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特開2024-46194微生物燃料電池用支持体、微生物燃料電池、及びフローティングセンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046194
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】微生物燃料電池用支持体、微生物燃料電池、及びフローティングセンサ
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/16 20060101AFI20240327BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20240327BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20240327BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H01M8/16
H01M8/02
G01N27/327 355
G01N27/416 341N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151434
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】田口 耕造
(72)【発明者】
【氏名】グエン トラン ダン
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126BB08
(57)【要約】
【課題】底質のない環境や水深が大きい環境でも効率よく発電できる浮遊型の微生物燃料電池を提供する。
【解決手段】微生物燃料電池100Aは、カソード電極Cと、アノード電極Aと、カソード電極及びアノード電極を支持し、カソード電極及びアノード電極を液体において浮遊させるための浮力を生じさせる支持体100と、を備え、支持体は、カソード電極を上面が空気に触れるように支持するカソード支持部1と、アノード電極が液体に接するようにアノード電極を支持するアノード支持部2と、アノード支持部とカソード支持部とを接続する接続体3と、を備え、アノード支持部は、微生物を保持する保持材(例えば土壌S)が収容される第1収容空間20を有し、第1収容空間に収納された保持材にアノード電極が接するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード電極及びアノード電極を支持し、前記カソード電極及びアノード電極を液体において浮遊させるための浮力を生じさせる微生物燃料電池用電極支持体であって、
前記カソード電極を上面が空気に触れるように支持するカソード支持部と、
前記アノード電極が前記液体に接するように前記アノード電極を支持するアノード支持部と、
前記アノード支持部と前記カソード支持部とを接続する接続体と、を備え、
前記アノード支持部は、微生物を保持する保持材が収容される第1収容空間を有し、前記第1収容空間に収納された前記保持材に前記アノード電極が接するように構成されている
微生物燃料電池用支持体。
【請求項2】
前記保持材は、土壌を含む
請求項1に記載の微生物燃料電池用支持体。
【請求項3】
前記アノード支持部は、前記第1収容空間の内部に前記保持材とともに前記アノード電極を収容可能な容器形状を呈し、
前記アノード支持部には、前記アノード電極が前記液体に接するようにするための1以上の孔部が形成されている
請求項1に記載の微生物燃料電池用支持体。
【請求項4】
前記孔部は、少なくとも、前記アノード支持部の底面に形成され、
前記第1収容空間には、前記底面の上に前記アノード電極が重ねられ、前記アノード電極の上に前記保持材が重ねられる
請求項3に記載の微生物燃料電池用支持体。
【請求項5】
前記アノード支持部は、前記第1収容空間の上面を開放する開口を有し、
前記アノード支持部は、前記保持材の前記第1収容空間からの流出を防止するための、前記上面に配置されるカバーを有する
請求項4に記載の微生物燃料電池用支持体。
【請求項6】
前記カソード支持部は、内部に前記カソード電極を収容可能であり、前記液体の上方の空気が流入可能であるが前記液体が流入しないことで前記浮力を生じさせる第2収容空間を有する容器形状を呈している
請求項1に記載の微生物燃料電池用支持体。
【請求項7】
前記カソード支持部の底面には1以上の孔部が形成され、
前記カソード支持部の前記底面の外面側にはイオン交換膜が取り付け可能である
請求項6に記載の微生物燃料電池用支持体。
【請求項8】
前記接続体は、前記カソード支持部と前記アノード支持部との間の距離を可変とするように前記アノード支持部から前記カソード支持部までの長さが調整自在に構成されている
請求項1に記載の微生物燃料電池用支持体。
【請求項9】
カソード電極と、
アノード電極と、
前記カソード電極及び前記アノード電極を支持し、前記カソード電極及びアノード電極を液体において浮遊させるための浮力を生じさせる支持体と、
を備え、
