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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046270
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】落下衝撃緩和構造
(51)【国際特許分類】
   F42C 11/00 20060101AFI20240327BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
F42C11/00
F16F7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151565
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000006932
【氏名又は名称】リコーエレメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 諒太
(72)【発明者】
【氏名】島田 敏広
【テーマコード(参考)】
3J066
【Fターム(参考)】
3J066AA23
3J066BA10
3J066BE03
(57)【要約】
【課題】傾いて落下した際も衝撃緩和効果を有し省スペースかつ簡易形状の落下衝撃緩和構造を提供する。
【解決手段】内部に構成品110を収容する衝突物100の落下による衝突で構成品110に加わる衝撃を緩和する落下衝撃緩和構造は、衝突物100の底面101から衝突物100の外方へ突き出る突起1を備えている。突起1は、底面101の重心103からずれた位置に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に構成品を収容する収容体の落下による衝突で前記構成品に加わる衝撃を緩和する落下衝撃緩和構造であって、
前記収容体の底面から前記収容体の外方へ突き出る突起を備え、
前記突起は、前記底面の重心からずれた位置に配置されている、落下衝撃緩和構造。
【請求項2】
前記突起の先端部は、前記突起の基部よりも剛性が小さい、請求項1に記載の落下衝撃緩和構造。
【請求項3】
前記先端部は、前記基部よりも径が小さい、請求項2に記載の落下衝撃緩和構造。
【請求項4】
前記突起の先端部は球面形状を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の落下衝撃緩和構造。
【請求項5】
前記収容体と別体に構成されたピンが前記収容体に取り付けられることで前記突起を成す、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の落下衝撃緩和構造。
【請求項6】
前記底面に、前記底面の一部分が窪む凹部が形成されており、
前記ピンは、前記凹部に取り付けられる取付部を有する、請求項5に記載の落下衝撃緩和構造。
【請求項7】
前記突起の基部は、前記取付部よりも径が大きく、前記底面に面接触している、請求項6に記載の落下衝撃緩和構造。
【請求項8】
平坦面上に、前記底面を前記平坦面に向けて前記収容体を載置したとき、前記突起が前記平坦面に接触し、前記底面と前記平坦面とは20°以上の角度を成す、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の落下衝撃緩和構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、落下衝撃緩和構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-210572号公報(特許文献1)には、衝突時に親機が持つ力学的エネルギを、衝撃吸収ばねのポテンシャルエネルギに変換し、そのエネルギを再び子機の力学的エネルギに変換する、衝撃緩和システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-210572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に記載のシステムは、傾いて衝突した際は、衝撃緩和効果が低減してしまう。
【0005】
本開示では、傾いて落下した際も衝撃緩和効果を有し、省スペースかつ簡易形状の、落下衝撃緩和構造が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、内部に構成品を収容する収容体の落下による衝突で構成品に加わる衝撃を緩和する、落下衝撃緩和構造が提案される。落下衝撃緩和構造は、収容体の底面から収容体の外方へ突き出る突起を備えている。突起は、底面の重心からずれた位置に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、傾いて落下した際も衝撃緩和効果を有し、省スペースかつ簡易形状の、落下衝撃緩和構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】落下衝撃緩和構造が適用される衝突物の側面図である。
