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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046176
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240327BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240327BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240327BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20240327BHJP
   H01L 23/34 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H01L29/78 652S
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652F
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
H01L29/78 655G
H01L29/91 C
H01L29/91 F
H01L23/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151409
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】日吉 透
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA30
5F136BB04
5F136DA41
(57)【要約】
【課題】半導体装置のサイズを大きくすることなく、複数の半導体素子間の特性のばらつきを小さくできる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、絶縁基板と、前記絶縁基板の上に形成された導電パターンと、前記導電パターンの上に設けられ、かつ電気的に並列に接続された複数の半導体素子と、を有し、前記導電パターンは、平面視で前記複数の半導体素子を囲む最小の矩形領域を有し、前記複数の半導体素子は、それぞれ第1導電型のドリフト領域を有し、前記複数の半導体素子は、前記矩形領域の重心から最も近くに位置する第1半導体素子と、前記矩形領域の重心から最も遠くに位置する第2半導体素子と、を含み、前記第1半導体素子の前記ドリフト領域における第1キャリア寿命は、前記第2半導体素子の前記ドリフト領域における第2キャリア寿命よりも長い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板の上に形成された導電パターンと、
前記導電パターンの上に設けられ、かつ電気的に並列に接続された複数の半導体素子と、
を有し、
前記導電パターンは、平面視で前記複数の半導体素子を囲む最小の矩形領域を有し、
前記複数の半導体素子は、それぞれ第1導電型のドリフト領域を有し、
前記複数の半導体素子は、
前記矩形領域の重心から最も近くに位置する第1半導体素子と、
前記矩形領域の重心から最も遠くに位置する第2半導体素子と、
を含み、
前記第1半導体素子の前記ドリフト領域における第1キャリア寿命は、前記第2半導体素子の前記ドリフト領域における第2キャリア寿命よりも長い、
半導体装置。
【請求項2】
前記複数の半導体素子のうちで前記第1キャリア寿命が最も長い、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の半導体素子のうちで前記第2キャリア寿命が最も短い、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複数の半導体素子のうちで前記第1キャリア寿命が最も長く、
前記複数の半導体素子のうちで前記第2キャリア寿命が最も短い、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記複数の半導体素子は、前記矩形領域の重心からの距離が前記第1半導体素子よりも遠くかつ前記第2半導体素子よりも近い第3半導体素子を含み、
前記第3半導体素子の前記ドリフト領域における第3キャリア寿命は、前記第2キャリア寿命よりも長く、かつ前記第1キャリア寿命よりも短い、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
絶縁基板と、
前記絶縁基板の上に形成された導電パターンと、
前記導電パターンの上に設けられ、かつ電気的に並列に接続された複数の半導体素子と、
を有し、
前記複数の半導体素子は、それぞれ第1導電型のドリフト領域を有し、
前記複数の半導体素子は、
隣り合う前記半導体素子の数が最も多い第4半導体素子と、
隣り合う前記半導体素子の数が最も少ない第5半導体素子と、
を含み、
前記第4半導体素子の前記ドリフト領域における第4キャリア寿命は、前記第5半導体素子の前記ドリフト領域における第5キャリア寿命よりも長い、
半導体装置。
【請求項7】
前記複数の半導体素子のうちで前記第4キャリア寿命が最も長い、
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記複数の半導体素子のうちで前記第5キャリア寿命が最も短い、
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記複数の半導体素子のうちで前記第4キャリア寿命が最も長く、
前記複数の半導体素子のうちで前記第5キャリア寿命が最も短い、
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記複数の半導体素子は、隣り合う前記半導体素子の数が前記第4半導体素子よりも少なくかつ前記第5半導体素子よりも多い第6半導体素子を含み、
前記第6半導体素子の前記ドリフト領域における第6キャリア寿命は、前記第5キャリア寿命よりも長く、かつ前記第4キャリア寿命よりも短い、
請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
絶縁基板と、
前記絶縁基板の上に形成された導電パターンと、
前記導電パターンの上に設けられ、かつ電気的に並列に接続された複数の半導体素子と、
を有し、
前記複数の半導体素子は、それぞれ第1導電型のドリフト領域を有し、
前記複数の半導体素子は、
動作時の温度が最も高い第7半導体素子と、
動作時の温度が最も低い第8半導体素子と、
を含み、
前記第7半導体素子の前記ドリフト領域における第7キャリア寿命は、前記第8半導体素子の前記ドリフト領域における第8キャリア寿命よりも長い、
半導体装置。
【請求項12】
前記複数の半導体素子のうちで前記第7キャリア寿命が最も長い、
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記複数の半導体素子のうちで前記第8キャリア寿命が最も短い、
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記複数の半導体素子のうちで前記第7キャリア寿命が最も長く、
前記複数の半導体素子のうちで前記第8キャリア寿命が最も短い、
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記複数の半導体素子は、動作時の温度が前記第7半導体素子よりも低くかつ前記第8半導体素子よりも高い第9半導体素子を含み、
前記第9半導体素子の前記ドリフト領域における第9キャリア寿命は、前記第8キャリア寿命よりも長く、かつ前記第7キャリア寿命よりも短い、
請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記複数の半導体素子は一列に配置され、
前記第7半導体素子は、中央に配置される半導体素子であり、
前記第8半導体素子は、端部に配置される半導体素子である、
請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記ドリフト領域は、炭化珪素、窒化ガリウムまたは酸化ガリウムにより形成されている、
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9、請求項11、請求項12、請求項13または請求項14に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記絶縁基板を複数有し、
前記複数の絶縁基板の上のそれぞれに前記導電パターンが形成され、
前記導電パターンの上に前記複数の半導体素子が設けられる、
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9、請求項11、請求項12、請求項13または請求項14に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記導電パターンを複数有し、
前記複数の導電パターンの上のそれぞれに前記複数の半導体素子が設けられる、
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9、請求項11、請求項12、請求項13または請求項14に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記絶縁基板を複数有し、
前記複数の絶縁基板の上のそれぞれに前記導電パターンが複数形成され、
前記複数の導電パターンの上のそれぞれに前記複数の半導体素子が設けられる、
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9、請求項11、請求項12、請求項13または請求項14に記載の半導体装置。
