(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046175
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ロードローラ用の安全装置
(51)【国際特許分類】
G01V 8/10 20060101AFI20240327BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
G01V8/10 S
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151408
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】591075630
【氏名又は名称】株式会社アクティオ
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 誠一
【テーマコード(参考)】
2G105
5C086
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB17
2G105EE06
2G105HH01
2G105JJ05
5C086AA22
5C086AA53
5C086BA19
5C086BA22
5C086CB36
5C086EA40
5C086EA45
5C086FA02
5C086FA15
(57)【要約】
【課題】検知対象を人物に限定しつつ、かつ検知対象がロードローラに接触する前から、ロードローラの停止に向けた制御を実行可能とすること。
【解決手段】ロードローラ用の安全装置であって、ロードローラAの周辺を撮影する撮影部10と、撮影部10の撮影映像に基づいて人物の検出と検出した人物とロードローラAとの接近情報の生成を行う人物検出部20と、接近情報に基づいて警告を出力する警告出力部30と、接近情報に基づいてロードローラAの前後進レバーBをニュートラル位置に強制移動させるレバー強制部40と、接近情報に基づいてロードローラAのパーキングブレーキDを強制作動させるブレーキ強制部50と、を少なくとも具備する。人物検出部20では、任意の画像を入力層とし、当該画像中の人物の有無を出力層として機械学習を行ったニューラルネットワークに、撮影映像を入力して得られる出力結果によって人物検出を行う構成とすることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロードローラ用の安全装置であって、
ロードローラの周辺を撮影する、撮影部と、
前記撮影部の撮影映像に基づいて、人物の検出と、検出した人物とロードローラとの接近情報の生成を行う、人物検出部と、
前記接近情報に基づいて、警告を出力する、警告出力部と、
前記接近情報に基づいて、ロードローラの前後進レバーをニュートラル位置に強制移動させる、レバー強制部と、
前記接近情報に基づいて、ロードローラのパーキングブレーキを強制作動させる、ブレーキ強制部と、
を少なくとも具備することを特徴とする、
ロードローラ用の安全装置。
【請求項2】
前記レバー強制部による前後進レバーの強制移動から所定期間経過後に、前記ブレーキ強制部によるパーキングブレーキの強制作動が行われることを特徴とする、
請求項1に記載のロードローラ用の安全装置。
【請求項3】
前記レバー強制部が、
前記前後進レバーの基部に嵌め込みでき、表面に突出部を設けた、カバーと、
前記突出部を収容可能な溝部を有する、受け具と、
前記受け具を先端に設け、当該受け具によって突出部を外的に移動させることで、前記前後進レバーをニュートラル位置に戻すように動作する、シリンダと、
からなることを特徴とする、
請求項1に記載のロードローラ用の安全装置
【請求項4】
手動操作によって、前記ブレーキ強制部によるパーキングブレーキの強制作動を解除させる、動作解除部と、
をさらに具備することを特徴とする、
請求項1に記載のロードローラ用の安全装置。
【請求項5】
前記撮影部の撮影映像に対し、当該撮影映像内での監視領域と、前記人物検出部によって検出した人物を囲んだ検出領域とを、合成してなる合成映像を表示する、表示部と、
をさらに具備することを特徴とする、
請求項1に記載のロードローラ用の安全装置。
【請求項6】
前記接近情報が、前記合成映像において、検出領域のうち少なくとも一部が、前記監視領域内にあるか否かの情報であることを特徴とする、
