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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046277
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】符号化方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 11/20 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
G06T11/20 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151578
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダン ヤマン
(72)【発明者】
【氏名】横山 徹
【テーマコード(参考)】
5B080
【Fターム(参考)】
5B080CA00
5B080FA02
5B080GA00
(57)【要約】
【課題】複数の信号間の相関を学習および推論可能な画像を生成できる。
【解決手段】符号化方法は、コンピュータが実行する、複数の出力装置の出力を符号化する符号化方法であって、複数の出力装置の出力である収集データ群を取得する取得ステップと、収集データ群に基づき、時間帯ごと、および出力装置ごとの検証済データである検証済データ群を生成する検証ステップと、検証済データ群に基づき、複数の出力装置に含まれる2以上の出力装置の検証済データを符号化した符号化画像を作成する画像生成ステップと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが実行する、複数の出力装置の出力を符号化する符号化方法であって、
前記複数の出力装置の出力である収集データ群を取得する取得ステップと、
前記収集データ群に基づき、時間帯ごと、および前記出力装置ごとの検証済データである検証済データ群を生成する検証ステップと、
前記検証済データ群に基づき、前記複数の出力装置に含まれる2以上の前記出力装置の前記検証済データを符号化した符号化画像を作成する画像生成ステップと、を含む符号化方法。
【請求項2】
請求項1に記載の符号化方法において、
前記符号化画像は第1方向および前記第1方向に直交する第2方向に広がりを有する二次元画像であり、
前記画像生成ステップでは、時間帯の異なる前記検証済データを前記第1方向の異なる位置に配置し、値が異なる前記検証済データを前記第2方向の異なる位置に配置する、符号化方法。
【請求項3】
請求項2に記載の符号化方法において、
前記画像生成ステップではさらに、
同一の前記出力装置に由来する前記検証済データを時系列順に線で結ぶ、符号化方法。
【請求項4】
請求項1に記載の符号化方法において、
前記画像生成ステップでは、
前記符号化画像を複数の領域に分割して、前記領域ごとに1つの前記出力装置である処理対象出力装置の前記出力に対応する前記検証済データを輝度、濃淡、または色として符号化する、符号化方法。
【請求項5】
請求項4に記載の符号化方法において、
前記符号化画像は第1方向および前記第1方向に直交する第2方向に広がりを有する二次元画像であり、
前記画像生成ステップでは、
前記領域ごとに前記処理対象出力装置を対象として、第1の時間帯の間隔の前記出力に対応する前記検証済データを前記第1方向に並べ、前記第1の時間帯の間隔よりも長い時間間隔である第2の時間帯の間隔の前記出力に対応する前記検証済データを前記第2方向に並べる、符号化方法。
【請求項6】
請求項1に記載の符号化方法において、
前記符号化画像は複数のレイヤを含み、
前記複数の出力装置の出力の相関に基づき、同一のレイヤに描画する前記出力装置の組み合わせを決定する描画決定ステップをさらに含む、符号化方法。
【請求項7】
請求項1に記載の符号化方法において、
要求仕様に基づき前記符号化画像の種類を決定する描画判断ステップをさらに含み、