【請求項21】
前記絶縁基板を複数有し、
前記複数の絶縁基板の上のそれぞれに前記導電パターンが形成され、
前記導電パターンの上に前記複数の半導体素子が設けられる、
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9、請求項11、請求項12、請求項13または請求項14に記載の半導体装置。
【請求項22】
前記複数の半導体素子は、電界効果トランジスタを含む、
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9、請求項11、請求項12、請求項13または請求項14に記載の半導体装置。
【請求項23】
前記複数の半導体素子は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタを含む、
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9、請求項11、請求項12、請求項13または請求項14に記載の半導体装置。
【請求項24】
前記複数の半導体素子は、pn接合ダイオードを含む、
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9、請求項11、請求項12、請求項13または請求項14に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同一の放熱板の上に並列に接続された複数の半導体素子に関し、放熱板の中心部における半導体素子の放熱性を向上させることを目的として、複数の半導体素子の間隔を放熱板の端部より中心部において大きくした構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-136229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の半導体装置では、複数の半導体素子の間隔が広がり、半導体装置のサイズが大きくなる。
【0005】
本開示は、半導体装置のサイズを大きくすることなく、複数の半導体素子間の特性のばらつきを小さくできる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の半導体装置は、絶縁基板と、前記絶縁基板の上に形成された導電パターンと、前記導電パターンの上に設けられ、かつ電気的に並列に接続された複数の半導体素子と、を有し、前記導電パターンは、平面視で前記複数の半導体素子を囲む最小の矩形領域を有し、前記複数の半導体素子は、それぞれ第1導電型のドリフト領域を有し、前記複数の半導体素子は、前記矩形領域の重心から最も近くに位置する第1半導体素子と、前記矩形領域の重心から最も遠くに位置する第2半導体素子と、を含み、前記第1半導体素子の前記ドリフト領域における第1キャリア寿命は、前記第2半導体素子の前記ドリフト領域における第2キャリア寿命よりも長い。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、半導体装置のサイズを大きくすることなく、複数の半導体素子間の特性のばらつきを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図3図3は、半導体素子の単位セルを示す図である。
図4図4は、半導体素子を示す断面図である。
図5図5は、半導体素子に含まれるボディダイオードのIV特性の例を示す図である。
図6図6は、半導体素子における動作前のドリフト領域の電気抵抗を示す図である。
図7図7は、伝導度変調を無視した場合の半導体素子における動作時のドリフト領域の電気抵抗を示す図である。
図8図8は、伝導度変調を考慮した場合の半導体素子における動作時のドリフト領域の電気抵抗を示す図である。
図9図9は、第2実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
図10図10は、第2実施形態の変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
図11図11は、第3実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図12図12は、第3実施形態の変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
図13図13は、スイッチング特性の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また結晶学上の指数が負であることは、通常、"-"(バー)を数字の上に付すことによって表現されるが、本明細書中では数字の前に負の符号を付している。
【0011】
〔1〕 本開示の一態様に係る半導体装置は、絶縁基板と、前記絶縁基板の上に形成された導電パターンと、前記導電パターンの上に設けられ、かつ電気的に並列に接続された複数の半導体素子と、を有し、前記導電パターンは、平面視で前記複数の半導体素子を囲む最小の矩形領域を有し、前記複数の半導体素子は、それぞれ第1導電型のドリフト領域を有し、前記複数の半導体素子は、前記矩形領域の重心から最も近くに位置する第1半導体素子と、前記矩形領域の重心から最も遠くに位置する第2半導体素子と、を含み、前記第1半導体素子の前記ドリフト領域における第1キャリア寿命は、前記第2半導体素子の前記ドリフト領域における第2キャリア寿命よりも長い。
【0012】
半導体装置の動作時には第1半導体素子の温度が第2半導体素子の温度よりも高くなり、第1半導体素子において第2半導体素子よりもドリフト領域の温度が高くなる。このため、第1半導体素子において第2半導体素子よりも温度上昇による電気抵抗の上昇量が大きくなる。その一方で、第1キャリア寿命が第2キャリア寿命よりも長いため、半導体装置の動作時には、第1半導体素子において第2半導体素子よりも伝導度変調による電気抵抗の低下量が大きくなる。このため、温度上昇による電気抵抗の上昇量の相違と伝導度変調による電気抵抗の低下量の相違とが打ち消し合い、第1半導体素子と第2半導体素子との間における高温環境下での電気抵抗のばらつきが抑制される。従って、半導体素子間の間隔を広げることなく、すなわち半導体装置のサイズを大きくすることなく、複数の半導体素子間の特性のばらつきを小さくできる。
【0013】
〔2〕 〔1〕において、前記複数の半導体素子のうちで前記第1キャリア寿命が最も長くてもよい。この場合、複数の半導体素子間の特性のばらつきを特に小さくできる。
【0014】
〔3〕 〔1〕において、前記複数の半導体素子のうちで前記第2キャリア寿命が最も短くてもよい。この場合、複数の半導体素子間の特性のばらつきを特に小さくできる。
【0015】
〔4〕 〔1〕において、前記複数の半導体素子のうちで前記第1キャリア寿命が最も長く、前記複数の半導体素子のうちで前記第2キャリア寿命が最も短くてもよい。この場合、複数の半導体素子間の特性のばらつきを特に小さくできる。
【0016】
〔5〕 〔1〕から〔4〕のいずれかにおいて、前記複数の半導体素子は、前記矩形領域の重心からの距離が前記第1半導体素子よりも遠くかつ前記第2半導体素子よりも近い第3半導体素子を含み、前記第3半導体素子の前記ドリフト領域における第3キャリア寿命は、前記第2キャリア寿命よりも長く、かつ前記第1キャリア寿命よりも短くてもよい。この場合、複数の半導体素子間の特性のばらつきを特に小さくできる。
【0017】
〔6〕 本開示の他の一態様に係る半導体装置は、絶縁基板と、前記絶縁基板の上に形成された導電パターンと、前記導電パターンの上に設けられ、かつ電気的に並列に接続された複数の半導体素子と、を有し、前記複数の半導体素子は、それぞれ第1導電型のドリフト領域を有し、前記複数の半導体素子は、隣り合う前記半導体素子の数が最も多い第4半導体素子と、隣り合う前記半導体素子の数が最も少ない第5半導体素子と、を含み、前記第4半導体素子の前記ドリフト領域における第4キャリア寿命は、前記第5半導体素子の前記ドリフト領域における第5キャリア寿命よりも長い。
【0018】
半導体装置の動作時には第4半導体素子の温度が第5半導体素子の温度よりも高くなり、第4半導体素子において第5半導体素子よりもドリフト領域の温度が高くなる。このため、第4半導体素子において第5半導体素子よりも温度上昇による電気抵抗の上昇量が大きくなる。その一方で、第4キャリア寿命が第5キャリア寿命よりも長いため、半導体装置の動作時には、第4半導体素子において第5半導体素子よりも伝導度変調による電気抵抗の低下量が大きくなる。このため、温度上昇による電気抵抗の上昇量の相違と伝導度変調による電気抵抗の低下量の相違とが打ち消し合い、第4半導体素子と第5半導体素子との間における高温環境下での電気抵抗のばらつきが抑制される。従って、半導体素子間の間隔を広げることなく、すなわち半導体装置のサイズを大きくすることなく、複数の半導体素子間の特性のばらつきを小さくできる。
【0019】
〔7〕 〔6〕において、前記複数の半導体素子のうちで前記第4キャリア寿命が最も長くてもよい。この場合、複数の半導体素子間の特性のばらつきを特に小さくできる。
【0020】
〔8〕 〔6〕において、前記複数の半導体素子のうちで前記第5キャリア寿命が最も短くてもよい。この場合、複数の半導体素子間の特性のばらつきを特に小さくできる。
【0021】
〔9〕 〔6〕において、前記複数の半導体素子のうちで前記第4キャリア寿命が最も長く、前記複数の半導体素子のうちで前記第5キャリア寿命が最も短くてもよい。この場合、複数の半導体素子間の特性のばらつきを特に小さくできる。
【0022】
