(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046284
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】接着芯地作業を自動化する装置
(51)【国際特許分類】
A41H 43/04 20060101AFI20240327BHJP
D06H 3/08 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
A41H43/04 A
D06H3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151587
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(71)【出願人】
【識別番号】522376737
【氏名又は名称】秋田ファイブワン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】長縄 明大
(72)【発明者】
【氏名】佐賀 善廣
【テーマコード(参考)】
3B154
【Fターム(参考)】
3B154AB27
3B154BA47
3B154BA53
3B154BB12
3B154BB54
3B154BB63
3B154BC16
(57)【要約】
【課題】大きさや形状が多種多岐に渡っている生地において、接着芯地作業の生地の積み重ねを効率的に精度よく自動化する装置を提供する。
【解決手段】圧着機に設置する接着芯地作業自動化装置であって、ベルトコンベア上を移動する生地の画像を取得するカメラと、生地の画像から少なくとも生地の輪郭形状、生地の位置ずれ、及び、生地の傾き角を演算する画像処理手段と、ベルトコンベア上を移動する生地を2個以上の把持パットで把持する把持部と、把持部で把持した生地を積み重ね台まで運搬する運搬部と、を有し、運搬部は、生地の位置ずれを補正し、把持部は、生地の傾き角に合わせて把持部の角度を調整するとともに、生地の輪郭形状に合わせて2個以上の把持パットの中心間距離を調整することを特徴とする接着芯地作業自動化装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧着機に設置する接着芯地作業自動化装置であって、
ベルトコンベア上を移動する生地の画像を取得するカメラと、前記生地の画像から少なくとも、生地の輪郭形状、生地の位置ずれ、及び、生地の傾き角を演算する画像処理手段と、前記ベルトコンベア上を移動する前記生地を2個以上の把持パットで把持する把持部と、前記把持部で把持した生地を積み重ね台まで運搬する運搬部と、を有し、
前記運搬部は、前記生地の位置ずれを補正し、前記把持部は、前記生地の傾き角に合わせて前記把持部の角度を調整するとともに、前記生地の輪郭形状に合わせて前記2個以上の把持パットの中心間距離を調整することを特徴とする接着芯地作業自動化装置。
【請求項2】
前記把持パッドが、非接触パッドである請求項1に記載の接着芯地作業自動化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着芯地作業を自動化する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国内の縫製工場において、国内産業規模の維持と人材不足の解消のために、製品の品質向上とともに各種作業工程の自動化が進められている。例えば、特許文献1は、織物生地の延反、定寸裁断及び縮絨処理可能な自動移送装置を開示している。また、特許文献2は、位置合わせ方法及び位置合わせ装置並びに生地縫着装置を開示している。更に、特許文献3は、生地接着装置を開示している。しかしながら、現状で自動化等が進められているのは、ミシンの性能向上の他、CAM(Computer Aided Manufacturing)、裁断機、生地の延反・定寸裁断・縮絨処理を可能とする装置、および、接着装置など一部の装置に限られている。
【0003】
一般的に、縫製工場の作業工程には、(1)仕様に基づきCAD(Computer Aided Design)を用いた縫製生地の型の作成作業工程、(2)生地の延反および型を用いた裁断(荒裁ち)作業工程、(3)接着芯地作業工程、(4)縫製生地の輪郭を揃えるための裁断(正裁ち)作業工程、(5)縫製とボタン付けなどの仕上げ加工作業工程等がある。中でも、(3)接着芯地作業工程は、製品の生地の裏面と、芯地と呼ばれる薄い補強用の生地を貼り合せる工程である。この工程により、襟部やボタン部などの生地に強度を持たせることができる。その結果、衣服の形態が整えられ、着用した際の見た目が良くなる。
【0004】
生地は柔軟性があること、生地の種類や大きさは様々であり、輪郭形状もシンプルなものから凸凹があるものなど、多種多岐に渡っている。このため、従来の(3)接着芯地作業工程の自動化は、実用化には至っておらず、接着した生地を把持して運搬し、次の(4)工程の作業がしやすいように形状を揃えて積み重ねることは、人による手作業で行われていることが多い。
【0005】
