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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046279
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】潅水制御システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 27/00 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
A01G27/00 502B
A01G27/00 504B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151580
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】谷口 啓介
(72)【発明者】
【氏名】米津 雄一
(72)【発明者】
【氏名】片桐 康之
(72)【発明者】
【氏名】片岡 麻子
(57)【要約】
【課題】栽培植物の根の上側及び下側からの潅水の制御が好適に行われやすい潅水制御システムを提供する。
【解決手段】栽培植物の根の上側から栽培植物への潅水を行う上部潅水機構D1と、栽培植物の根の下側から栽培植物への潅水を行う下部潅水機構D2と、上部潅水機構D1と下部潅水機構D2とを個別に制御する潅水制御部41と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培植物の根の上側から前記栽培植物への潅水を行う上部潅水機構と、
前記栽培植物の根の下側から前記栽培植物への潅水を行う下部潅水機構と、
前記上部潅水機構と前記下部潅水機構とを個別に制御する潅水制御部と、を備える潅水制御システム。
【請求項2】
前記栽培植物の葉を撮像する撮像部と、
前記撮像部により取得された撮像画像に基づいて、前記葉の張り度合いを示す値である張り指標値を算出する張り指標値算出部と、を備え、
前記潅水制御部は、前記張り指標値が所定の潅水基準値を下回ったことに応じて前記上部潅水機構に潅水を実行させることが可能である請求項1に記載の潅水制御システム。
【請求項3】
前記潅水制御部は、現在時刻が設定された時刻になったことに応じて前記下部潅水機構に潅水を実行させることが可能である請求項1または2に記載の潅水制御システム。
【請求項4】
前記上部潅水機構により供給される養液の液体肥料濃度と、前記下部潅水機構により供給される養液の液体肥料濃度と、を個別に設定可能な濃度設定部を備える請求項1または2に記載の潅水制御システム。
【請求項5】
前記栽培植物の根は、養液が透過可能な膜状部材の上面に接しており、
前記下部潅水機構は、前記膜状部材の下面への潅水を行うことにより、前記膜状部材を介して前記栽培植物への潅水を行うように構成されており、
前記膜状部材は、前記栽培植物の根による前記膜状部材を介した養液の吸収を制限するように構成されている請求項1または2に記載の潅水制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培植物への潅水を行う潅水制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような潅水制御システムとして、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この潅水制御システムでは、撮影装置により取得された撮像画像に基づいて、栽培植物の葉の投影面積が算出される。
【0003】
さらに、この潅水制御システムでは、最大投影面積に対する投影面積の比である投影面積比が算出される。そして、投影面積比が給液基準値を下回った場合、栽培植物に対して潅水(特許文献1では「給液」)が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-306846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の潅水制御システムでは、栽培植物の根の上側からのみ潅水が行われる。特許文献1には、根の上側及び下側からの潅水を行うことについては記載されていない。
【0006】
本発明の目的は、栽培植物の根の上側及び下側からの潅水の制御が好適に行われやすい潅水制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、栽培植物の根の上側から前記栽培植物への潅水を行う上部潅水機構と、前記栽培植物の根の下側から前記栽培植物への潅水を行う下部潅水機構と、前記上部潅水機構と前記下部潅水機構とを個別に制御する潅水制御部と、を備えることにある。
【0008】
本構成によれば、上部潅水機構と下部潅水機構とが一律に制御される構成に比べて、上部潅水機構と下部潅水機構との特性の違いに応じた潅水制御を行いやすい。その結果、栽培植物の根の上側及び下側からの潅水の制御が好適に行われやすい。
【0009】
例えば、根の下側からの潅水に比べて根の上側からの潅水に即効性がある栽培環境下では、下部潅水機構による潅水を一定時間毎に実行しながら、栽培植物の葉がしおれた際に上部潅水機構による潅水を実行するような制御を実現できる。
【0010】
即ち、本構成によれば、栽培植物の根の上側及び下側からの潅水の制御が好適に行われやすい潅水制御システムを実現できる。
【0011】
さらに、本発明において、前記栽培植物の葉を撮像する撮像部と、前記撮像部により取得された撮像画像に基づいて、前記葉の張り度合いを示す値である張り指標値を算出する張り指標値算出部と、を備え、前記潅水制御部は、前記張り指標値が所定の潅水基準値を下回ったことに応じて前記上部潅水機構に潅水を実行させることが可能であると好適である。
【0012】