請求項5に記載のロードローラ用の安全装置。
【請求項7】
前記監視領域が、複数に区分けされていることを特徴とする、
請求項5または6に記載のロードローラ用の安全装置。
【請求項8】
前記人物検出部が、任意の画像を入力層とし、当該画像中の人物の有無を出力層として機械学習を行ったニューラルネットワークに、前記撮影映像を入力して得られる出力結果によって人物検出を行うことを特徴とする、
請求項1に記載のロードローラ用の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロードローラに取り付けて使用する安全装置に関し、より詳細には、ロードローラと人物との接触事故を未然に防止するための安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロードローラが人物や物体等の検知対象と接触した場合に、ロードローラを緊急停止させる技術として、本願出願人は以下の特許文献1に係る安全装置を開発している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に係る安全装置は、検知対象との接触によって、ロードローラに設けた可動柵の揺動をリミットスイッチで検出した場合や、可動柵の前面に設けたクッションセンサの変形を検知した場合に、ロードローラを停止させるため、検知対象がロードローラに相応に接近した状態での適用に限られていた。
【0005】
その他、ロードローラから検知対象が相応に離れた状態であっても、検知対象を検知する方法として、超音波や赤外線を用いたセンサを設ける方法が考えられる。
しかし、これらのセンサは、人物と物体との区別ができないため、緊急停止を要するまでもない要因(例:定置物や鳥など)の検知によってロードローラが誤停止してしまうという問題があり、この誤停止に伴う作業効率の低下を嫌って、ロードローラの運転手が自ら安全装置の機能を予め切って作業に従事するケースもあった。
【0006】
よって、本発明は、検知対象を人物に限定しつつ、かつ検知対象がロードローラに接触する前から、ロードローラの停止に向けた制御を実行可能な手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべくなされた本願発明は、ロードローラ用の安全装置であって、ロードローラの周辺を撮影する、撮影部と、前記撮影部の撮影映像に基づいて、人物の検出と、検出した人物とロードローラとの接近情報の生成を行う、人物検出部と、前記接近情報に基づいて、警告を出力する、警告出力部と、前記接近情報に基づいて、ロードローラの前後進レバーをニュートラル位置に強制移動させる、レバー強制部と、前記接近情報に基づいて、ロードローラのパーキングブレーキを強制作動させる、ブレーキ強制部と、を少なくとも具備することを特徴とする。
また、本願発明は、前記レバー強制部による前後進レバーの強制移動から所定期間経過後に、前記ブレーキ強制部によるパーキングブレーキの強制作動が行われるよう構成することができる。
また、本願発明は、前記レバー強制部が、前記前後進レバーの基部に嵌め込みでき、表面に突出部を設けた、カバーと、前記突出部を収容可能な溝部を有する、受け具と、前記受け具を先端に設け、当該受け具によって突出部を外的に移動させることで、前記前後進レバーをニュートラル位置に戻すように動作する、シリンダと、からなるよう構成することができる。
また、本願発明は、手動操作によって、前記ブレーキ強制部によるパーキングブレーキの強制作動を解除させる、動作解除部と、をさらに具備するよう構成することができる。
また、本願発明は、前記撮影部の撮影映像に対し、当該撮影映像内での監視領域と、前記人物検出部によって検出した人物を囲んだ検出領域とを、合成してなる合成映像を表示する、表示部と、をさらに具備するよう構成することができる。
また、本願発明は、前記接近情報が、前記合成映像において、検出領域のうち少なくとも一部が、前記監視領域内にあるか否かの情報であることを特徴とするよう構成することができる。
また、本願発明は、前記監視領域が、複数に区分けされていることを特徴とするよう構成することができる。