図2】段付きピンの斜視図である。
図3】段付きピンを衝突物に取り付けた状態を示す断面図である。
図4】衝突物および落下衝撃緩和構造の底面図である。
図5】衝突物の落下時の挙動を示す側面図である。
図6】衝突物を平坦面上に載置した状態を示す側面図である。
図7】落下衝撃緩和構造の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。実施形態から任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも、当初から予定されている。
【0010】
図1は、落下衝撃緩和構造が適用される衝突物100の側面図である。衝突物100は、円筒状の外形形状を有している。衝突物100は、底面101を有している。底面101は、円筒状の衝突物100の外表面のうち、一方の端面である。底面101は、平面形状を有している。底面101は、重心103を有している。底面101は真円形状を有していてもよく、その場合重心103は、その真円形状の中心にある。底面101が楕円形状であれば、重心103はその楕円の長軸と短軸との交点にある。この場合、衝突物100は楕円柱となる。底面101が矩形状であれば、重心103は対角線の交点にある。さらに底面101が多角形であっても、その重心103を求めればよい。これらの場合、衝突物100は、角筒柱になる。また衝突物100は、円錐台でも、角錐台でもよく、任意の形状の組み合わせでもよい。
【0011】
重心線Lは、重心103を通り底面101に垂直な直線である。重心線Lは、衝突物100の重心を通っている。重心線Lは、円筒状の衝突物100の軸方向に延びている。重心線Lは、円筒状の衝突物100の中心軸である。
【0012】
衝突物100は、内部に構成品110を収容している。衝突物100は、内部に構成品110を収容する収容体の一例に対応する。構成品110は、精密機器などの、耐衝撃性が低い物品である。構成品110は、低強度部111を有している。低強度部111は、構成品110の一部分であって、構成品110の他の部分よりも損傷しやすい部分である。低強度部111は、特に、重心線Lに沿う方向(本明細書中では軸方向と称する)の衝撃に対し、損傷しやすい。
【0013】
衝突物100が落下して地面などの衝突面に衝突すると、衝突物100に衝撃負荷が発生する。これにより衝突物100の内部の構成品110に衝撃加速度が加わる。この衝撃加速度の軸方向の成分が大きいと、構成品110が損傷する可能性がある。特に、底面101を下向きにして衝突物100が落下したときの構成品110(低強度部111)に加わる軸方向の衝撃を緩和することが求められる。そのため、本実施形態の衝突物100は、衝突物100の落下時に構成品110に加わる、軸方向の衝撃加速度を緩和するための、落下衝撃緩和構造になっている。
【0014】
具体的に、衝突物100の外表面のうち、低強度部111に近い底面101について、対策が施される。底面101に、突起1が設けられる。突起1は、底面101から衝突物100の外方に突き出している。突起1は、衝突物100の外表面のうち、低強度部111に近い底面101から突き出るように、設けられている。
【0015】
衝突物100と別体に構成された段付きピン10が衝突物100に取り付けられることで、突起1が形成されている。図2は、段付きピン10の斜視図である。段付きピン10は、段付き形状を有している。段付きピン10は、中間部20と、衝突部30と、取付部40とを有している。中間部20は、衝突部30および取付部40よりも大きい外径を有している。
【0016】
図3は、段付きピン10を衝突物100に取り付けた状態を示す断面図である。衝突物100の底面101には、底面101の一部が凹む凹部102が形成されている。段付きピン10の取付部40は、凹部102に取り付けられる。凹部102が底面101から凹む深さは、取付部40が中間部20から突き出る長さよりも大きい。取付部40はたとえば、凹部102に圧入結合されている。取付部40が凹部102内に収容されて凹部102内に固定されることにより、段付きピン10は衝突物100に取り付けられる。
【0017】
段付きピン10のうち、取付部40は衝突物100に収容されている。段付きピン10のうち、中間部20と衝突部30とが、底面101から突き出しており、突起1を構成している。中間部20は、突起1の「基部」の一例に対応する。衝突部30は、突起1の「先端部」の一例に対応する。
【0018】
