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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046281
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】潅水制御システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151582
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】片岡 麻子
(72)【発明者】
【氏名】安井 雅彦
(57)【要約】
【課題】栽培管理作業によって栽培植物の状態が変わった場合に適切な潅水を継続しやすい潅水制御システムを提供する。
【解決手段】基準指標値の修正に関する判定値を決定する判定値決定部Gと、第1時点から第2時点までの間において張り指標値が判定値を上回った状態である時間の合計、または、第1時点から第2時点までの間において張り指標値が判定値を下回った状態である時間の合計を算出する時間算出部Kと、を備え、修正部43は、時間算出部Kによる算出結果に基づいて、基準指標値を修正するか否かを決定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培植物の葉を撮像する撮像部と、
前記撮像部により取得された撮像画像に基づいて、前記葉の張り度合いを示す値である張り指標値を算出する張り指標値算出部と、
基準時における前記張り指標値を基準指標値として設定する基準指標値設定部と、
前記基準指標値に基づいて潅水基準値を算出する基準算出部と、
前記張り指標値が前記潅水基準値を下回った場合に潅水指示信号を出力する潅水指示部と、
所定の条件が満たされた場合に前記基準指標値を修正する修正部と、を備え、
前記修正部によって前記基準指標値が修正された場合、前記基準算出部は、修正後の前記基準指標値に基づいて前記潅水基準値を再算出する潅水制御システムであって、
前記基準指標値の修正に関する判定値を決定する判定値決定部と、
第1時点から第2時点までの間において前記張り指標値が前記判定値を上回った状態である時間の合計、または、前記第1時点から前記第2時点までの間において前記張り指標値が前記判定値を下回った状態である時間の合計を算出する時間算出部と、を備え、
前記修正部は、前記時間算出部による算出結果に基づいて、前記基準指標値を修正するか否かを決定する潅水制御システム。
【請求項2】
前記第2時点は現在時刻であり、
前記第1時点は前記第2時点から所定時間前の時点である請求項1に記載の潅水制御システム。
【請求項3】
前記判定値決定部である上方判定値決定部と、
前記時間算出部である上方時間算出部と、を備え、
前記上方判定値決定部は、前記基準指標値に基づいて、前記判定値である上方判定値を決定し、
前記上方時間算出部は、前記第1時点から前記第2時点までの間において前記張り指標値が前記上方判定値を上回った状態である時間の合計である上方状態時間を算出し、
前記修正部は、前記上方状態時間に基づいて、前記基準指標値を修正するか否かを決定する請求項1または2に記載の潅水制御システム。
【請求項4】
前記修正部は、前記第1時点から前記第2時点までの長さである判定時間に対する前記上方状態時間の割合が所定割合以上である場合、前記基準指標値を修正することを決定する請求項3に記載の潅水制御システム。
【請求項5】
前記判定値決定部である下方判定値決定部と、
前記時間算出部である下方時間算出部と、を備え、
前記下方判定値決定部は、前記潅水基準値に基づいて、前記判定値である下方判定値を決定し、
前記下方時間算出部は、前記第1時点から前記第2時点までの間において前記張り指標値が前記下方判定値を下回った状態である時間の合計である下方状態時間を算出し、
前記修正部は、前記下方状態時間に基づいて、前記基準指標値を修正するか否かを決定する請求項1または2に記載の潅水制御システム。
【請求項6】
前記修正部は、前記第1時点から前記第2時点までの長さである判定時間に対する前記下方状態時間の割合が所定割合以上である場合、前記基準指標値を修正することを決定する請求項5に記載の潅水制御システム。
【請求項7】
前記潅水指示部は、所定の制限時間内に前記潅水指示信号が出力される回数が所定の制限回数以内となるように、前記潅水指示信号の出力を制限する請求項1または2に記載の潅水制御システム。
【請求項8】
前記潅水指示部は、前記潅水指示信号が出力された時点から所定の時間間隔が経過するまでの間、次の前記潅水指示信号を出力しないように構成されている請求項1または2に記載の潅水制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培植物の葉を撮像する撮像部を備える潅水制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような潅水制御システムとして、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この潅水制御システムでは、撮影装置により取得された撮像画像に基づいて、栽培植物の葉の投影面積が算出される。
【0003】
さらに、この潅水制御システムでは、最大投影面積に対する投影面積の比である投影面積比が算出される。そして、投影面積比が給液基準値を下回った場合、栽培植物に対して潅水(特許文献1では「給液」)が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-306846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の潅水制御システムにおいて、最大投影面積は、直近の潅水以降の投影面積の最大値である。即ち、この最大投影面積は、潅水の度に更新される。
【0006】
ここで、園芸施設においては、管理者によって、つる下ろし、誘引、摘葉、収穫等の栽培管理作業が行われる。そして、栽培管理作業が行われた場合、栽培植物の姿勢や葉の位置等が変化する。このとき、投影面積比は急激に変化しやすい。
【0007】
栽培管理作業が行われた結果、投影面積比が急減した場合は、即座に投影面積比が給液基準値を下回る可能性があるものの、潅水が実行されれば、最大投影面積が更新される。更新後の最大投影面積は、栽培管理作業の後の栽培植物の状態に対応している。従って、栽培管理作業が行われた結果、投影面積比が急減した場合は、潅水制御への影響は比較的小さい。
【0008】
