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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046178
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20240327BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240327BHJP
   C23C 16/509 20060101ALI20240327BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20240327BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/31 C
C23C16/509
C23C16/455
H05H1/46 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151413
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】宮城 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】鰍場 真樹
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA05
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC16
2G084CC33
2G084DD14
2G084DD23
2G084FF15
2G084FF32
4K030AA11
4K030AA17
4K030AA18
4K030EA05
4K030EA06
4K030FA03
4K030GA05
4K030KA02
4K030KA23
5F045AA08
5F045AB14
5F045AB32
5F045AC01
5F045AC08
5F045AC09
5F045AC11
5F045AC15
5F045AC16
5F045AF02
5F045AF03
5F045AF09
5F045BB02
5F045DP03
5F045DP28
5F045DQ10
5F045EE02
5F045EE04
5F045EF05
5F045EF18
5F045EH01
5F045EH03
5F045EH05
5F045EH11
5F045EJ01
5F045EK07
5F045EK13
5F045EM10
5F045EN04
(57)【要約】
【課題】より均一な膜厚で対象膜を基板に形成することができる成膜装置を提供する。
【解決手段】成膜装置100はチャンバ1と載置台21と流体ヘッド3とを備える。流体ヘッド3は、チャンバ1内において、載置台21に載置された基板Wの第1主面と向かい合う位置に設けられている。流体ヘッド3はプラズマ室4bとプラズマ源5と複数の第1流出口4cとガス流路6bと複数の第2流出口6cとを有する。プラズマ源5はプラズマ室4bにおいて第1原料ガスをプラズマ化させる。第1流出口4cは、基板Wの第1主面と平面視で重なる重複領域において2次元的に分散配列される。第1原料ガス由来の活性種は第1流出口4cから基板Wの第1主面に向かって流出する。複数の第2流出口6cは当該重複領域において、複数の第1流出口4cとは異なる位置に2次元的に分散配列される。第2原料ガスは複数の第2流出口6cから基板Wの第1主面に向かって流出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられ、基板を載置する載置台と、
前記チャンバ内において、前記載置台に載置された前記基板の第1主面と向かい合う位置に設けられた流体ヘッドとを備え、
前記流体ヘッドは、
1以上の第1流入口と、
前記第1流入口を通じて第1原料ガスが流入するプラズマ室と、
前記プラズマ室において前記第1原料ガスをプラズマ化させるプラズマ源と、
前記プラズマ室と連通しつつ、前記基板の前記第1主面と平面視で重なる重複領域において2次元的に分散配列され、前記第1原料ガスのプラズマ化によって発生した活性種が前記基板の前記第1主面に向かって流出する複数の第1流出口と、
1以上の第2流入口と、
前記第2流入口を通じて第2原料ガスが流入し、前記プラズマ室と仕切られたガス流路と、
前記ガス流路と連通しつつ、前記重複領域において、前記複数の第1流出口とは異なる位置に2次元的に分散配列され、前記第2原料ガスが前記基板の前記第1主面に向かって流出する複数の第2流出口と
を含む、成膜装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記基板の第2主面側から前記基板を加熱するヒータをさらに備え、
前記ガス流路は、
前記プラズマ室に対して前記載置台とは反対側に位置し、前記第2流入口を通じて前記第2原料ガスが流入する流路空間と、
前記流路空間から延びて前記プラズマ室を貫通する複数の貫通流路と
を有し、
前記複数の貫通流路の先端にそれぞれ前記複数の第2流出口が形成されている、成膜装置。
【請求項3】
請求項2に記載の成膜装置であって、
前記プラズマ源の少なくとも一部は、前記流路空間と前記プラズマ室との間に設けられており、前記複数の貫通流路によって貫通されている、成膜装置。
【請求項4】
請求項3に記載の成膜装置であって、
前記プラズマ源は、表面波プラズマ源またはホローカソード放電型プラズマ源である、成膜装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の成膜装置であって、
前記流体ヘッドは、前記プラズマ源を冷却する冷却部をさらに含み、
前記冷却部は、前記流路空間と前記プラズマ源との間に設けられ、前記複数の貫通流路によって貫通されている、成膜装置。
【請求項6】
請求項2から請求項4のいずれか一つに記載の成膜装置であって、
前記流体ヘッドは、前記複数の貫通流路の各々と、前記プラズマ室との間に設けられた導電性シールドを含む、成膜装置。
【請求項7】
請求項2から請求項4のいずれか一つに記載の成膜装置であって、
前記複数の第2流出口の各々の開口面積は、前記複数の貫通流路の各々の流路面積よりも小さい、成膜装置。
【請求項8】
請求項2から請求項4のいずれか一つに記載の成膜装置であって、
前記複数の第2流出口は、前記複数の第1流出口に対して前記載置台側に位置している、成膜装置。
【請求項9】
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の成膜装置であって、
前記第1流入口は前記プラズマ室の側部に形成されており、
前記複数の第1流出口のうち、前記重複領域のうち中央領域に位置する第1流出口の開口率は、前記重複領域のうち前記中央領域よりも外側の外周領域に位置する第1流出口の開口率よりも大きい、成膜装置。
【請求項10】
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の成膜装置であって、
前記第2流入口は前記ガス流路の側部に形成されており、
前記複数の第2流出口のうち、前記重複領域のうち中央領域に位置する第2流出口の開口率は、前記重複領域のうち前記中央領域よりも外側の外周領域に位置する第2流出口の開口率よりも大きい、成膜装置。
【請求項11】
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の成膜装置であって、
前記第2流入口は前記ガス流路の中央部の上部に形成されている、成膜装置。
【請求項12】
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の成膜装置であって、
前記第1原料ガスを前記流体ヘッドに供給する第1ガス供給部と、
前記第2原料ガスと、前記第2原料ガスを搬送する不活性なキャリアガスとを前記流体ヘッドに供給する第2ガス供給部と
を備え、
前記第2ガス供給部は、前記第1ガス供給部が前記第1原料ガスを供給しつつ前記プラズマ源が作動した時点から所定期間において、前記第2原料ガスを供給せずに前記キャリアガスを前記流体ヘッドに供給し、前記所定期間の経過後に前記第2原料ガスおよび前記キャリアガスを前記流体ヘッドに供給する、成膜装置。
【請求項13】
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の成膜装置であって、
前記第1原料ガスは、第15族元素を有するガスを含み、
前記第2原料ガスは、第13族元素を有する有機金属ガスを含む、成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラズマを利用した有機金属気相成長法が提案されている(例えば、特許文献1)。この特許文献1に記載の製造装置では、炉本体内において、窒素(N)ガスおよび水素(H)ガスの混合ガスをプラズマ化させつつ、炉本体内にIII族元素の有機金属ガスを供給する。これによれば、比較的低温で基板にIII族窒化物半導体膜を形成することができる。
【0003】
この製造装置では、炉本体内の下部において、基板を支持するサセプタが設けられている。炉本体内の上部にはシャワーヘッド電極が設けられる。混合ガスはシャワーヘッド電極を下方に通過することでプラズマ化し、プラズマによる活性種が基板に供給される。炉本体内には、有機金属ガスを流出するためのガス供給管も設けられる。ガス供給管は、サセプタとシャワーヘッド電極との間の高さ位置に設けられ、サセプタの周囲を囲むリング部を含んでいる。リング部の内側には複数の噴出口が形成されており、有機金属ガスは噴出口からリング部の内側に向かって噴出され、基板に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6516482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、有機金属ガスは基板の外周側から内側に向かって流れるので、有機金属ガスの濃度は、基板の外周部で高く中央部で低い傾向を有する。そのため、膜厚を均一化するための制御が困難となる。
【0006】
そこで、本開示は、より均一な膜厚で対象膜を基板に形成することができる成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、成膜装置であって、チャンバと、前記チャンバ内に設けられ、基板を載置する載置台と、前記チャンバ内において、前記載置台に載置された前記基板の第1主面と向かい合う位置に設けられた流体ヘッドとを備え、前記流体ヘッドは、1以上の第1流入口と、前記第1流入口を通じて第1原料ガスが流入するプラズマ室と、前記プラズマ室において前記第1原料ガスをプラズマ化させるプラズマ源と、前記プラズマ室と連通しつつ、前記基板の前記第1主面と平面視で重なる重複領域において2次元的に分散配列され、前記第1原料ガスのプラズマ化によって発生した活性種が前記基板の前記第1主面に向かって流出する複数の第1流出口と、1以上の第2流入口と、前記第2流入口を通じて第2原料ガスが流入し、前記プラズマ室と仕切られたガス流路と、前記ガス流路と連通しつつ、前記重複領域において、前記複数の第1流出口とは異なる位置に2次元的に分散配列され、前記第2原料ガスが前記基板の前記第1主面に向かって流出する複数の第2流出口とを含む。
【0008】