中間部20は、直径を大きくすることにより、取付部40および衝突部30よりも剛性を高くしている。中間部20は、接触面21を有している。中間部20の径が取付部40よりも大きいので、接触面21は、取付部40に対して径方向外側に張り出すフランジ面状の形状を有している。段付きピン10が衝突物100に取り付けられた状態で、接触面21は、衝突物100の底面101に面接触している。中間部20の直径を大きくして接触面21と底面101との接触面積を大きくすることで、衝突物100が落下して段付きピン10が衝突面に衝突したときの、取付部40の曲げ変形に基因した衝突物100からの段付きピン10の外れを抑制する。
【0019】
衝突部30は、中間部20よりも小さい外径を有している。衝突部30の直径を小さくすることにより、衝突部30は中間部20よりも剛性が小さくされている。衝突部30を低剛性とすることで、衝突物100が落下して段付きピン10が衝突面に接触したとき、衝突部30を変形させて衝撃を緩和する効果が奏される。
【0020】
衝突部30の直径を小さくすることにより、衝突時に衝突部30が衝突面に接触する衝突面積を小さくして衝撃を緩和する効果が奏される。衝撃による発生応力波σは、衝突体材料密度ρ、衝突体応力伝播速度C、衝突速度Vとすると、σ=ρCVとなる。衝撃による発生荷重Fは、衝突体と衝突面との衝突面積Sとすると、F=σSとなる。衝突時の衝撃加速度aは、衝突体の質量mとすると、a=F/mとなる。これらの関係式より、a=(ρCVS)/mとなり、衝撃加速度aは衝突面積Sに比例することになる。したがって衝突面積を小さくすることで、衝撃加速度を低減できる。
【0021】
衝突部30は、先端に球面部31を有している。球面部31は球面形状を有している。球面部31の曲率半径は、衝突部30の半径以上である。球面部31の曲率半径を衝突部30の半径と同じにするのがより好ましい。衝突部30の先端を球面にすることで、衝突物100が傾いた姿勢で落下して段付きピン10が傾いた姿勢で衝突面に衝突したときに、衝突面に接触する衝突部30の形状の一定性を向上できる。段付きピン10の姿勢に対する、衝撃を緩和する効果の均一性を、向上することができる。
【0022】
取付部40の直径が、衝突部30の直径よりも大きくてもよい。中間部20から取付部40が突き出る長さが、中間部20から衝突部30が突き出る長さよりも大きくてもよい。段付きピン10が衝突物100に取り付けられた状態で突起1が底面101から突き出る長さが、中間部20から取付部40が突き出る長さの2倍以上であってもよい。
【0023】
図4は、衝突物100および段付きピン10の底面図である。突起1を構成する段付きピン10は、底面101の重心103からずれた位置に配置されている。段付きピン10は、段付きピン10を衝突物100に取り付けられる範囲で、重心103からのずれ量が大きいほど好ましい。たとえば、中間部20の周縁と重心103との最短距離が、中間部20の直径よりも大きくてもよい。中間部20の周縁と底面101の周縁との最短距離が、中間部20の直径よりも小さくてもよい。
【0024】
図5は、衝突物100の落下時の挙動を示す側面図である。衝突面Pは、たとえば床面、地面などである。図5に示される下向きの白抜き矢印は、衝突面Pに向かう衝突物100の落下の方向を示す。突起1からの上向きの矢印は、上方向への跳ね返りの運動エネルギーを示す。突起1がない状態で、底面101と衝突面Pとの成す角度が0°の姿勢で、底面101が衝突面Pに向かって落下すると、衝突時に衝突物100の力学的エネルギーは、全て上方向への跳ね返りの運動エネルギーに使用される。そのため、衝突物100の内部の構成品110に加わる軸方向の衝撃が大きくなる。
【0025】
図5に示される曲線矢印は、衝突部30の衝突面Pとの接触点を中心とした回転を示す。衝突物100に突起1が設けられているので、突起1が衝突面Pに衝突したときに、衝突物100の力学的エネルギーは、上方向への跳ね返りの運動エネルギーに加えて、回転の運動エネルギーに使用される。回転の運動エネルギー比が大きくなるほど、上方向への跳ね返りが低減されて、衝突物100の内部の構成品110に加わる軸方向の衝撃を低減できる。突起1を重心103から離すほど、回転の運動エネルギー比を大きくできる。重心103から極力離れた位置に突起1を配置することで、軸方向の衝撃を緩和する効果を十分に発揮することができる。
【0026】
図6は、衝突物100を平坦面上に載置した状態を示す側面図である。図6に示される衝突面Pは、平坦な形状を有している。衝突面Pは、「平坦面」の一例に対応する。図6に示される衝突物100は、衝突面P上に静かに載置された状態である。底面101が衝突面Pに向いている。突起1の先端部、すなわち衝突部30の先端の球面部31と、底面101の周縁の一部とが、衝突面Pに接触している。
【0027】