前記画像生成ステップでは、前記描画判断ステップにおいて決定された種類の前記符号化画像を生成する、符号化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、符号化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造や制御の自動化のために製造設備では従前より様々なセンサが用いられてきた。近年は製造設備以外の様々な場所、たとえばオフィスや一般家庭でも様々なセンサが用いられている。センサによる測定値は制御だけでなく状態監視や異常検出にも用いられる。特許文献1には、時系列のデータからパターンを検出システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/379589号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている発明では、1つの信号しか処理対象にできない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様による符号化方法は、コンピュータが実行する、複数の出力装置の出力を符号化する符号化方法であって、前記複数の出力装置の出力である収集データ群を取得する取得ステップと、前記収集データ群に基づき、時間帯ごと、および前記出力装置ごとの検証済データである検証済データ群を生成する検証ステップと、前記検証済データ群に基づき、前記複数の出力装置に含まれる2以上の前記出力装置の前記検証済データを符号化した符号化画像を作成する画像生成ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、複数の信号間の相関を学習および推論可能な画像を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】演算装置の利用シーンを示す図
図2】演算装置の機能構成図
図3】演算装置のハードウエア構成図
図4】装置リストの一例を示す図
図5】収集データの一例を示す図
図6】前処理済データの一例を示す図
図7】検証済データの一例を示す図
図8】画像パラメータの一例を示す図
図9】要求仕様の一例を示す図
図10】グラフ画像の一例を示す図
図11】ピクセル画像の一例を示す図
図12】描画判断部の処理を示すフローチャート
図13】画像生成部の処理を示すフローチャート
図14】変形例1におけるグラフ画像のバリエーションを示す図
図15】変形例1におけるグラフ画像の別のバリエーションを示す図
図16】変形例2におけるピクセル画像の別のバリエーションを示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
―第1の実施の形態―
以下、図1図13を参照して、符号化方法の第1の実施の形態を説明する。図1は、本発明に係る演算装置1の利用シーンを示す図である。演算装置1は、複数の出力装置9が出力する多数の出力値を用いてグラフ画像48やピクセル画像49を生成する。グラフ画像48およびピクセル画像49は、学習モデル1000に入力され、学習や推論に利用される。
【0009】
学習モデル1000には、公知の様々な構成を採用できる。学習モデル1000が採用するモデルの種類は特に限定されず、教師あり学習、教師なし学習、および強化学習のいずれでもよい。学習モデル1000は、演算装置1により実行されてもよいし、演算装置1とは異なる装置により実行されてもよい。学習モデル1000は、学習フェーズと推論フェーズでは異なる装置により実行されてもよいし、学習フェーズと推論フェーズではグラフ画像48やピクセル画像49を生成する演算装置1が物理的に異なる装置でもよい。
【0010】
出力装置9は、センサや電子制御される様々な電子制御機器である。出力値は、センサのセンシングデータ、電子制御機器の演算結果、および電子制御機器が外部から設定される値などである。出力値の具体例としては、温度センサが測定した温度、近接センサが測定した単位時間当たりの近接回数、速度センサが測定した速度、自動調光機能を有する照明が設定した照度、コントロールバルブを制御するポジショナが演算した弁開度などである。さらに出力値は、ユーザにより設定された空調設備の設定温度、ユーザにより設定されたベルトコンベアの速度などでもよい。
【0011】
出力装置9と学習モデル1000の出力の関係はたとえば次のものである。第1の例では、出力装置9はある室内に設置されたセンサや電子制御機器である。その室内に設置された演算装置1がグラフ画像48を生成してクラウドサーバ上で動作する学習モデル1000に入力する。学習モデル1000は、グラフ画像48に基づきその室内の状態、たとえば、正常、浸水、火事などを推論する。第2の例では、出力装置9はスマートフォンに内蔵される加速度センサおよびジャイロである。演算装置1は同じスマートフォンであり、ピクセル画像49を生成して学習モデル1000に入力し、スマートフォンを所持している人間の動作、たとえばランニング中、歩行中、エスカレータで移動中、などを推論する。
