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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004623
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】時計および回転錘
(51)【国際特許分類】
   G04B 5/16 20060101AFI20240110BHJP
   G04B 45/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G04B5/16
G04B45/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104324
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】澤井 丈徳
(72)【発明者】
【氏名】上井 彦之介
(72)【発明者】
【氏名】釘本 愛海
(57)【要約】
【課題】腕時計などに利用可能であり、日本刀をモチーフとした時計および回転錘の提供。
【解決手段】回転錘を有する時計であって、前記回転錘は、回転軸部に回転自在に軸支された連結部と、前記連結部を介して前記回転軸部から離れて配置された重錘部と、前記重錘部から延出された延出部とを有し、前記延出部の先端は、日本刀の切っ先を模した先細り形状に形成されていることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転錘を有する時計であって、
前記回転錘は、回転軸部に回転自在に軸支された連結部と、
前記連結部を介して前記回転軸部から離れて配置された重錘部と、
前記重錘部から延出された延出部とを有し、
前記延出部の先端は、日本刀の切っ先を模した先細り形状に形成されている
ことを特徴とする時計。
【請求項2】
請求項1に記載の時計において、
前記延出部には、日本刀の刃文を模した模様が形成されている
ことを特徴とする時計。
【請求項3】
請求項1に記載の時計において、
前記連結部は、刀身を模した形状に形成され、前記回転軸部に軸支された一端側は日本刀の切っ先を模した先細り形状に形成されている
ことを特徴とする時計。
【請求項4】
請求項1に記載の時計において、
前記連結部には、日本刀の刃文を模した模様が形成されている
ことを特徴とする時計。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の時計において、
前記延出部は、前記重錘部を挟んで両側に延出されている
ことを特徴とする時計。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の時計において、
前記延出部は、前記重錘部から片側のみに延出されている
ことを特徴とする時計。
【請求項7】
請求項1に記載の時計において、
前記重錘部は玉鋼で形成され、
前記連結部は前記玉鋼よりも比重が小さい材質で形成されている
ことを特徴とする時計。
【請求項8】
時計に用いられる回転錘であって、
回転軸部に回転自在に軸支される連結部と、
前記連結部を介して前記回転軸部から離れて配置された重錘部と、
前記重錘部から延出された延出部とを有し、
前記延出部の先端は、日本刀の切っ先を模した先細り形状に形成されている
ことを特徴とする回転錘。
【請求項9】
請求項8に記載の回転錘において、
前記重錘部は玉鋼で形成されている
ことを特徴とする回転錘。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転錘を有する時計および回転錘に関する。
【背景技術】
【0002】
時計は、時刻を確認する実用性に加え、ユーザーが愛用する嗜好品としての面も備えている。例えば、特許文献1には、日本刀用の鍔を文字板とすることで、鍔の鑑賞とともに時刻表示を行うことができる置き時計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3219219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、実際の日本刀の鍔を用いるものであるため、腕時計や懐中時計などには利用できない。このため、日本刀をモチーフとした時計および回転錘が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の時計は、回転錘を有する時計であって、前記回転錘は、回転軸部に回転自在に軸支された連結部と、前記連結部を介して前記回転軸部から離れて配置された重錘部と、前記重錘部から延出された延出部とを有し、前記延出部の先端は、日本刀の切っ先を模した先細り形状に形成されていることを特徴とする。
【0006】
本開示の回転錘は、時計に用いられる回転錘であって、回転軸部に回転自在に軸支される連結部と、前記連結部を介して前記回転軸部から離れて配置された重錘部と、前記重錘部から延出された延出部とを有し、前記延出部の先端は、日本刀の切っ先を模した先細り形状に形成されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の回転錘を用いた時計を示す正面図である。
図2】第1実施形態の回転錘を用いた時計を示す裏面図である。
図3】第1実施形態の回転錘の要部を示す断面図である。
図4】第1実施形態の回転錘の製造工程を示すフローチャートである。
図5】第2実施形態の回転錘を示す平面図である。
図6】第3実施形態の回転錘を示す平面図である。
図7】第4実施形態の回転錘を示す平面図である。
図8】第5実施形態の回転錘を示す平面図である。
図9】第6実施形態の回転錘を示す平面図である。
図10】第7実施形態の回転錘を示す平面図である。
図11】第8実施形態の回転錘を示す平面図である。
図12】第9実施形態の回転錘を示す平面図である。
図13】第10実施形態の回転錘を示す平面図である。
図14】第11実施形態の回転錘を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態に係る時計1を図面に基づいて説明する。
図1は、時計1を示す正面図であり、図2は、時計1を示す裏面図である。本実施形態の時計1は、ユーザーの手首に装着される腕時計であり、円筒状の外装ケース2を備え、外装ケース2の内周側に、文字板3が配置されている。外装ケース2の二つの開口のうち、表面側の開口は、カバーガラスで塞がれており、裏面側の開口は裏蓋9で塞がれている。裏蓋9は、リング状の枠9Aと、枠9Aに取り付けられた裏蓋ガラス9Bとで構成されている。外装ケース2内には、図示略のぜんまいを動力源とするムーブメントが収容され、ぜんまいを巻き上げる自動巻上機構を構成する回転錘10も設けられている。