〔10〕 〔6〕から〔9〕のいずれかにおいて、前記複数の半導体素子は、隣り合う前記半導体素子の数が前記第4半導体素子よりも少なくかつ前記第5半導体素子よりも多い第6半導体素子を含み、前記第6半導体素子の前記ドリフト領域における第6キャリア寿命は、前記第5キャリア寿命よりも長く、かつ前記第4キャリア寿命よりも短くてもよい。この場合、複数の半導体素子間の特性のばらつきを特に小さくできる。
【0023】
〔11〕 本開示の他の一態様に係る半導体装置は、絶縁基板と、前記絶縁基板の上に形成された導電パターンと、前記導電パターンの上に設けられ、かつ電気的に並列に接続された複数の半導体素子と、を有し、前記複数の半導体素子は、それぞれ第1導電型のドリフト領域を有し、前記複数の半導体素子は、動作時の温度が最も高い第7半導体素子と、動作時の温度が最も低い第8半導体素子と、を含み、前記第7半導体素子の前記ドリフト領域における第7キャリア寿命は、前記第8半導体素子の前記ドリフト領域における第8キャリア寿命よりも長い。
【0024】
半導体装置の動作時には第7半導体素子の温度が第8半導体素子の温度よりも高くなり、第7半導体素子において第8半導体素子よりもドリフト領域の温度が高くなる。このため、第7半導体素子において第8半導体素子よりも温度上昇による電気抵抗の上昇量が大きくなる。その一方で、第7キャリア寿命が第8キャリア寿命よりも長いため、半導体装置の動作時には、第7半導体素子において第8半導体素子よりも伝導度変調による電気抵抗の低下量が大きくなる。このため、温度上昇による電気抵抗の上昇量の相違と伝導度変調による電気抵抗の低下量の相違とが打ち消し合い、第7半導体素子と第8半導体素子との間における高温環境下での電気抵抗のばらつきが抑制される。従って、半導体素子間の間隔を広げることなく、すなわち半導体装置のサイズを大きくすることなく、複数の半導体素子間の特性のばらつきを小さくできる。
【0025】
〔12〕 〔11〕において、前記複数の半導体素子のうちで前記第7キャリア寿命が最も長くてもよい。この場合、複数の半導体素子間の特性のばらつきを特に小さくできる。
【0026】
〔13〕 〔11〕において、前記複数の半導体素子のうちで前記第8キャリア寿命が最も短くてもよい。この場合、複数の半導体素子間の特性のばらつきを特に小さくできる。
【0027】
〔14〕 〔11〕において、前記複数の半導体素子のうちで前記第7キャリア寿命が最も長く、前記複数の半導体素子のうちで前記第8キャリア寿命が最も短くてもよい。この場合、複数の半導体素子間の特性のばらつきを特に小さくできる。
【0028】
〔15〕 〔11〕から〔14〕のいずれかにおいて、前記複数の半導体素子は、動作時の温度が前記第7半導体素子よりも低くかつ前記第8半導体素子よりも高い第9半導体素子を含み、前記第9半導体素子の前記ドリフト領域における第9キャリア寿命は、前記第8キャリア寿命よりも長く、かつ前記第7キャリア寿命よりも短くてもよい。この場合、複数の半導体素子間の特性のばらつきを特に小さくできる。
【0029】
〔16〕 〔11〕から〔15〕のいずれかにおいて、前記複数の半導体素子は一列に配置され、前記第7半導体素子は、中央に配置される半導体素子であり、前記第8半導体素子は、端部に配置される半導体素子であってもよい。この場合、複数の半導体素子間の特性のばらつきを特に小さくできる。
【0030】
〔17〕 〔1〕から〔16〕のいずれかにおいて、前記ドリフト領域は、炭化珪素、窒化ガリウムまたは酸化ガリウムにより形成されていてもよい。炭化珪素、窒化ガリウムおよび酸化ガリウムは、シリコンに比べバンドギャップが広く、ドリフト領域が炭化珪素、窒化ガリウムまたは酸化ガリウムにより形成されている場合、より低抵抗で電力損失の少ない半導体装置が得られる。また、半導体装置の小型化の観点でも有利である。
【0031】
〔18〕 〔1〕から〔17〕のいずれかにおいて、前記絶縁基板を複数有し、前記複数の絶縁基板の上のそれぞれに前記導電パターンが形成され、前記導電パターンの上に前記複数の半導体素子が設けられてもよい。この場合、半導体装置のサイズを大きくすることなく、複数の導電パターンごとに複数の半導体素子間の特性のばらつきを小さくできる。
【0032】
〔19〕 〔1〕から〔17〕のいずれかにおいて、前記導電パターンを複数有し、前記複数の導電パターンの上のそれぞれに前記複数の半導体素子が設けられてもよい。この場合、半導体装置のサイズを大きくすることなく、複数の導電パターンごとに複数の半導体素子間の特性のばらつきを小さくできる。
【0033】
〔20〕 〔1〕から〔17〕のいずれかにおいて、前記絶縁基板を複数有し、前記複数の絶縁基板の上のそれぞれに前記導電パターンが複数形成され、前記複数の導電パターンの上のそれぞれに前記複数の半導体素子が設けられてもよい。この場合、半導体装置のサイズを大きくすることなく、複数の導電パターンごとに複数の半導体素子間の特性のばらつきを小さくできる。
【0034】
〔21〕 〔1〕から〔17〕のいずれかにおいて、前記絶縁基板を複数有し、前記複数の絶縁基板の上のそれぞれに前記導電パターンが形成され、前記導電パターンの上に前記複数の半導体素子が設けられてもよい。この場合、半導体装置のサイズを大きくすることなく、複数の導電パターンごとに複数の半導体素子間の特性のばらつきを小さくできる。
【0035】
〔22〕 〔1〕から〔21〕のいずれかにおいて、前記複数の半導体素子は、電界効果トランジスタを含んでもよい。この場合、特性のばらつきが抑制された複数の電界効果トランジスタを含む半導体装置が得られる。
【0036】
〔23〕 〔1〕から〔22〕のいずれかにおいて、前記複数の半導体素子は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタを含んでもよい。この場合、特性のばらつきが抑制された複数の絶縁ゲートバイポーラトランジスタを含む半導体装置が得られる。
【0037】
〔24〕 〔1〕から〔23〕のいずれかにおいて、前記複数の半導体素子は、pn接合ダイオードを含んでもよい。この場合、特性のばらつきが抑制された複数のpn接合ダイオードを含む半導体装置が得られる。
【0038】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態について詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0039】
(第1実施形態)
図1および図2を参照し、第1実施形態に係る半導体装置1について説明する。図1は第1実施形態に係る半導体装置1を示す平面図である。図2は第1実施形態に係る半導体装置1を示す断面図であり、図1におけるII-II線矢視断面図である。
【0040】
第1実施形態に係る半導体装置1は、主として、放熱板110と、筐体120と、絶縁基板130と、複数の半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140eとを有する。
【0041】
放熱板110は、例えば平面視で矩形状の厚さが一様の板状体である。放熱板110は、熱伝導率の高い素材、例えば銅(Cu)、銅合金、アルミニウム(Al)等の金属により形成される。放熱板110は、熱界面材料(thermal interface material:TIM)等を用いて冷却器等に固定される。
【0042】
筐体120は、例えば平面視において枠状に形成されており、筐体120の外形は放熱板110の外形と同等である。筐体120は、樹脂等の絶縁体により形成される。
【0043】
絶縁基板130は、筐体120の内側において、放熱板110の上に配置されている。絶縁基板130は、窒化珪素等の絶縁体により形成される。絶縁基板130の下面には、導電層131が設けられている。導電層131は、銅等の金属により形成される。導電層131は、はんだ等の接合材151により放熱板110の上面に接合されている。絶縁基板130の上面には、導電パターン132が設けられている。導電パターン132は、銅等の金属により形成される。導電パターン132は、平面視で複数の半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140eを囲む最小の矩形領域A11を有する。ここで、最小の矩形領域A11とは、導電パターン132の中にあり、平面視で複数の半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140eの全てを囲む矩形状の領域のうちで最も面積が小さい領域を意味する。なお、後述する最小の矩形領域A21、A22、A31、A32、A33、A34、A35およびA36においても同じである。
【0044】
複数の半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140eは、導電パターン132の上に設けられている。複数の半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140eは、はんだ等の接合材152により導電パターン132の上面に接合されている。複数の半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140eは、導電パターン132の長手方向に沿って一列に配置されている。半導体素子140aおよび140eは、矩形領域A11の端部に配置され、半導体素子140cは矩形領域A11の中央に配置されている。複数の半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140eは、電気的に並列に接続されている。各半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140eは、後述するドリフト領域11(図4参照)を有する。各半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140eは、電界効果トランジスタ(FET:Field-Effect Transistor)である。FETは、例えばMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)FETである。MOSFETにはpn接合ダイオードが寄生している。つまり、MOSFETはpn接合ダイオードを含んでいる。