しかしながら、栽培管理作業が行われた結果、投影面積比が急増した場合、葉のしおれが進行し、最もしおれた状態となっても、投影面積比が給液基準値を下回らない事態が想定される。この場合、潅水が実行されないため、栽培植物が枯死してしまう可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、栽培管理作業によって栽培植物の状態が変わった場合に適切な潅水を継続しやすい潅水制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特徴は、栽培植物の葉を撮像する撮像部と、前記撮像部により取得された撮像画像に基づいて、前記葉の張り度合いを示す値である張り指標値を算出する張り指標値算出部と、基準時における前記張り指標値を基準指標値として設定する基準指標値設定部と、前記基準指標値に基づいて潅水基準値を算出する基準算出部と、前記張り指標値が前記潅水基準値を下回った場合に潅水指示信号を出力する潅水指示部と、所定の条件が満たされた場合に前記基準指標値を修正する修正部と、を備え、前記修正部によって前記基準指標値が修正された場合、前記基準算出部は、修正後の前記基準指標値に基づいて前記潅水基準値を再算出する潅水制御システムであって、前記基準指標値の修正に関する判定値を決定する判定値決定部と、第1時点から第2時点までの間において前記張り指標値が前記判定値を上回った状態である時間の合計、または、前記第1時点から前記第2時点までの間において前記張り指標値が前記判定値を下回った状態である時間の合計を算出する時間算出部と、を備え、前記修正部は、前記時間算出部による算出結果に基づいて、前記基準指標値を修正するか否かを決定することにある。
【0011】
栽培管理作業によって栽培植物の状態が変わった場合における張り指標値の推移は、栽培管理作業前の推移とは異なる状態になりやすい。例えば、栽培管理作業が行われた結果、葉が撮像部に近付いたこと等によって張り指標値が急増した場合、張り指標値は、栽培管理作業前の範囲よりも高い範囲で推移しがちである。また、例えば、栽培管理作業が行われた結果、葉が撮像部から遠ざかったこと等によって張り指標値が急減した場合、張り指標値は、栽培管理作業前の範囲よりも低い範囲で推移しがちである。
【0012】
ここで、本構成によれば、張り指標値が判定値を上回った状態である時間の合計、または、張り指標値が判定値を下回った状態である時間の合計に基づいて、基準指標値を修正するか否かが決定される。そのため、張り指標値が栽培管理作業前の範囲よりも高い範囲で推移している場合、または、張り指標値が栽培管理作業前の範囲よりも低い範囲で推移している場合に、基準指標値が修正される構成を実現しやすい。そして、基準指標値が修正された場合、潅水基準値が再算出される。これにより、適切な潅水を継続しやすい。
【0013】
従って、本構成によれば、栽培管理作業によって栽培植物の状態が変わった場合に適切な潅水を継続しやすい潅水制御システムを実現できる。
【0014】
さらに、本発明において、前記第2時点は現在時刻であり、前記第1時点は前記第2時点から所定時間前の時点であると好適である。
【0015】
本構成によれば、第2時点が現在時刻よりも前の時点である構成に比べて、栽培管理作業によって栽培植物の状態が変わった場合に潅水基準値が再算出されるタイミングが早くなりやすい。
【0016】
例えば、第1時点から第2時点までの所定時間における張り指標値の推移に基づいて基準指標値を修正するか否かを決定する構成において、第2時点が現在時刻から5分前の時点である場合、第1時点(例えば11時10分)から第2時点(例えば11時20分)までの間に張り指標値が栽培管理作業前の範囲よりも高い範囲または低い範囲で推移しても、第2時点から5分経過するまで(例えば11時25分になるまで)、基準指標値の修正は決定されない。そのため、潅水基準値が再算出されるタイミングが比較的遅くなる。
【0017】
これに対して、第2時点(例えば11時20分)が現在時刻である場合、第1時点から第2時点までの間に張り指標値が栽培管理作業前の範囲よりも高い範囲または低い範囲で推移した場合、速やかに(例えば11時20分に)、基準指標値の修正を決定することができる。そのため、潅水基準値が再算出されるタイミングが比較的早くなる。
【0018】
これにより、本構成によれば、栽培管理作業による栽培植物の状態の変化に迅速に対応可能な潅水制御システムを実現できる。
【0019】
さらに、本発明において、前記判定値決定部である上方判定値決定部と、前記時間算出部である上方時間算出部と、を備え、前記上方判定値決定部は、前記基準指標値に基づいて、前記判定値である上方判定値を決定し、前記上方時間算出部は、前記第1時点から前記第2時点までの間において前記張り指標値が前記上方判定値を上回った状態である時間の合計である上方状態時間を算出し、前記修正部は、前記上方状態時間に基づいて、前記基準指標値を修正するか否かを決定すると好適である。
【0020】
本構成によれば、第1時点から第2時点までの間に張り指標値が栽培管理作業前の範囲よりも高い範囲で推移した場合に、基準指標値が修正される構成を実現しやすい。そして、基準指標値が修正された場合、潅水基準値が再算出される。これにより、栽培管理作業が行われた結果、例えば葉が撮像部に近付いたこと等によって張り指標値が急増した場合に、適切な潅水を継続しやすい。
【0021】
さらに、本発明において、前記修正部は、前記第1時点から前記第2時点までの長さである判定時間に対する前記上方状態時間の割合が所定割合以上である場合、前記基準指標値を修正することを決定すると好適である。
【0022】
本構成によれば、第1時点から第2時点までの間に張り指標値が栽培管理作業前の範囲よりも高い範囲で推移した場合に、基準指標値が確実に修正されやすい。これにより、栽培管理作業が行われた結果、例えば葉が撮像部に近付いたこと等によって張り指標値が急増した場合に、適切な潅水を確実に継続しやすい。
【0023】
さらに、本発明において、前記判定値決定部である下方判定値決定部と、前記時間算出部である下方時間算出部と、を備え、前記下方判定値決定部は、前記潅水基準値に基づいて、前記判定値である下方判定値を決定し、前記下方時間算出部は、前記第1時点から前記第2時点までの間において前記張り指標値が前記下方判定値を下回った状態である時間の合計である下方状態時間を算出し、前記修正部は、前記下方状態時間に基づいて、前記基準指標値を修正するか否かを決定すると好適である。
【0024】
本構成によれば、第1時点から第2時点までの間に張り指標値が栽培管理作業前の範囲よりも低い範囲で推移した場合に、基準指標値が修正される構成を実現しやすい。そして、基準指標値が修正された場合、潅水基準値が再算出される。これにより、栽培管理作業が行われた結果、例えば葉が撮像部から遠ざかったこと等によって張り指標値が急減した場合に、適切な潅水を継続しやすい。