第2の態様は、第1の態様にかかる成膜装置であって、前記基板の第2主面側から前記基板を加熱するヒータをさらに備え、前記ガス流路は、前記プラズマ室に対して前記載置台とは反対側に位置し、前記第2流入口を通じて前記第2原料ガスが流入する流路空間と、前記流路空間から延びて前記プラズマ室を貫通する複数の貫通流路とを有し、前記複数の貫通流路の先端にそれぞれ前記複数の第2流出口が形成されている。
【0009】
第3の態様は、第2の態様にかかる成膜装置であって、前記プラズマ源の少なくとも一部は、前記流路空間と前記プラズマ室との間に設けられており、前記複数の貫通流路によって貫通されている。
【0010】
第4の態様は、第3の態様にかかる成膜装置であって、前記プラズマ源は、表面波プラズマ源またはホローカソード放電型プラズマ源である。
【0011】
第5の態様は、第3または第4の態様にかかる成膜装置であって、前記流体ヘッドは、前記プラズマ源を冷却する冷却部をさらに含み、前記冷却部は、前記流路空間と前記プラズマ源との間に設けられ、前記複数の貫通流路によって貫通されている。
【0012】
第6の態様は、第2から第5のいずれか一つの態様にかかる成膜装置であって、前記流体ヘッドは、前記複数の貫通流路の各々と、前記プラズマ室との間に設けられた導電性シールドを含む。
【0013】
第7の態様は、第2から第6のいずれか一つの態様にかかる成膜装置であって、前記複数の第2流出口の各々の開口面積は、前記複数の貫通流路の各々の流路面積よりも小さい。
【0014】
第8の態様は、第2から第7のいずれか一つの態様にかかる成膜装置であって、前記複数の第2流出口は、前記複数の第1流出口に対して前記載置台側に位置している。
【0015】
第9の態様は、第1から第8のいずれか一つの態様にかかる成膜装置であって、前記第1流入口は前記プラズマ室の側部に形成されており、前記複数の第1流出口のうち、前記重複領域のうち中央領域に位置する第1流出口の開口率は、前記重複領域のうち前記中央領域よりも外側の外周領域に位置する第1流出口の開口率よりも大きい。
【0016】
第10の態様は、第1から第9のいずれか一つの態様にかかる成膜装置であって、前記第2流入口は前記ガス流路の側部に形成されており、前記複数の第2流出口のうち、前記重複領域のうち中央領域に位置する第2流出口の開口率は、前記重複領域のうち前記中央領域よりも外側の外周領域に位置する第2流出口の開口率よりも大きい。
【0017】
第11の態様は、第1から第10のいずれか一つの態様にかかる成膜装置であって、前記第2流入口は前記ガス流路の中央部の上部に形成されている。
【0018】
第12の態様は、第1から第11のいずれか一つの態様にかかる成膜装置であって、前記第1原料ガスを前記流体ヘッドに供給する第1ガス供給部と、前記第2原料ガスと、前記第2原料ガスを搬送する不活性なキャリアガスとを前記流体ヘッドに供給する第2ガス供給部とを備え、前記第2ガス供給部は、前記第1ガス供給部が前記第1原料ガスを供給しつつ前記プラズマ源が作動した時点から所定期間において、前記第2原料ガスを供給せずに前記キャリアガスを前記流体ヘッドに供給し、前記所定期間の経過後に前記第2原料ガスおよび前記キャリアガスを前記流体ヘッドに供給する。
【0019】
第13の態様は、第1から第12のいずれか一つの態様にかかる成膜装置であって、前記第1原料ガスは、第15族元素を有するガスを含み、前記第2原料ガスは、第13族元素を有する有機金属ガスを含む。
【発明の効果】
【0020】
第1の態様によれば、第1原料ガス由来の活性種は、基板の第1主面と重なる重複領域において2次元的に分散配置された複数の第1流出口から、基板の第1主面に向かって流出する。このため、活性種は基板の第1主面により均一に供給される。第2原料ガスは、基板の第1主面と重なる重複領域において、第1流出口とは異なる位置で2次元的に分散配置された複数の第2流出口から、基板の第1主面に向かって流出する。このため、第2原料ガスも基板の第1主面により均一に供給される。したがって、活性種および第2原料ガスが反応して得られる対象膜を、より均一に基板の第1主面に形成することができる。
【0021】
第2の態様によれば、流路空間はプラズマ室に対して載置台とは反対側に位置する。このため、流路空間はヒータから遠い位置に設けられる。したがって、流路空間において第2原料ガスが熱分解する可能性を低減させることができる。ひいては、第2原料ガスの熱分解によって流路空間の内壁(つまり流路空間を形成する内周面)に第2原料ガスの各種成分が析出することを抑制することができる。
【0022】
逆に言えば、プラズマ室は基板により近い位置に設けられる。このため、プラズマ室内のより多くの活性種が失活する前に基板の第1主面に到達する。したがって、より高い効率で基板の第1主面に対象膜を形成することができる。
【0023】
第3および第4の態様によれば、基板に対してより広い面積でプラズマ室にプラズマを発生させることができる。
【0024】
第5の態様によれば、冷却部がプラズマ源に近接しているので、プラズマ源を効果的に冷却することができる。また、冷却部によってプラズマ源から流路空間への伝熱を抑制することができる。このため、流路空間において第2原料ガスが熱分解する可能性を低減させることができる。
【0025】
第6の態様によれば、貫通流路においてプラズマ用の電界の発生を抑制できるので、第2原料ガスへの不要な電界の印加を抑制することができる。
【0026】
第7および第8の態様によれば、第2流出口と第1流出口との間の距離を長くすることができる。このため、第1流出口から流出した活性種が第2流出口に到達する可能性を低減させることができる。したがって、第2流出口の近傍での活性種および第2原料ガスの反応を抑制し、第2流出口を形成する内周面に不要な化合物膜が形成されることを抑制できる。
【0027】
第9の態様によれば、活性種をより均一に複数の第1流出口から流出させることができる。
【0028】
第10および第11の態様によれば、第2原料ガスをより均一に複数の第2流出口から流出させることができる。
【0029】
第12の態様によれば、プラズマ源の動作初期である所定期間では、第2原料ガスは第2流出口から流出せず、キャリアガスが第2流出口から流出する。所定期間ではプラズマが不安定であるものの、第2流出口からは第2原料ガスが流出しないので、成膜処理は開始しない。このため、基板の第1主面上に対象膜が不均一に形成されることを抑制できる。しかも、第2流出口からはキャリアガスが流出するので、第1流出口から流出した活性種は第2流出口にほとんど流入しない。このため、所定期間の経過後に第2ガス供給部が第2原料ガスを流体ヘッドに供給しても、ガス流路において第2原料ガスと活性種との反応はほとんど生じない。よって、ガス流路を形成する内周面への不要な化合物膜の形成を抑制することができる。
【0030】
第13の態様によれば、基板の第1主面にIII-V族化合物半導体をより均一に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1の実施の形態にかかる成膜装置の構成の一例を概略的に示す図である。
図2】第1の実施の形態にかかる流体ヘッドの構成の一例を概略的に示す断面図である。
図3】流体ヘッドの構成の一例を概略的に示す断面図である。
図4】流体ヘッドの構成の一例を示す分解断面図である。
図5】プラズマ源の構成の一例を概略的に示す断面図である。
図6】プラズマ源の構成の一例を概略的に示す断面図である。
図7】制御部の構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図8】第1の実施の形態にかかる流体ヘッドの他の一例を概略的に示す図である。
図9図8の流体ヘッドの各構成を分解して概略的に示す図である。
図10図9のX-X断面を概略的に示す図である。
図11図8のXI-XI断面を概略的に示す図である。
図12】第2の実施の形態にかかる流体ヘッドの構成の一例を概略的に示す断面図である。
図13】冷却部の構成の一例を概略的に示す断面図である。
図14】第3の実施の形態にかかる流体ヘッドの第2流路部材の構成の一例を概略的に示す断面図である。
図15】第3の実施の形態にかかる流体ヘッドの第2流路部材の構成の他の一例を概略的に示す断面図である。
図16】第3の実施の形態にかかる流体ヘッドの構成の一例を概略的に示す断面図である。
図17】第3の実施の形態にかかる流体ヘッドの第1流路部材の構成の一例を概略的に示す断面図である。
図18】第4の実施の形態にかかる第2ガス供給部の構成の一例を概略的に示す図である。
図19】第4の実施の形態にかかる成膜装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化がなされるものである。また、図面に示される構成の大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。
【0033】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0034】
また、以下に記載される説明において、「第1」または「第2」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0035】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現が用いられる場合、該表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現が用いられる場合、該表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCの全てを含む。
【0036】
<第1の実施の形態>
<成膜装置の概要>
図1は、第1の実施の形態にかかる成膜装置100の構成の一例を概略的に示す図である。成膜装置100は、プラズマを利用した気相成長法によって、基板Wに対象膜を形成する装置である。対象膜は化合物を含む膜であり、例えば、第13族元素(以下、III族元素と呼ぶ)および第15族元素(以下、V族元素と呼ぶ)を含むIII-V族化合物半導体膜である。V族元素として窒素が適用される場合には、この化合物半導体はIII族窒化物半導体と呼ばれ得る。III族窒化物半導体は、例えば、横型のトランジスタに活用される。
【0037】
基板Wは例えば板状である。基板Wは例えばサファイア、炭化シリコンまたはシリコン等の基板である。基板Wは例えば円板形状を有する。基板Wは、第1主面、および、第1主面とは逆側の第2主面を有する。ここでは、第1主面は基板Wの上面であり、第2主面は基板Wの下面である。基板Wの第1主面に化合物半導体膜が結晶成長することから、基板Wは成長基板とも呼ばれ得る。なお、基板Wの材質および形状はこれらに限らず、適宜に変更し得る。
【0038】
図1に示されるように、成膜装置100はチャンバ1と基板保持部2と流体ヘッド3と制御部9とを含んでいる。以下、各構成を概説した後に、その具体的な一例について詳述する。
【0039】
チャンバ1は箱形の中空形状を有している。チャンバ1の内部空間は、基板Wに対する成膜処理を行う処理空間に相当する。チャンバ1は真空チャンバとも呼ばれ得る。チャンバ1の側壁には、基板Wの搬入出のための不図示のシャッタあるいはゲートバルブが設けられてもよい。
【0040】
基板保持部2はチャンバ1内に設けられる。基板保持部2は、基板Wを載置する載置台としてのサセプタ21を含んでいる。基板Wは水平姿勢でサセプタ21上に載置される。ここでいう水平姿勢とは、基板Wの厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢である。