本構成によれば、根の下側からの潅水に比べて根の上側からの潅水に即効性がある栽培環境下において、栽培植物の葉がしおれたことに応じて自動的に上部潅水機構による潅水を実行することが可能となる。これにより、栽培植物の葉がしおれた際に、葉の張り度合いを迅速に回復させやすい。
【0013】
さらに、本発明において、前記潅水制御部は、現在時刻が設定された時刻になったことに応じて前記下部潅水機構に潅水を実行させることが可能であると好適である。
【0014】
本構成によれば、例えば一定時間毎に下部潅水機構に潅水を実行させるように時刻を設定することにより、根の下側における養液の量を一定の範囲に維持しやすい。これにより、栽培植物へ、根の下側から安定的に養液を供給しやすい。
【0015】
さらに、本発明において、前記上部潅水機構により供給される養液の液体肥料濃度と、前記下部潅水機構により供給される養液の液体肥料濃度と、を個別に設定可能な濃度設定部を備えると好適である。
【0016】
本構成によれば、上部潅水機構により供給される養液の液体肥料濃度と、下部潅水機構により供給される養液の液体肥料濃度と、が一律に設定される構成に比べて、上部潅水機構と下部潅水機構との特性の違いに応じた各液体肥料濃度の設定を行いやすい。その結果、栽培植物の根の上側及び下側からの肥料の供給が好適に行われやすい。
【0017】
さらに、本発明において、前記栽培植物の根は、養液が透過可能な膜状部材の上面に接しており、前記下部潅水機構は、前記膜状部材の下面への潅水を行うことにより、前記膜状部材を介して前記栽培植物への潅水を行うように構成されており、前記膜状部材は、前記栽培植物の根による前記膜状部材を介した養液の吸収を制限するように構成されていると好適である。
【0018】
本構成によれば、根による下部潅水機構からの養液の吸収が制限される。これにより、下部潅水機構から供給される養液の吸収が制限され、且つ、上部潅水機構から供給される養液の吸収が制限されない構成を実現できる。そのため、下部潅水機構と上部潅水機構との養液の吸収されやすさの違いに応じた潅水制御を行うことができる。その結果、栽培植物の根の上側及び下側からのそれぞれの潅水が好適に行われやすい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】園芸施設の内部全体を示す平面図である。
図2】園芸施設の内部全体を示す側面図である。
図3】潅水制御システムの構成を示すブロック図である。
図4】上部潅水チューブ及び下部潅水チューブ等の構成を示す図である。
図5】手動潅水画面における表示内容を示す図である。
図6】モード表示画面における表示内容を示す図である。
図7】被覆率を示す平面図である。
図8】被覆率の推移の一例を示す図である。
図9】濃度設定画面における表示内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔園芸施設の構成〕
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。本実施形態では、図1に示されているような園芸施設10に、栽培植物P(図2参照)を植えるための畝A1~A8が縦横に並ぶ状態で設けられている。夫々の畝Aの間は栽培植物Pの管理者が通行可能な通路となっている。園芸施設10は、例えばビニールハウスであったり、太陽光利用型の植物工場であったりする。
【0021】
夫々の畝Aは、例えば無孔性親水性フィルムで構成される。そして、夫々の畝Aに、栽培植物Pとして、例えばトマトが植えられる。図1及び図2に示されるように、園芸施設10の内部のうち、栽培植物Pが植えられる畝Aの上方に、撮像部Caが天井から吊り下げられた状態で備えられている。尚、撮像部Caの設けられる個数は、一つであっても良いし、二つ以上であっても良い。
【0022】
撮像部Caは、例えばCCD素子やCMOS素子を有する定点カメラであって、肉眼で視覚可能な可視光を撮像可能なように構成される。そして、撮像部Caは、栽培植物Pの葉P1(図4参照)を、所定の時間間隔毎に撮像する。これにより、撮像部Caは、撮像画像V(図7参照)を経時的に取得する。
【0023】
図示はされていないが、他にも、園芸施設10に、環境センサ、側窓、遮光カーテン、ヒートポンプ式の空調設備等が備えられている。
【0024】
図1及び図2に示すように、撮像部Caは、畝A2の真上に設けられている。撮像部Caは、畝A2に植えられた栽培植物Pを真上から平面視で撮像する。即ち、撮像部Caは、栽培植物Pよりも上側に位置すると共に下方へ向けて俯瞰撮像を行う。
【0025】
〔潅水制御システムの構成〕
図3に示すように、本実施形態における潅水制御システムSは、入力装置2、ディスプレイ3、管理コンピュータ4を備えている。入力装置2は、特に限定されないが、例えばキーボードやマウス等であっても良い。また、園芸施設10は、潅水制御システムSに含まれている。
【0026】
即ち、潅水制御システムSは、栽培植物Pの葉P1を撮像する撮像部Caを備えている。
【0027】
園芸施設10は、上部潅水機構D1及び下部潅水機構D2を備えている。図3に示すように、上部潅水機構D1は、上部潅水弁13を有している。また、図4に示すように、上部潅水機構D1は、上部潅水チューブ14を有している。上部潅水チューブ14は、畝Aの長手方向に沿って延びている。上部潅水チューブ14は、上部潅水チューブ14の内側を養液が通過できるように構成されている。また、上部潅水チューブ14の上部には、複数の孔14aが形成されている。各孔14aは、互いに所定間隔を空けて、上部潅水チューブ14の延びる方向に沿って一列に並んでいる。
【0028】
一つの畝Aに配置される上部潅水チューブ14の個数は、一つでも良いし、二つ以上であっても良い。本実施形態においては、一つの畝Aに配置される上部潅水チューブ14の個数は、一つである。
【0029】
