(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046273
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】洗米水処理装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/07 20060101AFI20240327BHJP
C02F 1/02 20230101ALI20240327BHJP
【FI】
A61L2/07 ZAB
C02F1/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151571
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶原 一信
(72)【発明者】
【氏名】波光 勉
【テーマコード(参考)】
4C058
4D034
【Fターム(参考)】
4C058AA20
4C058BB05
4C058CC04
4C058DD02
4C058DD04
4C058DD06
4D034AA26
4D034BA03
4D034CA06
4D034CA21
(57)【要約】
【課題】洗米水の加熱殺菌に適したコンパクトで熱効率の優れた洗米水処理装置を提供する。
【解決手段】洗米水を循環させる循環機構1と、循環機構1により循環する洗米水中に蒸気を噴射し、洗米水の温度を殺菌温度領域まで上昇させるスチーム手段2と、を備える。スチーム手段2により、装置をコンパクト化することが可能となる。また、循環機構1により洗米水を循環させながら蒸気を噴射することで、洗米水を均一に加熱し、固形分が装置内に固着するのを防ぐ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗米水を循環させる循環機構と、
前記循環機構により循環する洗米水中に蒸気を噴射し、洗米水の温度を殺菌温度領域まで上昇させるスチーム手段と、を備える、
洗米水処理装置。
【請求項2】
前記循環機構は、
洗米水の温度を微生物の活動を抑制する静菌温度領域まで上昇させる静菌循環機構と、
前記静菌循環機構により静菌温度領域まで上昇させた洗米水の温度を更に殺菌温度領域まで上昇させる殺菌循環機構と、を含む、
請求項1に記載の洗米水処理装置。
【請求項3】
供給された洗米水を一時的に貯留可能な処理タンクを備え、
前記循環機構は、前記処理タンクを介して洗米水を循環させ、
前記スチーム手段は、前記処理タンク内に蒸気を噴射するタンクスチーム手段を含む、
請求項1又は2に記載の洗米水処理装置。
【請求項4】
供給された洗米水を一時的に貯留可能な処理タンクを備え、
前記循環機構は、前記処理タンクを介して洗米水を循環させる配管を有し、
前記スチーム手段は、前記処理タンク内に蒸気を噴射するタンクスチーム手段と、閉塞された空間である前記配管内に蒸気を噴射する流路スチーム手段と、を含み、
前記静菌循環機構には、前記タンクスチーム手段が設けられ、
前記殺菌循環機構には、前記流路スチーム手段が設けられ、
前記流路スチーム手段は、前記タンクスチーム手段よりも高い圧力で蒸気を噴射する、
請求項2に記載の洗米水処理装置。
【請求項5】
供給された洗米水を一時的に貯留可能な処理タンクと、
前記処理タンクを介して洗米水を循環させる前記循環機構に設けられた切換弁と、
前記切換弁の操作によって、前記循環機構から加熱された洗米水が送り込まれる貯留タンクと、を備え
前記切換弁は、前記処理タンクよりも前記貯留タンクに近接して設けられる、
請求項1又は2に記載の洗米水処理装置。
【請求項6】
前記循環機構に設けられ、殺菌温度領域まで温度上昇した洗米水に有機酸を加える酸添加手段を備える、
請求項1又は2に記載の洗米水処理装置。
【請求項7】
供給された洗米水を一時的に貯留可能な処理タンクと、
前記循環機構に設けられた切換弁と、
前記循環機構に設けられ、殺菌温度領域まで温度上昇した洗米水に有機酸を加える酸添加手段と、