具体的には、人が圧着機の入口側で生地の裏面と芯地を重ね合わせており、重ね合わせられた生地および芯地は、ベルトコンベアに乗せられ、圧着機に挿入される。圧着機の内部では、スチーム熱等によって、重ね合わせられた生地および芯地が接着され、ベルトコンベアで出口側へ運ばれる。次の(4)工程で縫製生地の輪郭を揃えるための裁断(正裁ち)作業が行われるため、出口側では、複数枚の接着芯地作業後の生地を、同時に裁断できるように人が輪郭形状を揃えて手作業で積み重ねていく。しかし、この作業は圧着機入口側における生地と芯地の重ね合わせ作業と同じように、人手に頼っているのが現状であり、人材不足を解消するためにはロボット技術を導入して自動化することが望まれている。
【0006】
そこで、特許文献4では、(3)接着芯地作業を自動化する装置が開示されている。
図12は、特許文献4の装置の200の概要を示す図である。(3)接着芯地作業工程において、ベルトコンベア240上を移動する生地を、2つの把持パッド223で把持し、積み重ね台230に運搬し、積み重ね台230に設置された回転テーブル260により生地の傾きを補正し、生地の輪郭形状を合わせながら積み重ねる装置が開示されている。
【0007】
しかしながら、この装置では、生地の大きさに合わせて、生地を把持する2つの把持パッド223間の距離を手動で調整する作業が必要である。また、長さが長い生地を2つの把持パッド223で把持すると、把持パット223間の生地にたるみができることで、積み重ねる際に折れ目(しわ)が生じるため、しわがなく、きれいに複数枚の生地を重ね合わせることが困難である。更に、長さが長い生地を扱う場合、生地の傾きを補正する回転テーブル260をサイズが大きいものに変更する作業が必要となり、回転テーブル260の設置場所を確保しなければならないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6-219617号公報
【特許文献2】特開平10-118375号公報
【特許文献3】特開2001―164457号公報
【特許文献4】特開2022-092945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、かかる点に鑑み、輪郭形状が多種多岐に渡っている生地において、接着芯地作業の生地の積み重ねを効率的に精度よく自動化する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの態様は、圧着機に設置する接着芯地作業自動化装置であって、ベルトコンベア上を移動する生地の画像を取得するカメラと、生地の画像から少なくとも生地の輪郭形状、生地の位置ずれ、及び、生地の傾き角を演算する画像処理手段と、ベルトコンベア上を移動する生地を2個以上の把持パットで把持する把持部と、把持部で把持した生地を積み重ね台まで運搬する運搬部と、を有し、運搬部は、生地の位置ずれを補正し、把持部は、生地の傾き角に合わせて把持部の角度を調整するとともに、生地の輪郭形状に合わせて2個以上の把持パットの中心間距離を調整することを特徴とする接着芯地作業自動化装置である。また、把持パッドが、非接触パッドであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、運搬部が生地の位置ずれを補正し、把持部が生地の傾き角に合わせて把持部の角度を調整するとともに、生地の輪郭形状に合わせて2個以上の把持パットの中心間距離を調整し、生地を積み重ね台まで把持・運搬するため、輪郭形状が多種多岐に渡っている生地において、接着芯地作業の生地の積み重ねを効率的に精度よく自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、接着芯地作業自動化装置100の概要を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、接着芯地作業自動化装置100の概要を示す平面図である。
【
図3】
図3(a)は、入口側ベルトコンベア41上を移動する生地の重心とそのXY座標を示す図、
図3(b)は積み重ねられた複数枚の生地を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、取得した生地の画像の一例と画像処理について説明する図である。
【
図5】
図5は、把持・運搬部20を上から見た平面概要図である。
【
図6】
図6は、把持・運搬部20の
図4のI-I線における断面概要図である。
【
図7】
図7(a)は、傾いて置かれた生地の形状の一例を示す図であり、
図7(b)は、把持部21の角度が変更された様子を示す概略図であり、
図7(c)は、把持部21が生地を把持したときの把持パッド23と生地との位置関係を示す概略図である。
【
図8】
図8(a)は、生地の形状の一例を示す図であり、
図8(b)は、把持部パッド23の位置を示す概略図であり、
図8(c)は、把持部21が生地を把持したときの把持パッド23と生地との位置関係を示す概略図である。
【
図9】
図9は、非接触パッドについて説明する図である。
【
図10】
図10は、自動化された接着芯地作業工程を説明するためのフローチャートの一例である。
【
図11】
図11は、接着芯地作業自動化装置の評価に用いた3種類の生地の形状を示す図であり、
図11(a)が生地1、
図11(b)が生地2、
図11(c)が生地3である。
【
図12】