ぜんまいや回転錘10を備える時計のムーブメントは一般的であるため説明を省略する。また、外装ケース2、カバーガラス、裏蓋9によって、ムーブメントを収納する内部空間を密閉する時計1の外装部品が構成されている。
【0009】
時計1は、図1に示すように、時刻情報を指示する時針4、分針5、秒針6と、ぜんまいの巻上げ残量を指示するパワーリザーブ針7とを備えている。文字板3には、カレンダー小窓3Aが設けられており、カレンダー小窓3Aから、日車8が視認可能となっている。
【0010】
図2に示すように、回転錘10は、連結部11と、重錘部12と、延出部121、122とを備える。連結部11は、ムーブメントの輪列受け21に設けられた回転軸部に回転自在に軸支されている。輪列受け21には回転軸部となるベアリング22が設けられており、連結部11はベアリング22によって回転自在に軸支されている。すなわち、輪列受け21にはベアリング22の内輪が取り付けられ、この内輪にボールを介して回転する外輪に連結部11が固定されている。また、外輪には歯車も形成されており、この歯車にぜんまいの巻き上げ輪列が噛み合っている。
なお、本実施形態の時計1では、連結部11、重錘部12および延出部121、122は一体に成形されているが、例えば、連結部11と、重錘部12および延出部121、122とを別体で構成し、連結部11と重錘部12とをピンなどの締結部材や、接着剤、溶接などで固定してもよい。
【0011】
連結部11は、時計1の裏蓋側から見た平面視で略扇形状に形成され、ベアリング22の外輪が嵌合固定される貫通孔111が形成されている。重錘部12は、連結部11の外周側に連続して形成され、その外周は回転錘10の回転軸を中心とする円弧状に形成されている。すなわち、重錘部12は、連結部11を介して回転軸部であるベアリング22から外周側に離れて配置されている。重錘部12は、連結部11に比べて厚肉に形成されている。
【0012】
延出部121、122は、重錘部12から回転錘10の回転方向つまりリング状の枠9Aの内周に沿った周方向に延出されている。延出部121は、図2において、重錘部12から時計回り方向に延出され、延出部122は、重錘部12から反時計回り方向に延出されている。
延出部121、122は、平面視で内周縁123および外周縁124で区画されている。内周縁123および外周縁124は円弧状に形成され、内周縁123の曲率は、外周縁124の曲率に比べて小さくされている。また、外周縁124の基端側つまり重錘部12側は、重錘部12の外周の円弧に連続しており、外周縁124の先端側は延出部121、122の先端に向かうにしたがって曲率が大きくされている。このため、延出部121、122は、内周縁123および外周縁124間の幅寸法が徐々に小さくなるように先細り形状とされている。これにより、延出部121、122の先端は、日本刀の切っ先を模した先細り形状に形成されている。すなわち、内周縁123および外周縁124の先端の交差角度は鋭角とされ、延出部121、122の先端は日本刀の切っ先を模した形状に形成されている。なお、本実施形態の延出部121、122は、重錘部12と同じ厚さ寸法に設定されて重錘としても機能するが、延出部121、122を連結部11と同じ厚さ寸法で形成し、重錘としての機能よりも日本刀の切っ先を模したデザイン性を優先させてもよい。
【0013】
連結部11、重錘部12および延出部121、122は、図3に示すように、ステンレス、チタン、シルバーなどの金属製の素材を回転錘10の部品形状に成形した金属部材13と、金属部材13の表面に積層されたコーティング材141とで構成されている。
延出部121、122の表面すなわち裏蓋ガラス9Bから視認可能な面には、コーティング材141が積層されて形成される被覆領域14と、金属部材13が露出する露出領域17とが設けられている。
【0014】
被覆領域14は、図2に示すように、回転錘10の内周側に設けられた第1被覆領域15と、第1被覆領域15の外周側に設けられた第2被覆領域16とを備える。
第1被覆領域15は、日本刀の鎬地を模した領域であり、第2被覆領域16、露出領域17に比べて濃い色とされている。具体的には、第1被覆領域15は、金属部材13の素材色とは異なる色のコーティング材141が被覆された領域である。ここで、金属部材13の素材色は銀色などであるため、コーティング材141の色は、黒、グレー、濃紺などの黒あるいは黒に近い濃い色が好ましい。なお、コーティング材141は、金属部材13の表面をコーティング可能な塗料などで構成されている。
第2被覆領域16は、日本刀の平地を模した領域であり、第1被覆領域15に比べて薄い色であり、露出領域17に比べて濃い色とされている。具体的には、第2被覆領域16は、コーティング材141を被覆した後、レーザー加工などによってコーティング材141を剥がす量を制御することで、第1被覆領域15に比べて薄い色とされた領域である。
露出領域17は、日本刀の刃を模した領域であり、金属部材13が露出されるため、金属部材13の素材色、例えば銀色が露出した領域とされている。
そして、第2被覆領域16と露出領域17との境界線によって刃文風の模様18が形成されている。刃文風の模様18とは、コーティング材141で被覆した被覆領域14と、金属部材13の素材色を露出させた露出領域17との色の違いによって形成される模様である。このため、金属部材13の成分を変化させて形成した刃文ではないため、刃文風の模様18と定義したものである。
【0015】
なお、本実施形態では、連結部11の表面にもコーティング材141が被覆されて第1被覆領域15とされている。また、重錘部12において、延出部121、122に連続する端部を除く表面にもコーティング材141が被覆されて第1被覆領域15とされている。そして、重錘部12の延出部121、122に連続する端部には、第1被覆領域15に加えて第2被覆領域16、露出領域17が形成され、刃文風の模様18も形成されている。すなわち、刃文風の模様18は、延出部121、122に加えて重錘部12の一部分にも形成されている。
【0016】
次に、時計部品である回転錘10の製造方法について、図4のフローチャートを参照して説明する。
最初に、ステンレス、チタン、シルバーなどの金属製の素材を回転錘10の形にして金属部材13を成形する成形工程S1を実行する。本実施形態では、回転錘10は連結部11、重錘部12および延出部121、122が一体に成形されるため、成形工程S1では、ステンレスなどの金属素材を溶解し、回転錘用の型に流し込んで金属部材13を成形する。