前記切換弁の操作によって、前記循環機構から加熱された洗米水が送り込まれる貯留タンクと、を備え、
前記切換弁は、前記酸添加手段よりも前記貯留タンクに近接して設けられる、
請求項1又は2に記載の洗米水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗米水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、精米工場や炊飯工場等において大量の洗米水が排水されている。洗米水は、含まれる固形分量の値が低く、原料由来の一般生菌数が高いため、副産物としての利用価値が低いと考えられており、排水として浄化施設に送られるのが一般的である。
【0003】
しかしながら、洗米水中の一般生菌数を低減させる処理を施せば、その減菌させた洗米水は飼料原料の一部として活用することが可能である。例えば、特許文献1には、チューブ式の熱交換器によって、洗米水を60~100℃の温度域で10~60秒加温することにより、洗米水中の一般生菌を低減させて腐敗を抑制する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置は、洗米水を加熱するためにチューブ式の熱交換器を用いているが、洗米水を加熱殺菌可能なほどの十分な伝熱面積を有する熱交換器を組み込めば、装置の大型化やコストアップが避けられず、導入が容易ではないという問題がある。また、熱交換器を用いた加熱殺菌機構では、洗米水は長く延びる配管を流れながら高温で加熱されるため、洗米水に含まれる固形分が次第に配管内に固着・堆積して配管に詰まりが生じやすく、送水能力の低下や洗浄作業の煩雑化を招き、装置の連続稼働に支障をきたすおそれもある。
【0006】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、洗米水の加熱殺菌に適したコンパクトで熱効率に優れる洗米水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本実施の形態に係る洗米水処理装置は、洗米水を循環させる循環機構と、循環機構により循環する洗米水中に蒸気を噴射し、洗米水の温度を殺菌温度領域まで上昇させるスチーム手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る洗米水処理装置によれば、蒸気の噴射によって洗米水を加熱するため、装置をコンパクト化することが可能となる。また、循環させながら蒸気を噴射することで、装置内において洗米水由来の固形分の固着を抑制しつつ、洗米水を均一に加熱できるため、洗米水を効率的に殺菌処理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係る洗米水処理装置の概略図である。
【
図2】実施形態2に係る洗米水処理装置の概略図である。
【
図3】実施形態3に係る洗米水処理装置の概略図である。
【
図6】実施形態3に係る洗米水処理装置の全体構成を示す概略図である。
【
図7】実施形態3に係る洗米水処理装置の作動例を示すグラフである。
【
図8】実施形態3に係る洗米水処理装置の性能を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。例えば、部材の形状、部材の配置、大きさ等は本発明から逸脱しない範囲で変更することができる。
【0011】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る洗米水処理装置100の概略図である。洗米水処理装置100は、例えば無洗米製造装置500等の、米の加工装置から排出される洗米水を加熱処理する装置である。実施形態1において洗米水処理装置100は、無洗米製造装置500に連結されており、無洗米製造装置500と連動させて連続的に稼働させることが可能である。洗米水処理装置100は、洗米水を循環させながら蒸気により加熱殺菌することで、洗米水に含まれる一般生菌数を低減させ、洗米水の鮮度を長期間保持可能とする。洗米水処理装置100によって加熱殺菌した洗米水は、食品添加物、加工食品、及び飼料原料の一部として利用可能である。
