(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046261
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】車両のダクト構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20240327BHJP
B60K 11/06 20060101ALI20240327BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240327BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240327BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20240327BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60K11/06
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151546
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】坂ノ上 聡志
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H031
【Fターム(参考)】
3D038AA09
3D038AB01
3D038AC04
3D235AA01
3D235BB17
3D235BB19
3D235BB20
3D235BB36
3D235BB45
3D235CC15
3D235DD23
3D235FF12
3D235FF43
3D235HH02
5H031AA09
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】フロア敷設部材の形状を複雑にすることなく吸気ダクト及び空調ダクトを配置することができる車両のダクト構造を提供する。
【解決手段】車両のダクト構造1は、車両の車室5内に開口する吸気口部22を有し、車両に搭載されたバッテリ(強電バッテリ10)に車室5内の空気を供給するための吸気ダクト20と、車室5内に空調用空気を供給するための空調ダクト(ヒータダクト30)とを備える。吸気ダクト20及びヒータダクト30は、強電バッテリ10よりも車幅方向外側に配置され、吸気ダクト20は、少なくとも一部がヒータダクト30と平面視において重なるように、ヒータダクト30の上方に配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内に開口する吸気口部を有し、前記車両に搭載されたバッテリに前記車室内の空気を供給するための吸気ダクトと、
前記車室内に空調用空気を供給するための空調ダクトと、を備え、
前記吸気ダクト及び前記空調ダクトは、前記バッテリよりも車幅方向外側に配置され、
前記吸気ダクトは、少なくとも一部が前記空調ダクトと平面視において重なるように、前記空調ダクトの上方に配置される、
車両のダクト構造。
【請求項2】
前記吸気ダクトの前記吸気口部は、上向きに開口する、請求項1に記載の車両のダクト構造。
【請求項3】
前記吸気ダクトは、前記吸気口部から前記吸気ダクトの内部に浸入した液体を溜めることができる凹部を有する、請求項1又は2に記載の車両のダクト構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のダクト構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1においては、バッテリをフロアトンネルとサイドシルとの間に配置し、バッテリが充放電する際に発する熱を外部に排出するための排出ダクト、及び車室を空調するための空調風が流通する空調ダクトを、バッテリの車両外側に配置する。また、特許文献1においては、バッテリよりも車両外側で、排出ダクトを空調ダクトの下方に配置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両に搭載されたバッテリに車室内の空気を供給するための吸気ダクトを前述の排出ダクトの位置に配置する場合には、吸気ダクトが空調ダクトの下方に配置されるために以下のような問題が生じ得る。すなわち、吸気ダクトを空調ダクトの下方に配置すると、吸気口部を配置するための縦壁部(段差部)をフロア敷設部材(フロアカーペット、樹脂製のフロア材等)に形成する必要があり、そのフロア敷設部材の形状が複雑になり得る。