(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046218
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】印刷装置およびインク攪拌方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20240327BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20240327BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B41J2/17
B41J2/21
B41J2/175 301
B41J2/175 501
B41J2/175 151
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151468
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】八坂 一郎
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB20
2C056EB50
2C056EC15
2C056EC17
2C056EC19
2C056EC20
2C056EC32
2C056EC46
2C056EE18
2C056FA13
2C056FB02
2C056HA47
2C056KB16
2C056KC02
2C056KC04
(57)【要約】
【課題】タンクに貯留されるインクを攪拌部材によって十分に攪拌可能とする。
【解決手段】水平方向Dhaの一方側Duから他方側Dlに向かうに連れてメインタンク97の底面973sが下がる傾斜姿勢Asでメインタンク97が保持される。このようにメインタンク97を傾けることで、メインタンク97の中央(換言すれば、中心線C97)を攪拌羽根873に近づけることができる。さらに、
図7Bおよび
図8の側面視に示すように、シャフト871および攪拌羽根873を有するメイン攪拌ユニット87は、シャフト871が上側から下側に向かうに連れて一方側Duから他方側Dlに向かう傾斜方向Dsに傾くように保持される。このようにメイン攪拌ユニット87のシャフト861を傾けることで、攪拌羽根873をメインタンク97の中央(換言すれば、中心線C97)に近づけることができる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の印刷に使用されるインクを貯留するタンクを、水平方向の一方側から他方側に向かうに連れて前記タンクの底面が下がる傾斜姿勢で保持するタンク保持部と、
シャフトおよび前記シャフトの下端に取り付けられた攪拌部材を有する攪拌ユニットと、
前記タンクの上面において前記タンクの中心より前記一方側で開口する一の挿入孔から前記タンクの内部に前記攪拌部材および前記シャフトが挿入された前記攪拌ユニットを保持する攪拌ユニット保持部と、
前記タンクの上面において前記タンクの中心より前記他方側で開口する他の挿入口から前記タンクの内部に挿入された送液配管と、
を備え、
前記攪拌ユニットは、前記タンク内のインクに浸かる前記攪拌部材を回転させることでインクを攪拌し、
前記攪拌ユニット保持部は、前記シャフトが上側から下側に向かうに連れて前記一方側から前記他方側に向かう傾斜方向に傾くように前記攪拌ユニットを保持する、
印刷装置。
【請求項2】
前記送液配管は、吸引口が開口する下端を有し、前記タンク内のインクを前記吸引口から吸引可能であり、
前記吸引口は、前記タンクの中心より前記他方側であって、回転してインクを撹拌する前記攪拌部材より下側の位置に設けられる、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記攪拌部材より上側の所定位置において前記タンク内のインクの有無を検出する液位検出部と、
前記送液配管に取り付けられて、前記送液配管内のインクを駆動することで前記タンク内のインクを前記吸引口に吸引させて前記タンクから前記タンクの外部へインクを送液するインク送液動作を実行する送液ポンプと、
制御部と、
をさらに備え、
前記制御部は、
前記液位検出部の検出結果を取得する検出液位取得部と、
前記検出液位取得部が取得した検出結果が、前記所定位置においてインクが無いことを示すと、前記攪拌ユニットが前記攪拌部材の回転を停止するように前記攪拌ユニットを制御する攪拌ユニット制御部と、
前記検出液位取得部が取得した検出結果が、前記所定位置においてインクが無いことを示すと、前記送液ポンプが前記インク送液動作を実行するように前記送液ポンプを制御する送液ポンプ制御部と、
を有する、
請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記タンク保持部は、
水平に設けられた回転軸と、
前記回転軸を中心とする回転方向に回転可能に前記回転軸に取り付けられて前記タンクを保持する保持フレームと、
前記保持フレームを前記回転方向に駆動する駆動部と、
を有し、
前記保持フレームは、前記タンクの前記底面が水平となる水平姿勢で前記タンクを保持する水平保持位置と、前記傾斜姿勢で前記タンクを保持する傾斜保持位置との間で、前記回転軸を中心に回転可能であり、
前記駆動部は、前記保持フレームに駆動力を加えることで前記水平保持位置に前記保持フレームを支持し、
前記駆動部が前記駆動力を解除すると、前記タンクを保持する前記保持フレームは重力によって前記水平保持位置から前記傾斜保持位置に回転する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記駆動部は、エアの供給によって前記駆動力を発生するエアシリンダである、
請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記攪拌ユニット保持部は、
前記攪拌ユニットより上側に設けられたプーリと、
前記プーリに掛け渡されて、前記攪拌ユニットが取り付けられた一端を有するベルトと、
前記ベルトが有する他端に取り付けられたカウンタウェイトと、
前記傾斜方向に前記攪拌ユニットの移動を案内する直動案内部と、
を有する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記送液配管に一体的に取り付けられて、前記攪拌部材による攪拌に伴うインクの渦の発生を抑制する渦発生抑制板をさらに備える請求項1に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記攪拌部材は、回転に伴って生じる遠心力によって広がる攪拌羽根である、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記インクは白インクである、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項10】
画像の印刷に使用されるインクを貯留するタンク内のインクを、前記タンク内のインクに浸かる攪拌部材および当該攪拌部材がその下端に取り付けられたシャフトを有する攪拌ユニットの前記攪拌部材を回転させることで攪拌する工程と、
前記タンク内に挿入された送液配管によって前記タンク内のインクを吸引することで、前記タンク内のインクを前記タンクの外部に送液する工程と、
を備え、
前記タンクは、水平方向の一方側から他方側に向かうに連れて前記タンクの底面が下がる傾斜姿勢でタンク保持部により保持され、
前記攪拌ユニットの前記攪拌部材は、前記タンクの上面において前記タンクの中心より前記一方側で開口する一の挿入孔から前記タンクの内部に挿入され、
前記送液配管は、前記タンクの上面において前記タンクの中心より前記他方側で開口する他の挿入口から前記タンクの内部に挿入され、
前記攪拌ユニットは、前記シャフトが上側から下側に向かうに連れて前記一方側から前記他方側に向かう傾斜方向に傾くように、攪拌ユニット保持部により保持される、
インクの攪拌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タンクに貯留されるインクを攪拌する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像の印刷に使用されるインクは、顔料等の成分を含む。そのため、インクを貯留するタンク内において、インクの成分が沈降してしまう場合があった。そこで、特許文献1では、タンク内に設けられた攪拌機構によってインクを攪拌することで、インクの成分の沈降を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タンクに貯留されたインクを印刷に使用するためには、タンクの外部にインク送液する送液配管をタンク内に挿入するための挿入口が必要となる。さらに、上記のようにタンク内のインクを攪拌部材で攪拌するには、攪拌部材をタンク内に挿入するための挿入口も必要となる。そこで、タンクの上面の両端部に挿入口を設けて、一方を攪拌部材の挿入に使用し、他方を送液配管の挿入に使用することが考えられる。しかしながら、タンクの上面の端部に設けられた挿入口からタンク内に攪拌部材を挿入した場合、タンク内での攪拌部材の位置が端部に偏ってしまう。そのため、タンク内において攪拌部材と反対側のインクを攪拌部材により十分に攪拌できない場合があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、タンクに貯留されるインクを攪拌部材によって十分に攪拌可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る印刷装置は、画像の印刷に使用されるインクを貯留するタンクを、水平方向の一方側から他方側に向かうに連れてタンクの底面が下がる傾斜姿勢で保持するタンク保持部と、シャフトおよびシャフトの下端に取り付けられた攪拌部材を有する攪拌ユニットと、タンクの上面においてタンクの中心より一方側で開口する一の挿入孔からタンクの内部に攪拌部材およびシャフトが挿入された攪拌ユニットを保持する攪拌ユニット保持部と、タンクの上面においてタンクの中心より他方側で開口する他の挿入口からタンクの内部に挿入された送液配管と、を備え、攪拌ユニットは、タンク内のインクに浸かる攪拌部材を回転させることでインクを攪拌し、攪拌ユニット保持部は、シャフトが上側から下側に向かうに連れて一方側から他方側に向かう傾斜方向に傾くように攪拌ユニットを保持する。