【0012】
以下、実施形態1に係る洗米水処理装置100の概略構造について説明する。洗米水処理装置100は、洗米水を循環させる循環機構1と、循環機構1により循環する洗米水中に蒸気を噴射し、洗米水の温度を殺菌温度領域まで上昇させるスチーム手段2と、を備える。より具体的には、洗米水処理装置100は、無洗米製造装置500から供給された洗米水を一時的に貯留可能な処理タンク3と、処理タンク3を介して洗米水を循環させる循環機構1と、処理タンク3内に蒸気を噴射するスチーム手段2と、循環機構1から加熱された洗米水が送り込まれる貯留タンク4とを備える。
【0013】
処理タンク3は、無洗米製造装置500に連結されており、無洗米製造装置500から供給される洗米水を、例えば50L等の所定量まで一時的に貯留することができる。処理タンク3の底部にはスチーム手段2が配置される。
【0014】
処理タンク3内に蒸気を噴射するスチーム手段2は、他の位置に配置されるスチーム手段と区別するため、以下においてタンクスチーム手段21という。タンクスチーム手段21は、処理タンク3内において洗米水中に蒸気を噴射することにより、洗米水の温度を殺菌温度領域まで上昇させることができる。
【0015】
循環機構1は、処理タンク3から貯留タンク4へ延びる送り配管1a、及び、送り配管1aから分岐して処理タンク3へ延びる戻り配管1bを備え、処理タンク3を介して洗米水を循環させる。送り配管1aには、洗米水を処理タンク3から貯留タンク4側へ送る、又は、洗米水を循環機構1において循環させるためのポンプ11が設けられる。送り配管1aには、ポンプ11よりも貯留タンク4側において切換弁12が設けられる。切換弁12は、洗米水の流路を、貯留タンク4へと繋がる送り配管1aへ、又は、送り配管1aから分岐する戻り配管1bへ切り換え可能である。
【0016】
処理タンク3には温度計31が備えられる。温度計31は、処理タンク3内において洗米水の温度を計測する。温度計31によって、送り配管1a、戻り配管1b及び処理タンク3を循環する洗米水の温度を監視することができる。洗米水は、その温度が殺菌温度領域に達するまで、切換弁12によって戻り配管1bへ流されて処理タンク3へ戻り、処理タンク3内でタンクスチーム手段21によってさらに加熱されることを繰り返して循環機構1を循環する。処理タンク3内の温度計31が、洗米水の温度が殺菌温度領域に達したことを検知すると、切換弁12は流路を切り換えて、洗米水を送り配管1aから貯留タンク4へ送り込む。貯留タンク4内では、殺菌済みの洗米水を常温で長期間貯留しておくことが可能である。貯留タンク4内で貯留されている間、洗米水は常時撹拌されることが好ましい。
【0017】
実施形態1において、洗米水の温度は、殺菌温度領域まで1段階で上昇させても良いが、静菌温度領域まで上昇させた後、殺菌温度領域まで2段階で上昇させても良い。なお、静菌温度領域とは、微生物の活動を抑制できるほどの温度領域である。微生物の活動に適した温度は、微生物の種類や水溶液のpH(水素イオン指数)によって幅があるが、例えば20~45℃であり、30℃前後が最適と言える。そのため、静菌温度領域は好ましくは40~50℃、より好ましくは45~50℃の温度領域である。殺菌温度領域とは、殺菌可能な温度領域であり、例えば60~80℃の温度領域である。
【0018】
(実施形態1の作用効果)
以上説明したように、実施形態1の洗米水処理装置100によれば、スチーム手段2による蒸気の噴射によって洗米水を加熱するため、装置をコンパクト化することが可能となる。また、循環機構1によって洗米水を循環させながら蒸気を噴射することで、洗米水を均一に加熱できるため、装置内において、特に配管内において洗米水由来の固形分が固着し難く、送水能力の低下や洗浄工程の煩雑化を防ぎ、洗米水を熱効率良く処理することが可能となる。
【0019】
