(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046269
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】草刈りコードの繰り出し装置
(51)【国際特許分類】
A01D 34/416 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
A01D34/416 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151564
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】504350832
【氏名又は名称】株式会社斎藤撚糸
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 憲資
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083BA02
2B083CA12
2B083CB07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】草刈りコードを予め巻回しておき、草刈りコードが損耗した際に、草刈りコードを繰り出して、草刈りを行う装置において、装置の厚みを小さくした草刈りコードの繰り出し装置を提供する。
【解決手段】草刈りコードを通す貫通孔が設けられたケース14と、草刈りコードを巻回するためのリール部と、当該リール部を付勢する複数のスプリングとを有しており、前記リール部は、前記ケースに内蔵されており、リール部の頂部はケース外に露出しており、頂部に刈払機の先端部を接続可能な形状であり、リール部とケースの内面には、ロック部が設けられており、前記ロック部により、草刈りコードの繰り出し方向へのリール部の回転が規制され、前記リール部には、リール部の軸方向に交差する方向にリール部を貫通する、草刈りコードの通し孔が設けられており、当該通し孔は前記複数のスプリングの間を通過するように設けられる草刈りコードの繰り出し装置1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈払機の先端部に取り付けて使用する草刈りコードの繰り出し装置であり、
当該装置は、草刈りコードを通す貫通孔が設けられたケースと、草刈りコードを巻回するためのリール部と、当該リール部を付勢する複数のスプリングとを有しており、
前記リール部は、前記ケースに内蔵されており、リール部の頂部はケース外に露出しており、頂部に刈払機の先端部を接続可能な形状であり、
リール部とケースの内面には、ロック部が設けられており、
前記ロック部により、草刈りコードの繰り出し方向へのリール部の回転が規制され、前記スプリングによる付勢に抗して前記リール部を変位させることにより、ロック部における前記規制が解除され、
前記リール部には、リール部の軸方向に交差する方向にリール部を貫通する、草刈りコードの通し孔が設けられており、当該通し孔は前記複数のスプリングの間を通過するように設けられる草刈りコードの繰り出し装置。
【請求項2】
複数のスプリングを回転可能な状態で支持する受座をさらに備えており、
前記繰り出しの際には、前記受座が回転して、前記リール部を回転させる請求項1に記載の草刈りコードの繰り出し装置。
【請求項3】
前記受座、及びケースの内面には、受座の回転方向に沿って、凸条と当該凸条を受け入れる凹溝とが設けられる請求項2に記載の草刈りコードの繰り出し装置。
【請求項4】
前記ロック部は、リール部の回転方向に対して傾斜する面と、リール部の回転方向に垂直な面とを有する複数の突部をリール部の回転方向に連続させた形状である請求項1又は2に記載の草刈りコードの繰り出し装置。
【請求項5】
前記ケースの上側の縁部には、ケースの回転方向に向かってケースの半径方向内側に延びる稜線を有する突部が複数個設けられる請求項1又は2に記載の草刈りコードの繰り出し装置。
【請求項6】
前記ケースは、上側ケースと、下側ケースとを有し、上側ケースと下側ケースとを係合、又は分解可能に構成した請求項1又は2に記載の草刈りコードの繰り出し装置。
【請求項7】
前記ケースの底面部が平坦な形状である請求項1又は2に記載の草刈りコードの繰り出し装置。
【請求項8】
ケースの底面を地面に押し付けると、リール部が下降して、前記ロック部のロックが解除され、刈払機の動力でリール部を回転させる際の遠心力で、リール部に巻回された草刈りコードが繰り出される請求項1又は2に記載の草刈りコードの繰り出し装置。
【請求項9】
リールの下面とケースの下側の内面には、前記ロック部とは異なる他のロック部が設けられており、
