隔で配置された動力伝達部材32,32に取り付けを容易に行えるように、伸縮できればよい。また、弾性部材82として、コイルばね以外のゴムや樹脂からなる弾性材にて構成してもよい。
【符号の説明】
【0051】
31 シャフト
32 動力伝達部材
33 等速自在継手(摺動式等速自在継手)
43 外側継手部材
46 内側継手部材
58 底壁部
80 軸方向孔部
82 弾性部材
84 連結棒部材
86,86A、86B 球体
M1 第1結合構造
M2 第2結合構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13