(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046252
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ボールペン用水性インキ組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/18 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
C09D11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151531
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 巧
(72)【発明者】
【氏名】小林 惠子
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039BC12
4J039BC33
4J039BC75
4J039BE02
4J039BE32
4J039EA48
4J039GA27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】種々の筆記角度で筆跡の線飛びが発生しないボールペン用水性インキ組成物を提供する。
【解決手段】水と、染料と、ポリオキシエチレンセチルエーテルと、エチレンジアミン四酢酸またはジエチレントリアミン五酢酸またはそれらの塩のいずれかから選ばれる少なくとも1種以上のキレート剤と、から少なくともなるボールペン用水性インキ組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、染料と、ポリオキシエチレンセチルエーテルと、エチレンジアミン四酢酸またはジエチレントリアミン五酢酸またはそれらの塩のいずれかから選ばれる少なくとも1種以上のキレート剤と、から少なくともなるボールペン用水性インキ組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料を着色剤として使用し、液媒体として水を少なくとも含有するボールペン用水性インキ組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボールペンは基本的にインキを収容したインキ収容管と、このインキ収容管に直接又は接続部材を介して接続され、インキを流通可能に連通させたペン先部材であるボールペンチップとにより構成されている。ボールペンチップは、被筆記面に接触してインキを転写するボールと、このボールを回転自在に抱持するボールホルダーとから少なくとも構成されている。筆記時におけるボールペンの傾き、所謂筆記角度は筆記時に常に一定ではなく、筆記者の癖、被筆記面の材質や角度、筆記する文字や図形の種類等の要因によって大きく異なり、種々の筆記角度でも安定して筆記可能であることがボールペンには求められる。筆記方向と同一の方向へペン先部が向いた状態で筆記する逆書きの状態や被筆記面に対して垂直に筆記する際、ボールに対してペン先部先端が向く方向と反対方向へ大きな荷重がかかり、ボールがボールホルダーに接触し、その状態でボールが回転することでボールとボールホルダーの間に摩擦が生じ、ボールの回転が阻害され、被筆記面にインキが転写されない所謂線飛びが発生する場合があった。
【0003】
ボールとボールホルダー間の摩擦を低減するために、粒径が2~10μmの比較的大きいうるち米でんぷんを配合した例(特許文献1)、金属イオンの析出防止を目的としたキレート剤と、書き味向上を目的としたリン酸エステル界面活性剤と、を特定比率で配合した例(特許文献2)、ボールペン用水性顔料インキにエチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩を添加した例(特許文献3)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-46470号公報
【特許文献2】特開2006-206658号公報
【特許文献3】特開昭61-130384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明では、うるち米でんぷんを配合する方法が記載されているが、うるち米でんぷんは筆記具用インキ組成物で使用される添加剤の中では粒径が大きく、ボールとボールホルダーの間での摩擦低減が不十分で特定の筆記角度で線飛びが発生する。また大粒径の添加剤は経時で沈降しやすいため、うるち米でんぷんがボールペンチップ内の流路を塞いで筆記不良につながるおそれがある。特許文献2に記載の発明では、キレート剤とリン酸エステル界面活性剤の含有比率を特定比率で配合する方法が記載されているが、リン酸エステル界面活性剤はボールペンチップから溶出する金属イオンと反応して金属塩を生成し、その金属塩がボールペンチップ内の流路を塞いで筆記不良につながるおそれがある。特許文献3に記載の発明では、ボールペン用水性顔料インキにエチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩を添加する方法が記載されているが、エチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩のみでは、ボールとボールホルダーの間での摩擦低減が不十分で特定の筆記角度で線飛びが発生する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水と、染料と、ポリオキシエチレンセチルエーテルと、エチレンジアミン四酢酸またはジエチレントリアミン五酢酸またはそれらの塩のいずれかから選ばれる少なくとも1種以上のキレート剤と、から少なくともなるボールペン用水性インキ組成物を要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
ポリオキシエチレンセチルエーテルは、極性基がボールホルダー内部やボール表面に吸着することで、疎水基が金属表面と反対方向へ向いた緻密な疎水膜を形成する。同時に、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはそれらの塩に挙げられる特定のキレート剤が、染料に含まれる金属イオンを封鎖することで、ナノメートルオーダーの多面体構造を形成する。ポリオキシエチレンセチルエーテルの疎水膜はキレート剤と特異的に相互作用し、多面体構造を形成したキレート剤が疎水膜上で転がり運動することにより、種々の筆記角度においてボールとボールホルダーの間での摩擦が大幅に低減され、ボールの回転が阻害されることなく、インキが被筆記面に安定して転写され、線飛びの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る筆記具を示す縦断面図である。
【
図2】
図1に示す筆記具に用いられるリフィルを示す縦断面図である。
【
図5】一実施形態に係る筆記具を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の水性ボールペン用インキに使用する染料は、筆跡に着色効果を付与し視認させるものである。本発明の水性ボールペン用インキに使用する染料の具体例としては、酸性染料、直接染料、塩基性染料等のいずれも用いることができる。その一例を挙げれば、ジャパノールファストブラックDコンク(C.I.ダイレクトブラック17)、ウォーターブラック100L(同19)、ウォーターブラックL-200(同19)、ダイレクトファストブラックB(同22)、ダイレクトファストブラックAB(同32)、ダイレクトディープブラックEX(同38)、ダイレクトファストブラックコンク(同51)、カヤラススプラグレイVGN(同71)、カヤラスダイレクトブリリアントイエローG(C.I.ダイレクトイエロー4)、ダイレクトファストイエロー5GL(同26)、アイゼンプリムライエローGCLH(同44)、ダイレクトファストイエローR(同50)、ダイワIJイエロー306H(同123)、アイゼンダイレクトファストレッドFH(C.I.ダイレクトレッド1)、ニッポンファストスカーレットGSX(同4)、ダイレクトファストスカーレット4BS(同23)、アイゼンダイレクトローデュリンBH(同31)、ダイレクトスカーレットB(同37)、カヤクダイレクトスカーレット3B(同39)、アイゼンプリムラピンク2BLH(同75)、スミライトレッドF3B(同80)、アイゼンプリムラレッド4BH(同81)、カヤラススプラルビンBL(同83)、カヤラスライトレッドF5G(同225)、カヤラスライトレッドF5B(同226)、カヤラスライトローズFR(同227)、ダイレクトスカイブルー6B(C.I.ダイレクトブルー1)、ダイレクトスカイブルー5B(同15)、スミライトスプラブルーBRRコンク(同71)、ダイボーゲンターコイズブルーS(同86)、カヤラスターコイズブルーGL(同86)、ウォーターブルー#3(同87)、カヤラススプラブルーFF2GL(同106)、カヤラススプラターコイズブルーFBL(同199)等の直接染料や、アシッドブルーブラック10B(C.I.アシッドブラック1)、ニグロシン(同2)、スミノールミリングブラック8BX(同24)、カヤノールミリングブラックVLG(同26)、スミノールファストブラックBRコンク(同31)、ミツイナイロンブラックGL(同52)、アイゼンオパールブラックWHエクストラコンク(同52)、スミランブラックWA(同52)、ラニルブラックBGエクストラコンク(同107)、カヤノールミリングブラックTLB(同109)、スミノールミリングブラックB(同109)、カヤノールミリングブラックTLR(同110)、アイゼンオパールブラックニューコンク(同119)、ウォーターブラック187-L(同154)、ウォーターブラック#256L、カヤクアシッドブリリアントフラビンFF(C.I.