衝突面Pに接触する底面101の周縁の一部は、重心103を挟んで突起1の先端部とは反対側の周縁の一部である。底面101の周縁のうち、突起1から最も離れている部分が、衝突面Pに接触する。衝突面Pに接触する底面101の周縁の一部と、重心103と、突起1の先端部とは、同一平面上に存在している。
【0028】
突起1の先端部と底面101の周縁の一部とが衝突面Pに接触している状態で、底面101は、衝突面Pに対して傾斜している。図6に示される衝撃角θは、平坦な衝突面P上に、底面101を衝突面Pに向けて衝突物100を載置したときに、底面101と衝突面Pとの成す角度、と定義される。
【0029】
図7は、落下衝撃緩和構造の効果を示すグラフである。図7に示されるグラフの横軸は、衝撃角θ(単位:deg)を示し、縦軸の最大加速度は、衝突面Pへの衝突時に衝突物100の内部の構成品110に加わる軸方向の衝撃加速度の最大値を示す。図7には、落下衝撃緩和構造を衝突物100に設ける場合と設けない場合とにおいて、衝撃角θを変えて衝突物100を衝突面Pに衝突させたときの軸方向の最大加速度がプロットされており、それらプロットの近似線が描画されている。図7に示される実線は、落下衝撃緩和構造を設けた場合のグラフである。図7に示される破線は、落下衝撃緩和構造を設けない場合のグラフである。
【0030】
図7の破線に示されるように、落下衝撃緩和構造を設けない場合、衝撃角θが0°に近づくにつれて、軸方向の最大加速度は急激に増加する。衝撃角θが大きいと、すなわち衝突物100が衝突面Pに対して傾いて落下すると、軸方向の最大加速度は小さくなる。衝撃角θが20°以上の範囲では、軸方向の最大加速度はほぼ一定となる。衝撃角θが20°以上であれば、衝撃を緩和しなくても軸方向の最大加速度は小さい。
【0031】
そのため、図6に示される、突起1の先端部と衝突物100の底面101の周縁の一部とが衝突面Pに接触している状態で、底面101と衝突面Pとが20°以上の角度を成すように、底面101からの突起1の突出量が調整されている。この調整によって、衝突物100が落下するときの底面101と衝突面Pとの成す角度が20°未満の範囲においては、衝突物100よりも突起1が衝突面Pに先に接触するようになる。これにより、図5を参照して説明したように、衝突物100の力学的エネルギーの一部が回転の運動エネルギーに使用される。その結果、構成品110に加わる軸方向の衝撃が低減される。
【0032】
図7の実線に示されるように、落下衝撃緩和構造を設けることで、衝撃角θが20°未満の範囲において、落下衝撃緩和構造を設けない場合と比較して構成品110に加わる軸方向の最大加速度が大幅に低減される。また、落下衝撃緩和構造を設けることで、落下時の衝撃角θによらず、最大加速度をほぼ一定にできる。
【0033】
上述した説明と一部重複する記載もあるが、本実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて記載すると、以下の通りである。
【0034】
図1,4~6に示されるように、衝突物100の底面101から外方へ突き出る突起1は、底面101の重心103からずれた位置に配置されている。突起1を重心103からずらした位置に配置することで、落下時の衝突物100の力学的エネルギーは、一部が回転の運動エネルギーとして使用される。これにより、上方向への跳ね返りの運動エネルギーを小さくできる。したがって、衝突物100の内部の構成品110に加わる軸方向の衝撃を低減できるので、構成品110の損傷を抑制することができる。
【0035】
衝突物100に突起1を設ける簡単な構成で落下衝撃を緩和できるので、省スペースかつ簡易形状の落下衝撃緩和構造を実現できる。図7に示されるように、落下衝撃緩和構造を設けることで落下時の衝撃角θによらず落下衝撃の緩和を実現でき、衝突物100が傾いて落下した際にも衝撃緩和効果を得ることができる。
【0036】
図1~6に示されるように、突起1の先端部をなす衝突部30は、突起1の基部をなす中間部20よりも、剛性が小さくされている。突起1の先端部を低剛性とすることで、突起1が衝突面Pに衝突するときに、突起1の先端部が変形することによる衝撃加速度の緩和効果が得られる。したがって、衝突物100の内部の構成品110に加わる軸方向の衝撃を低減できるので、構成品110の損傷を抑制することができる。
【0037】
図1~6に示されるように、突起1の先端部をなす衝突部30は、突起1の基部をなす中間部20よりも径が小さくてもよい。このような形状を有する突起1は、製造が容易である。したがって、先端が基端よりも剛性が小さい突起1を、衝突物100に確実に設けることができる。
【0038】