【0012】
以下では、図1に示す構成のうち演算装置1によるグラフ画像48およびピクセル画像49の生成を詳しく説明する。演算装置1によるグラフ画像48やピクセル画像49の生成方法は、学習モデル1000の動作フェーズに関わらず一定である。以下では、演算装置1はグラフ画像48およびピクセル画像49の両方を作成可能として説明するが、演算装置1は、グラフ画像48およびピクセル画像49の少なくとも一方を作成可能であればよい。
【0013】
図2は演算装置1の機能構成図である。演算装置1は、取得部11と、前処理部12と、検証部13と、画像生成部14と、描画判断部15と、を備える。ただし図2では、説明の便宜のために演算装置1が備える記憶装置4に格納されるデータも記載している。記憶装置4には、装置リスト41と、収集データ群42と、前処理済データ群43と、検証済データ群44と、画像パラメータ45と、要求仕様46と、グラフ画像48と、ピクセル画像49とが格納される。
【0014】
取得部11は、複数の出力装置9から出力値を取得して収集データ群42として記憶装置4に格納する。取得部11とそれぞれの出力装置9との通信は有線でもよいし無線でもよい。また、取得部11は出力装置9と直接に通信してもよいし中継器やネットワークを介して間接的に通信してもよい。さらに取得部11は、出力装置9と直接通信する代わりに、記憶媒体を介してオフラインで出力値を取得してもよい。
【0015】
前処理部12は、収集データ群42を処理して前処理済データ群43を生成する。前処理部12は、収集データ群42に含まれる全てのデータを時系列順に並べ、装置リスト41に記載されている補間手法を用いて空欄を埋める。また前処理部12は、収集データ群42に含まれる非数値データをあらかじめ定められた手法により数値に変換する。たとえば前処理部12は、ON-OFF値のONを「1」に置き換え、OFFを「0」に置き換える。
【0016】
検証部13は、前処理済データ群43を処理して検証済データ群44を生成する。検証部13は、センシングデータが所定の時間間隔となるように、データの統合や不足データの補足を行い検証済データを生成する。換言すると、検証部13は出力装置9ごとにそれぞれの時間帯を代表する出力値となる検証済データを生成する。本実施の形態では、この時間帯を1分とした例を説明するが、1分よりも短い1秒や0.5秒でもよいし、1分よりも長い30分、1時間、1日などでもよい。
【0017】
画像生成部14は、グラフ画像48およびピクセル画像49を生成する。描画判断部15は、装置リスト41における描画タイプおよびレイヤ番号を決定する。換言すると描画判断部15は、それぞれの出力値の描画タイプおよびレイヤ番号を決定して装置リスト41に書き込む。ただし描画判断部15は演算装置1に必須の構成ではなく、装置リスト41があらかじめ完成している場合や、オペレータが装置リスト41を書き換える場合には演算装置1は描画判断部15を備えなくてもよい。
【0018】
装置リスト41には、出力装置9が出力する出力値に関するデータが記載される。装置リスト41に含まれるデータは、描画タイプおよびレイヤ番号を除いてあらかじめ作成される。収集データ群42は、取得部11が出力装置9から取得したセンシング情報の集合体である。これらのセンシング情報にはタイムスタンプが付されている。タイムスタンプはそれぞれの出力装置9が付してもよいし、取得部11が付してもよい。図2では、収集データ群42を概念的に示しているにすぎず、実際には複数のファイルから構成されてもよい。
【0019】
前処理済データ群43は、収集データ群42を用いて前処理部12が生成するデータの集合体である。検証済データ群44は、前処理済データ群43を用いて検証部13が生成するデータの集合体である。画像パラメータ45は、あらかじめ作成されるパラメータの集合であり、画像生成部14がグラフ画像48およびピクセル画像49を生成する際に参照される。要求仕様46は、演算装置1が生成する画像に関する要求であり、あらかじめ作成される。グラフ画像48は、検証済データ群44を構成する検証済データを用いて作成したグラフから軸や目盛りの値を除いた画像である。ピクセル画像49は、検証済データ群44に含まれる検証済データの1つずつを輝度、濃淡、または色として表した画像である。グラフ画像48およびピクセル画像49の具体例は後述する。
【0020】