また、本願発明は、前記人物検出部が、任意の画像を入力層とし、当該画像中の人物の有無を出力層として機械学習を行ったニューラルネットワークに、前記撮影映像を入力して得られる出力結果によって人物検出を行うことを特徴とするよう構成することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下の効果のうち、少なくとも何れか1つの効果を奏する。
(1)人物検出部によって、撮影映像から人物のみを検出しつつ、ロードローラと人物との接近情報を生成することによって、人物がロードローラに接触する前からロードローラの停止に向けた制御を実行することができる。
(2)人物検出部で得た接近情報に基づいて、レバー強制部でもってロードローラの前後進レバーをニュートラル位置に強制的に移動させることで、人物がロードローラに接触する前から、ロードローラを減速させることができる。
(3)人物検出部で得た接近情報に基づいて、ブレーキ強制部でもってロードローラのパーキングブレーキを強制的に作動させることで、ロードローラの停止を維持させることができる。
(4)前後進レバーを強制的にニュートラル位置に戻す作業と、パーキングブレーキを強制的に作動させる作業を段階的に行うことで、ロードローラの急停止を避けることができる。
(5)表示部でもって、撮影映像に監視領域と検出領域とを追加してなる合成映像を表示することで、ロードローラの運転手等の作業員に対し、合成映像の確認による、視覚的な注意喚起を促すことができる。
(6)検出した人物のロードローラとの接近情報を、合成映像中における検出領域の一部が監視領域内にあるか否かによって得ることにより、より高速に人物の接近を検知することができる。
(7)監視領域を複数に区分けしておくことで、それぞれの監視領域に検出領域が重なった場合における、各部(警告出力部、レバー強制部、ブレーキ強制部)の制御態様を変えることで、より細かな安全制御を実現できる。
(8)人物の検出を、機械学習による人工知能を用いた画像解析によって行うことで、撮影画像から人物のみを検出することができ、赤外線センサや超音波センサなどを用いた場合における人物以外の物体での誤検知を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明に係る安全装置をロードローラに取り付けた状態を示す図。
【
図4】合成映像の一例と、監視領域の区分けイメージを示す図
【
図10】変形例2に係る安全装置の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【実施例0011】
<1>全体構成(
図1)
本発明に係るロードローラ用の安全装置(以下、単に「安全装置」ともいう。)は、
図1に示すように、主として、撮影部10、人物検出部20、警告出力部30、レバー強制部40、ブレーキ強制部50、動作解除部60および表示部70、を少なくとも具備して構成する。
以下、ロードローラの構成と、各部の詳細について説明する。
【0012】
<2>ロードローラ(
図2)
ロードローラは、道路工事等において使用される作業機械である。
一般的なロードローラAは、運転席に、前後進を行うための前後進レバーB、旋回を行うためのハンドルC、ロードローラAの静止状態を保持するためのパーキングブレーキD、ロードローラAに備えたエンジンの回転数を調整するアクセル、などを設けている。
前後進レバーBは、ニュートラル状態から任意の方向に倒すことで前進または後進するため、この前後進レバーBの動作とハンドルCの動作との組み合わせでもって、ロードローラAを任意の方向に走行させることができる。
パーキングブレーキDは、ロードローラAにおいてはボタン式が一般的であり、このボタンの押下でもってパーキングブレーキDの作動および解除を切り換えることができる。
【0013】
図2は、ロードローラAに対し、本発明に係る安全装置として、撮影部10、人物検出部20、警告出力部30、レバー強制部40、ブレーキ強制部50、動作解除部60および表示部70を新たに設けた構成を示している。
これらの各部は、ロードローラAの内部機構に手を加えることなく、外付けする可能なユニットタイプで構成することができる。
また、
図2における各部の配置は、後述する各部の項目において記載する事項を除いて特段限定するものではない。
【0014】
<3>撮影部(
図1~
図3)
撮影部10は、ロードローラAの周辺を撮影するための要素である。
撮影部10は、任意のカメラを用いることができる。