【0025】
さらに、本発明において、前記修正部は、前記第1時点から前記第2時点までの長さである判定時間に対する前記下方状態時間の割合が所定割合以上である場合、前記基準指標値を修正することを決定すると好適である。
【0026】
本構成によれば、第1時点から第2時点までの間に張り指標値が栽培管理作業前の範囲よりも低い範囲で推移した場合に、基準指標値が確実に修正されやすい。これにより、栽培管理作業が行われた結果、例えば葉が撮像部から遠ざかったこと等によって張り指標値が急減した場合に、適切な潅水を確実に継続しやすい。
【0027】
さらに、本発明において、前記潅水指示部は、所定の制限時間内に前記潅水指示信号が出力される回数が所定の制限回数以内となるように、前記潅水指示信号の出力を制限すると好適である。
【0028】
本構成によれば、短い時間の間に比較的多くの回数の潅水が行われてしまう事態を回避できる。これにより、潅水のし過ぎを防ぐことができる。
【0029】
さらに、本発明において、前記潅水指示部は、前記潅水指示信号が出力された時点から所定の時間間隔が経過するまでの間、次の前記潅水指示信号を出力しないように構成されていると好適である。
【0030】
本構成によれば、潅水が行われた直後に再び潅水が行われてしまう事態を回避できる。これにより、潅水のし過ぎを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】園芸施設の内部全体を示す平面図である。
図2】園芸施設の内部全体を示す側面図である。
図3】潅水制御システムの構成を示すブロック図である。
図4】被覆率を示す平面図である。
図5】被覆率の推移の一例を示す図である。
図6】栽培管理作業が行われた場合の被覆率の推移の一例を示す図である。
図7】栽培管理作業が行われた場合の被覆率の推移の一例を示す図である。
図8】繰り返し潅水間隔が15分である場合の潅水のタイミングを示す図である。
図9】繰り返し潅水間隔が10分である場合の潅水のタイミングを示す図である。
図10】繰り返し潅水制限時間及び繰り返し潅水制限回数が設定されている場合の潅水のタイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔園芸施設の構成〕
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。本実施形態では、図1に示されているような園芸施設10に、栽培植物P(図2参照)を植えるための畝A1~A8が縦横に並ぶ状態で設けられている。夫々の畝Aの間は栽培植物Pの管理者が通行可能な通路となっている。園芸施設10は、例えばビニールハウスであったり、太陽光利用型の植物工場であったりする。
【0033】
夫々の畝Aは、例えば無孔性親水性フィルムで構成される。そして、夫々の畝Aに、栽培植物Pとして、例えばトマトが植えられる。図1及び図2に示されるように、園芸施設10の内部のうち、栽培植物Pが植えられる畝Aの上方に、撮像部Caが天井から吊り下げられた状態で備えられている。尚、撮像部Caの設けられる個数は、一つであっても良いし、二つ以上であっても良い。
【0034】
撮像部Caは、例えばCCD素子やCMOS素子を有する定点カメラであって、肉眼で視覚可能な可視光を撮像可能なように構成される。そして、撮像部Caは、栽培植物Pの葉P1(図4参照)を、所定の時間間隔毎に撮像する。これにより、撮像部Caは、撮像画像V(図4参照)を経時的に取得する。
【0035】
図示はされていないが、他にも、園芸施設10に、環境センサ、側窓、遮光カーテン、ヒートポンプ式の空調設備等が備えられている。
【0036】
図1及び図2に示すように、撮像部Caは、畝A2の真上に設けられている。撮像部Caは、畝A2に植えられた栽培植物Pを真上から平面視で撮像する。即ち、撮像部Caは、栽培植物Pよりも上側に位置すると共に下方へ向けて俯瞰撮像を行う。
【0037】
〔潅水制御システムの構成〕
図3に示すように、本実施形態における潅水制御システムSは、入力装置2及び管理コンピュータ4を備えている。入力装置2は、特に限定されないが、例えばキーボードやマウス等であっても良い。また、園芸施設10は、潅水制御システムSに含まれている。
【0038】
即ち、潅水制御システムSは、栽培植物Pの葉P1を撮像する撮像部Caを備えている。
【0039】
図3に示すように、園芸施設10は、潅水装置11を有している。潅水装置11は、例えば潅水チューブ等を含んでいる。潅水装置11は、栽培植物Pへの潅水を行うことができるように構成されている。尚、本発明において、「潅水」は、養液を供給することを意味する。また、養液は、水に肥料等が溶け込んだ液体であっても良いし、単なる水であっても良い。
【0040】
〔被覆率に基づく潅水〕
図3に示すように、管理コンピュータ4は、潅水指示部41、被覆率算出部44(本発明に係る「張り指標値算出部」に相当)、基準被覆率設定部45(本発明に係る「基準指標値設定部」に相当)、基準算出部46、しおれ係数設定部47を有している。
【0041】
図3に示すように、撮像部Caにより所定の時間間隔毎に取得された撮像画像V(図4参照)は、被覆率算出部44へ送られる。被覆率算出部44は、受け取った撮像画像Vに基づいて、被覆率Eを経時的に算出する。
【0042】
尚、被覆率Eとは、撮像画像Vにおいて葉P1が写っている領域である計測領域B(図4参照)のうち、葉P1の占める領域の割合である。また、被覆率Eは、葉P1の張り度合いを示す値である。即ち、被覆率Eは、本発明に係る「張り指標値」に相当する。
【0043】
被覆率Eの算出について詳述すると、図4に示すように、被覆率算出部44は、撮像画像Vの色情報等に基づいて、撮像画像Vにおける枝葉や茎の領域を判定する。この領域は、栽培植物Pの繁茂領域、即ち被覆領域として判定される。
【0044】
尚、枝葉や茎の領域の判定は、RGBデータに基づいて行われるものであっても良いし、YUVデータに基づいて行われるものであっても良い。但し、本実施形態では、天候や時間帯の変化に伴う明暗の変化に対応するため、枝葉や茎の領域の判定は、YUVデータに基づいて行われるのが望ましい。
【0045】
そして、被覆領域の判定に基づいて、撮像画像Vのうち、栽培植物Pの位置する範囲が設定される。図4に示されるように、栽培植物Pの枝葉が写っている領域として四辺で囲まれた範囲が設定され、この四辺で囲まれた範囲が計測領域Bとして設定されて、計測領域Bの面積Bsが算出される。面積Bsの算出は、撮像画像Vのうち、計測領域Bのドット(撮像画像Vにおける画素の最小単位)の数を数えることで可能である。