前記支持体は、
前記カソード電極を上面が空気に触れるように支持するカソード支持部と、
前記アノード電極が前記液体に接するように前記アノード電極を支持するアノード支持部と、
前記アノード支持部と前記カソード支持部とを接続する接続体と、
を備え、
前記アノード支持部は、微生物を保持する保持材が収容される第1収容空間を有し、前記第1収容空間に収納された前記保持材に前記アノード電極が接するように構成されている
微生物燃料電池。
【請求項10】
カソード電極と、
アノード電極と、
前記カソード電極及び前記アノード電極を支持し、前記カソード電極及びアノード電極を液体において浮遊させるための浮力を生じさせる支持体と、
を備え、
前記支持体は、
前記カソード電極を上面が空気に触れるように支持するカソード支持部と、
前記アノード電極が前記液体に接するように前記アノード電極を支持するアノード支持部と、
前記アノード支持部と前記カソード支持部とを接続する接続体と、
を備え、
前記アノード支持部は、微生物を保持する保持材が収容される第1収容空間を有し、前記第1収容空間に収納された前記保持材に前記アノード電極が接するように構成されている
フローティングセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、微生物燃料電池用支持体、微生物燃料電池、及びフローティングセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、センシング対象の水面に浮遊させることで、水中の有機物に応じて発電されるフローティングセンサ(浮遊型の微生物燃料電池)を開示している。微生物燃料電池は、微生物の代謝反応を利用して有機物である燃料を電気エネルギーに変換し、発電する装置である。微生物燃料電池は、電極として、アノード電極とカソード電極とを備えている。微生物燃料電池は、燃料としての有機物が微生物によって分解されるときに発生する電子をアノード電極にて回収し、アノード電極から外部回路を経由してカソード電極へ移動させる。また、アノード電極において発生したプロトンは、カソード電極へ移動した電子と酸素と反応して水を生じさせる。
【0003】
特許文献1は、微生物燃料電池が備えるアノード電極が、有機物を分解するための微生物を保持してもよいことを開示している。
【0004】
特許文献2は、閉鎖性水域の底質環境を改善するための微生物燃料電池であって、水面もしくは水中に設置される少なくとも一つのカソードと、底質中に設置される少なくとも一つのアノードと、前記アノードとカソードとを電気的に接続する導線と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-71434号公報
【特許文献2】特開2022-7475号公報
【発明の概要】
【0006】
浮遊型の微生物燃料電池において、特許文献1のようにアノード電極自体に微生物を保持させる場合、アノード電極自体が保持できる微生物の量を多くするのは困難であるため、発電量が制限されやすい。
【0007】
一方、特許文献2の微生物燃料電池はアノードを底質中に設置するものであるため、土壌などの底質に豊富に含まれる微生物を利用して、効率よく発電できる。しかし、特許文献2の微生物燃料電は、アノードを底質中に設置するものであるため、底質のない環境や水深が大きい環境では発電することができない。このため、底質のない環境や水深が大きい環境では、特許文献1のような浮遊型が有利である。ところが、従来の浮遊型では、前述のように土壌などの底質に豊富に含まれる微生物を利用することができず、発電量が制限される。そのため、浮遊型において、底質のない環境や水深が大きい環境でも効率よく発電できるようにすることが望まれる。
【0008】
本開示のある側面は、微生物燃料電池用支持体である。開示の微生物燃料電池用支持体は、カソード電極及びアノード電極を支持し、前記カソード電極及びアノード電極を液体において浮遊させるための浮力を生じさせる微生物燃料電池用電極支持体であって、前記カソード電極を上面が空気に触れるように支持するカソード支持部と、前記アノード電極が前記液体に接するように前記アノード電極を支持するアノード支持部と、前記アノード支持部と前記カソード支持部とを接続する接続体と、を備え、前記アノード支持部は、微生物を保持する保持材が収容される第1収容空間を有し、前記第1収容空間に収納された前記保持材に前記アノード電極が接するように構成されている。
【0009】
本開示の他の側面は、微生物燃料電池である。開示の微生物燃料電池は、カソード電極と、アノード電極と、前記カソード電極及び前記アノード電極を支持し、前記カソード電極及びアノード電極を液体において浮遊させるための浮力を生じさせる支持体と、を備え、前記支持体は、前記カソード電極を上面が空気に触れるように支持するカソード支持部と、前記アノード電極が前記液体に接するように前記アノード電極を支持するアノード支持部と、前記アノード支持部と前記カソード支持部とを接続する接続体と、を備え、前記アノード支持部は、微生物を保持する保持材が収容される第1収容空間を有し、前記第1収容空間に収納された前記保持材に前記アノード電極が接するように構成されている。
