(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046286
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】タイヤ滑り止め装置
(51)【国際特許分類】
B60C 11/02 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
B60C11/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151589
(22)【出願日】2022-09-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】320009004
【氏名又は名称】山田 朝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100194836
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 優一
(74)【代理人】
【識別番号】100075959
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 保
(72)【発明者】
【氏名】山田 朝夫
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB12
3D131BC12
3D131BC17
3D131ED01U
(57)【要約】
【課題】 自動車のノーマルタイヤに装着するだけで砂地上を走行する際、タイヤが砂地上をスリップすることなく、また、タイヤが砂地の地中に潜り込むことなく、スムーズに走行することができるタイヤ滑り止め装置を提供すること。
【解決手段】 タイヤのトレッド部を覆う前記装着部と、周回してタイヤの直径方向に向かって壁が立設されて溝を形成され、溝の各底部に突出する突起部が周回して形成されてなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部と、該トレッド部の左右のそれぞれに連続するショルダー部と、該左右のそれぞれのショルダー部に連続するサイドウォール部を備えるタイヤの少なくともトレッド部とショルダー部に架けて着脱自在に覆い被せるものであって、
少なくとも前記タイヤのトレッド部を覆う装着部と、該装着部に連続して下方に折曲し、前記タイヤのショルダー部を覆う側壁部とを備え、
前記タイヤのトレッド部を覆う前記装着部には、周回してタイヤの直径方向に向かって複数の壁が所定間隔をもって立設されてなり、
前記装着部に形成される前記複数の壁の相隣り合う壁によって上部が開口する上部開口部を備えた溝がタイヤの幅方向に複数本形成されてなり、
前記装着部に形成される前記溝は、互いに向かい合う壁によって形成される空間が該溝の底部から上部開口部に向かって広がりをもって形成されてなり、
前記装着部に形成される前記溝の各底部には、上部開口部に向かって突出する突起部が周回して適宜間隔をもって複数個形成されてなることを特徴とする
タイヤ滑り止め装置。
【請求項2】
前記装着部に形成される前記溝は、上部開口部に向かって拡がるV字状又はU字状に形成したものである
請求項1に記載のタイヤ滑り止め装置。
【請求項3】
前記装着部に形成される前記溝は、タイヤの幅方向に2~6本形成してなることを特徴とする
請求項1又は2に記載のタイヤ滑り止め装置。
【請求項4】
前記装着部に形成されタイヤの幅方向に複数本形成される前記溝のそれぞれに設けられる前記突起部は、相隣り合う溝同士で横に並び重ならないようにずらして形成したものである
請求項1又は2に記載のタイヤ滑り止め装置。
【請求項5】
前記装着部に形成されタイヤの幅方向に複数本形成される前記溝のそれぞれに設けられる前記突起部の形状は、船底形に形成してなることを特徴とする
請求項1又は2に記載のタイヤ滑り止め装置。
【請求項6】
前記タイヤ滑り止め装置は、前記タイヤのトレッド部外周に装着する周回方向で、6つに分割して形成してなることを特徴とする
請求項1又は2に記載のタイヤ滑り止め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のタイヤに装着するもので、車両を砂上で走行させる際に車両のタイヤがスリップして砂上で空回りするのを防止することのできるタイヤ滑り止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が雪道等を走行する際、車両のタイヤが路上でスリップすると、車両はタイヤが推進力を得ることができない。このため車両のタイヤが路面上でスリップするのを防止するために車両のタイヤに滑り止め具を装着することが行われている。そして、このタイヤの滑り止め具としては、タイヤ表面に着脱が容易なタイヤチェーンが一般的である。このように滑り止め具としての代表例としてはタイヤチェーンがあるが、その他にもタイヤへの装着作業を容易とする種々の滑り止め具が提案されている。
【0003】
このように一般車両に対しては、平坦な一般道を走行することは勿論のこと、雪道等を走行するだけでなく、砂漠、砂浜等砂地を一般道と同様に走行させることが嘱望されつつある。特に中近東諸国をはじめとする砂漠地帯を所有する国にあっては、高速道路が整備されるに伴い高速道路を走行する車両は、砂地も高速道路同様に走行することが要望されるようなっている。
【0004】
自動車に使用されるタイヤにおいては、一年を通して降雪がない国においては、降雪地帯を走行することがなく、このような国においては、タイヤに特別な細工が施されていないサマータイヤが使用されている。このサマータイヤは、ノーマルタイヤとも称され、濡れた路面での排水性能には優れているが、路面が雪道や、凍結した雨がシャーベット状になった場合には、ノーマルタイヤで乾いた路面を走行する場合と、同様の性能を発揮することができないものとなっている。
【0005】
また、サマータイヤは燃費を向上させるために、路面との摩擦を抑え、転がり抵抗を少なくし、少ないエネルギーで長い距離を走行できるように設計されている。そのため、濡れた路面においてはグリップ力が弱まり、滑り易く、雪道や凍結した路面においてはタイヤとの摩擦が少ないため、ブレーキをかけるとタイヤが滑ってしまうという特徴がある。
【0006】
一般に路面に降雪する場合、一般に天候が悪く、雪が舞い落ちると、雪によって路面が飾られる。この路面に舞い落ちる雪の状態は、気温と水蒸気が関係しており、空気中の水蒸気が多いと、上空では雪の素となる氷の結晶がたくさん作られ、結晶が多ければ多いほど、互いにくっついて大きく成長するので、雪片も大きくなる。