図3は、演算装置1のハードウエア構成図である。演算装置1は、中央演算装置であるCPU81、読み出し専用の記憶装置であるROM82、読み書き可能な記憶装置であるRAM83、ユーザインタフェースである入出力装置84、通信装置85、および記憶装置4を備える。CPU81がROM82に格納されるプログラムをRAM83に展開して実行することで前述の様々な演算を行う。
【0021】
演算装置1は、CPU81、ROM82、およびRAM83の組み合わせの代わりに書き換え可能な論理回路であるFPGA(Field Programmable Gate Array)や特定用途向け集積回路であるASIC(Application Specific Integrated Circuit)により実現されてもよい。また演算装置1は、CPU81、ROM82、およびRAM83の組み合わせの代わりに、異なる構成の組み合わせ、たとえばCPU81、ROM82、RAM83とFPGAの組み合わせにより実現されてもよい。
【0022】
入出力装置84は、キーボード、マウス、液晶ディスプレイなどである。演算装置1は、入出力装置84を用いてユーザからの入力を受け付ける。ユーザは入出力装置84を用いて、装置リスト41や画像パラメータ45の入力や修正ができる。通信装置85は、他の装置との通信を可能とする通信モジュールであり、ネットワークインタフェースカードなどの独立したハードウエアでもよいし、SoCやCPUの一つの機能として実現されてもよい。通信装置85は、無線通信および有線通信のいずれを実現してもよい。記憶装置4は不揮発性の記憶装置、たとえばハードディスクドライブである。
【0023】
図4は、装置リスト41の一例を示す図である。装置リスト41には、出力装置9に含まれる全ての出力値に関する情報が記載される。図4に示す例では、D001~D004の4つの出力装置9の出力値に関して、出力種別、最小値、最大値、保管方法、および描画タイプが示されている。出力種別とは、センシングデータが数値、すなわち連続値であるか、それとも離散値であるかの区別である。図4に示す例では、離散値の場合には値の数も併せて記載している。図4に示す例では、出力装置9ごとに描画タイプが指定されているが、全ての出力装置9に対して共通の描画タイプを指定してもよい。
【0024】
最小値および最大値は、出力種別が連続値の場合のみ記載され、連続値の最小値と最大値が規定される。補間方法は、前処理部12による補間方法を表す。描画タイプは、グラフ画像48およびピクセル画像49のいずれか、および何番目のレイヤ―に描画するかの情報である。装置リスト41に記載される情報のうち、この描画タイプのみが描画判断部15により設定される。
【0025】
図5は、収集データ群42の一例を示す図である。図5に示す例では、D001~D004の4つの出力装置9の出力値が示されており、値が存在しない欄はシャープ(#)を記載している。図5では、説明の便宜のために全データを1つのテーブルにまとめ、タイムスタンプの値でソートしている。以下に説明する図6および図7の値は、この図5に示す値に基づいている。
【0026】
図6は、前処理済データ群43の一例を示す図である。図6では、図5に示す収集データ群42と値が異なる欄にアスタリスクを付している。図6図5からの変更点は次のとおりである。第1に、第2装置D002の「ON」の値が「1」に置き換えられ、「OFF」の値が「0」に置き換えられている。第2に、値が存在しなかった5つの欄に補間処理により何らかの値が設定されている。詳しくは後述するが、補間処理は前処理部12により装置リスト41に記載された補間方法の値に基づき行われる。
【0027】
図7は、検証済データ群44の一例を示す図である。図7図6から変更点は、一定の時間間隔となるように「10:24:30」のデータが削除された点である。これにより、1分間の時間帯ごとの出力装置9の出力の代表値が検証済データとして図7に列挙された。なお同図ではデータを削除する例を示しているが、同様に一定の時間間隔となるようにデータを追加してもよい。データの追加方法としては、前後のデータからの線形補間など公知の補間技術を用いてよい。
【0028】
図8は、画像パラメータ45の一例を示す図である。画像パラメータ45は、画像生成部14がグラフ画像48およびピクセル画像49を生成する際に参照される。画像パラメータ45はグラフ画像用とピクセル画像用の2つに大別される。グラフ画像用の画像パラメータ45は、横ピクセル数、縦ピクセル数、横幅全体に対応する時間、の3つである。「横ピクセル数」および「縦ピクセル数」は、生成するグラフ画像48の横サイズおよび縦サイズである。「横幅全体に対応する時間」は、グラフ画像48の横幅全体で表現される期間の長さであり、生成する1つのグラフ画像48に収める期間の長さとも言える。図8に示す例に基づき生成されるグラフ画像48は、横1440ピクセル、縦1000ピクセルであり、24時間、すなわち1日分のデータが格納される。
