(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046220
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 5/00 20060101AFI20240327BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H05K5/00 C
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151471
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 慎太郎
【テーマコード(参考)】
4E360
5E322
【Fターム(参考)】
4E360AB14
4E360BA04
4E360BC03
4E360ED02
4E360GA22
4E360GA24
4E360GB02
4E360GC02
5E322AA02
5E322AA03
5E322BA01
5E322CA02
5E322EA11
5E322FA04
(57)【要約】
【課題】水滴等の浸入から吸気部を保護可能な構造を提供し、当該構造を備える電子機器を提供する。
【解決手段】上面が開口した箱型の容器であって、電子部品および下向きに送風するファンを収納し排気孔が設けられた筐体と、前記筐体の開口を塞ぐ位置に着脱可能であって、前記ファンの送風方向上流側に吸気孔が設けられた中蓋と、前記中蓋の上に重ねて設けられて、前記吸気孔が設けられた面の上に隙間を空けて対向する上蓋と、を備える電子機器。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口した箱型の容器であって、電子部品および下向きに送風するファンを収納し排気孔が設けられた筐体と、
前記筐体の開口を塞ぐ位置に着脱可能であって、前記ファンの送風方向上流側に吸気孔が設けられた中蓋と、
前記中蓋の上に重ねて設けられて、前記吸気孔が設けられた面の上に隙間を空けて対向する上蓋と、
を備える電子機器。
【請求項2】
前記中蓋は、前記吸気孔が設けられた範囲に頂部を位置させ当該頂部を挟んで両側に下る2つの斜面と、
前記吸気孔を挟んで対向する一対のリブ状の部分であって長手方向を前記斜面の並び方向に沿わせた一対の隔壁と、
を有する
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記中蓋は、前記吸気孔が設けられた面を底面とし、当該底面の縁に立てられた側壁を有し、
前記上蓋は、前記底面の上に隙間を空けて対向する面である天面と、当該天面の縁に設けられて前記側壁の内側に嵌る脚部と、を有する
請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記中蓋の前記側壁のうち前記斜面を下った谷に隣接する部分には、前記吸気孔に吸い込まれる空気を取り込み且つ斜面を下った液体を排出するための貫通孔が設けられている
請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記脚部は、前記貫通孔を塞がない位置に設けられている
請求項4に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PC(Personal Computer)等の電子機器は、例えばCPU(Central Processing Unit)のような放熱を要する部品を内蔵している等の都合から、筐体内の通風を確保する構造を備えることが多い。筐体には、通風のための孔(吸気孔や排気孔としての通風孔)が設けられる。
【0003】
また、PC等の電子機器は、例えば店舗の調理場等のような、水滴や油滴が飛び散る環境に置かれることがある。このような場合、通風孔からの筐体への水滴等の浸入が懸念される。このため、筐体には、水滴等を浸入させない構造が求められる。
【0004】
筐体内に一定の空気の流れを設けるための構造としては、例えば、特許文献1が開示するサーバラックがある。この例のようにある程度大きな物であれば、通風孔から水滴等を浸入させないための既存の構成を追加することも比較的容易と考えられるが、小型化が求められている電子機器では困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、水滴等の浸入から吸気部を保護可能な構造を提供し、当該構造を備える電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電子機器は、上面が開口した箱型の容器であって、電子部品および下向きに送風するファンを収納し排気孔が設けられた筐体と、前記筐体の開口を塞ぐ位置に着脱可能であって、前記ファンの送風方向上流側に吸気孔が設けられた中蓋と、前記中蓋の上に重ねて設けられて、前記吸気孔が設けられた面の上に隙間を空けて対向する上蓋と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態における電子機器の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、電子機器の構成を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、電子機器の内部構造を概略的に示す縦断正面図である。
【
図4】
図4は、蓋が水などの液体を被った場合の液体の流れの一例を説明する、蓋の縦断側面図である。
【
図5】