上部潅水弁13は、開閉可能に構成されている。そして、上部潅水機構D1は、上部潅水弁13が開状態である間、各孔14aから養液が排出されるように構成されている。尚、上部潅水弁13が閉状態になると、各孔14aからの養液の排出は停止する。
【0030】
図4に示すように、上部潅水チューブ14は、栽培植物Pの根P2の上側に配置されている。そのため、各孔14aから排出された養液は、根P2の上側から、栽培植物Pに供給される。この構成により、上部潅水機構D1は、栽培植物Pの根P2の上側から栽培植物Pへの潅水を行う。尚、本発明において、「潅水」は、養液を供給することを意味する。また、養液は、水に肥料等が溶け込んだ液体であっても良いし、単なる水であっても良い。
【0031】
このように、潅水制御システムSは、栽培植物Pの根P2の上側から栽培植物Pへの潅水を行う上部潅水機構D1を備えている。
【0032】
図4に示すように、畝Aは、膜状部材21、揚水布22、止水シート23を含んでいる。膜状部材21は、揚水布22の上に重ねられている。止水シート23は、揚水布22の下側に位置している。根P2は、膜状部材21の上面に接している。尚、膜状部材21の上に培養土等が載せられていても良い。
【0033】
止水シート23は、養液が透過しないように構成されている。揚水布22は、例えば不織布によって構成されている。揚水布22は、揚水布22の下側に存在する養液を吸い上げるように構成されている。膜状部材21は、養液が透過可能に構成されている。膜状部材21は、例えば、無孔性親水性フィルム、特にポリビニルアルコール系フィルムであっても良い。
【0034】
即ち、栽培植物Pの根P2は、養液が透過可能な膜状部材21の上面に接している。
【0035】
図3に示すように、下部潅水機構D2は、下部潅水弁15を有している。また、図4に示すように、下部潅水機構D2は、下部潅水チューブ16を有している。下部潅水チューブ16は、畝Aの長手方向に沿って延びている。下部潅水チューブ16は、下部潅水チューブ16の内側を養液が通過できるように構成されている。また、下部潅水チューブ16の上部には、複数の孔16aが形成されている。各孔16aは、互いに所定間隔を空けて、下部潅水チューブ16の延びる方向に沿って一列に並んでいる。
【0036】
一つの畝Aに配置される下部潅水チューブ16の個数は、一つでも良いし、二つ以上であっても良い。本実施形態においては、一つの畝Aに配置される下部潅水チューブ16の個数は、二つである。
【0037】
下部潅水弁15は、開閉可能に構成されている。そして、下部潅水機構D2は、下部潅水弁15が開状態である間、各孔16aから養液が排出されるように構成されている。尚、下部潅水弁15が閉状態になると、各孔16aからの養液の排出は停止する。
【0038】
図4に示すように、下部潅水チューブ16は、揚水布22と止水シート23とに挟まれる位置に配置されている。そのため、各孔16aから排出された養液は、揚水布22によって吸い上げられ、膜状部材21の下面に供給される。根P2は、膜状部材21の下面に供給された養液を、膜状部材21を介して吸収する。この構成により、下部潅水機構D2は、栽培植物Pの根P2の下側から栽培植物Pへの潅水を行う。
【0039】
このように、潅水制御システムSは、栽培植物Pの根P2の下側から栽培植物Pへの潅水を行う下部潅水機構D2を備えている。また、下部潅水機構D2は、膜状部材21の下面への潅水を行うことにより、膜状部材21を介して栽培植物Pへの潅水を行うように構成されている。
【0040】
また、膜状部材21は、栽培植物Pの根P2による膜状部材21を介した養液の吸収を制限するように構成されている。尚、膜状部材21は、膜状部材21を介して水分を吸収することによる水分ストレスが栽培植物Pに適度に与えられる程度に、膜状部材21を介した養液の吸収を制限するように構成されていると好適である。
【0041】
〔潅水制御部〕
図3に示すように、管理コンピュータ4は、潅水制御部41を有している。潅水制御部41は、上部潅水制御部51及び下部潅水制御部52を有している。上部潅水制御部51は、上部潅水弁13の開閉を制御することにより、上部潅水機構D1による潅水を制御する。下部潅水制御部52は、下部潅水弁15の開閉を制御することにより、下部潅水機構D2による潅水を制御する。
【0042】
この構成により、潅水制御部41は、上部潅水制御部51及び下部潅水制御部52により、上部潅水機構D1と下部潅水機構D2とを個別に制御する。即ち、潅水制御システムSは、上部潅水機構D1と下部潅水機構D2とを個別に制御する潅水制御部41を備えている。
【0043】
尚、本実施形態において管理コンピュータ4に含まれている潅水制御部41等の各要素は、ソフトウェアにおける機能部であっても良いし、マイクロコンピュータ等の物理的な装置によって構成されていても良い。
【0044】
〔手動潅水制御〕
上部潅水制御部51及び下部潅水制御部52は、何れも、手動潅水制御を実行可能に構成されている。手動潅水制御とは、管理者(ユーザー)の手動操作に応じて潅水を行う制御である。以下では、手動潅水制御について詳述する。
【0045】
図3に示すように、管理コンピュータ4は、上部潅水処理部42を有している。上部潅水処理部42は、上部手動指示部53を含んでいる。
【0046】
また、潅水制御部41は、ディスプレイ3に、図5に示す手動潅水画面を表示させることができるように構成されている。手動潅水画面には、上部情報表示部31及び下部情報表示部32が含まれている。上部情報表示部31は、手動潅水画面の上部に位置している。下部情報表示部32は、手動潅水画面の下部に位置している。尚、上部情報表示部31は、下部情報表示部32の上方に位置している。
【0047】