次に、金属部材13の表面にコーティング材141を被覆する被覆工程S2を実行する。コーティング材141を被覆する方法は、例えば、蒸着、スパッタ、CVDなどのコーティング材141および金属部材13の種類などに応じた各種成膜方法が利用できる。CVDは、chemical vapor depositionの略語であり、日本語では化学気相成長と呼ばれる。
【0017】
次に、刃文風の模様18を形成する模様形成工程S3を実行する。本実施形態の模様形成工程S3では、第2被覆領域16、露出領域17に被覆されたコーティング材141を削って剥がすことで模様18を形成している。
ここで、コーティング材141を剥がして模様18を形成する加工方法は、レーザー加工、ブラスト処理、研磨加工、浸漬処理、薬液塗布処理などから、金属部材13、コーティング材141の種類や、金属部材13の形状、サイズなどに応じて適切な加工方法を採用すればよい。
なお、レーザー加工は、光のエネルギーをレンズで集め、コーティング材141や金属を溶かして除去する加工方法である。
ブラスト処理は、粒子状の無数の研磨材を投射して被加工物に衝突させ、表面の粗化、研削、研掃等を行う表面加工処理方法である。
研磨加工は、砥粒と呼ばれる硬度が高く微細な粒を作用させて、材料の表面を少量ずつ削り、滑らかな状態へ加工する技術である。なお、砥石等を利用して作業者がコーティング材141を除去してもよい。
浸漬処理は、薬液を利用してコーティング材141を除去する浸漬処理である。具体的には、コーティング材141が塗布された金属部材13の一部を、金属部材13やコーティング材141を溶かすことができる酸やアルカリ系の水溶液からなる薬液に浸漬してコーティング材141を除去するものである。
薬液塗布処理は、コーティング材141を除去する領域に薬液を塗布する方法である。この場合、塗布する薬液の種類や濃度、塗布時間等の塗布条件を調整することで、コーティング材141の除去量も調整できる。
【0018】
以上の工程で製造された回転錘10は、ムーブメントに組み込まれ、このムーブメントを外装ケース2に組み込むことで時計1を製造できる。
【0019】
[第1実施形態の効果]
本実施形態によれば、時計1の裏蓋9側から視認可能な回転錘10に延出部121、122を形成し、この延出部121、122の先端を日本刀の切っ先を模した先細り形状に形成しているので、回転錘10を見たユーザーに対して日本刀をイメージさせることができる。このため、回転錘10を有する時計1を、日本刀をモチーフとした時計とすることができ、時計としての実用性に加えて、日本刀をモチーフとしたことで高付加価値の時計を提供することができる。
その上、延出部121、122に、第1被覆領域15、第2被覆領域16、露出領域17を設けて刃文風の模様18を施しているので、日本刀のモチーフを強調できる。
【0020】
金属部材13の素材は、ステンレス、チタン、シルバーのいずれかであるため、日本刀の素材である玉鋼に比べて入手が容易であり、生産コストを低減できる。また、ステンレス、チタン、シルバーのいずれかを用いて金属部材13を構成し、その表面の一部を黒色等のコーティング材141でコーティングして被覆領域14を形成し、金属部材13の素材色が露出する露出領域17を形成することで、玉鋼を用いた場合と同様の黒銀の色味を模することができる。
【0021】
刃文風の模様18は、成形工程S1で回転錘10の形状に成形された金属部材13の表面に、被覆工程S2でコーティング材141を付着し、模様形成工程S3でコーティング材141の一部を剥がして除去することで形成できる。すなわち、被覆領域14と露出領域17との色の濃さが異なる領域を形成し、被覆領域14および露出領域17の境界部分で模様18を形成しているので、刃文風の模様18が形成された時計部品を量産することができる。すなわち、日本刀の刃文は、焼き入れなどで鋼の成分を変化させて形成するものである。また、腕時計用の時計部品である回転錘10は日本刀に比べて非常に小さい部品である。したがって、時計部品に刃文を形成するために、日本刀と同じような製造工程を実施することは難しく、このような製造工程によって刃文が形成された時計部品を量産することは困難である。
これに対し、本実施形態では、コーティング材141で被覆された被覆領域14と、金属部材13の素材色が露出する露出領域17とを形成することで、刃文風の模様18つまりユーザーが視認した際に刃文をイメージできる模様18を形成しているので、焼き入れなどの工程も不要にでき、時計部品を量産することができる。特に、模様形成工程S3において、コーティング材141を剥がす加工は、レーザー加工等の機械加工で実現できるため、回転錘10のように小さな部品であっても精度良く加工することができ、時計部品を量産することができる。
【0022】
模様形成工程S3において、レーザー加工、ブラスト処理、研磨加工等の機械加工によってコーティング材141を剥がす場合には、所望の箇所のみコーティング材141を剥がすことができ、様々な刃文風の模様18を形成できる。このため、モデルとなる実際の日本刀の刃文を再現することもでき、より付加価値を高めることができる。
一方で、作業者が砥石などを用いてコーティング材141を剥がす場合には、一品毎に異なる刃文風の模様18を形成することができるため、一品毎に異なる模様18となることによる貴重性を高めることができる。
【0023】
被覆領域14は、第1被覆領域15および第2被覆領域16の2つの領域で構成され、第1被覆領域15と第2被覆領域16とで色の濃度を変化させているので、刃文風の模様18に加えて、鎬地や平地などを模したデザインにでき、より日本刀のモチーフを表現できる。
【0024】
回転錘10は、時計1を揺らすことで回動する可動部品であり、日本刀の切っ先を模して延出部121、122を形成し、この延出部121、122に刃文風の模様18を形成しているので、回転錘10が回動すると、あたかも日本刀を振りかざすような表現ができ、ユーザーに対して本物の日本刀をイメージさせることができる。
回転錘10は、外装ケース2や裏蓋9等の外装部品により密閉された空間に配置されているので、水や酸素との接触を阻止することができる。このため、金属部材13の素材色が露出する露出領域17に錆が発生することを防止でき、金属部材13の素材の無垢な表面を活かしたデザインとすることができる。
【0025】
なお、時計に用いられる回転錘10は、ぜんまいの巻き上げ用に限定されず、発電用のローターの回転に用いてもよい。すなわち、ステッピングモーターで輪列を駆動するクオーツ時計において、二次電池を充電するために、コイルが巻かれたステーターと、ローターとを備える発電機を内蔵する場合に、ローターを回転させて発電するために回転錘10を用いてもよい。
さらに、延出部121、122は、回転錘10の回転方向つまり周方向の両側に延出され、回転錘10は、回転軸と重錘部12の周方向の中間位置とを結ぶ半径方向の軸に対して線対称の形状とされている。このため、回転錘10は、両方向にスムーズに回転することができ、ぜんまいを巻き上げる際の巻き上げ効率や、発電機を発電する際の発電効率を向上できる。
