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  • 特開-ガゼット袋、ガゼット袋の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046256
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ガゼット袋、ガゼット袋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 30/16 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
B65D30/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151538
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】500339189
【氏名又は名称】有限会社ハヤシ商店
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】林 勝博
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AA13
3E064BA26
3E064BA30
3E064BC18
3E064EA07
3E064FA01
3E064FA06
3E064GA06
3E064GA10
3E064HN05
(57)【要約】
【課題】破損強度を安定的に高めることができるガゼット袋、およびこのガゼット袋を効率よく製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】ガゼット袋100は、ガゼット体1の一端が幅方向に延びる溶着部2で閉鎖される構造である。ガゼット体1は、一対の正面シート11、11と、一対の正面シート11、11の側端に接続して正面シート11の内側に折り込まれる一対の折込シート12、12を設けたチューブ状のフィルムである。溶着部2は、2層溶着部21、一対の4層溶着部22、22、および一対の肉盛部23、23で構成されている。肉盛部23は断面視で略直角三角形であり、直角を挟む2辺の内の一辺は4層溶着部22に分子レベルでつなぎ合わさっている。また、他の一辺は2層溶着部21に分子レベルでつなぎ合わさっている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波溶着に適する厚さ0.08~1.20mmの樹脂製のシート材からなるガゼット体の一端が、溶着部によって閉鎖されるガゼット袋であって、
前記ガゼット体は、一対の正面シートと、前記一対の正面シートの側端に接続して前記正面シートの内側に折り込まれる一対の折込シートと、を有し、
前記溶着部は、前記一対の正面シートが溶着される2層溶着部と、前記一対の正面シートと前記折込シートが重なり合った状態で溶着される前記2層溶着部よりも厚さの厚い一対の4層溶着部と、一端が前記4層溶着部に接合するとともに前記2層溶着部に接合する一対の肉盛部とを有することを特徴とするガゼット袋。
【請求項2】
前記肉盛部は、分子レベルでつなぎ合わされることで前記4層溶着部、および前記2層溶着部と接合することを特徴とする請求項1に記載のガゼット袋。
【請求項3】
前記肉盛部の厚さは、前記4層溶着部から前記2層溶着部に向かって一定の割合で減少することを特徴とする請求項2に記載のガゼット袋。
【請求項4】
前記2層溶着部の厚さは、前記一対の正面シートの合計の厚さの0.5~0.9倍であり、前記4層溶着部の厚さは前記2層溶着部の厚さの1.1~1.6倍であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のガゼット袋。
【請求項5】
前記ガゼット体は、前記溶着部と交差する方向に延びるシート材溶着部を有することを特徴とする請求項4に記載のガゼット袋。
【請求項6】
高周波溶着に適する厚さ0.08~1.20mmの樹脂製のシート材からなるガゼット体の一端が、溶着部によって閉鎖されるガゼット袋の製造方法であって、
一対の正面シートと、前記一対の正面シートの側端に接続して前記正面シートの内側に折り込まれる一対の折込シートと、を形成するガゼット体形成工程と、
前記ガゼット体の一端が加圧される状態で高周波溶着されることで前記溶着部を形成する高周波溶着工程と、を備え、