上部情報表示部31は、上部潅水制御部51による手動潅水制御に関する情報を表示すると共に、上部潅水制御部51による手動潅水制御に関する設定操作入力を受け付ける。管理者は、入力装置2を介して、上部情報表示部31に設定操作入力を行うことにより、上部潅水機構D1の各ラインにおける手動潅水制御による潅水の量を設定できる。また、管理者は、入力装置2を介して、上部情報表示部31に設定操作入力を行うことにより、上部潅水機構D1の各ラインにおいて手動潅水制御が実行されるか否かを切り替えることができる。
【0048】
尚、上部潅水機構D1の「ライン」とは、上部潅水機構D1のうち、一つの上部潅水弁13によって潅水が制御される範囲を意味する。特に限定されないが、本実施形態では、上部潅水機構D1は、12個の上部潅水弁13により、12個のラインに区切られている。また、特に限定されないが、本実施形態では、12個の上部潅水弁13に対応して、12個の上部潅水制御部51が設けられている。各上部潅水制御部51は、それぞれ、対応する上部潅水弁13の開閉を制御する。尚、図3では、構成がわかりやすくなるよう、上部潅水弁13及び上部潅水制御部51を一つずつ図示している。
【0049】
入力装置2を介した上述の設定操作入力が行われた場合、当該設定操作入力の内容を示す信号が、上部潅水処理部42から各上部潅水制御部51へ送られる。各上部潅水制御部51は、手動潅水制御を実行する際、当該信号に基づいて、上部潅水機構D1の手動潅水制御を行う。
【0050】
図5に示すように、手動潅水画面には、上部潅水開始ボタン33が表示されている。管理者が、入力装置2を介して、上部潅水開始ボタン33を操作すると、図3に示すように、上部手動指示部53から各上部潅水制御部51へ、手動潅水指示信号が送られる。各上部潅水制御部51は、当該手動潅水指示信号を受け取ると、上部潅水機構D1の手動潅水制御を実行する。これにより、上部潅水機構D1によって潅水が行われる。
【0051】
また、図3に示すように、管理コンピュータ4は、下部潅水処理部43を有している。下部潅水処理部43は、下部手動指示部54を含んでいる。
【0052】
下部情報表示部32は、下部潅水制御部52による手動潅水制御に関する情報を表示すると共に、下部潅水制御部52による手動潅水制御に関する設定操作入力を受け付ける。管理者は、入力装置2を介して、下部情報表示部32に設定操作入力を行うことにより、下部潅水機構D2の各ラインにおける手動潅水制御による潅水の量を設定できる。また、管理者は、入力装置2を介して、下部情報表示部32に設定操作入力を行うことにより、下部潅水機構D2の各ラインにおいて手動潅水制御が実行されるか否かを切り替えることができる。
【0053】
尚、下部潅水機構D2の「ライン」とは、下部潅水機構D2のうち、一つの下部潅水弁15によって潅水が制御される範囲を意味する。特に限定されないが、本実施形態では、下部潅水機構D2は、12個の下部潅水弁15により、12個のラインに区切られている。また、特に限定されないが、本実施形態では、12個の下部潅水弁15に対応して、12個の下部潅水制御部52が設けられている。各下部潅水制御部52は、それぞれ、対応する下部潅水弁15の開閉を制御する。尚、図3では、構成がわかりやすくなるよう、下部潅水弁15及び下部潅水制御部52を一つずつ図示している。
【0054】
本実施形態では、図5に示すように、上部潅水機構D1及び下部潅水機構D2の各ラインには、「1」から「12」の識別番号が付与されている。互いに同一の識別番号が付与された上部潅水機構D1及び下部潅水機構D2のラインは、互いに同一のエリアで潅水を行う。例えば、上部潅水機構D1の「ライン1」によって潅水が行われるエリアは、下部潅水機構D2の「ライン1」によって潅水が行われるエリアと同一である。言い換えれば、園芸施設10内の栽培植物Pのうち、上部潅水機構D1の「ライン1」によって潅水が行われる個体(または個体群)は、下部潅水機構D2の「ライン1」によって潅水が行われる個体(または個体群)と同一である。
【0055】
入力装置2を介した上述の設定操作入力が行われた場合、当該設定操作入力の内容を示す信号が、下部潅水処理部43から各下部潅水制御部52へ送られる。各下部潅水制御部52は、手動潅水制御を実行する際、当該信号に基づいて、下部潅水機構D2の手動潅水制御を行う。
【0056】
図5に示すように、手動潅水画面には、下部潅水開始ボタン34が表示されている。管理者が、入力装置2を介して、下部潅水開始ボタン34を操作すると、図3に示すように、下部手動指示部54から各下部潅水制御部52へ、手動潅水指示信号が送られる。各下部潅水制御部52は、当該手動潅水指示信号を受け取ると、下部潅水機構D2の手動潅水制御を実行する。これにより、下部潅水機構D2によって潅水が行われる。
【0057】
図5に示すように、手動潅水画面には、中断ボタン35が表示されている。上部潅水機構D1の手動潅水制御の実行中に、管理者が、入力装置2を介して、中断ボタン35を操作すると、図3に示すように、上部手動指示部53から各上部潅水制御部51へ、中断信号が送られる。各上部潅水制御部51は、当該中断信号を受け取ると、上部潅水機構D1の手動潅水制御を中断する。これにより、上部潅水機構D1による潅水が中断される。
【0058】
また、下部潅水機構D2の手動潅水制御の実行中に、管理者が、入力装置2を介して、中断ボタン35を操作すると、図3に示すように、下部手動指示部54から各下部潅水制御部52へ、中断信号が送られる。各下部潅水制御部52は、当該中断信号を受け取ると、下部潅水機構D2の手動潅水制御を中断する。これにより、下部潅水機構D2による潅水が中断される。
【0059】
〔制御モードの切り替え〕
潅水制御部41は、ディスプレイ3に、図6に示すモード表示画面を表示させることができるように構成されている。モード表示画面には、上部モード表示部36及び下部モード表示部37が含まれている。上部モード表示部36は、モード表示画面の上部に位置している。下部モード表示部37は、モード表示画面の下部に位置している。尚、上部モード表示部36は、下部モード表示部37の上方に位置している。
【0060】