図5は、隔壁と側壁との間の液体の流れの一例を説明する、ベースカバーの縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
実施形態について図面を用いて説明する。説明の便宜のため、図面には、三次元座標系を併せて示す。各図において、電子機器1の幅方向(左右方向)をX軸方向、奥行方向(前後方向)をY軸方向、高さ方向(上下方向)をZ軸方向とする。
【0009】
図1は、実施形態における電子機器1の外観を示す斜視図である。電子機器1は、筐体100や蓋200を備えている。筐体100には、電子機器1の通電状態をオンとオフとのいずれかに切り替えるスイッチ3が設けられている。
【0010】
図2は、電子機器1の構成を示す分解斜視図である。筐体100は、上面が開口した箱型の容器であって、ヒートシンク101やファン102が収納される。蓋200は、筐体100の開口を塞ぐものである。
【0011】
図3は、電子機器1の内部構造を概略的に示す縦断正面図(ZX断面)である。筐体100は、CPU(Central Processing Unit)105等の各種電子部品が設けられた基板106を収納している。CPU105とヒートシンク101とファン102とは、下から上に縦に重なって配置されている。ヒートシンク101は、CPU105の上に取り付けられ、CPU105が発する熱を吸収し放散する。ファン102は、ヒートシンク101に向けて、下向きに送風する。
【0012】
図2に示すように、蓋200には、ファン102が取り込む空気を通す吸気孔21,22が形成され、筐体100には、排気孔11,12が形成されている。吸気孔21,22および排気孔11,12は、それぞれ単一の孔ではなく、所定の範囲にまとまって設けられた複数の孔の集合である。
【0013】
吸気孔21は蓋200の外周部に設けられた貫通孔であり、液体の排出(排水)を担う排水孔として兼用される。吸気孔22は、ファン102の送風方向上流側を覆う範囲に設けられている。ファン102を稼働させると、吸気孔21から空気が取り込まれる。取り込まれた空気は、吸気孔22に吸い込まれ、筐体100に形成された排気孔11,12から吐き出される。
【0014】
蓋200は、ベースカバー(中蓋の一例)210と、ベースカバー210に重ねられる外観カバー(上蓋の一例)220と、を備える。
【0015】
ベースカバー210は、トレイ状の形状を有し、筐体100の開口を塞ぐ位置に着脱可能である。より詳しくは、ベースカバー210は、底面211と4面の側壁212とを有する。側壁212は、底面211の縁に立てられて上向きに突出し、底面211を囲む。
【0016】
上述の吸気孔22は、底面211の中央部に設けられている。底面211は、頂部23を挟んで両側に下る2つの斜面231を有している。斜面231は、傾斜した平坦面である。傾斜角度は、例えば2°程度である。頂部23は、吸気孔22が設けられた範囲に位置する。
【0017】
上述の吸気孔21は、4面の側壁212のうち、斜面231を下った谷24に隣接する側壁212に設けられている。吸気孔21は、斜面231を下った液体(水など)を排出する。
【0018】
ベースカバー210は、一対の隔壁25を備えている。隔壁25は、吸気孔21を挟んで対向する、一対のリブ状の部分である。隔壁25の長手方向は、斜面231の並び方向に沿っている。隔壁25は、頂部23を跨いで位置する。
【0019】
また、ベースカバー210は、リブ26を備えている。リブ26は、吸気孔22の周囲の複数箇所に配置された突出部分であって、外観カバー220の天面221(後述)を支え、天面221の撓みを防止する。
【0020】
外観カバー220は、ベースカバー210の上に重ねて設けられるものである。外観カバー220は、天面221と、脚部222と、を有する。
【0021】
天面221は、吸気孔22を覆うものであって、ベースカバー210の底面211の上に隙間を空けて対向する面である。ここで、天面221と底面211とで挟まれ、側壁212で囲まれた空間を、吸気室とする。蓋200は、吸気室を有する。脚部222は、天面221の縁に設けられてベースカバー210の側壁212の内側に嵌る部分である。
【0022】
脚部222は、隔壁25と当該隔壁25に対向する側壁212との間に介在する、面状の形状を有する。脚部222は、斜面231に接するので、頂部23に触れる部分223が凹状に窪んでいる。
【0023】
また、脚部222は、ベースカバー210の側壁212に設けられた吸気孔21を塞がない位置に、設けられている。言い換えると、脚部222は、吸気孔21に対向する範囲に、切欠き224を備えている。
【0024】
外観カバー220はさらに、二対の爪部225を備えている。対をなす爪部225は、切欠き224を挟んで設けられ、先端部分が外側へ反った形状で、弾性を有している。爪部225の先端は、ベースカバー210に乗せられると、側壁212の内側四隅に設けられた係合穴215に引っ掛かる。これにより、ベースカバー210と外観カバー220とが一体になる。ベースカバー210から外観カバー220を取り外すときには、爪部225を内側に向けて撓めることにより引っ掛けを解除する。
【0025】
ベースカバー210は、筐体100にネジ止めにより固定される。筐体100は、ネジ213を受けるネジ受け孔13を、四隅に備えている。ベースカバー210は、ネジ受け孔13に対応するネジ受け孔214を備えている。ネジ受け孔214は、一対の隔壁25に挟まれる範囲に設けられる。
【0026】