【0029】
図9は、要求仕様46の一例を示す図である。要求仕様46は、描画判断部15により参照される。要求仕様46は演算装置1が生成する画像に関する要求事項であり、視認性の要否、および簡潔性の要否が含まれる。図9に示す例では、演算装置1が生成する画像に視認性を要求する旨の「YES」、および演算装置1が生成する画像に簡潔性を要求する旨の「YES」が記載されている。
【0030】
ピクセル画像用の画像パラメータ45は、横ピクセル数、横幅全体に対応する時間、1画像中の1データの期間、およびデータ1点のピクセルサイズ、の4つである。「横ピクセル数」はグラフ画像用と同じ意味である。「横幅全体に対応する時間」は、ピクセル画像49の横幅全体で表現される期間の長さである。「1画像中の1データの期間」は、生成する1つのピクセル画像49に収める期間の長さである。図8に示す例では、「横幅全体に対応する時間」が「24時間」すなわち1日であり、「1画像中の1データの期間」が「7日」なので、1つのピクセル画像49に1種類のセンシングデータが7列存在する。「データ1点のピクセルサイズ」は、ピクセル画像49における1つのセンシングデータの横および縦のピクセル数である。
【0031】
図10は、グラフ画像48の一例を示す図である。図10に示す例では、5つの出力装置9、たとえば第1装置D001~第5装置D005の出力値のある1日のデータを折れ線グラフとしてプロットして得られるグラフがグラフ画像48である。ただし正確には、収集データ群42に含まれる出力装置9が出力したそのままの値ではなく、前処理部12および検証部13による処理を経た検証済データを用いてグラフ画像48が作成される。グラフ画像48は、相互に直交するX方向およびY方向に広がっている。図10に示すグラフ画像48は、横軸であるX方向に時刻、縦軸であるY方向に出力値をとり、検証済データ群44を構成する検証済データを描画して得られる画像である。具体的には、横軸の左端は0時0分の値であり、右端の値は23時59分の値である。ただしグラフ画像48の時間軸は1日でなくてもよく、1時間、数日、1年などでもよい。また、横軸の左端の時刻は上記に限られるものではなく、データの特性や用途に応じて任意の時刻としてもよい。
【0032】
第1装置のプロットは、縦軸の下端を第1装置の最小出力値とし、縦軸の上端を第1装置の最大出力値としている。第2装置のプロットは、縦軸の下端を第2装置の最小出力値とし、縦軸の上端を第2装置の最大出力値としている。第3装置~第5装置のプロットも同様である。ただし、第1装置の最小出力値とは特定のグラフ画像48の生成に用いる第1装置の最小値ではなく、全ての期間を通しての第1装置の最小出力値である。本実施の形態では、装置リスト41に記載の第1装置の最小値を用いる。同様に、第1装置の最大値は装置リスト41に記載の第1装置の最大値を用いる。第2装置~第5装置の最小値および最大値も同様である。図10では、作図の都合により装置ごとに線の種類を変更しているが、異なる色を用いることで装置の違いを表現してもよい。
【0033】
図11は、ピクセル画像49の一例を示す図である。図11に示すピクセル画像49は、第1装置D001~第10装置D010の合計10個の出力装置9の1週間分の出力値を示している。図11に示すピクセル画像49は、横1440ピクセル、縦70ピクセルである。このピクセル画像49を構成する1ピクセルは、1分ごとのいずれかの出力値を表す。1日は1440分なので、横の1ラインがある出力装置9のある一日の出力値を示す。図11では出力装置9ごとに1週間、すなわち7日分の出力値を示しているので、出力装置9ごとに縦方向に7ピクセルを使っている。
【0034】
図11の下に示すピクセル画像49の拡大図は、横5ピクセル、縦15ピクセルの範囲を示している。図11では各ピクセルのハッチングの種類により出力値を表している。左端の1列は0時0分から0時1分の出力値を表し、左端から2列目は0時1分から0時2分の出力値を表す。最上段は第1装置の1日目の出力値を示し、2段目は第1装置の2日目の出力値を示す。すなわち横方向には1分の時間間隔でプロットされており、縦方向には1日の時間間隔でプロットされている。図11では、作図の都合によりハッチングの種類でプロットの値を表現しているが、色でプロットの値を表現してもよい。