【0041】
図1の例では、成膜装置100には吸引部7も設けられている。吸引部7はチャンバ1内のガスを吸引して、チャンバ1内の圧力を低下させる。吸引部7はチャンバ1内の圧力を、成膜処理に適した所定の減圧範囲内に調整する。
【0042】
図1の例では、成膜装置100にはヒータ8も設けられている。ヒータ8はチャンバ1内に設けられており、基板Wを加熱する。具体的には、ヒータ8は、基板Wの温度が成膜処理に適した温度範囲内となるように、基板Wを加熱する。図1の例では、ヒータ8は基板Wの第2主面(ここでは下面)側から基板Wを加熱する。
【0043】
流体ヘッド3はチャンバ1内において、サセプタ21上の基板Wの第1主面(ここでは上面)と向かい合う位置に設けられている。ここでは、流体ヘッド3はサセプタ21上の基板Wの直上に設けられる。流体ヘッド3は、第1原料ガスをプラズマ化させて得られた活性種を基板Wの第1主面に向かって流出させるとともに、第2原料ガスを基板Wの第1主面に向かって流出させる。
【0044】
第1原料ガスは、例えば、V族元素を含むV族ガスを含有する。V族元素は例えば窒素である。この場合、V族ガスとしては、窒素ガスを適用することができる。第1原料ガスには、窒素ガスに加えて水素ガスが含まれてもよい。つまり、第1原料ガスはV族ガスおよび水素ガスの混合ガスであってもよい。第1原料ガスが窒素ガスおよび水素ガスの混合ガスである場合、プラズマ化により、窒素ラジカルおよび水素ラジカル等の活性種が生じる。
【0045】
第2原料ガスは、例えば、III族元素を含む有機金属ガスを含有する。III族元素は例えばガリウムである。この場合、有機金属ガスとしては、TMGa(トリメチルガリウム)、TEGa(トリエチルガリウム)もしくはTDMAGa(トリスジメチルアミドガリウム)を適用することができる。
【0046】
第1原料ガス由来の活性種および第2原料ガスが基板Wの第1主面に供給されると、これらが互いに反応することで、基板Wの第1主面に対象膜が形成される。例えば、対象膜として、III族窒化物半導体膜が形成される。
【0047】
図2および図3は、流体ヘッド3の構成の一例を概略的に示す断面図である。図2は、図1のII-II断面を示しており、図3は、図1のIII-III断面を示している。
【0048】
図1から図3に示されるように、流体ヘッド3は、第1流入口4a、プラズマ室4b、複数の第1流出口4c、プラズマ源5、第2流入口6a、ガス流路6bおよび複数の第2流出口6cを有している。
【0049】
後に詳述するように、プラズマ室4bには第1流入口4aを通じて第1原料ガスが流入し、ガス流路6bには第2流入口6aを通じて第2原料ガスが流入する。プラズマ室4bおよびガス流路6bは流体ヘッド3の内部において互いに仕切られている。つまり、プラズマ室4bおよびガス流路6bは流体ヘッド3の内部において互いに連通していない。
【0050】
図1および図2の例では、プラズマ室4bは、その鉛直方向のサイズが水平方向のサイズよりも小さい扁平な空間である。図1および図2の例では、第1流入口4aは、プラズマ室4bの側部に形成されている。第1流入口4aは第1ガス供給部40に接続されている。第1ガス供給部40は第1原料ガスを、第1流入口4aを通じてプラズマ室4bに供給する。
【0051】
複数の第1流出口4cはプラズマ室4bに連通している。具体的には、複数の第1流出口4cはプラズマ室4bの下部に形成されている。複数の第1流出口4cは、平面視において基板Wの第1主面と重なる重複領域R0内において2次元的に分散配置されている(図2も参照)。なお、図2および図3では、平面視における基板Wの輪郭を仮想線で示している。図2の例では、複数の第1流出口4cはマトリックス状に配列されている。複数の第1流出口4cは、重複領域R0のうちの大部分の領域において分散配置されていてもよい。より具体的な一例として、複数の第1流出口4cは、基板Wの直径の2分の1以上の直径を有し基板Wと同心状の円領域において、分散配置され得る。図2の例では、各第1流出口4cは平面視において円形状を有している。
【0052】
プラズマ源5はプラズマ室4bにおいて第1原料ガスをプラズマ励起する。言い換えれば、プラズマ源5は第1原料ガスをプラズマ化させる。図1の例では、プラズマ源5はプラズマ室4bに対してサセプタ21とは反対側に設けられている。ここでは、プラズマ源5はプラズマ室4bよりも鉛直上方に設けられている。プラズマ源5はプラズマ室4bにプラズマ用の電界を発生させる。第1原料ガスが該電界を通過することにより、該電界が第1原料ガスに作用して、第1原料ガスをプラズマ化させる。これにより、反応性の高いイオンまたは中性ラジカル等の活性種がプラズマ室4bにおいて発生する。
【0053】
第1原料ガスが水素ガスおよび窒素ガスを含む場合、活性種として水素ラジカルおよび窒素ラジカルが生成される。これらの活性種は複数の第1流出口4cから流出する。第1流出口4cからの活性種は基板Wの第1主面に向かって流れる。
【0054】
ガス流路6bには第2流入口6aを通じて第2原料ガスが流入する。図1および図3の例では、第2流入口6aは、ガス流路6bの側部に形成されている。第2流入口6aは第2ガス供給部50に接続されている。第2ガス供給部50は第2原料ガスを、第2流入口6aを通じてガス流路6bに供給する。
【0055】
図1および図3の例では、ガス流路6bは流路空間6b1と複数の貫通流路6b2とを有している。流路空間6b1はプラズマ室4bおよびプラズマ源5の両方に対してサセプタ21とは反対側に位置している。ここでは、流路空間6b1はプラズマ源5よりも鉛直上方に位置している。言い換えれば、プラズマ源5は流路空間6b1とプラズマ室4bとの間に設けられている。
【0056】
図1および図3の例では、流路空間6b1は、鉛直方向のサイズが水平方向のサイズよりも小さい扁平な空間である。また、図1および図3の例では、第2流入口6aは流路空間6b1の側部に形成されている。
【0057】
複数の貫通流路6b2は流路空間6b1から延びており、プラズマ源5およびプラズマ室4bを貫通している。ここでは、貫通流路6b2は流路空間6b1から鉛直下方に延びている。各貫通流路6b2の先端(ここでは下端)には、第2流出口6cが形成されている。
【0058】
複数の第2流出口6cはガス流路6bに連通しており、平面視で基板Wの第1主面と重なる重複領域R0において、複数の第1流出口4cとは異なる位置に2次元的に分散配置されている。複数の第2流出口6cは平面視において2次元的に配置されており、例えばマトリックス状に配列されている(図2および図3も参照)。複数の第2流出口6cは、重複領域R0の大部分において分散配置されていてもよい。より具体的な一例として、複数の第2流出口6cは、基板Wの直径の2分の1以上の直径を有し基板Wと同心状の円領域において、分散配置され得る。図2および図3の例では、各第2流出口6cは平面視において円形状を有している。
【0059】
第2流入口6aを通じてガス流路6bに流入した第2原料ガスは、ガス流路6bを複数の第2流出口6cに向かって流れ、複数の第2流出口6cから基板Wの第1主面に向かって流出する。
【0060】
基板Wはヒータ8によって加熱されるので、基板Wの第1主面に供給された第2原料ガスは熱分解する。第2原料ガスの熱分解によって生成された成分が第1原料ガス由来の活性種と反応し、その化合物が対象膜として基板Wの第1主面に形成される。第1原料ガスが、窒素元素を含むガスであり、第2原料ガスが、III族元素を含む有機金属ガスである場合、対象膜はIII族窒化物半導体膜である。
【0061】
制御部9は成膜装置100の全体を統括的に制御する。例えば制御部9は、基板保持部2、第1ガス供給部40、第2ガス供給部50、プラズマ源5、吸引部7およびヒータ8を制御する。
【0062】
以上のように、成膜装置100においては、第1原料ガス由来の活性種は複数の第1流出口4cから基板Wの第1主面に向かって流出し、第2原料ガスは複数の第2流出口6cから基板Wの第1主面に向かって流出する。複数の第1流出口4cおよび複数の第2流出口6cは平面視において、互いに重ならず、かつ、基板Wの第1主面と重なる重複領域R0内で分散配置されるので、活性種および第2原料ガスは基板Wの第1主面に対してより均一に供給される。このため、基板Wの直上における活性種の濃度分布および第2原料ガスの濃度分布をより均一化させることができる。よって、活性種および第1原料ガスは基板Wの第1主面に対してより均一な分布で反応する。したがって、成膜装置100はより均一な膜厚で対象膜を基板Wの第1主面に形成することができる。第1原料ガスがV族ガスを含み、第2原料ガスがIII族元素を含む有機金属ガスを含有する場合、成膜装置100はより均一な膜厚でIII-V族化合物半導体膜を基板Wの第1主面に形成することができる。
【0063】
また、上述の例では、ガス流路6bの流路空間6b1はプラズマ室4bに対してサセプタ21とは反対側に位置している。この構造によれば、ガス流路6bがプラズマ室4bに対してサセプタ21側に設けられた構造に比して、流路空間6b1は基板Wおよびヒータ8よりも遠くに位置する。このため、ヒータ8からの熱は流路空間6b1に伝達されにくい。したがって、流路空間6b1において第2原料ガスが熱分解する可能性を低減させることができる。
【0064】
もし仮に、第2原料ガスが流路空間6b1において熱分解すると、熱分解により生成された各種成分が、ガス流路6bを形成する内周面に析出し、ガス流路6bの流路面積を変動させる。これにより、第2原料ガスの流れの均一性が低下し得る。これに対して、上述の例では、流路空間6b1における第2原料ガスの熱分解を抑制できるので、第2原料ガスの不均一な流れを招きにくい。したがって、第2原料ガスは複数の第2流出口6cからより均一に流出する。
【0065】
逆に言えば、プラズマ源5およびプラズマ室4bは、流路空間6b1よりも基板Wに近い位置に設けられている。このため、より多くの活性種を基板Wの第1主面に供給することができる。つまり、より多くの活性種が失活する前に基板Wの第1主面に到達することができる。これによれば、成膜装置100はより効率的に基板Wの第1主面に対象膜を形成することができる。
【0066】
また、プラズマ源5はガス流路6bの流路空間6b1とプラズマ室4bとの間に位置している。これによれば、プラズマ源5はプラズマ室4bに近接することができ、プラズマ室4bにプラズマ用の電界を発生させやすい。つまり、プラズマ源5は高い効率でプラズマ室4bにプラズマ用の電界を発生させることができる。
【0067】
次に、各構成の具体的な一例について詳述する。
【0068】
<基板保持部>
基板保持部2は基板Wを水平姿勢で保持する。図1の例では、基板保持部2はサセプタ21とサセプタ保持部22とを含んでいる。サセプタ21は基板Wを載置するための載置台であり、例えば平板状の形状を有している。サセプタ21は水平姿勢で設けられており、サセプタ21の上面には基板Wが水平姿勢で載置される。サセプタ21に載置された基板Wの第1主面(ここでは上面)はチャンバ1内で露出する。
【0069】