【0007】
本発明に係るインクの攪拌方法は、画像の印刷に使用されるインクを貯留するタンク内のインクを、タンク内のインクに浸かる攪拌部材および当該攪拌部材がその下端に取り付けられたシャフトを有する攪拌ユニットの攪拌部材を回転させることで攪拌する工程と、タンク内に挿入された送液配管によってタンク内のインクを吸引することで、タンク内のインクをタンクの外部に送液する工程と、を備え、タンクは、水平方向の一方側から他方側に向かうに連れてタンクの底面が下がる傾斜姿勢でタンク保持部により保持され、攪拌ユニットの攪拌部材は、タンクの上面においてタンクの中心より一方側で開口する一の挿入孔からタンクの内部に挿入され、送液配管は、タンクの上面においてタンクの中心より他方側で開口する他の挿入口からタンクの内部に挿入され、攪拌ユニットは、シャフトが上側から下側に向かうに連れて一方側から他方側に向かう傾斜方向に傾くように、攪拌ユニット保持部により保持される。
【0008】
このように構成された本発明(印刷装置およびインクの攪拌方法)では、タンクの上面においてタンクの中心より一方側で開口する一の挿入孔からタンクの内部に挿入されたシャフトの下端に攪拌部材が取り付けられ、この攪拌部材が回転することでタンク内のインクが攪拌される。この際、水平方向の一方側から他方側に向かうに連れてタンクの底面が下がる傾斜姿勢でタンクが保持される。このようにタンクを傾けることで、タンクの中央を攪拌部材に近づけることができる。さらに、シャフトおよび攪拌部材を有する攪拌ユニットは、シャフトが上側から下側に向かうに連れて一方側から他方側に向かう傾斜方向に傾くように保持される。このように攪拌ユニットのシャフトを傾けることで、攪拌部材をタンクの中央に近づけることができる。その結果、タンクの中央からの攪拌部材の偏りを抑えて、タンクに貯留されるインクを攪拌部材によって十分に攪拌することが可能となる。
【0009】
ちなみに、本発明では、タンクの中央からの攪拌部材の偏りを抑えるために、タンクおよび攪拌ユニットのシャフトのそれぞれを傾けている。これに対して、タンクの傾きのみによって攪拌部材の偏りを抑えることも考えられる。ただし、この場合には、タンクの傾きが大きくなって、タンクからインクが漏れ出すおそれがある。これに対して、タンクおよび攪拌ユニットのシャフトのそれぞれを傾けることで、タンクからのインクの漏れ出しを防止しつつ、タンクに貯留されるインクを攪拌部材によって十分に攪拌することが可能となっている。
【0010】
また、送液配管は、吸引口が開口する下端を有し、タンク内のインクを吸引口から吸引可能であり、吸引口は、タンクの中心より他方側であって、回転してインクを撹拌する攪拌部材より下側の位置に設けられるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、タンクの傾きによってタンクの他方側の端に溜まったインクを、送液配管の吸引口から吸引でき、印刷に使用されずにタンク内に残るインクの量を抑制できる。
【0011】
また、攪拌部材より上側の所定位置においてタンク内のインクの有無を検出する液位検出部と、送液配管に取り付けられて、送液配管内のインクを駆動することでタンク内のインクを吸引口に吸引させてタンクからタンクの外部へインクを送液するインク送液動作を実行する送液ポンプと、制御部と、をさらに備え、制御部は、液位検出部の検出結果を取得する検出液位取得部と、検出液位取得部が取得した検出結果が、所定位置においてインクが無いことを示すと、攪拌ユニットが攪拌部材の回転を停止するように攪拌ユニットを制御する攪拌ユニット制御部と、検出液位取得部が取得した検出結果が、所定位置においてインクが無いことを示すと、送液ポンプがインク送液動作を実行するように送液ポンプを制御する送液ポンプ制御部と、を有するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、タンク内におけるインクの液位が攪拌部材より下がって、攪拌部材によるインクの攪拌ができなくなると、残りのインクをタンクから外部に送液することができる。
【0012】
また、タンク保持部は、水平に設けられた回転軸と、回転軸を中心とする回転方向に回転可能に回転軸に取り付けられてタンクを保持する保持フレームと、保持フレームを回転方向に駆動する駆動部と、を有し、保持フレームは、タンクの底面が水平となる水平姿勢でタンクを保持する水平保持位置と、傾斜姿勢でタンクを保持する傾斜保持位置との間で、回転軸を中心に回転可能であり、駆動部は、保持フレームに駆動力を加えることで水平保持位置に保持フレームを支持し、駆動部が駆動力を解除すると、タンクを保持する保持フレームは重力によって水平保持位置から傾斜保持位置に回転するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、タンクを保持する保持フレームが重力によって傾斜保持位置に位置する。そのため、傾斜保持位置に保持フレームを位置させるために、駆動部が駆動力を発生させる必要がない。したがって、エネルギーを消費することなく、タンクを傾斜姿勢に保持することができる。
【0013】
なお、駆動部の具体的な構成は種々想定される。そこで、駆動部は、エアの供給によって駆動力を発生するエアシリンダであってもよい。
【0014】
また、攪拌ユニット保持部は、攪拌ユニットより上側に設けられたプーリと、プーリに掛け渡されて、攪拌ユニットが取り付けられた一端を有するベルトと、ベルトが有する他端に取り付けられたカウンタウェイトと、傾斜方向に攪拌ユニットの移動を案内する直動案内部と、を有するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、攪拌部材のタンクへの挿入等の作業の際に、攪拌ユニットを簡便に移動させることができ、作業者の作業性が向上する。
【0015】
また、送液配管に一体的に取り付けられて、攪拌部材による攪拌に伴うインクの渦の発生を抑制する渦発生抑制板をさらに備えるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、攪拌部材の攪拌に伴う渦の発生を抑えて、インクにエアが混入するのを抑制できる。
【0016】
また、攪拌部材は、回転に伴って生じる遠心力によって広がる攪拌羽根であるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、挿入口から挿入された攪拌羽根を遠心力によって広げつつインクを攪拌することができ、大きな攪拌羽根によってインクを十分に攪拌することができる。
【0017】
また、インクは白インクである場合には、本発明を適用するとよい。これによって、タンクに貯留される白インクを攪拌部材によって十分に攪拌でき、白インクの顔料が沈降するのを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、タンクに貯留されるインクを攪拌部材によって十分に攪拌することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る印刷装置を備えた印刷システムの一例を模式的に示す正面図。
【
図2】
図1の印刷システムが備える印刷装置を模式的に示す正面図。
【
図3】ヘッドユニットが備える吐出ヘッドの底面を模式的に示す図。
【
図4】吐出ヘッドと当該吐出ヘッドにインクを供給するインク供給機構の構成を模式的に示す図。
【
図5】バッファタンクにインクを供給する機構を模式的に示す図。
【
図6】印刷装置が備える電気的構成を示すブロック図。
【
図7A】メインタンクを保持するメインタンク保持部を模式的に示す図。
【
図7B】メインタンクを保持するメインタンク保持部を模式的に示す図。
【
図8】傾斜姿勢に保持されるメインタンクに挿入されるメイン攪拌ユニットおよび前段送液配管の位置関係を模式的に示す図。
【
図10】撹拌ユニット保持部の構成および動作の一例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明に係る印刷装置を備えた印刷システムの一例を模式的に示す正面図である。
図1および以下に示す図では、水平方向Xおよび鉛直方向Zを適宜示す。
図1に示すように、印刷システム1は、水平方向Xに配列された印刷装置3および乾燥装置6を備える。この印刷システム1は、繰出ロール11から巻取ロール12へロール・トゥ・ロールで長尺帯状の印刷媒体Mを搬送する。なお、印刷媒体Mの素材は、OPP(oriented polypropylene)あるいはPET(polyethylene terephthalate)等のフィルムである。ただし、印刷媒体Mの素材はフィルムに限られず、紙等でもよい。かかる印刷媒体Mは可撓性を有する。また、以下では、印刷媒体Mの両面のうち、画像が印刷される面を表面M1と、表面M1の反対側の面を裏面M2と適宜称する。