撮影部10は、ロードローラAの任意の箇所に取り付けて使用することができるが、利便性の観点によれば、運転者にとって死角位置となりやすいロードローラAの後方や側方に取り付けることが好ましい。
本実施例では、撮影部10を、ロードローラAの後方に一台設けているため、この撮影部10による撮影映像11は、
図3に示すイメージとなる。
【0015】
<4>人物検出部(
図1~
図4)
人物検出部20は、撮影部10による撮影映像内の人物の有無の検出と、検出した人物とロードローラAとの接近情報を解析するための要素である。
人物検出部20は、撮影部10を構成するカメラに内蔵した演算装置や、前記カメラとは別に用意した、マイコン、ノートPC、スマートフォン、タブレットなどの情報処理端末に内蔵した演算装置にインストールするプログラムによって実現することができる。
本実施例では、人物検出部20に、撮影部10を構成するカメラに内蔵してある演算装置を用いている。
【0016】
<4.1>人物の検出例(
図1~
図3)
人物検出部20では、撮影部10による撮影映像を画像処理によって分析し、人物の検出処理を行う。
本発明において、人物検出部20による検出ロジックは特段限定せず、人工知能を用いたもの、画像内の特徴点の抽出によって判断するもの、等を採用することができる。
本実施例では、人工知能を用いたものとして、任意の画像を入力層とし、当該画像中の人物の有無を出力層として、機械学習を行ったニューラルネットワークを用意し、このニューラルネットワークに、撮影部10による撮影映像11を入力して得られる出力結果によって、人物検出を行っている。
【0017】
<4.2>接近情報の生成例(
図1,
図4)
人物検出部20では、撮影部10による撮影映像の画像解析によって、検出した人物とロードローラAとの接近情報を生成する。
本実施例では、まず撮影映像11に対し、一定の領域を占めるように区画した監視領域22と、人物検出部20によって検出した人物を示す検出領域23とをそれぞれ合成した合成映像21を生成し、次に、この合成映像21における監視領域22と検出領域23の位置関係を解析して接近情報を生成する。
【0018】
<4.2.1>監視領域(
図4(a))
監視領域22は、人物の侵入を監視する範囲を示す領域である。
監視領域22の縦方向は、概ねロードローラAとの離隔距離を示すことになる。
監視領域22における縦軸方向の量と、ロードローラAとの離隔距離との関係は、撮影部10の画角や、撮影部10の取付高さ等によって簡易的に算出することができる。
【0019】
<4.2.1.1>監視領域の形状(
図4(a))
本発明において、監視領域22の形状は特段限定しないが、例えば以下の形状で設定することができる。
【0020】
(1)略矩形状(
図4(a))
監視領域22の形状を略矩形状に設定した場合、現実の監視領域22は、ロードローラAの手前から遠方に向けて監視幅が拡大するイメージとなる。
この監視領域22の横幅は、手前側でロードローラAの車幅と略同等としておき、遠方側でロードローラAの車幅よりも広い範囲を確保するよう設計しても良いし、手前側をロードローラAの車幅よりも狭くしておき、遠方側で、ロードローラAの車幅と略同等の監視幅となるように設計してもよい。
【0021】
(2)略台形状(図示せず)
監視領域22の形状を遠方側が上辺となるように略台形状に設定した場合、現実の監視領域22における監視幅は、ロードローラAの手前から遠方へ一定となるイメージとなる。
この場合、監視領域22の手前側(略台形状における下辺側)を、ロードローラAの車幅と略同等としておくと、監視幅は、ロードローラAの車幅で一定となるイメージとなる。
【0022】
なお、本発明において、監視領域22の幅は、ロードローラAの車幅よりも広いものとしてもよい。
これは、ロードローラAは、真っ直ぐに後進するだけでなく、ハンドルCの旋回によって、曲がりながら後進する場合もあるため、撮影映像11および合成映像21の紙面に対し直交する奥行き方向が走行方向とは限らないためである。
【0023】
また、本発明において、監視領域22の形状設定は、予めシステム設定として何れか1つを選択するよう構成しておいても良いし、作業現場の環境や運転手の好みに応じて、複数から任意の形状を選択できるよう構成してもよい。
【0024】
<4.2.1.2>監視領域の複数区画(