サセプタ保持部22はチャンバ1内に設けられており、サセプタ21を保持する。図1の例では、サセプタ保持部22はベース221と保持突部222とを含んでいる。ベース221はサセプタ21よりも鉛直下方に設けられており、鉛直方向において間隔を空けてサセプタ21と向かい合う。ベース221は例えば水平な上面を有しており、当該上面には保持突部222が立設される。例えば、保持突部222は複数設けられており、サセプタ21の下面の周縁部に沿って並んで設けられる。保持突部222の先端はサセプタ21に当接しており、サセプタ21を支持または保持する。
【0070】
図1に示されるように、基板保持部2は回転機構23をさらに含んでいてもよい。回転機構23はサセプタ保持部22を回転軸線Q1のまわりで回転させる。回転軸線Q1は、基板Wの中心部を通り、かつ、鉛直方向に沿う軸である。回転機構23は例えばシャフトとモータとを有する。シャフトの上端はベース221の下面に連結される。シャフトは回転軸線Q1に沿って延び、回転軸線Q1のまわりで回転可能にチャンバ1に軸支される。モータはシャフトを回転軸線Q1のまわりで回転させる。これにより、サセプタ保持部22、サセプタ21および基板Wが回転軸線Q1のまわりで一体に回転する。なお、基板保持部2は回転機構23を含んでいなくてもよい。
【0071】
<ヒータ>
ヒータ8はチャンバ1内において、基板保持部2に保持された基板Wを加熱する。図1の例では、ヒータ8は第2主面(ここでは下面)側から基板Wを加熱する。具体的には、ヒータ8はサセプタ21よりも鉛直下方に設けられており、サセプタ21と鉛直方向において対向する。図1の例では、ヒータ8はサセプタ21とベース221との間であって、保持突部222よりも径方向内側に設けられている。ヒータ8は例えば電熱線を含む電気抵抗式のヒータであってもよく、あるいは、加熱用の光を照射する光源を含んだ光学式のヒータであってもよい。
【0072】
ここでは、ヒータ8は回転軸線Q1のまわりで回転しないように設けられる。つまり、ヒータ8は非回転である。例えば、回転機構23のシャフトは中空シャフトであり、ヒータ8は当該中空部を貫通する固定部材81を介してチャンバ1に固定される。
【0073】
<吸引部>
吸引部7はチャンバ1内のガスを吸引する。図1の例では、吸引部7は吸引管71と吸引機構72とを含んでいる。吸引管71の上流端はチャンバ1の排気口1aに接続される。図1の例では、排気口1aは、基板保持部2によって保持された基板Wよりも鉛直下方に形成されており、例えばチャンバ1の側壁に形成される。吸引機構72は例えばポンプ(より具体的には、真空ポンプ)であって、吸引管71に接続される。吸引機構72は制御部9によって制御され、吸引管71を通じてチャンバ1内のガスを吸引する。
【0074】
<第1ガス供給部>
第1ガス供給部40は第1原料ガスを流体ヘッド3に供給する。図1の例では、第1ガス供給部40は第1ガス供給管401とV族ガス供給管411と水素ガス供給管421とバルブ412とバルブ422と流量調整部413と流量調整部423とを含む。第1ガス供給管401の下流端は流体ヘッド3の第1流入口4aに接続されている。第1ガス供給管401の上流端はV族ガス供給管411の下流端および水素ガス供給管421の下流端に共通して接続されている。V族ガス供給管411の上流端はV族ガス供給源414に接続されており、水素ガス供給管421の上流端は水素ガス供給源424に接続されている。V族ガス供給源414は、V族ガスを貯留する貯留部(不図示)を含み、水素ガス供給源424は、水素ガスを貯留する貯留部(不図示)を含む。
【0075】
バルブ412および流量調整部413はV族ガス供給管411に介挿されている。バルブ412はV族ガス供給管411の流路の開閉を切り替える。流量調整部413は、V族ガス供給管411を流れるV族ガスの流量を調整する。流量調整部413は例えばマスフローコントローラである。バルブ422および流量調整部423は水素ガス供給管421に介挿されている。バルブ422は水素ガス供給管421の流路の開閉を切り替える。流量調整部423は、水素ガス供給管421を流れる水素ガスの流量を調整する。流量調整部423は例えばマスフローコントローラである。
【0076】
<第2ガス供給部>
第2ガス供給部50は第2原料ガスを流体ヘッド3に供給する。第2ガス供給部50は第2ガス供給管501とバルブ502と流量調整部503とを含んでいる。第2ガス供給管501の下流端は第2流入口6aに接続されている。第2ガス供給管501の上流端は第2ガス供給源504に接続されている。第2ガス供給源504は、第2原料ガスを貯留する貯留部(不図示)を含む。第2ガス供給源504は第2原料ガスのみならず、第2原料ガスを搬送するためのキャリアガスを第2ガス供給管501の上流端に供給しても構わない。キャリアガスは不活性ガスである。不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス等の希ガスおよび窒素ガスの少なくともいずれか一方を適用することができる。この場合、流体ヘッド3の複数の第2流出口6cから第2原料ガスおよびキャリアガスが流出する。
【0077】
<流体ヘッド>
図1の例では、流体ヘッド3は第1流路部材4、プラズマ源5および第2流路部材6を含んでいる。図4は、流体ヘッド3の構成の一例を示す分解断面図である。図4では、第2流路部材6、プラズマ源5および第1流路部材4が互いに分離して示されている。第1流路部材4はその内部にプラズマ室4bを形成しており、第2流路部材6はその内部にガス流路6bを形成している。以下では、第2流路部材6を説明した後に、プラズマ源5を説明し、その後、第1流路部材4を説明する。
【0078】
<第2流路部材>
図4の例では、第2流路部材6は中空板部61と複数の鉛直管65とを含んでいる。中空板部61はガス流路6bの流路空間6b1を形成しており、複数の鉛直管65はそれぞれ複数の貫通流路6b2を形成している。
【0079】
中空板部61は、鉛直方向のサイズが水平方向のサイズよりも小さい扁平な形状を有しており、上板部62と側壁63と下板部64とを含んでいる。上板部62は平板状の形状を有し、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。上板部62は平面視において、例えば基板Wと同心状の円形状を有する。上板部62の直径は基板Wの直径以上であってもよい。下板部64は平板状の形状を有し、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。下板部64は上板部62よりも鉛直下方に位置しており、平面視において、例えば基板Wと同心状の円形状を有する。下板部64の直径は基板Wの直径以上であってもよい。側壁63は上板部62の周縁と下板部64の周縁とを鉛直方向において接続する。側壁63の一部には、第2流入口6aが形成される。
【0080】
下板部64には複数の貫通穴が形成されている。複数の鉛直管65の上端は、その各々の上端口が下板部64の貫通穴とそれぞれ一致するように、下板部64に接続される。各鉛直管65は筒状の形状を有しており、下板部64から鉛直方向に沿って下方に延びている。各鉛直管65は例えば円筒状の形状を有する。各鉛直管65は、後述のように、プラズマ源5および第1流路部材4を鉛直方向に沿って貫通する。
【0081】
図4の例では、各鉛直管65の下端には先端部66が設けられている。先端部66は、第2流出口6cが形成された板状の形状を有している。先端部66は例えば円板状の形状を有し、その外周縁が鉛直管65の下端周縁に接続される。先端部66の内周面は第2流出口6cを形成する。つまり、第2流出口6cは、先端部66を鉛直方向に貫通する開口である。このような構造において、第2流出口6cの直径は鉛直管65の内径よりも小さい。つまり、第2流出口6cの開口面積は貫通流路6b2の流路面積よりも小さい。ここで、開口面積は水平面における第2流出口6cの面積であり、流路面積は水平面における貫通流路6b2の面積である。
【0082】
<プラズマ源>
プラズマ源5は第2流路部材6の中空板部61よりもサセプタ21側に設けられている。より具体的には、プラズマ源5は第2流路部材6の中空板部61と第1流路部材4との間に設けられている。つまり、プラズマ源5はガス流路6bの流路空間6b1とプラズマ室4bとの間に設けられている。
【0083】
図4も参照して、プラズマ源5は、第2流路部材6の複数の鉛直管65と鉛直方向において対応する位置にそれぞれ複数の貫通穴5dを有している。複数の貫通穴5dはプラズマ源5を鉛直方向に沿って貫通している。複数の鉛直管65は複数の貫通穴5dをそれぞれ鉛直方向に沿って貫通する。各貫通穴5dは平面視において例えば円形状を有する。
【0084】
図4の例では、プラズマ源5は、鉛直方向のサイズが水平方向のサイズよりも小さい扁平な平型のプラズマ源である。具体的な一例として、プラズマ源5は、表面波プラズマを発生させる表面波プラズマ源であり、導波部材51と誘電部材56とマイクロ波発生器57とを含んでいる。
【0085】
図5および図6は、プラズマ源5の構成の一例を概略的に示す断面図である。図5は、図4のV-V断面を示しており、図6は、図4のVI-VI断面を示している。
【0086】
マイクロ波発生器57は、マイクロ波を発振する発振器を有している。該発振器は、例えば、マグネトロン方式もしくはソリッドステート型の発振器であってもよい。マイクロ波発生器57は平面視において基板Wよりも外側に設けられている(図1も参照)。
【0087】
図4および図5に示されるように、導波部材51は中空部材であり、マイクロ波発生器57が発生させたマイクロ波を、誘電部材56に導く部材である。導波部材51は例えば金属等の導電部材によって形成される。図4および図5の例では、導波部材51は上板部52と側壁53と下板部54と複数の中空柱部55とを含んでいる。上板部52は平板状の形状を有し、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。上板部52は平面視において、例えば基板Wと同心状の円形状を有する。上板部52の直径は基板Wの直径以上であってもよい。下板部54は平板状の形状を有し、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。下板部54は上板部52よりも鉛直下方に位置し、平面視において、例えば基板Wと同心状の円形状を有する。下板部54の直径は基板Wの直径以上であってもよい。側壁53は上板部52の周縁と下板部54の周縁とを鉛直方向において接続する。側壁53の一部には、マイクロ波発生器57の出力端と接続する接続口53aが形成されている。
【0088】
複数の中空柱部55は上板部52と下板部54との間に設けられている。中空柱部55は筒状の形状、具体的な一例として円筒状の形状を有している。上板部52および下板部54には、第2流路部材6の複数の鉛直管65が鉛直方向にそれぞれ貫通する複数の貫通穴が形成される。複数の中空柱部55の上端口が上板部52の複数の貫通穴とそれぞれ一致するように、複数の中空柱部55の上端が上板部52に接続され、複数の中空柱部55の下端口が下板部54の複数の貫通穴とそれぞれ一致するように、複数の中空柱部55の下端が下板部54に接続される。つまり、上板部52の貫通穴、中空柱部55の中空部および下板部54の貫通穴は鉛直方向において連通しており、プラズマ源5を貫通する貫通穴5dのうちの上方部分を構成する。
【0089】