図12は、従来の接着芯地作業自動化装置200の概要を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態にかかる連続式圧着機に設置する接着芯地作業を自動化する装置(以下、接着芯地作業自動化装置100ともいう)について、接着芯地作業自動化装置の構成、自動化される接着芯地作業工程を順に説明する。ただし、本発明は実施形態に限定されない。
【0014】
[接着芯地作業自動化装置の構成]
図1は接着芯地作業自動化装置100の概要を示す斜視図であり、
図2は接着芯地作業自動化装置100の概要を示す平面図である。
図1及び
図2に示されるように、接着芯地作業自動化装置100は、カメラ10、把持・運搬部20、積み重ね台30、ベルトコンベア40を備えている。ベルトコンベア40は、連続式圧着機(以下、圧着機50という)の入口側に配置された入口側ベルトコンベア41と圧着機50の出口側に配置された出口側ベルトコンベア42とから構成される。入口側ベルトコンベア41上を生地が移動し、圧着機50内で接着される。接着された生地が出口側ベルトコンベア42上を移動する。接着芯地作業自動化装置100は、出口側ベルトコンベア42上を移動する生地を把持、運搬、および、積み重ねの作業工程を自動化する装置である。
すなわち、本発明の接着芯地作業自動化装置100は、既存の圧着機50を改造することなく併設されるとともに、出口側ベルトコンベア42上を移動する生地を把持・運版部20が把持し、積み重ね台30に運搬し、生地の輪郭形状を合わせて積み重ね台30の上に積み重ねる。
【0015】
図1、
図2を含む、以下図において、矢印Aはベルトコンベア40上を生地が移動する方向を示し、ベルトコンベア40の進行方向をX方向、ベルトコンベア40の幅方向をY方向、生地を積み重ねる高さ方向をZ方向とする。
【0016】
<カメラ>
カメラ10は、圧着機50の入口側に設置され、ベルトコンベア40上を移動する生地を撮影する。カメラ10によって撮影された画像を基に、画像処理手段によって、後述する画像処理が行われる。画像処理が行われると、得られた生地の輪郭形状や大きさ等の情報を取得することができる。
【0017】
なお、本実施形態では、カメラ10が、圧着機50の入口側に設置される例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、圧着機50の出口側に設置されていても、あるいは入口側と出口側の両方に設置されていてもよい。
また、カメラ10は、画像処理ができる生地の画像が取得できる性能を有していればよく、公知のカメラ、ビデオカメラ等を制限なく用いることができ、画像は静止画、動画であることを問わない。
【0018】
<画像処理手段>
画像処理手段は、カメラ10によって撮影された画像を基に画像処理を行う手段であり、例えばCPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータからなる。CPUは、画像処理プログラムに従って所望の演算を実行して、種々の処理や制御を行う。ROMは、CPUで処理する画像処理プログラムや画像処理データを記憶する。RAMは、主として画像処理のための各種作業領域として使用される。
【0019】
画像処理手段によって、生地の重心とそのXY座標、及び、ベルトコンベア40の進行方向に対する生地の傾き角、生地の輪郭形状(大きさ)等が演算される。演算されたデータのうち、生地の重心とそのXY座標からベルトコンベア40上を移動する生地の位置ずれが把持・運搬部20で補正される。また、生地の傾き角に合わせて把持部21の角度が調整され、生地の輪郭形状(大きさ)に合わせて生地を把持しやすいように把持パッド23の中心間距離が調整される。その結果、複数枚の生地の輪郭形状を合わせながら積み重ねることができる。
【0020】
生地の重心とそのXY座標について説明する。
図3(a)は、入口側ベルトコンベア41上を移動する生地の重心とそのXY座標を示す図の一例である。
図3(b)は積み重ねられた複数枚の生地を模式的に示す図であり、左側が平面図、右側が側面図である。
図3(a)では、生地3枚分の例が示されており、人が手作業で圧着機50の入口側で生地F1と芯地F2を重ね合わせた3枚の生地Fを、入口側ベルトコンベア41上に平面置きするため、各生地の位置にばらつきが発生している。
【0021】
図3(a)に示すように、例えば、3枚の生地Fの各重心C1、C2、C3の各XY座標を(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)とする。このとき、入口側ベルトコンベア41上のY方向の位置Y1、Y2、Y3は、後述する把持・運搬部20において、出口側ベルトコンベア42上で生地を把持する際の位置ずれの補正に必要な情報である。
【0022】
ベルトコンベア40の進行方向に対する生地の傾き角、及び、生地の輪郭形状(大きさ)について説明する。
図4は、カメラ10で取得した生地の画像の一例と画像処理について説明する図である。
【0023】
図4に示すように、画像処理手段によって、生地の重心CとそのXY座標に加え、ベルトコンベア40の進行方向に対する生地の傾き角θ、及び、生地の輪郭形状Qが演算される。生地の傾き角θは、ベルトコンベア40の進行方向(X方向)と生地の輪郭形状Qを長方形で近似したときの長方形の向き(X’方向)とのなす角のことである。画像処理には、例えば、取得した画像を8bitグレースケールに変換後、固定閾値Tを用いて二値化処理を行う方法等が挙げられる。本実施形態では、固定閾値Tを80とした。