【0045】
半導体素子140aおよび140eは、矩形領域A11の重心G11から最も遠くに位置する。半導体素子140cは、矩形領域A11の重心G11から最も近くに位置する。半導体素子140bおよび140dは、半導体素子140cよりも矩形領域A11の重心G11から遠くに位置し、かつ半導体素子140aおよび140eよりも矩形領域A11の重心G11の近くに位置する。半導体素子140cのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子140bおよび140dのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。半導体素子140bおよび140dのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子140aおよび140eのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。この場合、半導体装置1の動作時に複数の半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140e間における高温環境下での電気抵抗等の特性のばらつきを小さくできる。詳細な理由については後述する。
【0046】
半導体素子140aは、1つの半導体素子140bと隣り合う。半導体素子140eは、1つの半導体素子140dと隣り合う。すなわち、半導体素子140aおよび140eは、隣り合う半導体素子の数が1つである。半導体素子140bは、2つの半導体素子140aおよび140cと隣り合う。半導体素子140cは、2つの半導体素子140bおよび140dと隣り合う。半導体素子140dは、2つの半導体素子140cおよび140eと隣り合う。すなわち、半導体素子140b、140cおよび140dは、隣り合う半導体素子の数が2つである。半導体素子140b、140cおよび140dのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子140aおよび140eのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。この場合、半導体装置1の動作時に複数の半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140e間における高温環境下での電気抵抗等の特性のばらつきを小さくできる。詳細な理由については後述する。
【0047】
図3および図4を参照し、半導体装置1が備える半導体素子140aの一例について説明する。図3は、半導体素子140aの単位セルを示す図である。図4は、半導体素子140aを示す断面図であり、図3におけるIV-IV線矢視断面図である。なお、半導体素子140b、140c、140dおよび140eについても半導体素子140aと同じ構成であってよい。
【0048】
半導体素子140aは、トランジスタである。半導体素子140aは、主として、炭化珪素基板10と、ゲート電極31と、ソース電極32と、ドレイン電極33と、ゲートパッド38と、パッシベーション膜39とを有する。パッシベーション膜39には、ソース電極32を露出する第1開口部39Aと、ゲートパッド38を露出する第2開口部39Bとが形成されている。ゲートパッド38は、ゲート電極31と電気的に接続される。
【0049】
炭化珪素基板10は、炭化珪素単結晶基板6と、炭化珪素単結晶基板6の上の炭化珪素エピタキシャル成長層7とを含む。炭化珪素基板10は、主面10Aと、主面10Aとは反対の主面10Bとを有する。炭化珪素エピタキシャル成長層7が主面10Aを構成し、炭化珪素単結晶基板6が主面10Bを構成する。炭化珪素基板10の形状は、例えば直方体状である。主面10AはZ1-Z2方向に垂直な面である。<1-100>はY1-Y2方向に平行な方向である。炭化珪素単結晶基板6および炭化珪素エピタキシャル成長層7は、例えばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素から構成されている。炭化珪素単結晶基板6は、例えば窒素(N)等のn型不純物を含みn型を有する。炭化珪素エピタキシャル成長層7は、窒素等のn型不純物を添加したエピタキシャル成長により形成できる。
【0050】
主面10Aは、(0001)がオフ方向に傾斜した面である。例えば、オフ方向は[11-20]である。例えば、主面10Aは(0001)がオフ方向([11-20])に8°以下のオフ角だけ傾斜した面である。オフ角は、例えば1°以上であってもよいし、2°以上であってもよい。オフ角は、6°以下であってもよいし、4°以下であってもよい。
【0051】
半導体素子140aは、活性領域141と、活性領域141の周囲に設けられた終端領域142とを有する。
【0052】
活性領域141において、炭化珪素エピタキシャル成長層7は、主として、ドリフト領域11と、ボディ領域12と、ソース領域13と、コンタクト領域14と、電界緩和領域15とを有する。
【0053】
ドリフト領域11は、例えば窒素(N)等のn型不純物を含み、n型の導電型を有する。ドリフト領域11は、主面10Bを構成する。ボディ領域12は、ドリフト領域11に接している。ボディ領域12は、例えばアルミニウム(Al)等のp型不純物を含み、p型の導電型を有する。ソース領域13は、ボディ領域12によってドリフト領域11から隔てられるようにボディ領域12上に設けられている。ソース領域13は、例えば窒素又はリン(P)等のn型不純物を含み、n型の導電型を有する。ソース領域13は、主面10Aの一部を構成する。炭化珪素エピタキシャル成長層7がドリフト領域11の下にバッファ層を有してもよい。
【0054】
主面10Aに、複数のゲートトレンチ20が設けられている。複数のゲートトレンチ20は、Y1-Y2方向に平行に延び、X1-X2方向に並んで配置されている。ゲートトレンチ20は、側面21と、底面22とにより規定されている。底面22は、側面21に連なっている。側面21は、ソース領域13およびボディ領域12を貫通している。側面21は、ドリフト領域11に至っている。底面22は、ドリフト領域11に位置している。底面22は、主面10Aとほぼ平行である。側面21は、ソース領域13、ボディ領域12およびドリフト領域11により構成されている。底面22は、ドリフト領域11により構成されている。
【0055】
ゲートトレンチ20内に、側面21および底面22に接するゲート絶縁膜17が形成されている。ゲート絶縁膜17は、底面22においてドリフト領域11に接している。ゲート絶縁膜17は、側面21においてソース領域13、ボディ領域12およびドリフト領域11に接している。
【0056】
ゲート電極31は、ゲート絶縁膜17上に設けられている。ゲート電極31は、例えば導電性不純物を含むポリシリコンから構成されている。ゲート電極31は、ゲートトレンチ20の内部に配置されている。ゲート電極31は、ソース領域13、ボディ領域12およびドリフト領域11に対面している。複数のゲート電極31は、Y1-Y2方向に平行に延び、X1-X2方向に並んで配置されている。複数のゲート電極31は、<1-100>に沿って延びる。
【0057】
コンタクト領域14は、X1-X2方向で隣り合うゲートトレンチ20の間に、各ゲートトレンチ20の側面21から離れて、ソース領域13を貫通し、ボディ領域12に接するように設けられている。コンタクト領域14は、主面10Aの一部を構成する。コンタクト領域14は、例えばアルミニウム等のp型不純物を含み、p型の導電型を有する。
【0058】
電界緩和領域15は、X1-X2方向で隣り合うゲートトレンチ20の間に、各ゲートトレンチ20の側面21から離れて、ボディ領域12から主面10Bに向けて延びるように設けられている。電界緩和領域15は、例えばアルミニウム等のp型不純物を含み、p型の導電型を有する。電界緩和領域15は、下端面15Cと、第1側端面15Aと、第2側端面15Bとを有する。下端面15Cは、XY平面にほぼ平行である。第1側端面15Aおよび第2側端面15Bは、YZ平面にほぼ平行である。第1側端面15Aが第2側端面15BのX1側にある。下端面15C、第1側端面15Aおよび第2側端面15Bは、ドリフト領域11に接する。
【0059】
ゲートトレンチ20およびゲート電極31を覆うように層間絶縁膜35が設けられている。層間絶縁膜35に、ソース領域13の一部およびコンタクト領域14を露出するコンタクトホール36が形成されている。
【0060】
ソース電極32は、層間絶縁膜35の上に設けられており、コンタクトホール36を通じて主面10Aに接する。ソース電極32は、ソース領域13およびコンタクト領域14に電気的に接続されている。層間絶縁膜35は、ゲート電極31とソース電極32とを電気的に絶縁している。
【0061】
ドレイン電極33は、主面10Bに接する。ドレイン電極33は、ドリフト領域11に電気的に接続されている。
【0062】
半導体素子140aには、p型のボディ領域12およびn型のドリフト領域11を含むpn接合ダイオードが寄生している。つまり、半導体素子140aはボディダイオードとしてpn接合ダイオードを含む。pn接合ダイオードはバイポーラ半導体素子の一例である。
【0063】