【0010】
本開示の他の側面は、フローティングセンサである。開示のフローティングセンサは、カソード電極と、アノード電極と、前記カソード電極及び前記アノード電極を支持し、前記カソード電極及びアノード電極を液体において浮遊させるための浮力を生じさせる支持体と、を備え、前記支持体は、前記カソード電極を上面が空気に触れるように支持するカソード支持部と、前記アノード電極が前記液体に接するように前記アノード電極を支持するアノード支持部と、前記アノード支持部と前記カソード支持部とを接続する接続体と、を備え、前記アノード支持部は、微生物を保持する保持材が収容される第1収容空間を有し、前記第1収容空間に収納された前記保持材に前記アノード電極が接するように構成されている。
【0011】
更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施の形態に係る微生物電量電池(以下、発電装置)の概略を表した図である。
図2図2は、発電装置の備える微生物燃料電池用支持体(以下、支持体)を上方から見た分解図である。
図3図3は、支持体を下方から見た分解図である。
図4図4は、支持体を上方から見た概略図である。
図5図5は、発電装置の製造方法の一例を表したフローチャートである。
図6図6は、発電装置を利用したフローティングセンサの概略図である。
図7図7は、フローティングセンサの負荷回路のコンデンサの両端で測定された電圧波形を表した図である。
図8図8は、負荷回路に供給される電力の電圧と点滅間隔との測定結果を示した図である。
図9図9は、発明者らによる実験1と実験2との条件を表した図である。
図10図10は、実験1での結果を示した図である。
図11図11は、実験2での結果を示した図である。
図12図12は、実験1においてフローティングセンサを浮遊させたまま長期保持しときの結果を示した図である。
図13図13は、実験2においてフローティングセンサを浮遊させたまま長期保持しときの結果を示した図である。
図14図14は、発明者らによる実験3での結果を示した図である。
図15図15は、発明者らによる実験4での結果を示した図である。
図16図16は、実験2と実験4とのそれぞれにおける、電圧Vの時間変化を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<1.微生物燃料電池用支持体、微生物燃料電池、及びフローティングセンサの概要>
【0014】
(1)実施の形態に係る微生物燃料電池用支持体は、カソード電極及びアノード電極を支持し、前記カソード電極及びアノード電極を液体において浮遊させるための浮力を生じさせる微生物燃料電池用電極支持体であって、前記カソード電極を上面が空気に触れるように支持するカソード支持部と、前記アノード電極が前記液体に接するように前記アノード電極を支持するアノード支持部と、前記アノード支持部と前記カソード支持部とを接続する接続体と、を備え、前記アノード支持部は、微生物を保持する保持材が収容される第1収容空間を有し、前記第1収容空間に収納された前記保持材に前記アノード電極が接するように構成されている。実施の形態に係る微生物燃料電池用支持体によれば、カソード電極及びアノード電極とともに、微生物を保持する保持材が収容される。また、保持体は、収容されたカソード電極、アノード電極、及び保持材に対して浮力を生じさせるため、これらを液体において浮遊させることができる。これにより、支持体を有する微生物燃料電池では、底質のない環境や水深が大きい環境でも発電することができる。また、支持体に保持材が収容されている微生物燃料電池の方が、収容されていない微生物燃料電池と比較して発電効率が高いことは発明者らの実験によって検証された。
【0015】
(2)(1)の微生物燃料電池用支持体であって、前記保持材は、土壌を含むのが好ましい。これにより、容易に保持材が得られる。
【0016】
(3)(1)又は(2)の微生物燃料電池用支持体であって、前記アノード支持部は、前記第1収容空間の内部に前記保持材とともに前記アノード電極を収容可能な容器形状を呈し、前記アノード支持部には、前記アノード電極が前記液体に接するようにするための1以上の孔部が形成されているのが好ましい。これにより、アノード支持部にアノード電極とともに保持材が収容されるとともに、微生物発電が可能なように支持される。
【0017】
(4)(3)の微生物燃料電池用支持体であって、前記孔部は、少なくとも、前記アノード支持部の底面に形成され、前記第1収容空間には、前記底面の上に前記アノード電極が重ねられ、前記アノード電極の上に前記保持材が重ねられるのが好ましい。これにより、アノード電極が微生物発電が可能なように支持されるとともに、保持材の底面からの流出が防がれる。
【0018】
(5)(4)の微生物燃料電池用支持体であって、前記アノード支持部は、前記第1収容空間の上面を開放する開口を有し、前記アノード支持部は、前記保持材の前記第1収容空間からの流出を防止するための、前記上面に配置されるカバーを有するのが好ましい。これにより保持材の上面からの流出が防がれる。
【0019】