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、フロア敷設部材の形状を複雑にすることなく吸気ダクト及び空調ダクトを配置することができる車両のダクト構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係わる車両のダクト構造は、車両に搭載されたバッテリに車室内の空気を供給するための吸気ダクトと、車室内に空調用空気を供給するための空調ダクトとを備える。吸気ダクトは、少なくとも一部が空調ダクトと平面視において重なるように、空調ダクトの上方に配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フロア敷設部材の形状を複雑にすることなく吸気ダクト及び空調ダクトを配置することができる車両のダクト構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係わる車両のダクト構造の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の車両のダクト構造の概略的な平面図である。
【
図4】
図4は、車両の側面衝突後の吸気ダクト及びヒータダクトを二点鎖線で示す
図3と同等部位の断面図である。
【
図5】
図5は、他の実施形態に係わる車両のダクト構造の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
[車両のダクト構造の構成]
図1~
図4を参照して、本実施形態に係わる車両のダクト構造1の構成を説明する。なお、図面において、車両前側をFR、車両後側をRR、車幅方向右側をRH、車幅方向左側をLHと示す。
【0011】
図1~
図3に示すように、車両のフロアパネル2には、車両に搭載されたバッテリの一例である強電バッテリ10が配置される。強電バッテリ10は、車幅方向中央よりも車幅方向外側に配置される。本実施形態では、強電バッテリ10は、図示しないセンターコンソールの構造部材よりも車幅方向外側に配置される。
【0012】
また、車両のフロアパネル2には、車両前後方向に間隔をおいて一対のクロスメンバ3,4が配置され、これら一対のクロスメンバ3,4の間に強電バッテリ10が配置される。すなわち、強電バッテリ10は、車両前方側のクロスメンバ3よりも車両後方に配置され、且つ、車両後方側のクロスメンバ4よりも車両前方に配置される。
【0013】
本実施形態では、強電バッテリ10は、図示しない前部座席(運転席又は助手席)の下方に配置される。強電バッテリ10の車幅方向外側の端部には、バッテリ冷却吸気路を構成し、インレットダクトとも称される吸気ダクト20が配置される。その一方、強電バッテリ10の車幅方向内側の端部には、バッテリ冷却排出路を構成し、アウトレットダクトとも称される排気ダクト(図示せず)が配置される。
【0014】
すなわち、強電バッテリ10を冷却するために強電バッテリ10に車室5内の空気を供給するための吸気ダクト20は、強電バッテリ10よりも車幅方向外側に配置される。その一方、強電バッテリ10から空気を排出するための排気ダクトは、強電バッテリ10よりも車幅方向内側に配置される。この排気ダクトは、本実施形態では、車幅方向中央に配置される。
【0015】
吸気ダクト20は、車両に搭載された強電バッテリ10に車室5内の空気を供給するためのものであり、内部に流路21が形成される。本実施形態では、吸気ダクト20は、車幅方向に沿って延在する第1ダクト20aと、屈曲部20bを介して第1ダクト20aに接続され、上下方向に沿って延在する第2ダクト20cとを有して構成される。このため、本実施形態の吸気ダクト20は、車両前後方向視においてL字状に形成されている。
【0016】
また、本実施形態では、車両前方側のクロスメンバ3の上面3aよりも低い位置において、吸気ダクト20の第1ダクト20aが強電バッテリ10のバッテリケース11に接続されている(
図3参照)。さらに、本実施形態では、第1ダクト20aがバッテリケース11に設けられた貫通孔部に挿通された状態で、吸気ダクト20はバッテリケース11に対して固定されている。このため、バッテリケース11の貫通孔部の内方に位置する第1ダクト20aの部分である連通部分26において、吸気ダクト20と強電バッテリ10のバッテリケース11とが連通している(
図3参照)。
【0017】