【0035】
図12は、描画判断部15の処理を示すフローチャートである。描画判断部15は、装置リスト41の描画タイプおよびレイヤ番号の欄が空欄の場合に次に説明する処理を行う。描画判断部15の処理は、画像生成部14によるグラフ画像48やピクセル画像49の生成よりも先に行われる。描画判断部15はまず要求仕様46を参照し、視認性が必要であるか否かを判断する。描画判断部15は、視認性が必要、換言すると要求仕様46における視認性の値が「YES」であると判断する場合には本ステップを肯定判断してステップS304に進み、視認性が不要であると判断する場合にはステップS302に進む。
【0036】
ステップS302では描画判断部15は、装置リスト41に記載された出力値の総数と、「20」および「50」である閾値との関係を判断する。描画判断部15は、出力値の総数が20未満であると判断する場合はステップS304に進み、出力値の総数が20以上50未満であると判断する場合はステップS303に進み、出力値の総数が50以上であると判断する場合はステップS305に進む。なお、本実施の形態では描画判定部15は、装置数「20」および「50」を閾値として上記の判断を行うが、必ずしもこれらの数値に限定されるものではなく、任意の値を定めてもよい。ステップS303では描画判断部15は、要求仕様46を参照し、簡潔性が必要であるか否かを判断する。描画判断部15は、簡潔性が必要、換言すると要求仕様46における簡潔性の値が「YES」であると判断する場合には本ステップを肯定判断してステップS305に進み、簡潔性が不要であると判断する場合にはステップS304に進む。
【0037】
ステップS304では描画判断部15は、生成する画像をグラフ画像48に決定してステップS311に進む。ステップS305では描画判断部15は、生成する画像をピクセル画像49に決定してステップS311に進む。ステップS311では描画判断部15は、これまでに得られた膨大な出力値を用いて、出力値同士の相関を示す相関係数を算出する。この相関係数には、ピアソンの積率相関係数やスピアマンの順位相関係数を用いることができ、他の相関係数を用いてもよい。
【0038】
続くステップS312では描画判断部15は、ステップS311において算出した相関係数の値に基づき、相互に関係性が強い出力値同士をグループ分けする。ただし1つのグループに含める出力値の数には限度があり、上限の一例を示すと、グラフ画像48は5~10程度、ピクセル画像49は20程度である。そして描画判断部15は、このグループごとに「1」からの連番を付する。なお、グループの番号に優劣はなく、このグループの番号がレイヤの番号として使用される。
【0039】
続くステップS313では描画判断部15は、ステップS304またはステップS305において決定された画像の種類、およびグループの番号を装置リスト41に記録して図12に示す処理を終了する。描画判断部15は、画像の種類を装置リスト41の描画タイプの欄に記載し、グループの番号をレイヤ番号の欄に記載する。なお以下では、図12のステップS301~S305を描画決定ステップとも呼び、ステップS311~S312を描画判断ステップとも呼ぶ。
【0040】
図13は、画像生成部14の処理を示すフローチャートである。画像生成部14はまずステップS321において、未描画のレイヤを処理対象に選択する。未描画のレイヤとは、装置リスト41に記載された全ての描画タイプおよびレイヤ番号の組み合わせのうち、まだ処理対象として選択していないレイヤである。たとえば図4に示す装置リスト41の例では、グラフ画像48のレイヤ番号1、グラフ画像48のレイヤ番号2、ピクセル画像49のレイヤ番号1、の3つがある。画像生成部14は、ステップS321の初回実行時にはこの3つからいずれか1つを処理対象レイヤに選択してステップS322に進む。
【0041】
続くステップS322では画像生成部14は、検証済データ群44から処理対象レイヤに属する全ての検証済データを読み込んでステップS323に進む。続くステップS323では画像生成部14は、処理対象レイヤの種別、すなわちグラフ画像48およびピクセル画像49のいずれであるかを判断する。画像生成部14は、処理対象レイヤがグラフ画像48のレイヤであると判断する場合はステップS324に進み、処理対象レイヤがピクセル画像49のレイヤであると判断する場合はステップS326に進む。
【0042】