また、導波部材51の下板部54には、マイクロ波を誘電部材56に導くための複数の開口(スロットとも呼ばれる)54aが形成される。マイクロ波発生器57からのマイクロ波は導波部材51の内部を通過して、各開口54aから誘電部材56に伝達される。図5の例では、開口54aは平面視において、一方向に沿って延びた長尺状の形状を有している。複数の開口54aはその短手方向において間隔を空けて配列されている。図5の例では、開口54aの長手方向は、複数の中空柱部55が配列されたマトリックスの列方向に沿っており、各開口54aは、隣り合う2列の間に形成されている。
【0090】
誘電部材56は導波部材51に対して鉛直下方に設けられている。誘電部材56は誘電材料(例えば石英ガラス)によって形成される。誘電部材56は平板状の形状を有しており、平面視において例えば基板Wと同心状の円形状を有する(図6も参照)。誘電部材56の直径は例えば基板Wの直径以上であってもよい。誘電部材56の上面は導波部材51の下面(つまり、下板部54の下面)に全面的に接触している。誘電部材56には、複数の中空柱部55とそれぞれ対向する位置に複数の貫通穴が形成されている。各貫通穴は誘電部材56を鉛直方向に沿って貫通する。つまり、誘電部材56の各貫通穴は、対応する貫通穴5dのうちの下方部分を構成する。
【0091】
導波部材51の開口54aからのマイクロ波は誘電部材56の内部を伝達し、誘電部材56の下面側に作用する。これにより、誘電部材56の下面に沿ってプラズマ用の電界が生じる。誘電部材56の下面は後述のようにプラズマ室4bの天井面に相当するので、該プラズマ用の電界はプラズマ室4bに生じる。このため、プラズマ室4bにおいてプラズマ用の電界が第1原料ガスに作用し、第1原料ガスがプラズマ室4bにおいてプラズマ化する。誘電部材56の下面は水平方向に広がっているので、平面視において広い範囲で第1原料ガスをプラズマ化させることができる。
【0092】
なお、上述の例では、プラズマ源5は、マイクロ波を用いて表面波プラズマを発生させているものの、必ずしもこれに限らない。プラズマ源5は、いわゆる容量結合方式または誘導結合方式でプラズマを発生させてもよい。プラズマ源5の他の具体的な一例については後に述べる。
【0093】
<第1流路部材>
第1流路部材4はプラズマ源5よりも鉛直下方に設けられる。第1流路部材4はプラズマ源5とともにプラズマ室4bを形成している。図4の例では、第1流路部材4は側壁43と下板部44と複数の中空柱部45とを含んでいる。下板部44は平板状の形状を有しており、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。下板部44は平面視において例えば基板Wと同心状の円形状を有する。下板部44の直径は例えば基板Wの直径以上であってもよい。側壁43は下板部44の周縁とプラズマ源5の誘電部材56の周縁とを接続する。
【0094】
下板部44には、第2流路部材6の複数の鉛直管65が鉛直方向にそれぞれ貫通する複数の貫通穴が形成されており、複数の中空柱部45の下端口が下板部44の複数の貫通穴とそれぞれ一致するように、複数の中空柱部45の下端が下板部44に接続される。また、複数の中空柱部45の上端口がプラズマ源5の複数の貫通穴5dにそれぞれ一致するように、複数の中空柱部45の上端が誘電部材56の下面に接続され得る。複数の中空柱部45の中空部および下板部44の貫通穴は、第1流路部材4を鉛直方向に沿って貫通する貫通穴4dに相当する。第2流路部材6の各鉛直管65は第1流路部材4の各貫通穴4dを貫通する。各貫通穴4dは平面視において例えば円形状を有する。
【0095】
下板部44には、複数の第1流出口4cも形成されている。図2の例では、斜め方向において、第1流出口4cおよび第2流出口6cが等間隔で交互に配列されている。図2の例では、平面視において、4つの第2流出口6cを頂点とする四角形の対角線の中点に、1つの第1流出口4cが位置している。また、4つの第1流出口4cを頂点とする四角形の対角線の中点に、1つの第2流出口6cが位置している。
【0096】
<制御部>
図7は、制御部9の構成の一例を概略的に示すブロック図である。制御部9は電子回路機器であって、例えばデータ処理装置91および記憶部92を有していてもよい。データ処理装置91は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶部92は非一時的な記憶部921(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)および一時的な記憶部922(例えばRAM(Random Access Memory))を有していてもよい。非一時的な記憶部921には、例えば制御部9が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。データ処理装置91がこのプログラムを実行することにより、制御部9が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部9が実行する処理の一部または全部が、論理回路などのハードウェア回路によって実行されてもよい。
【0097】
<成膜装置の動作>
次に、成膜装置100の動作の一例を概説する。まず、外部の搬送装置(不図示)がチャンバ1に基板Wを搬入し、基板保持部2に渡す。これにより、基板Wは水平姿勢で基板保持部2のサセプタ21上に載置される。次に、吸引部7がチャンバ1内のガスを吸引して、チャンバ1内の圧力を低下させる(減圧工程)。具体的には、制御部9は吸引機構72に吸引動作を行わせる。これにより、チャンバ1内のガスが吸引管71を通じて吸引機構72に吸引され、チャンバ1内の圧力が低下する。吸引部7はチャンバ1内の圧力が成膜処理に適した所定のプロセス圧力となるように圧力を調整する。所定のプロセス圧力は例えば100Pa以上かつ500Pa以下である。吸引部7は成膜処理が終了するまで、チャンバ1内の圧力を調整する。
【0098】
次に、ヒータ8が基板Wを加熱する(加熱工程)。具体的には、制御部9はヒータ8に加熱動作を行わせる。ヒータ8は基板Wの温度が成膜処理に適した所定温度となるように基板Wの温度を調整する。所定温度は例えば600℃以上かつ1000℃以下である。ヒータ8は成膜処理が終了するまで、基板Wの温度を調整する。
【0099】
次に、基板保持部2が基板Wを回転軸線Q1のまわりで回転させる(回転工程)。具体的には、制御部9は回転機構23にサセプタ保持部22を回転させる。これにより、サセプタ保持部22、サセプタ21および基板Wは回転軸線Q1のまわりで一体に回転する。基板保持部2は成膜処理が終了するまで、基板Wを回転させる。
【0100】
次に、第1ガス供給部40が第1原料ガスを流体ヘッド3に供給し、第2ガス供給部50が第2原料ガスを流体ヘッド3に供給し、プラズマ源5が第1原料ガスをプラズマ励起する(成膜工程)。具体的には、制御部9がバルブ412、バルブ422およびバルブ502を開き、マイクロ波発生器57にマイクロ波を発生させる。これにより、流体ヘッド3の複数の第1流出口4cから第1原料ガス由来の活性種が基板Wの第1主面に向かって流出するとともに、流体ヘッド3の複数の第2流出口6cから第2原料ガスが基板Wの第1主面に向かって流出する。
【0101】
第2原料ガスは基板Wの第1主面で熱分解し、当該熱分解によって生成された成分が活性種と反応することで、基板Wの第1主面上に対象膜が形成される。より具体的な一例として、III族元素を含む有機金属ガスが熱分解して生成されたIII族元素が、窒素ラジカルと反応して、III族窒化物半導体が基板Wの第1主面上に結晶成長する。
【0102】
所定の膜厚で対象膜が形成されると、制御部9は成膜工程を終了させる。具体的には、制御部9はバルブ412、バルブ422およびバルブ502を閉じ、マイクロ波発生器57によるマイクロ波の出力を停止させる。また、制御部9は回転機構23、ヒータ8および吸引部7の動作を停止させる。
【0103】
次に、搬送装置は基板Wをチャンバ1から搬出する(搬出工程)。具体的には、搬送装置はサセプタ21に載置された基板Wをチャンバ1から搬出する。
【0104】
<作用>
以上のように、成膜工程において、平面視で基板Wと重なる重複領域R0内で2次元的に分散配置された複数の第1流出口4cから、第1原料ガス由来の活性種が基板Wの第1主面に向かって流出する。同様に、第2原料も、重複領域R0内で2次元的に分散配置された複数の第2流出口6cから、基板Wの第1主面に向かって流出する。したがって、活性種および第2原料ガスがより均一に基板Wの第1主面に供給され、結果として、基板Wの第1主面により均一に対象膜が形成される。
【0105】
また、図1から図6に例示されたプラズマ源5は、水平方向のサイズが鉛直方向のサイズよりも広い平型のプラズマ源であるので、平面視において、より広い範囲でより均一にプラズマを発生させることができる。プラズマ源5は平面視において重複領域R0よりも広い範囲でプラズマを発生させてもよい。これによれば、プラズマによる活性種をより均一に基板Wの第1主面に供給することができる。ひいては、成膜装置100はより均一に基板Wの第1主面に対象膜を形成することができる。
【0106】
また、図1から図6に例示された流体ヘッド3では、第2流出口6cは鉛直管65の先端部66に形成されている。このため、鉛直管65の内径(つまり、貫通流路6b2の流路面積)を大きくしつつも、第2流出口6cの直径(つまり、開口面積)を小さくすることができる。鉛直管65の内径が大きければ、第2原料ガスは鉛直管65を流れやすい。一方で、第2流出口6cの直径が小さいので、第2流出口6cの周縁と第1流出口4cの周縁との間の距離を長くすることができる。このため、第1流出口4cから流出した活性種が第2流出口6cに到達する可能性を低減させることができる。
【0107】
もし仮に、多くの活性種が第2流出口6cに到達すると、活性種と第2原料ガスとが反応し、その化合物が第2流出口6cの近傍で先端部66の内周面に形成される可能性がある。このような化合物膜によって、例えば第2流出口6cの開口面積が変動すると、複数の第2流出口6cからの流出される第2原料ガスの流量および流速がばらつき得る。これは、基板W上の対象膜の不均一を招き得る。上述の例では、第1流出口4cから流出した活性種が第2流出口6cに到達する可能性を低減させることができるので、このような不具合が発生する可能性を低減させることができる。
【0108】
また、図1の例では、鉛直管65がプラズマ源5および第1流路部材4を貫通し、その先端部66が第1流路部材4よりも鉛直下方に位置している。つまり、先端部66に形成された各第2流出口6cは、第1流路部材4の下部に形成された各第1流出口4cよりも鉛直下方に位置している。さらに言い換えれば、各第2流出口6cは各第1流出口4cよりもサセプタ21側に位置している。これによっても、第2流出口6cと第1流出口4cとの間の距離を長くすることができる。したがって、第1流出口4cから流出した活性種が第2流出口6cまで到達する可能性をさらに低減させることができる。
【0109】
<仕切部材>