そして、降雪時、気温が高いとその大きな雪片がやや溶けた状態で地上に降ってくるので、ボタボタ降るような湿った雪になる。さらに、水蒸気が少なく、気温が低ければ、結晶が大きくならず、溶けずに地上まで降ってくるので、乾いた雪となる。
【0007】
このように路面に積もる雪には、複数の種類のものがある。1つは、手でぎゅっと握っても、なかなか固まらないようなサラサラした粉雪の、パウダースノーと称されるもの。2つは、コロコロとした球形の雪で、比較的暖かい、冬の初めもしくは冬の終わりなどに見られる玉雪と称されるもの。3つは、水分を多く含んでいるため、大きな塊となってボタボタと降ってくる雪で、ぼたん雪と称されるもの。4つは、一般的な降雪として一番多いパターンのまるで灰のようにヒラヒラと降ってくる雪で、灰雪と称されるもの。これらの雪は、雪の降る地域、場所によって、それらの周囲の環境の状態によってそれぞれ降る。
【0008】
このように路面に降る雪の状態によって、その降雪した路面上を走行する車両のタイヤは異なっている。路面に雪がさらさらの状態で堆積するパウダースノーのような雪が降雪する場合には、降雪道路に堆積した雪上を自動車で走行する場合、スタッドレススノータイヤで走行することが可能となる。
また、降る雪の状態が、コロコロとした球形の玉雪、大きな塊となってボタボタと降ってくるぼたん雪、灰のようにヒラヒラと降ってくる灰雪の場合に、雪上を人が歩くと雪が踏み固められるような雪が路面に堆積する場合には、スタッドレススノータイヤで走行が可能となる。
【0009】
ところがノーマルタイヤを装着した状態で車両を走行している最中に突然雪が降り出して、積雪した路面上を走行することになった場合、または、路面が乾いた一般道路面から積雪した道路面上に移動して走行することになった場合には、ノーマルタイヤを装着した状態で走行すると積雪によってスリップして危険である。
そこで、従来から、例えば、特許文献1に示す如く、タイヤ両測部に巻装される連結部材間にタイヤトレッド部を横切って連結される路面接地部材を、硬い金属チェーンで形成してなる金属製のスリップ防止チェーンをノーマルタイヤの上に巻き付けて、車両が走行中にタイヤが雪によってスリップするのを防止している。
【0010】
このようにノーマルタイヤの上に硬い金属製のスリップ防止チェーンを巻き付けて積雪路面上を車両が走行する場合は、ノーマルタイヤの上に巻き付けたスリップ防止チェーンが道路上に積もった雪を噛み込み掻き分けタイヤが路面上をスリップすることなく自動車を走行させることができる。
しかしながら特許文献1に示す如き硬い金属製のスリップ防止チェーンは、積タイヤが積雪路面上を走行するに当たっては都合が良いが、晴天時に乾いた路面を走行するときは、路面接地部材の路面との接触時に衝撃振動と衝撃音が生じ、路面と路面接地部材との衝撃により路面接地部材に摩耗が生じ、タイヤチェーンの耐久性を低下させるとともに、路面表面へ損傷を与える等の問題点がある。
【0011】
このため、ノーマルタイヤの上に硬い金属製のスリップ防止チェーンを巻き付けて車両を走行させる場合、降雪時はノーマルタイヤの上に硬い金属製のスリップ防止チェーンを巻き付けた状態で走行させる。
しかしながら、ノーマルタイヤの上に硬い金属製のスリップ防止チェーンを巻き付けたまま乾いた路面を走行すると、路面接地部材の路面との接触時に衝撃振動と衝撃音が生じ、路面と路面接地部材との衝撃により路面接地部材に摩耗が生じ、タイヤチェーンの耐久性が低下するとともに、路面表面へ損傷を与える等の問題点がある。
【0012】
このため、ノーマルタイヤの上に硬い金属製のスリップ防止チェーンを巻き付けて積雪路面上を車両が走行する場合は、降雪時はノーマルタイヤの上に硬い金属製のスリップ防止チェーンを巻き付けた状態で車両を走行させ、車両が、タイヤが晴天時に乾いた路面を走行するときは、スリップ防止チェーンを取り外す。
そして、走行している道路が降雪になると、タイヤがスリップするのを防止するため、スリップ防止チェーンを取り付けるというようにスリップ防止チェーンを着脱することを行っている。
【0013】
長時間の降雪路面上を走行する場合は、スリップ防止チェーンを長時間取り付けたままの状態で走行しても問題を生じない。しかしながら、スリップ防止チェーンを装着したまま積雪路面上から積雪のない乾いた路面を走行する場合は、タイヤが回転する際に、ノーマルタイヤの上に巻き付けた硬い金属製のスリップ防止チェーンが乾いた路面に衝突し、自動車走行時に、衝突音を発生させ、周囲に騒音を発生させる。
したがって、乾いた路面を走行するときは、スリップ防止チェーンを装着せずに走行し、降雪路面を走行するときは、スリップ防止チェーンを装着して走行し、再び、乾いた路面を走行することになった場合は、スリップ防止チェーンを取り外すといったこまめにスリップ防止チェーンの着脱を行っている。
このため走行する路面が降雪状態か、乾燥状態か、その路面の状態に合わせて、スリップ防止チェーンの着脱を行うことになり、その都度、手間がかかるという問題がある。
【0014】
そこで、従来は、ノーマルタイヤの上に硬い金属製のスリップ防止チェーンを巻き付けて積雪路面上を車両が走行するのではなく、乾いた路面上を走行することも、降雪路面上を走行することも、両方の路面状態にでも共通して使用することのできる特許文献2に示す如きスノータイヤにスパイクを打込んだスノースパイクタイヤを装着してタイヤが雪によってスリップするのを防止することが行われている。
しかしながら、近年、チェーンを巻き付けたタイヤやスノースパイクタイヤで、積雪していない路面上を走行すると、ノーマルタイヤに巻き付けたタイヤチェーンや、スノースパイクタイヤの表面に打ち込まれているスパイクによって道路表面を損傷し、道路のアスファルトなどの粉塵を巻き上げ、この巻き上げられた粉塵を人が吸い込むことによって健康を害することが問題となっている。
【0015】
このため、積雪した路面上を走行することになった場合でも、スパイクタイヤを装着したり、ノーマルタイヤの外側に硬い金属製のタイヤチェーンを巻き付けて路面を走行することは自粛の方向にあり、タイヤについては、スパイクのない、いわゆるスパイクレスタイヤが利用されつつある。
そのため、車両が積雪した路面上を走行する際、雪によってタイヤがスリップするのを防止することができ、また積雪していない路面上を走行することによって、道路表面を損傷することのないタイヤチェーンが嘱望されていた。