洗米水処理装置100において、無洗米製造装置500等の洗米水を排出する装置に、その排出された洗米水を一時的に貯留可能な処理タンク3を連結することで、洗米水処理装置100及び無洗米製造装置500の両方の連続稼働が可能となるため、洗米水をより効率的に処理可能となる。また、処理タンク3内に蒸気を噴射するスチーム手段2が設けられることで、無洗米製造装置500から供給された洗米水を処理タンク3内で直ちに加熱し始めることが可能となるため、洗米水の腐敗を直ちに防止し、より高く鮮度を保つことが可能となる。
【0020】
洗米水の温度を、静菌温度領域まで上昇させた後、殺菌温度領域まで2段階で上昇させる構成とした場合、1段階で殺菌温度領域まで上昇させるよりも、装置内において、特に配管内において、洗米水由来の固形分の固着を抑制することができ、洗米水を熱効率良く処理することが可能となる。
【0021】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る洗米水処理装置200の構成について説明する。
図2は、本発明の実施形態2に係る洗米水処理装置200の概略図である。
図2は実施形態1と同じ部材については同じ符号を付し、以下の説明において実施形態1と同じ部材についての詳細な説明は省略する。なお、
図2では、洗米水処理装置200に循環機構1を設けていないが、洗米水処理装置200に循環機構1を設けることは任意である。
【0022】
実施形態2の洗米水処理装置200は、洗米水の温度を、静菌温度領域まで上昇させた後、殺菌温度領域まで2段階で上昇させる。洗米水処理装置200では、1段階目の昇温に用いるスチーム手段2(21)と、2段階目の昇温に用いるスチーム手段2(22)を備える。
【0023】
1段階目の昇温に用いるスチーム手段2は、処理タンク3の底部に配置されるタンクスチーム手段21である。タンクスチーム手段21は、処理タンク3内において洗米水中に蒸気が噴射されることにより、洗米水の温度を殺菌温度領域まで上昇させることができる。処理タンク3から延びる送り配管1aには、洗米水を処理タンク3から貯留タンク4側へ送るためのポンプ11が設けられる。
【0024】
処理タンク3内は、開放された空間、すなわち、処理タンク3内と外部とが連通して空気を取り込むことが可能な状態の空間である。タンクスチーム手段21は、この開放された空間である処理タンク3内で洗米水中に蒸気を噴射する。タンクスチーム手段21は、洗米水を静菌温度領域まで昇温する。
【0025】
2段階目の昇温に用いるスチーム手段2は、送り配管1aに配置される。このスチーム手段2はタンクスチーム手段21と区別するため、以下において流路スチーム手段22という。流路スチーム手段22は、送り配管1aのポンプ11より貯留タンク4側に配置される。流路スチーム手段22は、送り配管1a内に直接蒸気を噴射可能である。流路スチーム手段22は、送り配管1aが延びる方向と略直交する方向に向かって蒸気を噴射可能である。
【0026】
送り配管1a内は、閉塞された空間、すなわち、送り配管1a内と外部とが連通しておらず空気を取り込めない状態の空間である。流路スチーム手段22は、この閉塞された空間である送り配管1a内の洗米水中に蒸気を噴射する。
【0027】
流路スチーム手段22は、タンクスチーム手段21よりも高い圧力で蒸気を噴射する。例えば、タンクスチーム手段21が蒸気を噴射する圧力が1気圧であるとき、流路スチーム手段22が蒸気を噴射する圧力は2気圧である。流路スチーム手段22の蒸気量は、例えば洗米水量の2~12%とすることが好ましい。流路スチーム手段22は、高い圧力によりタンクスチーム手段21よりも高い温度まで洗米水を昇温可能である。例えば、タンクスチーム手段21の設定温度は40~50℃であり、流路スチーム手段22の設定温度は60~80℃である。タンクスチーム手段21は、開放された空間である処理タンク3内で洗米水を静菌温度領域まで昇温し、流路スチーム手段22は、静菌温度領域まで昇温した洗米水を、閉塞された空間である送り配管1a内で更に殺菌温度領域まで昇温する。
【0028】
(実施形態2の作用効果)