前記他のロック部によって、草刈りコードの繰り出し方向へのリール部の回転が規制される請求項1又は2に記載の草刈りコードの繰り出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈りコードの繰り出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示したように、リール部材と、押圧部と、押圧部とキャップとの間に配置されるコイルスプリングと、コイルスプリングとリール部材とを内蔵するケースとを有する草刈りコードの繰り出し装置が知られている。当該装置は、キャップに設けた穴を利用して、刈払機の先端に装置を取り付ける。押圧部は、ケースの底から、ケース外に露出している。押圧部を地面に押し付けることで、リール部材を回転させて、リール部材に巻回された草刈りコードを繰り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
草刈りコード式の刈払機では、草刈りを行う過程で、草刈りコードが摩耗したり、千切れたりするなどして、草刈りコードが徐々に消耗する。特許文献1の装置では、リール部材に草刈りコードを予め巻回しておき、草刈りコードが消耗すると、リール部材から草刈りコードを繰り出すことで、消耗した草刈りコードを取り換えることができる。
【0005】
特許文献1の装置では、押圧部の上にコイルスプリングが設けられているため、装置の厚みが大きくなる傾向がある。装置の厚みが大きい場合は、刈払機のメインパイプを地表から大きく持ち上げた状態で草刈りを行う必要がある。装置の厚みが大きいと、刈払機を操作する際に疲労しやすくなる。また、装置の厚みが大きいと、輸送時や保管時に嵩張るという問題がある。
【0006】
本発明は、草刈りコードを予め巻回しておき、草刈りコードが損耗した際に、草刈りコードを繰り出して、草刈りを行う装置において、装置の厚みを小さくした草刈りコードの繰り出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
刈払機の先端部に取り付けて使用する草刈りコードの繰り出し装置であり、当該装置は、草刈りコードを通す貫通孔が設けられたケースと、草刈りコードを巻回するためのリール部と、当該リール部を付勢する複数のスプリングとを有しており、前記リール部は、前記ケースに内蔵されており、リール部の頂部はケース外に露出しており、頂部に刈払機の先端部を接続可能な形状であり、リール部とケースの内面には、ロック部が設けられており、前記ロック部により、草刈りコードの繰り出し方向へのリール部の回転が規制され、前記スプリングによる付勢に抗して前記リール部を変位させることにより、ロック部における前記規制が解除され、前記リール部には、リール部の軸方向に交差する方向にリール部を貫通する、草刈りコードの通し孔が設けられており、当該通し孔は前記複数のスプリングの間を通過するように設けられる草刈りコードの繰り出し装置により、上記の課題を解決する。
【0008】
前記装置では、単一のスプリングではなく、複数のスプリングにより、リール部を付勢するようにし、かつ複数のスプリングの間を、草刈りコードの通し孔が通過するように、リール部が構成されている。この構成により、スプリングがリール部の上又は下に重なるようなレイアウトになることを回避して、装置の厚みを小さくすることが可能になる。
【0009】
前記装置において、複数のスプリングを回転可能な状態で支持する受座をさらに備えており、前記繰り出しの際には、前記受座が回転して、前記リール部を回転させるようにすることが好ましい。これにより、スプリングの脱落を防いで、リール部の回転を円滑にすることができる。
【0010】
前記装置において、前記受座、及びケースの内面には、受座の回転方向に沿って、突条と当該突条を受け入れる凹溝とが設けられる構成とすることが好ましい。この構成によれば、リール部が回転する際において、受座の位置がずれるのを防止することができる。
【0011】
前記装置において、前記ロック部は、リール部の回転方向に対して傾斜する面と、リール部の回転方向に垂直な面とを有する複数の突部をリール部の回転方向に連続させた形状にすることができる。
【0012】
前記装置において、前記ケースの上側の縁部には、ケースの回転方向に向かってケースの半径方向内側に延びる稜線を有する突部が複数個設けられた形状とすることができる。これにより、草が刈払機のメインパイプ先端の駆動軸に絡みつくことを防止することができる。
【0013】
前記装置において、前記ケースは、上側ケースと、下側ケースとを有し、上側ケースと下側ケースとを係合し、又は分解可能に構成することが好ましい。
【0014】