【0016】
そこで、ノーマルタイヤの表面にタイヤチェーンを巻き付けて積雪した路面上を走行する際、雪によってタイヤがスリップするのを防止することができ、ノーマルタイヤの表面にタイヤチェーンを巻き付けた状態で積雪していない路面上を走行しても、タイヤチェーンによって道路表面を損傷することがないようにノーマルタイヤの表面に巻き付けるタイヤチェーンを硬い金属製のタイヤチェーンに代えて、特許文献3に示す如く、樹脂等、非金属をネット状に成形した非金属製のタイヤチェーンを装着することが一般化している。
【0017】
このように、ノーマルタイヤの表面に、硬い金属製のタイヤチェーンに代えて樹脂等の非金属で製造されネット状に形成したタイヤチェーンを装着すると、積雪した路面上を走行しても、路面を損傷したり、アスファルト面を削りとって粉塵を巻き上げるといったことがなく、巻き上げられた粉塵を吸い込むこと生じる健康被害を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】公開特許公報 特開昭63-53104号
【0019】
【特許文献2】公開特許公報 特開平9-286208号
【0020】
【特許文献3】公開特許公報 特開2000-127725号
【0021】
【特許文献4】公開特許公報 特開平1-186489号
【0022】
【特許文献5】実用新案公報 実開昭49-40155号(全文)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
これら車両のタイヤに装着されているスリップ防止具は、車両が走行する路面に雪が堆積している場合を対象としている。すなわち、従来のスリップ防止具は、雪道における滑り止めを対照としている。このスリップ防止具を雪道における滑り止めとして使用する場合、雪質が玉雪や、ぼたん雪や、灰雪等で、積雪量が少ない場合は、車両のタイヤが積雪を踏みつけた際に、車両の全重量がタイヤに掛かり、この加重圧によって雪が押し潰されて、タイヤの表面が道路面に直接接触する。
このタイヤの表面の路面への接触によって、タイヤの回転力は、車両の推進力となって作用する。このような降雪道路上に車両を走行させるに当たって、従来から、スパイクタイヤを用いたり、スタッドレスタイヤを用いたり、ノーマルタイヤにタイヤチェーンを巻き付ける等をして滑り止めの対策が講じられている。これらの対策は、降雪道路に対して、いずれもスリップ防止に効果を発揮している。
【0024】
車両は、雪国においては、雪道の上を走行することが多い。このため、雪国においては、タイヤに、スパイクタイヤを用いたり、スタッドレスタイヤを用いたり、ノーマルタイヤにタイヤチェーンを巻き付ける等をして雪道に対する滑り止めの対策を講じている。
また、車両は、乾燥した平坦な道路を走行するだけでなく、海岸の砂地の上を走行することもある。また、降雨が極端に少なく、砂や岩石の多い土地である砂漠地帯を有する国においては、平坦な道路を走行することに加え、乾燥した砂や岩石の多い土地である砂漠地帯を走行することが多い。
この砂漠地帯における砂地は、車両が走行して砂地の上からタイヤが砂地面を踏みつけると、砂は、タイヤの押圧によって雪のように溶けることはなく、雪と同様にスリップを起こし、タイヤの回転力が車両の推進力となって作用しない。
【0025】
ノーマルタイヤで砂上を走行する場合は、ノーマルタイヤで降雪道路上を走行する場合と同様に、ノーマルタイヤにタイヤチェーンを巻き付けて滑り止めの対策を施している。
このようにノーマルタイヤにタイヤチェーンを巻き付けて雪上を走行する場合は、タイヤの回転し始めに、タイヤに巻き付けたタイヤチェーンが路面の一番上に降雪している雪を走行方向後方に掻き出して飛ばす。
この道路上に降雪している雪が掻き出され、タイヤに巻き付けたタイヤチェーンが降雪している雪の下にあるアスファルト等の硬い路面に到達し、タイヤチェーンが硬い路面を蹴って車両を前方に走行させる推進力を得ている。
【0026】
このようにノーマルタイヤにタイヤチェーンを巻き付けて砂上を走行する場合、砂地は、海岸沿いの砂地のように水分で固められている場合は、砂地がアスファルトの路面のように堅くなっているため、タイヤチェーンが固まった砂を蹴って車両を前方に走行させる推進力を得ることができる。
しかし、砂漠のように水分のない通常の砂地の場合は、砂地の砂は乾いていてさらさらしており、砂地の表面と同じさらさら状態が砂地の地中まで続いているため、タイヤチェーンを巻き付けたタイヤが回転しはじめると、タイヤチェーンが砂地の砂を走行方向後方に掻き出し飛ばす。したがって、タイヤを回転させても、タイヤの回転によってタイヤチェーンが砂を走行方向後方に掻き出してしまい、車両を前方に走行させる推進力を得ることはできない。
【0027】
このように砂地の上を走行するのにタイヤチェーンを巻き付けたタイヤを用いると、タイヤの下にある砂をタイヤに巻き付けたタイヤチェーンによって自動車の走行方向の後方に掻き出し、タイヤの回転によって車両を前方に走行させるよりも、タイヤをその場において砂地の下方方向に沈む方向に掘り進み、タイヤは砂地に沈み込んで行く。
このように、砂地が砂漠のように乾いてさらさらしている場合は、タイヤチェーンがタイヤの下にあるさらさらした砂を車両の走行方向の後方に掻き出すことになる。すなわち、タイヤの回転によって車両を前方に走行させるよりも、タイヤをその場において砂地の下方方向、すなわちタイヤが沈む方向に掘り進むことになり、タイヤは、砂地に沈み込むことになる。
【0028】
道路の路面が、砂地の場合は、積雪道路の場合と異なり、砂地の上を走行する際に砂地にタイヤがめり込んで、タイヤが回転したとき、タイヤの下側にある砂を自動車の後方に掻き出す。
このようにタイヤは、砂地の上を回転するとき自動車が前方に走行する推進力よりも、砂地に嵌まったタイヤが空回りしてタイヤの下側にある砂を掘り起こして、車両を前進させることなく、砂地の地中に沈む方向に潜り込んで行く。
そこで、車両で砂漠地帯を走行する場合、従来は、積雪道路を走行する場合と同様に、スパイクタイヤを用いたり、スタッドレスタイヤを用いたり、ノーマルタイヤにタイヤチェーンを巻き付けて滑り止めの対策を講じている。
【0029】
しかしながら、砂地の上を走行するときの自動車のスリップは、積雪道路上のスリップとは異なっている。すなわち、積雪道路上のスリップは、積雪がタイヤの表面と路面との間に入り、この積雪が潤滑油のような役目を果たして、タイヤをスリップさせている。これに対し、砂地の上を走行するときの自動車のタイヤは、砂地の上で回転すると、直下の砂を走行方向後方に掻き出し、直下の砂を後方に掻き出すことによってタイヤは直下に潜り込んで行く。