【0026】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る回転錘10Bについて、図5を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態において、第1実施形態の回転錘10と同一または同様の構成に関しては、同一符号を付して説明を省略する。
回転錘10Bは、回転錘10と同様に、連結部11Bと、重錘部12Bと、延出部121B、122Bとを備える。連結部11B、重錘部12B、延出部121B、122Bの構造や形状は回転錘10と同一であるため、説明を省略する。
回転錘10Bでは、延出部121B、122Bに加えて、延出部121B、122B以外の重錘部12Bの外周縁に沿って第1被覆領域15、第2被覆領域16、露出領域17が形成されている。このため、刃文風の模様18は、一方の延出部121Bから重錘部12Bの外周縁を介して他方の延出部122Bまで形成されている。
なお、回転錘10Bの製造方法は第1実施形態の回転錘10と同じであるため、説明を省略する。
【0027】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態の回転錘10Bによれば、前記第1実施形態と同じ作用効果を奏することができる。さらに、第1被覆領域15、第2被覆領域16、露出領域17、刃文状の模様18が延出部121B、122Bだけでなく、重錘部12Bの外周全体に沿って形成されているので、重錘部12Bに日本刀の刀身を模した表現を設けることができ、さらに日本刀のモチーフを強調できる。
【0028】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る回転錘10Cについて、図6を参照して説明する。
回転錘10Cは、回転錘10と同様に、連結部11Cと、重錘部12Cと、延出部121C、122Cとを備える。連結部11C、重錘部12C、延出部121C、122Cの構造や形状は回転錘10と同一であるため、説明を省略する。
回転錘10Cでは、連結部11Cの径方向に沿った外縁部分に、第1被覆領域15、第2被覆領域16、露出領域17、刃文風の模様18が形成されている。一方、重錘部12Cの外周縁や延出部121C、122Cには刃文風の模様18は形成されておらず、第1被覆領域15が形成されている。
なお、回転錘10Cの製造方法は第1実施形態の回転錘10と同様であるため、説明を省略する。
【0029】
[第3実施形態の効果]
第3実施形態の回転錘10Cによれば、前記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
すなわち、回転錘10Cに日本刀の切っ先を模した延出部121C、122Cを形成しているので、回転錘10Cを有する時計1を、日本刀をモチーフとした時計とすることができ、時計としての実用性に加えて、日本刀をモチーフとしたことで高付加価値の時計を提供することができる。
さらに、連結部11Cの外周縁に刃文状の模様18が形成されているので、さらに日本刀のモチーフを強調できる。
【0030】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係る回転錘10Dについて、図7を参照して説明する。
回転錘10Dは、回転錘10と同様に、連結部11Dと、重錘部12Dと、延出部121D、122Dとを備える。連結部11D、重錘部12D、延出部121D、122Dの構造や形状は回転錘10と同一であるため、説明を省略する。
回転錘10Dでは、裏蓋9側から視認可能な連結部11Dの表面と、重錘部12D、延出部121D、122Dの内周側の表面を基準面100とし、重錘部12Dの外周側と、延出部121D、122Dの基端部分の外周側とを第1面101とし、延出部121D、122Dの先端部分の外周側を第2面102としている。
【0031】
基準面100は、回転錘10Dの回転軸に対して直交する平面、つまり裏蓋9と平行な平面である。
第1面101は、基準面100に連続する内周側から重錘部12Dの外周側に向かって傾斜された傾斜面である。このため、重錘部12Dは、内周側から外周側に向かうに従って厚さ寸法が徐々に小さくなるように形成されている。
第2面102は、基準面100に連続する内周側から延出部121D、122Dの外周側に向かって傾斜され、さらに、第1面101に連続する基端側から先細り形状とされた先端側に向かって傾斜された傾斜面である。このため、延出部121D、122Dは、内周側から外周側に向かうにしたがって厚さ寸法が徐々に小さくなるように形成され、さらに、第1面101に連続する基端側から先端側に向かうにしたがって厚さ寸法が徐々に小さくなるように形成されている。
このような基準面100、第1面101、第2面102が形成されていることによって、延出部121D、122Dは日本刀の切っ先部分を模した形状とされている。
また、回転錘10Dでは、裏蓋9側から視認可能な表面全体にコーティング材が塗布された被覆領域14とされている。
【0032】
回転錘10Dの製造方法は、まず、基準面100、第1面101、第2面102を有する金属部材を成形可能な金型に、溶解したステンレスなどの金属素材を流し込んで回転錘10Dとなる金属部材を成形する。なお、金属部材を成形した後に、第1面101、第2面102を砥石などで研磨して形成してもよい。その後、金属部材の表面にコーティング材を塗布して被覆領域14を形成する。以上により、回転錘10Dを製造できる。
【0033】
[第4実施形態の効果]
第4実施形態の回転錘10Dによれば、前記第1実施形態と同様に、回転錘10Dに延出部121D、122Dを形成しているので、回転錘10Dを有する時計1を、日本刀をモチーフとした時計とすることができ、時計としての実用性に加えて、日本刀をモチーフとしたことで高付加価値の時計を提供することができる。
さらに、回転錘10Dに第1面101、第2面102を形成することで、延出部121D、122Dを日本刀の切っ先を模した形状にしているので、刃文状の模様が無くても日本刀のモチーフを強調できる。
【0034】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態に係る回転錘10Eについて、図8を参照して説明する。
回転錘10Eは、連結部11Eと、重錘部12Eと、延出部122Eとを備える。連結部11Eは、回転錘10と同様に、平面視で略扇形状に形成され、回転中心位置には貫通孔111が形成されている。連結部11Eの中心角は、回転錘10の連結部11に比べて小さくされている。