ステップS324では画像生成部14は、ステップS322において読み込んだデータごとの最小値および最大値を装置リスト41から読み込む。この最小値および最大値は、図10に示すようにグラフ描画領域の下端および上端に対応する値となる。続くステップS325では画像生成部14は、ステップS322において読み込んだデータを、画像パラメータ45やステップS324において読み込んだ最小値および最大値に従ってグラフ描画する。このグラフはグラフ画像48の指定されたレイヤの画像となる。次に画像生成部14はステップS328に進む。
【0043】
ステップS326では画像生成部14は、ステップS322において読み込んだデータごとの最小値および最大値を装置リスト41から読み込み、出力値と色の対応を決定する。たとえば画像生成部14は、ある出力値の最小値が「0」で最大値が「100」の場合には、「0xffffff」を「100」で除した値を出力値「1」の重みとし、16進数表記の上から2桁ずつをR、G、Bそれぞれの値とする。続くステップS327では画像生成部14は、ステップS322において読み込んだ値、ステップS326において決定した値と色の対応関係、および画像パラメータ45の値に基づきピクセル画像49の指定されたレイヤに描画してステップS328に進む。
【0044】
ステップS325またはステップS327の処理が完了すると実行されるステップS328では画像生成部14は、装置リスト41に記載された全ての描画タイプおよびレイヤ番号の組み合わせの全てについて描画が完了したか否かを判断する。画像生成部14は、全て描画が完了したと判断する場合は図13に示す処理を終了し、未描画のレイヤが存在すると判断する場合はステップS321に戻る。
【0045】
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)コンピュータである演算装置1は、複数の出力装置9の出力を以下の符号化方法により符号化、すなわち画像化する。演算装置1が実行する符号化方法は、取得部11が実行する、複数の出力装置9の出力である収集データ群42を取得する取得ステップと、検証部13が実行する、収集データ群42に基づき、時間帯ごと、および出力装置9ごとの検証済データである検証済データ群44を生成する検証ステップと、画像生成部14が実行する、検証済データ群44に基づき、複数の出力装置9に含まれる2以上の出力装置9の検証済データを符号化した符号化画像、すなわちグラフ画像48やピクセル画像49を作成する画像生成ステップと、を含む。そのため、複数の信号間の相関を学習および推論可能な画像を生成できる。
【0046】
(2)グラフ画像48はX方向およびY方向に広がりを有する二次元画像である。画像生成ステップでは、時間帯の異なる検証済データをX方向の異なる位置に配置し、値が異なる検証済データをY方向の異なる位置に配置する。そのため、複数の信号間の相関を二次元グラフとして表現し、機械学習モデルの学習や機械学習モデルを使った推論に利用できる。
【0047】
(3)画像生成ステップではさらに、同一の出力装置9に由来する検証済データを時系列順に線で結び、折れ線グラフとして表現する。
【0048】
(4)画像生成ステップでは、ピクセル画像49を複数の領域に分割して、領域ごとに1つの出力装置9である処理対象出力装置の出力に対応する検証済データを輝度、濃淡、または色として符号化する。そのため、複数の信号間の相関をピクセル画像49として表現できる。
【0049】
(5)ピクセル画像49はX方向およびY方向に直交する第2方向に広がりを有する二次元画像である。画像生成部14は、領域ごとに処理対象出力装置を対象として、1分ごとの時間帯に対応する検証済データをX方向に並べ、1日ごとの時間帯に対応する検証済データをY方向に並べる。そのため演算装置1は、矩形領域ごとにそれぞれの出力装置9の出力を並べたピクセル画像49を生成できる。
【0050】
(6)描画判断部15は、複数の出力装置9の出力の相関に基づき、同一のレイヤに描画する出力装置9の組み合わせを決定する描画決定ステップ(図12のS311~S312)を実行する。そのため相関が強い出力装置9の出力同士を同一のレイヤに配置できる。
【0051】
(7)描画判断部15は、要求仕様46に基づき符号化画像の種類を決定する描画判断ステップ(図12のS301~S305)を実行する。画像生成部14が実行する画像生成ステップでは、装置リスト41装置リスト41の描画タイプの欄に記載された種類の符号化画像、すなわちグラフ画像48またはピクセル画像49を生成する。