図4(a))
本発明では、複数の監視領域22を設定することもできる。
各監視領域22を区画する基準としては、ロードローラAとの離隔距離に相当する、撮影映像11(合成映像21)内での縦方向が考えられる。
本実施例では、ロードローラAから約5m以上かつ約8m以下までの範囲を第1の監視領域22aとし、ロードローラAから約5m以下までの範囲を第2の監視領域22bとしている。
【0025】
<4.2.2>検出領域(
図4(a))
検出領域23は、検出した人物を示す領域である。
本発明において、検出領域23の形状は特段限定せず、矩形、円形、検出した人物を輪郭に沿って切り取った形状など、任意の形状を採用することができる。
本実施例では、検出した人物を矩形で囲んだ領域を検出領域23としている。
【0026】
<4.2.3>接近情報の生成ロジック(
図4(b))
本発明では、監視領域22の中に検出領域23のうち少なくとも一部が含まれているか否かによって、接近情報を生成する。
本実施例では、各検出領域23への侵入の有無に基づいて、以下の表1の通り接近情報を生成している。
【0027】
【0028】
<5>警告出力部(
図1,
図2)
警告出力部30は、人物検出部20による検出した人物とロードローラAとの接近情報に応じて、ロードローラAの運転手や、周囲の人物に警告を出力するための要素である。
警告出力部30による警告は、警報の出力、表示部70での表示態様の変更、ロードローラAに備えた表示灯61の発色変更などから適宜決定することができる。
本実施例では、人物検出部20で生成される接近情報に基づき、以下の表2の通り制御している。
【0029】
【0030】
<6>レバー強制部(
図1,
図2,
図5)
レバー強制部40は、人物検出部20からの接近情報に基づいて、ロードローラAの運転に使用される前後進レバーBを強制作動させるための要素である。
本発明において、レバー強制部40の作動条件は特段限定しないが、本実施例では、人物検出部20から第2の接近情報を受信した際に、レバー強制部40による前後進レバーBの強制作動が行われるよう構成している。
【0031】
<6.1>レバー強制部の構成例(
図5)
レバー強制部40は、前後進レバーBの周囲に設けたシリンダ43を動作させることで、前後進レバーBを外的に強制移動させる態様や、前後進レバーBの位置を無視して、制御盤内で電子的に前後進を制御する方法などを採用することができる。
本実施例では、前後進レバーBとともに回動する基部B1に嵌め込み可能なカバー41と、略U字状を呈する受け具42と、先端に受け具42を接続したシリンダ43とによってレバー強制部40を構成しており、カバー41の表面には突出部411を設けておき、この突出部411を受け具42の溝に収容可能に構成することで、シリンダ43の伸縮に伴う受け具42の移動によって、前後進レバーBを外的に強制移動可能に構成している。
【0032】
<6.2>レバー強制部の動作の遷移例(
図6)
レバー強制部40の動作の遷移の一例を、
図6に示す。
【0033】
(1)初期状態(
図6(a))
シリンダ43を縮長させた状態(初期状態)では、前後進レバーBを後方に倒した状態(ロードローラAの後進時)であっても、受け具42は突出部411に干渉しない状態である。
【0034】
(2)稼働状態(
図6(b))
前後進レバーBを後方に倒した状態(ロードローラAの後進時)において、シリンダ43を伸長させた状態(稼働状態)では、受け具42の溝によって突出部411が押し上げられることで、前後進レバーBが強制的にニュートラルの位置まで押し戻され、ロードローラAは減速しやがて停止する。
【0035】
(3)復帰状態(
図6(c))
本実施例では、稼働状態(
図6(b))のように、前後進レバーBをニュートラルの位置まで押し戻したあとは、第2の接近情報が引き続き通知されているか否かを問わずに、直ちにシリンダ43を縮長させて、元の位置に戻しておく。
シリンダ43を元の位置に戻しておくと、前後進レバーBを再度後進側に倒すことが可能となるものの、後述する<7>の通り、ブレーキ強制部50によるパーキングブレーキDの強制作動が併行して行われているため、ロードローラAが後進することはない。
【0036】
<7>ブレーキ強制部(
図1)
ブレーキ強制部50は、人物検出部20による人物の接近情報に基づいて、ロードローラAに設けたパーキングブレーキDを強制的に稼働させるための要素である。