【0024】
生地の重心Cを通り、生地の輪郭形状Qを長方形で近似したときの長方形の向き(X’方向)と平行である直線を線Pとする。線Pは、下記式によって演算される。(1)式中、mxは生地の重心CのX座標、myは生地の重心CのY座標を示す。
【0025】
【0026】
線P及び生地の輪郭形状Qは、後述する把持・運搬部20において、圧着機50の出口側で生地を把持する際に、生地の傾き角θに合わせて把持部21の角度が調整され、生地の輪郭形状Q(大きさ)に合わせて把持パッド23の中心間距離が調整されるために必要な情報である。
【0027】
なお、画像処理の方法は、上述した方法に制限されるものではない。例えば、ベルトコンベアのベルトと生地の色が近い場合には上記の方法で処理することが難しくなると考えられるが、近赤外線カメラなどの他のカメラとその処理装置などを導入することにより改善することもできる。
また、画像処理も二値化処理に限るものではなく、輪郭形状Qを近似した形状も生地の形状や大きさなどを把握できるものであれば長方形に限るものではない。
【0028】
<把持・運搬部>
図5は、把持・運搬部20を上から見た平面概要図であり、
図6は、
図5のI-I線における把持・運搬部20の断面概要図である。
把持・運搬部20は、圧着機50の出口側に設置され、出口側ベルトコンベア42上を移動する生地を把持する把持部21と、把持部21により把持された生地を積み重ね台30に運搬する運搬部22とを備える。
【0029】
把持・運搬部20の大きさは圧着機50の出口部に合わせた大きさである。より具体的には、把持・運搬部20のX方向の長さは圧着機50の出口側のベルトコンベア40の進行方向(X方向)の長さと同じ、あるいは小さければよい。
また、把持・運搬部20のX方向の長さは、後述する把持パッド23を2個以配置することができる長さを必要とし、把持・運搬部20が把持することができる生地のX方向の長さは、把持・運搬部20のX方向の長さにより決まる。すなわち、把持・運搬部20が把持することができる生地のX方向の長さは、把持・運搬部20のX方向の長さより小さい。
【0030】
把持・運搬部20(把持部21)のY方向の長さは、後述する把持パッド23を1つ配置するために必要な長さとするが、Y方向に2つ以上の把持パッド23を並べて配置する場合には、2つ以上の把持パッド23を配置するために必要な長さにしてもよい。
また、把持・運搬部20(把持部21)のY方向の移動距離は圧着機50のY方向の長さより大きければよい。すなわち、運搬部22において、生地を積み重ね台30まで運搬する部材であるレール27のY方向の長さは、ベルトコンベア40のY方向の長さより大きい。把持・運搬部20は、把持部21で生地を把持し、運搬部22のレール27に沿って生地を積み重ね台30まで運搬するため、把持部21のY方向への移動は、ベルトコンベア40のY方向の長さに加え、積み重ね台30の幅分を必要とするためである。
【0031】
把持・運搬部20のZ方向の長さは特に制限されない。把持部21が生地を速やかに把持することを考慮すれば、圧着機50のZ方向の長さより小さいことが好ましい。
【0032】
(把持部)
図5、
図6に示すように、把持部21は、2個の把持パッド23を備え、把持パッド23がベルトコンベア40上を移動する生地を把持する。把持パッド23は、アーム24により保持されている。把持部21は、上方にモーター25を備え、モーター25がアーム24を上下方向に駆動する。アーム24が上下方向に駆動されることで、把持パッド23で生地を把持し、把持された生地を上下方向に移動させることができる。
【0033】
アーム24は、把持パッド23を保持する部材であり、生地を把持するパッドを上下移動させる観点から、左右に各1本のシャフトとそのシャフトを支えるリニアブッシュなど、リニア駆動を支えるものであれば公知のシャフトを制限なく用いることができる。なお、シャフトの断面は円形でも多角形でも、上下移動に支障がなければ制限はない。
【0034】
モーター25は、アーム24を上下に駆動する部材であり、公知のモーターとモーターに合わせた上下機構を制限なく用いることができ、例えば、ステッピングモーター等が挙げられる。把持・運搬・積み重ねの作業を行うための動作速度と、把持パッド23を搭載したアーム24を上下するためのトルクを有しているものが好ましい。
【0035】
把持部21は、ベルトコンベア40上を移動する生地を把持する際に、生地の傾き角に合わせて把持部21の傾き角を調整する把持部角度変更機構と、把持パッド23間の距離を生地の大きさに合わせて自動で調整する把持パッド位置変更機構と、を備える。
【0036】
{把持部角度変更機構}
図7(a)は、傾いて置かれた生地の形状の一例を示す図であり、
図7(b)は、把持部21の角度が変更された様子を示す概略図であり、
図7(c)は、把持部21が生地を把持したときの把持パッド23と生地との位置関係を示す概略図である。
【0037】
把持部21は、把持部21の角度を自動で変更するモーター28を備えている。
図7(a)に示すように、ベルトコンベア40の進行方向(X方向)に対して生地が傾いている場合がある。モーター28が把持部21を駆動することで、