半導体素子140aは、ゲートトレンチ20の周期パターンの単位となる複数の単位セル143を活性領域141内に含む。複数の単位セル143は、Y1-Y2方向を長手方向とし、X1-X2方向に並ぶ。複数の単位セル143は、<1-100>に沿って延びる。
【0064】
終端領域142は、例えば平面形状が環状の領域であり、主面10Aの一部を構成する。終端領域142は、例えばアルミニウム等のp型不純物を含み、p型の導電型を有する。
【0065】
次に、図5図8を参照し、半導体装置1の動作時に複数の半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140e間における高温環境下での電気抵抗等の特性のばらつきを小さくできる理由について説明する。
【0066】
半導体装置は、動作時に半導体素子の温度が上昇する。第1実施形態に係る半導体装置1では、動作時に矩形領域A11の重心G11に近いほど熱がこもる。そのため、矩形領域A11の重心G11から最も近くに位置する半導体素子140cは、矩形領域A11の重心G11から最も遠くに位置する半導体素子140aおよび140eよりも温度が上昇しやすい。また、半導体装置1の動作時には、隣り合う半導体素子の数が多いほど隣り合う半導体素子からの発熱の影響を受ける。そのため、隣り合う半導体素子の数が最も多い半導体素子140b、140cおよび140dは、隣り合う半導体素子の数が最も少ない半導体素子140aおよび140eよりも温度が上昇しやすい。そして、ドリフト領域11の電気抵抗は、ドリフト領域11の温度が上昇するほど高くなる。
【0067】
一般に、バイポーラ半導体素子に含まれるドリフト領域の電気抵抗は、伝導度変調によりオン時に低下する。また、ドリフト領域のオン時の電気抵抗の低下量は、ドリフト領域におけるキャリア寿命が長いほど大きい。このため、ボディダイオードを含む半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140eにおいては、ドリフト領域11におけるキャリア寿命が長いほどボディダイオードのオン時の電気抵抗の低下量が大きくなる。例えば、半導体素子140cのドリフト領域11におけるキャリア寿命が半導体素子140bおよび140dのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長い場合、半導体素子140cにおいて、半導体素子140bおよび140dよりもボディダイオードの伝導度変調による電気抵抗の低下量が大きくなる。また、例えば、半導体素子140bおよび140dのドリフト領域11におけるキャリア寿命が半導体素子140aおよび140eのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長い場合、半導体素子140bおよび140dにおいて、半導体素子140aおよび140eよりもボディダイオードの伝導度変調による電気抵抗の低下量が大きくなる。図5に、半導体素子140a、140c、140eに含まれるボディダイオードのIV特性の例を示す。図5中の横軸は順方向電圧(VF)を示し、縦軸は順方向電流(IF)を示す。
【0068】
本実施形態では、半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140eの間で、ドリフト領域11の厚さおよび不純物濃度が等しい。このため、ドリフト領域11の電気抵抗は、伝導度変調を無視すれば、同じ温度下で等しい。例えば、半導体装置1の動作前で、半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140eの温度が等しい場合、図6に示されるように、ドリフト領域11の電気抵抗も等しい。図6は、半導体素子における動作前のドリフト領域の電気抵抗を示す図である。
【0069】
また、半導体装置1が動作し、半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140eの温度が上昇すると、ドリフト領域11の温度も上昇する。この時、上述のように、半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140eの間で、温度の上昇の程度が相違する。このため、半導体素子140cにおいて、半導体素子140bおよび140dよりもドリフト領域11の温度が高くなりやすく、半導体素子140bおよび140dにおいて、半導体素子140aおよび140eよりもドリフト領域11の温度が高くなりやすい。そして、伝導度変調を無視した場合のドリフト領域11の電気抵抗は、ドリフト領域11の温度に応じて相違する。具体的には、伝導度変調を無視すると、図7に示されるように、半導体素子140cにおいて、半導体素子140bおよび140dよりもドリフト領域11の電気抵抗が高くなり、半導体素子140bおよび140dにおいて、半導体素子140aおよび140eよりもドリフト領域11の電気抵抗が高くなる。図7は、伝導度変調を無視した場合の半導体素子における動作時のドリフト領域の電気抵抗を示す図である。
【0070】
その一方で、上述のように、半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140eには伝導度変調が生じるため、各半導体素子におけるドリフト領域11のキャリア寿命に応じてオン時の電気抵抗が低下する。このため、半導体素子140cにおいて、半導体素子140bおよび140dよりもドリフト領域11の電気抵抗の低下量が大きくなる。また、半導体素子140bおよび140dにおいて、半導体素子140aおよび140eよりもドリフト領域11の電気抵抗の低下量が大きくなる。従って、伝導度変調を考慮すると、図8に示されるように、半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140eにおいて、ドリフト領域11の電気抵抗の相違が縮小される。図8は、伝導度変調を考慮した場合の半導体素子における動作時のドリフト領域の電気抵抗を示す図である。図8には、比較のために、伝導度変調を無視した場合の電気抵抗を二点鎖線で示してある。
【0071】
このように、本実施形態によれば、高温環境下での半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140eに含まれるボディダイオードの電気抵抗のばらつきを小さくできる。従って、半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140e間の間隔を広げることなく、すなわち半導体装置1のサイズを大きくすることなく、複数の半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140e間の特性のばらつきを小さくできる。
【0072】
(第2実施形態)
図9を参照し、第2実施形態に係る半導体装置2について説明する。図9は第2実施形態に係る半導体装置2を示す平面図である。
【0073】
第2実施形態の半導体装置2は、主として、放熱板210と、筐体220と、2つの絶縁基板230aおよび230bと、複数の半導体素子240a、240b、240c、240d、240e、240f、240g、240h、240iおよび240jとを有する。放熱板210および筐体220の構成は、それぞれ放熱板110および筐体120の構成と同じである。
【0074】
2つの絶縁基板230aおよび230bは、筐体220の内側において、同一の放熱板210の上に配置されている。絶縁基板230aおよび230bは、平面視で間隔をあけて並んで配置されている。各絶縁基板230aおよび230bの下面には、導電層(図示せず)が設けられている。導電層は、導電層131と同様に、はんだ等の絶合材(図示せず)により放熱板210の上面に接合されている。絶縁基板230aの上面には、導電パターン232aが設けられている。導電パターン232aは、平面視で複数の半導体素子240a、240b、240c、240dおよび240eを囲む最小の矩形領域A21を有する。絶縁基板230bの上面には、導電パターン232bが設けられている。導電パターン232bは、平面視で複数の半導体素子240f、240g、240h、240iおよび240jを囲む最小の矩形領域A22を有する。導電パターン232aおよび232bは、銅等の金属により形成される。
【0075】
複数の半導体素子240a、240b、240c、240dおよび240eは、導電パターン232aの上に設けられている。複数の半導体素子240a、240b、240c、240dおよび240eは、はんだ等の接合材(図示せず)により導電パターン232aの上面に接合されている。複数の半導体素子240a、240b、240c、240dおよび240eは、導電パターン232aの長手方向に沿って一列に配置されている。半導体素子240aおよび240eは矩形領域A21の端部に配置され、半導体素子240cは矩形領域A21の中央に配置されている。複数の半導体素子240a、240b、240c、240dおよび240eは、電気的に並列に接続されている。各半導体素子240a、240b、240c、240dおよび240eの構成は、半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140eの構成と同じである。
【0076】