アシッドイエロー7:1)、カヤシルイエローGG(同17)、キシレンライトイエロー2G140%(同17)、スミノールレベリングイエローNR(同19)、ダイワタートラジン(同23)、カヤクタートラジン(同23)、ウォーターイエロー#1(同23)、スミノールファストイエローR(同25)、ダイアシッドライトイエロー2GP(同29)、スミノールミリングイエローO(同38)、スミノールミリングイエローMR(同42)、ウォーターイエロー#6C(同42)、カヤノールイエローNFG(同49)、スミノールミリングイエロー3G(同72)、スミノールファストイエローG(同61)、スミノールミリングイエローG(同78)、カヤノールイエローN5G(同110)、スミノールミリングイエロー4G200%(同141)、カヤノールイエローNG(同135)、カヤノールミリングイエロー5GW(同127)、カヤノールミリングイエロー6GW(同142)、スミトモファストスカーレットA(C.I.アシッドレッド8)、カヤクシルクスカーレット(同9)、ソーラールビンエクストラ(同14)、ダイワニューコクシン(同18)、アイゼンボンソーRH(同26)、ダイワ赤色2号(同27)、スミノールレベリングブリリアントレッドS3B(同35)、カヤシルルビノール3GS(同37)、アイゼンエリスロシン(同51)、カヤクアシッドローダミンFB(同52)、ダイワレッドNo106WB(同52)、スミノールレベリングルビノール3GP(同57)、ダイアシッドアリザリンルビノールF3G200%(同82)、アイゼンエオシンGH(同87)、ダイワレッドNo103WB(同87)、ダイワレッドNo104WB(同92)、ウォーターピンク#2(同92)、アイゼンアシッドフロキシンPB(同92)、ローズベンガル(同94)、カヤノールミリングスカーレットFGW(同111)、カヤノールミリングルビン3BW(同129)、スミノールミリングブリリアントレッド3BNコンク(同131)、スミノールミリングブリリアントレッドBS(同138)、アイゼンオパールピンクBH(同186)、スミノールミリングブリリアントレッドBコンク(同249)、カヤクアシッドブリリアントレッド3BL(同254)、カヤクアシッドブリリドブリリアントレッドBL(同265)、カヤノールミリングレッドGW(同276)、ミツイアシッドバイオレット6BN(C.I.アシッドバイオレット15)、ミツイアシッドバイオレットBN(同17)、スミトモパテントピュアブルーVX(C.I.アシッドブルー1)、ウォーターブルー#106(同1)、パテントブルーAF(同7)、ウォーターブルー#9(同9)、ダイワ青色1号(同9)、ウォーターブルー#116(同15)スプラノールブルーB(同15)、オリエントソルブルブルーOBC(同22)、スミノールレベリングブルー4GL(同23)、ミツイナイロンファストブルーG(同25)、カヤシルブルーAGG(同40)、カヤシルブルーBR(同41)、ミツイアリザリンサフィロールSE(同43)、スミノールレベリングスカイブルーRエクストラコンク(同62)、ミツイナイロンファストスカイブルーB(同78)、スミトモブリリアントインドシアニン6Bh/c(同83)、サンドランシアニンN-6B350%(同90)、ウォーターブルー#105S(同90)、フィスコブルー664(同90)、オリエントソルブルブルーOBX(同93)、オリエントソルブルブルーOBB(同93)、スミトモブリリアントブルー5G(同103)、カヤノールミリングウルトラスカイSE(同112)、カヤノールミリングシアニン5R(同113)、アイゼンオパールブルー2GLH(同158)、ウォーターブルー#119、ダイワギニアグリーンB(C.I.アシッドグリーン3)、アシッドブリリアントミリンググリーンB(同9)、ダイワグリーン#70(同16)、カヤノールシアニングリーンG(同25)、スミノールミリンググリーンG(同27)等の酸性染料、アイゼンカチロンイエロー3GLH(C.I.ベーシックイエロー11)、アイゼンカチロンブリリアントイエロー5GLH(同13)、スミアクリルイエローE-3RD(同15)、マキシロンイエロー2RL(同19)、アストラゾンイエロー7GLL(同21)、カヤクリルゴールデンイエローGL-ED(同28)、アストラゾンイエロー5GL(同51)、アイゼンカチロンオレンジGLH(C.I.ベーシックオレンジ21)、アイゼンカチロンブラウン3GLH(同30)、ローダミン6GCP(C.I.ベーシックレッド1)、アイゼンアストラフロキシン(同12)、スミアクリルブリリアントレッドE-2B(同15)、アストラゾンレッドGTL(同18)、アイゼンカチロンブリリアントピンクBGH(同27)、マキシロンレッドGRL(同46)、アイゼンメチルバイオレット(C.I.ベーシックバイオレット1)、アイゼンクリスタルバイオレット(同3)、アイゼンローダミンB(同10)、アストラゾンブルーG(C.I.ベーシックブルー1)、アストラゾンブルーBG(同3)、ウォーターブルー#10C(同7)、メチレンブルー(同9)、マキシロンブルーGRL(同41)、アイゼンカチロンブルーBRLH(同54)、アイゼンダイヤモンドグリーンGH(C.I.ベーシックグリーン1)、アイゼンマラカイトグリーン(同4)、ビスマルクブラウンG(C.I.ベーシックブラウン1)等の塩基性染料が挙げられる。
【0010】
筆跡の耐水性、対候性といった堅牢性の向上を目的に、着色剤として顔料を染料と併用してもよい。顔料の具体例としては、アゾ系顔料、ニトロソ系顔料、ニトロ系顔料、塩基性染料系顔料、酸性染料系顔料、建て染め染料系顔料、媒染染料系顔料、及び天然染料系顔料等の有機系顔料、黄土、バリウム黄、群青、紺青、カドミウムレッド、硫酸バリウム、酸化チタン、弁柄、鉄黒、カーボンブラック等の無機顔料等、アルミニウム粉、金粉、銀粉、銅粉、錫粉、真鍮粉等の金属粉顔料、蛍光顔料、雲母系顔料等が挙げられる。具体例を挙げると、カーボンブラックとしては、三菱カーボンブラック#10B、同#20B、同#14、同#25、同#30、同#33、同#40、同#44、同#45、同#45L、同#50、同#55、同#95、同#260、同#900、同#1000、同#2200B、同#2300、同#2350、同#2400B、同#2650、同#2700、同#4000B、同CF9、同MA8、同MA11、同MA77、同MA100、同MA220、同MA230、同MA600及びMCF88(以上、三菱化学(株)製)、モナーク120、モナーク700、モナーク800、モナーク880、モナーク1000、モナーク1100、モナーク1300、モナーク1400、モーガルL、リーガル99R、リーガル250R、リーガル300R、リーガル330R、リーガル400R、リーガル500及びリーガル660R(以上、キャボット コーポレーション社製、米国)、プリンテックスA、プリンテックスG、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス55、プリンテックス140U、プリンテックス140V、プリンテックス35、プリンテックス40、プリンテックス45、プリンテックスプリンテックス85、ナインペックス35、スペシャルブラック4、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック5、スペシャルブラック6、スペシャルブラック100、スペシャルブラック250、スペシャルブラック350、スペシャルブラック550、カラーブラックFW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160及びカラーブラックS170(以上、デグサ ジャパン(株)製)、ラーベン5000ウルトラII、ラーベン2500ウルトラ、ラーベン1250、ラーベン760ウルトラ(以上、コロンビヤン・カーボン日本(株)製)、C.I.ピグメントブラック7、等が挙げられる。有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメント213、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントバイオレット23、アニリンブラック(C.I.50440)、シアニンブラック、ナフトールイエローS(C.I.10316)、ハンザイエロー10G(C.I.11710)、ハンザイエロー5G(C.I.11660),ハンザイエロー3G(C.I.11670)、ハンザイエローG(C.I.11680),ハンザイエローGR(C.I.11730)、ハンザイエローA(C.I.11735)、ハンザイエローRN(C.I.11740)、ハンザイエローR(C.I.12710)、ピグメントイエローL(C.I.12720)、ベンジジンイエロー(C.I.21090)、ベンジジンイエローG(C.I.21095)、ベンジジンイエローGR(C.I.21100)、パーマネントイエローNCG(C.I.20040)、バルカンファストイエロー5G(C.I.21220)、バルカンファストイエローR(C.I.21135)、タートラジンレーキ(C.I.19140)、キノリンイエローレーキ(C.I.47005)、アンスラゲンイエロー6GL(C.I.60520)、パーマネントイエローFGL、パーマネントイエローH10G、パーマネントイエローHR、アンスラピリミジンイエロー(C.I.68420)、スダーンI(C.I.12055)、パーマネントオレンジ(C.I.12075)、リソールファストオレンジ(C.I.12125)、パーマネントオレンジGTR(C.I.12305)、ハンザエロー3R(C.I.11725)、バルカンファストオレンジGG(C.I.21165)、ベンジジンオレンジG(C.I.21110)、ペルシアンオレンジ(C.I.15510)、インダンスレンブリリアントオレンジGK(C.I.59305)、インダンスレンブリリアントオレンジRK(C.I.59105)、インダンスレンブリリアントオレンジGR(C.I.71105)、パーマネントブラウンFG(C.I.12480)、パラブラウン(C.I.12071)、パーマネントレッド4R(C.I.12120)、パラレッド(C.I.12070)、ファイヤーレッド(C.I.12085)、パラクロルオルトアニリンレッド(C.I.12090)、リソールファストスカーレット、ブリリアントファストスカーレット(C.I.12315)、ブリリアントカーミンBS、パーマネントレッドF2R(C.I.12310)、パーマネントレッドF4R(C.I.12335)、パーマネントレッドFRL(C.I.12440)、パーマネントレッドFRLL(C.I.12460),パーマネントレッドF4RH(C.I.12420)、ファストスカーレットVD、バルカンファストルビンB(C.I.12320)、バルカンファストピンクG(C.I.12330),ライトファストレッドトーナーB(C.I.12450)、ライトファストレッドトーナーR(C.I.12455)、パーマネントカーミンFB(C.I.12490)、ピラゾロンレッド(C.I.12120)、リソールレッド(C.I.15630)、レーキレッドC(C.I.15585)、レーキレッドD(C.I.15500)、アンソシンB(C.I.18030)、ブリリアントスカーレットG(C.I.15800)、リソールルビンGK(C.I.15825)、パーマネントレッドF5R(C.I.15865)、ブリリアントカーミン6B(C.I.15850)、ピグメントスカーレット3B(C.I.16105)、ボルドー5B(C.I.12170)、トルイジンマルーン(C.I.12350)、パーマネントボルドーF2R(C.I.12385)、ヘリオボルドーBL(C.I.14830)、ボルドー10B(C.I.15880)、ボンマルーンライト(C.I.15825)、ボンマルーンメジウム(C.I.15880)、エオシンレーキ(C.I.45380)、ローダミンレーキB(C.I.45170)、ローダミンレーキY(C.I.45160)、アリザリンレーキ(C.I.58000)、チオインジゴレッドB(C.I.73300)、チオインジゴマルーン(C.I.73385)、パーマネントレッドFGR(C.I.12370)、PVカーミンHR、ワッチングレッド,モノライトファストレッドYS(C.I.59300)、パーマネントレッドBL、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ(C.I.42535)、ジオキサジンバイオレット、アルカリブルーレーキ(C.I.42750A、C.I.42770A)、ピーコックブルーレーキ(C.I.42090)、ピーコックブルーレーキ(C.I.42025)、ビクトリアブルーレーキ(C.I.44045)、フタロシアニンブルー(C.I.74160)、ファストスカイブルー(C.I.74180)、インダンスレンブルーRS(C.I.69800)、インダンスレンブルーBC(C.I.69825)、インジゴ(C.I.73000)、ピグメントグリーンB(C.I.10006)、ナフトールグリーンB(C.I.10020)、グリーンゴールド(C.I.12775)、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ(C.I.42000)、フタロシアニングリーン等が挙げられ、これらを液媒体に分散して用いられる。
【0011】
着色剤に顔料を用いた場合は顔料を安定に分散させるために分散剤を使用することは差し支えない。分散剤として従来一般に用いられている水溶性樹脂もしくは水可溶性樹脂や、アニオン系もしくはノニオン系の界面活性剤等の顔料の分散剤として用いられるものが使用できる。一例として、高分子分散剤として、リグニンスルホン酸塩、セラック等の天然高分子、ポリアクリル酸塩、スチレン-アクリル酸共重合物の塩、ビニルナフタレン-マレイン酸共重合物の塩、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、リン酸塩、等の陰イオン性高分子やポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の非イオン性高分子等が挙げられる。また、界面活性剤として、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N-アシルアミノ酸及びその塩、N-アシルメチルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキルスルホカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。これら水可溶性樹脂及び界面活性剤は、その1種または2種以上を選択し、併用しても使用できる。その使用量は、顔料10.0重量%に対し0.05重量%以上20.0重量%以下が好ましい。
【0012】
市販の水分散タイプの顔料は取り扱い性や生産性が高まるので好ましく用いられる。水分散タイプ顔料の具体例としては、Fuji SP Black 8031、同8119、同8167、同8276、同8381、同8406、Fuji SP Red 5096、同5111、同5193、同5220、Fuji SP Bordeaux 5500、Fuji SP Blue 6062、同6133、同6134、同6401、Fuji SP Green 7051、Fuji SP Yellow4060、同4178、Fuji SP Violet 9011、FujiSP Pink 9524、同9527、Fuji SP Orange 534、FUji SP Brown 3074、FUJI SP RED 5543、同5544(以上、富士色素(株)製)、Emacol Black CN、Emacol Blue FBB、同FB、同KR、Emacol Green LXB、Emacol Violet BL、Emacol Brown3101、Emacol Carmmine FB、Emacol RedBS、Emacol Orange R、Emacol Yellow FD、同IRN、同3601、同FGN、同GN、同GG、同F5G、同F7G、同10GN、同10G、Sandye Super Black K、同C、Sandye Super Grey B、Sandye Super BrownSB、同FRL、同RR、Sandye Super Green L5G、同GXB、Sandye Super Navy Blue HRL、同GLL、同HB、同FBL-H、同FBL-160、同FBB、Sandye Super Violet BL H/C、同BL、Sandye Super Bordeaux FR、Sandye Super Pink FBL、同F5B、Sandye Super Rubine FR、Sandye superCarmmine FB、Sandye Super Red FFG、同RR、同BS、同1315、Sandye Super Orange FL、同R、同BO、Sandye Gold Yellow 5GR、同R、同3R、Sandye Ywllow GG、同F3R、同IRC、同FGN、同GN、同GRS、同GSR-130、同GSN-130、同GSN、同10GN(以上、山陽色素(株)製)、Rio Fast Black Fx 8012、同8313、同8169、Rio Fast Red Fx 8209、同8172、Rio Fast Red S Fx 8315、同8316、Rio Fast Blue Fx 8170、Rio Fast Blue FX 8170、Rio Fast Blue S Fx 8312、Rio Fast Green S Fx 8314、EM green G、(以上、東洋インキ(株)製)、NKW-2101、同2102、同2103、同2104、同2105、同2106、同2107、同2108、同2117、同2127、同2137、同2167、同2101P、同2102P、同2103P、同2104P、同2105P、同2106P、同2107P、同2108P、同2117P、同2127P、同2137P、同2167P、NKW-3002、同3003、同3004、同3005、同3007、同3077、同3008、同3402、同3404、同3405、同3407、同3408、同3477、同3602、同3603、同3604、同3605、同3607、同3677、同3608、同3702、同3703、同3704、同3705、同3777、同3708、同6013、同6038、同6559(以上、日本蛍光(株)製)、コスモカラーS1000Fシリーズ(東洋ソーダ(株)製)、ビクトリアイエロー G-11、同G-20、ビクトリアオレンジ G-16、同G-21、ビクトリアレッドG-19、同G-22、ビクトリアピンク G-17、同G-23、ビクトリアグリーン G-18、同G-24、ビクトリアブルー G-15、同G-25(以上、御国色素(株)製)、ポルックスPC5T1020、ポルックスブラックPC8T135、ポルックスレッドIT1030等のポルックスシリーズ(以上、住化カラー(株)製)等が挙げられる。以上の染料及び顔料は、単独或は複数を混合して使用できる。
【0013】
水はインキの主溶剤として使用する。本発明において、主溶剤とは、インキ組成物全量中の溶剤全量中の50重量%以上を占める溶剤を意味する。イオン交換水や精製水を用いることが好ましい。
更に、インキとしての種々の品質、例えば、低温時でのインキ凍結防止、ペン先部でのインキ乾燥防止等の目的で従来公知の有機溶剤を併用することが可能である。有機溶剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2-エチル1,3-ヘキサングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ベンジルグリコール、ベンジルジグリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールエーテル類、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、ベンジルアルコール、α-メチルベンジルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソドデシルアルコール、イソトリデシルアルコール等のアルコール系溶剤やプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、スルフォラン、γブチロラクトン、2-フェノキシエタノール等が挙げられる。これらは1種又は2種以上選択して併用できるものである。また、その使用量はインキ全量に対して2.0重量%以上50.0重量%以下が好ましい。2.0重量%以上50.0重量%以下だとペン先部の乾燥防止効果が得られやすいので好ましい。本発明における水の使用量は、インキ組成物全量に対し、30重量%以上が好ましい。