図7(b)に示すように、画像処理手段で得られた生地の傾き角θに合わせて、把持部21の角度が生地を把持できるように傾き角θに自動で変更される。把持部21が生地を把持すると、
図7(c)に示すように、把持パッド23は、生地の中に収まるような位置関係となる。その後、把持部21の角度は変更前の角度(X方向)に戻り、後述する運搬部22により、生地を把持した把持部21が積み重ね台30の位置まで移動し、生地が積み重ね台30に置かれる。
【0038】
このため、ベルトコンベア40の進行方向に対して生地が傾いて置かれていても、把持部角度変更機構により、生地を同じ向きで生地の輪郭形状を合わせながら積み重ね台30に積み重ねることができる。
【0039】
また、比較的大きい生地を積み重ねる場合、
図12に示す従来の装置200では、生地の傾きを補正する回転テーブル260を積み重ね台230に設置するため、生地の長さに合わせて回転テーブル260をサイズの大きいものに変更する必要があり、装置200が大型になるという問題があった。
本発明の装置100によれば、把持部21が把持部角度変更機構を備えるため、回転テーブル260を設置する必要がなく、装置100を小型化することができる。
【0040】
更に、圧着機50の入口側で人が手作業で生地をベルトコンベア40に置く際に発生する、ベルトコンベア40の進行方向(X方向)に対する生地の傾き角θは、概ねベルトコンベア40の進行方向(X方向)の±20度程度である。本実施形態では、傾き角はこの範囲を超えても調整可能である。
【0041】
なお、モーター28には、公知のモーターを制限なく用いることができ、例えば、ステッピングモーター等が挙げられる。把持部21の角度変更できるものが好ましいが、トルクが不足する場合やモーター軸に把持部を固定することによりモーターが損傷するなどが想定する場合には、モーターに減速機構を組み合わせることも想定される。
【0042】
{把持パッド位置変更機構}
図8(a)は、生地の形状の一例を示す図であり、
図8(b)は、把持部パッド23の位置を示す概略図であり、
図8(c)は、把持部21が生地を把持したときの把持パッド23と生地との位置関係を示す概略図である。
【0043】
把持部21は、2個の把持パッド23間の距離、すなわち、把持パッド23の位置をX方向に沿って自動で変更するモーター29を備えている。モーター29が把持パッド23を駆動すると、
図8(a)に示すように画像処理手段で得られた生地の輪郭形状Q、すなわち、生地のX方向における長さ(大きさ)に合わせて、把持パッド23の位置が、
図8(b)に示すように把持部21のX方向に沿って移動する。
【0044】
例えば、X方向の長さがより大きい生地を把持する場合には、把持パッド23の位置が把持部21のX方向に沿って外側に移動し、把持パッド23間の距離はより大きくなる。また、X方向の長さがより小さい生地を把持する場合には、把持パッド23の位置が把持部21のX方向に沿って内側に移動し、把持パッド23間の距離はより小さくなる。
【0045】
把持パッド23の位置決めについて説明する。
把持パッド23を2個導入した場合の把持点は、生地の重心Cの位置によって調整される。具体的には、
図8(c)に示すように、把持パッド23の中心位置は、生地の重心Cを通り、生地の輪郭形状Qを長方形で近似したときの長方形の向き(X方向)と平行である線P上で、かつ、生地の輪郭形状Qからの距離が50mmの位置に決定される。
すなわち、把持パッド23が2個の場合には、把持パッド23の中心間距離が調整され、その距離は0より長く、ベルトコンベア40上の進行方向(X方向)の生地の長さ以下である。
なお、生地の輪郭形状Qからの距離は、50mmの位置に限定されるものではなく、把持する生地によって変更してもよい。
【0046】
比較的長さが長い生地を把持する場合、把持パッド23で生地を把持した際に、把持パッド23間において生地にたるみが生じ、積み重ね台30に置くと折れ目(しわ)が生じることがある。本発明の把持パッド位置変更機構によれば、モーター29が駆動することで把持パッド23の位置が移動し、把持パッド23間の距離を調整することで、生地のたるみが解消され、しわを伸ばした状態できれいに生地を積み重ね台30に積み重ねることができる。その際、把持部角度変更機構と組み合わせて生地を伸ばす方向を変更することもできる。
【0047】
すなわち、生地がベルトコンベア40の進行方向(X方向)に対して生地が傾いて置かれていた場合は、上述した把持部角度変更機構により、生地の傾き角に合わせて把持部21の角度が変更される。その後、把持パッド位置変更機構により、生地の輪郭形状Qに合わせて、把持パッド23の位置が移動する。
【0048】