前記装置において、前記ケースの底面部が平坦な形状であることが好ましい。底面部を平坦な形状とすることにより、装置をより薄い形状にすることができる。また、装置を地面に押し付ける際に、装置の姿勢が安定しやすくなる。
【0015】
前記装置において、ケースの底面を地面に押し付けると、リール部が下降して、前記ロック部のロックが解除され、刈払機の動力でリール部を回転させる際の遠心力で、リール部に巻回された草刈りコードが繰り出されるようにすることが好ましい。
【0016】
前記装置において、リールの下面とケースの下側の内面には、前記ロック部とは異なる他のロック部が設けられており、前記他のロック部によって、草刈りコードの繰り出し方向へのリール部の回転が規制されるようにすることが好ましい。これにより、例えば、装置を地面に対して、強く押さえつけることによって、草刈りコードの繰り出しを止めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、草刈りコードを予め巻回しておき、草刈りコードが損耗した際に、草刈りコードを繰り出して、草刈りを行う装置において、装置の厚みを小さくした草刈りコードの繰り出し装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】草刈りコードの繰り出し装置の一実施例を示す斜視図である。
【
図2】
図1の草刈りコードの繰り出し装置を下方から見た状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1の草刈りコードの繰り出し装置の断面図である。
【
図4】
図1の草刈りコードの繰り出し装置を分解した状態を上方からの視点で示した斜視図である。
【
図5】
図1の草刈りコードの繰り出し装置を分解した状態を下方からの視点で示した斜視図である。
【
図6】
図1の草刈りコードの繰り出し装置において、上側ケースとリール部とスプリングとを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図7】
図1の草刈りコードの繰り出し装置に組み込まれるリール部を下方から見た状態を示す斜視図である。
【
図8】地面に対して草刈りコードの繰り出し装置を押さえつけていない状態における、第1ロック部と第2ロック部の状態を模式的に示した断面図である。
【
図9】地面に対して草刈りコードの繰り出し装置を押さえつけた状態における、第1ロック部と第2ロック部の状態を模式的に示した断面図である。
【
図10】地面に対して草刈りコードの繰り出し装置をより強く押さえつけた状態における、第1ロック部と第2ロック部の状態を模式的に示した断面図である。
【
図11】草刈りコードの繰り出し装置の他の実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の草刈りコードの繰り出し装置(以下、単に装置と呼ぶことがある。)の実施形態について説明する。以下に示す実施形態と使用例は、本発明の限られた例に過ぎず、本発明の技術的範囲は例示した実施形態に限定されるものではない。
【0020】
[第1実施形態]
図1ないし
図10に第1実施形態に係る装置を示す。
【0021】
本実施形態の装置1は、刈払機の先端部に取り付けて使用する草刈りコードの繰り出し装置である。刈払機の先端部に取り付ける方法と構造は特に限定されないが、装置1では、
図3に示したように、後述するリール部11の頂部111に設けられた凹穴112に、刈払機のメインパイプの先端部に設けられたギヤケースから突出する動力軸91を固定する。
図1の例では、リール部11の凹穴112に、貫通孔121を有する第1取付具12と、第2取付具13とを固定する。第2取付具13に対して、動力軸91を固定する。刈払機により草を刈る際には、
図1において矢印で示したように、ケース14ごと反時計回りにケース14が回転し、ケース14に内蔵されたリール部11に巻回された草刈りコード92(
図2)もケース14と一体に回転する。回転する草刈りコード92を草に接触させて草刈りを行う。
【0022】
前記装置1は、
図3に示したように、草刈りコード92を通す貫通孔93が設けられたケース14と、草刈りコード92を巻回するためのリール部11と、当該リール部11を上方に向けて付勢する複数のスプリング15とを有している。
【0023】
前記リール部11は、
図3に示したように、前記ケース14に内蔵されており、リール部11の頂部111はケース外に露出しており、頂部111に刈払機の先端部を接続可能な形状である。リール部11とケース14の内面には、
図8等に示したように、ロック部81が設けられている。前記ロック部81により、草刈りコード92の繰り出し方向へのリール部11の回転が規制され、前記スプリング15による付勢に抗して前記リール部11を変位させることにより、ロック部81における前記規制が解除される。前記リール部11は、