半導体素子240aおよび240eは、矩形領域A21の重心G21から最も遠くに位置する。半導体素子240cは、矩形領域A21の重心G21から最も近くに位置する。半導体素子240bおよび240dは、半導体素子240cよりも矩形領域A21の重心G21から遠くに位置し、かつ半導体素子240aおよび240eよりも矩形領域A21の重心G21の近くに位置する。半導体素子240cのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子240bおよび240dのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。半導体素子240bおよび240dのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子240aおよび240eのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。この場合、第1実施形態と同様に、半導体装置2の動作時に複数の半導体素子240a、240b、240c、240dおよび240e間における高温環境下での電気抵抗等の特性のばらつきを小さくできる。
【0077】
半導体素子240aは、導電パターン232a上の1つの半導体素子240bと隣り合う。半導体素子240eは、導電パターン232a上の1つの半導体素子240dと隣り合う。すなわち、半導体素子240aおよび240eは、導電パターン232a上に設けられた隣り合う半導体素子の数が1つである。半導体素子240bは、導電パターン232a上の2つの半導体素子240aおよび240cと隣り合う。半導体素子240cは、導電パターン232a上の2つの半導体素子240bおよび240dと隣り合う。半導体素子240dは、導電パターン232a上の2つの半導体素子240cおよび240eと隣り合う。すなわち、半導体素子240b、240cおよび240dは、導電パターン232a上に設けられた隣り合う半導体素子の数が2つである。半導体素子240b、240cおよび240dのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子240aおよび240eのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。この場合、第1実施形態と同様に、半導体装置2の動作時に複数の半導体素子240a、240b、240c、240dおよび240e間における高温環境下での電気抵抗等の特性のばらつきを小さくできる。
【0078】
複数の半導体素子240f、240g、240h、240iおよび240jは、導電パターン232bの上に設けられている。複数の半導体素子240f、240g、240h、240iおよび240jは、はんだ等の接合材(図示せず)により導電パターン232bの上面に接合されている。複数の半導体素子240f、240g、240h、240iおよび240jは、導電パターン232bの長手方向に沿って一列に配置されている。半導体素子240aおよび240eは矩形領域A22の端部に配置され、半導体素子240cは矩形領域A22の中央に配置されている。複数の半導体素子240f、240g、240h、240iおよび240jは、電気的に並列に接続されている。各半導体素子240f、240g、240h、240iおよび240jの構成は、半導体素子240a、240b、240c、240dおよび240eの構成と同じである。
【0079】
半導体素子240fおよび240jは、矩形領域A22の重心G22から最も遠くに位置する。半導体素子240hは、矩形領域A22の重心G22から最も近くに位置する。半導体素子240gおよび240iは、半導体素子240hよりも矩形領域A22の重心G22から遠くに位置し、かつ半導体素子240fおよび240jよりも矩形領域A22の重心G22の近くに位置する。半導体素子240hのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子240gおよび240iのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。半導体素子240gおよび240iのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子240fおよび240jのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。この場合、第1実施形態と同様に、半導体装置2の動作時に複数の半導体素子240f、240g、240h、240iおよび240j間における高温環境下での電気抵抗等の特性のばらつきを小さくできる。
【0080】
半導体素子240fは、導電パターン232b上の1つの半導体素子240gと隣り合う。半導体素子240jは、導電パターン232b上の1つの半導体素子240iと隣り合う。すなわち、半導体素子240fおよび240fは、導電パターン232b上に設けられた隣り合う半導体素子の数が1つである。半導体素子240gは、導電パターン232b上の2つの半導体素子240fおよび240hと隣り合う。半導体素子240hは、導電パターン232b上の2つの半導体素子240gおよび240iと隣り合う。半導体素子240iは、導電パターン232b上の2つの半導体素子240hおよび240jと隣り合う。すなわち、半導体素子240g、240hおよび240iは、導電パターン232b上に設けられた隣り合う半導体素子の数が2つである。半導体素子240g、240hおよび240iのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子240fおよび240jのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。この場合、第1実施形態と同様に、半導体装置2の動作時に複数の半導体素子240f、240g、240h、240iおよび240j間における高温環境下での電気抵抗等の特性のばらつきを小さくできる。
【0081】
図10を参照し、第2実施形態の変形例に係る半導体装置2Aについて説明する。図10は第2実施形態の変形例に係る半導体装置2Aを示す平面図である。
【0082】
図10に示されるように、第2実施形態の変形例に係る半導体装置2Aにおいては、放熱板210の上に1つの絶縁基板230が配置されている。絶縁基板230の上面には、導電パターン232aおよび232bが設けられている。導電パターン232aおよび232bは、平面視で間隔をあけて並んで配置されている。他の構成は第2実施形態と同じである。
【0083】
このような変形例によっても、第2実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0084】
(第3実施形態)
図11を参照し、第3実施形態に係る半導体装置3について説明する。図11は第3実施形態に係る半導体装置3を示す平面図である。
【0085】
第3実施形態の半導体装置3は、主として、放熱板310と、筐体320と、2つの絶縁基板330aおよび330bと、複数の半導体素子340a、340b、340c、340d、340e、340f、340g、340h、340i、340j、340k、340l、340m、340n、340o、340p、340q、340r、340sおよび340tとを有する。放熱板310および筐体320の構成は、それぞれ放熱板110および筐体120の構成と同じである。
【0086】
2つの絶縁基板330aおよび330bは、筐体320の内側において、同一の放熱板310の上に配置されている。絶縁基板330aおよび330bは、平面視で間隔をあけて並んで配置されている。各絶縁基板330aおよび330bの下面には、導電層(図示せず)が設けられている。導電層は、導電層131と同様に、はんだ等の絶合材(図示せず)により放熱板310の上面に接合されている。
【0087】
絶縁基板330aの上面には、導電パターン332aおよび332bが設けられている。導電パターン332aは、平面視で複数の半導体素子340a、340b、340c、340dおよび340eを囲む最小の矩形領域A31を有する。導電パターン332bは、平面視で複数の半導体素子340f、340g、340h、340iおよび340jを囲む最小の矩形領域A32を有する。
【0088】
絶縁基板330bの上面には、導電パターン332cおよび332dが設けられている。導電パターン332cは、平面視で複数の半導体素子340k、340l、340m、340nおよび340oを囲む最小の矩形領域A33を有する。導電パターン332dは、平面視で複数の半導体素子340p、340q、340r、340sおよび340tを囲む最小の矩形領域A34を有する。
【0089】
導電パターン332a、332b、332cおよび332dは、銅等の金属により形成される。
【0090】
複数の半導体素子340a、340b、340c、340dおよび340eは、導電パターン332aの上に設けられている。複数の半導体素子340a、340b、340c、340dおよび340eは、はんだ等の接合材(図示せず)により導電パターン332aの上面に接合されている。複数の半導体素子340a、340b、340c、340dおよび340eは、導電パターン332aの長手方向に沿って一列に配置されている。半導体素子340aおよび340eは矩形領域A31の端部に配置され、半導体素子340cは矩形領域A31の中央に配置されている。複数の半導体素子340a、340b、340c、340dおよび340eは、電気的に並列に接続されている。各半導体素子340a、340b、340c、340dおよび340eの構成は、半導体素子140a、140b、140c、140dおよび140eの構成と同じである。
【0091】