【0046】
また、被覆領域のドットの数を数えることによって、葉面積B1の算出が可能である。
そして、下記の数式によって、面積Bsに対する葉面積B1の割合が、被覆率Eとして算出される。
【0047】
被覆率E=葉面積B1/面積Bs
【0048】
尚、計測領域Bの面積Bsは、時間の経過に伴って葉P1がしおれ、枝葉の写っている領域が次第に狭まる場合であっても、葉P1がしおれ始める前の面積Bsで固定されるのが望ましい。つまり、面積Bsは、経時的に取得される複数の撮像画像Vのうち、最初の撮像画像Vに基づいて算出された面積Bsのまま固定されると共に、時間の経過に伴って葉面積B1だけが変化する構成が望ましい。
【0049】
このように、潅水制御システムSは、撮像部Caにより取得された撮像画像Vに基づいて、葉P1の張り度合いを示す値である被覆率Eを算出する被覆率算出部44を備えている。
【0050】
図3に示すように、被覆率算出部44により経時的に算出された被覆率Eは、潅水指示部41及び基準被覆率設定部45へ送られる。基準被覆率設定部45は、基準時における被覆率Eを基準被覆率ST(本発明に係る「基準指標値」に相当)として設定する。即ち、潅水制御システムSは、基準時における被覆率Eを基準被覆率STとして設定する基準被覆率設定部45を備えている。
【0051】
詳述すると、本実施形態において、上記の基準時は、日の出直後の時間帯である。また、上述の通り、撮像部Caは、撮像画像Vを所定の時間間隔毎に取得する。即ち、撮像部Caは、日の出直後の時間帯において、複数の時刻で撮像画像Vを取得する。これにより、撮像部Caによって、日の出直後の時間帯における複数の撮像画像Vが取得される。
【0052】
被覆率算出部44は、日の出直後の時間帯において取得された複数の撮像画像Vに基づいて、複数の被覆率Eを算出する。そして、基準被覆率設定部45は、この複数の被覆率Eの90パーセンタイル値を、基準被覆率STとして設定する。
【0053】
尚、本発明はこれに限定されず、基準被覆率設定部45は、上記複数の被覆率Eの90パーセンタイル値以外の値を、基準被覆率STとして設定するように構成されていても良い。例えば、基準被覆率設定部45は、上記複数の被覆率Eのうちの最大値を基準被覆率STとして設定するように構成されていても良い。また、基準被覆率設定部45は、上記複数の被覆率Eの平均値を基準被覆率STとして設定するように構成されていても良い。
【0054】
図3に示すように、基準被覆率設定部45により設定された基準被覆率STは、基準算出部46へ送られる。
【0055】
また、管理者(ユーザー)は、入力装置2を介して、しおれ係数を入力することができる。尚、しおれ係数とは、目標となる葉P1のしおれ度合いに相当する係数である。
【0056】
入力装置2に入力されたしおれ係数は、しおれ係数設定部47に送られる。そして、しおれ係数設定部47は、管理者の入力内容に従って、しおれ係数を設定する。設定されたしおれ係数は、基準算出部46へ送られる。
【0057】
基準算出部46は、基準被覆率設定部45から受け取った基準被覆率STと、しおれ係数設定部47から受け取ったしおれ係数と、に基づいて、潅水基準値THを算出する。より具体的には、基準算出部46は、基準被覆率STにしおれ係数を乗ずることによって潅水基準値THを算出する。算出された潅水基準値THは、潅水指示部41へ送られる。
【0058】
このように、潅水制御システムSは、基準被覆率STに基づいて潅水基準値THを算出する基準算出部46を備えている。
【0059】
潅水指示部41は、被覆率算出部44から受け取った被覆率Eと、基準算出部46から受け取った潅水基準値THと、に基づいて、被覆率Eが潅水基準値THを下回っているか否かを判定する。そして、被覆率Eが潅水基準値THを下回った場合、潅水指示部41は、潅水装置11へ、潅水指示信号を出力する。
【0060】
このように、潅水制御システムSは、被覆率Eが潅水基準値THを下回った場合に潅水指示信号を出力する潅水指示部41を備えている。
【0061】
また、潅水指示部41により潅水指示信号が出力された後、被覆率Eが潅水基準値THを上回らなかった場合、潅水指示部41は、潅水装置11へ、追加で潅水指示信号を出力する。
【0062】
潅水装置11は、潅水指示部41から受け取った潅水指示信号に応じて、潅水を実行する。
【0063】
以上で説明した構成により、図5に示すように、被覆率Eは基本的に以下の通りに推移する。即ち、まず、時間の経過に伴って葉P1のしおれが進行する。これにより、被覆率Eは時間の経過に伴って減少する。
【0064】
被覆率Eが潅水基準値THを下回り、潅水が実行されると、葉P1の張り度合いが回復する。これにより、被覆率Eは増加する。
【0065】
その後は、時間の経過に伴う葉P1のしおれの進行と、潅水による葉P1の張り度合いの回復と、を繰り返す。これにより、被覆率Eは、減少と増加とを交互に繰り返す。
【0066】
図5に示す例では、潅水指示部41により潅水指示信号が出力されたタイミングが、上向き矢印によって示されている。この例では、時刻t1、時刻t2、時刻t3、時刻t4、時刻t5のそれぞれにおいて、潅水指示信号が出力されている。
【0067】
ここで、時刻t1、時刻t2、時刻t5においては、被覆率Eが潅水基準値THを下回ったため、潅水指示部41により潅水指示信号が出力されている。これにより潅水が実行された結果、被覆率Eは、潅水基準値THを上回っている。
【0068】
しかしながら、時刻t3においては、時刻t1、時刻t2、時刻t5と同様に潅水指示信号が出力されたにもかかわらず、その後の時刻t4まで、被覆率Eは潅水基準値THを上回っていない。
【0069】
そのため、時刻t4において、潅水指示部41は、追加で潅水指示信号を出力している。これにより、被覆率Eは、潅水基準値THを上回っている。
【0070】
尚、本実施形態において管理コンピュータ4に含まれている潅水指示部41等の各要素は、ソフトウェアにおける機能部であっても良いし、マイクロコンピュータ等の物理的な装置によって構成されていても良い。
【0071】
〔潅水基準値の再算出について〕
園芸施設10においては、管理者によって、つる下ろし、誘引、摘葉、収穫等の栽培管理作業が行われる。そして、栽培管理作業が行われた場合、栽培植物Pの姿勢や葉P1の位置等が変化する。これにより、撮像部Caによって取得される撮像画像Vにおける葉面積B1が急激に変化しやすい。撮像画像Vにおける葉面積B1が急激に変化すると、被覆率Eが急激に変化する。
【0072】
このとき、被覆率Eが急増した場合、栽培管理作業前の栽培植物Pの状態に基づいて算出された潅水基準値THは、栽培管理作業後においては低すぎる値となる。