(6)(1)~(5)のいずれか1つの微生物燃料電池用支持体であって、前記カソード支持部は、内部に前記カソード電極を収容可能であり、前記液体の上方の空気が流入可能であるが前記液体が流入しないことで前記浮力を生じさせる第2収容空間を有する容器形状を呈しているのが好ましい。これにより、カソード電極に浮力を生じさせることができるとともに、接続体によって接続されたアノード支持部に支持されたアノード電極及び保持材にも浮力を生じさせることができる。
【0020】
(7)(6)の微生物燃料電池用支持体であって、前記カソード支持部の底面には1以上の孔部が形成され、前記カソード支持部の前記底面の外面側にはイオン交換膜が取り付け可能であるのが好ましい。これにより、イオン交換膜を容易に取り付けることができる。
【0021】
(8)(1)~(7)のいずれか1つの微生物燃料電池用支持体であって、前記接続体は、前記カソード支持部と前記アノード支持部との間の距離を可変とするように前記アノード支持部から前記カソード支持部までの長さが調整自在に構成されているのが好ましい。これにより、カソード電極とアノード電極との間の距離を、その間に存在する液体量が適量となるよう調整できるとともに、支持体を液体に浮遊させたときに水深に応じた距離とすることができる。
【0022】
(9)実施の形態に係る微生物燃料電池は、カソード電極と、アノード電極と、前記カソード電極及び前記アノード電極を支持し、前記カソード電極及びアノード電極を液体において浮遊させるための浮力を生じさせる支持体と、を備え、前記支持体は、前記カソード電極を上面が空気に触れるように支持するカソード支持部と、前記アノード電極が前記液体に接するように前記アノード電極を支持するアノード支持部と、前記アノード支持部と前記カソード支持部とを接続する接続体と、を備え、前記アノード支持部は、微生物を保持する保持材が収容される第1収容空間を有し、前記第1収容空間に収納された前記保持材に前記アノード電極が接するように構成されている。実施の形態に係る微生物燃料電池によれば、カソード電極及びアノード電極とともに、微生物が保持され、かつ、これらを液体において浮遊させることができる。これにより、微生物燃料電池では、底質のない環境や水深が大きい環境でも発電することができる。また、支持体に保持材が収容されている微生物燃料電池の方が、収容されていない微生物燃料電池と比較して発電効率が高いことは発明者らの実験によって検証された。また、長期にわたり発電が可能であることが発明者らの実験によって検証された。
【0023】
(10)実施の形態に係るフローティングセンサは、カソード電極と、アノード電極と、前記カソード電極及び前記アノード電極を支持し、前記カソード電極及びアノード電極を液体において浮遊させるための浮力を生じさせる支持体と、を備え、前記支持体は、前記カソード電極を上面が空気に触れるように支持するカソード支持部と、前記アノード電極が前記液体に接するように前記アノード電極を支持するアノード支持部と、前記アノード支持部と前記カソード支持部とを接続する接続体と、を備え、前記アノード支持部は、微生物を保持する保持材が収容される第1収容空間を有し、前記第1収容空間に収納された前記保持材に前記アノード電極が接するように構成されている。実施の形態に係るフローティングセンサによれば、底質のない環境や水深が大きい環境でも、液中の有機物量をセンシングできる。このことは、発明者らの実験によって検証された。
【0024】
<2.微生物燃料電池用支持体、微生物燃料電池、及びフローティングセンサの例>
【0025】
図1は、本実施の形態に係る微生物電量電池(以下、発電装置)100Aの概略を表した図である。発電装置100Aは、フローティングセンサ100Bとして用いられる。発電装置100Aは、微生物の代謝反応を利用して有機物である燃料を電気エネルギーに変換することで発電する。フローティングセンサ100Bは、センシング対象とする水などの液体の表面に浮遊させて用いられる。フローティングセンサ100Bにおいて、発電装置100Aは、液体中の有機物である燃料を用いて発電する。フローティングセンサ100Bは、発電装置100Aによって発電された電力を用いた出力を行う。
【0026】
発電装置100Aは、微生物燃料電池用支持体(以下、支持体)100を備える。支持体100は、カソード電極C及びアノード電極Aを支持するとともに、カソード電極C及びアノード電極Aを液体において浮遊させるための浮力を生じさせる。
【0027】
支持体100は、カソード支持部1とアノード支持部2とを備える。カソード支持部1は、カソード電極Cを上面が空気に触れるように支持する。アノード支持部2は、アノード電極Aが液体に接するようにアノード電極Aを支持する。
【0028】
カソード電極Cは、酸素の透過性を有する、いわゆるエアカソードである。詳しくは、カソード電極Cはカーボンを主成分とする導電性コーティングである。一例として、カソード電極Cは、次のような手順で作成されてもよい。すなわち、活性炭粉末(例えば4g)、カーボンファイバー(例えば4g)、及び、銅粉末(例えば2g)を混合して所定時間(例えば5分)を撹拌し、次いで、ナフィオン(登録商標)液(例えば3ml)を加えて所定時間(例えば10分)撹拌し、次いで、カーボンナノチューブ水分散液(例えば15ml)を加えて所定時間(例えば15分)撹拌する。得られた混合物を(例えば3mm)ウレタン活性炭フィルタとともに膜上に広げ、所定条件(例えば40℃で24時間)で乾燥させる。