【0021】
印刷装置3は、繰出ロール11から巻取ロール12へ搬送される印刷媒体Mの表面M1に対してインクジェット方式で水性インクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1に画像を印刷する。かかる印刷装置3の詳細な構成は後述する。こうして画像が印刷された印刷媒体Mは、印刷装置3から乾燥装置6へ向けて水平方向Xに搬送される。
【0022】
乾燥装置6は乾燥炉60を備え、繰出ロール11から巻取ロール12への搬送に伴って印刷装置3から搬出された印刷媒体Mを乾燥させる。乾燥炉60内には、水平方向Xに配列された2個の上段送風ユニット61uと、これら上段送風ユニット61uの下側で水平方向Xに配列された2個の中段送風ユニット61mと、これら中段送風ユニット61mの下側で水平方向Xに配列された2個の下段送風ユニット61lとが具備されている。
【0023】
印刷装置3の搬出口312から搬出された印刷媒体Mは、2個の上段送風ユニット61uを水平方向Xに通過した後に、1対のローラ62によって2個の中段送風ユニット61mへ向けて折り返される。続いて、印刷媒体Mは、2個の中段送風ユニット61mを水平方向Xに通過した後に、1対のエアターンバー63によって2下段送風ユニット61lに向けて折り返される。さらに、印刷媒体Mは、2個の下段送風ユニット61lを水平方向Xに通過した後に、乾燥装置6の外部へ搬出される。
【0024】
上段送風ユニット61uは、水平方向Xに通過する印刷媒体Mを鉛直方向Zから挟むように配置された2個の送風チャンバ64を有する。各送風チャンバ64は、水平方向Xに配列された複数のノズル65を有し、各ノズル65から温風(60度以上の気体)を印刷媒体Mへ噴射する。こうして、印刷媒体Mは、上下に設けられた2個の送風チャンバ64の間を通過しつつ、これら送風チャンバ64のノズル65から噴射された温風によって乾燥される。また、中段送風ユニット61mおよび下段送風ユニット61lのそれぞれも、上段送風ユニット61uと同様に、印刷媒体Mを鉛直方向Zから挟む2個の送風チャンバ64を有する。
【0025】
ちなみに、上段送風ユニット61uの具体的構成はここの例に限られない。例えば、上段送風ユニット61uの上下の送風チャンバ64のうち下側の送風チャンバ64に代えて、水平方向Xに配列された複数のローラを設けてもよい。かかる構成では、複数のローラによって印刷媒体Mの裏面M2を下側から支持しつつ、上側の送風チャンバ64から印刷媒体Mの表面M1に温風を噴射できる。
【0026】
図2は
図1の印刷システムが備える印刷装置を模式的に示す正面図である。
図2では、水平方向Xの一方側X1および他方側X2を適宜示す。ここで、一方側X1は印刷装置3から乾燥装置6へ向う側であり、他方側X2は一方側X1の反対側である。印刷装置3は、筐体31と、筐体31内に配置されたカラー印刷部32と、筐体31内においてカラー印刷部32の上方に配置された白印刷部33と、筐体31内に配置された複数のローラによって印刷媒体Mを搬送する搬送部4とを備える。
【0027】
カラー印刷部32は、搬送部4によって搬送される印刷媒体Mの上方において、印刷媒体Mの進行方向(他方側X2から一方側X1へ向かう方向)に配列された複数(6個)のヘッドユニット321を有する。複数のヘッドユニット321は、それぞれの下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から対向するノズルを有し、互いに異なる色のカラーインクをインクジェット方式でノズルから吐出する。ここで、カラーインクとは、白色以外のインクを意味し、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック等のインクを含む。こうして、カラー印刷部32の複数のヘッドユニット321は、それぞれの下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方からカラーインクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1にカラー画像を印刷する。
【0028】
また、白印刷部33は、搬送部4によって搬送される印刷媒体Mの上方に配置された単一のヘッドユニット331を有する。ヘッドユニット331は、その下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から対向するノズルを有し、白インクをインクジェット方式でノズルから吐出する。こうして、白印刷部33のヘッドユニット331は、その下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から白インクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1に白画像を印刷する。
【0029】
筐体31の他方側X2の側壁には搬入口311が開口する一方、筐体31の一方側X1の側壁には搬出口312が開口している。そして、搬送部4は、上記のカラー印刷部32および白印刷部33を経由しつつ、搬入口311から搬出口312へ印刷媒体Mを搬送する。
【0030】
この搬送部4は、カラー印刷部32の下側に設けられた搬入部41と、カラー印刷部32の一方側X1に設けられた上昇搬送部42と、カラー印刷部32の上側に設けられた上方搬送部43と、カラー印刷部32の他方側X2に設けられた下降搬送部44とを有する。搬入部41は、搬入口311から搬入された印刷媒体Mをローラ411によって一方側X1に搬送し、上昇搬送部42は、搬入部41によって搬送されてきた印刷媒体Mをローラ421によって上側に搬送し、上方搬送部43は、上昇搬送部42によって搬送されてきた印刷媒体Mをローラ431によって他方側X2へ搬送し、下降搬送部44は、上方搬送部43によって搬送されてきた印刷媒体Mをローラ441によって下側に搬送する。
【0031】
さらに、搬送部4は、カラー印刷部32に対向する印刷媒体Mを下方から支持するカラー搬送部45を有し、下降搬送部44を通過した印刷媒体Mはカラー搬送部45に進入する。このカラー搬送部45は、他方側X2から一方側X1へ配列された複数のローラ451を有し、各ローラ451が印刷媒体Mの裏面M2に下方から接触する。こうして、カラー搬送部45によって支持される印刷媒体Mの表面M1は上方を向き、カラー印刷部32の各ヘッドユニット321は、この表面M1に上方から対向しつつカラーインクを吐出する。
【0032】
また、搬送部4は、印刷媒体Mの進行方向においてカラー搬送部45と下降搬送部44との間に配置されたローラ461、462、463を有する。ローラ461は、印刷媒体Mを駆動する駆動ローラである。ローラ462、463は印刷媒体Mに従動して回転する従動ローラである。
【0033】
さらに、搬送部4は、カラー搬送部45から一方側X1に搬送されてきた印刷媒体Mを二回上下反転させる反転搬送部47を有する。この反転搬送部47は、駆動ローラ471を含む複数のローラ471~477を有し、これらローラ471~477が印刷媒体Mの裏面M2に接触しつつ、印刷媒体Mを二回上下反転させる。つまり、反転搬送部47は、カラー搬送部45から搬送された印刷媒体Mを、ローラ471、472によって下方向に向けて搬送し、さらに印刷媒体Mの進行方向をローラ472によって他方側X2に変更して搬送することにより、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とを上下反転させる。続いて、反転搬送部47は、複数のローラ473によって印刷媒体Mを一方側X1から他方側X2に向けて搬送し、次いで、ローラ474~476によって印刷媒体Mを上方向に向けて搬送する。さらに、反転搬送部47は、ローラ476によって印刷媒体Mの進行方向を一方側X1に変更することによって、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とを再び上下反転させるとともに、ローラ477によって印刷媒体Mを他方側X2から一方側X1に向けて搬送する。
【0034】
また、搬送部4は、白印刷部33に対向する印刷媒体Mを下方から支持する白搬送部48を有し、反転搬送部47によって二回上下反転された印刷媒体Mは白搬送部48に進入する。この白搬送部48は、印刷媒体Mの裏面M2に下側から接触するローラ481を有する。こうして、白搬送部48によって支持される印刷媒体Mの表面M1は上方を向き、白印刷部33のヘッドユニット331は、この表面M1に上方から対向しつつ白インクを吐出する。
【0035】
また、搬送部4は、上方搬送部43より上方に設けられた搬出部49を有する。搬出部49は、水平方向Xの他方側X2から一方側X1へ配列された複数のローラ491を有する。この搬出部49は、白搬送部48により搬送されてきた印刷媒体Mを、複数のローラ491によって一方側X1へと搬送することで、筐体31の搬出口312から乾燥装置6へ搬出する。
【0036】
上記のように、印刷装置3のカラー印刷部32および白印刷部33は、ヘッドユニット321、331を有する。続いては、ヘッドユニット321、331が有する吐出ヘッドHと当該吐出ヘッドHにインクを供給するインク供給機構について説明する。なお、ヘッドユニット321、331は共通する基本的構成を具備するとともに、インク供給機構の基本的な構成もヘッドユニット321、331で共通する。そこで、白インクを吐出するヘッドユニット331に関する構成について説明を行う。