【0014】
ポリオキシエチレンセチルエーテルは、ボールやチップホルダー表面へ吸着することで緻密な疎水膜を形成し、ボールの結合成分の溶出防止やキレート剤の転がり運動を促進することによる線飛び防止を目的として用いる。ポリオキシエチレンセチルエーテルとしては、日光ケミカルズ(株)製のNIKKOL BC-2(HLB値8.0)、同BC-5.5(HLB値10.5)、同BC-7(HLB値11.5)、同BC-10(HLB値13.5)、同BC-15(HLB値15.5)、同BC-20(HLB値17.0)、同BC-23(HLB値18.0)、同BC-25(HLB値18.5)、同BC-30(HLB値19.5)、同BC-40(HLB値20.0)、日油(株)製のノニオン P-202(HLB値5.3)、同P-207(HLB値11.2)、同P-208(HLB値11.9)、同P-210(HLB値12.9)、同P-213(HLB値14.1)、同P-220(HLB値15.7)、同P-223(HLB値16.1)、同P-230(HLB値16.9)、同P-240(HLB値17.6)、日本エマルション(株)製のEMALEX 102(HLB値5)、同103(HLB値6)、同104(HLB値7)、同105(HLB値8)、同107(HLB値10)、同112(HLB値12)、同115(HLB値13)、同117(HLB値13)、同120(HLB値14)、同125(HLB値15)、青木油脂工業(株)製のBLAUNON CH-302■(HLB値5.7)、同CH-305(HLB値9.4)、同CH-308(HLB値11.4)、同CH-310(HLB値13.2)、同CH-310■(HLB値12.9)、同CH-313(HLB値13.7)、同CH-315■(HLB値14.3)、同CH-320■(HLB値15.5)、同CH-325■(HLB値16.3)、同CH-330■(HLB値16.7)、同CH-340(HLB値17.4)、同CH-340F(HLB値17.4)、同CR-640(HLB値17.6)、同CR-640F(HLB値17.6)等が挙げられる。ポリオキシエチレンセチルエーテルのHLB値は8以上14未満が好ましく、8以上12未満がより好ましい。HLB値が8以上の場合、インキ組成物中でポリオキシエチレンセチルエーテルが安定に分散しやすく、ボール表面上に存在するポリオキシエチレンセチルエーテルがより密になりやすいので好ましい。一方、HLB値が14未満の場合、ポリオキシエチレンセチルエーテルの疎水膜が強固になるので、好ましく、HLB値が12未満であると、さらに効果を発揮しやすいので特に好ましい。ポリオキシエチレンセチルエーテルの使用量は、インキ組成物全量に対し、0.1重量%以上だとより密な膜を形成しやすいので好ましい。一方、インキ組成物全量に対し、3.0重量%以下だと、ペン先部からのインキ吐出が安定しやすいので好ましい。ポリオキシエチレンセチルエーテルは、あらかじめイオン交換水にポリオキシエチレンセチルエーテル加えて混合攪拌したポリオキシエチレンセチルエーテル分散液を作製してから配合してもよい混合攪拌は、加熱して行っても良い。
【0015】
キレート剤は、金属イオン封鎖剤とも呼ばれ、金属イオンを選択的に取り込み、多面体構造を形成するものである。染料中の金属イオンを金属封鎖することで多面体構造を形成した特定のキレート剤が、ポリオキシエチレンセチルエーテルの疎水膜上を転がり運動し、逆書きまたは被筆記面に対して垂直に筆記する際に生じるボールとチップホルダーの間での摩擦を低減し、ボールの回転が阻害されることなく、線飛びの発生を抑制することを目的として用いる。発明の効果を発揮する特定のキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはそれらの塩が該当し、EDTAとして、キレスト(株)製のキレスト3A、同キレスト2A、同キレストA、同キレスト110、ダウケミカル社製のVERSENE Acid 、三菱ケミカル(株)製のEDTA、EDTAの塩として、オリヱント化学工業(株)製のCWK(EDTAの四ナトリウム塩)、キレスト(株)製のキレスト40(EDTAの四ナトリウム塩)、同キレスト3D(EDTAの四ナトリウム塩四水和物)、同キレスト2D(EDTAの四ナトリウム塩四水和物)、同キレストD(EDTAの四ナトリウム塩四水和物)、同キレスト400(EDTAの四ナトリウム塩四水和物)、同キレストOD(EDTAの四ナトリウム塩四水和物)、同キレスト2C(EDTAの三ナトリウム塩三水和物)、同キレストC(EDTAの三ナトリウム塩三水和物)、同キレスト3B(EDTAの二ナトリウム塩二水和物)、同キレスト2B(EDTAの二ナトリウム塩二水和物)、同キレストB(EDTAの二ナトリウム塩二水和物)、同キレスト200(EDTAの二ナトリウム塩二水和物)、同キレスト4K-50(EDTAの四カリウム塩)、同キレスト3K-50(EDTAの三カリウム塩)、同キレスト3K(EDTAの三カリウム塩二水和物)、同キレスト2K(EDTAの二カリウム塩二水和物)、同キレスト3N-50(EDTAの三アンモニウム塩)、同キレスト2N-40(EDTAの二アンモニウム塩)、同キレスト2N(EDTAの二アンモニウム塩)、ダウケミカル社製のU042(EDTAの四ナトリウム塩)、同VERSENE 100(EDTAの四ナトリウム塩)、同VERSENE 100 XL(EDTAの四ナトリウム塩)、同VERSENE 220 (EDTAの四ナトリウム塩四水和物)、同VERSENE Diammonium EDTA(EDTAの二アンモニウム塩)、三菱ケミカル(株)製のEDTAの四ナトリウム塩、同EDTAの二ナトリウム塩、DTPAとして、キレスト(株)製のキレスト3PA、同キレストPA、三菱ケミカル(株)製のDTPA、DTPAの塩として、キレスト(株)製のキレストP(DTPAの五ナトリウム塩)、同キレストPC-45(DTPAの三ナトリウム塩)、三菱ケミカル(株)製のDTPAの五ナトリウム塩等が挙げられる。これらのキレート剤は、各々単独、もしくは2種類以上混合して用いることができ、それらの使用量は、インキ組成物全量に対し、0.2重量%以上だと金属封鎖して多面体構造を形成したキレート剤がインキ組成物中に十分に存在し、線飛び発生抑制の効果が発揮しやすいので好ましい。一方、インキ組成物全量に対し、1.0重量%以下だと染料中の金属イオンのみを金属封鎖することができ、ボールの結合成分を溶出させることなく、長期経時後も安定した書き味を維持できるので好ましい。
【0016】
本発明において、ボールペン用水性インキ組成物が、静置時には高粘度であることでペン先からのインキ漏れを抑制し、筆記時には回転するボールの剪断力によって粘度が低下し、滑らかにインキを吐出させるための剪断減粘性を得る等の目的で糖類や樹脂類を用いることができる。具体例としてHPC-SL、HPC-L、HPC-M、HPC-H(以上、ヒドロキシプロピルセルロース、日本曹達(株)製)、アビセルPH-101、同PH-102、同PH-301、同M06、同TG-101、セオラスSC-900、同SC-900S、同RC591S、同RC-N81、同RC-N30、同CL-611S、同DX-2、同DX-3,同UF-F711、同UF-F702、同ST-100、同ST-02、同FD-101,同FD-301、同FD-F20、セオラスファイバーDF-17(以上、結晶セルロース、旭化成(株)製)等のセルロース類、ケルザン、同S、同T、同ST、同ASX、同ASXT、同AR、同HP、同G、ケトロールCG、同CG-T、同CG-SFT(以上、三晶(株)製)、サンエース、同S、同C、同C-S、同B-S、同NF、同G、同E-S、同NXG-S、同NXG-C、ビストップD-3000-DF、同D-3000-DF-C(以上、三栄源エフ・エス・アイ(株)製)、コージン、同F、同T、同K(以上、(株)興人製)、エコーガム、同630、同F、同T、同GM、同RD、同SF、同521、同LAX-T、モナートガムGS、同HP、同HS、同KT、ミニットGR、同MA,同ソルト(以上、DSP五協フード&ケミカル(株)製)、ノムコート(日清製油(株)製)、イナゲルV-7、同V-7T(以上、伊那食品工業(株)製)等のキサンタンガム、レオザン(サクシノグルカン、三晶(株)製)、K1A96、BG3810(以上、三晶(株)製)等のウェランガム、K1A112、K7C2433(以上、三晶(株)製)等のラムザンガム、ジャガー8111、同8600、同HP-8、同HP-60、CP-13(以上、三晶(株)製)等のグァーガム類、プルラン(水溶性多糖類、(株)林原商事製)、レオジック250H(日本純薬(株)製)、ジュンロンPW111(日本純薬(株)製)、Uジェリ・CP(昭和電工(株)製)等の架橋型アクリル酸樹脂、カーボポール934、カーボポール940、カーボポール941、カーボポール980、カーボポール981、カーボポール1342、カーボポール1382、カーボポール2984、カーボポール5984、カーボポールETD2020、カーボポールETD2050(ルーブリゾール社製、アメリカ合衆国)等のカルボキシビニルポリマー、EZ-1、ペミュレンTR-1、ペミュレンTR-2(ルーブリゾール社製、アメリカ合衆国)等のアクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、GX-205、NA-010(昭和電工(株)製)等のN-ビニルアセトアミド重合架橋物、等を挙げられる。その他にもサダイユータンガム、アルカシーラン、アルカシーガム、ゼータシーガム、ジェランガム、サイリウムシードガム、タマリンドシードガム、トラガントガム、ガラクトマンナン、カラギナン、ガティガム、カラヤガム、およびそれらの塩等が挙げられる。特にキサンタンガムが、大きな剪断減粘性を持つことから筆記時にインキの粘度が大きく下がりその結果として筆記時のボテや線割れが発生し難いことや、温度変化に対する安定性、pHに対する安定性、塩に対する安定性、更にアシルアミノ酸及び/又はその塩との相性から、特に好ましい。キサンタンガムはキサントモナスの培養液から分離精製されるグルコース、マンノース、グルクロン酸からなる多糖類である。これらの糖類は、糖類を熱処理したり、糖類溶液に高圧をかけてノズル通過時に高剪断をかけたりすることによって、粘度や、粘弾性、剪断減粘性を調整することができる。糖類の使用量は、インキ組成物全量に対し、0.05重量%以上5.0重量%以下が好ましいが、ボールペンとしての性能を保持するため、インキ全量に対して0.1重量%以上2.0重量%以下がより好ましい。インキ組成物全量に対し、0.05重量%以上だと、インキがより漏れにくいので好ましい。一方、インキ組成物全量に対し、5.0重量%以下だと、ペン先部からのインキ吐出がより安定し、書き味がより良好になるので好ましい。