【0029】
アノード電極Aは、カーボンを主成分とする導電性コーティングである。一例として、アノード電極Aは、次のような手順で作成されてもよい。すなわち、カーボンファイバー(例えば5g)及びカーボンナノチューブ水分散液(例えば10ml)を混合して所定時間(例えば20分)撹拌し、得られた混合物を(例えば3mm)ウレタン活性炭フィルタに吸着させて所定条件(例えば40℃で24時間)で乾燥させる。
【0030】
図2図4は、支持体100の構造を説明するための図であって、図2は、支持体100を上方から見た分解図である。図3は、支持体100を下方から見た分解図である。図4は、支持体100を上方から見た概略図である。
【0031】
カソード支持部1は、カソード収容空間(以下、第2収容空間)10を有する容器形状を呈している。第2収容空間10は、内部にカソード電極Cを収容可能である。第2収容空間10は、支持体100を液体に浮遊させた際に、液体の上方の空気が流入可能であり、かつ、液体が流入しない。例えば、カソード支持部1は、支持体100を液体に浮遊させた際に液面より上の位置に空気孔を有する。空気孔は、一例として、第2収容空間10の上面を開放する開口15である。これにより、カソード支持部1は、液体の上方の空気が流入可能であるが液体が流入しない第2収容空間10を有する。このため、カソード支持部1は、第2収容空間10に収容されたカソード電極Cに浮力を生じさせる。
【0032】
第2収容空間10は、支持体100を液体に浮遊させた際に内部に液体が流入する。そのため、カソード支持部1は、支持体100を液体に浮遊させた際に第2収容空間10に液体が流入可能な流入孔を有する。流入孔は、一例として、1以上の孔部16である。1以上の孔部16は、例えば、カソード支持部1の底面11に形成されている。孔部16は、支持体100を液体に浮遊させた際に、第2収容空間10の内部に液体を導く。
【0033】
孔部16は、例えばスリットであってよく、図示された例では底面11に複数のスリットが並行して設けられている。これにより、支持体100が流体に浮遊した状態において、第2収容空間10の内部に液体が導かれる。その結果、第2収容空間10の底面にカソード電極Cが収容された状態で支持体100を液体に浮遊させた際に、第2収容空間10に収容されたカソード電極Cは流体に接する。
【0034】
カソード支持部1の底面11の外面側には交換膜4が取り付け可能である。交換膜4は、一例としてナフィオン(登録商標)膜である。交換膜4は、アノード電極A付近で発生したプロトン(水素イオン)を透過する。底面11の外面側への交換膜4の取り付けは、例えば、接着剤での取り付けであってよい。これにより、交換膜4は取り外しが可能になる。
【0035】
カソード支持部1の外周には、少なくとも1つの導線ホルダ14が設けられている。導線ホルダ14には孔14Aが形成されて、導線5Aを保持する。導線5Aは、一端がアノード電極Aに接続され、孔14Aを通って、他端側が第2収容空間10の外部に達する。
【0036】
カソード支持部1の内面には、少なくとも1つのリブ17が形成されている。リブ17は、カソード支持部1の1つの内面と対向する面との間に設けられている。これにより、カソード支持部1の強度が保たれるとともに、持ち手にもなって扱いが容易になる。さらに、後述の負荷回路200の取り付けに用いることもできる。
【0037】
アノード支持部2は、アノード収容空間(以下、第1収容空間)20を有する容器形状を呈している。アノード支持部2は、第1収容空間20の上面を開放する開口25を有している。第1収容空間20には、微生物を保持する保持材が内部に収容される。さらに、第1収容空間20には、第1収容空間20に収容された保持材に接するようにアノード電極Aが収容される。
【0038】
保持材は、微生物を保持するものであって微生物を保持可能な材料を指し、一例として土壌Sである。土壌Sは、例えば底質などであってよい。これにより、容易に保持材が得られる。
【0039】
土壌Sは、一例として、図示されたように、第1収容空間20に底面にアノード電極Aが収容され、その上に重ねて収容される。これにより、第1収容空間20は、第1収容空間20に収容された土壌Sにアノード電極Aが接するように構成されている。なお、第1収容空間20への土壌Sとアノード電極Aとの収容態様はこの態様に限定されない。他の例として、土壌Sが底面に収容され、その上に重ねてアノード電極Aが収容されてもよい。
【0040】
第1収容空間20は、支持体100を液体に浮遊させた際に、液体が流入可能な流入孔を有する。流入孔は、一例として、第1収容空間20の上面を開放する開口25である。これにより、第1収容空間20の底面にアノード電極Aが収容され、その上に重ねて土壌Sが収容された状態で支持体100を液体に浮遊させた際に、土壌Sは流体に接する。
【0041】