重錘部12Eは、連結部11Eに一体的に形成され、延出部122Eは、重錘部12Eから反時計回り方向に延出されている。すなわち、前記第1実施形態では、2つの延出部121、122を備えていたが、本実施形態の回転錘10Eでは、1つの延出部122Eのみが設けられている。
延出部122Eは、延出寸法が前記第1実施形態の延出部121、122に比べて長くされている以外は前記実施形態の延出部122と同様の構造である。すなわち、延出部122Eは、内周縁123および外周縁124が平面視で円弧状に形成され、さらに、先端にむかうにしたがって外周縁124の円弧の曲率が大きくされ、日本刀の切っ先を模した先細り形状とされている。
【0035】
回転錘10Eでは、延出部122Eに加えて、重錘部12Eの外周縁の途中まで連続して第1被覆領域15、第2被覆領域16、露出領域17、刃文風の模様18が形成されている。
なお、回転錘10Eの製造方法は第1実施形態の回転錘10と同様あるため、説明を省略する。
【0036】
[第5実施形態の効果]
第5実施形態の回転錘10Eによれば、前記第1実施形態と同様に、延出部122Eを形成しているので、回転錘10Eを有する時計1を、日本刀をモチーフとした時計とすることができ、時計としての実用性に加えて、日本刀をモチーフとしたことで高付加価値の時計を提供することができる。特に、回転錘10Eには1つの延出部122Eのみが設けられ、この延出部122Eの延出寸法が、延出部122Eを含む重錘部12E全体の周方向の寸法の1/3以上と長く設定されているので、延出部122Eによって日本刀の切っ先を含む刀身をイメージさせることができ、日本刀のモチーフを強調できる。
さらに、第1被覆領域15、第2被覆領域16、露出領域17、刃文状の模様18が延出部122Eおよび重錘部12Eの外周の一部分に連続して形成されているので、さらに日本刀のモチーフを強調できる。
【0037】
[第6実施形態]
次に、第6実施形態に係る回転錘10Fについて、図9を参照して説明する。
回転錘10Fは、連結部11Fと、重錘部12Fと、延出部121F、122Fとを備える。連結部11Fは、貫通孔111が形成された回転中心部110Fと重錘部12Fとを連結する2本の連結片部112Fと、回転中心部110Fから重錘部12Fとは反対側に突出された2本の突出部113Fとを備えている。
連結片部112Fおよび突出部113Fの円弧状に膨らんだエッジ部114Fは、回転中心部110Fを介して互いに連続して見えるように形成され、さらに第1被覆領域15、第2被覆領域16、露出領域17、刃文風の模様18が形成されている。
各突出部113Fの先端側つまり連結部11Fの回転軸部に軸支された一端側は、日本刀の切っ先を模した先細り形状とされている。このため、各連結片部112Fおよび突出部113Fは、交差する2本の刀身をイメージさせるデザインに形成されている。
【0038】
重錘部12Fおよび延出部121F、122Fは、回転錘10Bの重錘部12Bと同様に、第1被覆領域15、第2被覆領域16、露出領域17、刃文状の模様18が外周全体に亘って形成されている。
なお、回転錘10Fの製造方法は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0039】
[第6実施形態の効果]
第6実施形態の回転錘10Fによれば、前記第1実施形態と同じ作用効果を奏することができる。さらに、連結部11Fを2本の連結片部112Fで構成したので、重錘部12Fと連結片部112Fとの連結箇所が2箇所となり、それらの連結箇所間では重錘部12Fが円弧状に形成されているので、日本刀の刀身のイメージを強調することができる。すなわち、日本刀の切っ先を模した延出部121F、122Fに連続して、日本刀の刀身を模した重錘部12Fが設けられるので、日本刀のモチーフを強調した回転錘10Fとすることができる。
さらに、第1被覆領域15、第2被覆領域16、露出領域17、刃文状の模様18が延出部121F、122Fだけでなく、重錘部12Fの外周全体にも形成されているので、さらに日本刀のモチーフを強調できる。
その上、連結部11Fを、2本の連結片部112Fおよび突出部113Fを備えて構成し、さらに第1被覆領域15、第2被覆領域16、露出領域17を設けて、刃文状の模様18を形成することで、2本の刀身が交差するデザインとしたので、回転錘10Fにおける日本刀のモチーフをさらに強調できる。
【0040】
[第7実施形態]
次に、第7実施形態に係る回転錘10Gについて、図10を参照して説明する。
回転錘10Gは、連結部11Gと、重錘部12Gとを備える。連結部11Gは、貫通孔111が形成された回転中心部110Gの外周は曲線状に形成され、回転中心部110Gから重錘部12Gに連結する先端側までは幅寸法が一定の板状に形成されている。
連結部11Gの左右のエッジ部分には、第1被覆領域15および第2被覆領域16と、露出領域17と、刃文風の模様18とが形成されている。
【0041】
重錘部12Gは、平面視で略三日月形状に形成され、周方向の中心部分で連結部11Gに連結されている。具体的には、重錘部12Gは、内周縁125と、外周縁126とを備えている。内周縁125および外周縁126は円弧状に形成され、外周縁126の曲率は内周縁125よりも大きくされている。このため、内周縁125および外周縁126間の幅寸法は先端に向かうにしたがって小さくなり、内周縁125および外周縁126の先端の公差角度は鋭角とされ、この先端部は先細り形状とされている。したがって、本実施形態では、重錘部12Gは、延出部121G、122Gを含んで構成され、重錘部12Gの連結部11Gに連結された部分から周方向にそれぞれ延出された部分によって延出部121G、122Gが構成されている。
【0042】
回転錘10Gでは、延出部121G、122Gを含む重錘部12Gの外周縁の全体に第1被覆領域15および第2被覆領域16を含む被覆領域14と、露出領域17と、刃文風の模様18とが形成されている。
なお、回転錘10Gの製造方法は第1実施形態の回転錘10と同様であるため、説明を省略する。
【0043】
[第7実施形態の効果]
第7実施形態の回転錘10Gによれば、前記第1実施形態と同様に、延出部121G、122Gを形成しているので、回転錘10Gを有する時計1を、日本刀をモチーフとした時計とすることができ、時計としての実用性に加えて、日本刀をモチーフとしたことで高付加価値の時計を提供することができる。
また、第1被覆領域15、第2被覆領域16、露出領域17、刃文状の模様18が延出部121G、122Gを含む重錘部12Gに形成されているので、さらに日本刀のモチーフを強調できる。
さらに、第1被覆領域15、第2被覆領域16、露出領域17、刃文状の模様18が連結部11Gにも形成されているので、さらに日本刀のモチーフを強調できる。