半導体素子340aおよび340eは、矩形領域A31の重心G31から最も遠くに位置する。半導体素子340cは、矩形領域A31の重心G31から最も近くに位置する。半導体素子340bおよび340dは、半導体素子340cよりも矩形領域A31の重心G31から遠くに位置し、かつ半導体素子340aおよび340eよりも矩形領域A31の重心G31の近くに位置する。半導体素子340cのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子340bおよび340dのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。半導体素子340bおよび340dのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子340aおよび340eのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。この場合、第1実施形態と同様に、半導体装置3の動作時に複数の半導体素子340a、340b、340c、340dおよび340e間における高温環境下での電気抵抗等の特性のばらつきを小さくできる。
【0092】
半導体素子340aは、導電パターン332a上の1つの半導体素子340bと隣り合う。半導体素子340eは、導電パターン332a上の1つの半導体素子340dと隣り合う。すなわち、半導体素子340aおよび340eは、導電パターン332a上に設けられた隣り合う半導体素子の数が1つである。半導体素子340bは、導電パターン332a上の2つの半導体素子340aおよび340cと隣り合う。半導体素子340cは、導電パターン332a上の2つの半導体素子340bおよび340dと隣り合う。半導体素子340dは、導電パターン332a上の2つの半導体素子340cおよび340eと隣り合う。すなわち、半導体素子340b、340cおよび340dは、導電パターン332a上に設けられた隣り合う半導体素子の数が2つである。半導体素子340b、340cおよび340dのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子340aおよび340eのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。この場合、第1実施形態と同様に、半導体装置3の動作時に複数の半導体素子340a、340b、340c、340dおよび340e間における高温環境下での電気抵抗等の特性のばらつきを小さくできる。
【0093】
複数の半導体素子340f、340g、340h、340iおよび340jは、導電パターン332bの上に設けられている。複数の半導体素子340f、340g、340h、340iおよび340jは、はんだ等の接合材(図示せず)により導電パターン332bの上面に接合されている。複数の半導体素子340f、340g、340h、340iおよび340jは、導電パターン332bの長手方向に沿って一列に配置されている。半導体素子340fおよび340jは矩形領域A32の端部に配置され、半導体素子340hは矩形領域A32の中央に配置されている。複数の半導体素子340f、340g、340h、340iおよび340jは、電気的に並列に接続されている。各半導体素子340f、340g、340h、340iおよび340jの構成は、半導体素子340a、340b、340c、340dおよび340eの構成と同じである。
【0094】
半導体素子340fおよび340jは、矩形領域A32の重心G32から最も遠くに位置する。半導体素子340hは、矩形領域A32の重心G32から最も近くに位置する。半導体素子340gおよび340iは、半導体素子340hよりも矩形領域A32の重心G32から遠くに位置し、かつ半導体素子340fおよび340jよりも矩形領域A32の重心G32の近くに位置する。半導体素子340hのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子340gおよび340iのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。半導体素子340gおよび340iのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子340fおよび340jのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。この場合、第1実施形態と同様に、半導体装置3の動作時に複数の半導体素子340f、340g、340h、340iおよび340j間における高温環境下での電気抵抗等の特性のばらつきを小さくできる。
【0095】
半導体素子340fは、導電パターン332b上の1つの半導体素子340gと隣り合う。半導体素子340jは、導電パターン332b上の1つの半導体素子340iと隣り合う。すなわち、半導体素子340fおよび340fは、導電パターン332b上に設けられた隣り合う半導体素子の数が1つである。半導体素子340gは、導電パターン332b上の2つの半導体素子340fおよび340hと隣り合う。半導体素子340hは、導電パターン332b上の2つの半導体素子340gおよび340iと隣り合う。半導体素子340iは、導電パターン332b上の2つの半導体素子340hおよび340jと隣り合う。すなわち、半導体素子340g、340hおよび340iは、導電パターン332b上に設けられた隣り合う半導体素子の数が2つである。半導体素子340g、340hおよび340iのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子340fおよび340jのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。この場合、第1実施形態と同様に、半導体装置3の動作時に複数の半導体素子340f、340g、340h、340iおよび340j間における高温環境下での電気抵抗等の特性のばらつきを小さくできる。
【0096】
複数の半導体素子340k、340l、340m、340nおよび340oは、導電パターン332cの上に設けられている。複数の半導体素子340k、340l、340m、340nおよび340oは、はんだ等の接合材(図示せず)により導電パターン332cの上面に接合されている。複数の半導体素子340k、340l、340m、340nおよび340oは、導電パターン332cの長手方向に沿って一列に配置されている。半導体素子340kおよび340oは矩形領域A33の端部に配置され、半導体素子340mは矩形領域A33の中央に配置されている。複数の半導体素子340k、340l、340m、340nおよび340oは、電気的に並列に接続されている。各半導体素子340k、340l、340m、340nおよび340oの構成は、半導体素子340a、340b、340c、340dおよび340eの構成と同じである。
【0097】
半導体素子340kおよび340oは、矩形領域A33の重心G33から最も遠くに位置する。半導体素子340mは、矩形領域A33の重心G33から最も近くに位置する。半導体素子340lおよび340nは、半導体素子340mよりも矩形領域A33の重心G33から遠くに位置し、かつ半導体素子340kおよび340oよりも矩形領域A33の重心G33の近くに位置する。半導体素子340mのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子340lおよび340nのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。半導体素子340lおよび340nのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子340kおよび340oのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。この場合、第1実施形態と同様に、半導体装置3の動作時に複数の半導体素子340k、340l、340m、340nおよび340o間における高温環境下での電気抵抗等の特性のばらつきを小さくできる。
【0098】
半導体素子340kは、導電パターン332c上の1つの半導体素子340lと隣り合う。半導体素子340oは、導電パターン332c上の1つの半導体素子340nと隣り合う。すなわち、半導体素子340kおよび340oは、導電パターン332c上に設けられた隣り合う半導体素子の数が1つである。半導体素子340lは、導電パターン332c上の2つの半導体素子340kおよび340mと隣り合う。半導体素子340mは、導電パターン332c上の2つの半導体素子340lおよび340oと隣り合う。半導体素子340nは、導電パターン332c上の2つの半導体素子340mおよび340oと隣り合う。すなわち、半導体素子340l、340mおよび340nは、導電パターン332c上に設けられた隣り合う半導体素子の数が2つである。半導体素子340l、340mおよび340nのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子340kおよび340oのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。この場合、第1実施形態と同様に、半導体装置3の動作時に複数の半導体素子340k、340l、340m、340nおよび340o間における高温環境下での電気抵抗等の特性のばらつきを小さくできる。
【0099】
複数の半導体素子340p、340q、340r、340sおよび340tは、導電パターン332dの上に設けられている。複数の半導体素子340p、340q、340r、340sおよび340tは、はんだ等の接合材(図示せず)により導電パターン332dの上面に接合されている。複数の半導体素子340p、340q、340r、340sおよび340tは、導電パターン332dの長手方向に沿って一列に配置されている。半導体素子340pおよび340tは矩形領域A34の端部に配置され、半導体素子340rは矩形領域A34の中央に配置されている。複数の半導体素子340p、340q、340r、340sおよび340tは、電気的に並列に接続されている。各半導体素子340p、340q、340r、340sおよび340tの構成は、半導体素子340a、340b、340c、340dおよび340eの構成と同じである。