開放空間である処理タンク3内において、タンクスチーム手段21により洗米水を殺菌温度領域まで急激に昇温すると、洗米水が泡立ち易く、気泡によって送水能力が低下するおそれがある。しかしながら、実施形態2の洗米水処理装置200では、開放された空間である処理タンク3内で、タンクスチーム手段21が洗米水を静菌温度領域まで昇温するため、処理タンク3内で洗米水に気泡が発生し難い。また、静菌温度領域まで昇温した洗米水を、流路スチーム手段22が更に殺菌温度領域まで昇温するが、閉塞された送り配管1a内であれば流路スチーム手段22による蒸気噴射も洗米水に気泡を発生し難く、加熱効率も良い。そのため、送水能力の低下を防ぎ、熱効率良く洗米水を殺菌処理可能である。また、このような2段階加熱により、配管内において、洗米水由来の固形分の固着を抑制することができ、洗米水を熱効率良く処理することが可能となる。
【0029】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係る洗米水処理装置300の構成について説明する。
図3は、本発明の実施形態3に係る洗米水処理装置300の概略図であり、
図4は、実施形態3の処理タンクの模式図であり、
図5は、実施形態3の貯留タンクの模式図である。
図3~
図5は上記実施形態と同じ部材について同じ符号を付し、以下の説明において上記実施形態と同じ部材についての詳細な説明は省略する。
【0030】
実施形態3の洗米水処理装置300は、洗米水を循環させる循環機構50,60と、循環機構により循環する洗米水中に蒸気を噴射するスチーム手段2(21,22)と、を備える。洗米水処理装置300において、循環機構は、洗米水の温度を微生物の活動を抑制する静菌温度領域まで上昇させる静菌循環機構50と、静菌循環機構50により静菌温度領域まで上昇させた洗米水の温度を更に殺菌温度領域まで上昇させる殺菌循環機構60と、を含む。
【0031】
静菌循環機構50と殺菌循環機構60はそれぞれ処理タンク3を介して洗米水を循環させる配管を備える。洗米水は静菌循環機構50を循環した後、殺菌循環機構60を循環し、殺菌温度領域に達すると、切換弁の操作により貯留タンク4へ送り込まれる。
【0032】
静菌循環機構50には、洗米水を静菌温度領域まで昇温させるタンクスチーム手段21が設けられる。タンクスチーム手段21は、開放空間である処理タンク3内において蒸気を噴射する。殺菌循環機構60には、洗米水を殺菌温度領域まで昇温させる流路スチーム手段22が設けられる。流路スチーム手段22は、閉塞空間である送り配管60a内に蒸気を噴射する。
【0033】
静菌循環機構50は、処理タンク3から貯留タンク4へ延びる送り配管50a、及び、送り配管50aから分岐して処理タンク3へ延びる戻り配管50bを備え、処理タンク3を介して洗米水を循環させる。送り配管50aには、洗米水を処理タンク3から貯留タンク4側へ送る、又は、洗米水を循環させるためのポンプ11が設けられる。送り配管50aには、ポンプ11より貯留タンク4側において静菌循環切換弁51が設けられる。
【0034】
処理タンク3は、タンクスチーム手段21、洗米水供給部30、温度計31、レベル計32、洗浄剤供給部33及び水供給部34を備える。洗米水供給部30は、無洗米製造装置500の排水口に連結され、無洗米製造装置500から排出される洗米水を処理タンク3へ供給する。温度計31は、処理タンク3の底部において洗米水の温度を計測することにより、送り配管50a、戻り配管50b及び処理タンク3を循環する洗米水の温度を監視する。レベル計32は、処理タンク3の底部にその下端が位置し、処理タンク内の洗米水の水位を監視する。洗浄剤供給部33は、洗米水処理装置300を洗浄する際に、処理タンク3へ洗浄剤を供給する。水供給部34は、洗米水処理装置300を洗浄する際に、処理タンク3へ水を供給する。
【0035】