【0044】
[第8実施形態]
次に、第8実施形態に係る回転錘10Hについて、図11を参照して説明する。
回転錘10Hは、連結部11Hと、重錘部12Hとを備える。前記各実施形態では、連結部および重錘部は一体に形成されていたが、回転錘10Hでは、連結部11Hおよび重錘部12Hは材質が異なる別部品で構成されている。
連結部11Hは、重錘部12Hに比べて比重が軽い材質で形成され、例えばプラスチックなどである。この連結部11Hの平面形状は連結部11Gと同様の形状とされ、貫通孔111が形成された回転中心部110Hの外周は曲線状に形成され、回転中心部110Hから重錘部12Hに連結する先端側までは幅寸法が一定の板状に形成されている。
【0045】
重錘部12Hは、前記各実施形態と同様にステンレス、チタン、シルバーなどで構成してもよいが、本実施形態では玉鋼で構成されている。玉鋼は、古式製鉄法であるたたら製鉄法によって製錬されて日本刀の素材となる鋼であり、主成分の90%以上が鉄であり、その他は炭素等で構成され、その表面には酸化膜が形成される。
連結部11Hと重錘部12Hとは、例えば、連結部11Hに圧入固定用の凸部を形成し、この凸部を重錘部12Hに形成した凹部に圧入することで固定している。なお、連結部11Hおよび重錘部12Hの固定方法としては、接着剤などを用いて固定してもよいし、リベットなどの締結部材を用いて固定してもよい。
【0046】
重錘部12Hは、重錘部12Gと同じ形状であり、平面視で内周縁125と、内周縁125よりも曲率の大きな外周縁126とを備えて三日月形状とされ、連結部11Hから周方向にそれぞれ延出されて先端が先細り形状とされた延出部121H、122Hを備えている。
回転錘10Hでは、延出部121H、122Hを含む重錘部12Hの外周縁126の全体に第1被覆領域15および第2被覆領域16を含む被覆領域14と、露出領域17と、刃文風の模様18とが形成されている。
なお、回転錘10Hの重錘部12Hの製造方法は、たたら製鉄で素材となる玉鋼を製造し、水圧し工程、鍛錬工程を経て鍛錬した玉鋼を溶解し、重錘部用の型に流し込んで重錘部12Hを成形する。玉鋼製の重錘部12Hの表面は酸素と反応して第1被覆領域15となる酸化膜が形成される。この酸化膜の一部をレーザー加工、ブラスト処理、研磨加工などで剥がして第2被覆領域16、露出領域17を形成し、刃文風の模様18を形成する。その後、重錘部12Hを錆びにくくするため、玉鋼の表面に窒素を結合させる処理や、ポリシラザンで表面を覆う処理など、重錘部12Hの見た目を変えることなく、防錆効果を高める表面処理を行う。
【0047】
[第8実施形態の効果]
第8実施形態の回転錘10Hによれば、前記第7実施形態と同様に、延出部121H、122Hを形成しているので、回転錘10Hを有する時計1を、日本刀をモチーフとした時計とすることができ、時計としての実用性に加えて、日本刀をモチーフとしたことで高付加価値の時計を提供することができる。
また、重錘部12Hを、日本刀の素材である玉鋼を用いて製造しているので、酸化膜の被覆領域14と、玉鋼の素材色が露出する露出領域17とで、刀らしい黒銀の色味を出すことができ、時計1に高付加価値を付与できる。また、刃文風の模様18は、玉鋼の表面を酸化させた酸化膜による第2被覆領域16と、酸化膜を除去して玉鋼を露出させた露出領域17との境界線で形成しているので、日本刀の素材である玉鋼を用いて刃文風の模様18が形成された回転錘10Hを量産することができる。
さらに、可動部品である回転錘10Hに、刃文風の模様18を形成しているので、回転錘10Hの動きにより、あたかも日本刀を振りかざすような表現ができ、日本刀の素材である玉鋼を用いていることとの相乗効果によって、ユーザーに対して本物の日本刀を強くイメージさせることができる。
【0048】
また、第1被覆領域15、第2被覆領域16、露出領域17、刃文状の模様18が延出部121H、122Hを含む重錘部12Hに形成されているので、さらに日本刀のモチーフを強調できる。
さらに、連結部11Hを重錘部12Hとは別材料で構成しているので、平面三日月形状とされて日本刀をイメージしやすい重錘部12Hの形状を強調でき、日本刀のモチーフをさらに強調できる。特に、連結部11Hを透明なプラスチックで構成したり、白色などの第1被覆領域15に比べて目立ちにくい色とすることで、重錘部12Hの形状をより強調することができる。
その上、連結部11Hの比重を重錘部12Hよりも軽くしているので、回転錘10Hの重心位置を外周側にすることができ、回転錘10Hを回転し易く設計できてぜんまいの巻き上げ効率なども向上できる。
【0049】
玉鋼が露出する露出領域17の表面を処理して防錆効果を高めることができるため、外装ケース2により密閉された空間に回転錘10Hを配置するとともに、重錘部12Hの表面を酸化しにくいように処理することで、玉鋼が露出する露出領域17に錆が発生することを防止でき、玉鋼の素材の無垢な表面を活かしたデザインとすることができる。
【0050】
[第9実施形態]
次に、第9実施形態に係る回転錘10Iについて、図12を参照して説明する。
回転錘10Iは、連結部11Iと、重錘部12Iとを備える。連結部11Iは、回転錘10Gの連結部11Gと同様に、貫通孔111が形成された回転中心部110I側は平面視で曲線状に形成され、基端側から重錘部12Iに連結する先端側まで幅寸法が一定の板状に形成されている。
重錘部12Iは、平面視で略円弧状に形成され、周方向の中心部分で連結部11Iに連結されている。具体的には、重錘部12Iは、内周縁127と、外周縁128と、刃先縁129とを備えている。内周縁127および外周縁128は同心円の円弧である。刃先縁129は、内周縁127および外周縁128の各端部間を結ぶ部分であり、外周縁128との公差角度が鋭角とされている。このため、内周縁127および外周縁128間の幅寸法は一定であるが、外周縁128および刃先縁129間の幅寸法は先端に向かうにしたがって小さくなっている。すなわち、外周縁128および刃先縁129によって、重錘部12Iの両端部は、先端に向かうにしたがって先細りとなる形状とされている。したがって、重錘部12Iにおいて、連結部11Iに連結された部分から周方向にそれぞれ延出された部分によって延出部121I、122Iが構成されている。
【0051】
回転錘10Iでは、延出部121I、122Iを含む重錘部12Iの外周縁128の全体に第1被覆領域15および第2被覆領域16を含む被覆領域14と、露出領域17とが形成されている。このため、刃文風の模様18は、重錘部12Iの外周縁128の全体に形成されている。また、連結部11Iの表面にも第1被覆領域15が形成されている。
なお、回転錘10Iの製造方法は第1実施形態の回転錘10と同様であるため、説明を省略する。