流体ヘッド3の内部において、プラズマ室4bおよびガス流路6bは互いに仕切られている。上述の例では、プラズマ室4bおよびガス流路6bは、第2流路部材6の下板部64、プラズマ源5、第2流路部材6の鉛直管65および第1流路部材4の中空柱部45によって互いに仕切られている。つまり、これらの部材が仕切部材として機能している。しかしながら、必ずしもこれに限らない。例えば、プラズマ源5がプラズマ室4bとガス流路6bの流路空間6b1とを仕切る仕切部材として機能できるので、下板部64は必ずしも設けられる必要はない。この場合、第2流路部材6の側壁63の下端周縁がプラズマ源5に接続され得る。また、鉛直管65および中空柱部45は、プラズマ室4bとガス流路6bの貫通流路6b2とを仕切る仕切部材として機能できる。このため、鉛直管65および中空柱部45の一方を省略してもよい。具体的には、例えば、鉛直管65のうちの第1流路部材4よりも突出している突出部分以外の部分を省略してもよい。この場合、突出部分は第1流路部材4に接続され得る。あるは、中空柱部45を省略してもよい。この場合には、第1流路部材4の下板部44の各貫通穴の内周面は、対応する鉛直管65の外周面に接続され得る。
【0110】
<シールド>
流体ヘッド3は、少なくともプラズマ室4bと貫通流路6b2との間に設けられた導電性シールドを含んでいてもよい。例えば、第2流路部材6の各鉛直管65のうち、少なくとも、プラズマ室4bと水平方向において隣り合う部分は、金属等の導電部材を含んでいてもよい。つまり、該部分は金属等の導電材料によって構成されてもよい。各鉛直管65の該導電部材は貫通流路6b2を囲む筒状の形状を有する。該導電部材は、プラズマ室4bおよび貫通流路6b2を互いに電気的に遮蔽する導電性シールドとして機能することができる。
【0111】
各鉛直管65の該導電部材は接地されていてもよい。これにより、シールド性能を向上させることができる。例えば、第2流路部材6の全体が金属等の導電部材によって構成され、第2流路部材6が所定の配線を通じて接地されていてもよい。
【0112】
このような構造によれば、プラズマ源5によるプラズマ用の電界はプラズマ室4bに発生するものの、導電性シールド(上記導電部材)によって、第2流路部材6の鉛直管65内(つまり、貫通流路6b2)には発生しにくい。プラズマ源5は鉛直下方にプラズマ用の電界を発生させるので、プラズマ源5と水平方向で隣り合う空間およびプラズマ源5よりも鉛直方向の空間には、プラズマ用の電界はほとんど発生しない。しかしながら、プラズマ源5がこれらの空間に電界を生じさせる場合には、第2流路部材6の全体が導電部材によって構成されるとよい。この場合、第2流路部材6の全体が導電性シールドとして機能する。よって、電界はガス流路6bの全体に生じにくく、第2原料ガスには該電界が作用しにくい。したがって、第2原料ガスへの不要な電界の印加を抑制することができ、第2原料ガスのプラズマ化を抑制することができる。また、第2原料ガスとともにキャリアガスが流体ヘッド3に供給される場合には、キャリアガスのプラズマ化も抑制することができる。
【0113】
<流体ヘッドの他の具体例>
図8は、第1の実施の形態にかかる流体ヘッド3の他の一例を概略的に示す図である。図8の例でも、流体ヘッド3は、第1流入口4a、プラズマ室4b、複数の第1流出口4c、第2流入口6a、ガス流路6bおよび複数の第2流出口6cを有している。ただし、図8の例では、流体ヘッド3はプラズマ源5Aと流路部材6Aとを含んでいる。
【0114】
流路部材6Aは、プラズマ源5Aへの電源の供給に利用される接続口6dの有無を除いて、第2流路部材6と同様の構成を有している。接続口6dについては後に説明する。
【0115】
図9は、図8の流体ヘッド3の各構成を分解して概略的に示す図であり、図10は、図9のX-X断面を概略的に示す図である。図9の例では、プラズマ源5Aはホローカソード放電型プラズマ源であり、第1電極510と第2電極521とを含んでいる。第1電極510および第2電極521は金属等の導電部材によって形成される。図9および図10に示されるように、第1電極510は板状の形状を有している。図10の例では、第1電極510は平面視において、基板Wと同心状の円形状を有している。第1電極510の直径は基板Wの直径以上であってもよい。
【0116】
第1電極510には、流路部材6Aの複数の鉛直管65がそれぞれ貫通する複数の貫通穴512が形成されている。各貫通穴512は第1電極510を鉛直方向に沿って貫通している。各貫通穴512は平面視において例えば円形状を有する。
【0117】
第1電極510のうちのサセプタ21側の面(ここでは下面)には、複数の凹部511が形成されている。複数の凹部511は、貫通穴512とは異なる位置に形成される。図10の例では、複数の凹部511は平面視で基板Wと重なる重複領域R0において、複数の貫通穴512とは異なる位置で2次元的に分散配置されている。複数の凹部511は重複領域R0の大部分と対向する領域において分散配置されていてもよい。より具体的な一例として、複数の凹部511は、基板Wの直径の2分の1以上の直径を有し基板Wと同心状の円領域において、分散配置され得る。
【0118】
図9および図10の例では、各凹部511は、鉛直方向に沿って延びる柱状に形成されており、平面視において、例えば円形状を有している。図9の例では、各凹部511の深さは、各凹部511の底面と第1電極510の上面との間の厚みよりも大きい。第1電極510のうち各凹部511の周囲の部分は、いわゆるホローカソードを構成する。つまり、第1電極510は、平面視において2次元的に分散配置された複数のホローカソードを形成している。図9の例では、凹部511は第1流出口4cと鉛直方向において一対一で対向している。
【0119】
第2電極521は第1電極510に対してサセプタ21側に位置している。ここでは、第2電極521は第1電極510よりも鉛直下方に位置している。第2電極521は板状の形状を有しており、平面視において、例えば基板Wと同心状の円形状を有している。第2電極521の直径は基板Wの直径以上であってもよい。第2電極521は、例えば、第1流路部材4の下板部44と同様の形状を有する。第2電極521は導電性を有し、いわゆるアノードを形成している。
【0120】
第2電極521には、流路部材6Aの複数の鉛直管65がそれぞれ貫通する複数の貫通穴523が形成されている。貫通穴523は第2電極521を鉛直方向に沿って貫通している。各貫通穴523は平面視において例えば円形状を有する。第1電極510の貫通穴512および第2電極521の貫通穴523は、プラズマ源5Aを貫通する貫通穴5dに相当する。
【0121】
図9の例では、第2電極521の周縁には側壁522が立設されている。側壁522は第2電極521の周縁の全周から第1電極510に向かって延びている。側壁522は第2電極521と同一材料で一体に構成されていてもよく、第2電極521と別材料で別体に構成されていてもよい。ここでは、側壁522は第2電極521と同一材料で一体に構成されている。
【0122】
図9の例では、第1電極510の周縁と側壁522との間には、絶縁部材533が設けられている。絶縁部材533は第1電極510と側壁522との間の絶縁を確保している。絶縁部材533は板状の形状を有しており、平面視においてリング状の形状を有する。絶縁部材533により、第1電極510と第2電極521との間の短絡を回避することができる。
【0123】
第1電極510、第2電極521および側壁522によって囲まれた空間はプラズマ室4bに相当する。つまり、プラズマ源5Aの一部である第1電極510は、流路空間6b1とプラズマ室4bとの間に設けられている。側壁522の一部には第1流入口4aが形成されており、第2電極521には複数の第1流出口4cが形成されている。各第1流出口4cは第2電極521を鉛直方向に貫通する。
【0124】
第1電極510と第2電極521の間には、プラズマ用の電源540によってプラズマ用の電圧が印加される。図8の例では、第1電極510には電源540の第1出力端が電気的に接続され、電源540の第2出力端および第2電極521は接地されている。電源540は例えば高周波電圧を出力する。第1電極510と第2電極521との間に該電圧が印加されることにより、第1電極510と第2電極521との間のプラズマ室4bにはプラズマ用の電界が発生し、プラズマ室4b内の第1原料ガスがプラズマ化する。プラズマ化による活性種は複数の第1流出口4cから流出する。
【0125】
次に、流路部材6Aについて説明する。ここでは一例として、流路部材6Aは導電部材によって形成されている。これにより、流路部材6Aはガス流路6bを外部から電気的に遮蔽することができ、ガス流路6bにおいてプラズマ用の電界の発生を抑制することができる。流路部材6Aが導電性を有する場合には、図8および図9に例示されるように、流体ヘッド3には、プラズマ源5Aと流路部材6Aとの間を絶縁する絶縁部材530が設けられるとよい。例えば図9に示されるように、絶縁部材530は板部531と複数の筒部532とを含んでいる。板部531は板状の形状を有しており、流路部材6Aの中空板部61とプラズマ源5Aの第1電極510との間に設けられている。板部531は中空板部61と第1電極510と間の絶縁を確保する。板部531は平面視において、例えば基板Wと同心状の円形状を有する。板部531の直径は中空板部61および第1電極510の直径以上である。板部531には複数の貫通穴が形成されており、該複数の貫通穴には流路部材6Aの複数の鉛直管65がそれぞれ貫通する。
【0126】
複数の筒部532は筒状の形状を有しており、その上端口が板部531の各貫通穴と一致するように、板部531に接続される。複数の筒部532は板部531からサセプタ21側に延びている。流路部材6Aの複数の鉛直管65は複数の筒部532をそれぞれ貫通する。筒部532は第1電極510と鉛直管65との間、および、第2電極521と鉛直管65との間に介在する。このため、筒部532は第1電極510と鉛直管65との間の絶縁を確保できるとともに、第2電極521と鉛直管65との間の絶縁も確保できる。言い換えれば、鉛直管65を通じた第1電極510と第2電極521との短絡を回避することができる。
【0127】
図8の例では、流体ヘッド3には、第1電極510に通じる電源用の接続口6dが形成されている。接続口6dは、平面視において、複数の鉛直管65とは異なる位置に形成されており、流路部材6Aの中空板部61および絶縁部材530の板部531を鉛直方向に貫通する。図9の例では、中空板部61には、接続口6dを囲む中空柱部67も設けられている。中空柱部67は筒状の形状を有しており、その上端口が上板部62に形成された貫通穴と一致し、かつ、その下端口が下板部64に形成された貫通穴と一致するように、上板部62および下板部64を接続する。上板部62の貫通穴、中空柱部67および下板部64の貫通穴は接続口6dのうちの上方部分に相当する。
【0128】
第1電極510は接続口6dにおいて配線541の一端に電気的に接続され、配線541の他端が電源540の第1出力端に電気的に接続される。
【0129】
図11は、図8のXI-XI断面を概略的に示す図である。図11に示されるように、流体ヘッド3には複数の接続口6dが形成されてもよい。複数の接続口6dは平面視において異なる互いに位置に形成される。例えば、複数の接続口6dは周方向において等間隔で形成されてもよい。図8の例では、4つの接続口6dが、仮想的な正方形の各頂点に相当する位置にそれぞれ形成されている。
【0130】
第1電極510は各接続口6dにおいて配線541の一端に電気的に接続される。第1電極510が複数の接続口6dにおいてそれぞれ複数の配線541の一端に電気的に接続されるので、第1電極510には複数の位置で電圧が印加される。これによれば、第1電極510の電圧分布(電位分布)をより均一にすることができる。ひいては、プラズマ源5Aは平面視においてより均一にプラズマを発生させることができる。