【0017】
ボールホルダーの摩耗防止のために微粒子を添加することもできる。微粒子の具体例としては、アルミナ、炭化珪素、酸化クロム、炭化ホウ素、ジルコン、セン晶石、ヒスイ石、フッ化カルシウム、タングステンカーバイド、シリカ、ダイヤ、ザクロ石、窒化アルミニウム、窒化珪素等が挙げられる。中でもアルミナは糖類と併用することで、より強固な糖類の網目構造を形成できるため好ましい。アルミナ粒子としては、住友化学(株)製の高純度アルミナ AKP‐53(中心粒径0.17μm)、同AKP-50(中心粒径0.20μm)、同AKP-30(中心粒径0.30μm)、同AKP-20(中心粒径0.46μm)、同AKP-3000(中心粒径0.70μm)、同AA-03(中心粒径0.44μm)、同AA-04(中心粒径0.50μm)、同AA-05(中心粒径0.53μm)、同AA-07(中心粒径0.83μm)、フジミインコーポレーテッド(株)製のWA#30000(中心粒径0.35μm)、WA#20000(中心粒径0.45μm)、WA#10000(中心粒径0.60μm)、WA#8000(中心粒径1.2μm)、WA#6000(中心粒径2.0μm)、ハルツォク・ジャパン(株)製のアルミナ粉末 AP005(中心粒径0.05μm)、同AP01(中心粒径0.1μm)、AP03(中心粒径0.3μm)、AP1(中心粒径1μm)等が挙げられる。アルミナの中心粒径は、アルミナをエタノールに加えて、超音波で20分間分散した分散液を、Nanotrac Wave2-EX150(マイクロトラック・ベル(株)製 動的光散乱式粒子径分布測定装置)を用いて測定した。中心粒径とは、粉体をある粒子径から2つに分けたときに、大きい側の粉体と小さい側の粉体が等量となる径のことであり、メジアン径、メディアン径、d50とも呼ばれている値である。これらの微粒子の使用量は、インキ組成物全量に対し、0.001重量%以上10重量%以下が好ましく、0.003重量%以上0.05重量%以下がより好ましい。これらの微粒子は、単独、あるいは2種以上混合して使用しても良い。
【0018】
長距離筆記にわたる手脂筆記安定性を付与するためにスチレン-アクリル酸樹脂エマルションを用いることもできる。具体例としては、BASFジャパン(株)製のジョンクリル7100(固形分酸価51、固形分48%、平均粒径0.10μm)、同390(固形分酸価54、固形分46%、平均粒径0.09μm)、同PDX7326(固形分酸価38、固形分38.5%、平均粒径0.10μm)、同PDX7370(固形分酸価87、固形分42%、平均粒径0.08μm)、同PDX7341(固形分酸価51、固形分49%、平均粒径0.10μm)、同8380(固形分酸価19、固形分41%、平均粒径0.09μm)、同8300(固形分酸価60、固形分43.5%、平均粒径0.09μm)、同74J(固形分酸価51、固形分45%、平均粒径0.08μm)、同8383(固形分酸価23、固形分40%、平均粒径0.09μm)、同PDX7323(固形分酸価87、固形分42%、平均粒径0.08μm)、同PDX7734(固形分酸価89、固形分41.4%、平均粒径0.09μm)、同PDX7775(固形分酸価55、 固形分45%、平均粒径0.08μm)、同7741(固形分酸価52、固形分49%、平均粒径0.10μm)、同PDX7677(固形分酸価70、固形分46%、平均粒径0.01μm)、同7600(固形分酸価60、固形分47%、平均粒径0.09μm)、同775(固形分酸価55、固形分45%、平均粒径0.08μm)、同537J(固形分酸価40、固形分46%、平均粒径0.07μm)、同352J(固形分酸価51、固形分45%、平均粒径0.10μm)、同352D(固形分酸価51、固形分45%、平均粒径0.10μm)、同PDX7145(固形分酸価32、固形分50%、平均粒径0.16μm)、同538J(固形分酸価61、固形分45%、平均粒径0.10μm)、同8311(固形分酸価26、固形分42%、平均粒径0.09μm)、同PDX7667(固形分酸価82、固形分45%、平均粒径0.09μm)、同PDX7700(固形分酸価60、固形分48%、平均粒径0.10μm)、同7641(固形分酸価60、固形分52%、平均粒径0.10μm)、同780(固形分酸価46、固形分48%、平均粒径0.10μm)、同7610(固形分酸価50、固形分52%、平均粒径0.13μm)、同PDX7643(固形分酸価64、固形分51.5%、平均粒径0.14μm)、同PDX7690(固形分酸価85、固形分42.5%、平均粒径0.10μm)、同PDX7511(固形分酸価54、固形分45.0%、平均粒径0.09μm)、同PDX7164(固形分酸価4、固形分47.0%、平均粒径0.17μm)、同PDX7430(固形分酸価20、固形分38.0%、平均粒径0.12μm)、同PDX7440(固形分酸価1、固形分48.5%、平均粒径0.25μm)、同PDX7480(固形分酸価18、固形分44.0%、平均粒径0.10μm)、同PDX7357(固形分酸価59、固形分49.5%)、同PDX7616A(固形分酸価38、固形分44%)、同PDX7732(固形分酸価87、固形分41.4%、平均粒径0.10μm)、同PDX7787(固形分酸価87、固形分41.4%、平均粒径0.10μm)、同PDX7356(固形分酸価78、固形分45.5%)、同PDX7615(固形分酸価51、固形分50.5%、平均粒径0.12μm)、同PDX7158(固形分酸価54、固形分41%)、同PDX7199(固形分酸価31、固形分49.5%、平均粒径0.27μm)、同PDX7538(固形分酸価62、固形分45.5%、平均粒径0.08μm)、同PDX7780(固形分酸価46、固形分48%、平均粒径0.10μm)等が挙げられる。これらのスチレン-アクリル酸樹脂エマルションは、単独、あるいは2種以上混合して使用しても良い。
【0019】
インキの着色材を紙面に定着させるために結合材として各種樹脂を併用することもできる。具体的には、セラック、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、同アミン塩、同アンモニウム塩、α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、同アミン塩、同アンモニウム塩、といった水溶性樹脂を用いることができる。また、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合物等の水不溶性樹脂等を用いることもできる。尚、水不溶性樹脂は、水性エマルジョン形態で使用する。
【0020】
その他、上記各成分以外、従来、筆記具用の水性インキに用いられる種々の添加剤を適宜必要に応じて使用することもできる。例えば、インキの蒸発防止のためにソルビット、キシリット、テトリット、ペンチット、ヘキシット、イノシトール、マルチトール、マルトトリトール、マルトテトラトール、マルトペンタトール、マルトヘキサトール、マルトヘプタトール等の糖アルコールや、尿素、エチレン尿素及びこれらの誘導体を用いることができ、具体的には、PO-10、PO-20、PO-30、PO-40(以上、東和化成工業(株)製)、エスイー30、エスイー100(以上、日研化学(株)製)、ダイヤトールL(以上、サンエイ糖化(株)製)等が挙げられる。また、書き味を向上させるためにポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、オレイン酸やアシルアミノ酸、タウリン、メチルタウリン等のアルカリ金属塩やアミン塩等の潤滑剤を用いることができ、具体的には、NIKKOLサルコシネートCN-30、同サルコシネートCT-30、同サルコシネートLH、同サルコシネートLN、同サルコシネートLN-30、同サルコシネートLK-30、同サルコシネートMN、同サルコシネートOH、同サルコシネートOHV、同サルコシネートPN、同CMT-30、同CMT30-T、同LMT、同LMT-30、同MMT、同PMT、同SMT(以上、日光ケミカルズ(株)製)が挙げられる。
【0021】