前記溶着部は、前記一対の正面シートが溶着される2層溶着部と、前記一対の正面シートと前記折込シートが重なり合った状態で溶着される前記2層溶着部よりも厚さの厚い一対の4層溶着部と、一端が前記4層溶着部に接合するとともに前記2層溶着部に接合する一対の肉盛部と、を有することを特徴とするガゼット袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波溶着に適する樹脂製のシートからなるガゼット袋、およびガゼット袋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の平面シートの両側面にガゼット部が設けられた、いわゆるガゼット袋は、内容物を収納しないときはガゼット部を扁平にした状態で保管することができ、内容物を収納するときはガゼット部を開放することで、自立した状態で大容量の内容物を収容できる袋として使用し得るものである。
【0003】
具体的には、ガゼット袋に肥料などの粒状物や液体を充填すると、両側面に設けられたガゼット部は折込まれた状態が開放されて幅が広くなり、同時に底部は扁平状に拡がる。このことによって、ガゼット袋は、内容物を収納した状態で、自立して載置でき、また、積載面積を小さくできるので、保管や陳列が便利となるとともに、輸送時の取り扱いが容易となる。さらに、内容物の出し入れも容易となる。
【0004】
しかしながら、ガゼット袋は、折込まれたガゼット部の先端と平面シートとの結節点を頂点としてガゼット部を三角形状に押し広げることで扁平状の底部を形成しているので、内容物を充填すると、この結節点に大きな力が直接加わることになる。そのため、結節点を起点として底部が破れるという問題があった。また、ヒートシールで溶着法によって溶着することが一般的であり、厚さの厚いシートを用いてガゼット袋を製作することは困難であった。
【0005】
底部に位置する折込み交点部からの破袋を防止できるガゼット袋として、特許文献1では、筒状形態の軟包材における両側部にひだ2,2を形成した状態で一端に直線状の接着部3を形成し、 該接着部3から内側寄りに所定間隔を置いた直線部分αで接着部3を含む領域を折り返してテープ5で固定し、直線部分αとひだ2,2先端の交点を折込み交点部A,Bとしてひだ2,2の下方を三角形状に押し広げて底部を形成するガゼット袋が提案されている。
【0006】
特許文献2では、熱可塑性合成樹脂フィルムからなるチューブの両側縁をL(cm)まち状に折り込んでガゼット部とし、これをチューブの長手方向と直交する方向の底シール線で熱融着して底シール部を形成することによって得られる袋であって、底シール線上において4葉の熱可塑性合成樹脂フィルムが重なり合って熱溶着された部分と、2葉の熱可塑性合成樹脂フィルムが重なり合って熱溶着された部分の境界点上にスポット的にヒートシールがなされているガゼット袋が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5-85550号公報
【特許文献2】特開2002-154554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1で提案されているガゼット袋は接着部を含む領域を折り返してテープで固定した構成であることから、テープの剥がれによって破損する可能性が高い。特許文献2で提案されているスポット的なヒートシールは、底シール線上において4葉の熱可塑性合成樹脂フィルムが重なり合って熱溶着された部分と、2葉の熱可塑性合成樹脂フィルムが重なり合って熱溶着された部分の境界点上に位置することから、4葉の熱可塑性合成樹脂フィルムが重なり合って熱溶着された部分と、2葉の熱可塑性合成樹脂フィルムが重なり合って熱溶着された部分を均一に熱溶着することは困難である。さらに、特許文献1、2で提案されているガゼット袋は、シートの溶着に新たな構成または工程、具体的には、テープの固定やスポット的なヒートシールが追加されたものである。
【0009】
本発明は、これらの問題点に着目してなされたものであり、接着部の破損強度を安定的に高めることができるガゼット袋、およびこのガゼット袋を効率よく製造できる製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための発明は、高周波溶着に適する厚さ0.08~1.20mmの樹脂製のシート材からなるガゼット体の一端が、溶着部によって閉鎖されるガゼット袋であって、ガゼット体は、一対の正面シートと、一対の正面シートの側端に接続して正面シートの内側に折り込まれる一対の折込シートと、を有し、溶着部は、一対の正面シートが溶着される2層溶着部と、一対の正面シートと折込シートが重なり合った状態で溶着される2層溶着部よりも厚さの厚い一対の4層溶着部と、一端が4層溶着部に接合するとともに2層溶着部に接合する一対の肉盛部と、を有することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、2層溶着部と4層溶着部は溶着されるとともに、肉盛部を介して接合しているので、ガゼット袋として最も大きな力が負荷されると考えられる2層溶着部と4層溶着部の接続位置の強度を増強できる。これにより、当該位置における破損を免れ得る。また、シートの厚さを、ガゼット袋で一般的に用いるシートの厚さよりも厚い0.08~1.20mmの範囲で設定することで、ウナギなどの魚介類、あるいは肥料などの粒状体などの重量物の運搬用の袋として用いることができる。