図3及び
図7に示したように、軸方向に交差する方向にリール部11を貫通する、草刈りコード92の通し孔151が設けられている。当該通し孔151は、草刈りコードを通しやすくするために直線状とされており、前記複数のスプリング15の間を通過するように設けられる。
【0024】
前記リール部11は、
図3に示したように、円柱形の上部と、リール部11の側周面に設けられる糸巻部155とを有する。上部の円柱部は、板材から構成されており、内部が中空になっている。リール部11の底部は開口された形状とされる。糸巻部155は、リール部11の円周部に設けられる複数のフランジで構成される。上述の通り、リール部11には、リール部11の軸方向に交差する方向にリール部11を貫通する、草刈りコード92の通し孔151が設けられる。通し孔151は、リール部11の軸方向に交差する方向に延びる管152で構成される。管152は、頂部111と一体に構成され、例えば、プラスチックで管152とリール部11とを一体に成形することにより形成される。通し孔151は、糸巻部155のフランジの内部に開口するように設けられる。なお、リール部11の上部がケース14から突出する量は、適宜変更することができる。
【0025】
中空なリール部11の頂部の裏面には、
図3に示したように、複数のスプリング15用の固定部153が設けられる。固定部153は、2枚の板材を直交させたX字状の突起であり、コイルスプリングの端部を外嵌することができる形状である。複数の固定部153のうちの一部には、コイルスプリングの外形に沿う形状とされた壁部154が設けられる。固定部153にスプリング15の上端部を固定すると、スプリング15の上端部は、頂部111の裏面より下であり、糸巻部155より上であり、かつ前記通し孔151より上の位置になる。これにより少なくともスプリング15の一部がリール部11の内部に収納された形状となる。スプリング15が収納された分、装置1の厚みが小さくなる。
【0026】
リール部11の上側のフランジの上面には、
図4及び
図5に示したように、上述の通り、ロック部81を構成する複数の突起811が設けられる。複数の突起811は、円周状に配置される。ロック部81を第1ロック部81と称する。上側ケース141の内面にも、第1ロック部81を構成する突起812が、リール部11をケース14に内蔵した状態で、前記突起811に対応する位置に設けられる。
【0027】
リール部11の中央部の底には、
図5に示したように、上記第1ロック部81とは異なるロック部82を構成する複数の突起821が設けられる。複数の突起821は、円周状に配置される。このロック部82を第2ロック部82と称する。下側ケース142の内面にも、
図4に示したように、第2ロック部82を構成する突起822が、リール部11をケース14に内蔵した状態で、前記突起821に対応する位置に設けられる。リール部11の中央部の底に設けられる第2ロック部82は、
図5に示したように、頂部111から下側ケース142に向かって突出する円形の壁の下端部に設けられる。なお、第2ロック部を構成する突起は、リール部の下側のフランジの下面に設けてもよい。この場合、下側ケースの突起もこれに対応する位置に設ければよい。
【0028】
ケース14は、中空部を有しており、当該中空部に複数のスプリング15、リール部11などを内蔵し、厚みに比して、直径が大きい扁平な形状である。ケース14は、平面視又は底面視において、略円形である。ケース14の上面には、中空部と連通する開口部が設けられている。開口部から、リール部11の頂部111がケース外に露出する。
【0029】
前記ケース14は、上側ケース141と、下側ケース142とを有する。上側ケース141と下側ケース142とは、係合、又は分解可能に構成される。
図4及び
図5に示したように、上側ケース141の内面と下側ケース142の内面には、固定用の複数の突起4及び5が設けられる。突起4は、上側ケースの内面に設けられており、下側ケース142に向かって突出し、上側ケース141の周方向に延在する突条41と凹溝42とを有する。突起5は、下側ケースの周方向に延在する突条51と当該突条51の端部からケース14の底部に向かって延びる突条52とを有する。
【0030】
下側ケース142と上側ケース141とを合わせて、下側ケース142又は上側ケース141を周方向に回転させると、突起4の突条41が、突起5の突条51と底部との間の隙間に入り込み、突起5の突条52に当接する。これにより、上側ケース141と下側ケース142が係合すなわち、合体する。分離するときは、下側ケース142又は上側ケース141を逆方向に回転させる。突条52は、上側ケース141を、下側ケースに対して、合わせて回転させた際に、上側ケース141の突条41の回転を規制するように設けられる。