上部モード表示部36は、各上部潅水制御部51の制御モードを表示すると共に、各上部潅水制御部51の制御モードの切替操作入力を受け付ける。管理者は、入力装置2を介して、上部モード表示部36に切替操作入力を行うことにより、各上部潅水制御部51の制御モードを切り替えることができる。
【0061】
詳述すると、図3に示すように、上部潅水処理部42は、上部モード切替部55を有している。管理者が入力装置2を介して上部モード表示部36に切替操作入力を行うと、図3に示すように、上部モード切替部55から各上部潅水制御部51へ、モード切替信号が送られる。各上部潅水制御部51の制御モードは、当該モード切替信号に従って切り替わる。
【0062】
ここで、上部潅水制御部51の制御モードは、第1潅水モードと、第2潅水モードと、第3潅水モードと、の間で切り替え可能である。第1潅水モードとは、葉P1の張り度合いに基づいて潅水を行う制御モードである。第2潅水モードとは、時刻に基づいて潅水を行う制御モードである。より具体的には、第2潅水モードにおいては、現在時刻が設定された時刻になったことに応じて潅水が実行される。第3潅水モードとは、葉P1の張り度合いに基づく潅水、及び、時刻に基づく潅水の何れも行わない制御モードである。
【0063】
尚、上部潅水制御部51の制御モードが第1潅水モード、第2潅水モード、第3潅水モードの何れであっても、上部潅水制御部51は、上述の手動潅水制御を実行可能である。上部潅水制御部51が第3潅水モードであるとき、上部潅水制御部51は、手動潅水制御による潅水以外の潅水を実行しない。
【0064】
図6における「自動潅水ON」は、制御モードが第1潅水モードであることを意味する。また、「スケジュール潅水ON」は、制御モードが第2潅水モードであることを意味する。
【0065】
下部モード表示部37は、各下部潅水制御部52の制御モードを表示すると共に、各下部潅水制御部52の制御モードの切替操作入力を受け付ける。管理者は、入力装置2を介して、下部モード表示部37に切替操作入力を行うことにより、各下部潅水制御部52の制御モードを切り替えることができる。
【0066】
詳述すると、図3に示すように、下部潅水処理部43は、下部モード切替部56を有している。管理者が入力装置2を介して下部モード表示部37に切替操作入力を行うと、図3に示すように、下部モード切替部56から各下部潅水制御部52へ、モード切替信号が送られる。各下部潅水制御部52の制御モードは、当該モード切替信号に従って切り替わる。
【0067】
ここで、下部潅水制御部52の制御モードは、第2潅水モードと、第3潅水モードと、の間で切り替え可能である。
【0068】
尚、下部潅水制御部52の制御モードが第2潅水モード、第3潅水モードの何れであっても、下部潅水制御部52は、上述の手動潅水制御を実行可能である。下部潅水制御部52が第3潅水モードであるとき、下部潅水制御部52は、手動潅水制御による潅水以外の潅水を実行しない。
【0069】
この構成により、下部潅水制御部52は、第2潅水モードであるとき、現在時刻が設定された時刻になったことに応じて下部潅水機構D2に潅水を実行させる。即ち、潅水制御部41は、現在時刻が設定された時刻になったことに応じて下部潅水機構D2に潅水を実行させることが可能である。
【0070】
〔第1潅水モード〕
以下では、第1潅水モードについて詳述する。図3に示すように、管理コンピュータ4は、被覆率算出部44(本発明に係る「張り指標値算出部」に相当)、基準被覆率設定部45、基準算出部46、しおれ係数設定部47を有している。
【0071】
図3に示すように、撮像部Caにより所定の時間間隔毎に取得された撮像画像V(図7参照)は、被覆率算出部44へ送られる。被覆率算出部44は、受け取った撮像画像Vに基づいて、被覆率Eを経時的に算出する。
【0072】
尚、被覆率Eとは、撮像画像Vにおいて葉P1が写っている領域である計測領域B(図7参照)のうち、葉P1の占める領域の割合である。また、被覆率Eは、葉P1の張り度合いを示す値である。即ち、被覆率Eは、本発明に係る「張り指標値」に相当する。
【0073】
被覆率Eの算出について詳述すると、図7に示すように、被覆率算出部44は、撮像画像Vの色情報等に基づいて、撮像画像Vにおける枝葉や茎の領域を判定する。この領域は、栽培植物Pの繁茂領域、即ち被覆領域として判定される。
【0074】
尚、枝葉や茎の領域の判定は、RGBデータに基づいて行われるものであっても良いし、YUVデータに基づいて行われるものであっても良い。但し、本実施形態では、天候や時間帯の変化に伴う明暗の変化に対応するため、枝葉や茎の領域の判定は、YUVデータに基づいて行われるのが望ましい。
【0075】
そして、被覆領域の判定に基づいて、撮像画像Vのうち、栽培植物Pの位置する範囲が設定される。図7に示されるように、栽培植物Pの枝葉が写っている領域として四辺で囲まれた範囲が設定され、この四辺で囲まれた範囲が計測領域Bとして設定されて、計測領域Bの面積Bsが算出される。面積Bsの算出は、撮像画像Vのうち、計測領域Bのドット(撮像画像Vにおける画素の最小単位)の数を数えることで可能である。
【0076】
また、被覆領域のドットの数を数えることによって、葉面積B1の算出が可能である。
そして、下記の数式によって、面積Bsに対する葉面積B1の割合が、被覆率Eとして算出される。
【0077】
被覆率E=葉面積B1/面積Bs
【0078】
尚、計測領域Bの面積Bsは、時間の経過に伴って葉P1がしおれ、枝葉の写っている領域が次第に狭まる場合であっても、葉P1がしおれ始める前の面積Bsで固定されるのが望ましい。つまり、面積Bsは、経時的に取得される複数の撮像画像Vのうち、最初の撮像画像Vに基づいて算出された面積Bsのまま固定されると共に、時間の経過に伴って葉面積B1だけが変化する構成が望ましい。
【0079】