図1~6に示されるように、突起1の先端部をなす衝突部30は、球面形状の球面部31を有してもよい。衝突部30が球面形状でなければ、衝撃角θによって、衝突面Pに衝突する衝突部30の形状が一定でなくなる。その結果、最大加速度のばらつきが大きくなる。衝突部30を球面形状にすることで、最大加速度のばらつきを低減でき、衝撃角θによらず構成品110に加わる軸方向の衝撃を確実に低減することができる。
【0039】
図1~6に示されるように、段付きピン10は衝突物100と別体に構成されており、段付きピン10が衝突物100に取り付けられることで突起1が形成されてもよい。このようにすれば、既存の衝突物100に段付きピン10を後付けすることが可能であり、既存の衝突物100の内部の構成品110に加わる軸方向の衝撃を容易に緩和することができる。任意の仕様の衝突物100に段付きピン10を取り付けて、その衝突物100に落下衝撃緩和構造を適用することができる。
【0040】
図2,3に示されるように、衝突物100の底面101に、底面101の一部分が窪む凹部102が形成されており、段付きピン10は、凹部102に取り付けられる取付部40を有してもよい。このようにすれば、たとえば取付部40を凹部102に圧入結合するなどして、衝突物100に別体の段付きピン10を容易に取り付けることができる。
【0041】
図2,3に示されるように、突起1の基部をなす段付きピン10の中間部20は、取付部40よりも径が大きく、衝突物100の底面101に面接触してもよい。中間部20を高剛性にすることで、段付きピン10全体の剛性を確保できる。中間部20の接触面21と底面101とを面接触させることによって、段付きピン10が衝突面Pに衝突する際の、衝突物100から段付きピン10が抜けるなど、段付きピン10が衝突物100に対して位置ずれすることを抑制することができる。
【0042】
図6に示されるように、平坦な衝突面P上に、底面101を衝突面Pに向けて衝突物100を載置したとき、突起1の先端部が衝突面Pに接触し、衝突物100の底面101と衝突面Pとの成す衝撃角θは20°以上であってもよい。このように底面101から突起1が突き出る突出量を定めることで、図7に示されるように、落下衝撃緩和構造がなければ最大加速度が急激に増大する衝撃角θが20°未満の範囲において、落下衝撃緩和構造を設けることで確実に最大加速度を低減することができる。
【0043】
なお、これまでの説明においては、段付きピン10が衝突物100に取り付けられて突起1が形成される例について述べたが、突起1は衝突物100と一体の構造物として形成されてもよい。突起1と衝突物100とが一体であっても、突起1を底面101の重心103からずらした位置に配置し、突起1の先端部を突起1の基部よりも低剛性とすることで、構成品110に加わる軸方向の衝撃を緩和する効果を同様に得ることができる。突起1と衝突物100とが一体である場合、突起1が衝突物100から抜けることがないので、突起1の抜けを防止する目的で突起1の基部の径を先端部の径よりも大きくすることは、必ずしも必要ではない。
【0044】
突起1の先端部は、必ずしも球面でなくてもよい。突起1の先端部が球面以外の形状の場合、上述したように衝撃角θによって最大加速度のばらつきが生じるが、そのばらつきの上限が許容できる最大加速度よりも小さければ、球面でない先端部を有する突起1としても構わない。
【0045】
突起1の先端部の衝突部30は、必ずしも突起1の基部の中間部20よりも小径でなくてもよい。たとえば、中間部20と衝突部30との形成材料を異ならせて、中間部20よりも衝突部30を低剛性の材料で形成することで、突起1の先端部の剛性を基部の剛性よりも小さくする構成を実現することが可能である。
【0046】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本開示は、特に限定されるものではないが、たとえば、砲弾に取り付けられる信管に適用され得る。信管は、内部に発電機構を収容している。発電機構は、砲弾の飛翔中に、着弾後の起爆のための電力を発電する。発電機構は、砲弾の射撃時に加わる衝撃によって、発電を開始する。砲弾への組み付け前に信管を落下させても落下時の衝撃で発電機構が発電を開始しないように、発電機構に加わる軸方向の衝撃を緩和することが求められる。本開示に従った落下衝撃緩和構造を信管に適用することにより、信管の落下時に発電機構に加わる軸方向の衝撃を緩和することができる。したがって、信管の落下時に発電機構が発電を開始することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 突起、10 段付きピン、20 中間部、21 接触面、30 衝突部、31 球面部、40 取付部、100 衝突物、101 底面、102 凹部、103 重心、110 構成品、111 低強度部、L 重心線、P 衝突面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7