【0037】
図3はヘッドユニットが備える吐出ヘッドの底面を模式的に示す図であり、
図4は吐出ヘッドと当該吐出ヘッドにインクを供給するインク供給機構の構成を模式的に示す図である。
図3では、水平方向Xおよび鉛直方向Zの他に、水平方向Xに直交する水平方向Yが示されている。
図3に示すように、ヘッドユニット331では、同一の色のインク(白インク)を吐出する複数の吐出ヘッドHが水平方向Yに一列に配列されており、各吐出ヘッドHは底面視において矩形を有する。なお、複数の吐出ヘッドHの配列態様は
図3の例に限られず、複数の吐出ヘッドHは千鳥状に配列されてもよい。
【0038】
図4に示すように、吐出ヘッドHはハウジングHaを有し、ハウジングHaの底面では、複数のノズルHnが水平方向Yに千鳥状に配列されて開口する。ハウジングHaの内部には、複数のノズルHnにそれぞれ連通する複数のキャビティHbと、複数のキャビティHbに連通するインク供給室Hcとが設けられており、インク供給室Hcから供給されたインクがキャビティHbに貯留される。また、各キャビティHbには圧電素子Dが設けられており、圧電素子Dが駆動信号(電気信号)に応じて変位することで、キャビティHb内のインクに圧力変動を与える。この圧力変動によって、キャビティHbからインクが押し出されて、当該キャビティHbに連通するノズルHnからインクが吐出される。また、吐出ヘッドHの上部では、インク流入口Hdと、インク流出口Heとがそれぞれ開口し、インクは、後述するインク供給機構9aからインク流入口Hdを介してインク供給室Hcに流入し、インク供給室Hcからインク流出口Heを介して後述するインク回収機構9bへ向けて流出する。
【0039】
次に、インクを供給、回収、循環させるインク供給・回収・循環機構9について説明する。インク供給・回収・循環機構9は、吐出ヘッドHにインクを供給するインク供給機構9a、吐出ヘッドHからインクを回収するインク回収機構9b、および回収したインクを再びインク供給機構9aに戻すインク戻し機構9cを含んで構成される。インク供給機構9aは、吐出ヘッドHへ向けてインクを供給するインク供給部91と、このインク供給部91に対して付与する供給圧力を生成する圧力生成部93とを含む。インク供給部91は、吐出ヘッドHへ供給するインクを貯留する供給タンク91aと、この供給タンク91aから供給されるインクを吐出ヘッドHへ送液する供給配管91bとを含む。インク回収機構9bは、吐出ヘッドHからインクを回収するインク回収部92と、このインク回収部92に対して付与する圧力を生成する圧力生成部94とを含む。インク回収部92は、吐出ヘッドHから回収したインクを貯留する回収タンク92aと、吐出ヘッドHから回収したインクを回収タンク92aへ送液する回収配管92bとを含む。
【0040】
供給タンク91aおよび回収タンク92aのそれぞれは、吐出ヘッドHより上方に配置される。インク戻し機構9cは、回収タンク92aと供給タンク91aとを流路接続する戻り配管902と、この戻り配管902の途中の位置に介在された循環ポンプ90と、戻り配管902の途中の位置に介在され、循環ポンプ90と供給タンク91との間に配置された脱気フィルタ901とを備える。そして、循環ポンプ90は、回収タンク92aから供給タンク91aへインクを送り、脱気フィルタ901は、循環ポンプ90から流出して供給タンク91に流入する前のインクから気体を除去する。かかるインク供給機構9は、循環ポンプ90によって、回収タンク92から供給タンク91に到る第1経路Caに沿ってインクを送ることができる。
【0041】
さらに、インク供給機構9aは、供給タンク91aに圧力P1(負圧)を与える供給側圧力生成部93(以下、「圧力生成部93」と適宜称する)を備える。この圧力生成部93は、圧力タンク931と、圧力タンク931を排気して圧力タンク931に圧力P1を生成する排気ポンプ932と、圧力タンク931にその一端が接続された可撓性のチューブ933と、チューブ933の他端にその一端が連通可能に接続され、その他端が供給タンク91a内の雰囲気に臨むように配置され、圧力タンク931内に生成された圧力を供給タンク91aに伝える圧力伝達配管934と、を備える。そして、排気ポンプ932によって圧力タンク931内に生成された圧力P1が、チューブ933、圧力伝達配管964を介して供給タンク91aに与えられる。
【0042】
これに対して、供給タンク91a内では、インクの液面より上側に気体(空気)が溜まっている。つまり、供給タンク91a内では、気液界面の下側にインクが貯留され、気液界面の上側に気体が存在する。したがって、圧力生成部93によって、供給タンク91a内の気液界面に圧力P1(負圧)が与えられることとなる。
【0043】
さらに、インク回収機構9bは、回収タンク92aに圧力P2(負圧)を与える回収側圧力生成部94(以下、「圧力生成部94」と適宜称する)を備える。この圧力生成部94は、圧力タンク941と、圧力タンク941を排気して圧力タンク941に圧力P2を生成する排気ポンプ942と、圧力タンク941にその一端が接続された可撓性のチューブ943と、このチューブ973の他端にその一端が連通可能に接続されており、その他端が回収タンク92内の雰囲気に臨むように配置され、圧力タンク941内に生成された圧力を回収タンク92aに伝える圧力伝達配管944と、を備える。そして、排気ポンプ942によって圧力タンク941内に生成された圧力P2がチューブ943、圧力伝達配管944を介して回収タンク92aに与えられる。
【0044】
これに対して、回収タンク92a内では、インクの液面より上側に気体(空気)が溜まっている。つまり、回収タンク92a内では、気液界面の下側にインクが貯留され、気液界面の上側に気体が存在する。したがって、圧力生成部94によって、回収タンク92a内の気液界面に圧力P2(負圧)が与えられることとなる。
【0045】
図4に示す状態では、圧力生成部94が回収タンク92aに付与する圧力P2は、圧力生成部93が供給タンク91aに付与する圧力P1より低い。この圧力P2と圧力P1との差によって、供給タンク91aから吐出ヘッドHのインク供給室Hcを介して回収タンク92aに到る第2経路Cbに沿ってインクが流れる。また、第2経路Cbに沿って回収タンク92aに流入したインクは、第1経路Caに沿って循環ポンプ90により供給タンク91aに戻される。こうして、供給タンク91aから吐出ヘッドHを介して回収タンク92aに到達した後に供給タンク91aに戻る循環経路(第2経路Cb+第1経路Ca)でインクが循環する。
【0046】
インク供給・回収・循環機構9はバッファタンク95を備え、バッファタンク95は、供給タンク91aおよび回収タンク92aより多量のインクを貯留することができる。また、インク供給・回収・循環機構9は、バッファタンク95と供給タンク91aを接続する配管951と、バッファタンク95と回収タンク92aとを接続する配管952とを備える。つまり、バッファタンク95は、配管951を介して供給タンク91aと連通し、配管952を介して回収タンク92aと連通する。
【0047】
さらに、インク供給・回収・循環機構9は、バッファタンク95と供給タンク91aとの間で配管951に取り付けられた回収ポンプ953と、バッファタンク95と回収タンク92aとの間で配管952に取り付けられた供給ポンプ954と、回収ポンプ953と供給タンク91aとの間で配管951に取り付けられた電磁弁955と、供給ポンプ954と回収タンク92aとの間で配管952に取り付けられた電磁弁956とを備える。したがって、電磁弁955を開いた状態で、回収ポンプ953によって供給タンク91aから電磁弁955を介してバッファタンク95へインクを回収し、電磁弁956が開いた状態で、供給ポンプ962によってバッファタンク95から電磁弁956を介して回収タンク92aにインクを供給できる。
【0048】
このように構成されたインク供給・回収・循環機構9では、回収ポンプ961および供給ポンプ962を動作させることで、供給タンク91aからバッファタンク95を介して回収タンク92aに到る第3経路Ccに沿ってインクが流れる。また、第3経路Ccに沿って回収タンク92aに流入したインクは、第1経路Caに沿って循環ポンプ90により供給タンク91aに戻される。こうして、供給タンク91aからバッファタンク95を介して回収タンク92aに到達した後に供給タンク91aに戻る循環経路(第3経路Cc+第1経路Ca)でインクが循環する。
【0049】
さらに、インク供給・回収・循環機構9は、バッファタンク95にインクを供給する機構を備える。この点について
図5を用いつつ説明を行う。
図5はバッファタンクにインクを供給する機構を模式的に示す図である。
図5に示すように、インク供給・回収・循環機構9は、バッファタンク95に供給されるインクを貯留するバッファタンク96と、バッファタンク96に供給されるインクを貯留するメインタンク97とを備える。つまり、インクは、メインタンク97からバッファタンク96に供給され、さらにバッファタンク96からバッファタンク95に供給される。そして、バッファタンク95に貯留されたインクが吐出ヘッドHに供給されてノズルHnから吐出される。バッファタンク96およびメインタンク97はバッファタンク95より多量のインクを貯留できる容積を有し、バッファタンク96はメインタンク97より多量のインクを貯留できる容積を有する。例えば、バッファタンク95は60リットルの容積を有し、バッファタンク96は250リットルの容積を有し、メインタンク97は200リットルの容積を有する。ただし、これらの容積の大小関係はこの例に限られない。なお、以下では、バッファタンク95を「後段バッファタンク95」と、バッファタンク96を「前段バッファタンク96」と適宜称する。