【0131】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態にかかる成膜装置100は、流体ヘッド3の構成を除いて、第1の実施の形態と同様の構成を有する。以下では、第2の実施の形態にかかる流体ヘッド3を流体ヘッド3Aと呼ぶ。
【0132】
図12は、第2の実施の形態にかかる流体ヘッド3Aの構成の一例を概略的に示す断面図である。図12の例では、流体ヘッド3Aは第1流路部材4とプラズマ源5と第2流路部材6と冷却部30をさらに含んでいる。
【0133】
冷却部30はプラズマ源5を冷却する。図12の例では、冷却部30は、第2流路部材6の中空板部61と、プラズマ源5との間に設けられている。冷却部30には、第2流路部材6の複数の鉛直管65(貫通流路6b2)がそれぞれ貫通する複数の貫通穴30dが形成されている。
【0134】
図13は、冷却部30の構成の一例を概略的に示す断面図である。図13の例では、冷却部30は冷媒式の冷却部であり、熱伝導性部材31と冷媒配管32と冷媒冷却部33とを含んでいる。
【0135】
熱伝導性部材31は、高い熱伝導率を有する材料によって構成されており、例えば金属等によって構成される。熱伝導性部材31は板状の形状を有しており、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。熱伝導性部材31は平面視において、例えば基板Wと同心状の円形状を有している。熱伝導性部材31の直径は例えばプラズマ源5(具体的には導波部材51)の直径以上であってもよい。熱伝導性部材31はプラズマ源5の導波部材51と密着しているとよい。
【0136】
熱伝導性部材31には複数の貫通穴30dおよび冷媒流路30aが形成されている。複数の貫通穴30dは、それぞれ複数の鉛直管65と対向する位置に形成されており、熱伝導性部材31を鉛直方向に貫通する。第2流路部材6の複数の鉛直管65は冷却部30の複数の貫通穴30dをそれぞれ貫通する。
【0137】
図13の例では、冷媒流路30aの上流端および下流端は熱伝導性部材31の側面に形成される。冷媒流路30aは熱伝導性部材31の内部において貫通穴30dと干渉しないように延びており、図13の例では、蛇行している。
【0138】
冷媒流路30aの上流端には冷媒配管32の下流端が接続され、冷媒流路30aの下流端には冷媒配管32の上流端が接続されている。水などの冷媒は冷媒配管32および冷媒流路30aを流れて循環する。
【0139】
冷媒冷却部33は、冷媒配管32を流れる冷媒を冷却する。冷媒冷却部33は例えばヒートポンプユニットであってもよい。冷媒冷却部33で冷却された低温の冷媒は、冷媒流路30aにおいて熱伝導性部材31と熱交換する。これにより、冷媒が熱伝導性部材31から熱を受け取り、熱伝導性部材31を冷却する。熱伝導性部材31はプラズマ源5と熱交換して、プラズマ源5から熱を受け取るので、プラズマ源5を冷却することができる。一方、冷媒は熱伝導性部材31から熱を受け取るので、冷媒の温度は上昇する。この冷媒は再び冷媒冷却部33において冷却される。
【0140】
以上のように、流体ヘッド3Aにおいては、冷却部30がプラズマ源5を冷却する。これにより、プラズマ源5の温度上昇を抑制することができる。したがって、プラズマ源5および、その周囲の部材(例えば第1流路部材4)に生じる熱劣化を抑制することができる。
【0141】
また、上述の例では、冷却部30がプラズマ源5に対してサセプタ21とは反対側に設けられている。このため、冷却部30は、プラズマ源5および第1流路部材4による基板Wへの活性種の発生および供給を阻害しない。また、冷却部30は広い面積でプラズマ源5と対向することができ、広い面積でプラズマ源5を冷却することができる。このため、冷却部30はより効果的にプラズマ源5を冷却することができる。
【0142】
また、冷却部30は中空板部61とプラズマ源5との間に設けられているので、プラズマ源5から中空板部61への熱伝導を効果的に抑制することもできる。このため、中空板部61内の流路空間6b1において第2原料ガスが熱分解する可能性をさらに低減させることもできる。また、冷却部30は中空板部61を冷却してもよい。例えば熱伝導性部材31が中空板部61の下板部64に密着する場合には、冷却部30は効果的に中空板部61を冷却することができる。
【0143】
なお、冷却部30は中空板部61とプラズマ源5との間に設けられる必要はない。例えば冷却部30は中空板部61に対してプラズマ源5とは反対側、ここでは、中空板部61よりも鉛直上方に設けられてもよい。あるいは、第1の冷却部30が中空板部61よりも鉛直上方に設けられ、第2の冷却部30が中空板部61とプラズマ源5との間に設けられてもよい。
【0144】
また、図8の流体ヘッド3において、プラズマ源5Aを冷却する冷却部30が設けられてもよい。例えば冷却部30は流路部材6Aの中空板部61とプラズマ源5Aとの間に設けられ得る。
【0145】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態にかかる成膜装置100の構成の一例は、第1または第2の実施の形態と同様である。ただし、第3の実施の形態では、流体ヘッド3の流路の構成が第1または第2の実施の形態にかかる流体ヘッド3と相違する。
【0146】
図14は、第3の実施の形態にかかる流体ヘッド3の第2流路部材6の構成の一例を概略的に示す断面図である。図14の例では、第2流路部材6の側壁63には、複数の第2流入口6aが形成されている。複数の第2流入口6aは周方向で略等間隔に側壁63に形成されている。この構造によれば、ガス流路6b(具体的には流路空間6b1)には複数の第2流入口6aから第2原料ガスが流入する。このため、ガス流路6b内の第2原料ガスの流れはより均一となり、第2原料ガスは複数の第2流出口6cからより均一に流出する。
【0147】
ところで、複数の第2流出口6cのうち外周側の第2流出口6cは、中央側の第2流出口6cよりも、いずれかの第2流入口6aに近い。このため、第2原料ガスの流路の長さという観点では、第2原料ガスは外周側の第2流出口6cに到達しやすく、中央側の第2流出口6cには到達しにくい。つまり、流路の長さという観点では、第2原料ガスは外周側の第2流出口6cから流出しやすく、中央側の第2流出口6cから流出しにくい。このため、流路の長さという観点では、第2原料ガスは中央側の第2流出口6cよりもわずかに大きな流量で外周側の第2流出口6cから流出し得る。
【0148】
そこで、図14の例では、中央側の第2流出口6cの開口面積が、外周側の第2流出口6cの開口面積よりも大きく設定されている。例えば、重複領域R0のうちの中央領域R1内の全ての第2流出口6cの開口面積は、重複領域R0のうちの中央領域R1よりも外側の外周領域R2内の全ての第2流出口6cの開口面積よりも大きい。このため、開口面積の大小という観点では、外周側の第2流出口6cから第2原料ガスが流出しにくく、中央側の第2流出口6cから第2原料ガスが流出しやすい。
【0149】
したがって、中央側および外周側の第2流出口6cから流出する第2原料ガスの流量のばらつきを低減させることができる。言い換えれば、第2原料ガスは複数の第2流出口6cからさらに均一に流出する。
【0150】
図14の例では、複数の貫通流路6b2のうちの中央側の貫通流路6b2の流路面積は外周側の貫通流路6b2の流路面積よりも大きい。より具体的な一例として、中央領域R1内の全ての貫通流路6b2の流路面積は外周領域R2内の全ての貫通流路6b2の流路面積よりも大きい。言い換えれば、中央領域R1内の各鉛直管65の流路面積は外周領域R2の各鉛直管65の流路面積よりも大きい。これによれば、複数の貫通流路6b2の間での第2原料ガスの流量のばらつきも低減させることができる。ひいては、第2原料ガスは複数の第2流出口6cからさらに均一に流出する。
【0151】
なお、複数の第2流出口6cの間における第2原料ガスのばらつきを低減させるには、必ずしも中央側の第2流出口6cの開口面積を外周側の第2流出口6cの開口面積よりも大きく設定する必要はない。ここで、開口率を導入して説明する。開口率とは、所定領域内の第2流出口6cの開口面積の総和の、該所定領域の面積に対する比である。開口率が大きいほど、第2原料ガスは第2流出口6cを流れやすくなるので、中央側の第2流出口6cの開口率を外周側の第2流出口6cの開口率よりも大きくすればよい。
【0152】
図15は、第3の実施の形態にかかる流体ヘッド3の第2流路部材6の構成の他の一例を概略的に示す断面図である。図15の例では、中央領域R1内に位置する第2流出口6cどうしのピッチは、外周領域R2内に位置する第2流出口6cどうしのピッチよりも狭い。このため、中央領域R1における第2流出口6cの開口率は外周領域R2における第2流出口6cの開口率よりも大きい。したがって、中央側および外周側の第2流出口6cから流出する第2原料ガスの流量のばらつきを低減させることができる。言い換えれば、第2原料ガスは複数の第2流出口6cからさらに均一に流出する。
【0153】
図16は、第3の実施の形態にかかる流体ヘッド3の構成の一例を概略的に示す断面図である。図16の例では、第2流入口6aは第2流路部材6の側壁63のみならず上板部62にも形成されている。具体的には、上板部62の中央部に第2流入口6aが形成されている。言い換えれば、流路空間6b1の中央部の上部に第2流入口6aが形成されている。上板部62の第2流入口6aは、例えば、基板Wの中心と鉛直方向において並ぶ位置に形成される。
【0154】
この構造によれば、ガス流路6b(より具体的には流路空間6b1)には、側部の複数の第2流入口6aのみならず、中央部上方の第2流入口6aからも、第2原料ガスが流入する。このため、ガス流路6bの流路空間6b1内の第2原料ガスの流れをさらに均一化させることができる。したがって、第2原料ガスは複数の第2流出口6cからさらに均一に流出する。
【0155】
第1流出口4cの開口率も第2流出口6cと同様に設定されてもよい。図17は、第3の実施の形態にかかる流体ヘッド3の第1流路部材4の構成の一例を概略的に示す断面図である。図17の例では、第1流路部材4の側壁43には、複数の第1流入口4aが形成されている。複数の第1流入口4aは周方向で略等間隔に側壁43に形成されている。この構造によれば、プラズマ室4bには複数の第1流入口4aから第1原料ガスが流入する。このため、プラズマ室4b内の第1原料ガスの流れはより均一となり、第1原料ガス由来の活性種は複数の第1流出口4cからより均一に流出する。
【0156】
図17の例では、中央側の第1流出口4cの開口率は、外周側の第1流出口4cの開口率よりも大きく設定されている。例えば、平面視において、中央領域R1内の全ての第1流出口4cの開口面積は、外周領域R2内の全ての第1流出口4cの開口面積よりも大きい。このため、開口面積の大小という観点では、外周側の第1流出口4cから第1原料ガス由来の活性種が流出しにくく、中央側の第1流出口4cから活性種が流出しやすい。したがって、中央側および外周側の第1流出口4cから流出する活性種の流量のばらつきを低減させることができる。言い換えれば、活性種は複数の第1流出口4cからさらに均一に流出する。
【0157】
なお、中央側の第1流出口4cのピッチが外周側の第1流出口4cのピッチよりも狭く設定されてもよい。
【0158】
また、上述の例では、第1流路部材4、プラズマ源5および第2流路部材6を含む流体ヘッド3について説明したものの、プラズマ源5Aおよび流路部材6Aを含む流体ヘッド3についても同様である。