このように、潅水制御システムSは、撮像部Caにより取得された撮像画像Vに基づいて、葉P1の張り度合いを示す値である被覆率Eを算出する被覆率算出部44を備えている。
【0080】
図3に示すように、被覆率算出部44により経時的に算出された被覆率Eは、上部潅水制御部51及び基準被覆率設定部45へ送られる。基準被覆率設定部45は、基準時における被覆率Eを基準被覆率STとして設定する。
【0081】
詳述すると、本実施形態において、上記の基準時は、日の出直後の時間帯である。また、上述の通り、撮像部Caは、撮像画像Vを所定の時間間隔毎に取得する。即ち、撮像部Caは、日の出直後の時間帯において、複数の時刻で撮像画像Vを取得する。これにより、撮像部Caによって、日の出直後の時間帯における複数の撮像画像Vが取得される。
【0082】
被覆率算出部44は、日の出直後の時間帯において取得された複数の撮像画像Vに基づいて、複数の被覆率Eを算出する。そして、基準被覆率設定部45は、この複数の被覆率Eの90パーセンタイル値を、基準被覆率STとして設定する。
【0083】
尚、本発明はこれに限定されず、基準被覆率設定部45は、上記複数の被覆率Eの90パーセンタイル値以外の値を、基準被覆率STとして設定するように構成されていても良い。例えば、基準被覆率設定部45は、上記複数の被覆率Eのうちの最大値を基準被覆率STとして設定するように構成されていても良い。また、基準被覆率設定部45は、上記複数の被覆率Eの平均値を基準被覆率STとして設定するように構成されていても良い。
【0084】
図3に示すように、基準被覆率設定部45により設定された基準被覆率STは、基準算出部46へ送られる。
【0085】
また、管理者は、入力装置2を介して、しおれ係数を入力することができる。尚、しおれ係数とは、目標となる葉P1のしおれ度合いに相当する係数である。
【0086】
入力装置2に入力されたしおれ係数は、しおれ係数設定部47に送られる。そして、しおれ係数設定部47は、管理者の入力内容に従って、しおれ係数を設定する。設定されたしおれ係数は、基準算出部46へ送られる。
【0087】
基準算出部46は、基準被覆率設定部45から受け取った基準被覆率STと、しおれ係数設定部47から受け取ったしおれ係数と、に基づいて、潅水基準値THを算出する。より具体的には、基準算出部46は、基準被覆率STにしおれ係数を乗ずることによって潅水基準値THを算出する。算出された潅水基準値THは、上部潅水制御部51へ送られる。
【0088】
上部潅水制御部51が第1潅水モードであるとき、上部潅水制御部51は、被覆率算出部44から受け取った被覆率Eと、基準算出部46から受け取った潅水基準値THと、に基づいて、被覆率Eが潅水基準値THを下回っているか否かを判定する。そして、被覆率Eが潅水基準値THを下回った場合、上部潅水制御部51は、上部潅水機構D1に潅水を実行させる。
【0089】
このように、潅水制御部41は、被覆率Eが所定の潅水基準値THを下回ったことに応じて上部潅水機構D1に潅水を実行させることが可能である。
【0090】
以上で説明した構成により、図8に示すように、被覆率Eは基本的に以下の通りに推移する。即ち、まず、時間の経過に伴って葉P1のしおれが進行する。これにより、被覆率Eは時間の経過に伴って減少する。
【0091】
被覆率Eが潅水基準値THを下回り、潅水が実行されると、葉P1の張り度合いが回復する。これにより、被覆率Eは増加する。
【0092】
その後は、時間の経過に伴う葉P1のしおれの進行と、潅水による葉P1の張り度合いの回復と、を繰り返す。これにより、被覆率Eは、減少と増加とを交互に繰り返す。
【0093】
図8に示す例では、上部潅水制御部51の制御によって上部潅水機構D1が潅水を実行したタイミングが、上向き矢印によって示されている。この例では、時刻t1、時刻t2、時刻t3、時刻t4、時刻t5のそれぞれにおいて、潅水が実行されている。
【0094】
ここで、時刻t1、時刻t2、時刻t5においては、被覆率Eが潅水基準値THを下回ったため、上部潅水機構D1により潅水が実行されている。その結果、被覆率Eは、潅水基準値THを上回っている。
【0095】
しかしながら、時刻t3においては、時刻t1、時刻t2、時刻t5と同様に潅水が実行されたにもかかわらず、その後の時刻t4まで、被覆率Eは潅水基準値THを上回っていない。
【0096】
そのため、時刻t4において、上部潅水制御部51は、追加で上部潅水機構D1に潅水を実行させている。これにより、被覆率Eは、潅水基準値THを上回っている。
【0097】
〔第2潅水モード〕
以下では、第2潅水モードについて詳述する。図3に示すように、上部潅水処理部42は、上部スケジュール設定部57を有している。管理者は、入力装置2を介して、上部潅水機構D1による潅水のスケジュール(時刻)を入力することができる。
【0098】
入力装置2に入力されたスケジュールは、上部潅水処理部42に送られる。上部スケジュール設定部57は、当該スケジュールに従って、上部潅水機構D1による潅水のスケジュールを設定する。これにより設定されたスケジュールを示す情報が、上部スケジュール設定部57から上部潅水制御部51へ送られる。上部潅水制御部51が第2潅水モードであるとき、上部潅水制御部51は、当該情報に基づいて上部潅水機構D1に潅水を実行させる。このとき、上部潅水制御部51は、現在時刻が、設定されたスケジュールに含まれる時刻になったことに応じて、上部潅水機構D1に潅水を実行させる。
【0099】
図3に示すように、下部潅水処理部43は、下部スケジュール設定部58を有している。管理者は、入力装置2を介して、下部潅水機構D2による潅水のスケジュール(時刻)を入力することができる。
【0100】