【0050】
また、インク供給・回収・循環機構9はメインタンク97から前段バッファタンク96にインクを送液する前段送液ユニット81を備える。この前段送液ユニット81は、メインタンク97と前段バッファタンク96とを接続する前段送液配管811を有し、メインタンク97と前段バッファタンク96とは、前段送液配管811を介して連通する。また、前段送液ユニット81は、前段送液配管811に取り付けられた前段送液ポンプ812を有し、前段送液ポンプ812は、メインタンク97から前段バッファタンク96に向けて前段送液配管811内のインクを駆動する。さらに、前段送液ユニット81は、前段送液ポンプ812とメインタンク97との間で前段送液配管811に取り付けられた前段電磁弁813を有する。この前段電磁弁813は、開くことでメインタンク97と前段送液ポンプ812との間のインクの流通を可能にさせ、閉じることでメインタンク97と前段送液ポンプ812との間のインクの流通を遮断する。かかる前段送液ユニット81では、前段電磁弁813が開いた状態で、前段送液ポンプ812が動作して、メインタンク97から前段バッファタンク96へインクを送る。
【0051】
さらに、インク供給・回収・循環機構9は前段バッファタンク96から後段バッファタンク95にインクを送液する後段送液ユニット82を備える。この後段送液ユニット82は、前段バッファタンク96と後段バッファタンク95とを接続する後段送液配管821を有し、前段バッファタンク96と後段バッファタンク95とは、後段送液配管821を介して連通する。また、後段送液ユニット82は、後段送液配管821に取り付けられた後段送液ポンプ822を有し、後段送液ポンプ822は、前段バッファタンク96から後段バッファタンク95に向けて後段送液配管821内のインクを駆動する。さらに、後段送液ユニット82は、後段送液ポンプ822と前段バッファタンク96との間で後段送液配管821に取り付けられた後段電磁弁823を有する。この後段電磁弁823は、開くことで前段バッファタンク96と後段送液ポンプ822との間のインクの流通を可能にさせ、閉じることで前段バッファタンク96と後段送液ポンプ822との間のインクの流通を遮断する。また、後段送液ユニット82は、後段送液ポンプ822と後段バッファタンク95との間で後段送液配管821に取り付けられた後段電磁弁824を有する。この後段電磁弁824は、開くことで後段送液ポンプ822と後段バッファタンク95との間のインクの流通を可能にさせ、閉じることで後段送液ポンプ822と後段バッファタンク95との間のインクの流通を遮断する。かかる後段送液ユニット82では、後段電磁弁823、824が開いた状態で、後段送液ポンプ822が動作して、前段バッファタンク96から後段バッファタンク95へインクを送る。
【0052】
また、インク供給・回収・循環機構9は、前段バッファタンク96から後段送液ユニット82に流出したインクを前段バッファタンク96に戻すインク戻しユニット83を備える。このインク戻しユニット83は、後段送液配管821において後段送液ポンプ822と後段電磁弁824との間に設けられた分岐部825と、前段バッファタンク96とを接続するインク戻し配管831を有し、後段送液配管821の分岐部825と前段バッファタンク96とは、インク戻し配管831を介して連通する。また、インク戻しユニット83は、分岐部825と前段バッファタンク96との間でインク戻し配管831に設けられたインク戻し電磁弁832を有する。このインク戻し電磁弁832は、開くことで分岐部825と前段バッファタンク96との間のインクの流通を可能にさせ、閉じることで分岐部825と前段バッファタンク96との間のインクの流通を遮断する。前段バッファタンク96から後段バッファタンク95にインクが供給される際には、インク戻しユニット83のインク戻し電磁弁832は閉じており、分岐部825から前段バッファタンク96へのインクの流通は遮断される。
【0053】
一方、吐出ヘッドHのノズルHnからのインクの吐出が停止されている印刷待機期間等では次のようにして、前段バッファタンク96から後段送液配管821に流出したインクを、インク戻しユニット83を介して前段バッファタンク96に戻すインク循環動作が後段送液ユニット82およびインク戻しユニット83によって実行される。つまり、後段電磁弁823は開き、後段電磁弁824は閉じ、インク戻し電磁弁832は開く。したがって、前段バッファタンク96から後段送液ポンプ822までの後段送液配管821に沿ったインクの流通は後段電磁弁823によって可能にされ、後段送液配管821の分岐部825から後段バッファタンク95までのインクの流通は後段電磁弁824によって遮断され、後段送液配管821の分岐部825から前段バッファタンク96までのインク戻し配管831に沿ったインクの流通はインク戻し電磁弁832によって可能にされる。この状態で、後段送液ポンプ822が動作することで、上記のインク循環動作が実行される。
【0054】
また、インク供給・回収・循環機構9は、後段バッファタンク95に貯留されるインクを攪拌する後段攪拌ユニット85と、前段バッファタンク96に貯留されるインクを撹拌する前段撹拌ユニット86と、メインタンク97に貯留されるインクを攪拌するメイン攪拌ユニット87とを有する。なお、攪拌ユニット85、86、87のうち、攪拌ユニット87は、白インクを供給するインク供給・回収・循環機構9にのみ具備され、カラーインクを供給するインク供給機構9には具備されない。
【0055】
後段攪拌ユニット85は、鉛直方向Zに平行に延設されたシャフト851と、シャフト851を回転させる攪拌モータ852と、シャフト851の下端に取り付けられた攪拌羽根853とを有する。攪拌モータ852は後段バッファタンク95の外部に配置される。一方、攪拌羽根853は後段バッファタンク95の内部に配置されて、後段バッファタンク95に貯留されたインクに漬かる。そして、攪拌モータ852がシャフト851を回転させると、鉛直方向Zに平行な回転軸を中心に攪拌羽根853が回転する。こうして回転する攪拌羽根853によって後段バッファタンク95内のインクが攪拌される。
【0056】
前段撹拌ユニット86は、鉛直方向Zに平行に延設されたシャフト861と、シャフト861を回転させる攪拌モータ862と、シャフト861の下端に取り付けられた攪拌羽根863とを有する。攪拌モータ862は前段バッファタンク96の外部に配置される。一方、攪拌羽根863は前段バッファタンク96の内部に配置されて、前段バッファタンク96に貯留されたインクに漬かる。そして、攪拌モータ862がシャフト861を回転させると、鉛直方向Zに平行な回転軸を中心に攪拌羽根863が回転する。こうして回転する攪拌羽根863によって前段バッファタンク96内のインクが攪拌される。
【0057】
メイン攪拌ユニット87は、鉛直方向Zに平行に延設されたシャフト871と、シャフト871を回転させる攪拌モータ872と、シャフト871の下端に取り付けられた攪拌羽根873とを有する。攪拌モータ872はメインタンク97の外部に配置される。一方、攪拌羽根873はメインタンク97の内部に配置されて、メインタンク97に貯留されたインクに漬かる。そして、攪拌モータ872がシャフト871を回転させると、鉛直方向Zに平行な回転軸を中心に攪拌羽根873が回転する。こうして回転する攪拌羽根873によってメインタンク97内のインクが攪拌される。
【0058】
なお、攪拌羽根873は、遠心力によって開く遠心力型の攪拌羽根である。これに対して、メインタンク97の上面には、攪拌羽根873を挿入可能な挿入口971が設けられている。つまり、閉じた状態の攪拌羽根873がメインタンク97の挿入口971から挿入されることで、攪拌羽根873をメインタンク97の内部に配置することができる。そして、攪拌モータ872が攪拌羽根873を回転させると、攪拌羽根873が遠心力によって開いてインクを攪拌する。
【0059】
このような攪拌羽根853、863、873によってインクを攪拌することで、後段バッファタンク95、前段バッファタンク96およびメインタンク97に貯留されるインクの物性を均一にすることができる。特に白インクは、高い隠蔽率を担保する等の目的から、多量の酸化チタンを顔料として含む。そのため、白インクはインク粘度が低く、また溶媒比重に対して顔料比重が大きいため、顔料が沈降しやすい。このような顔料の沈降が生じると、隠蔽率が不足したり、吐出ヘッドHからの白インクの吐出性能が悪化したりといった不具合が生じうる。これに対して、攪拌羽根853、863、873により白インクを攪拌することで、顔料の沈降を抑制することができる。
【0060】
さらに、後段バッファタンク95に対しては、後段バッファタンク95内に貯留されるインクの液位を検出する後段液位センサS95が設けられ、前段バッファタンク96に対して、前段バッファタンク96内に貯留されるインクの液位を検出する前段液位センサS96が設けられ、メインタンク97に対しては、メインタンク97内に貯留されるインクの液位を検出するメイン液位センサS97が設けられている。
【0061】
図6は印刷装置が備える電気的構成を示すブロック図である。
図6に示すように、印刷装置3は、装置全体を統括積に制御する制御部5を備える。この制御部5は、例えばCPU(Central Processing Unit)等で構成されたプロセッサーである。また、印刷装置3は、キーボードやマウス等の入力機器とディスプレイ等の出力機器とを有するUI(User Interface)301を備え、制御部5はUI39を制御するUI制御部501を有する。UI制御部501は、UI39の入力機器に対する作業者の入力操作に応じた制御を実行する一方、UI39の出力機器が作業者に情報を示すようにUI39を制御する。なお、例えばタッチパネルディスプレイ等によってUI39の入力機器と出力機器とを一体的に構成してもよい。