【0100】
半導体素子340pおよび340tは、矩形領域A34の重心G34から最も遠くに位置する。半導体素子340rは、矩形領域A34の重心G34から最も近くに位置する。半導体素子340qおよび340sは、半導体素子340rよりも矩形領域A34の重心G34から遠くに位置し、かつ半導体素子340pおよび340tよりも矩形領域A34の重心G34の近くに位置する。半導体素子340rのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子340qおよび340sのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。半導体素子340qおよび340sのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子340pおよび340tのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。この場合、第1実施形態と同様に、半導体装置3の動作時に複数の半導体素子340p、340q、340r、340sおよび340t間における高温環境下での電気抵抗等の特性のばらつきを小さくできる。
【0101】
半導体素子340pは、導電パターン332d上の1つの半導体素子340qと隣り合う。半導体素子340tは、導電パターン332d上の1つの半導体素子340sと隣り合う。すなわち、半導体素子340pおよび340tは、導電パターン332d上に設けられた隣り合う半導体素子の数が1つである。半導体素子340qは、導電パターン332d上の2つの半導体素子340pおよび340rと隣り合う。半導体素子340rは、導電パターン332d上の2つの半導体素子340qおよび340sと隣り合う。半導体素子340sは、導電パターン332d上の2つの半導体素子340rおよび340tと隣り合う。すなわち、半導体素子340q、340rおよび340sは、導電パターン332d上に設けられた隣り合う半導体素子の数が2つである。半導体素子340q、340rおよび340sのドリフト領域11におけるキャリア寿命は、半導体素子340pおよび340tのドリフト領域11におけるキャリア寿命よりも長くてよい。この場合、第1実施形態と同様に、半導体装置3の動作時に複数の半導体素子340p、340q、340r、340sおよび340t間における高温環境下での電気抵抗等の特性のばらつきを小さくできる。
【0102】
図12を参照し、第3実施形態の変形例に係る半導体装置3Aについて説明する。図12は第3実施形態の変形例に係る半導体装置3Aを示す平面図である。
【0103】
図12に示されるように、第3実施形態の変形例に係る半導体装置3Aにおいては、絶縁基板330aの上に1つの導電パターン332eが配置され、かつ絶縁基板330bの上に1つの導電パターン332fが配置されている。導電パターン332eは、平面視で複数の半導体素子340a、340b、340c、340d、340e、340f、340g、340h、340iおよび340jを囲む最小の矩形領域A35を有する。導電パターン332fは、平面視で複数の半導体素子340k、340l、340m、340n、340o、340p、340q、340r、340sおよび340tを囲む最小の矩形領域A36を有する。矩形領域A35は重心G35を有し、矩形領域A36は重心G36を有する。導電パターン332eの上には、複数の半導体素子340a、340b、340c、340d、340e、340f、340g、340h、340iおよび340jが設けられている。導電パターン332fの上には、複数の半導体素子340k、340l、340m、340n、340o、340p、340q、340r、340sおよび340tが設けられている。他の構成は第3実施形態と同じである。
【0104】
このような変形例によっても、第3実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0105】
なお、半導体装置の製造に際しては、個片化前のウェハの段階でドリフト領域のキャリア寿命を測定できる。ドリフト領域のキャリア寿命は、マイクロ波光導電減衰(Microwave PhotoConductivity Decay:μ-PCD)法により測定できる。μ-PCD法では、レーザ光を試料に照射することで試料の内部に電子正孔対を生成し、レーザ光の照射を止めたタイミングから試料のマイクロ波の反射率を計測し、マイクロ波の反射率の減衰曲線を取得する。マイクロ波の反射率と、試料の内部の電子正孔対の数との間に相関があり、キャリア寿命が長い試料ほど、減衰が遅くなる。
【0106】
また、完成した半導体装置に含まれる半導体素子については、次のような方法によりキャリア寿命を比較できる。まず、半導体装置を分解し、半導体素子の特性を個別に測定できるようにする。次いで、各半導体素子に含まれるボディダイオードのスイッチング特性を取得する。スイッチング特性と、ドリフト領域のキャリア寿命との間には相関があり、図13に示すように、キャリア寿命が長いドリフト領域を備えたボディダイオードほど、スイッチングの反応が遅くなる。これは、キャリア寿命が長いドリフト領域を備えたボディダイオードほど、電子正孔対が再結合しにくいためである。従って、スイッチング特性の波形を比較することで、複数の半導体素子の間でキャリア寿命を比較できる。図13はスイッチング特性の例を示す図である。図13中の横軸は時間を示し、縦軸は電流を示す。
【0107】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形および変更が可能である。
【0108】
上記の実施形態では、ドリフト領域が炭化珪素により形成される場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、ドリフト領域はワイドバンドギャップ半導体材料により形成されることが好ましい。ワイドバンドギャップ半導体材料としては、炭化珪素以外に、窒化ガリウム、酸化ガリウム等が挙げられる。炭化珪素、窒化ガリウムおよび酸化ガリウムは入手が容易である。炭化珪素、窒化ガリウムおよび酸化ガリウムは、シリコンに比べバンドギャップが広く、ドリフト領域が炭化珪素、窒化ガリウムまたは酸化ガリウムにより形成されている場合、より低抵抗で電力損失の少ない半導体装置が得られる。また、半導体装置の小型化の観点でも有利である。ドリフト領域は、例えば半導体層のエピタキシャル成長を経て形成されるが、ウェハの面内において半導体層のキャリア寿命にばらつきが生じることがある。そのため、導電パターンの上に無作為に半導体素子を配置すると複数の半導体素子間の特性のばらつきが大きくなる。このように、ドリフト領域がワイドバンドギャップ半導体材料により形成される場合には、複数の半導体素子間の特性のばらつきが大きい。このため、本開示の複数の半導体素子間の特性のばらつきの低減の効果が顕著である。
【0109】
上記の実施形態では、複数の半導体素子がMOSETである場合を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、複数の半導体素子は、MOSFET、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)およびpn接合ダイオードの少なくともいずれかを含んでいてよい。この場合、特性のばらつきが抑制された複数のMOSFET、IGBTおよびpn接合ダイオードの少なくともいずれかを含む半導体装置が得られる。
【0110】
上記の実施形態では、n型を第1導電型とし、かつp型を第2導電型として説明したが、p型を第1導電型とし、かつn型を第2導電型としてもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 半導体装置
6 炭化珪素単結晶基板
7 炭化珪素エピタキシャル成長層
10 炭化珪素基板
10A 主面
10B 主面
11 ドリフト領域
12 ボディ領域
13 ソース領域
14 コンタクト領域
15 電界緩和領域
15A 第1側端面
15B 第2側端面
15C 下端面
17 ゲート絶縁膜
20 ゲートトレンチ
21 側面
22 底面
31 ゲート電極
32 ソース電極
33 ドレイン電極
35 層間絶縁膜
36 コンタクトホール
38 ゲートパッド
39 パッシベーション膜
39A 第1開口部
39B 第2開口部
110 放熱板
120 筐体
130 絶縁基板
131 導電層
132 導電パターン
140a、140b、140c、140d、140e 半導体素子
141 活性領域
142 終端領域
143 単位セル
151、152 接合材
2、2A 半導体装置
210 放熱板
220 筐体
230、230a、230b 絶縁基板
232a、232b 導電パターン
240a、240b、240c、240d、240e、240f、240g、240h、240i、240j 半導体素子
3、3A 半導体装置
310 放熱板
320 筐体
330a、330b 絶縁基板
332a、332b、332c、332d、332e、332f 導電パターン
340a、340b、340c、340d、340e、340f、340g、340h、340i、340j、340k、340l、340m、340n、340o、340p、340q、340r、340s、340t 半導体素子
A11、A21、A22、A31、A32、A33、A34、A35、A36 矩形領域
G11、G21、G22、G31、G32、G33、G34、G35、G36 重心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13