このような構成の電子機器1において、筐体100の開口が蓋200で閉じられた状態でスイッチ3により電子機器1が通電状態がオンに切り替えられると、ファン102が回転して、ヒートシンク101への送風が行われる。これにより、発熱するCPU105から伝導したヒートシンク101の熱は、空気中に素早く放散される。ファン102の送風は、Z軸の負方向、つまり
図3における上から下への向きである。ファン102は、吸気孔22から吸い込んだ空気を送る。吸気孔22に取り込まれる空気は、吸気孔21から取り込まれる。
【0027】
上述のように稼働する電子機器1が、例えば調理場など、水滴や油滴にさらされる環境に据え置かれたとする。その場合、電子機器1は、水滴あるいは油滴を被るおそれがある。
【0028】
図4は、蓋200が水などの液体を被った場合の液体の流れの一例を説明する、蓋200の縦断側面図(YZ断面)である。電子機器1に水滴が降り掛かると、
図4に矢印で示すように、水が、外観カバー220の天面221の縁から、ベースカバー210の側壁212の内側に、流れ込む。この場合、流れ込んだ水は、隔壁25により阻まれて、底面211の中央部へは向かわない。
【0029】
次に、
図5は、隔壁25と側壁212との間の液体の流れの一例を説明する、ベースカバー210の縦断正面図(ZX断面)である。この図に示すように、底面211は、2つの斜面231が組み合わせられて頂部23から谷24へ下る山型をなしている。これにより、隔壁25と側壁212との間に流れ込んだ水は、斜面231に沿って流れ落ちて谷24へ至り、吸気孔21から外へと排出される。
【0030】
上述のように、電子機器1に水滴など液体が降り掛かっても、液体はベースカバー210の下へは浸入しない。これにより、筐体100に内蔵されたCPU105等の各種電子部品や基板106、ファン102やヒートシンク101を、水濡れから守ることができる。
【0031】
なお、ネジ受け孔214の位置は、一対の隔壁25の間ではあるが、さらに、天面221が受けてベースカバー210の側壁212の内側へ入り込んだ液滴が吸気孔21から排出されるまでの流路よりも内側(中央部寄り)であると、より望ましい。
【0032】
さて、電子機器1は、例えば、店舗に設置されるカメラの撮像画像を受信し画像処理を行うサーバ等である。こういった電子機器1は、小型であることを求められがちで、さらに、電子機器1の置き場として適切とは言い難い場所や環境(具体的には、手狭なバックヤードや、水濡れのおそれがある調理場等)に設置されることが少なくない。
【0033】
本願の電子機器1では、まずは小型化のために、熱源(CPU105)とヒートシンク101とファン102とが、ほぼ隙間なく配置されている。小型化を狙うと、配置の自由度は低下し、実現可能な配置のパターンは限られる。
【0034】
ここで、一般的に、ファンは、熱源を収納する筐体の側面から空気を取り入れる向きに取り付けられていることが多い。これに対して本実施形態のファン102は、上述の隙間ない配置を実現するために、上から空気を取り入れて下へ送り出す向きに取り付けられている。さらに、そのように配置されたファン102を用いた吸排気を問題なく実現するために、上下(Z軸)方向に貫通した吸気孔22が設けられている。これは、ファン102が上から下へ送風する向きに取り付けられていることで、ファン102の上から空気を供給可能な吸気孔が必要なためである。
【0035】
このように上下方向に貫通した吸気孔22がある場合、電子機器1が水濡れ等した際に、吸気孔22からの水等の液体の浸入を阻んで筐体100内部の各種電子部品を濡らさない構造とする必要がある。
【0036】
そこで本実施形態の電子機器1においては、吸気孔22に隙間を空けて対向する外観カバー220を設けて、吸気孔22に水滴が直接入らない構造とした。その上で、吸気孔22への吸気は吸気室(天面221と底面211とで挟まれ、側壁212で囲まれた空間)を介して行うようにし、吸気室への空気の供給は、上向きでない吸気孔21に依るようにし、吸気孔21により、吸気ルートとともに排水ルートを確保している。
【0037】
さらに、本実施形態の電子機器1においては、吸気孔22が設けられている面を伝って水滴が筐体100内に入り込まないよう、斜面231の頂部23に吸気孔22を位置させ、斜面231の傾斜で手当てされない側はリブ状の隔壁25で水滴の流入を防いだ。そして、外観カバー220の縁から下へ伝わる液滴が、隔壁25よりも外側や斜面231を下ったあたりで受けられるよう、外観カバー220をベースカバー210よりも一回り小さいものとし、外観カバー220の脚部222の形状や差し込まれる位置を設定した。なお、外観カバー220がベースカバー210に嵌め込まれる構造とされたことで、外観カバー220の固定にネジ等は不要となっている。
【0038】
なお、上記実施形態では、斜面231は傾斜した平坦面として図示しているが、実施にあたっては、斜面231が湾曲面であっても頂部23から谷24までに高低差があれば構わない。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 …電子機器、3…スイッチ、
100…筐体、
11,12…排気孔、13…ネジ受け孔、
101…ヒートシンク、102…ファン、
105…CPU、106…基板、
200…蓋、
21,22…吸気孔、
23 …頂部、231…斜面、
24 …谷、
25 …隔壁、26…リブ、
210…ベースカバー、
211…底面、212…側壁、
213…ネジ、214…ネジ受け孔、215…係合穴、
220…外観カバー、
221…天面、222…脚部、
223…凹状の窪み、224…切欠き、225…爪部。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】