入力装置2に入力されたスケジュールは、下部潅水処理部43に送られる。下部スケジュール設定部58は、当該スケジュールに従って、下部潅水機構D2による潅水のスケジュールを設定する。これにより設定されたスケジュールを示す情報が、下部スケジュール設定部58から下部潅水制御部52へ送られる。下部潅水制御部52が第2潅水モードであるとき、下部潅水制御部52は、当該情報に基づいて下部潅水機構D2に潅水を実行させる。このとき、下部潅水制御部52は、現在時刻が、設定されたスケジュールに含まれる時刻になったことに応じて、下部潅水機構D2に潅水を実行させる。
【0101】
尚、上部スケジュール設定部57及び下部スケジュール設定部58により設定される潅水のスケジュールは、一日のうちの一つの時刻のみを含んでいても良いし、複数の時刻を含んでいても良い。即ち、第2潅水モードにおいて潅水を実行可能な回数は、一日のうち一回のみであっても良いし、複数回であっても良い。
【0102】
〔濃度設定部〕
図3に示すように、園芸施設10は、上部濃度調整装置17を備えている。上部濃度調整装置17は、養液を貯留している。また、上部濃度調整装置17は、貯留している養液の液体肥料濃度を調整可能に構成されている。そして、上部濃度調整装置17は、液体肥料濃度が調整された養液を、上部潅水機構D1へ供給する。上部潅水機構D1は、当該養液を利用して潅水を行う。尚、上部濃度調整装置17は、上述の「ライン」毎に異なる液体肥料濃度の養液を供給可能に構成されている。
【0103】
また、園芸施設10は、下部濃度調整装置18を備えている。下部濃度調整装置18は、養液を貯留している。また、下部濃度調整装置18は、貯留している養液の液体肥料濃度を調整可能に構成されている。そして、下部濃度調整装置18は、液体肥料濃度が調整された養液を、下部潅水機構D2へ供給する。下部潅水機構D2は、当該養液を利用して潅水を行う。尚、下部濃度調整装置18は、上述の「ライン」毎に異なる液体肥料濃度の養液を供給可能に構成されている。
【0104】
図3に示すように、管理コンピュータ4は、濃度設定部48を備えている。濃度設定部48は、上部濃度設定部59及び下部濃度設定部60を有している。
【0105】
濃度設定部48は、ディスプレイ3に、図9に示す濃度設定画面を表示させることができるように構成されている。濃度設定画面には、第1濃度表示部61、第2濃度表示部62、第3濃度表示部63、第4濃度表示部64が含まれている。
【0106】
第1濃度表示部61及び第2濃度表示部62は、濃度設定画面の上部に位置している。第3濃度表示部63及び第4濃度表示部64は、濃度設定画面の下部に位置している。第1濃度表示部61及び第2濃度表示部62は、第3濃度表示部63及び第4濃度表示部64の上方に位置している。
【0107】
第1濃度表示部61は、上部潅水機構D1のうち、「ライン1」から「ライン6」までの六つのラインのそれぞれに対して供給される各養液の液体肥料濃度を表示すると共に、当該液体肥料濃度の設定操作入力を受け付ける。管理者は、入力装置2を介して、第1濃度表示部61に設定操作入力を行うことにより、上部潅水機構D1のうち、「ライン1」から「ライン6」までの六つのラインのそれぞれに対して供給される各養液の液体肥料濃度を設定できる。
【0108】
詳述すると、管理者が入力装置2を介して第1濃度表示部61に設定操作入力を行ったことに応じて、図3に示すように、上部濃度設定部59から上部濃度調整装置17へ、濃度設定信号が送られる。上部濃度調整装置17は、当該濃度設定信号に従って、上部潅水機構D1のうち、「ライン1」から「ライン6」までの六つのラインのそれぞれに対して供給される各養液の液体肥料濃度を調整する。
【0109】
第2濃度表示部62は、下部潅水機構D2のうち、「ライン1」から「ライン6」までの六つのラインのそれぞれに対して供給される各養液の液体肥料濃度を表示すると共に、当該液体肥料濃度の設定操作入力を受け付ける。管理者は、入力装置2を介して、第2濃度表示部62に設定操作入力を行うことにより、下部潅水機構D2のうち、「ライン1」から「ライン6」までの六つのラインのそれぞれに対して供給される各養液の液体肥料濃度を設定できる。
【0110】
詳述すると、管理者が入力装置2を介して第2濃度表示部62に設定操作入力を行ったことに応じて、図3に示すように、下部濃度設定部60から下部濃度調整装置18へ、濃度設定信号が送られる。下部濃度調整装置18は、当該濃度設定信号に従って、下部潅水機構D2のうち、「ライン1」から「ライン6」までの六つのラインのそれぞれに対して供給される各養液の液体肥料濃度を調整する。
【0111】
第3濃度表示部63は、上部潅水機構D1のうち、「ライン7」から「ライン12」までの六つのラインのそれぞれに対して供給される各養液の液体肥料濃度を表示すると共に、当該液体肥料濃度の設定操作入力を受け付ける。管理者は、入力装置2を介して、第3濃度表示部63に設定操作入力を行うことにより、上部潅水機構D1のうち、「ライン7」から「ライン12」までの六つのラインのそれぞれに対して供給される各養液の液体肥料濃度を設定できる。
【0112】
詳述すると、管理者が入力装置2を介して第3濃度表示部63に設定操作入力を行ったことに応じて、図3に示すように、上部濃度設定部59から上部濃度調整装置17へ、濃度設定信号が送られる。上部濃度調整装置17は、当該濃度設定信号に従って、上部潅水機構D1のうち、「ライン7」から「ライン12」までの六つのラインのそれぞれに対して供給される各養液の液体肥料濃度を調整する。
【0113】
第4濃度表示部64は、下部潅水機構D2のうち、「ライン7」から「ライン12」までの六つのラインのそれぞれに対して供給される各養液の液体肥料濃度を表示すると共に、当該液体肥料濃度の設定操作入力を受け付ける。管理者は、入力装置2を介して、第4濃度表示部64に設定操作入力を行うことにより、下部潅水機構D2のうち、「ライン7」から「ライン12」までの六つのラインのそれぞれに対して供給される各養液の液体肥料濃度を設定できる。
【0114】