なお、把持パッド位置変更機構で用いられるモーター29には、公知のモーターを制限なく用いることができ、例えば、ステッピングモーター等が挙げられる。把持パッド23およびその固定部などの重量を考慮すれば、これらを駆動できるトルクを有しているものが好ましく、モーターの動力で把持パッド23間の距離を変更するため、ラックとピニオンギアあるいは他の直線移動機構などと組み合わせてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、把持部21のX方向に2個の把持パッド23で生地を把持する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、3個以上の把持パッド23を備えていてもよい。生地は柔軟であるため、比較的長さの長い生地を把持パッド23で把持した場合、生地の中心部および把持パッド23より外側の輪郭部では、生地にたるみが生じやすくなる。このたるみは、生地を積み重ねる際の折れ目(しわ)の原因となる。生地のたわみを防ぎ、しわを伸ばしてきれいに生地を積み重ねることを考慮すれば、3個以上の把持パッド23で生地を把持することが好ましい。
更に、生地の大きさや輪郭形状によって、把持部21のY方向に2個以上の把持パッド23を配置することも考えられる。例えば、正方形等に近い形状の生地を把持パッド23で把持する場合、把持部21のX方向に2個の把持パッド23配置することに加え、把持部21のY方向に2個の把持パッド23を更に配置することができる。
【0050】
把持パッド23は、生地の把持ができれば、公知の把持パッドを制限なく用いることができるが、生地にしわを作らず、また生地を汚さない観点から、非接触パッドが好ましい。
【0051】
図9は、非接触パッドの一例を説明する図である。
図9に示すように、非接触パッドでは、供給ポート23Aから導入された圧縮空気が、非接触パッド本体23Bとノズル23Cとの隙間から非接触パッド本体23Bの表面に沿って放射状に吐出し、非接触パッド本体下方部23Dに負圧を発生させ、吸着ワークである生地23Eを吸引する。吐出空気は非接触パッド本体23Bと吸着ワークである生地23Eとの間を通り、非接触パッド本体23Bの外周側へ流れ出る。吸着ワークである生地23Eが非接触パッド本体23Bに接近すると、吐出空気の層が反発力として作用し、吸着ワークである生地23Eとの接触を阻止するため非接触での保持が可能となる。
【0052】
本実施形態では、圧縮空気を排出することにより物体を把持する非接触パッド用いる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、圧縮空気を吸引するタイプのパッドでも、生地にしわを作らないようなものであれば導入することができる。
なお、生地の把持に用いる非接触パッドは、
図8(C)に示すように生地に対して円形のものに限らず、陸上競技場のようなオーバル形状のものなど、ほかの形状のものも導入することができる。
【0053】
(運搬部)
運搬部22は、生地の位置ずれを補正するとともに、把持部21で把持した生地を積み重ね台30まで運搬する。運搬部22は、ベルトコンベア40の幅方向(Y方向)にレール27を備え、レール27に沿って把持部21がベルトコンベア40のY方向に移動する。
【0054】
図3(a)に示すように、人が手作業で圧着機50の入口側で生地Fをベルトコンベア40上に平面置きするため、Y1、Y2、Y3の位置が異なる。すなわち、ベルトコンベア40の幅方向(Y方向)に生地の位置ずれが生じる。この生地の位置ずれを補正するために、画像処理手段で演算された生地の重心とそのXY座標のデータをもとに、ベルトコンベア40の幅方向(Y方向)に配置されたレール27に沿って、把持パッド23を保持するアーム24がベルトコンベア40の生地が流れるY方向の位置へ移動する。把持パッド23は、生地の真上に来たタイミングで生地を把持する。把持パッド23により把持された生地は、レール27に沿って積み重ね台30まで運搬される。
【0055】
なお、運搬部22は、生地を運搬できる機構であれば公知の機構を制限なく用いることができるが、例えば、ラック・ピニオン機構やリニアモーター機構、ドライブプーリー26による機構が挙げられる。
ドライブプーリー26とは、軸にプーリーと呼ばれる円筒または円盤状の部材を取り付け、このプーリーの外周にタイミングベルトを掛けて、タイミングベルトとモーターとを接続し駆動する機構である。安価でありながら安定して生地の運搬のでき、潤滑油が不要なので、生地等を汚損する可能性が少ない。
プーリーの材料としては、例えば、アルミ系や亜鉛系の金属材料や樹脂等が挙げられ、タイミングベルトの材料としては、柔軟性と抗張力を併せ持ち、表面の摩擦力の高いことと摩耗の少なさが保たれる公知の材料を用いることができるが、例えば、皮革、布帯、ゴムなどのエラストマー、エラストマーと繊維などからなる複合素材、金属製のVベルト等が挙げられる。プーリーやタイミングベルトは、広く活用されている一般的なものを活用することができる。モーターは、公知のモーターを制限なく用いることができ、例えば、ステッピングモーターを用いることができる。
【0056】
レール27はベルトコンベア40の幅方向(Y方向)に配置され、レール27に沿ってアーム24を移動させることで、把持パッド23に把持された生地を積み重ね台30まで運搬する部材である。レール27は、把持・運搬部20に取り付けられるリニアガイドあるいはシフトテーブルを組み合わせて用いられ直線移動を実現できるものが望ましく、広く活用されている一般的なものを活用することができる。また、レールの固定には、軽量性・強度等の観点から、4面溝を有するアルミフレーム等が好ましいが、レールを固定できるものであればほかの部材を活用することができる。なお、レール27の本数に制限はない。
【0057】