【0012】
好ましくは、肉盛部は、分子レベルでつなぎ合わされることで4層溶着部、および2層溶着部と接合することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、肉盛部は、分子レベルでつなぎ合わされることで4層溶着部、および2層溶着部と接合するので、肉盛部は、4層溶着部と2層溶着部に対して、より一層強固に接合する。
【0014】
好ましくは、肉盛部の厚さは、4層溶着部から2層溶着部に向かって一定の割合で減少することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、肉盛部の厚さは、4層溶着部から2層溶着部に向かって一定の割合で減少するので4層溶着部と2層溶着部の接続位置における応力の集中を緩和できる。
【0016】
好ましくは、2層溶着部の厚さは、一対の正面シートの合計の厚さの0.5~0.9倍であり、前記4層溶着部の厚さは前記2層溶着部の厚さの1.1~1.5倍であることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、4層溶着部は2層溶着部に比べて大きく圧縮された状態で溶着しているので、4層溶着部と2層溶着部の接続位置における応力の集中をより一層緩和できる。また、肉盛部形成のための樹脂の流動が円滑になる。
【0018】
好ましくは、ガゼット体は、溶着部と交差する方向に延びるシート材溶着部を有することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、ガゼット体は、溶着部と交差する方向に延びるシート材溶着部を有するので、平面形状のシートにシート材溶着部を設けることでガゼット体を作製できる。これにより、継ぎ目のないチューブ状のガゼット体に比べて小ロットの生産が可能となる。
【0020】
上記課題を解決するための他の態様の発明は、高周波溶着に適する厚さ0.08~1.20mmの樹脂製のシート材からなるガゼット体の一端が、溶着部によって閉鎖されるガゼット袋の製造方法であって、一対の正面シートと、一対の正面シートの側端に接続して正面シートの内側に折り込まれる一対の折込シートと、を形成するガゼット体形成工程と、ガゼット体の一端が加圧される状態で高周波溶着されることで溶着部を形成する高周波溶着工程と、を備え、溶着部は、一対の正面シートが溶着される2層溶着部と、一対の正面シートと折込シートが重なり合った状態で溶着される2層溶着部よりも厚さの厚い一対の4層溶着部と、一端が4層溶着部に接合するとともに2層溶着部に接合する一対の肉盛部と、を有することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、溶着部は加圧されて、高周波溶着によって溶着することで形成されるので、重層状態が異なるガゼット体を一回の動作で一括して溶着できる。特に肉盛部を設けることで、2層溶着部と4層溶着部の接続位置において強固な接合が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態におけるガゼット袋の斜視図である。
図2】溶着部の部分断面図である。
図3】(a)は本実施形態の製造方法を説明する正面図である。(b)は製造方法の変形例である。
図4】ガゼット袋の変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1、2を参照して本発明のガゼット袋100の実施形態を詳述する。
【0024】
ガゼット袋100は、ガゼット体1の一端が幅方向に延びる溶着部2で閉鎖される構造である。本実施形態では、他端は開口されているがこれに限定されるものではない。
【0025】
ガゼット体1は、一対の正面シート11、11と、一対の正面シート11、11の側端に接続して正面シート11の内側に折り込まれる一対の折込シート12、12を設けたチューブ状のフィルムである。本実施形態では、折込シート12の頂部にシート材溶着部13が設けられているが、フィルムの継ぎ目の有無については、限定されるものではない。すなわち、継ぎ目のないチューブであってもよいし、フラットなフィルム同士の側端を溶着等により接合してチューブ状にしたものであってもてもよい。
【0026】