このように砂地の上を走行するときの自動車のスリップは、積雪道路上のスリップとは異なり、砂地の上でタイヤが回転すると、タイヤの直下の砂が掻き出され、砂を掻き出すことによってタイヤの側面の砂がタイヤの直下側に崩れ落ち、この砂がタイヤの回転によってさらに自動車の走行方向の後方に掻き出され、側溝がさらに掘り崩されて大きな側溝となり、砂がさらに自動車の走行方向の後方に掻き出される。この砂の掻き出しの繰り返しによって砂地の上を走行する車両は、スリップ状態となり、タイヤを砂の側溝に潜り込ませて、車両を前方方向に走行させることが難しくなっている。
【0030】
従来から、タイヤの積雪道路スリップ防止治具として考案されている特許文献1、特許文献2、特許文献3は、いずれも積雪道路のスリップ防止治具としてはそれなりの効果を有しているものの、砂地の上を走行するときの自動車のスリップ防止には、効果を発揮できないものとなっている。
そこで荒地、不整地等の悪路において車両を駆動する車両推進装置として、通常カタピラが用いられている。ところが、このキャタピラは従来の積雪道路スリップ防止治具に比して重量が大きく、地面に対する負荷が大きいため支持力の弱い柔らかい雪上、砂上等を走行する必要のある車両に対してはトルク伝達効率が悪く、実際には原動機の能力を充分に活用することが出来ない。
【0031】
そこで、従来、特許文献4に示す如く、原動機が搭載されており、そり1a、1bによって支持される車両本体1と、一端が自在継手10、11を介して原動機に連結され、他端が前記車両本体1から後方に延びるアーム16によって弾性的に支持されるねじ軸12,13とによって構成される推進装置3とからなり、雪、砂に埋入して車体を推進するように構成してなる雪上、砂上走行用車両が考案されている。
このような雪上、砂上走行用車両は、推進装置3を車両本体1から分離し、車両本体1をそり1a、1bによって支持し、推進機12,13の一端を自在継手10、11を介して原動機に連結し、他端を車両本体1から延びるアーム16に弾性的に支持することによって、重量を軽くし、車両本体1の重心を下げるとともに、推進装置3に負荷媒体を駆動するのに適したねじ軸12,13を用い、ねじ軸12,13に対して上下方向に自由度を与え、雪、砂の上における走行に適した車両を得ている。
すなわち,特許文献4に示す如き雪上、砂上走行用車両にあっては、雪の上だけを走行したり、あるいは、砂の上だけを走行するのに適しているが、一般の道路を走行するには適さないものとなっている。
【0032】
本発明の目的は、上記した事情に鑑みてなされたもので、自動車のノーマルタイヤに装着するだけで砂地上を走行する際、タイヤが砂地上をスリップすることなく、また、タイヤが砂地の地中に潜り込むことなく、スムーズに走行することができるタイヤ滑り止め装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記課題を解決するためなされた請求項1に記載のタイヤ滑り止め装置は、
トレッド部と、該トレッド部の左右のそれぞれに連続するショルダー部と、該左右のそれぞれのショルダー部に連続するサイドウォール部を備えるタイヤの少なくともトレッド部とショルダー部に架けて着脱自在に覆い被せるものであって、
少なくとも前記タイヤのトレッド部を覆う装着部と、該装着部に連続して下方に折曲し、前記タイヤのショルダー部を覆う側壁部とを備え、
前記タイヤのトレッド部を覆う前記装着部には、周回してタイヤの直径方向に向かって複数の壁が所定間隔をもって立設されてなり、
前記装着部に形成される前記複数の壁の相隣り合う壁によって上部が開口する上部開口部を備えた溝がタイヤの幅方向に複数本形成されてなり、
前記装着部に形成される前記溝は、互いに向かい合う壁によって形成される空間が該溝の底部から上部開口部に向かって広がりをもって形成されてなり、
前記装着部に形成される前記溝の各底部には、上部開口部に向かって突出する突起部が周回して適宜間隔をもって複数個形成されてなることを特徴とする。
【0034】
上記課題を解決するためなされた請求項2に記載のタイヤ滑り止め装置は、請求項1に記載のタイヤ滑り止め装置において、前記頂部に形成される前記溝を、上部開口部に向かって拡がるV字状又はU字状に形成したものであることを特徴とする。
【0035】
上記課題を解決するためなされた請求項3に記載のタイヤ滑り止め装置は、請求項1又は2に記載のタイヤ滑り止め装置において、前記装着部に形成される前記溝を、タイヤの幅方向に2~6本形成してなることを特徴とする。
【0036】
上記課題を解決するためなされた請求項4に記載のタイヤ滑り止め装置は、請求項1又は2に記載のタイヤ滑り止め装置において、前記頂部に形成されタイヤの幅方向に複数本形成される前記溝のそれぞれに設けられる前記突起部を、相隣り合う溝同士で横に並び重ならないようにずらして形成したものであることを特徴とする。
【0037】
上記課題を解決するためなされた請求項5に記載のタイヤ滑り止め装置は、請求項1又は2に記載のタイヤ滑り止め装置において、前記装着部に形成されタイヤの幅方向に複数本形成される前記溝のそれぞれに設けられる前記突起部の形状は、船底形に形成してなることを特徴とする。
【0038】
上記課題を解決するためなされた請求項6に記載のタイヤ滑り止め装置は、請求項1又は2に記載のタイヤ滑り止め装置において、前記装着部に形成されタイヤの幅方向に複数本形成される前記溝のそれぞれに設けられる前記突起部を、隣接する溝との間で千鳥状に配設されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、自動車のノーマルタイヤに装着するだけで砂地上を走行する際、タイヤが砂地上でスリップするのを防止することができ、また、タイヤが砂地の地中に潜り込むことなく、スムーズに走行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の実施例を示すタイヤ滑り止め装置の全体構成図である。
【
図2】
図1に図示のタイヤ滑り止め装置のタイヤへの装着状態を示す図である。
【
図3】
図1に図示のタイヤ滑り止め装置の正面図である。
【
図4】本発明の他の実施例を示すタイヤ滑り止め装置の正面図である。
【
図5】
図1に図示のタイヤ滑り止め装置の全体構成斜視図である。
【