さらに、脂肪酸石鹸、n-アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド等のカルボン酸塩類、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、N-アシルスルホン酸塩等のスルホン酸塩類、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩等の硫酸エステル塩類、アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル塩類等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンモノテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、モノヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレン水添加硬化ヒマシ油、モノラウリン酸デカグリセリル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル等のノニオン系界面活性剤、塩化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化ドデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルトニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、モノメチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、トリメチルアミン塩酸塩、塩化ブチルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム等のカチオン系界面活性剤、PEG11メチルエーテルジメチコン、PEG/PPG-20/22ブチルエーテルジメチコン、PEG-9ジメチコン、PEG-3ジメチコン、PEG-9メチルエーテルジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-32メチルエーテルジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ポリグリセリル-3ジシロキサンジメチコン、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等のシリコーン系界面活性剤、パーフルオロブタンスルホン酸塩、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基含有リン酸エステル等のフッ素系界面活性剤等の表面張力調整剤、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2-ベンゾイソチアザリン-3-オン、2-ピリジンチオール1-オキシドナトリウム等の防腐防黴剤を必要に応じて使用することもできる。ベンゾチアゾリン系の防腐剤としては、プロクセルGXLS、プロクセルGXL(ロンザジャパン(株)製)、ピリジンチオール系の防腐剤として、三愛石油(株)製のサンアイバックソジウムオマジン、サンアイバックP-100、ロンザジャパン(株)製のソジウムオマジン等が挙げられる。ベンゾトリアゾール等の防錆剤を組み合わせてもよい。pH調整剤として水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミン、アンモニウム等のアルカリ化剤等も用いることもできる。
【0022】
本発明のボールペン用水性インキ組成物は、温度25℃及び剪断速度0.35/sにおける粘度が50mPa・s以上30000mPa・s以下であり、且つ、ボールペン用水性インキ組成物の温度25℃及び剪断速度35/sにおける粘度が50mPa・s以上3000mPa・s以下に調整することで、書き味、筆跡の均一性、筆跡濃度、インキが玉になって紙面に塗布される所謂インキボテの制御、にじみ抑制、インキ吐出安定性、筆跡の紙への裏抜け制御、筆跡カスレ抑制、乾燥時の書き出し性能、インキ垂れ下がり抑制、ボールペンの不使用時にボールとチップの間隙からのインキ漏れだしを抑制、筆記先端部を上向きで放置した場合のインキの逆流を抑制、顔料等の沈降抑制、分離抑制等の筆記性能や保存安定性が担保されるので好ましい。
【0023】
本発明のインキ組成物を製造するに際しては、従来知られている種々の方法が採用できる。例えば、高剪断力を有するヘンシェルミキサー、プロペラ撹拌機、ホモジナイザー、ターボミキサー、高圧ホモジナイザー等の撹拌機に水や溶剤や染料と多糖類を入れ撹拌分散した後、その他残りの成分を入れ、さらに混合撹拌することにより容易に得られる。また、これらの調製工程において、発生した分散熱をそのまま利用して撹拌したり、熱をかけたり、冷却して撹拌することができる。脱泡機による泡の除去やろ過機による粗大物のろ過等を必要に応じて行っても良い。更に、多糖類の分散性を十分にするためにインキ調製後にエージング工程を行っても良い。これらの種々の混合工程、分散工程、ろ過工程、加熱工程又は冷却工程は、それぞれ単独で行ってもよく、あるいは、2種以上の工程を並行して行ってもよい。
【0024】
また、インキ収容管内のインキの界面位置にインキ逆流防止体を配置して、意図しないインキのペン先と反対側への移動や当該移動によるインキ収容管の後部開口部からのインキ漏れを抑制することができる。インキ逆流防止体を液状の組成物とする場合は、不揮発性および/または難揮発性の液体を使用することができる。具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α-オレフィン、α-オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらの不揮発性及び/または難揮発性の液体は、単独、あるいは2種以上混合して使用しても良い。前記不揮発性および/または難揮発性の液体は、ゲル化剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、かようなゲル化剤としては、表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理したシリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイト等の粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物等が例示できる。そのうち、脂肪酸金属石鹸、脂肪酸デキストリン、アマイド変性ポリエチレンワックスがゲルの耐溶剤性に優れるため好適に用いることができる。その他、ゲル強度や粘度調整、逆流防止体の着色防止、逆流防止機能等のために、アルコール系溶剤やグリコール系溶剤、界面活性剤、樹脂、金属酸化物等の微粒子等を添加することもできる。また、インキ逆流防止組成物の中に、フロート等と称される合成樹脂柱状物等の固体を配置して、見かけ上の逆流防止体組成物の配置される空間を狭くして外力に対して移動しにくくさせ耐衝撃性を向上させても良い。
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明のボールペン用水性インキ組成物を使用するボールペンの幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0026】
図1は、一実施形態に係る筆記具を示す縦断面図である。
図2は、
図1に示す筆記具のリフィル部分を示す縦断面図である。
図2に示すように、リフィル200は、筆記部としてのボールペンチップ1と、ボールペンチップ1(筆記部)に供給されるインキ組成物2が貯留されるインキ収容部としてのインキ収容管3と、を備える。インキ収容管は透明部材を用いても良いし、不透明部材を用いても良いし、インキ収容管にイラスト等を記載したり着色したり、転写フィルム等で加飾をしても良い。インキ収容管に透明部材を用いるとインキの残量やインキの色が視認できるので好ましい。インキ収容管に不透明部材や、紫外線を遮断する透明部材を用いると紫外線によるインキの変質や変色を抑制できるので好ましい。インキ収容管の内径は、1.0mm以上5.0mm以下でも良い。特にインキ収容管の内径が1.0mm以上3.1mm以下であると、インキ逆流防止体の保形性が良好でインキ逆流防止体の流れだしが起きなかったり、インキ逆流防止体に接したフロートを用いなくてもインキ逆流防止体の流れだしが起きなかったりするので好ましい。インキ収容管の厚みは、外径-内径で求める事が出来、インキ収容管の厚みは、0.5mm以上10.0mm以下でも良い。インキ収容管の厚みが1.0mm以上10.0mm以下であるとガスバリア性が高くてインキの溶剤蒸発を防ぐことができ、さらに、2.8mm以上10.0mm以下であると特にガスバリア性が高いのでさらに好ましい。
【0027】
図1及び
図2に示された例示的な実施形態では、筆記具100は、リフィル200と、外装体300と、を備えている。外装体は透明部材を用いても良いし、不透明部材を用いても良い。外装体とインキ収容管に透明部材を用いると、外装を外さなくてもインキの残量やインキの色が視認できるので好ましい。外装体に透明部材を用いて、インキ収容管にイラスト等を記載したり着色したりすると、外装を外さなくてもインキ収容管のイラストや色が視認できるので好ましい。さらに、外装体は透明部材を用いて、インキと同系色のインキ収容管を用いると、筆記せずにインキ色を視認できる。外装に不透明部材や、紫外線を遮断する透明部材を用いると紫外線によるインキの変質や変色を抑制できるので好ましい。外装体は、イラスト等を記載したり着色したり、転写フィルム等で加飾をしても良い。外装体やインキ収容管の部材の中に光輝性顔料であるアルミフレーク、ガラスフレーク、パール顔料等適宜一種もしくは二種以上を使用することもできる。
【0028】
図1に示す実施形態では、外装体300は、軸筒4からなり軸筒4は前軸5と後軸6が螺着によって着脱自在に固定されている。比較的硬質な樹脂材質から形成された前軸5の表面には、グリップ部7として、比較的軟質な樹脂材質(軟質部材)が被覆されている。前記前軸5および後軸6を形成する比較的硬質な樹脂材質の1例としては、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートやアクリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリルスチレン共重合体(AS)、ポリプロピレン等が挙げられ、透明部材を用いても良いし、不透明部材を用いても良い。また、グリップ部7を形成する比較的軟質な樹脂材質(軟質部材)としては、熱可塑性エラストマー、軟質アクリル等が挙げられ、透明部材を用いても良いし、不透明部材を用いても良い。前記グリップ部7は表面に凹凸を設けたグリップや三角形状をしたグリップや外面を多角形状としたグリップや指紋を模した形状のグリップ等、把持した際に滑りにくいグリップが好ましい。後軸6の後部には頭冠8が、後軸6の内孔に挿入されつつ凹凸螺合によって装着・固定され、後軸6の後端より外露した部分は後軸6の外側面に取り付けられたクリップ9の基部表面を覆うように配置されている。また、頭冠8は筒形状をなしており、その内部に形成された溝がデビットカム機構のカム溝となって、内装する回転子10の摺動位置を規制し、ノック11の押し込み操作によって回転子10が回転するに伴いこれに連接されているボールペンリフィル200の前後動位置を規定する。