【0073】
逆に、このとき、被覆率Eが急減した場合、栽培管理作業前の栽培植物Pの状態に基づいて算出された潅水基準値THは、栽培管理作業後においては高すぎる値となる。
【0074】
そのため、本実施形態では、被覆率Eが急激に変化した場合、潅水基準値THが再算出されるように構成されている。以下では、潅水基準値THの再算出について説明する。
【0075】
図3に示すように、管理コンピュータ4は、算出処理部42及び修正部43を有している。算出処理部42は、上方判定値決定部51及び下方判定値決定部52を含んでいる。また、修正部43は、後述する所定の条件が満たされた場合に基準被覆率STを修正するように構成されている。即ち、潅水制御システムSは、所定の条件が満たされた場合に基準被覆率STを修正する修正部43を備えている。
【0076】
上方判定値決定部51及び下方判定値決定部52は、何れも、判定値決定部Gである。判定値決定部Gは、判定値Jを決定するように構成されている。判定値Jとは、基準被覆率STの修正に関する値である。
【0077】
このように、潅水制御システムSは、基準被覆率STの修正に関する判定値Jを決定する判定値決定部Gを備えている。より具体的には、潅水制御システムSは、判定値決定部Gである上方判定値決定部51と、判定値決定部Gである下方判定値決定部52と、を備えている。
【0078】
また、図3に示すように、算出処理部42は、上方時間算出部53及び下方時間算出部54を有している。上方時間算出部53及び下方時間算出部54は、何れも、時間算出部Kである。時間算出部Kは、第1時点から第2時点までの間において被覆率Eが判定値Jを上回った状態である時間の合計、または、第1時点から第2時点までの間において被覆率Eが判定値Jを下回った状態である時間の合計を算出するように構成されている。
【0079】
尚、特に限定されないが、本実施形態において、第2時点は現在時刻である。第1時点は第2時点から所定時間前の時点である。この「所定時間」の長さは特に限定されない。例えば、第1時点は第2時点から15分前の時点であっても良いし、10分前の時点であっても良い。
【0080】
このように、潅水制御システムSは、第1時点から第2時点までの間において被覆率Eが判定値Jを上回った状態である時間の合計、または、第1時点から第2時点までの間において被覆率Eが判定値Jを下回った状態である時間の合計を算出する時間算出部Kを備えている。より具体的には、潅水制御システムSは、時間算出部Kである上方時間算出部53と、時間算出部Kである下方時間算出部54と、を備えている。
【0081】
図3に示すように、上方判定値決定部51は、基準被覆率設定部45から、基準被覆率STを取得する。上方判定値決定部51は、基準被覆率STに基づいて、上方判定値J1(図6参照)を決定する。特に限定されないが、上方判定値決定部51は、例えば、基準被覆率STの1.02倍の値を、上方判定値J1に決定しても良い。
【0082】
上方判定値J1は、基準被覆率STの修正に関する値である。即ち、上方判定値J1は、判定値Jである。
【0083】
このように、上方判定値決定部51は、基準被覆率STに基づいて、判定値Jである上方判定値J1を決定する。
【0084】
上方判定値決定部51は、決定した上方判定値J1を、上方時間算出部53へ送る。また、被覆率算出部44により経時的に算出された被覆率Eは、算出処理部42へ送られる。上方時間算出部53は、上方判定値J1と、被覆率Eと、に基づいて、上方状態時間を経時的に算出する。上方状態時間とは、第1時点から第2時点までの間において被覆率Eが上方判定値J1を上回った状態である時間の合計である。
【0085】
このように、上方時間算出部53は、第1時点から第2時点までの間において被覆率Eが上方判定値J1を上回った状態である時間の合計である上方状態時間を算出する。
【0086】
ここで、図3に示すように、修正部43は、修正判定部55及び修正実行部56を有している。上方時間算出部53により算出された上方状態時間は、修正判定部55へ送られる。修正判定部55は、上方状態時間に基づいて、基準被覆率STを修正するか否かを決定する。
【0087】
より具体的には、修正判定部55は、判定時間TA(図6参照)を記憶している。判定時間TAは、第1時点から第2時点までの長さである。修正判定部55は、判定時間TAに対する上方状態時間の割合が所定割合以上であるか否かを判定する。そして、判定時間TAに対する上方状態時間の割合が所定割合以上である場合、修正判定部55は、基準被覆率STを修正することを決定する。尚、この「所定割合」は、本実施形態では6割である。ただし、本発明はこれに限定されず、この「所定割合」は、6割以外のいかなる割合であっても良い。
【0088】
このように、修正部43は、第1時点から第2時点までの長さである判定時間TAに対する上方状態時間の割合が所定割合以上である場合、基準被覆率STを修正することを決定する。即ち、修正部43は、上方状態時間に基づいて、基準被覆率STを修正するか否かを決定する。
【0089】
尚、判定時間TAの長さは特に限定されない。例えば、判定時間TAの長さは15分間であっても良いし、10分間であっても良い。また、判定時間TAの長さは、上述の「所定時間」の長さに一致する。
【0090】
基準被覆率STを修正することが修正判定部55によって決定された場合、図3に示すように、修正判定部55は、修正指示信号を修正実行部56へ送る。修正実行部56は、修正指示信号を受け取ると、基準被覆率設定部45により設定されている基準被覆率STを修正する。
【0091】
このとき、修正実行部56は、第1時点から第2時点までにおける被覆率Eに基づいて基準被覆率STを修正する。特に限定されないが、例えば、修正実行部56は、第1時点から第2時点までにおける被覆率Eの90パーセンタイル値で基準被覆率STを置き換えることにより、基準被覆率STを修正しても良い。修正後の基準被覆率STは、基準被覆率設定部45から基準算出部46へ送られる。
【0092】
修正実行部56によって基準被覆率STが修正された場合、基準算出部46は、修正後の基準被覆率STに基づいて潅水基準値THを再算出する。より具体的には、基準算出部46は、修正後の基準被覆率STにしおれ係数を乗ずることによって、潅水基準値THを再算出する。
【0093】
このように、修正部43によって基準被覆率STが修正された場合、基準算出部46は、修正後の基準被覆率STに基づいて潅水基準値THを再算出する。
【0094】
例えば、図6に示す例では、潅水指示部41により潅水指示信号が出力されたタイミングが、上向き矢印によって示されている。この例では、時刻t11で潅水が実行された後、時刻t12で栽培管理作業が行われることによって被覆率Eが急増している。