吸気ダクト20は、車両の車室5内と連通する吸気口部22を有し、この吸気口部22は上向きに開口しており、図示しないフロア敷設部材(フロアカーペット、樹脂製のフロア材等)を貫通して、車室5内と吸気ダクト20の内部の流路21とが連通する。吸気ダクト20の吸気口部22には、網目状又は格子状のフィルタ23を有する蓋部24が車室5側から装着されており、ゴミ等の異物が吸気ダクト20の内部の流路21に入らないようにしている。
【0018】
吸気ダクト20は、吸気口部22から吸気ダクト20の内部の流路21に浸入した液体(傘に付着した水滴等)を溜めることができる容積部としての凹部25を有する。吸気ダクト20の凹部25は、強電バッテリ10のバッテリケース11との連通部分26(
図3参照)よりも下方に配置される。本実施形態では、吸気ダクト20の屈曲部20bの一部を下方に膨出させて凹部25を形成している。すなわち、本実施形態では、液体を溜める容積部としての凹部25は、吸気口部22及び蓋部24の直下方に配置されている。
【0019】
吸気ダクト20の凹部25は、吸気口部22から吸気ダクト20の内部の流路21に浸入した液体を溜めることができる構造であればよく、
図3に示されるものには限定はされない。
【0020】
ある実施形態では、
図5に示す車両のダクト構造1Aにおける吸気ダクト20Aの凹部25Aのように、吸気ダクト20Aの内部に壁となる構造体27を設けて液体が強電バッテリのバッテリケース11に流れ込まないようにしてもよい。この場合においても、吸気ダクト20Aの凹部25Aは、強電バッテリ10のバッテリケース11との連通部分26Aよりも下方に配置される。
【0021】
また、強電バッテリ10の車幅方向外側の端部には、強電バッテリ10の異常時等に発生し得るガスを車両外部に排出するためのガス抜きチューブ40,41が配置される。このガス抜きチューブ40,41は、デガスチューブとも称されるものであり、本実施形態では、車両前後方向に間隔をおいて一対に配置される。これら一対のガス抜きチューブ40,41の間には、吸気ダクト20が配置される。すなわち、吸気ダクト20は、車両前方側のガス抜きチューブ40よりも車両後方に配置され、且つ、車両後方側のガス抜きチューブ41よりも車両前方に配置される。
【0022】
ガス抜きチューブ40,41は、強電バッテリ10の異常時等に発生し得るガスを車両外部に排出するためのものであり、内部に流路(図示せず)が形成される。本実施形態では、ガス抜きチューブ40,41は、車幅方向に沿って延在する第1チューブ40a,41aと、屈曲部40b,41bを介して第1チューブ40a,41aに接続され、上下方向に沿って延在する第2チューブ40c,41cとを有して構成される。このため、本実施形態のガス抜きチューブ40,41は、車両前後方向視において逆L字状に形成されている。
【0023】
また、ガス抜きチューブ40,41は、車両外部と連通する排出口部40d,41dを有し、この排出口部40d,41dは下向きに開口しており、フロアパネル2を貫通して、車両外部とガス抜きチューブ40,41の内部の流路とが連通する。
【0024】
これら一対のガス抜きチューブ40,41は、例えば、シリコンゴム等の弾性材料から構成される。このため、一対のガス抜きチューブ40,41は、後述する車両の側面衝突時の衝撃吸収にはほとんど影響しない。
【0025】
さらに、強電バッテリ10よりも車幅方向外側には、空調用空気を供給するための空調ダクトとしてのヒータダクト30が配置される。このヒータダクト30は、図示しないブロアーからの暖房用空気を送風するためのものであり、内部に流路31が形成される。ヒータダクト30の中間部分32は、車両前方側のクロスメンバ3の貫通孔3bを通過し、ヒータダクト30の下流端部33は、車両後方側のクロスメンバ4の上面4aの上方を通過する。また、ヒータダクト30は、下流端部33に吹出口部(図示せず)を有し、この吹出口部が、例えば後部座席の足元の位置に配置され、吹出口部から後部座席の足元に暖房用空気が吹き出される。
【0026】
強電バッテリ10のバッテリケース11は、車両の側面衝突時の荷重入力により潰されない車体領域に配置され、吸気ダクト20及びヒータダクト30は、車両の側面衝突時の荷重入力により潰される車体領域である所謂クラッシャブルゾーンに配置される。
【0027】
すなわち、吸気ダクト20及びヒータダクト30は、強電バッテリ10よりも車幅方向外側に配置される。また、吸気ダクト20は、少なくとも一部がヒータダクト30と平面視において重なるように、ヒータダクト30の上方に配置される。本実施形態では、吸気ダクト20は、ヒータダクト30の直上方に配置されており、吸気ダクト20の車両前後方向の幅全体に亘ってヒータダクト30と平面視において重なっている。また、本実施形態では、吸気ダクト20とヒータダクト30とが平面視において重なる箇所においては、吸気ダクト20の車幅方向外側の側面20dが、ヒータダクト30の車幅方向外側の側面35よりも車幅方向内側に位置している(