【0052】
(変形例1)
オペレータは、装置リスト41における描画タイプに、グラフ画像48の異なる形態、たとえば「グラフ第2」や「グラフ第3」を登録してもよい。この場合に画像生成部14は、第1の実施の形態とは異なる形態のグラフ画像48を生成する。
【0053】
図14は、グラフ画像48の別のバリエーションである第2グラフ画像48-2を示す図である。図14に示す例は、図10に示す例とはグラフの種類が異なる。すなわち図14は、マーカーのみをプロットしておりマーカー同士を繋ぐ線が存在しない散布図である。図14では、作図の都合により出力装置9ごとにプロットの種類を変更しているが、異なる色を用いることで出力装置9の違いを表現してもよい。
【0054】
図15は、グラフ画像48のさらに別のバリエーションである第3グラフ画像48-3を示す図である。ただし図15では、比較のために同じデータを描画したグラフ画像48も併記している。また表現の差異を明確にするために、図15では1つの出力装置9の出力のみを記載している。第3グラフ画像48-3では、出力値に含まれる特定の値を描画せず、直前の他の値で代用する。第3グラフ画像48-3は、モータ制御に用いる電流のように、ある値からゼロを経由して別の値に変化する出力値に有効である。
【0055】
(変形例2)
オペレータは、装置リスト41における描画タイプに、ピクセル画像49の異なる形態、たとえば「ピクセル第2」や「ピクセル第3」を登録してもよい。この場合に画像生成部14は、第1の実施の形態とは異なる形態のピクセル画像49を生成する。
【0056】
図16は、ピクセル画像49の別のバリエーションを示す図である。図16の上段は第1の実施の形態におけるピクセル画像49を示しており、図16の中段は第2の形式である第2ピクセル画像49-2を示しており、図16の下段は第3の形式である第3ピクセル画像49-3を示している。ピクセル画像49は、図示上下方向のみに領域が分割され、図示横方向には同一の出力装置9の出力値のみが配されている。
【0057】
これに対して第2ピクセル画像49-2は、図示上下方向だけでなく図示左右方向にも2分割される。第3ピクセル画像49-3は、図示上下方向だけでなく図示左右方向にも3分割される。さらに、ここでは分割された領域は矩形として表したが、矩形以外の形状の領域に分割してもよい。このようにピクセル画像49は任意の形状に分割でき、学習モデル1000の学習フェーズおよび推論フェーズを通して同一の形状であればよい。
【0058】
(変形例3)
上述した実施の形態では、グラフ画像48およびピクセル画像49は複数のレイヤを有することを前提としていた。しかしグラフ画像48およびピクセル画像49はレイヤ構造を有さない画像ファイル、たとえばJPGやBMPなどでもよい。この場合は、グラフ画像48およびピクセル画像49が複数のファイルとなる。
【0059】
上述した各実施の形態および変形例において、機能ブロックの構成は一例に過ぎない。別々の機能ブロックとして示したいくつかの機能構成を一体に構成してもよいし、1つの機能ブロック図で表した構成を2以上の機能に分割してもよい。また各機能ブロックが有する機能の一部を他の機能ブロックが備える構成としてもよい。
【0060】
上述した各実施の形態および変形例において、プログラムはROM82に格納されるとしたが、プログラムは記憶装置4に格納されていてもよい。また、演算装置1が不図示の入出力インタフェースを備え、必要なときに入出力インタフェースと演算装置1が利用可能な媒体を介して、他の装置からプログラムが読み込まれてもよい。ここで媒体とは、例えば入出力インタフェースに着脱可能な記憶媒体、または通信媒体、すなわち有線、無線、光などのネットワーク、または当該ネットワークを伝搬する搬送波やディジタル信号、を指す。また、プログラムにより実現される機能の一部または全部がハードウエア回路やFPGAにより実現されてもよい。
【0061】
上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 :演算装置
9 :出力装置
11 :取得部
12 :前処理部
13 :検証部
14 :画像生成部
15 :描画判断部
41 :装置リスト
42 :収集データ群
43 :前処理済データ群
44 :検証済データ群
45 :画像パラメータ
46 :要求仕様
48 :グラフ画像
49 :ピクセル画像
図1
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