【0095】
その後、時刻t13から時刻t14までの間、被覆率Eは上方判定値J1を上回っている。この例では、現在時刻が時刻t14であるとき、時刻t13が上述の「第1時点」に相当すると共に、時刻t14が上述の「第2時点」に相当する。
【0096】
そして、現在時刻が時刻t14であるとき、上方状態時間は、判定時間TAに一致している。即ち、判定時間TAに対する上方状態時間の割合は、10割である。従って、判定時間TAに対する上方状態時間の割合は、上述の所定割合以上である。そのため、修正判定部55は、基準被覆率STを修正することを決定する。
【0097】
その結果、時刻t14において、修正実行部56は、基準被覆率STを修正する。これにより、時刻t14に、基準被覆率STは上昇する。修正後の基準被覆率STは、基準算出部46へ送られる。基準算出部46は、修正後の基準被覆率STに基づいて潅水基準値THを再算出する。これにより、時刻t14に、潅水基準値THは上昇する。
【0098】
尚、上方状態時間に、被覆率Eが上方判定値J1よりも大きい状態の時間だけでなく、被覆率Eが上方判定値J1に一致している状態の時間が含まれていても良い。例えば、図6に示す例において、時刻t13に、被覆率Eが上方判定値J1よりも大きい状態であっても良いし、被覆率Eが上方判定値J1に一致している状態であっても良い。
【0099】
また、図3に示すように、下方判定値決定部52は、基準算出部46から、潅水基準値THを取得する。下方判定値決定部52は、潅水基準値THに基づいて、下方判定値J2(図7参照)を決定する。特に限定されないが、下方判定値決定部52は、例えば、潅水基準値THの1.02倍の値を、下方判定値J2に決定しても良い。
【0100】
下方判定値J2は、基準被覆率STの修正に関する値である。即ち、下方判定値J2は、判定値Jである。
【0101】
このように、下方判定値決定部52は、潅水基準値THに基づいて、判定値Jである下方判定値J2を決定する。
【0102】
下方判定値決定部52は、決定した下方判定値J2を、下方時間算出部54へ送る。また、被覆率算出部44により経時的に算出された被覆率Eは、算出処理部42へ送られる。下方時間算出部54は、下方判定値J2と、被覆率Eと、に基づいて、下方状態時間を経時的に算出する。下方状態時間とは、第1時点から第2時点までの間において被覆率Eが下方判定値J2を下回った状態である時間の合計である。
【0103】
このように、下方時間算出部54は、第1時点から第2時点までの間において被覆率Eが下方判定値J2を下回った状態である時間の合計である下方状態時間を算出する。
【0104】
図3に示すように、下方時間算出部54により算出された下方状態時間は、修正判定部55へ送られる。修正判定部55は、下方状態時間に基づいて、基準被覆率STを修正するか否かを決定する。
【0105】
より具体的には、修正判定部55は、判定時間TA(図7参照)に対する下方状態時間の割合が所定割合以上であるか否かを判定する。そして、判定時間TAに対する下方状態時間の割合が所定割合以上である場合、修正判定部55は、基準被覆率STを修正することを決定する。尚、この「所定割合」は、本実施形態では6割である。ただし、本発明はこれに限定されず、この「所定割合」は、6割以外のいかなる割合であっても良い。
【0106】
このように、修正部43は、第1時点から第2時点までの長さである判定時間TAに対する下方状態時間の割合が所定割合以上である場合、基準被覆率STを修正することを決定する。即ち、修正部43は、下方状態時間に基づいて、基準被覆率STを修正するか否かを決定する。
【0107】
尚、上方状態時間に基づいて基準被覆率STを修正するか否かを決定する場合における判定時間TAの長さと、下方状態時間に基づいて基準被覆率STを修正するか否かを決定する場合における判定時間TAの長さと、は互いに一致していても良いし、異なっていても良い。
【0108】
また、上方状態時間に基づいて基準被覆率STを修正するか否かを決定する場合における判定時間TAの長さと、下方状態時間に基づいて基準被覆率STを修正するか否かを決定する場合における判定時間TAの長さと、を管理者が設定可能であっても良い。
【0109】
基準被覆率STを修正することが修正判定部55によって決定された後の処理は、上述の通りである。
【0110】
例えば、図7に示す例では、潅水指示部41により潅水指示信号が出力されたタイミングが、上向き矢印によって示されている。この例では、時刻t21で潅水が実行された後、時刻t22で栽培管理作業が行われることによって被覆率Eが急減している。これにより、被覆率Eは潅水基準値THを下回っている。
【0111】
そして、被覆率Eが潅水基準値THを下回ったため、時刻t22に、潅水指示部41により潅水指示信号が出力されている。
【0112】
その後、時刻t22から時刻t23までの間において、被覆率Eが下方判定値J2を下回った状態である時間の合計は、比較的長い。この例では、現在時刻が時刻t23であるとき、時刻t22が上述の「第1時点」に相当すると共に、時刻t23が上述の「第2時点」に相当する。
【0113】
この例では、現在時刻が時刻t23であるとき、判定時間TAに対する下方状態時間の割合は、8割であるとする。従って、判定時間TAに対する下方状態時間の割合は、上述の所定割合以上である。そのため、修正判定部55は、基準被覆率STを修正することを決定する。
【0114】
その結果、時刻t23において、修正実行部56は、基準被覆率STを修正する。これにより、時刻t23に、基準被覆率STは低下する。修正後の基準被覆率STは、基準算出部46へ送られる。基準算出部46は、修正後の基準被覆率STに基づいて潅水基準値THを再算出する。これにより、時刻t23に、潅水基準値THは低下する。
【0115】
尚、下方状態時間に、被覆率Eが下方判定値J2よりも小さい状態の時間だけでなく、被覆率Eが下方判定値J2に一致している状態の時間が含まれていても良い。
【0116】
以上で説明した構成により、修正判定部55は、上方時間算出部53による算出結果である上方状態時間、及び、下方時間算出部54による算出結果である下方状態時間に基づいて、基準被覆率STを修正するか否かを決定する。即ち、修正部43は、時間算出部Kによる算出結果に基づいて、基準被覆率STを修正するか否かを決定する。
【0117】
また、上述の「所定の条件」は、「判定時間TAに対する上方状態時間の割合が所定割合以上である」という条件、及び、「判定時間TAに対する下方状態時間の割合が所定割合以上である」という条件である。判定時間TAに対する上方状態時間の割合が所定割合未満であり、且つ、判定時間TAに対する下方状態時間の割合が所定割合未満である場合、修正判定部55は、現時点では基準被覆率STを修正しないことを決定する。