【0052】
[第9実施形態の効果]
第9実施形態の回転錘10Iによれば、前記第1実施形態と同様に、延出部121I、122Iを形成しているので、回転錘10Iを有する時計1を、日本刀をモチーフとした時計とすることができ、時計としての実用性に加えて、日本刀をモチーフとしたことで高付加価値の時計を提供することができる。
さらに、第1被覆領域15、第2被覆領域16、露出領域17、刃文状の模様18が延出部121I、122Iを含む重錘部12Iに形成されているので、さらに日本刀のモチーフを強調できる。
【0053】
[第10実施形態]
次に、第10実施形態に係る回転錘10Jについて、図13を参照して説明する。
回転錘10Jは、連結部11Jと、重錘部12Jとを備える。連結部11Jは、回転錘10Fの連結部11Fと同様に、貫通孔111が形成された回転中心部110Jと重錘部12Jとを連結する2本の連結片部112Jと、回転中心部110Jから重錘部12Jとは反対側に突出された突出部113Jとを備えている。突出部113Jは、デザイン的に回転中心部110Jを介して連結片部112Jに連続するように形成され、先端側は先細り形状とされている。なお、連結片部112Jは、エッジ部114Jが外側に膨らむような円弧形状とされ、このエッジ部114Jには、第1被覆領域15、第2被覆領域16、露出領域17、刃文風の模様18が形成されている。一方、突出部113Jには、第1被覆領域15が形成されている。
このため、各連結片部112Jおよび突出部113Jは、交差する2本の刀身をイメージさせるデザインに形成されている。
【0054】
重錘部12Jは、回転錘10Iの重錘部12Iと同じ構成とされ、延出部121J、122J、内周縁127、外周縁128、刃先縁129を備えている。
【0055】
回転錘10Jでは、回転錘10Iと同じく、外周縁128の全体に第1被覆領域15および第2被覆領域16を含む被覆領域14と、露出領域17とが形成されている。このため、刃文風の模様18は、重錘部12Jの外周縁128の全体に形成されている。
なお、回転錘10Jの製造方法は第1実施形態の回転錘10と同様であるため、説明を省略する。
【0056】
[第10実施形態の効果]
第10実施形態の回転錘10Jによれば、前記第1実施形態と同様に、延出部121J、122Jを形成しているので、回転錘10Jを有する時計1を、日本刀をモチーフとした時計とすることができ、時計としての実用性に加えて、日本刀をモチーフとしたことで高付加価値の時計を提供することができる。
さらに、第1被覆領域15、第2被覆領域16、露出領域17、刃文状の模様18が延出部121J、122Jを含む重錘部12Jに形成されているので、さらに日本刀のモチーフを強調できる。
その上、連結部11Jを、2本の連結片部112Jおよび突出部113Jを備えて構成し、さらに第1被覆領域15、第2被覆領域16、露出領域17を設けて、刃文状の模様18を形成することで、2本の刀身が交差するデザインとしたので、日本刀のモチーフをさらに強調できる。
【0057】
[第11実施形態]
次に、第11実施形態に係る回転錘10Kについて、図14を参照して説明する。
回転錘10Kは、連結部11Kと、重錘部12Kとを備える。連結部11Kは、貫通孔111が形成された回転中心部110Kと重錘部12Kとを連結する連結片部112Kと、回転中心部110Kから重錘部12Kとは反対側に突出された2つの突出部113Kとを備えている。
連結片部112Kは、エッジ部114Kが外側に膨らんだ円弧形状とされ、回転錘10Jの2本の連結片部112Jを隙間無く重ねたようなデザインとされている。
突出部113Kは、デザイン的に回転中心部110Kを介して連結片部112Kに連続するように形成され、先端側は先細り形状とされている。
連結片部112Kのエッジ部114Kには、第1被覆領域15、第2被覆領域16、露出領域17、刃文風の模様18が形成されている。一方、突出部113Jは、第1被覆領域15が形成されている。
このため、各連結片部112Kおよび突出部113Kは、2本の刀身をイメージさせるデザインに形成されている。
【0058】
重錘部12Kは、周方向の中心部分で連結部11Kに連結されている。また、重錘部12Kは、延出部121K、122K、内周縁127、外周縁128、刃先縁129を備えているが、これらの形状は回転錘10Iの重錘部12Iと同じであるため、説明を省略する。
【0059】
回転錘10Kでは、回転錘10Iと同じく、外周縁128の全体に第1被覆領域15および第2被覆領域16を含む被覆領域14と、露出領域17とが形成されている。このため、刃文風の模様18は、重錘部12Kの外周縁128の全体に形成されている。
なお、回転錘10Kの製造方法は第1実施形態の回転錘10と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
[第11実施形態の効果]
第11実施形態の回転錘10Kによれば、前記第1実施形態と同様に、延出部121K、122Kを形成しているので、回転錘10Kを有する時計1を、日本刀をモチーフとした時計とすることができ、時計としての実用性に加えて、日本刀をモチーフとしたことで高付加価値の時計を提供することができる。
さらに、第1被覆領域15、第2被覆領域16、露出領域17、刃文状の模様18が延出部121K、122Kを含む重錘部12Kに形成されているので、さらに日本刀のモチーフを強調できる。
その上、連結部11Kを、連結片部112Kおよび突出部113Kを備えて構成し、さらに第1被覆領域15、第2被覆領域16、露出領域17を設けて、刃文状の模様18を形成することで、2本の刀身が重なって配置されたデザインとしたので、日本刀のモチーフをさらに強調できる。
【0061】
[他の実施形態]
なお、本発明は前記各実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
回転錘における連結部、重錘部の形状や、連結部と重錘部との組合せ、被覆領域14および露出領域17による模様18の有無や模様18を形成する位置などは前記各実施形態に限定されない。すなわち、回転錘は、先端が日本刀の切っ先を模して先細り形状とされた少なくとも1つの延出部を備えていればよい。
【0062】
また、連結部および重錘部は、一体成形品とするか別部品で成形するかは適宜選択すればよいし、その金属材料もステンレス、チタン、シルバー、玉鋼や、その他の金属材などから適宜選択すればよい。特に、日本刀の素材である玉鋼を用いれば、刀らしい黒銀の色味を出すことができ、時計に高付加価値を付与できる。
【0063】