【0062】
制御部5は、メイン攪拌ユニット87の攪拌モータ872を制御する撹拌モータ制御部502を有する。攪拌モータ872が回転するように撹拌モータ制御部502が攪拌モータ872を制御することで、攪拌羽根873が回転して、メインタンク97内のインクが撹拌される。また、制御部5は、メイン液位センサS97の検出結果を取得するメインセンサ出力取得部503を有する。
【0063】
制御部5は、前段送液ユニット81の前段電磁弁813の開閉を制御する前段電磁弁制御部504を有し、前段電磁弁813は、前段電磁弁制御部504の制御に従って開閉する。また、制御部5は、前段送液ユニット81の前段送液ポンプ812を制御する前段ポンプ制御部505を有し、前段送液ポンプ812は、前段ポンプ制御部505の制御に従ってインクの送液を実行あるいは停止する。
【0064】
制御部5は、前段撹拌ユニット86の攪拌モータ862を制御する撹拌モータ制御部506を有する。攪拌モータ862が回転するように撹拌モータ制御部506が攪拌モータ862を制御することで、攪拌羽根863が回転して、前段バッファタンク96内のインクが撹拌される。また、制御部5は、前段液位センサS96の検出結果を取得する前段センサ出力取得部507を有する。
【0065】
制御部5は、後段送液ユニット82の後段電磁弁823の開閉を制御する後段電磁弁制御部508を有し、後段電磁弁823は、後段電磁弁制御部508の制御に従って開閉する。また、制御部5は、後段送液ユニット82の後段送液ポンプ822を制御する後段ポンプ制御部509を有し、後段送液ポンプ822は、後段ポンプ制御部509の制御に従ってインクの送液を実行あるいは停止する。
【0066】
制御部5は、後段送液ユニット82の後段電磁弁824の開閉を制御する後段電磁弁制御部510を有し、後段電磁弁824は、後段電磁弁制御部510の制御に従って開閉する。また、制御部5は、インク戻しユニット83のインク戻し電磁弁832の開閉を制御する戻し電磁弁制御部511を有し、インク戻し電磁弁832は、戻し電磁弁制御部511の制御に従って開閉する。
【0067】
また、制御部5は、後段攪拌ユニット85の攪拌モータ852を制御する撹拌モータ制御部512を有する。攪拌モータ852が回転するように、撹拌モータ制御部512が攪拌モータ852を制御することで、攪拌羽根853が回転して、後段バッファタンク95内のインクが撹拌される。また、制御部5は、後段液位センサS95の検出結果を取得する後段センサ出力取得部513を有する。
【0068】
制御部5は、回収ポンプ953を制御する回収ポンプ制御部514を有し、回収ポンプ953は、回収ポンプ制御部514の制御に従ってインクの送液を実行あるいは停止する。また、制御部5は、供給ポンプ954を制御する供給ポンプ制御部515を有し、供給ポンプ954は、供給ポンプ制御部515の制御に従ってインクの送液を実行あるいは停止する。
【0069】
さらに、制御部5は、電磁弁955の開閉を制御する電磁弁制御部516を有し、電磁弁955は、電磁弁制御部516の制御に従って開閉する。また、制御部5は、電磁弁956の開閉を制御する電磁弁制御部517を有し、電磁弁956は、電磁弁制御部517の制御に従って開閉する。
【0070】
また、次に説明するように、印刷装置3は、メインタンク97を保持するタンク保持部71を備え、このタンク保持部71はメインタンク97を支持するためにエアシリンダ741を有する。これに対して、制御部5は、エアシリンダ741にエアを供給するエア供給部70を制御するエア供給制御部518を有する。
【0071】
図7Aおよび
図7Bはメインタンクを保持するメインタンク保持部を模式的に示す図である。
図7Aおよび
図7Bでは、メインタンク97の内部を透かして示している。また、鉛直方向Z、水平方向Dhaおよび水平方向Dhbが示されるとともに、水平方向Dhaの一方側Duおよび他方側Dlが示されている。ここで、水平方向Dhaと水平方向Dhbとは互いに直交し、水平方向Dhaの一方側Duと他方側Dlとは互いに逆を向く。
【0072】
図7Aおよび
図7Bに示すように、メインタンク97は、中心線C97に対して回転対称な形状を有しており、平面視において中心線C97を中心とする円形を有する底板部973と、底板部973の周縁から上側に立設された側壁部974とを有する。また、メインタンク97は、側壁部974の上端に取り付けられた上板部975を有する。上板部975は、平面視において中心線C97を中心とする円形を有し、上板部975には、挿入口971および挿入口972が開いている。つまり、上板部975の上面975sには2個の挿入口971、972が開口する。挿入口971は、中心線C97より一方側Duに設けられ、換言すれば上板部975の一方側Duの端部に位置する。挿入口972は、中心線C97より他方側Dlに設けられ、換言すれば上板部975の他方側Dlの端部に位置する。メインタンク97では、これら底板部973、側壁部974および上板部975によって囲まれた貯留室976が形成され、この貯留室976にインクが貯留される。
【0073】
これに対して、タンク保持部71は、ベース部材711と、メインタンク97を保持する保持フレーム72と、ベース部材711に対して保持フレーム72を回転可能に支持する回転支持部73とを有する。回転支持部73は、保持フレーム72に取り付けられた回転軸731と、ベース部材711に取り付けられた軸支部材732とを有する。回転軸731は、水平方向Dhbに平行に設けられ、軸支部材732は、水平方向Dhbに平行な回転中心の周りで回転可能に回転軸731を軸支する。したがって、保持フレーム72は、回転軸731を中心とする回転方向Drにベース部材711に対して回転可能である。保持フレーム72は、メインタンク97を下側から支持するボトムフレーム721と、ボトムフレーム721の他方側Dlの端から立設されてメインタンク97を他方側Dlから支持するサイドフレーム722とを有する。
【0074】
また、タンク保持部71は、ベース部材711の他方側Dlの端から立設された柱部材712と、柱部材712に取り付けられたエアシリンダ741とを有する。エアシリンダ741は、保持フレーム72の他方側Dlに位置し、エアの供給に伴って一方側Duに進出するロッド742を有する。詳述すると、印刷装置3には、ロッド742にエアを供給するエア供給部70(
図6)が具備されており、エア供給部70がエアシリンダ741にエアを供給すると、エア供給部70のロッド742がエアの圧力によって一方側Duに進出する。このロッド742は保持フレーム72に当接するように設けられ、一方側Duに進出することによって保持フレーム72を一方側Duに駆動する。これによって、保持フレーム72は、回転軸731を中心に回転方向Dtに回転する。換言すれば、エアシリンダ741のロッド742は、エア供給部70からエアシリンダ741に供給されたエアに応じた駆動力で保持フレーム72を回転方向Dtに駆動することができる。
【0075】
上述の通り、エア供給部70によるエアシリンダ741へのエアの供給は、エア供給制御部518によって制御される。エア供給部70は、例えばエアシリンダ741へのエアの供給を調整する電磁弁によって構成できる。したがって、エア供給部70を構成する電磁弁が開くようにエア供給制御部518がエア供給部70を制御することで、エアシリンダ741にエアが供給される。また、エア供給部70を構成する電磁弁が閉じるようにエア供給制御部518がエア供給部70を制御することで、エアシリンダ741へのエアの供給が停止される。
【0076】
このように構成されたタンク保持部71では、保持フレーム72は、水平保持位置Phと傾斜保持位置Psとの間で回転方向Dtまたは回転方向Drに回転する。つまり、エアシリンダ741にエアが供給されると、エアの供給に応じて発生する駆動力によってロッド742が一方側Duへ保持フレーム72を押圧する。これによって、保持フレーム72は水平保持位置Phに支持される(
図7A)。また、水平保持位置Phに位置する保持フレーム72は、メインタンク97の底面973sが水平となる水平姿勢Ahでメインタンク97を保持する。一方、エアシリンダ741へのエアの供給が停止されると、ロッド742によって保持フレーム72を水平保持位置Phに支持するための駆動力が解除される。これによって、保持フレーム72は重力によって水平保持位置Phから傾斜保持位置Psまで回転方向Drに回転する(
図7B)。この際、ロッド742は、保持フレーム72に押されて、他方側Dlに退く。また、傾斜保持位置Psに位置する保持フレーム72は、水平方向Dhaの一方側Duから他方側Dlにメインタンク97の底面973sが傾斜する傾斜姿勢Asでメインタンク97を保持する。
【0077】
図8は傾斜姿勢に保持されるメインタンクに挿入されるメイン攪拌ユニットおよび前段送液配管の位置関係を模式的に示す図である。上述の通り、傾斜姿勢Asに保持されるメインタンク97の底面973sは、水平方向Dhaの一方側Duから他方側Dlに向かって下るように傾斜しており、水平方向Dhaに平行な直線Lhに対して角度θh(ゼロより大きい鋭角で例えば5度)だけ傾く。
【0078】