【0159】
<第4の実施の形態>
第4の実施の形態にかかる成膜装置100の構成の一例は、第1から第3の実施の形態のいずれかの構成と同様である。ただし、第4の実施の形態では、第2ガス供給部50の構成が第1から第3の実施の形態にかかる第2ガス供給部50と相違する。第2ガス供給部50は、第2原料ガスおよびキャリアガスの両方を流体ヘッド3に供給する状態と、第2原料ガスを供給せずにキャリアガスを流体ヘッド3に供給する状態とを切り替えることができる。ここでいうキャリアガスとは、第2原料ガスを搬送するためのガスであり、不活性ガスである。不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス等の希ガスおよび窒素ガスの少なくともいずれか一方を適用することができる。
【0160】
図18は、第4の実施の形態にかかる第2ガス供給部50の構成の一例を概略的に示す図である。図18の例では、第2ガス供給源504はガス供給管5041とガス供給管5042とバイパス菅5043と切替部5044と恒温槽5058とを含んでいる。
【0161】
恒温槽5058は密閉容器であり、第2原料ガスの液体(以下、第2原料液と呼ぶ)を貯留している。恒温槽5058は熱源を含んでおり、該熱源は第2原料液を加熱する。これにより、第2原料液の蒸発を促進させることができ、恒温槽5058内の空間のうち第2原料液よりも鉛直上方に第2原料ガスが充満する。
【0162】
ガス供給管5041の上流端は恒温槽5058に接続されている。具体的には、ガス供給管5041の上流端は、恒温槽5058の内部のうちの第2原料液よりも鉛直上方において開口している。ガス供給管5041の下流端は第2ガス供給管501の上流端に接続されている。
【0163】
ガス供給管5042の下流端は恒温槽5058に接続されている。図18の例では、ガス供給管5042の下流端は恒温槽5058の内部において第2原料液に浸漬している。つまり、ガス供給管5042の下流端は第2原料液において開口している。ガス供給管5042の上流端はキャリアガス供給源5049に接続されている。キャリアガス供給源5049は、キャリアガスを貯留する貯留部(不図示)を含む。
【0164】
バイパス菅5043の上流端はガス供給管5042の途中に接続されており、バイパス菅5043の下流端は第2ガス供給管501の上流端に接続されている。
【0165】
切替部5044は制御部9によって制御され、次に説明する第1接続状態と第2接続状態とを切り替える。第1接続状態は、キャリアガス供給源5049からのキャリアガスがガス供給管5042、恒温槽5058およびガス供給管5041を通じて、第2ガス供給管501の上流端に供給される接続状態である。第1接続状態では、キャリアガスが恒温槽5058の内部に流入する。このため、恒温槽5058の内部の第2原料ガスおよびキャリアガスがガス供給管5041を通じて第2ガス供給管501の上流端に流入する。よって、第1接続状態においては、第2ガス供給管501を通じて第2原料ガスおよびキャリアガスが流体ヘッド3に供給される。したがって、第2原料ガスおよびキャリアガスが流体ヘッド3の複数の第2流出口6cから基板Wの第1主面に向かって流出する。
【0166】
第2接続状態は、キャリアガス供給源5049からのキャリアガスがバイパス菅5043を通じて第2ガス供給管501の上流端に供給される接続状態である。第2接続状態では、キャリアガスは恒温槽5058を迂回して第2ガス供給管501の上流端に流入する。したがって、第2接続状態においては、第2原料ガスは流体ヘッド3に供給されず、キャリアガスが流体ヘッド3に供給される。このため、キャリアガスのみが流体ヘッド3の複数の第2流出口6cから基板Wの第1主面に向かって流出する。
【0167】
図18の例では、切替部5044はバルブ5045とバルブ5046とバルブ5047とを含んでいる。バルブ5045はガス供給管5041に介挿されており、バルブ5046はガス供給管5042のうちのバイパス菅5043と恒温槽5058との間の部分に介挿されており、バルブ5047はバイパス菅5043に介挿されている。バルブ5047が閉じ、バルブ5045およびバルブ5046が開くことにより、切替部5044は第1接続状態を実現できる。バルブ5047が開き、バルブ5045およびバルブ5046が閉じることにより、切替部5044は第2接続状態を実現できる。
【0168】
<成膜装置の動作>
次に、第4の実施の形態にかかる成膜装置100の動作の一例について説明する。図19は、第4の実施の形態にかかる成膜装置100の動作の一例を示すフローチャートである。つまり、図19は、成膜方法の一例を示すフローチャートである。
【0169】
まず、外部の搬送装置によって基板Wがチャンバ1内に搬送される(ステップS1:搬入工程)。これにより、基板Wが水平姿勢でサセプタ21上に載置される。次に、吸引部7がチャンバ1内のガスを吸引して、チャンバ1内の圧力を低下させ(ステップS2:減圧工程)、ヒータ8が基板Wを加熱する(ステップS3:加熱工程)。次に、基板保持部2が基板Wを回転軸線Q1のまわりで回転させる(ステップS4:回転工程)。吸引部7によるチャンバ1の圧力調整、ヒータ8による基板Wの温度調整および基板保持部2による基板Wの回転は成膜処理が終了するまで継続され得る。
【0170】
次に、第1ガス供給部40が第1原料ガスを流体ヘッド3に供給し、第2ガス供給部50が第2電量ガスを供給せずにキャリアガスを流体ヘッド3に供給し、プラズマ源5がプラズマ用の電界を発生させる(ステップS5:プラズマ初期工程)。具体的には、まず、制御部9は、切替部5044に第2接続状態を実現させ、バルブ502を開く。これにより、第2ガス供給部50は第2原料ガスを供給せずにキャリアガスを流体ヘッド3に供給する。よって、第2原料ガスは流体ヘッド3の複数の第2流出口6cから流出せずに、キャリアガスが複数の第2流出口6cから流出する。また、制御部9はバルブ412およびバルブ422を開く。これにより、第1ガス供給部40は、窒素ガスおよび水素ガスを含む第1原料ガスを流体ヘッド3に供給する。よって、流体ヘッド3のプラズマ室4bに第1原料ガスが流入する。制御部9はプラズマ源5にプラズマ用の電界を発生させるので、第1原料ガスがプラズマ室4bにおいてプラズマ化する。このプラズマ化によって発生した活性種が複数の第1流出口4cから流出する。
【0171】
プラズマ源5の動作開始直後では、プラズマが安定しない。つまり、プラズマ源5の動作開始直後では、平面視において、プラズマが空間的に均一には生じずに、局所的に生じ得る。そこで、プラズマ初期工程においては、第2ガス供給部50は未だ第2原料ガスを流体ヘッド3には供給せずに、キャリアガスを流体ヘッド3に供給している。このため、プラズマ初期工程では、第1原料ガスのプラズマ化が開始されつつも、プラズマが安定するまでは基板Wの第1主面での対象膜の形成は開始されない。
【0172】
また、プラズマ初期工程では、流体ヘッド3の第2流出口6cからはキャリアガスが流出するので、第1流出口4cから流出した活性種が第2流出口6cを通じてガス流路6b内に流入することを抑制することができる。つまり、ガス流路6b内に不要な活性種が混入することを抑制できる。もし仮に、ガス流路6b内に活性種が混入すると、後述の次工程(成膜工程)において、ガス流路6bに第2原料ガスが流入したときに、第2原料ガスが活性種と反応し、第2流路部材6の内壁に不要な物質が析出する可能性がある。このような析出はガス流路6bの流路面積の変動を招くので好ましくない。
【0173】
これに対して、第4の実施の形態では、プラズマ初期工程において、キャリアガスが第2流出口6cから流出する。このため、ガス流路6bの流路面積の変動を抑制することができる。
【0174】
プラズマ初期工程の開始から所定期間が経過すると、第2ガス供給部50は第2原料ガスおよびキャリアガスを流体ヘッド3に供給する(ステップS6:成膜工程)。所定期間は、プラズマの安定に要する期間以上の期間であり、例えば、予め設定される。つまり、第2ガス供給部50はプラズマが安定した後に第2原料ガスを供給し始める。より具体的には、制御部9は切替部5044に第1接続状態を実現させる。これにより、第2ガス供給部50は第2原料ガスおよびキャリアガスを流体ヘッド3に供給するので、流体ヘッド3の複数の第2流出口6cからは第2原料ガスおよびキャリアガスが流出する。
【0175】
つまり、該成膜工程において、流体ヘッド3は複数の第1流出口4cからより均一に活性種を流出させつつ、複数の第2流出口6cから第2原料ガスをより均一に流出させる。第2原料ガスは基板Wの第1主面で熱分解し、当該熱分解によって生成された成分が活性種と反応することで、基板Wの第1主面上に対象膜が形成される。
【0176】
成膜工程において、所定の膜厚で対象膜が形成されると、制御部9は成膜工程を終了させる。具体的には、制御部9は第1ガス供給部40のバルブ412、バルブ422および第2ガス供給部50のバルブ502を閉じ、プラズマ源5の動作を停止させる。また、制御部9は回転機構23、ヒータ8および吸引部7の動作を停止させる。
【0177】
次に、搬送装置は基板Wをチャンバ1から搬出する(ステップS7:搬出工程)。具体的には、外部の搬送装置はサセプタ21に載置された基板Wをチャンバ1から搬出する。
【0178】
以上のように、第4の実施の形態では、第2ガス供給部50は、第1ガス供給部40が第1原料ガスを供給しつつプラズマ源5が作動した時点から所定期間において、第2原料ガスを供給せずにキャリアガスを流体ヘッド3に供給し(プラズマ初期工程)、所定期間の経過後に第2原料ガスおよびキャリアガスを流体ヘッド3に供給する(成膜工程)。このため、プラズマが安定しない所定期間では、基板Wの第1主面上の対象膜の成膜処理が開始されず、対象膜の膜厚の不均一を抑制することができる。しかも、該所定期間において、第2流出口6cからキャリアガスが流出するので、第1流出口4cから流出した活性種の第2流出口6cへの流入を抑制することもできる。
【0179】
以上のように、成膜装置100は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この成膜装置100がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【0180】
例えば、上述の例では、第1原料ガスとして、V族元素を含むガスを適用し、第2原料ガスとして、III族元素を含む有機金属ガスを適用した。これにより、成膜装置100は対象膜として、III-V族化合物半導体膜を基板Wの第1主面に形成できる。しかしながら、必ずしもこれに限らない。例えば、第1原料ガスとして酸素ガスを適用し、第2原料ガスとしてシランガスを適用してもよい。これによれば、成膜装置100は対象膜としてシリコン酸化膜を基板Wの第1主面に形成することができる。
【符号の説明】
【0181】
1 チャンバ
100 成膜装置
21 載置台(サセプタ)
3,3A 流体ヘッド
30 冷却部
40 第1ガス供給部
4a 第1流入口
4b プラズマ室
4c 第1流出口
5,5A プラズマ源
50 第2ガス供給部
65 導電性シールド(鉛直管)
6a 第2流入口
6b ガス流路
6b1 流路空間
6b2 貫通流路
6c 第2流出口
8 ヒータ
R0 重複領域
R1 中央領域
R2 外周領域
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19