【0031】
下側ケース142は、上方に向かって突出する側壁部53を備える。上側ケースは、下方に向かって突出する側壁部43を備える。側壁部53と側壁部43とにより、リール部11がケース14の内部に収納され、塵芥や水などから保護される。
【0032】
下側ケース142の側壁部53には、草刈りコード92を挿通するのに適した内径を有する貫通孔93を設けた金具94が取り付けられる。側壁部53には、金具94に対応する切欠部95が設けられている。切欠部95に設けられた凹溝に沿って、金具94の突条を挿し込むことで、金具94を下側ケースに固定する。金具94は、金属材料で構成されており、草刈りコードにより、摩耗しにくくなるように構成されている。
【0033】
前記ケース14の上側の縁部には、
図1に示したように、ケース14の半径方向外側に延びる第1稜線711と、ケースの回転方向に向かってケースの半径方向内側に延びる円弧状の第2稜線712とを有する突部71が複数個設けられる。
図1において矢印で示したように、刈払機により草を刈る際には、上述の通り、ケース14が反時計回りに回転する。このとき、草は第2稜線712に接触して、ケース14の中心から離れるように弾かれる。これによって、草が刈払機のメインパイプ先端の駆動軸に絡みつくことを防止することができる。なお、第2稜線は、草を弾くことができる形状であればよく、例えば、直線であってもよい。
【0034】
下側ケース142の中央部には、
図4に示したように、第2ロック部82を構成する複数の突起822が設けられる。複数の突起822は、円周状に配置される。下側ケース142に設けられた複数の突起822の周囲には、当該突起822を取り囲むように円形状に凹溝83が設けられる。この凹溝83には、当該凹溝83に嵌り、凹溝内を摺動する凸条611を底面に設けた受座61が載せられる。受座61の上面には前記スプリング固定用の複数の突部612が形成されている。突部612は、コイルスプリングの下端部を外嵌めするのに適した円柱状とされる。なお、上述の用に第2ロック部82の突起821の位置を変更する場合は、突起822の位置も併せて変更する。また、凸条を下側ケースの内面に設け、凹溝を受座に設けてもよい。
【0035】
前記受座61は、
図6に示したように、扁平な板で構成される、リング状の部材であり、複数のスプリングを回転可能な状態で支持する。草刈りコード92をリール部11から繰り出す際には、
図6において矢印で示したように、受座61と、当該受座61に一端部が支持された複数のスプリング15と、リール部と、当該リール部に他端部が支持された複数のスプリング15とが、一体に回転する。これにより、リール部11回転する際にスプリング15が折れ曲がったり、スプリング15の一端部又は他端部が脱落する事態が防止される。また、リール部11の回転が安定し、滑らかになる。なお、受座は、リング状かつ扁平な板状に限定されず、下側ケースの内面に接し、スプリングを支持することができる形状であればよい。例えば、受座は、貫通孔を備えない板状であってもよい。なお、受座61は草刈りコード92を巻回する際には逆方向に回転する。
【0036】
前記下側ケース142の底には、
図4及び
図6に示したように、下側ケース142とは独立して、自由に回転動作する板状の回転部8が固定される。回転部8の上面には、固定用の突部41が設けられており、当該突部41を、リング状のスペーサー42の円形の孔、及び下側ケース142の中央部に設けられた孔に挿通する。前記突起41の水平方向に延びる突片部を、板状の固定部43の孔に挿通して、固定部43を水平方向に回転させて、回転部8を下側ケース142に対して、固定する。固定部43の孔には、抜止部材44の突起を挿して、回転部8が意図せず脱落しないように抜け止めを施す。板状の固定部43には、孔に隣接して、突部41の突片の回転を規制する突起が設けられている。
【0037】
前記ケース14の底面部は平坦な形状とされる。これにより、突起状の押圧部を省略し、装置1をより薄い形状にすることができる。また、草刈りコード92を繰り出すために装置1を地面に押し付ける際に、ケース14の底面部が平坦な形状とされているため、装置1の姿勢が安定しやすくなる。
【0038】
図8ないし
図10に、第1ロック部81を構成する突起811及び812と、第2ロック部82を構成する突起821及び822を示す。これらの突起は、何れも円形状に配置されるため、厳密には、
図8ないし
図10のような形状にはならないが、説明のため、
図8ないし
図10のように単純化した。第1ロック部81、及び第2ロック部82は、