前段送液配管811の端部に設けられた配管挿入部811eは、メインタンク97の中心線C97に対して平行に、挿入口972からメインタンク97の貯留室976内に挿入される。この配管挿入部811eの下端には吸引口811vが開口している。この吸引口811vは、メインタンク97内の貯留室976に貯留されるインクに対して開口する。したがって、前段電磁弁813が開いた状態で前段送液ポンプ812が送液を実行すると、吸引口811vから吸引されたインクが配管挿入部811eによってメインタンク97の外部に送液される。さらに、配管挿入部811eには、バッフル板819が取り付けられている。このバッフル板819は、配管挿入部811eの外周から側方に突出し、攪拌羽根873によるインクの撹拌に伴ってインクに渦が発生するのを抑制するボルテックスブレーカとして機能する。
【0079】
メイン攪拌ユニット87のシャフト871は、
図8に示すように、長尺の小径部871dと、小径部871dの上端に取り付けられて小径部871dより短尺の大径部871uとを有し、小径部871dの下端に攪拌羽根873が取り付けられている。シャフト871は、挿入口971からメインタンク97の貯留室976内に挿入されており、シャフト871の下端に取り付けられた攪拌羽根873は、メインタンク97の貯留室976内に位置する。
【0080】
特にシャフト871は、傾斜方向Dsに平行に挿入されている。ここで、傾斜方向Dsは、シャフト871が上側から下側に向かうに連れて一方側Duから他方側Dlに向かう方向である。その結果、シャフト871は、鉛直方向Zに平行な直線Lzに対して角度θs(ゼロより大きい鋭角で例えば5度)だけ傾く。ちなみに、メインタンク97の中心線C97は、メインタンク97の底面973sの傾きに応じて傾き、換言すれば、メインタンク97の中心線C97に平行な直線Lcは、鉛直方向Zに平行な直線Lzに対して角度θhだけ傾く。この際、鉛直方向Zに平行な直線Lzに対してメインタンク97の中心線C97が傾く方向とシャフト871が傾く方向とは逆であり、メインタンク97の中心線C97に対してシャフト871が傾く角度は、角度θsと角度θhとの和の角度となる。ちなみに、ここの例では、シャフト871が傾斜する角度θsは、メインタンク97の底面973sが傾斜する角度θhと等しい。ただし、これらの角度θs、θhが互いに等しい必要は無い。したがって、角度θsが角度θhより大きくても小さくてもよい。
【0081】
図9は攪拌羽根の動作を模式的に示す図である。
図9に示すように、攪拌羽根873は、シャフト871の下端に設けられた回動軸871aを中心に回動する複数の回動羽873aを有する。
図9の「静止状態」の欄に示すように、攪拌羽根873が静止した状態では、回動羽873aは重力によって回動軸871aから垂れ下がり、攪拌羽根873が閉じる。このように、攪拌羽根873が閉じた状態で、攪拌羽根873は挿入口971からメインタンク97の貯留室976内に挿入される。一方、
図8の「回転状態」の欄に示すように、攪拌羽根873が回転した状態では、回動羽873aは遠心力を受けて回動軸871aを中心に上側へ回動して、攪拌羽根873が開く。こうして、回転する攪拌羽根873によって、メインタンク97に印貯留されるインクが攪拌される。ちなみに、前段送液配管811の吸引口811v(
図8)は、回転してインクを撹拌する回転状態の攪拌羽根873の位置(インク撹拌位置)より下側で開口する。
【0082】
また、
図8に示すように、メイン液位センサS97は、攪拌羽根873より上側のレベルLv97におけるメインタンク97内のインクの有無を検出する。そして、メインセンサ出力取得部503(
図6)が取得したメイン液位センサS97の検出結果が、メイン攪拌ユニット87内のレベルLv97においてインクが無いことを示す場合には、前段電磁弁813が開くように前段電磁弁制御部504が前段電磁弁813を制御しつつ、前段送液ポンプ812がインクの送液を実行するように前段ポンプ制御部505が前段送液ポンプ812を制御する。これによって、メインタンク97内のインクが吸引口811vから吸引されて、前段送液配管811を介して前段バッファタンク96に送られる。その結果、メインタンク97のインクの液位は、攪拌羽根873の位置(インク撹拌位置)より下側にまで下降する。また、メインセンサ出力取得部503が取得したメイン液位センサS97の検出結果が、メイン攪拌ユニット87内のレベルLv97においてインクが無いことを示す場合には、攪拌ユニット87の攪拌モータ872が攪拌羽根873の回転を停止させるように、撹拌モータ制御部502は攪拌モータ872を制御する。
【0083】
さらに、印刷装置3は、メイン攪拌ユニット87のシャフト871を傾斜方向Dsに保持する撹拌ユニット保持部75(
図10)を備える。
図10は撹拌ユニット保持部の構成および動作の一例を模式的に示す図である。
図10に示すように、メイン攪拌ユニット87は、攪拌モータ872とシャフト871の大径部871uとを結合するカプラ874と、攪拌モータ872を保持するモータホルダ875とを有する。そして、モータホルダ875の移動に伴って、攪拌モータ872、カプラ874、シャフト871および攪拌羽根873が一体的に移動する(すなわち、メイン攪拌ユニット87が移動する)。
【0084】
これに対して、撹拌ユニット保持部75は、本体部751と、本体部751に取り付けられたリニアガイド76とを有する。本体部751の側面には、傾斜方向Dsに平行な取付平面752が設けられ、リニアガイド76は、この取付平面752に取り付けられている。このリニアガイド76は、ガイドレール761と、ガイドレール761に係合してガイドレール761に沿って移動する複数のスライダ762とを有する。ガイドレール761は、本体部751の取付平面752に取り付けられ、傾斜方向Dsに平行に配置されている。また、スライダ762は、メイン攪拌ユニット87のモータホルダ875の側面に取り付けられている。したがって、メイン攪拌ユニット87は、リニアガイド76の案内に従って傾斜方向Dsに移動することができる。ちなみに、リニアガイド76の配置態様は種々想定され、例えば、一対のリニアガイド76を並列に配置してもよい。
【0085】
また、撹拌ユニット保持部75は、メイン攪拌ユニット87の上側に配置されたプーリ77と、本体部751に対してプーリ77を回転可能に支持する支持部材753とを有する。さらに、撹拌ユニット保持部75は、プーリ77に架け渡されたチェーンベルト78と、メイン攪拌ユニット87と等しい重量を有するカウンタウェイト79とを有する。チェーンベルト78の一端781は、メイン攪拌ユニット87のモータホルダ875に取り付けられており、チェーンベルト78の他端782はカウンタウェイト79に取り付けられている。したがって、メイン攪拌ユニット87が傾斜方向Dsに沿って上昇すると、カウンタウェイト79が下降する一方、メイン攪拌ユニット87が傾斜方向Dsに沿って下降すると、カウンタウェイト79が上昇する。したがって、
図10に示すように、メイン攪拌ユニット87は、撹拌位置Prと、撹拌位置Prより上側の退避位置Peとの間で傾斜方向Dsに沿って移動する。このメイン攪拌ユニット87の昇降は、作業者によって実行される。ちなみに、メイン攪拌ユニット87が撹拌位置Prに位置することで、
図8に示すように、攪拌羽根873がレベルLv97より下側に位置する。また、メイン攪拌ユニット87が退避位置Peに位置することで攪拌羽根873は挿入口971から上側へ抜け出す。
【0086】
以上に説明する印刷装置3では、メインタンク97の上面975sにおいてメインタンク97の中心(中心線C97)より一方側Duで開口する挿入口971(一の挿入孔)からメインタンク97の内部に挿入されたシャフト871の下端に攪拌羽根873(攪拌部材)が取り付けられ、この攪拌羽根873が回転することでメインタンク97内のインクを攪拌される。この際、
図7Bおよび
図8の側面視に示すように、水平方向Dhaの一方側Duから他方側Dlに向かうに連れてメインタンク97の底面973sが下がる傾斜姿勢Asでメインタンク97が保持される。このようにメインタンク97を傾けることで、メインタンク97の中央(換言すれば、中心線C97)を攪拌羽根873に近づけることができる。さらに、
図7Bおよび
図8の側面視に示すように、シャフト871および攪拌羽根873を有するメイン攪拌ユニット87は、シャフト871が上側から下側に向かうに連れて一方側Duから他方側Dlに向かう傾斜方向Dsに傾くように保持される。このようにメイン攪拌ユニット87のシャフト861を傾けることで、攪拌羽根873をメインタンク97の中央(換言すれば、中心線C97)に近づけることができる。その結果、メインタンク97の中央からの攪拌羽根873の偏りを抑えて、メインタンク97に貯留されるインクを攪拌羽根873によって十分に攪拌することが可能となる。
【0087】
ちなみに、本実施形態では、メインタンク97の中央からの攪拌羽根873の偏りを抑えるために、メインタンク97およびメイン攪拌ユニット87のシャフト871のそれぞれを傾けている。これに対して、メインタンク97の傾きのみによって攪拌羽根873の偏りを抑えることも考えられる。ただし、この場合には、メインタンク97の傾きが大きくなって、メインタンク97からインクが漏れ出すおそれがある。これに対して、メインタンク97およびメイン攪拌ユニット87のシャフト871のそれぞれを傾けることで、メインタンク97からのインクの漏れ出しを防止しつつ、メインタンク97に貯留されるインクを攪拌羽根873によって十分に攪拌することが可能となっている。
【0088】