図6】本発明の他の実施例を示すタイヤ滑り止め装置に係るもので、
図1に図示のタイヤ滑り止め装置を周回方向で6分割したときの1/6の構成部品の斜視図である。
【
図7】
図6に図示の分割したタイヤ滑り止め装置を周回方向で6分割したときの1/6の構成部品の正面図である。
【
図8】
図1に図示のタイヤ滑り止め装置をタイヤへ取り付ける方法を示す図である。
【
図9】
図1に図示のタイヤ滑り止め装置をタイヤに装着した状態を示す図である。
【
図10】
図1に図示のタイヤ滑り止め装置をタイヤの外周に装着した状態で砂上に踏み込み始めた状態における砂上とタイヤ滑り止め装置との関係を示す図である。
【
図11】
図1に図示のタイヤ滑り止め装置をタイヤの外周に装着した状態で砂上に踏み込み車両が
図10に示す車両の状態から砂上を走行し始めた状態における砂上とタイヤ滑り止め装置との関係を示す図である。
【
図12】
図1に図示のタイヤ滑り止め装置をタイヤの外周に装着した状態で砂上を
図11に示す車両が走行し始めの状態から車両が砂上に嵌まり込んで走行状態になったときの砂上とタイヤ滑り止め装置との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0041】
以下、本発明に係るタイヤ滑り止め装置を実施するための形態の実施例1について
図1~
図8を用いて説明する。
【0042】
図1に図示のタイヤ1には、タイヤとホイールの間に浮き輪のようなゴム製の袋が入っており、その袋の中に空気を入れることによってタイヤをふくらませるチューブタイヤと、タイヤとホイールの間に入れるチューブを使わずに直接タイヤとホイールの間に空気を入れるチューブレスタイヤとがある。
一般には、チューブレスタイヤが主流だが、オフロードモデルなどには、チューブタイヤが採用されている。本発明に係るタイヤ滑り止め装置は、チューブタイヤとチューブレスタイヤの両方に適用できるようになっている。
【0043】
また、
図1に図示のタイヤ1は、一見ゴムを固めて作っただけのように見えるが、カーカスと呼ばれる化学繊維を骨組みとして使ってあり、そのカーカスの巻き方が、ラジアル巻きのラジアルタイヤと、バイアス巻きのバイアスタイヤで異なっている。
バイアスタイヤの場合は斜めに巻いていくだけだが、ラジアルタイヤの場合はカーカスの上に「ベルト」と呼ばれる高強度の帯を縦に巻き付けてある。一般的にラジアルタイヤの方がグリップ力と耐摩耗性が高いといわれている。本発明については、ラジアルタイヤとバイアスタイヤの両方に適用できるようになっている。
【0044】
図1には、タイヤ1の構成と、このタイヤ1に取り付ける本発明に係るタイヤ滑り止め装置10の実施例を示す構成が示されている。
図1において、タイヤ1は、車輪(ホイール)の外側のリムを丸く囲むゴム製の帯状の構造で、路面・地面の上を転がる踏面(トレッド)を形成するためのものである。このタイヤ1は、リング状に形成され直接路面に接する部分でタイヤ内側のコード層を保護し、厚いゴム層でできている円周状の外周面であるトレッド部2が備えられている。
そして、このトレッド部2の表面には、グルーブと呼ばれる溝(トレッドパターン)が彫られている。このグルーブは、トレッド部2と路面の間に入った水を排出してタイヤ1がスリップするのを防止したり、操舵性や乗り心地を向上させる役割を有している。
【0045】
また、タイヤ1には、前記トレッド部2の周回面の左右両側(トレッド部2の両端部)、タイヤ1の肩の部分で前記トレッド部2にそれぞれ連続して形成され、舗装路上での激しい旋回運動などの際に最も酷使される部分であるショルダー部3、4が備えられている。
タイヤ1のトレッド部2の中央部分に十分な溝が残っていても、ショルダー部3、4の溝がなくなると操舵性能が著しく低下する。このショルダー部3、4は、タイヤ1の内側のコード層(カーカス)を保護し、厚いゴム層でできており、車両の走行中に発生するタイヤ1の内部の熱を放散する役割を有している。
【0046】
また、タイヤ1には、側面部分で、前記トレッド部2の周回面の左右両側(トレッド部2の両端部)に形成されるショルダー部3、4のそれぞれに連続して形成され、走行中、タイヤ1の中で最もたわむ部分で、コード層の保護のため表面はゴム層で覆われているサイドウォール部5、6が備えられている。
このサイドウォール部5、6は、路面には接しないが、走行中は路面の凸凹に対応するために、激しく屈伸し、最も動く場所であり、乗り心地にも影響し、クラック(細かい亀裂)も入りやすいデリケートな場所である。
【0047】
このタイヤ1には、タイヤとホイールの間に浮き輪のようなゴム製の袋が入っており、その袋の中に空気を入れることによってタイヤをふくらませるチューブタイヤと、タイヤとホイールの間に入れるチューブを使わずに直接タイヤとホイールの間に空気を入れるチューブレスタイヤとがある。
一般には、チューブレスタイヤが主流だが、オフロードモデルなどには、チューブタイヤを採用している。本発明については、チューブタイヤとチューブレスタイヤの両方を対象にしている。
【0048】
このタイヤ1は、一見ゴムを固めて作っただけのように見えるが、カーカスと呼ばれる化学繊維を骨組みとして使ってあり、そのカーカスの巻き方が、ラジアル巻きのラジアルタイヤと、バイアス巻きのバイアスタイヤで異なっている。
バイアスタイヤの場合は斜めに巻いていくだけだが、ラジアルタイヤの場合はカーカスの上に「ベルト」と呼ばれる高強度の帯を縦に巻き付けてある。一般的にラジアルタイヤの方がグリップ力と耐摩耗性が高いといわれている。本発明については、ラジアルタイヤとバイアスタイヤの両方を対象にしている。
【0049】
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10には、タイヤ1のトレッド部2を覆い装着するための幅を備えた板状の装着部11が設けられている。このタイヤ滑り止め装置10の前記装着部11は、
図2に示すようにタイヤ1のトレッド部2に装着されている。
そして、このタイヤ滑り止め装置10の装着部11の幅方向の両端部には、該装着部11に連続して形成され、前記タイヤ1のショルダー部3、4を覆い被せるように下方に折曲する側壁部12、13が形成されている。
また、前記タイヤ1のトレッド部2を覆う前記装着部11の外側には、周回してタイヤ1の直径方向に向かって複数の壁14が、幅方向に所定間隔をもって立設されている。
【0050】
前記タイヤ1のトレッド部2を覆うタイヤ滑り止め装置10の前記装着部11には、該装着部11に設けられる前記複数の壁14の相隣り合う壁14によって、上部が開口する上部開口部15を備えた溝16がタイヤ1の幅方向に複数本形成されている。