図8に示したように、リール部11の回転方向に対して傾斜する面と、リール部11の回転方向に垂直な面とを有する複数の突起をリール部の回転方向に連続させた形状を有する。なお、
図8ないし
図10において、草刈りコードの繰り出し方向は、D1を付した矢印で示し、草刈りコードの巻き取り方向は、D2を付した矢印で示す。D1は反時計回りであり、D2は時計回りである。
【0039】
第1ロック部81のうち上側ケース141に設けられる突起812は、D1に向かって下り勾配となる。第1ロック部81のうちリール部11に設けられる突起811は、D1に向かって上り勾配となる。第2ロック部82のうちリール部11に設けられる突起821は、D1に向かって上り勾配となる。第1ロック部81のうち下側ケース142に設けられる突起822は、D1に向かって下り勾配となる。
【0040】
装置1を地面に押し付けていない状態では、
図8に示したように、突起811の垂直な面と突起812の垂直な面とが当接し、リール部11のD1方向への回転が規制され、リール部11からの草刈りコード92の繰り出しが制限される。第1ロック部81がロックされた
図8の状態で草刈り作業を行う。第1ロック部81により、リール部11とケース14とが回転不能にロックされ、刈払機から出力される動力により、リール部11とケース14とは一体に回転する。
【0041】
装置1を地面に押し付けると、
図9に示したように、上側ケース141及び下型ケース142を基準として、スプリング15のバネ力に抗して、リール部11が下降して、突起811の垂直な面と突起812の垂直面との係合関係が解除される。これにより、第1ロック部81のロックが解除され刈払機の動力でリール部11を回転させると、ケース14は回転せず、リール部11のみが回転する。リール部11が回転する遠心力を利用して、リール部11に巻回された草刈りコードを繰り出すことができる。
【0042】
草刈りコードの繰り出しを停止するには、刈払機の動力を停止すればよい。しかしながら、刈払機の動力を停止しても、回転速度によっては慣性により、リール部11が回転し続ける。装置1を地面にさらに押し付けることにより、上側ケース141及び下型ケース142を基準として、スプリング15のバネ力に抗して、リール部11がさらに下降して、
図10に示したように、突起821の垂直な面と突起822の垂直な面とが係合する。これにより、慣性によるリール部11の回転を停止させて、草刈りコード92が慣性により放出され続けるのを強制的に停止することができる。慣性によるリール部11の回転が停止したならば、装置1を地面から離すことにより、スプリング15のバネ力により、リール部11は上昇し、第1ロック部81がロックされた状態に復帰する。
【0043】
草刈りコード92の繰り出しは、刈払機の動力によらず、装置1を地面に押し付けて、地面から離す作業を繰り返して、手動により行ってもよい。この作業を繰り返し行うと、第1ロック部81の突起811及び812の傾斜面における摺動と、第2ロック部82の突起821及び822の傾斜面における摺動とを利用して、リール部11をD1方向へ回転させることができる。この目的を達するために、第1ロック部81の突起811及び812の頂部と、第2ロック部82の突起821及び822の頂部とは、リール部の回転方向に対して、位置がずれて配置されている。
【0044】
草刈りコード92を装置1に装填する際には、ケース14の貫通孔93、及び草刈りコード92の通し孔151に、草刈りコード92を挿通する。ユーザーは、手などで頂部111を押し込みながら、D2方向へリール部11を回転させることにより、リール部に草刈りコード92を巻き付けることができる。
【0045】
装置1では、下側ケース142の回転部8が独立して回転する。このため、例えば、ケース14が回転しているときに、装置1を地面に対して押し付けても、回転部8が地面に接するだけであり、下側ケース142の回転が地面に伝達されない。装置1を地面に対して押し付ける際に、刈払機の動力で装置が大きく振れたり、下側ケース142の回転によって、石が跳ね飛ばされたりしにくくなっている。
【0046】
[第2実施形態]
第2実施形態の装置1bは、下側ケース142bの構成のみが上記装置1とは異なる。装置1bの下側ケース142bには、回転部が設けられていない。装置1bは、部品点数が少なく、比較的に軽量であり、安価に製造することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 草刈りコードの繰り出し装置
1b 草刈りコードの繰り出し装置
92 草刈りコード
14 ケース
141 上側ケース
142 下側ケース
11 リール部
15 スプリング
81 ロック部
82 ロック部
61 受座
611 凸条
83 凹溝
71 突起