本発明において、ブレーキ強制部50の作動条件は特段限定しないが、本実施例では、人物検出部20から第2の接近情報を受信した際に、レバー強制部40による前後進レバーBの強制作動が行われてから、所定時間(例:0.5秒~1秒)が経過した後、ブレーキ強制部50によるパーキングブレーキDの強制作動が行われるよう構成している。
上記した所定時間は、安全性が確保できつつ、運転手が違和感を覚えない範囲で適宜設定すればよい。
【0037】
パーキングブレーキDを強制作動させるにあたり、本実施例では、ロードローラAに予め設けてある、パーキングブレーキDの作動ボタンからの信号を模擬する信号を生成し、当該信号を、パーキングブレーキDの作動部(図示せず)に送信することで、パーキングブレーキDの作動ボタンの押下によらずに、パーキングブレーキDの強制作動が行われるよう構成している。
【0038】
<8>動作解除部(
図1,
図7)
動作解除部60は、パーキングブレーキDの強制作動を解除するための要素である。
本実施例では、
図7に示すように、動作解除部60として、黄色灯と赤色灯からなる2つの表示灯61と、解除ボタン62とを設けた制御ボックスを設けている。
【0039】
<8.1>黄色灯
黄色灯は、第2の接近情報の通知直後から所定期間(例:0.5秒)の間、点滅し、継続して第2の接近情報の通知が行われている場合に、点滅から点灯に切り替わるよう構成する。
また、黄色灯の消灯は、第2の接近情報の通知が停止した段階とするよう構成する。
【0040】
<8.2>赤色灯
赤色灯は、第2の接近情報の通知後、パーキングブレーキDの強制作動と同じタイミングで、点灯するよう構成する。
【0041】
<8.3>解除ボタン
解除ボタン62は、パーキングブレーキDの強制作動時に、パーキングブレーキDを解除するためのボタンである。
ロードローラAの運転手は、前記した2つの表示灯61の点灯状況で、人物の侵入状況と、パーキングブレーキの強制作動の状況とを確認することができる。
そして、黄色灯が消灯(第2の監視領域22b内に人物が侵入していない状況)であり、かつ赤色灯が点灯(パーキングブレーキDが強制作動されている状況)の際に、解除ボタン62の押下によってパーキングブレーキDを解除することができる。
なお、黄色灯が点灯している間(第2の監視領域22b内に人物が侵入している状況)は、解除ボタン62による押下でパーキングブレーキDの強制作動を解除できず、通常用いるパーキングブレーキDの作動ボタンの押下によっても解除を行うことはできないよう構成しておくと、より安全性の高い状況でロードローラの復帰を行うことができる。
【0042】
<9>表示部(
図1,
図8)
表示部70は、少なくとも撮影部10の撮影映像に基づく映像を画面表示するための要素である。
表示部70は、ロードローラAに別途取り付けた小型のディスプレイを用いてもよいし、人物検出部20として機能するノートPC、スマートフォン、タブレットなどの情報処理端末が予め具備しているディスプレイを用いても良い。
【0043】
<9.1>表示部での表示例
本発明では、表示部70に表示する映像として、人物検出部20による接近情報の解析時に使用した合成映像21を用いても良いし、撮影部10の撮影映像をそのまま用いても良い。
【0044】
<9.2>表示部での画面イメージ(
図8)
表示部70での合成映像21を表示したときの、遷移イメージを
図8に示す。
図8(a)は、通常時の合成映像21を示す。
図8(b)は、第1の監視領域22aへの人物の侵入を検知したときの合成映像21を示している。
図8(c)は、第2の監視領域22bへの人物の侵入を検知したときの合成映像21を示している。
このように、検出した人物とロードローラAの離隔距離が小さくなるにつれて、警告出力部3030による警告出力と、レバー強制部4040およびブレーキ強制部5050による前後進レバーBおよびパーキングブレーキDの強制動作を段階的に実施することで、人物と衝突することなく安全にロードローラAを停止させることができる。
上記した変形例1,2では、例えば、撮影部10の何れかを取り外す作業や、ダミーカメラに付け替える作業など、の簡易な設計変更で、ロードローラAの運転モードのうち、任意の運転モードにおいて、安全装置の機能を一時的に停止させることもできる。