さらに前記タイヤ1のトレッド部2を覆うタイヤ滑り止め装置10の前記装着部11の上部に形成される前記溝16の各底部17には、該装着部11の上部に形成される前記溝16の上部開口部15に向かって突出する突起部18が周回して適宜間隔をもって複数個形成されている。
【0051】
前記タイヤ1のトレッド部2を覆うタイヤ滑り止め装置10の前記装着部11に形成される前記溝16には、
図1に示す如く、前記装着部11に形成される前記溝16の各底部17から上部開口部15に向かって拡がるV字状に形成されている。
そして、前記タイヤ1のトレッド部2を覆うタイヤ滑り止め装置10の前記装着部11に形成される前記溝16の本数は、
図1においては、タイヤ1の幅方向に3本形成されている。このタイヤ滑り止め装置10の前記装着部11に形成される前記溝16の本数は、実施例1においては、3本となっているが、タイヤ1の幅によって異なり、3本に限られず、タイヤ1の幅方向に2~6本に形成するのが適している。
【0052】
前記タイヤ1のトレッド部2を覆うタイヤ滑り止め装置10の前記装着部11に形成される前記溝16の各底部17から上部開口部15に向かって突出する前記突起部18は、車両が走行して砂地に入り込んだ際に作用するものである。すなわち、溝16の各底部17から上部開口部15に向かって突出する前記突起部18は、タイヤ滑り止め装置10を車両のタイヤ1に装着した状態で車両が砂地に入り込み、車両を前方向に走行するためタイヤ1を回転させたときに車両のタイヤ1に装着されているタイヤ滑り止め装置10によって踏み固められた砂を車両の走行方向より後方に蹴る作用をするためのものである。
すなわち、溝16の各底部17に設けられる突起部18は、車両を前方向に走行させるための推進力を得るためのものである。
したがつて、前記タイヤ1のトレッド部2を覆うタイヤ滑り止め装置10の前記装着部11に形成される前記溝16の各底部17から上部開口部15に向かって突出する前記突起部18の高さは、前記溝16の深さの1/4~4/5の高さに突出させるのが適している。
【0053】
前記タイヤ1のトレッド部2を覆うタイヤ滑り止め装置10の前記装着部11に形成される前記溝16の各底部17から上部開口部15に向かって突出する前記突起部18の設置位置は、
図3に示す如く、相隣り合う溝16同士で幅方向において横に並び重ならないように位相差をもってずらして形成されている。
前記タイヤ1のトレッド部2を覆うタイヤ滑り止め装置10の前記装着部11に形成される前記溝16の各底部17から上部開口部15に向かって突出する前記突起部18のずらす設置位置は、
図3に示す如く相隣接する溝16との間で千鳥状に配設されている。
【0054】
また、前記タイヤ1のトレッド部2を覆うタイヤ滑り止め装置10の前記装着部11に形成される前記溝16の各底部17から上部開口部15に向かって突出する前記突起部18の形状は、
図3に示す如く、船底形に形成されている。
このように突起部18の形状を船底形に形成するのは、車両のタイヤ1に装着したタイヤ滑り止め装置10が砂地に入り込んで、車両を前方向に走行するためタイヤ1を回転させるときに砂地に入り、装着部11に形成されている溝16によって踏み固めた砂を走行方向より後方に蹴るのに適しているからである。
すなわち、車両のタイヤ1に装着したタイヤ滑り止め装置10が砂地に入り込んだときに、車両を回転させることにより装着部11に形成されている溝16によって踏み固められた砂を後方に蹴り上げ、車両を前方向に走行させる。
このタイヤ滑り止め装置10は、樹脂によって構成されている。また、このタイヤ滑り止め装置10は、ゴムで構成してもよい。
【0055】
図4には、本発明に係るタイヤ滑り止め装置10の他の実施例が示されている。
図4において、タイヤ1のトレッド部2を覆うタイヤ滑り止め装置10の前記装着部11に形成される前記溝16は、前記装着部11に形成される前記溝16の各底部17がU字状19に形成されている。
この底部17がU字状19に形成される装着部11の溝16の本数は、タイヤ1の幅方向に3本形成されている。このタイヤ滑り止め装置10の前記装着部11に形成される前記溝16の本数は、この実施例では、3本となっているが、前記装着部11に形成される前記溝16は、タイヤ1の幅方向に2~6本形成するのが適している。
【0056】
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10は、
図5に示す如く、タイヤ1の外周に装着する周回方向で、1個によって構成されている。
図5に図示のタイヤ滑り止め装置10には、タイヤ1のトレッド部2を覆い装着するための幅を備えた板状の装着部11が設けられている。この装着部11の幅方向の両端部には、装着部11に連続して形成され、タイヤ1を覆い被せるように内側に折曲され、前記タイヤ1のショルダー部3、4を覆う側壁部12、13が形成されている。
そして、タイヤ滑り止め装置10の前記タイヤ1のトレッド部2を覆う前記装着部11には、周回してタイヤ1の直径方向の外側に向かって複数の壁14が、幅方向に所定間隔をもって立設されている。
【0057】
前記タイヤ1のトレッド部2を覆うタイヤ滑り止め装置10の前記装着部11には、前記装着部11に設けられている前記複数の壁14の相隣り合う壁14によって、上部が開口する上部開口部15を備えた溝16がタイヤ1の幅方向に複数本形成されている。
さらに前記タイヤ1のトレッド部2を覆うタイヤ滑り止め装置10の前記装着部11に形成される前記溝16の各底部17には、上部開口部15に向かって突出する突起部18が周回して適宜間隔をもって複数個形成されている。
このタイヤ滑り止め装置10は、樹脂によって構成されている。また、このタイヤ滑り止め装置10は、ゴムで構成してもよい。
【0058】
図5において、前記タイヤ1のトレッド部2を覆うタイヤ滑り止め装置10の前記装着部11に形成される前記溝16は、前記装着部11に形成される前記溝16の各底部17から上部開口部15に向かって拡がるV字状、またはU字状19に形成されている。
そして、前記タイヤ1のトレッド部2を覆うタイヤ滑り止め装置10の前記装着部11に形成される前記溝16の本数は、
図1においては、タイヤ1の幅方向に3本形成されている。このタイヤ滑り止め装置10の前記装着部11に形成される前記溝16の本数は、実施例1においては、3本となっているが、タイヤ1の幅によって異なり、3本に限られず、タイヤ1の幅方向に2~6本に形成するのが適している。