第1収容空間20は、支持体100を液体に浮遊させた際に内部に液体が流入する。そのため、アノード支持部2は、支持体100を液体に浮遊させた際に第1収容空間20に液体が流入可能な流入孔を有する。流入孔は、一例として、1以上の孔部26である。1以上の孔部26は、例えば、アノード支持部2の底面21に形成されている。孔部26は、支持体100を液体に浮遊させた際に、第1収容空間20の内部に液体を導く。
【0042】
孔部26は、例えばスリットであってよく、図示された例では底面21に複数のスリットが並行して設けられている。これにより、第1収容空間20の底面にアノード電極Aが収容された状態で支持体100を液体に浮遊させた際に、第1収容空間20に液体が流入する。その結果、アノード支持部2は、第1収容空間20に収容されたアノード電極Aを流体に接するように支持する。
【0043】
好ましくは、アノード支持部2はカバー23を有する。カバー23は開口25に配置される。これにより、第1収容空間20の底面にアノード電極Aが収容され、その上に重ねて土壌Sが収容された状態で支持体100を液体に浮遊させた際に、土壌Sの第1収容空間20からの流出が防止される。
【0044】
好ましくは、カバー23は1以上の孔部23Aが形成されている。これにより、第1収容空間20の底面にアノード電極Aが収容され、その上に重ねて土壌Sが収容された状態で支持体100を液体に浮遊させた際に、土壌Sは流体に接する。
【0045】
アノード支持部2の外周には、少なくとも1つの導線用孔24が形成されている。導線用孔24は導線5Aを保持する。導線5Aは、一端がアノード電極Aに接続され、導線用孔24を通って第1収容空間20の外部に達し、他端側がカソード支持部1の導線ホルダ14に保持される。これにより、発電装置100Aの上部に、アノード電極Aからの導線5Aとカソード電極からの導線5Cとが配置される。その結果、発電装置100Aへの後述する負荷回路200の取付が容易になり、フローティングセンサ100Bなどの、発電装置100Aを利用した装置の製造が容易になる。
【0046】
支持体100は、カソード支持部1とアノード支持部2とを接続する接続体3を有する。接続体3は、カソード支持部1に支持されたカソード電極Cとアノード支持部2に支持されたアノード電極Aとの間を距離Lとして接続する。
【0047】
接続体3は、一例として、アノード支持部2に一端が接続され他端がカソード支持部1に接続されるアームである。一例として、接続体3はアノード支持部2と一体に形成されていてもよい。この場合、カソード支持部1は、接続体3と接続するための接続部13を有する。接続部13には切り欠き13Aが形成され、接続体3の他端に設けられた切り欠き31と接合する。
【0048】
カソード支持部1とアノード支持部2とが接続体3によって接続されることで、カソード支持部1の第2収容空間10によって生じた浮力がアノード支持部2にも与えられる。その結果、支持体100は、カソード電極C、アノード電極A、及び、土壌Sを内部に収容した状態で液体に浮遊する。すなわち、カソード電極C、アノード電極A、及び、土壌Sのいずれも浮遊する。
【0049】
好ましくは、接続体3は、カソード支持部1とアノード支持部2との間の距離、すなわち、カソード電極Cとアノード電極Aとの間の距離Lを可変とするように、カソード支持部1からアノード支持部2までの長さが調整自在に構成されている。一例として、接続体3は、アノード支持部2を基端として延びるアームであって、図2に表されたように、基端からの長さの異なる複数の切り欠き31,31Aを有していてもよい。この場合、カソード支持部1に設けられた接続部13の切り欠き13Aと接合させる接続体3の切り欠き31,31Aを切り替えることで、カソード支持部1からアノード支持部2までの長さが調整される。
【0050】
これにより、距離Lをカソード電極Cとアノード電極Aとの間の液体量が適量となるよう調整できるとともに、支持体100を液体に浮遊させたときに、水深Dに応じた距離Lとすることができる。つまり、アノード支持部2が液体の底部に当たらないよう距離Lを調整することができる。
【0051】
図5は、支持体100を用いた発電装置100Aの製造方法の一例を表したフローチャートである。一例として、発電装置100Aは、アノード電極Aをアノード支持部2に設置し(ステップS1)、その上に土壌Sを入れる(ステップS2)。そして、アノード支持部2上面の開口25にカバー23を設置する(ステップS3)。
【0052】
また、カソード支持部1の底面11に交換膜4を貼り付け(ステップS4)、カソード電極Cをカソード支持部1に設置する(ステップS5)。そして、アノード支持部2をカソード支持部1に接続体3で接続する(ステップS6)。
【0053】
アノード電極Aに一方端が接続された導線5Aの他端を導線用孔24を通して第1収容空間20の外部に出し、カソード支持部1の導線ホルダ14に保持させるとともに、カソード電極Cに一方端が接続された導線5Cの他端をカソード支持部1の第2収容空間10の外部に出す(ステップS7)。
【0054】