【0118】
尚、上方状態時間に基づいて基準被覆率STを修正するか否かを決定する場合において、第1時点は、潅水指示部41により潅水指示信号が出力された時点であっても良い。この場合、第1時点から判定時間TA後の時点が、第2時点として決定されても良い。即ち、第2時点は、現在時刻でなくても良い。
【0119】
また、下方状態時間に基づいて基準被覆率STを修正するか否かを決定する場合において、第1時点は、潅水指示部41により潅水指示信号が出力された時点であっても良い。この場合、第1時点から判定時間TA後の時点が、第2時点として決定されても良い。即ち、第2時点は、現在時刻でなくても良い。
【0120】
また、図6に示す例において、上方判定値J1だけでなく、下方判定値J2も決定されていても良い。また、図7に示す例において、下方判定値J2だけでなく、上方判定値J1も決定されていても良い。
【0121】
〔繰り返し潅水間隔〕
図3に示すように、管理コンピュータ4は、間隔設定部48を有している。管理者は、入力装置2を介して、繰り返し潅水間隔(本発明に係る「時間間隔」に相当)を入力することができる。
【0122】
入力装置2に入力された繰り返し潅水間隔は、間隔設定部48に送られる。そして、間隔設定部48は、管理者の入力内容に従って、繰り返し潅水間隔を設定する。設定された繰り返し潅水間隔は、潅水指示部41へ送られる。
【0123】
本実施形態において、潅水指示部41は、潅水指示信号が出力された時点から繰り返し潅水間隔が経過するまでの間、次の潅水指示信号を出力しない。即ち、潅水指示部41は、潅水指示信号が出力された時点から所定の繰り返し潅水間隔が経過するまでの間、次の潅水指示信号を出力しないように構成されている。
【0124】
例えば、図8に示す例では、1分毎の被覆率Eがプロットされている。また、図8には、潅水指示部41により潅水指示信号が出力されたタイミングが、上向き矢印によって示されている。また、10時14分に基準被覆率STが修正されると共に、潅水基準値THが再算出されている。
【0125】
図8に示す例において、上述の下方判定値J2は、潅水基準値THに一致している。また、上述の判定時間TAは、15分間(プロット15個分の時間)であるとする。また、繰り返し潅水間隔は、15分に設定されている。
【0126】
この例では、10時ちょうどに潅水が実行された後、10時1分、2分、4分、6分から14分までにおいて、被覆率Eが、潅水基準値THの再算出前の下方判定値J2を下回った状態である。尚、このとき、10時ちょうどにおいても、被覆率Eが下方判定値J2を下回っている。そのため、10時14分の時点で、下方時間算出部54は、下方状態時間を13分間と算出する。
【0127】
この場合、判定時間TAに対する下方状態時間の割合は、所定割合(6割)以上である。そのため、修正判定部55は、基準被覆率STを修正することを決定する。その結果、10時14分において、修正実行部56は、基準被覆率STを修正する。これにより、10時14分に、基準被覆率STは低下する。修正後の基準被覆率STは、基準算出部46へ送られる。基準算出部46は、修正後の基準被覆率STに基づいて潅水基準値THを再算出する。これにより、10時14分に、潅水基準値THは低下する。
【0128】
また、この例では、上述の通り、繰り返し潅水間隔が15分に設定されている。そのため、潅水指示部41は、潅水指示信号が出力された時点である10時ちょうどから、15分が経過するまでの間、次の潅水指示信号を出力しない。従って、例えば10時1分に被覆率Eが潅水基準値THを下回っているが、潅水指示部41は潅水指示信号を出力しない。
【0129】
また、図9に示す例では、1分毎の被覆率Eがプロットされている。また、図9には、潅水指示部41により潅水指示信号が出力されたタイミングが、上向き矢印によって示されている。
【0130】
図9に示す例において、上述の下方判定値J2は、潅水基準値THに一致している。また、上述の判定時間TAは、15分間(プロット15個分の時間)であるとする。また、繰り返し潅水間隔は、10分に設定されている。尚、図9における被覆率Eの推移と、基準被覆率STと、潅水基準値TH(下方判定値J2)と、は図8と同一である。
【0131】
この例では、図8に示した例と同様に、10時14分において、修正実行部56は、基準被覆率STを修正する。これに伴い、10時14分に、潅水基準値THは低下する。
【0132】
また、この例では、上述の通り、繰り返し潅水間隔が10分に設定されている。そのため、潅水指示部41は、潅水指示信号が出力された時点である10時ちょうどから、10分が経過するまでの間、次の潅水指示信号を出力しない。従って、例えば10時1分に被覆率Eが潅水基準値THを下回っているが、潅水指示部41は潅水指示信号を出力しない。
【0133】
また、10時ちょうどから繰り返し潅水間隔(10分)が経過した時点である10時10分において、被覆率Eが潅水基準値THを下回っている。そのため、10時10分に、潅水指示部41は潅水指示信号を出力する。
【0134】
〔潅水の回数制限〕
図3に示すように、管理コンピュータ4は、潅水制御部49を有している。潅水制御部49は、制限時間設定部57及び制限回数設定部58を含んでいる。管理者は、入力装置2を介して、繰り返し潅水制限時間(本発明に係る「制限時間」に相当)及び繰り返し潅水制限回数(本発明に係る「制限回数」に相当)を入力することができる。
【0135】
入力装置2に入力された繰り返し潅水制限時間及び繰り返し潅水制限回数は、潅水制御部49に送られる。そして、制限時間設定部57は、管理者の入力内容に従って、繰り返し潅水制限時間を設定する。また、制限回数設定部58は、管理者の入力内容に従って、繰り返し潅水制限回数を設定する。設定された繰り返し潅水制限時間及び繰り返し潅水制限回数は、潅水指示部41へ送られる。
【0136】
本実施形態において、潅水指示部41は、繰り返し潅水制限時間内に潅水指示信号が出力される回数が繰り返し潅水制限回数以内となるように、潅水指示信号の出力を制限するように構成されている。即ち、潅水指示部41は、所定の繰り返し潅水制限時間内に潅水指示信号が出力される回数が所定の繰り返し潅水制限回数以内となるように、潅水指示信号の出力を制限する。
【0137】
例えば、図10に示す例では、1分毎の被覆率Eがプロットされている。また、図10には、潅水指示部41により潅水指示信号が出力されたタイミングが、上向き矢印によって示されている。