洗米水供給部30から供給された洗米水は、直ちにタンクスチーム手段21により処理タンク3内において蒸気を噴射されながら昇温される。洗米水は、処理タンク3からポンプ11を介して送り配管50aへ送られる。処理タンク3とポンプ11の間には、排水切換弁35が設けられる。排水切換弁35は、洗米水又は洗浄水の流路を、処理タンク3からポンプ11へ、又は、処理タンク3から排水口5へ切り換え可能である。
【0036】
静菌循環切換弁51は、洗米水の流路を、貯留タンク4側の送り配管60aへ、又は、送り配管50aから分岐する戻り配管50bへ切り換え可能である。洗米水は、その温度が静菌温度領域に達するまでは、静菌循環切換弁51によって戻り配管50bへ流されて処理タンク3へ戻り、さらに処理タンク3内でタンクスチーム手段21によって加熱されることを繰り返して静菌循環機構50を循環する。処理タンク内の温度計31が、洗米水の温度が静菌温度領域に達したことを検知すると、静菌循環切換弁51が流路を切り換えて、洗米水を貯留タンク4側の送り配管60aへ送る。
【0037】
殺菌循環機構60は、静菌循環切換弁51から貯留タンク4へ延びる送り配管60a、及び、送り配管60aから分岐して処理タンク3へ延びる戻り配管60bを備え、処理タンク3を介して洗米水を循環させる。送り配管60aは、処理タンク3側から貯留タンク4側へ向かって、流路スチーム手段22、温度計61、酸添加手段62、及び殺菌循環切換弁63をこの順に備える。
【0038】
静菌循環機構50において静菌温度領域に達した洗米水は、処理タンク3から排水切換弁35及びポンプ11を介して送り配管50aへ送り込まれ、静菌循環切換弁51を通過してさらに貯留タンク4側の送り配管60aへ送り込まれる。
【0039】
流路スチーム手段22は、静菌温度領域まで昇温した洗米水を、閉塞された空間である送り配管60a内で殺菌温度領域まで更に昇温する。送り配管60aにおいて流路スチーム手段22が配置される位置は、ミキシング部64である。流路スチーム手段22は、ミキシング部64において送り配管1aが延びる方向と略直交する方向に向かって蒸気を噴射可能である。流路スチーム手段22は、ミキシング部64において洗米水へ蒸気を噴射することにより、洗米水を撹拌するとともにさらに昇温する。流路スチーム手段22は、送り配管60aとの間に流量計22aを備える。流路スチーム手段22は、流量計22aによって蒸気量を制御することが可能である。流路スチーム手段22は、タンクスチーム手段21よりも高い圧力で蒸気を噴射する。
【0040】
流路スチーム手段22において加熱された洗米水は、送り配管60aに設けられた温度計61を通過する。温度計61は、送り配管60aにおいて洗米水の温度を計測することにより、送り配管50a,60a、戻り配管60b及び処理タンク3を循環する洗米水の温度を監視する。
【0041】
殺菌循環切換弁63は、洗米水の流路を、送り配管60aから貯留タンク4側の送り配管70aへ、又は、送り配管60aから分岐する戻り配管60bへ切り換え可能である。洗米水は、その温度が殺菌温度領域に達するまでは、殺菌循環切換弁63によって戻り配管60bへ流されて処理タンク3へ戻り、さらに送り配管60a内で流路スチーム手段22によって加熱されることを繰り返して殺菌循環機構60を循環する。
【0042】
酸添加手段62は、殺菌温度領域まで温度上昇した洗米水に有機酸を加える。温度計61が、洗米水の温度が殺菌温度領域に達したことを検知すると、酸添加手段62によって送り配管60a内の洗米水へ有機酸が添加される。殺菌循環切換弁63は、処理タンク3よりも貯留タンク4に近接して設けられる。より具体的には、殺菌循環切換弁63は、酸添加手段62よりも貯留タンク4側に近接して設けられる。酸添加手段62は、殺菌循環切換弁63は、温度計61と殺菌循環切換弁63との間の送り配管60a内に向かって有機酸を添加可能に配置される。酸添加手段62は、送り配管60aとの間に流量計62aを備え、所定量の有機酸を洗米水へ加えることにより、洗米水を腐敗の起こり難い水素イオン指数とする。腐敗の起こり難い洗米水の水素イオン指数とはpH3.5~4.2である。
【0043】