以上の生成方法により、図4に表された状態の発電装置100Aが製造される。なお、図5の製造方法は一例であって、他の方法であってもよい。例えば、支持体100は予め一体成型されており、接続体3で接続する過程がなくてもよい。
【0055】
アノード支持部2に微生物を保持した土壌Sが収容されるため、発電装置100Aは、外部から燃料が供給されなくても発電を行うことができる。そのため、発電装置100Aは、液体に浮遊させるだけで発電できるとともに、アノード支持部2を液体底部に設置しなくても発電できる。これにより、発電装置100Aは、底質のない環境や水深が大きい環境でも効率よく発電できる。
【0056】
図6は、発電装置100Aを利用したフローティングセンサ100Bの概略図である。フローティングセンサ100Bは、発電装置100Aの導線5A,5Cに接続された負荷回路200を有する。このとき、カソード支持部1がリブ17を有することで、負荷回路200をリブ17の上に設置することができる。
【0057】
負荷回路200は、発電装置100Aの発電を検知可能な負荷を含む。一例として、負荷回路200はLED(Light Emitting Diode)インジケータ回路である。この場合、負荷回路200は、負荷としてのLEDとコンデンサとを有する。負荷回路200は、発電装置100Aから供給されたコンデンサに電力を蓄えて、LEDを点滅させる。
【0058】
フローティングセンサ100Bを液体に浮遊させることで、発電装置100Aは発電する。すなわち、液体に接することによって土壌Sに保持されていた微生物は有機物を分解し、プロトン(H+)及び電子(e-)を生成する。電子はアノード電極Aで回収され、導線5A、負荷回路200、及び導線5Cを経由してカソード電極Cに移動する。プロトンは、交換膜4を透過してカソード電極Cに移動する。カソード電極Cにおいて、外気から取り込まれた酸素と、カソード電極Cに移動した電子及びプロトンとの反応により水が発生する。
【0059】
アノード電極Aで回収された電子がカソード電極Cに移動する際、導線5A及び導線5Cに接続された負荷回路200を経由する。これにより、負荷回路200のコンデンサに電力が蓄えられる。コンデンサの蓄電量が一定となることで、LEDが点滅する。そのため、LEDの点滅によって発電装置100Aでの発電が検知される。
【0060】
図7は、負荷回路200のコンデンサの両端で測定された電圧波形を表した図である。フローティングセンサ100Bが液体に浮遊することで発電装置100Aは発電し続け、負荷回路200に連続的に電力が供給される。そのため、負荷回路200のコンデンサは、図7に示されたように充放電を繰り返す。
【0061】
詳しくは、コンデンサは、初期電圧V0(300[mV])から、発電装置100Aからの電力が供給によって所定電圧V1(例えば2.5[V])まで充電されると、電圧V1に達した時刻T1でLEDに放電する。そのため、時刻T1でLEが1回点滅する。コンデンサの電圧は時刻T1で低下し、再び、発電装置100Aからの電力が供給によって充電される。従って、発電装置100Aが連続的に発電している場合、負荷回路200のLEDは連続して点滅する。
【0062】
図8は、負荷回路200に供給される電力の電圧Vと、点滅間隔Hとの測定結果を示した図である。この測定によると、LEDの点滅は電圧Vがコンデンサの初期電圧V0(300[mV])程度から開始される。その後、電圧Vが増加するほど点滅間隔Hは指数関数的に減少する。
【0063】
発明者らは、図8の測定結果より、負荷回路200に供給される電力の電圧Vと、点滅間隔Hとの間に相関関係があることを見出した。そして、発明者らは、点滅間隔Hを測定することによって、負荷回路200に供給された電力の電圧V、つまり、発電装置100Aによって発電された電力の電圧が得られることに思い至った。
【0064】
発明者らは、発電装置100Aの発電効率を検証するために、発電装置100Aの支持体100に支持される有機物量を変化させて発電電圧を測定した。発電電圧は、図8で得られたフローティングセンサ100Bの点滅間隔Hと負荷回路200に供給された電力の電圧Vとの関係を用いて、点滅間隔Hの測定結果より算出した。
【0065】
図9は、実験1と実験2との条件を表した図である。いずれの実験でも、フローティングセンサ100Bを浮遊させる液体としてLB培養液を用いた。実験1では、液体におけるLBの濃度を0.2,0.3,0.35,0.4,0.45,0.5(%)とした。各々の液体における有機物濃度(COD:Chemical Oxygen Demand(化学的酸素要求量))は、37.2,55.8,65.1,74.4,83.7,93[mg/l]である。実験2では、LBの濃度を1,2,3,4,5,10(%)とした。各々の液体におけるCODは、186,372,558,744,930,1860[mg/l]である。
【0066】
図10は実験1、図11は実験2での結果を示した図である。図10及び図11の縦軸は、フローティングセンサ100Bの点滅間隔Hの測定結果より図8の関係を用いて算出された電圧V、横軸はCODの値を表している。
【0067】