【0138】
図10に示す例において、上述の下方判定値J2は、潅水基準値THに一致している。また、上述の判定時間TAは、15分間(プロット15個分の時間)であるとする。また、繰り返し潅水間隔は、3分に設定されている。尚、図10における被覆率Eの推移と、基準被覆率STと、潅水基準値TH(下方判定値J2)と、は図8と同一である。
【0139】
また、図10に示す例では、繰り返し潅水制限時間及び繰り返し潅水制限回数が、それぞれ、15分及び3回に設定されている。
【0140】
この例では、図8に示した例と同様に、10時14分において、修正実行部56は、基準被覆率STを修正する。これに伴い、10時14分に、潅水基準値THは低下する。
【0141】
この例では、上述の通り、繰り返し潅水間隔が3分に設定されている。そのため、潅水指示部41は、潅水指示信号が出力された時点である10時ちょうどから、3分が経過するまでの間、次の潅水指示信号を出力しない。
【0142】
また、10時ちょうどから繰り返し潅水間隔(3分)が経過した時点である10時3分において、被覆率Eは潅水基準値THを下回っていない。そのため、10時3分に、潅水指示部41は潅水指示信号を出力しない。その後、10時4分に被覆率Eが潅水基準値THを下回っている。そのため、10時4分に、潅水指示部41は潅水指示信号を出力する。
【0143】
潅水指示部41は、潅水指示信号が出力された時点である10時4分から、繰り返し潅水間隔(3分)が経過するまでの間、次の潅水指示信号を出力しない。10時4分から繰り返し潅水間隔(3分)が経過した時点である10時7分において、被覆率Eが潅水基準値THを下回っている。そのため、10時7分に、潅水指示部41は潅水指示信号を出力する。
【0144】
以上で説明した通り、この例では、10時ちょうど、10時4分、10時7分において潅水指示信号が出力される。即ち、10時ちょうどから繰り返し潅水制限時間(15分)内に、潅水指示信号が、繰り返し制限回数(3回)と同じ回数出力されている。そのため、潅水指示部41は、10時7分に3回目の潅水指示信号が出力された後、10時ちょうどからカウントされている繰り返し潅水制限時間(15分)が終了するまでの間、潅水指示信号を出力しない。
【0145】
従って、例えば10時10分においては、10時7分から繰り返し潅水間隔(3分)が経過しており、且つ、被覆率Eが潅水基準値THを下回っているが、潅水指示部41は潅水指示信号を出力しない。また、例えば10時13分においても同様に、潅水指示部41は潅水指示信号を出力しない。
【0146】
以上で説明したように、栽培管理作業によって栽培植物Pの状態が変わった場合における被覆率Eの推移は、栽培管理作業前の推移とは異なる状態になりやすい。例えば、栽培管理作業が行われた結果、葉P1が撮像部Caに近付いたこと等によって被覆率Eが急増した場合、被覆率Eは、栽培管理作業前の範囲よりも高い範囲で推移しがちである。また、例えば、栽培管理作業が行われた結果、葉P1が撮像部Caから遠ざかったこと等によって被覆率Eが急減した場合、被覆率Eは、栽培管理作業前の範囲よりも低い範囲で推移しがちである。
【0147】
ここで、以上で説明した構成によれば、被覆率Eが判定値Jを上回った状態である時間の合計、または、被覆率Eが判定値Jを下回った状態である時間の合計に基づいて、基準被覆率STを修正するか否かが決定される。そのため、被覆率Eが栽培管理作業前の範囲よりも高い範囲で推移している場合、または、被覆率Eが栽培管理作業前の範囲よりも低い範囲で推移している場合に、基準被覆率STが修正される構成を実現しやすい。そして、基準被覆率STが修正された場合、潅水基準値THが再算出される。これにより、適切な潅水を継続しやすい。
【0148】
従って、以上で説明した構成によれば、栽培管理作業によって栽培植物Pの状態が変わった場合に適切な潅水を継続しやすい潅水制御システムSを実現できる。
【0149】
〔その他の実施形態〕
(1)上方判定値決定部51は、上方判定値J1を、基準被覆率STと同一の値に決定しても良い。
【0150】
(2)上方判定値決定部51及び上方時間算出部53は設けられていなくても良い。この場合、修正部43は、上方状態時間及び下方状態時間のうち、下方状態時間のみに基づいて、基準被覆率STを修正するか否かを決定するように構成されていても良い。
【0151】
(3)修正部43は、判定時間TAに対する上方状態時間の割合に基づくことなく、基準被覆率STを修正するか否かを決定するように構成されていても良い。例えば、修正部43は、上方状態時間が所定の長さ以上である場合、基準被覆率STを修正することを決定するように構成されていても良い。
【0152】
(4)下方判定値決定部52及び下方時間算出部54は設けられていなくても良い。この場合、修正部43は、上方状態時間及び下方状態時間のうち、上方状態時間のみに基づいて、基準被覆率STを修正するか否かを決定するように構成されていても良い。
【0153】
(5)修正部43は、判定時間TAに対する下方状態時間の割合に基づくことなく、基準被覆率STを修正するか否かを決定するように構成されていても良い。例えば、修正部43は、下方状態時間が所定の長さ以上である場合、基準被覆率STを修正することを決定するように構成されていても良い。
【0154】
(6)間隔設定部48は設けられていなくても良い。即ち、繰り返し潅水間隔に基づく潅水指示信号の出力の制限が行われない構成であっても良い。
【0155】
(7)潅水制御部49は設けられていなくても良い。即ち、繰り返し潅水制限時間及び繰り返し潅水制限回数に基づく潅水指示信号の出力の制限が行われない構成であっても良い。
【0156】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明は、栽培植物の葉を撮像する撮像部を備える潅水制御システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0158】
41 :潅水指示部
43 :修正部
44 :被覆率算出部(張り指標値算出部)
45 :基準被覆率設定部(基準指標値設定部)
46 :基準算出部
51 :上方判定値決定部
52 :下方判定値決定部
53 :上方時間算出部
54 :下方時間算出部
Ca :撮像部
E :被覆率(張り指標値)
G :判定値決定部
J :判定値
J1 :上方判定値
J2 :下方判定値
K :時間算出部
P :栽培植物
P1 :葉
S :潅水制御システム
ST :基準被覆率(基準指標値)
TA :判定時間
TH :潅水基準値
V :撮像画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10