詳述すると、管理者が入力装置2を介して第4濃度表示部64に設定操作入力を行ったことに応じて、図3に示すように、下部濃度設定部60から下部濃度調整装置18へ、濃度設定信号が送られる。下部濃度調整装置18は、当該濃度設定信号に従って、下部潅水機構D2のうち、「ライン7」から「ライン12」までの六つのラインのそれぞれに対して供給される各養液の液体肥料濃度を調整する。
【0115】
この構成により、濃度設定部48は、上部潅水機構D1により供給される養液の液体肥料濃度と、下部潅水機構D2により供給される養液の液体肥料濃度と、を個別に設定可能である。即ち、潅水制御システムSは、上部潅水機構D1により供給される養液の液体肥料濃度と、下部潅水機構D2により供給される養液の液体肥料濃度と、を個別に設定可能な濃度設定部48を備えている。
【0116】
以上で説明した構成によれば、上部潅水機構D1と下部潅水機構D2とが一律に制御される構成に比べて、上部潅水機構D1と下部潅水機構D2との特性の違いに応じた潅水制御を行いやすい。その結果、栽培植物Pの根P2の上側及び下側からの潅水の制御が好適に行われやすい。
【0117】
例えば、根P2の下側からの潅水に比べて根P2の上側からの潅水に即効性がある栽培環境下では、下部潅水機構D2による潅水を一定時間毎に実行しながら、栽培植物Pの葉P1がしおれた際に上部潅水機構D1による潅水を実行するような制御を実現できる。
【0118】
即ち、以上で説明した構成によれば、栽培植物Pの根P2の上側及び下側からの潅水の制御が好適に行われやすい潅水制御システムSを実現できる。
【0119】
〔その他の実施形態〕
(1)上部潅水制御部51の制御モードが切り替え不能であっても良い。
【0120】
(2)下部潅水制御部52の制御モードが切り替え不能であっても良い。
【0121】
(3)撮像部Caは設けられていなくても良い。
【0122】
(4)濃度設定部48は設けられていなくても良い。
【0123】
(5)膜状部材21は設けられていなくても良い。
【0124】
(6)上部潅水機構D1は、いかなる数のラインに区切られていても良いし、単一のラインにより構成されていても良い。
【0125】
(7)下部潅水機構D2は、いかなる数のラインに区切られていても良いし、単一のラインにより構成されていても良い。
【0126】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、栽培植物への潅水を行う潅水制御システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0128】
21 :膜状部材
41 :潅水制御部
44 :被覆率算出部(張り指標値算出部)
48 :濃度設定部
Ca :撮像部
D1 :上部潅水機構
D2 :下部潅水機構
E :被覆率(張り指標値)
P :栽培植物
P1 :葉
P2 :根
S :潅水制御システム
TH :潅水基準値
V :撮像画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-01-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培植物の根の上側から前記栽培植物への潅水を行う上部潅水機構と、
前記栽培植物の根の下側から前記栽培植物への潅水を行う下部潅水機構と、
前記上部潅水機構と前記下部潅水機構とを個別に制御する潅水制御部と
前記栽培植物の葉を撮像する撮像部と、
前記撮像部により取得された撮像画像に基づいて、前記葉の張り度合いを示す値である張り指標値を算出する張り指標値算出部と、を備え、
前記潅水制御部は、前記張り指標値が所定の潅水基準値を下回ったことに応じて前記上部潅水機構及び前記下部潅水機構のうちの前記上部潅水機構にのみ潅水を実行させる潅水制御システム。
【請求項2】
栽培植物の根の上側から前記栽培植物への潅水を行う上部潅水機構と、
前記栽培植物の根の下側から前記栽培植物への潅水を行う下部潅水機構と、
前記上部潅水機構と前記下部潅水機構とを個別に制御する潅水制御部と、を備え
前記潅水制御部は、現在時刻が設定された時刻になったことに応じて前記上部潅水機構及び前記下部潅水機構のうちの前記下部潅水機構に潅水を実行させる潅水制御システム。
【請求項3】
栽培植物の根の上側から前記栽培植物への潅水を行う上部潅水機構と、
前記栽培植物の根の下側から前記栽培植物への潅水を行う下部潅水機構と、
前記上部潅水機構と前記下部潅水機構とを個別に制御する潅水制御部と、
前記栽培植物の葉を撮像する撮像部と
前記撮像部により取得された撮像画像に基づいて、前記葉の張り度合いを示す値である張り指標値を算出する張り指標値算出部と、を備え、
前記潅水制御部は、前記張り指標値が所定の潅水基準値を下回ったことに応じて前記上部潅水機構に潅水を実行させることが可能であり、
前記潅水制御部は、現在時刻が設定された時刻になったことに応じて前記下部潅水機構に潅水を実行させることが可能である潅水制御システム。
【請求項4】
栽培植物の根の上側から前記栽培植物への潅水を行う上部潅水機構と、
前記栽培植物の根の下側から前記栽培植物への潅水を行う下部潅水機構と、
前記上部潅水機構と前記下部潅水機構とを個別に制御する潅水制御部と
前記上部潅水機構により供給される養液の液体肥料濃度と、前記下部潅水機構により供給される養液の液体肥料濃度と、を個別に設定可能な濃度設定部と、を備える潅水制御システム。
【請求項5】
栽培植物の根の上側から前記栽培植物への潅水を行う上部潅水機構と、
前記栽培植物の根の下側から前記栽培植物への潅水を行う下部潅水機構と、
前記上部潅水機構と前記下部潅水機構とを個別に制御する潅水制御部と、を備え
前記栽培植物の根は、養液が透過可能な膜状部材の上面に接しており、
前記下部潅水機構は、前記膜状部材の下面への潅水を行うことにより、前記膜状部材を介して前記栽培植物への潅水を行うように構成されており、
前記膜状部材は、前記栽培植物の根による前記膜状部材を介した養液の吸収を制限するように構成されている潅水制御システム。