図10及び図11より、フローティングセンサ100Bを浮遊させる液体としてLB培養液を用いた場合、CODの値の増加に伴って発電装置100Aから出力される電圧Vが線形的に増加することが分かった。CODの値が小さい領域では電圧Vの増加率が高く、CODの値が大きい領域では電圧Vの増加率が小さい。また、CODの値が56[mg/l]程度からLEDの点滅が始まったことから、発電装置100Aの出力電圧が300[mV]より大きいことが測定された。
【0068】
発明者らは、さらに、発電装置100Aの長期的な動作特性を得るため、実験1,2においてフローティングセンサ100Bを浮遊させたまま長期保持してその際の発電電圧を測定した。実験では、浮遊開始から23週目から26週目までの期間での発電電圧を測定し、それぞれ、図12及び図13の測定結果が得られた。図12及び図13は、フローティングセンサ100Bの点滅間隔Hの測定結果より図8の関係を用いて算出された電圧V、横軸はCODの値を表している。図中の値が、測定値を表している。図12及び図13では、比較のために、それぞれ、図10及び図11のグラフが重ねて示されている。
【0069】
図12及び図13の結果より、浮遊開始から23週目から26週目までの期間での発電電圧VとCODの値との関係は、概ね、図10及び図11の関係と等しい。そのため、発電装置100Aは長期にわたって発電可能であるという長期的な動作特性が確認された。
【0070】
発明者らは、さらに、フローティングセンサ100Bを浮遊させる液体を米のとぎ汁(RWW)に替え、実験3を行った。実験3では、液体における米のとぎ汁の濃度を2.5,3,5,10(%)とした。各々の液体におけるCODは、57.5,69,115,230[mg/l]である。
【0071】
図14は実験3での結果を示した図である。図14より、フローティングセンサ100Bを浮遊させる液体として米のとぎ汁を用いた場合であっても、CODの値の増加に伴って発電装置100Aから出力される電圧Vが線形的に増加することが分かった。また、CODの値が69[mg/l]程度からLEDの点滅が始まったことから、発電装置100Aの出力電圧が300[mV]より大きいことが測定された。
【0072】
実験1~3より、フローティングセンサ100BにおけるLEDの点滅間隔Hを用いて液中の有機物量をセンシングできることが検証された。また、そのセンシングが長期にわたって可能であることが検証された。さらに、フローティングセンサ100Bを用いて家庭排水の流入をセンシングできることが検証された。
【0073】
発明者らは、さらに、比較例として実験4を行った。実験4では、支持体100に土壌Sを収容しない発電装置を実験2と同条件のLB培養液にフローティングセンサ100Bを浮遊させ、発電電圧を測定した。図15は、実験4での結果を示した図である。図15では、比較のために、図11のグラフが重ねて示されている。
【0074】
支持体100に土壌Sなどの保持材が収容されていない発電装置は、液体中の微生物を利用して発電する。図15図11とを比較すると、図15の方が図11の結果よりも発電電圧が低いことがわかる。例えば、CODの値が1000[mg/l]であるとき、土壌Sが収容されている図11では0.56[V]であるのに対して、土壌Sが収容されていない図15の結果では0.25[V]しかない。
【0075】
また、図16は、実験2と実験4とのそれぞれにおける、電圧Vの時間変化を表した図である。図16の上が土壌Sが収容された実験2での電圧Vの時間変化を表し、下が土壌Sが収容されていない実験4での電圧Vの時間変化を表している。これらを比較すると、実験2において起動から最大電圧に達するまでの時間L1が48時間程度であるのに対して、実験4において起動から最大電圧に達するまでの時間L2は72時間である。
【0076】
これらの結果より、支持体100が土壌Sなどの保持材を支持した本実施の形態に係る発電装置100Aの方が、保持材を保持していない発電装置と比較して発電電圧が高いことが検証された。また、本実施の形態に係る発電装置100Aの方が、保持材を保持していない発電装置と比較して起動時間が短いことが検証された。従って、本実施の形態に係る発電装置100Aの方が、保持材を保持していない発電装置と比較して効率よく発電できることが検証された。
【0077】
<3.付記>
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 :カソード支持部
2 :アノード支持部
3 :接続体
4 :交換膜
5A :導線
5C :導線
10 :第2収容空間
11 :底面
13 :接続部
13A :切り欠き
14 :導線ホルダ
14A :孔
15 :開口
16 :孔部
17 :リブ
20 :第1収容空間
21 :底面
23 :カバー
23A :孔部
24 :導線用孔
25 :開口
26 :孔部
31 :切り欠き
31A :切り欠き
100 :支持体
100A :発電装置
100B :フローティングセンサ
200 :負荷回路
A :アノード電極
C :カソード電極
D :水深
H :点滅間隔
L :距離
S :土壌
V :電圧
V0 :初期電圧
V1 :電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16