フィルムの素材は、高周波溶着に適するものであることが好ましい。例えば、塩化ビニール樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン樹脂、GPET樹脂等が挙げられる。GPETはTerephthalic Acid(TPA)とエチレングリコール(EG)の反応により生産されるポリエステルに、エチレングリコール(EG)の一定含量をCyclohexane Dimethanol(CHDM)で代替した、グリコール変性ポリエステルである。フィルムは透光性、半透光性のいずれであってもよい。
【0027】
ガゼット袋100のフィルムの厚さは、0.08~1.2mmであることが好ましい。より好ましくは、0.08~1.0mmである。フィルム厚さ0.08mmは、ヒートシール法による溶着が、効率的に行うことができないと考えられる厚さである。一方、高周波溶着を用いることで効率的に溶着を行うことができる厚さである。フィルム厚さ1.2mmは、ガゼット袋100として保管管理を効率的に行うことができると考えられる最大の厚さである。本実施形態では、フィルム厚さとして0.15mmが例示される。
【0028】
ガゼット袋100の形状は、幅33cm、高さ78cm、折込部の幅11cmが例示されるが、限定されるわけではない。
【0029】
ガゼット体1の一端は、シート材溶着部13が延びる方向に対して直角な方向にほぼ一定幅で延びる溶着部2によって閉鎖されている。本実施形態では、溶着部2の平均幅として、3mmが例示されるが、限定されるわけではない。溶着部2の平均幅は、シートの厚さ、溶着の作業条件、ガゼット袋100に求められる強度などを勘案して適宜に定めればよい。
【0030】
溶着部2は、2層溶着部21、一対の4層溶着部22、22、および一対の肉盛部23、23で構成されている。2層溶着部21は、2層に積層された一対の正面シート11(以後、2層積層シートLA2と記す)が溶着されており、溶着部2の中央部に位置している。4層溶着部22は、一対の正面シート11、および折込シート12によって4層に積層されたシート(以後、4層積層シートLA4と記す)が溶着されており、2層溶着部21の端部に分子レベルでつなぎ合わされている。
【0031】
肉盛部23は断面視で略直角三角形であり、直角を挟む2辺の内の一辺は4層溶着部22に分子レベルでつなぎ合わされている。また、他の一辺は2層溶着部21に分子レベルでつなぎ合わされている。肉盛部23は、高周波溶着によって4層溶着部22が形成される過程で、4層積層シートLA4の一部が溶融して流出したものが、2層溶着部21に積層されたものである。すなわち、2層溶着部21、4層溶着部22と同様の成分で構成されている。
【0032】
肉盛部23を設けることで、2層溶着部21と4層溶着部22との接続位置における断面形状の急激な変化が緩和されて、当該位置での応力集中を緩和できる。また、肉盛部23は2層溶着部21および4層溶着部22の双方に分子レベルでつなぎ合わされているので当該位置での強度を増強することができる。これにより、ガゼット袋100の強度上の弱点とされる2層溶着部21と4層溶着部22との接続位置において、耐荷重性能の向上を図り得る。
【0033】
2層溶着部21の厚さt1と2層積層シートLA2の厚さT1の比は、0.5~0.9であることが好ましい。本実施形態では、2層溶着部21の厚さとして0.21mm、2層溶着部21の厚さt1と2層積層シートLA2の厚さの比として0.7が例示されるが、限定されるわけではない。
【0034】
4層溶着部22の厚さt2は、2層溶着部21の厚さt1の1.1~1.5倍であることが好ましい。本実施形態では、4層溶着部22の厚さt2は、2層溶着部21の厚さt1の1.3倍であることが例示されるが、限定されるわけではない。
【0035】
本実施形態で例示されるガゼット袋100は、重量物の運搬が可能となる。例えば、ウナギ等の魚介類の収容・運搬、粒状の肥料などの重量物の収容・運搬に用いることができるが、これに限定されるわけではない。
【0036】
図3(a)を参照して、本実施形態のガゼット袋100の製造方法を説明する。
【0037】
2枚のシートの側端部を高周波溶着によって溶着する。2枚のシートがシート材溶着部13を介して分子レベルでつなぎ合わされることで、チューブ形状のシートが製造される。チューブ状のシートの製造方法は、特に限定されない。押出成形法によって継ぎ目のないチューブ状のシートを製造してもよいし、フラットなフィルムを張り合わせてチューブ状としてもよい。
【0038】
チューブ状のシートを折り畳んで、一対の正面シート11、11と、一対の正面シート11、11の側端に接続して正面シート11の内側に折り込まれる一対の折込シート12、12を有するガゼット体1を準備する。
【0039】
ガゼット体1の一端を金型3、4で加圧しながら高周波溶着によって溶着する。具体的には、2層積層シートLA2、および4層積層シートLA4を同時に加圧しながら高周波溶着する。
【0040】