前記軸筒4内には、ボールペンリフィル200が前後移動可能に配置されている。そのボールペンリフィル200の前方には、コイルスプリング等からなる弾発部材12が配置されており、ボールペンリフィル200を後方に向けて付勢している。ボールペンリフィル200の後端部は前記回転子10の先端部に当接している。つまり、前記ノック11の押圧操作によってボールペンリフィル200が軸筒4の先端開口部から出没する出没式筆記具となっている。
【0029】
図2に示すように、リフィル200は、筆記部材である筆記ボール13及び筆記ボール13を回転自在に抱持するボールホルダー14を有するボールペンチップ1と、貫通孔が形成されたチップホルダー15を介してボールペンチップ1に接続されるインキ収容管3とを有している。ボールホルダー14は、筆記ボール13を、貫通内孔として形成されたインキ通孔の先端開口部より一部突出した状態で抱持する。筆記ボール13は、直径が0.18mm以上2.0mm以下のボールを使用できる。直径が0.3mm以上1.6mm以下のボールは、被筆記面の凹凸の影響を受けにくく滑らかな書き味を得られるので好ましい。特に直径が0.8mm以上1.0mm以下のボールは、滑らかな書き味と筆跡のきれいさを両立できるのでさらに好ましい。
また、インキ収容管3内にはインキ組成物2が収容されており、インキ組成物2の後端界面に接して、インキ組成物2と相溶しないインキ逆流防止体16が配置されており、インキ逆流防止体16に接してフロート17が配置されている。なお、リフィル200のインキ収容管3の後端にインキ組成物2の漏れ出しを防止する尾栓等を配置して、外装体300を使用しないボールペン体とすることもできる。また、キャップ等のペン先保護部材を配置することも可能である。
【0030】
図3は、一実施形態に係るボールペンリフィル200のボールペンチップ1の構成を示す図であり、
図2のI部拡大縦断面図である。
図3に示すボールペンチップ1は、筆記部材としての筆記ボール13を、貫通孔であるインキ通路孔の先端開口部より一部突出した状態でボールホルダー14内にて回転自在に抱持しており、また、筆記ボール13の後方には、この筆記ボール13と接触して中間ボール18が回転可能に配置され、更に、中間ボール18の後方には、弾撥部材であるコイルスプリング19が中間ボール18に接して配置されている。コイルスプリング19は、ボールホルダー14の後方から挿入され、全長を圧縮するように押し込まれて抜け止めされており、その圧縮されたことによる復元力によって中間ボール18を前方に付勢し、この中間ボール18を介して筆記ボール13を前方に付勢している。コイルスプリング19の後端部は、ボールホルダー14の後部内壁面に等間隔に周状に4箇所設けられた凸部20によって受け止められボールホルダー14の内部から抜け止めされている。この凸部20は、ブローチ加工によってボールホルダー14の後端の内壁面を抉り切削片として形成したものである。ブローチ加工の他に、ボールホルダー14の側壁部をポンチ加工等によって凹ませて内壁面に凸部20を生じさせる方法で形成しても良いし、別部材を使用する等、コイルスプリング19の抜け止め方法や形状は適宜選択できる。
【0031】
筆記ボール13は紙面等の被筆記面に押し付けられることにより後方に移動して、後述するボールホルダー14との間に形成される隙間よりインキを流出又はボールの回動に伴い外に搬送して転写するものである。筆記ボール13の大きさは、一般的なボールペンで使用されている直径0.18(mm)以上2.0(mm)以下が使用可能であり、書き味やボールホルダーとの耐磨耗性を考慮すると表面の算術平均高さ(Sa)は、2(nm)以上25(nm)以下が好ましい。筆記ボールの材質としては、タングステンカーバイドを主成分とした超硬合金や、ステンレス、アルミ、スチール等の金属や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリアミドといった樹脂材料や、セラミックス、ガラス等を研磨して製造することができるが、中間ボールとの摺動性や耐磨耗性、またインキによる耐食性を考慮するとステンレス、超硬合金やセラミックスが好ましい。
【0032】
中間ボール18は、筆記ボールの後方のインキ通路孔内に筆記ボールと当接して回転可能に配置されている。中間ボールの大きさは特に限定されるものではないが、インキの流動性を考慮すると中間ボールの直径は筆記ボールの直径に対して30%以上160%以下が好ましく、筆記ボール13との間に生じる摩擦抵抗を考慮すると、表面の算術平均高さ(Sa)は、2(nm)以上25(nm)以下が好ましい。中間ボール18の材質としては、タングステンカーバイドを主成分とした超硬合金や、ステンレス、アルミ、スチール等の金属や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリアミドといった樹脂材料や、セラミックス、ガラス等を研磨して製造することができるが、筆記ボールとの摺動性や耐磨耗性、またインキによる耐食性を考慮すると超硬合金やセラミックスが好ましい。
【0033】
なお、本実施形態では書き味向上を目的として上述したように筆記ボール13とコイルスプリング19の間に中間ボール18を配置したボールペンチップとしてあるが、中間ボール18を介さずコイルスプリング19と筆記ボール13を直接当接させたり、コイルスプリング19の先端にコイル線をそのまま直線状に立ち上げた先端直状部を形成し、その先端直状部と筆記ボール13を当接させたりしてコイルスプリングにて直接筆記ボール13を前方に付勢する構成であっても構わない。
また、未使用時にボールペンチップをキャップによって保護するボールペンの形態、所謂キャップ式ボールペンの形態であれば、チップ先端からのインキ滲み出しやインキの乾燥による筆記カスレといった問題が発生し難いので筆記ボール13を前方付勢し密閉性を確保する必要がなく、コイルスプリング19や中間ボール18を除いた構成でも構わない。
【0034】
次にボールペンチップ1の詳細について、
図3のII部拡大図である
図4にて説明する。ボールホルダー14は、貫通孔であるインキ通路孔を有しており、このインキ通路孔は、先端側より先端を小径にカシメ加工された先端開口部21と、内包突出部22で区画され筆記ボール13が先端開口部21より一部突出した状態で配置される筆記ボール抱持部23、内包突出部22の中心部分に形成される中心孔24、後孔25を有している。
先端開口部21の内縁は、中間ボール18を介してコイルスプリング19によって筆記ボール13が押圧され周接した際の密閉性を向上させる為に、かしめ加工を行う際に筆記ボール13に押し当てる事で筆記ボール13の曲面を転写しつつ鏡面化している。また、内方突出部9に切削により複数本、放射状に等間隔のインキ通溝26が形成されている。このインキ通溝26は、筆記ボール抱持部23へのインキ供給を確実なものとする為に後孔25へ貫通させているが、後孔25に貫通させずに中心孔24の途中で留めてもよい。そして、内方突出部9に筆記ボール13を押し付けることによって凹状のボール受け座部27が形成されており、ボール受け座部27は、筆記時に紙面等に当接して筆記ボール13が後退した時に筆記ボール13の位置を安定させ、不要な振動等の少ない円滑な回転を保障せんとするものであり、筆記ボール13とボール受け座部27とが略面状に接触するような形状としている。また、前記インキ通溝26は、内方突出部9に形成されているボール受け座部27より外側に開口部を有し、筆記ボール抱持部23へのインキ供給を確保しているものである。尚、本実施例では、インキ通溝26は周状に等間隔に5箇所形成しているが、その大きさや数は特に限定されるものではない。
【0035】
図5は、一実施形態に係るペン先にキャップを配置した筆記具を示す縦断面図である。
図5の筆記具は、ペン先を保護するために、ペン先にキャップ28が着脱自在に取り付けられている。キャップ28はクリップ9も備えている。ペン先は、筆記部材であるボールペンチップ1と、貫通孔が形成されたチップホルダー15を介してボールペンチップ1に接続されるインキ収容管3とを有している。筆記部材であるボールペンチップ1として、
図3及び
図4のようなボールペンチップを用いてもよい。比較的硬質な樹脂材質から形成されたインキ収容管3の表面には、グリップ部7として、比較的軟質な樹脂材質(軟質部材)が被覆されている。前記インキ収容管3を形成する比較的硬質な樹脂材質の1例としては、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートやアクリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリルスチレン共重合体(AS)、ポリプロピレン等が挙げられる。また、グリップ部7を形成する比較的軟質な樹脂材質(軟質部材)としては、熱可塑性エラストマー、軟質アクリル等が挙げられる。前記グリップ部7は表面に凹凸を設けたグリップや三角形状をしたグリップや外面を多角形状としたグリップや指紋を模した形状のグリップ等、把持した際に滑りにくいグリップが好ましい。インキ収容管3内にはインキ組成物2が収容されており、インキ組成物2の後端界面に接して、インキ組成物2と相溶しないインキ逆流防止体16が配置されており、インキ逆流防止体16に接してフロート17が配置されている。インキ収容管3の後端にインキ組成物2の漏れ出しを防止する尾栓29を備えている。ボールペンチップ1はキャップ28内部に埋め込まれているパッキン30によって密閉されることで保護されるとともに、気密を維持してインキ乾燥防止されている。パッキン30はニトリルブタジエンラバーやシリコーンゴム、ブチルゴム等の弾性材質から構成されているが、使用するインキの種類や、キャップの材質によって適宜選択可能である。パッキンによってボールペンチップを保護する必要や気密を維持する必要がない場合は、パッキンを用いなくても良い。筆記具の使用時には、外したキャップ28をインキ収容管3の尾栓側に被せて配置することもできる。インキ収容管とグリップ部とチップホルダーとキャップは透明部材を用いても良いし、不透明部材を用いても良い。インキ収容管とグリップ部とチップホルダーとキャップに透明部材を用いると、キャップを外さなくてもインキの残量やインキの色が視認できるので好ましい。キャップに透明部材を用いて、インキ収容管やグリップ部やチップホルダーにイラスト等を記載したり着色したりすると、キャップを外さなくてもインキ収容管のイラストや色が視認できるので好ましい。インキ収容管やグリップ部やチップホルダーやキャップに不透明部材や、紫外線を遮断する透明部材を用いると紫外線によるインキの変質や変色を抑制できるので好ましい。