運搬部22による生地の搬送速度は、ベルトコンベア40を移動する生地の速度に応じて調整される。例えば、圧着機50の入口側で、手作業で生地の重ね合わせに要する時間をT1秒、重ね合わせられた生地がベルトコンベア40に乗せられ圧着機50の出口側に到着するまでの時間をT2秒とすると、T1+T2秒の間隔で生地がベルトコンベア40上を移動することになる。
接着芯地作業自動化装置100は、1枚ずつ生地を把持して運搬し、これを繰り返して積み重ねるため、1枚の生地に対する作業時間T1+T2秒より短い時間で運搬作業を終えるよう速度は調整される。
T1は、生地の大きさや作業員の熟練度等により異なるが、小さいもので約5秒、大きいもので約25秒であるが、生地の重ね合わせに要する時間はこの限りではない。
【0058】
<積み重ね台>
生地は、上述した把持・運搬部20により、生地の位置ずれや傾き角が補正された状態で、積み重ね台30に運搬され、生地が積み重ね台30に置かれる。積み重ね台は、生地を積み重ねることができれば、どのような大きさや形状のものであってもよい。運搬部22の生地の運搬を妨げないことを考慮すれば、積み重ね台の高さがベルトコンベア40の高さと同程度であることが好ましい。
【0059】
[接着芯地作業工程]
接着芯地作業工程は、生地の延反および型を用いた裁断(荒裁ち)作業工程後、縫製生地の輪郭を揃えるための裁断(正裁ち)作業工程前に行われる作業工程である。接着芯地作業自動化装置100は接着芯地作業工程を自動化する装置である。
図10は、自動化された接着芯地作業工程S1を説明するためのフローチャートの一例である。
図10に示すように、接着芯地作業工程S1は以下工程S10~S70を備えており、各工程について説明する。
【0060】
工程S10は、生地の画像の取得工程である。工程S10では、圧着機50の入口側に設置したカメラ等により、工程S20の画像処理手段に用いられる生地の画像を撮影する。
【0061】
工程S20は、画像処理手段による演算工程である。工程S20では、工程S20で得られた画像に対して、画像処理を行い、生地の重心CとそのXY座標、ベルトコンベア40の進行方向に対する生地の傾き角θ、生地の輪郭形状Q(大きさ)等を演算する。
【0062】
工程S30は、生地の位置ずれ(Y方向)の補正工程である。工程S30では、工程S20で演算された生地の重心CとそのXY座標に基づき、ベルトコンベア40の幅方向(Y方向)における位置ずれを補正する。すなわち、ベルトコンベア40上を移動する生地を把持できるよう、把持パッド23を保持したアーム24が生地の流れるY方向の位置まで移動する。
【0063】
工程S40は、把持部21の角度変更工程である。工程S40では、把持部21が、工程S30で演算されたベルトコンベア40の進行方向(X方向)に対する生地の傾き角θを補正する。すなわち、工程S40では、工程S30で演算された、ベルトコンベア40の進行方向(X方向)に対する生地の傾き角θに合わせて、把持部21の角度が変更される。
【0064】
工程S50は、把持パッド23の位置変更工程である。工程S50では、工程S30で演算された生地の輪郭形状Q(大きさ)にあわせて、把持パッド23の位置が移動し、把持パッド23間の距離が変更される。
【0065】
工程S60は、生地を把持する工程である。工程S60では、工程S30から工程S40で、把持・運搬部20において、生地の位置ずれ、生地の傾き角θ、生地の輪郭形状Q等にあわせて、生地を把持しやすいように調整された後で、ベルトコンベア40上を移動する生地が把持パッド23の真下に来たタイミングで生地を把持する。
【0066】
工程S70は、生地を運搬する工程である。工程S70では、工程S60で把持した生地を積み重ね台60まで運搬する。
【0067】
接着芯地作業工程S1を自動化した接着芯地作業自動化装置100によって、生地の輪郭形状が多種多岐に渡っている生地においても、精度よく複数枚の生地の輪郭形状を合わせながら積み重ねることが可能になる。
【実施例0068】
発明者は、実際に設計した接着芯地作業自動化装置によって、生地を積み重ね、及び、生地を積み重ねる際の誤差に関する検討を行った。以下に条件、試験および評価の方法を示す。
【0069】
[条件1]
図12に示すように、従来の接着芯地作業自動化装置200で生地を積み重ね実験を行った。実際の縫製工場に設置してある圧着機50の全長LPは4700mm 、幅(Y方向長さ)は1400mmであるが、設計した接着芯地作業自動化装置200の模擬的な装置を製作して行った。ベルトコンベア240のベルト幅は490mm、ベルトコンベア240の速度は実際の工場の装置の速度と同じ0.25m/sとした。把持・運搬部220は、X方向の長さが1180mm、Y方向の長さが1850mm、Z方向の長さが1160mm、レール57のY方向の長さが1850mmである。
【0070】
生地がベルトコンベア240に乗せられ圧着機250の出口側に到着するまでの時間T2が約15秒である。運搬部222による生地の搬送速度は、ベルトコンベア240の速度と同じ0.25m/sとし、接着芯地作業自動化装置200が生地を繰り返して積み重ねる時間を約17秒となるよう、アーム24の移動速度などを調整した。
【0071】
把持パッド223には3個の非接触パッドを用い、非接触パッドに供給する空気の圧力値は0.7MPaとした。
【0072】