図3参照)。さらに、本実施形態では、ガス抜きチューブ40,41の第2チューブ40c,41c及び排出口部40d,41dは、少なくとも吸気ダクト20とヒータダクト30とが平面視において重なる箇所よりも車幅方向外側に配置されている。
【0028】
[吸気ダクト及びヒータダクトによる衝撃吸収構造]
次に、
図4を参照して、車両の側面衝突時における吸気ダクト20及びヒータダクト30による衝撃吸収構造を説明する。
【0029】
図4に示すように、車両に対して図中左側から図中右側(車幅方向内側)に側面衝突による荷重Pが入力されたとする。
【0030】
車両に対して車幅方向内側に側面衝突による荷重Pが入力された際に、この荷重Pの入力により吸気ダクト20及びヒータダクト30が横方向(車幅方向)に潰されることにより、衝突時の衝撃エネルギが吸収され得る。
【0031】
吸気ダクト20とヒータダクト30とを車幅方向に並べて配置すると、車両の側面衝突の際につぶれ残り量(吸気ダクト20のつぶれ残り量とヒータダクト30のつぶれ残り量との和)が多くなり、衝突時の衝撃エネルギを有効に吸収できないおそれがある。
【0032】
本実施形態では、吸気ダクト20とヒータダクト30とを縦方向(上下方向)に並べて配置することにより、車両の側面衝突の際のつぶれ残り量を低減することができ、衝突時の衝撃エネルギを有効に吸収することが可能になる。
【0033】
[作用効果等]
以下に、本実施形態に係わる作用効果を説明する。
【0034】
(1)車両のダクト構造1は、車両の車室5内に開口する吸気口部22を有し、車両に搭載されたバッテリ(強電バッテリ10)に車室5内の空気を供給するための吸気ダクト20と、車室5内に空調用空気を供給するための空調ダクト(ヒータダクト30)とを備える。吸気ダクト20及びヒータダクト30は、強電バッテリ10よりも車幅方向外側に配置され、吸気ダクト20は、少なくとも一部がヒータダクト30と平面視において重なるように、ヒータダクト30の上方に配置される。
【0035】
吸気ダクト20をヒータダクト30の下方に配置すると、吸気口部22を配置するための縦壁部(段差部)をフロア敷設部材に形成する必要があり、そのフロア敷設部材の形状が複雑になり得る。本実施形態では、吸気ダクト20をヒータダクト30の上方に配置することにより、前述のような縦壁部(段差部)をフロア敷設部材に形成する必要がなく、フロア敷設部材の形状の複雑化を回避することができる。
【0036】
吸気ダクト20とヒータダクト30とを車幅方向に並べて配置すると、車両の側面衝突の際につぶれ残り量(吸気ダクト20のつぶれ残り量とヒータダクト30のつぶれ残り量との和)が多くなり、衝突時の衝撃エネルギを有効に吸収できないおそれがある。本実施形態では、吸気ダクト20とヒータダクト30とを縦方向(上下方向)に並べて配置することにより、車両の側面衝突の際のつぶれ残り量を低減することができ、衝突時の衝撃エネルギを有効に吸収することが可能になる。
【0037】
(2)吸気ダクト20の吸気口部22は、上向きに開口する。
【0038】
吸気ダクト20の吸気口部22が横向きに開口していると、網目状又は格子状のフィルタ23を有する蓋部24を横方向から吸気口部22に対して組み付けることになり、蓋部24の全体に対して均等に力をかけ難く作業性が悪いことがある。本実施形態では、吸気ダクト20の吸気口部22が上向きに開口しているため、フィルタ23を有する蓋部24を上方から吸気口部22に対して組み付けることができ、蓋部24の全体に対して均等に力をかけ易く作業性の悪化を抑制することができる。
【0039】
(3)吸気ダクト20は、吸気口部22から吸気ダクト20の内部に浸入した液体を溜めることができる凹部25を有する。
【0040】
本実施形態では、吸気ダクト20が内部に液体を溜めることができる構造になっているため、液体(傘に付着した水滴等)が吸気ダクト20の内部に侵入しても、その液体が強電バッテリ10のバッテリケース11の内部まで流れ込むことを抑制することができる。
【0041】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0042】
1,1A 車両のダクト構造
5 車室
10 強電バッテリ(バッテリ)
20 吸気ダクト
22 吸気口部
25,25A 凹部
30 ヒータダクト(空調ダクト)