回転錘に被覆領域や露出領域を形成する加工方法は、回転錘の形状、サイズ、材質などに応じて適宜選択すればよい。例えば、露出領域をマスクして被覆領域に成膜することで模様を形成してもよいし、露出領域の一部の表面に凹凸を形成して刃文風の模様を表現してもよいし、金属表面に印刷可能なインクを用いて模様を印刷してもよい。すなわち、回転錘の表面にコーティング材を塗布したり、酸化膜を形成したり、表面を削ってコーティング材や酸化膜を剥がしたり、表面に凹凸などを加工したり、インクで印刷することなどの様々な表面処理を行うことで、金属部材や玉鋼の成分を変化させずに刃文のように見える模様を形成すればよい。
【0064】
被覆領域の色を設定する際に、現存する日本刀の色を測色計で計測し、そのデータに基づいて被覆領域の色を設定してもよい。
被覆領域は、2つの被覆領域で構成するものに限定されず、1つの領域でもよいし、3つ以上の領域で形成してもよい。また、1つの領域で形成する場合にグラデーションを形成してもよいし、第1被覆領域や第2被覆領域をグラデーションで形成してもよい。さらには、露出領域もグラデーションで形成してもよい。
また、連結部および重錘部を一体成形した際に、連結部を被覆領域や露出領域とは異なる色にしてもよい。連結部を重錘部や延出部と異なる色とすれば、円弧状の重錘部が日本刀の切っ先を模した延出部に連続し、日本刀の刀身を模したように見えるため、回転錘による日本刀のモチーフをさらに強調することができる。
【0065】
刃文風の模様は、重錘部の外周などに連続して形成されるものに限定されず、途中で分断されて複数の模様としてもよいし、例えば、延出部の先端部分のみに模様を形成するなど、部品の途中で途切れる模様でもよい。
【0066】
重錘部の外周は円弧状に形成されたものに限定されず、例えば、反りの無い直刀をイメージして直線状に形成してもよいし、多角形状に形成してもよい。また、延出部は、重錘部から周方向つまり回転錘の回転方向に延出されるものに限定されず、日本刀の切っ先をイメージできるものであれば延出方向は限定されない。ただし、前記各実施形態のように、重錘部から周方向に延出部を延出すれば、重錘部や延出部を外装ケース2の内周面に沿って最も外周側に配置できるため、回転錘によるぜんまいの巻き上げ効率などを向上できる。
【0067】
[本開示のまとめ]
本開示の時計は、回転錘を有する時計であって、前記回転錘は、回転軸部に回転自在に軸支された連結部と、前記連結部を介して前記回転軸部から離れて配置された重錘部と、前記重錘部から延出された延出部とを有し、前記延出部の先端は、日本刀の切っ先を模した先細り形状に形成されていることを特徴とする。
本開示によれば、回転錘の重錘部に、先端に向かうにしたがって先細り形状に形成されて日本刀の切っ先を模した延出部を形成したので、日本刀をモチーフとした高付加価値の時計を提供することができる。特に、延出部を回転錘に形成したので、回転錘が回転することで、延出部も移動して日本刀を振っているような表現ができ、ユーザーに対して本物の日本刀をイメージさせることができる。
【0068】
本開示の時計において、前記延出部には、日本刀の刃文を模した模様が形成されていることが好ましい。
日本刀の切っ先を模した延出部に、日本刀の刃文を模した模様が形成されていれば、日本刀のモチーフをより強調できる。
【0069】
本開示の時計において、前記連結部は、刀身を模した形状に形成され、前記回転軸部に軸支された一端側は日本刀の切っ先を模した先細り形状に形成されていることが好ましい。
本開示によれば、連結部を刀身を模した形状に形成し、その一端側を日本刀の切っ先を模して先細り形状に形成したので、回転錘における日本刀のモチーフをより強調できる。
【0070】
本開示の時計において、前記連結部には、日本刀の刃文を模した模様が形成されていることが好ましい。
連結部にも日本刀の刃文を模した模様が形成されていれば、日本刀のモチーフをより強調できる。
【0071】
本開示の時計において、前記延出部は、前記重錘部を挟んで両側に延出されていることが好ましい。
延出部が重錘部を挟んで両側に延出されていれば、連結部および重錘部を基準に回転錘を左右対称の形状にできるので、回転錘を時計回りおよび反時計回りにどちらの方向にもスムーズに回転させることができる。
【0072】
本開示の時計において、前記延出部は、前記重錘部から片側のみに延出されていることが好ましい。
延出部が重錘部から片側のみに延出されていれば、延出部の延出寸法を大きくすることができ、日本刀の切っ先に加えて刀身を模した形状にできるので、日本刀のモチーフをより強調できる。
【0073】
本開示の時計において、前記重錘部は玉鋼で形成され、前記連結部は前記玉鋼よりも比重が小さい材質で形成されていることが好ましい。
刀本来の素材である玉鋼を活用することで、さらに日本刀らしさを増すことができる。その上、回転錘の外周側に連結部に比べて比重の大きい重錘部が配置されるため、回転錘によってぜんまいを巻き上げる際の巻き上げ効率を向上できる。
【0074】
本開示の回転錘は、時計に用いられる回転錘であって、回転軸部に回転自在に軸支される連結部と、前記連結部を介して前記回転軸部から離れて配置された重錘部と、前記重錘部から延出された延出部とを有し、前記延出部の先端は、日本刀の切っ先を模した先細り形状に形成されていることを特徴とする。
本開示によれば、回転錘に、先端に向かうにしたがって先細り形状に形成されて日本刀の切っ先を模した延出部を形成したので、日本刀をモチーフとした高付加価値の時計を提供することができる。特に、延出部を回転錘に形成したので、回転錘が回転することで、延出部も移動して日本刀を振っているような表現ができ、ユーザーに対して本物の日本刀をイメージさせることができる。
【0075】
本開示の回転錘において、前記重錘部は玉鋼で形成されていることが好ましい。
刀本来の素材である玉鋼を用いて重錘部を形成しているので、刀らしい黒銀の色味を出すことができ、さらに日本刀らしさを増すことができて時計に高付加価値を付与できる。
【符号の説明】
【0076】
1…時計、2…外装ケース、3…文字板、9…裏蓋、10、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H、10I、10J、10K…回転錘、11、11E、11F、11G、11H、11I、11J、11K…連結部、12、12B、12E、12F、12G、12H、12I、12J、12K…重錘部、13…金属部材、14…被覆領域、15…第1被覆領域、16…第2被覆領域、17…露出領域、18…模様、21…輪列受け、22…ベアリング、100…基準面、101…第1面、102…第2面、121、121G、121H、121I、121J、121K、122、122E、122G、122H、122I、122J、122K…延出部。
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