【0059】
前記タイヤ1のトレッド部2を覆う、
図5に図示のタイヤ滑り止め装置10の前記装着部11に形成される前記溝16のそれぞれの底部17に、前記上部開口部15に向かって突出する突起部18は、タイヤ滑り止め装置10を車両のタイヤ1に装着した状態で、車両が砂地に入り込み、車両を前方向に走行するためタイヤ1を回転させたときに車両のタイヤ1に装着されているタイヤ滑り止め装置10によって踏み固められた砂を車両の走行方向より後方に蹴る作用をするためのものである。
すなわち、溝16の各底部17に設けられる突起部18は、車両を前方向に走行させるための推進力を得るためのものである。
したがって、前記タイヤ1のトレッド部2を覆うタイヤ滑り止め装置10の前記装着部11に形成される前記溝16のそれぞれの底部17から上部開口部15に向かって突出する前記突起部18の高さは、前記溝16の深さの1/4~4/5の高さに突出させるのが適している。
【0060】
図6には、本発明の他の実施例を示すタイヤ滑り止め装置20が示されている。
図6に図示のタイヤ滑り止め装置20は、
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10を周回方向で6分割した1/6の構成部品である。
このタイヤ滑り止め装置20は、タイヤ1のトレッド部2を覆い装着するための幅を備えた6分割した1/6の板状の装着部21が設けられている。この装着部21の幅方向の両端部には、装着部21に連続して形成され、タイヤ1を覆い被せるように内側に折曲され、前記タイヤ1のショルダー部3、4を覆う側壁部22、23が形成されている。
そして、タイヤ1のトレッド部2を覆う装着部21には、周回してタイヤ1の直径方向に向かって複数の壁24が、幅方向に所定間隔をもって立設されている。
このタイヤ滑り止め装置20は、樹脂によって構成されている。また、このタイヤ滑り止め装置20は、ゴムで構成してもよい。
【0061】
タイヤ1のトレッド部2を覆うタイヤ滑り止め装置20の装着部21には、装着部21に設けられる前記複数の壁24の相隣り合う壁24によって、上部が開口して形成される上部開口部25を備えた溝26がタイヤ1の幅方向に複数本形成されている。
さらに前記タイヤ1のトレッド部2を覆うタイヤ滑り止め装置20の前記装着部21に形成される前記溝26の各底部27には、前記装着部21に形成される前記溝26の各底部27には、上部開口部25に向かって突出する突起部28が周回して適宜間隔をもって複数個形成されている。
【0062】
図6において、前記タイヤ1のトレッド部2を覆うタイヤ滑り止め装置20の前記装着部21に形成される前記溝26は、前記装着部21に形成される前記溝26の各底部27から上部開口部25に向かって拡がるV字状、またはU字状に形成されている。
そして、前記タイヤ1のトレッド部2を覆うタイヤ滑り止め装置20の前記装着部21に形成される前記溝26の本数は、タイヤ1の幅方向に3本形成されている。
図7には、タイヤ1のトレッド部2を覆う
図6に図示のタイヤ滑り止め装置20の正面図が示されている。
【0063】
図8には、
図6に図示のタイヤ滑り止め装置20のタイヤ1のトレッド部2に装着する方法が示されている。
図6に図示のタイヤ滑り止め装置20は、
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10を周回方向で6分割した1/6の構成部品となっている。この6分割した1/6の構成部品を6個を繋ぎ合わせると、タイヤ1のトレッド部2の全体を覆うようになっている。
タイヤ1の径の大きさは、規格によって定められており、車両に合わせてタイヤの種類が定められている。このタイヤ1の大きさの規格に合わせて6等分に分割して形成すると、この6分割して形性された1/6の構成部品を6個繋ぎ合わせることで
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10を構成することができるようになっている。
図6に図示のタイヤ滑り止め装置20を6個繋ぎ合わせ、向かい合わせるタイヤ滑り止め装置20の端部に装着穴30が設けられている。この装着穴30に紐31、または図示していない鎖32が取り付けられており、この紐31、または鎖32によって
図8に示す如くタイヤ1の中心径の内側に向かって締め付けられている。このように
図8に示す如く内側に向かって締め付けることで組み合わせた図示のタイヤ滑り止め装置20が、タイヤ1の外周面より脱落するのを防止することができる。
【0064】
図8に示す如く、
図6に図示のタイヤ滑り止め装置20を6個つなぎ合わせて1個の
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10を形成する場合には、
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10を周回方向で6分割した1/6の構成部品に所定の保形性を持たせる必要がある。
このように
図6に図示のタイヤ滑り止め装置20に保形性を持たせることによって、
図6に図示のタイヤ滑り止め装置20を6個つなぎ合わせて1個の
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10を形成することが容易となる。
図8に示す如く、
図6に図示のタイヤ滑り止め装置20を6個つなぎ合わせて1個の
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10を形成する場合には、向かい合ったタイヤ滑り止め装置20の側壁部22、23の内側端部に装着穴30を設け、この装着穴30に紐31、または図示していない鎖32を取り付け、この紐31、または鎖32によって
図8に示す如くタイヤ1の中心径の内側に向かって締め付ける。
【0065】
図8に示す如く、6個のタイヤ滑り止め装置20をタイヤ1の外周面に締め付け固定して1個の
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10に形成する方法は、タイヤ滑り止め装置20同士を締め付け、タイヤ1に取り付ける方法とはなっていない。
図9に図示の6個のタイヤ滑り止め装置20をタイヤ1の外周面に装着する方法は、タイヤ滑り止め装置20を6個つなぎ合わせて1個の
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10を形成するのに、6個のタイヤ滑り止め装置20をタイヤ1のホイール7に固定するようになっている。