【0036】
以上においては、ボールペンの一例として出没式のボールペン及び、キャップ式のボールペンを説明したが、幾つかの実施形態に係るボールペンは、圧縮気体等の圧力によって、筆記する際のインキ組成物の吐出を支援するように構成されたボールペンであってもよい。
【実施例0037】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0038】
(インキ組成物の作製)
下記表1~6に示す組成を有する実施例1~66及び比較例1~16のインキ組成物を作製した。
表1~6に示す各組成物の材料としては具体的には下記のものを使用した。
【0039】
<主溶剤>
主溶剤:イオン交換水
<有機溶剤>
溶剤1:エチレングリコール
溶剤2:グリセリン
溶剤3:チオジグリコール
【0040】
<染料>
染料1:ウォーターブラック#256L(黒色染料の14%水溶液、オリエント化学工業(株)製)
染料2:ウォーターイエロー#1(C.I.アシッドイエロー23、オリエント化学工業(株)製)
染料3:ダイワレッドNo103WB(C.I.アシッドレッド87、ダイワ化成(株)製)
染料4:ダイワレッドNo104WB(C.I.アシッドレッド92、ダイワ化成(株)製)
染料5:ウォーターイエロー#6C(C.I.アシッドイエロー42、オリエント化学工業(株)製)
染料6:ウォーターブルー#119(トリフェニルメタン系青色染料、分子式C51H56N3NaO7S2、オリエント化学工業(株)製)
染料7:ダイワレッドNo106WB(C.I.アシッドレッド52、ダイワ化成(株)製)
染料8:ダイワ青色1号(C.I.アシッドブルー9、ダイワ化成(株)製)
染料9:ダイワIJイエロー306H(C.I.ダイレクトイエロー123、ダイワ化成(株)製)
【0041】
<界面活性剤>
活性剤1:BC-2(ポリオキシエチレンセチルエーテル(HLB値8.0)、日光ケミカルズ(株)製)
活性剤2:BC-5.5(ポリオキシエチレンセチルエーテル(HLB値10.5)、日光ケミカルズ(株)製)
活性剤3:BC-7(ポリオキシエチレンセチルエーテル(HLB値11.5)、日光ケミカルズ(株)製)
活性剤4:EMALEX 104(ポリオキシエチレンセチルエーテル(HLB値7.0)、日本エマルション(株)製)
活性剤5:EMALEX 115(ポリオキシエチレンセチルエーテル(HLB値13.0)、日本エマルション(株)製)
活性剤6:EMALEX 125(ポリオキシエチレンセチルエーテル(HLB値15.0)、日本エマルション(株)製)
活性剤7:ノニオンM-204(ポリオキシエチレンミリスチルエーテル(HLB値9.0)、日油(株)製)
活性剤8:BS-4(ポリオキシエチレンステアリルエーテル(HLB値9.0)、日光ケミカルズ(株)製)
活性剤9:プライサーフAL(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル(HLB値5.6)、第一工業製薬(株)製)
【0042】
<キレート剤>
キレート剤1:キレスト110(EDTA、キレスト(株)製)
キレート剤2:キレスト200(EDTAの二ナトリウム塩、キレスト(株)製)
キレート剤3:キレスト3K(EDTAの三カリウム塩、キレスト(株)製)
キレート剤4:CWK(EDTAの四ナトリウム塩、オリエント化学工業(株)製)
キレート剤5:キレストPA(DTPA、キレスト(株)製)
キレート剤6:キレストPC-45(DTPAの三ナトリウム塩、キレスト(株)製)
キレート剤7:キレストP(DTPAの五ナトリウム塩、キレスト(株)製)
キレート剤8:キレストEA(ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、キレスト(株)製)
キレート剤9:キレストNT(ニトリロ三酢酸、キレスト(株)製)
【0043】
<防腐剤>
防腐剤1:サンアイバックソジウムオマジン(2-ピリジンチオール1-オキシドナトリウム(45%溶液)、三愛石油(株)製)
防腐剤2:プロクセルGXL(S)(1,2-ベンゾイソチアゾリンー3-オンの20%ジプロピレングリコール溶液、ロンザジャパン(株)製)
【0044】
<添加剤>
添加剤1:ベンゾトリアゾール
添加剤2:AKP-50(微粒子アルミナ(中心粒径0.20μm)、住友化学(株)製)
添加剤3:AKP-20(微粒子アルミナ(中心粒径0.46μm)、住友化学(株)製)
添加剤4:ハイドロキノンスルホン酸カリウム
添加剤5:サルコシネートOHV(N-オレオイルサルコシン、日光ケミカルズ(株)製)
【0045】
<増粘剤>
多糖類:ケルザンAR(キサンタンガム、三晶(株)製)
【0046】
<pH調整剤>
pH調整剤:水酸化ナトリウム
【0047】
各実施例及び比較例のインキ組成物は、以下のようにして作製した。
<実施例1~66、比較例1~16>
多糖類としてのケルザンARの全量をイオン交換水10重量%にプロペラ撹拌機で撹拌しながら加え、1時間撹拌してケルザンAR水溶液を得た。次いで残りの成分を混合し、1時間加熱撹拌して均一に溶解した後ケルザンAR水溶液を加えて更に2時間撹拌して水性インキ組成物を得た。
【0048】
実施例1~66及び比較例1~16のインキ組成物を
図2に示した例に基づくリフィル200に充填し、
図1に示した例に基づく外装体300に収容して、試験用サンプルボールペンを得た。試験用サンプルボールペンのボールペンチップとしては
図3に示した例に基づき、筆記ボール13の直径が1.0(mm)のボールペンチップを作成した。また、中間ボール18の直径は0.8(mm)とした。筆記ボール及び中間ボールの材質は、タングステンカーバイドを主成分とし、クロム、コバルトをバインダー成分として焼結させた超硬合金とした。
【0049】
試験用サンプルボールペンのチップホルダー15は、
図2に示した例に基づき、ポリブチレンテレフタレート樹脂で成形されており、ボールペンチップ1の後方からインキ収容管3に至る貫通穴4の最小内径は0.75mmとした。
【0050】
試験用サンプルボールペンのインキ収容管3は、
図2に示した例に基づき、ポリプロピレン樹脂の押し出し成型にて成形したパイプを使用しておりその内径は直径4.65mm、厚さ0.75mmのパイプとした。そして、インキ組成物を1.0g、インキ逆流防止組成物を0.1g充填したものとした。インキ逆流防止組成物はポリブテンを微粒子シリカとデキストリン脂肪酸エステルでゲル化して作成した。
【0051】
以上説明した試験用サンプルボールペンを用いて、以下に説明する試験を行った。
【0052】
(書き味の滑らかさ試験)
試験サンプルを、上質紙(JIS P3201筆記用紙A)に(株)トリニティーラボ製のTribo-master(Type:TL201Sa)にて、筆記速度7cm/秒、筆記角度70°、筆記荷重100gfの筆記条件で、それぞれ15cmの直線を筆記させた時の、筆記方向にかかる筆記抵抗値(単位:gf)を測定し、表に記載した。筆記抵抗値が小さいほど滑らかな書き味であると評価した。
【0053】
(逆書きでの線飛び試験)
試験サンプルを、上質紙(JIS P3201筆記用紙A)に(株)トリニティーラボ製のTribo-master(Type:TL201Sa)にて、筆記速度3cm/秒、筆記角度100°、筆記荷重300gfの筆記条件で、それぞれ7cmの直線を筆記させた時の、筆跡の状態を観察し、線飛びがなく筆跡も明瞭であるものを◎、線飛びはないが筆跡に一部乱れがあるものを○、線飛びが発生してインキが転写されなかったものを×と評価し、表に記載した。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
実施例1~66のボールペン用水性インキ組成物は、ポリオキシエチレンセチルエーテルの緻密な疎水膜と多面体構造を形成したエチレンジアミン四酢酸またはジエチレントリアミン五酢酸またはそれらの塩のいずれかから選ばれる少なくとも1種以上のキレート剤の相互作用により、種々の筆記角度においてボールとチップホルダーの間での摩擦が大幅に低減され、ボールの回転が阻害されることなく、逆書きでの筆記でも線飛びが発生しなかった。筆記角度70度での筆記抵抗値も小さく、滑らかな書き味で、種々の筆記角度での筆記に対応できていた。
【0061】
これに対し、比較例1~9は、ポリオキシエチレンセチルエーテルとエチレンジアミン四酢酸またはジエチレントリアミン五酢酸またはそれらの塩のいずれかから選ばれる少なくとも1種以上のキレート剤が配合されておらず、比較例10~12は、本発明の効果を発揮するエチレンジアミン四酢酸またはジエチレントリアミン五酢酸またはそれらの塩のいずれかから選ばれる少なくとも1種以上のキレート剤が配合されておらず、比較例13~16は、ポリオキシエチレンセチルエーテルが配合されていないので、ボールとボールホルダーの間での摩擦が低減されず、ボールの回転が阻害され、被筆記面にインキが転写されず、線飛びが発生してしまった。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0063】
本明細書において、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。