[条件2]
図1に示すように、本発明の接着芯地作業自動化装置100で生地を積み重ね実験を行った。装置100において、把持部21において、把持部角度変更機構、及び、把持パッド位置変更機構を作動させたこと以外は、条件1と同様にした。
【0073】
図10は、接着芯地作業自動化装置の評価に用いた3種類の生地の形状を示す図であり、
図10(a)が生地1、
図10(b)が生地2、
図10(c)が生地3である。
【0074】
図10に示すように、生地1は、大きさが450×200mmで輪郭形状に複雑な曲線が含まれている。生地2は、大きさが510×130mmで輪郭形状が直線的で生地1よりも単純な輪郭形状をしている。生地3は、大きさが815×210mmで、生地1及び生地2より大きさが大きく、輪郭形状が滑らかな曲線である。
【0075】
[生地3の積み重ね実験]
(条件1)
条件1では、1枚の生地3をベルトコンベア240に流し、従来の装置200により、生地3を把持・運搬した後、積み重ね台230に生地3を置いた。
次に、2枚目の生地3を同様にして、積み重ね台230に生地を積み重ね、積み重なった2枚の生地3にしわや折れ込みがないかを確認した。
【0076】
(条件2)
条件2では、1枚の生地3をベルトコンベア40に流し、本発明の装置100により、生地3を把持・運搬した後、積み重ね台30に生地3を置いた。
次に、2枚目の生地3を同様にして、積み重ね台30に生地を積み重ね、積み重なった2枚の生地3にしわや折れ込みがないかを確認した。
【0077】
[結果]
条件1では、2枚目の生地にしわと折れ込みが確認された。これは、生地3同士の摩擦により把持した際のたわみが残っていたためと考えられる。
条件2では、しわや折れ込みがなく生地3が重ねられたことが確認された。
この結果から本発明の把持部角度変更機構、及び、把持パッド位置変更機構により、生地3のしわやたるみを伸ばすことができたことが考えられる。本発明の装置100によれば、従来の装置200よりも、生地3の積み重ねを精度よく行うことができたといえる。
【0078】
[積み重ね誤差確認実験]
(条件1)
生地1を用いて、下記の手順で実験を行った。
1枚目の生地1をベルトコンベアに流し、従来の装置200により生地1を把持・運搬し、積み重ね台230に置き、その生地1を固定した。
次に、2枚目の生地1を流し、生地1の重心のX方向とY方向、生地の傾き角の誤差を記録した。同様の操作を生地1が3枚積み重なるまで繰り返した。
上述した動作を更に5回繰り返した。
次に、生地2についても、生地1と同様の手順で実験を行った。
【0079】
(条件2)
生地3を用いて、下記の手順で実験を行った。
1枚目の生地3をベルトコンベアに流し、本発明の装置100により生地3を把持・運搬し、積み重ね台30に置き、その生地3を固定した。
次に、2枚目の生地3を流し、生地3の重心のX方向とY方向、生地の傾き角の誤差を記録した。同様の操作を生地3が3枚積み重なるまで繰り返した。
上述した動作を更に5回繰り返した。
【0080】
[結果]
表1に、X方向、Y方向、角度における接着芯地作業工程終了後の積み重ね誤差を示す。角度における誤差については、反時計回りを正方向とした。
表1に示すように、本発明の装置100を用いて実験を行った生地3において、把持部角度変更機構、及び、把持パッド位置変更機構により生地3を伸ばす動作を行っても、Y方向平均絶対誤差は2mm、角度平均誤差は0°となり、誤差はほぼ生じなかった。
【0081】
【0082】
表2に、生地1、生地2、及び、生地3における、生地を積み重ねた際のX方向、又は、Y方向の±15mm以内の誤差であった枚数の割合(目標(a)の達成率)を示す。
表2に示すように、本発明の装置100を用いて実験を行った生地3における目標(a)の達成率は、従来の装置200を用いて実験を行った生地1、生地2と同程度であった。
【0083】
【0084】
表3に、生地1、生地2、及び、生地3における、生地を積み重ねた際のX方向、又は、Y方向の生地の大きさ±1%以内の誤差であった枚数の割合(目標(b)の達成率)を示す。
表3に示すように、本発明の装置100を用いて実験を行った生地3において、目標(b)の達成率は、従来の装置200を用いて実験を行った生地1、生地2と同程度であった。
【0085】
【0086】
以上の結果から、本発明の装置100を用いて実験を行った生地3において、従来の装置200を用いて実験を行った生地1、2と同程度の精度で生地を積み重ねることができた。従って、本発明の装置100は、生地1、2より大きい生地3においても、生地1、2と同じように精度よく生地3を積み重ねることができたといえる。
【0087】
本開示の接着芯地作業自動化装置100によれば、輪郭形状が多種多岐に渡っている生地において、接着芯地作業の生地の積み重ねを効率的に精度よく自動化することができる。
本開示の接着芯地作業を自動化する装置によると、紳士・婦人服、病院などで着用されている白衣、ジーンズや作業服など様々な分野・場面で用いられる服の製造で行われている接着作業の自動化が可能であり、この技術を発展させることは生地の把持・移動・積み重ねの各工程は接着芯地作業のみならず、ミシンによる縫製作業などにおける生地の把持・運搬などへも展開することができ、縫製工場の自動化へ多大に貢献できると考えられる。