酸添加手段62により洗米水に添加される有機酸は限定されないが、例えば、ギ酸、クエン酸、乳酸、酢酸、リンゴ酸等を用いることができる。洗米水に添加される有機酸は、好ましくはクエン酸である。クエン酸を添加することにより、殺菌処理後の洗米水の食品への利用が可能となる。クエン酸を添加する場合は、例えば、クエン酸の50%水溶液を酸添加手段62に供給し、洗米水の1~3%の添加率で添加することにより、洗米水の水素イオン指数pHを3.5~4.2とし、洗米水の腐敗が起こり難い酸性領域にすることができる。
【0044】
殺菌循環切換弁63は、有機酸が添加された洗米水を、戻り配管60bへは戻さず、送り配管70aから貯留タンク4へ送り込む。貯留タンク4内の加熱殺菌済みの洗米水が処理タンク3側へ戻らないよう、殺菌循環切換弁63と貯留タンク4との間の送り配管70aには逆止弁71が設けられる。
【0045】
貯留タンク4は、レベル計41、撹拌機42、温度計43、及び洗浄剤供給部44を備える。レベル計41は、貯留タンク4の底部にその下端が位置し、貯留タンク4内の洗米水の水位を監視する。撹拌機42は、貯留タンク4内に上下に延びる回転軸42aと、回転軸42aに備えられる回転翼42bを有する。撹拌機42は、貯留タンク4内の洗米水を撹拌する。洗浄剤供給部44は、洗米水処理装置300を洗浄する際に、貯留タンク4へ洗浄剤を供給する。温度計43は、貯留タンク4内の洗米水の温度を監視する。
【0046】
貯留タンク4は、洗米水の熱を回収するためのサイクロン式の熱回収装置80を備える。貯留タンク4内に発生した水蒸気は、熱回収装置80へ供給される。熱回収装置80は、水蒸気から水Wを結露として分離させて排水するとともに、ファン81を介して空気Aを排出する。撹拌機42による撹拌及び熱回収装置80によって50℃以下に冷却されると、洗米水は排水切換弁45から輸送車Tへ送水することが可能となる。
【0047】
図6は、実施形態3に係る洗米水処理装置の全体構成を示す概略図である。
図6に示すように、洗米水処理装置300は、2つの無洗米製造装置500A,500Bにそれぞれ連結された2つの処理タンク3A,3Bと、2つの貯留タンク4A,4Bによって、切り換え可能な構成としてもよい。
【0048】
処理タンク3Aには無洗米製造装置500Aからの洗米水が供給され、処理タンク3Bには無洗米製造装置500Bからの洗米水が供給される。静菌循環機構50によって静菌温度領域まで昇温された洗米水は、処理タンク3A,3Bから静菌循環切換弁51を介して、殺菌循環機構60へ送られる。
【0049】
殺菌循環機構60には、殺菌循環切換弁63よりも処理タンク3側の送り配管60aに、タンク切換弁65が設けられる。処理タンク3A側に設けられるタンク切換弁65は、処理タンク3A又は貯留タンク4Aへ切り換え可能な殺菌循環切換弁63に繋がる送り配管60aと、処理タンク3A又は貯留タンク4Bへ切り換え可能な殺菌循環切換弁63に繋がる送り配管60a、いずれかの送り配管へ流路を切り換え可能である。処理タンク3B側に設けられるタンク切換弁65は、処理タンク3B又は貯留タンク4Aへ切り換え可能な殺菌循環切換弁63に繋がる送り配管60aと、処理タンク3B又は貯留タンク4Bへ切り換え可能な殺菌循環切換弁63に繋がる送り配管60a、いずれかの送り配管へ流路を切り換え可能である。タンク切換弁65によって、処理タンク3A,3Bの殺菌循環機構60によって殺菌処理された洗米水は、貯留タンク4A,4Bのいずれに貯留するかを選択可能である。
【0050】
図7は、実施形態3に係る洗米水処理装置の作動例を示すグラフである。
図7に示すように、無洗米製造装置500と洗米水処理装置300は連動させることが可能である。無洗米製造装置500の電源がONになると、無洗米製造装置500からの供給により、処理タンク3内の洗米水の水位が上がっていくことがレベル計32により確認される。
【0051】
処理タンク3内に洗米水が溜まり始めると、ポンプ11が稼働して洗米水が循環されるとともに、タンクスチーム手段21が稼働して洗米水の昇温が始まる。タンクスチーム手段21は、洗米水が設定温度の40~50℃に到達するまでONとOFFを繰り返す。