また、前段送液配管811(送液配管)の配管挿入部811eは、吸引口811vが開口する下端を有し、メインタンク97内のインクを吸引口811vから吸引可能である。この吸引口811vは、メインタンク97の中心(中心線C97)より他方側Dlであって、回転してインクを撹拌する攪拌羽根873より下側の位置に設けられる。かかる構成では、メインタンク97の傾きによってメインタンク97の他方側の端に溜まったインクを、前段送液配管811の配管挿入部811eにより吸引でき、印刷に使用されずにメインタンク97内に残るインクの量を抑制できる。
【0089】
また、印刷装置3は、メインタンク97内のインクの有無を検出するメイン液位センサS97(液位検出部)と、前段送液配管811に取り付けられた前段送液ポンプ812(送液ポンプ)とを有する。メイン液位センサS97は、攪拌羽根873より上側のレベルLv97(所定位置)においてメインタンク97内のインクの有無を検出する。また、前段送液ポンプ812は、前段送液配管811内のインクを駆動することでメインタンク97内のインクを吸引口811vに吸引させてメインタンク97からメインタンク97の外部へインクを送液するインク送液動作を実行する。これに対して、制御部5は、メインセンサ出力取得部503(検出液位取得部)と、撹拌モータ制御部502(攪拌ユニット制御部)と、前段ポンプ制御部505(送液ポンプ制御部)とを有する。メインセンサ出力取得部503は、メイン液位センサS97の検出結果を取得する。撹拌モータ制御部502は、メインセンサ出力取得部503が取得した検出結果がレベルLv97においてインクが無いことを示すと、メイン攪拌ユニット87の攪拌モータ872が攪拌羽根873の回転を停止するように攪拌モータ872を制御する。さらに、前段ポンプ制御部505は、メイン液位センサS97が取得した検出結果がレベルLv97においてインクが無いことを示すと、前段送液ポンプ812がインク送液動作を実行するように前段送液ポンプ812を制御する。かかる構成では、メインタンク97内におけるインクの液位が攪拌羽根873より下がって、攪拌羽根873によるインクの攪拌ができなくなると、残りのインクをメインタンク97から外部に送液することができる。
【0090】
また、タンク保持部71は、水平方向Dhbに平行に設けられた回転軸731と、回転軸731を中心とする回転方向Dtまたは回転方向Drに回転可能に回転軸731に取り付けられてメインタンク97を保持する保持フレーム72と、保持フレーム72を回転方向Dtに駆動するエアシリンダ741(駆動部)とを有する。保持フレーム72は、メインタンク97の底面973sが水平となる水平姿勢Ahでメインタンク97を保持する水平保持位置Phと、傾斜姿勢Asでメインタンク97を保持する傾斜保持位置Psとの間で、回転軸731を中心に回転方向Dtまたは回転方向Drに回転可能である。エアシリンダ741は、保持フレーム72に駆動力を加えることで水平保持位置Phに保持フレーム72を支持し、エアシリンダ741が駆動力を解除すると、メインタンク97を保持する保持フレーム72は重力によって水平保持位置Phから傾斜保持位置Psに回転する。かかる構成では、メインタンク97を保持する保持フレーム72が重力によって傾斜保持位置Psに位置する。そのため、傾斜保持位置Psに保持フレーム72を位置させるために、エアシリンダ741が駆動力を発生する必要がない。したがって、エネルギーを消費することなく、メインタンク97を傾斜姿勢Asに保持することができる。
【0091】
また、撹拌ユニット保持部75は、メイン攪拌ユニット87より上側に設けられたプーリ77と、プーリ77に掛け渡されて、メイン攪拌ユニット87が取り付けられた一端781を有するチェーンベルト78(ベルト)と、チェーンベルト78が有する他端782に取り付けられたカウンタウェイト79と、傾斜方向Dsにメイン攪拌ユニット87の移動を案内するリニアガイド76(直動案内部)とを有する。かかる構成では、攪拌羽根873のメインタンク97への挿入等の作業の際に、メイン攪拌ユニット87を簡便に移動させることができ、作業者の作業性が向上する。
【0092】
また、前段送液配管811に一体的に取り付けられて、攪拌羽根873による攪拌に伴うインクの渦の発生を抑制するバッフル板819(渦発生抑制板)が設けられている。かかる構成では、攪拌羽根873の攪拌に伴う渦の発生を抑えて、インクにエアが混入するのを抑制できる。
【0093】
また、攪拌羽根873は、回転に伴って生じる遠心力によって広がる遠心力型の攪拌羽根である。かかる構成では、挿入口971から挿入された攪拌羽根873を遠心力によって広げつつインクを攪拌することができ、大きな攪拌羽根873によってインクを十分に攪拌することができる。
【0094】
ちなみに、
図7A~
図9に示した構成は、印刷装置3が備える全ての色のメインタンク97に対して適用する必要は無い。この際、白インクを貯留するメインタンク97に対しては、当該構成を適用するのが好適となる。これによって、メインタンク97に貯留される白インクを攪拌羽根873によって十分に攪拌でき、白インクの顔料が沈降するのを抑制することが可能となる。
【0095】
以上に説明した実施形態では、印刷装置3が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、制御部5が本発明の「制御部」の一例に相当し、撹拌モータ制御部502が本発明の「攪拌ユニット制御部」の一例に相当し、メインセンサ出力取得部503が本発明の「検出液位取得部」の一例に相当し、前段ポンプ制御部505が本発明の「送液ポンプ制御部」の一例に相当し、タンク保持部71が本発明の「タンク保持部」の一例に相当し、保持フレーム72が本発明の「保持フレーム」の一例に相当し、回転軸731が本発明の「回転軸」の一例に相当し、エアシリンダ741が本発明の「駆動部」および「エアシリンダ」の一例に相当し、撹拌ユニット保持部75が本発明の「攪拌ユニット保持部」の一例に相当し、プーリ77が本発明の「プーリ」の一例に相当し、チェーンベルト78が本発明の「ベルト」の一例に相当し、カウンタウェイト79が本発明の「カウンタウェイト」の一例に相当し、リニアガイド76が本発明の「直動案内部」の一例に相当し、前段送液配管811が本発明の「送液配管」の一例に相当し、吸引口811vが本発明の「吸引口」の一例に相当し、前段送液ポンプ812が本発明の「送液ポンプ」の一例に相当し、バッフル板819が本発明の「渦発生抑制板」の一例に相当し、シャフト871が本発明の「シャフト」の一例に相当し、メイン攪拌ユニット87が本発明の「攪拌ユニット」の一例に相当し、攪拌羽根873が本発明の「攪拌部材」の一例に相当し、メインタンク97が本発明の「タンク」の一例に相当し、挿入口971が本発明の「一の挿入孔」の一例に相当し、挿入口972が本発明の「他の挿入口」の一例に相当し、底面973sが本発明の「底面」の一例に相当し、水平姿勢Ahが本発明の「水平姿勢」の一例に相当し、傾斜姿勢Asが本発明の「傾斜姿勢」の一例に相当し、水平保持位置Phが本発明の「水平保持位置」の一例に相当し、傾斜保持位置Psが本発明の「傾斜保持位置」の一例に相当し、水平方向Dhaが本発明の「水平方向」の一例に相当し、一方側Duが本発明の「一方側」の一例に相当し、他方側Dlが本発明の「他方側」の一例に相当し、メイン液位センサS97が本発明の「液位検出部」の一例に相当し、レベルLv97が本発明の「所定位置」の一例に相当する。
【0096】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、前段送液ユニット81の具体的な構成は適宜変更が可能であり、前段電磁弁813を設けなくてもよい。
【0097】
また、攪拌羽根873が遠心力型の撹拌羽根であることは必須ではなく、攪拌羽根873はシャフト871に固定された撹拌羽根であってもよい。
【0098】
また、バッフル板819を前段送液配管811と一体的に構成することは必須ではない。
【0099】
また、タンク保持部71の構成を適宜変更しても良く、タンク保持部71が回転方向Drに回転可能であることは必須ではない。つまり、タンク保持部71は、傾斜保持位置Psに固定的に設けられてもよい。
【0100】
また、撹拌ユニット保持部75の構成を適宜変更しても良く、撹拌ユニット保持部75はメイン攪拌ユニット87の移動を傾斜方向Dsに案内する機能を具備する必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、タンクに貯留されるインクを攪拌する技術の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0102】
3…印刷装置
5…制御部
502…撹拌モータ制御部(攪拌ユニット制御部)
503…メインセンサ出力取得部(検出液位取得部)
505…前段ポンプ制御部(送液ポンプ制御部)
71…タンク保持部
72…保持フレーム
731…回転軸
741…エアシリンダ(駆動部)
75…撹拌ユニット保持部
76…リニアガイド(直動案内部)
77…プーリ
78…チェーンベルト(ベルト)
79…カウンタウェイト
811…前段送液配管(送液配管)
811v…吸引口
812…前段送液ポンプ(送液ポンプ)
819…バッフル板(渦発生抑制板)
87…メイン攪拌ユニット(攪拌ユニット)
871…シャフト
873…攪拌羽根(攪拌部材)
97…メインタンク(タンク)
971…挿入口(一の挿入孔)
972…挿入口(他の挿入口)
973s…底面
Ah…水平姿勢
As…傾斜姿勢
Ph…水平保持位置
Ps…傾斜保持位置
Dha…水平方向
Du…一方側
Dl…他方側
S97…メイン液位センサ(液位検出部)
Lv97…レベル(所定位置)