高周波溶着は、上下の金型3、4でガゼット体1の一方の端部を押え、一定の圧力をかけながら押圧面でガゼット体1を押圧する。同時に、高周波電界を加えて数秒間で所定温度(例えば、120℃~130℃)に昇温させ、溶着部2を半液相状態まで溶かしてつなぎあわせる。これにより各シートは分子レベルでつなぎ合わされる。高周波溶着によって半液相状態まで溶かされることで、4層積層シートLA4を構成していた樹脂の一部は、2層積層シートLA2の方向に流動する。同時に、2層積層シートLA2が加圧されて、2層溶着部21が形成されるとともに肉盛部23が形成される。
【0041】
なお、本実施形態で用いる金型3の押圧面は、1つの平坦面31で構成されているが、図3(b)に示す通り、中央部に平坦面231から突出する突出面232を設けるとともに、平坦面231と突出面232に接続する傾斜面233を設けた金型203としてもよい。この場合、突出面232、傾斜面233の形状を適宜に設定することで、2層積層シートLA2と、4層積層シートLA4の加圧を均等に設定することができる。また、肉盛部23の形成も容易となる。
【0042】
その後、適当な時期に高周波電界を断って加熱を止め、圧締状態を保持したまま溶着部2を冷却する。冷却後に圧締状態を開放する。このとき、圧縮力が開放されることで、少なくとも2層溶着部21、4層溶着部22の厚さは、リバウンドして圧締状態のときの厚さよりも厚くなる。4層溶着部22は、2層溶着部21に比べて大きな圧力が負荷されていたことから、4層溶着部22のリバウンド量は、2層溶着部21のリバウンド量に比べて大きくなる。
【0043】
樹脂シートを溶着する他の方法として、他の熱源によって加熱された金型を用いてシートの表面から熱伝導によって加熱する方法、いわゆるヒートシール法がある。ヒートシール法では、シート内の温度分布は熱板に接する表面の温度がもっとも高く、内部に向かうに従って低下し、中心の接合部の温度がもっとも低くなる。そのため、適切に溶着するには、中心部の温度を溶着可能な軟化温度にしなければならず、金型の温度は軟化温度以上に高くする必要がある。本実施形態のような厚さが厚いシートを溶着する場合、シートを冷却する際に、溶着面の収縮やシートの加熱部と非加熱部の温度差による歪みにより、溶着強度が低下する可能性は否定できない。
【0044】
本実施形態のような積層数が異なるシートをヒートシール法で溶着する場合、被溶着部の厚さが異なることから、溶着部2を均等に溶着することは困難である。4層溶着部22を適切に溶着させるとき、2層溶着部21に過剰な熱量が提供されることとなり、樹脂シートが金型に付着するなどの不具合が発生する。また、2層溶着部21を適切に溶着させるとき、4層溶着部22に供給される熱量は不足し十分な溶着が期待できない。さらに、ヒートシール法で溶着する場合は、シート厚さに上限(0.05mm)が存在していて重量物の適用は困難である。
【0045】
一方、高周波溶着では樹脂の誘電体損失によりシートそのものが均一に発熱する。さらに、金型自体は発熱しないので、ヒートシール法とは逆に、シート内の温度分布は中心部がもっとも高く、金型に接する部分でもっとも低くなる。したがって、本実施形態のように、重層数が異なる厚さが厚いシートを溶着する場合でも、溶着に対しては理想的な温度分布が得られる。さらに、圧締した状態のままで中心部の温度を冷却することができるので、シートの収縮や歪みがほとんど発生しない。また、溶融できるシートとして厚さ0.05mmを超えるもの(例えば0.08~1.20mm)も可能である。
【0046】
本実施形態は例示であり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で改変できることは勿論であり、それらの改変、均等範囲も、本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、図4に示す通り、シート材溶着部213をガゼット体201の中央部に設定したガゼット袋200としてもよい。また、1枚のシートの両端部を高周波溶着により接合してチューブ形状としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係るガゼット袋は、厚みのあるシートを採用することで、適用範囲が広がり、様々な種類の重量物の収納、運搬に用いることができる。また、高周波溶着によって積層状態が異なる範囲を一度に溶着することで、均一な溶着部を有する強度に優れたガゼット袋を簡単に製造できるので、産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0048】
100、200 :ガゼット袋
1、201 :ガゼット体
2 :溶着部
11 :正面シート
12 :折込シート
21 :2層溶着部
22 :4層溶着部
23 :肉盛部
図1
図2
図3
図4