【0052】
洗米水の温度が静菌温度領域に達すると、静菌循環切換弁51が殺菌循環機構60へのパスに切り換えられ、流路スチーム手段22による加熱が始まる。流路スチーム手段22は、洗米水が設定温度の60~80℃に到達するまで作動する。
【0053】
洗米水の温度が殺菌温度領域に達すると、酸添加手段62が作動して、洗米水に有機酸が添加される。酸添加手段62の作動後、殺菌循環切換弁63が切り換えられて、洗米水は貯留タンク4へ溜まり始める。貯留タンク4内の洗米水の温度が50℃以下に下がると、排水切換弁45が作動して輸送車Tへの送水が可能となる。
【0054】
図8は、実施形態3に係る洗米水処理装置の性能を示す表である。
図8に示すように、加熱前の処理タンク3内の洗米水と比べて、殺菌加熱後、有機酸を添加した貯留タンク4内の洗米水は、pHが3.79まで下がっており、一般生菌数はほとんど検出されなかった。また、貯留タンク4に約12時間貯留させておいた洗米水を出荷時に測定したところ、pHはほとんど変化しておらず、一般生菌数も貯留開始時から変化していなかったことから、鮮度を保持できていることが確認できた。
【0055】
(実施形態3の作用効果)
静菌循環機構50と殺菌循環機構60とで、処理タンク3を介して循環させながら2段階で温度を上昇させることで、洗米水を均一に加熱できるため、装置内において、特に配管内において洗米水由来の固形分が固着し難く、送水能力の低下や洗浄工程の煩雑化を防ぎ、洗米水を熱効率良く処理する効果をより高めることができる。
【0056】
酸添加手段62によって、加熱殺菌後の洗米水に有機酸を添加することで、洗米水の殺菌状態を長期間保持することが可能となる。本実施形態では、撹拌機42によって常温で撹拌し続けることにより、貯留タンク4内において洗米水の殺菌状態を保って最長7日間貯留することが可能となる。酸添加手段62は循環機構に設けられることで、酸添加部分を含めて循環させて洗浄できるため、洗浄作業が効率化できる。また、酸添加手段62を送り配管60aに設けたことにより、送り配管60a内を流れる洗米水の流動を利用して有機酸を均一に混合させることが可能となる。
【0057】
殺菌循環切換弁63が、処理タンク3よりも貯留タンク4に近接して設けられることにより、装置内の大部分を洗浄可能となるため、洗浄時の作業効率が良い。殺菌循環切換弁63は、酸添加手段62よりも貯留タンク4に近接して設けられることで、装置内のより広範囲を循環させて洗浄可能となるため、洗浄時の作業効率がさらに向上する。
【0058】
貯留タンク4A,4Bを2つ備え、タンク切換弁65によって、処理タンク3A,3Bの殺菌循環機構60によって殺菌処理された洗米水を、貯留タンク4A,4Bのいずれに貯留するかを選択可能な構成とすることで、一方の貯留タンクが満量になった時、又は、一方の貯留タンクを洗浄する時に、他方の貯留タンクへ自動的に切り換えることが可能であるため、無洗米製造装置500及び洗米水処理装置300を停止させることなく連続して稼働させることが可能となる。
【0059】
実施形態1から3の洗米水処理装置に備えられる技術的特徴は任意に組み合わせ可能である。これらの技術的特徴を組み合わせることで、実施形態1の効果をより高めることが可能であるとともに、各構成により得られる効果と組み合わさって、従来の洗米水処理装置では得られなかった異質な効果や顕著な効果を奏することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明に係る洗米水処理装置は、洗米水を加熱殺菌処理してその鮮度を保つことが可能であり、処理された洗米水は食品添加物や飼料原料の一部として極めて有用である。
【符号の説明】
【0061】
1 循環機構
2 スチーム手段
3 処理タンク
4 貯留タンク
21 タンクスチーム手段
22 流路スチーム手段
50 静菌循環機構
60 殺菌循環機構
62 酸添加手段
100,200,300 洗米水処理装置
500 無洗米製造装置