すなわち、
図6に図示の6個のタイヤ滑り止め装置20のそれぞれの側壁部22、23の内側端部に装着穴30が設けられている。また、タイヤ滑り止め装置20を6個繋ぎ合わせた相隣り合う壁24の両側端に相隣り合うタイヤ滑り止め装置20を繋ぎ合わせる取付孔33が形成されている。この取付孔33に締結具34が取り付けられている。この締結具34によって相隣り合うタイヤ滑り止め装置20が締結される。
【0066】
図9に図示の6個のタイヤ滑り止め装置20のそれぞれの側壁部22、23には、内側端部に装着穴30が設けられている。
すなわち、
図9に図示のタイヤ滑り止め装置20は、
図6に図示のタイヤ滑り止め装置20を6個つなぎ合わせ、向かい合わせるタイヤ滑り止め装置20の端部に装着穴30が設けられている。また、タイヤ1のホイール7には、1/6等間隔に締結孔8が設けられている。この締結孔8には、一端が装着穴30に取り付けられている紐31、または図示していない鎖32の他端が取り付けられている。この締結孔8と装着穴30に渡した紐31、または図示していない鎖32によって固定されている。
【0067】
図10~
図13を用いて、本発明に係るタイヤ滑り止め装置10を装着した車両が砂地上を走行する際の砂地におけるタイヤ滑り止め装置10の砂地に対する作用について説明する。
図10は、
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10をタイヤ1の外周に装着した状態で、車両を砂地40上に踏み込み始めた状態を示している。すなわち、
図10は、タイヤ1の外周に
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10を装着した状態で、車両が砂地40の上に乗り上げた状態である。
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10の壁14の先端が砂地40の表面に乗った状態では、タイヤ滑り止め装置10の溝16の上部開口部15に砂地40の上面が当接した状態となっている。
【0068】
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10をタイヤ1の外周に装着した状態で
図10に示す如く車両を砂地40の上に乗り入れると、タイヤ1の外周に装着されている
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10の壁14の先端が砂地40の表面41に乗った状態となる。
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10には、壁14によって溝16が形成されており、この
図10においては、この溝16と砂地40の表面41とによって空間が形成されている。
この
図10に示す如き溝16と砂地40の表面41とによって空間が形成されている状態から、さらに車両を砂地40の上に乗り入れると、
図11に図示の下方向きの矢印に示す如き車両の荷重によって、
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10の壁14が下方に押圧される。
すなわち、
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10の壁14に加わる押圧によって、先端に尖った形状となっている溝16を形成する壁14の両側面から矢印Aに示す如く、中央に向かって砂に圧力が掛かり、壁14の壁面によって砂が掻き集められ、溝16内の砂は、溝16内で先端方向に向かって盛り上がる。
【0069】
タイヤ滑り止め装置10の隣り合わせる壁14によって溝16が形成されており、車両を砂地40の上に乗り入れると、壁14によって溝16内に押し込まれた砂地40の砂は、壁14の呑めり込みによって
図11に示す如く、壁14によって形成されている空間に盛り上がってくる。
さらに車両を砂地40の上に乗り入れると、壁14に入り込んだ砂は、車両の重量によってタイヤ滑り止め装置10の壁14に押圧となり、壁14に入り込んだ砂は、押し固められる。
そして、溝16に押し込められた砂は、
図12に示す如く、車両の荷重によってさらに押し固められる。
このように押し固められた砂を
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10の溝16の各底部17に形成されている突起部18によって車両走行方向の後方に蹴り上げ車両を前方方向に走行する推進力を得ている。
【0070】
本発明に係るタイヤ滑り止め装置10、タイヤ滑り止め装置20が従来のチェーンと異なるのは、チェーンは、チェーンで砂を掻き上げたときに、チェーンの周囲が拘束されることなくフリーとなっているのに対し、
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10、
図6に図示のタイヤ滑り止め装置20は、タイヤ滑り止め装置10(20)に設けられる溝16(26)によって砂が押し固められており、この押し固めた砂を
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10の溝16の各底部17に形成されている突起部18、
図6に図示のタイヤ滑り止め装置20の溝26の各底部27に形成されている突起部28によって蹴り上げることによって推進力を得ている点である。
このため、
図1に図示のタイヤ滑り止め装置10を装着しているタイヤ1又は、
図6に図示のタイヤ滑り止め装置20を装着しているタイヤ1は、砂地40に潜り込むのを防止することができる。
【0071】
ノーマルタイヤにタイヤチェーンを巻き付けて砂上を走行する場合は、タイヤチェーンが砂地に噛み込まれて埋没し、タイヤを回転させてもタイヤチェーンが砂を蹴って車両を前方に走行させる推進力を得ることができない。
一方、ノーマルタイヤにタイヤチェーンを巻き付けて砂上を走行する場合、砂地が海岸沿いの砂地のように水分によって固められている場合は、砂地がアスファルトの路面のように堅くなっているため、タイヤチェーンが固まった砂を蹴って車両を前方に走行させる推進力を得ることができる。
しかし、砂漠のように水分のない通常の砂地の場合は、砂地の砂は乾いていてさらさらしており、砂地の表面と同じさらさら状態が砂地の地中まで続いているため、タイヤチェーンを巻き付けたタイヤが回転しはじめると、タイヤチェーンが砂地の砂を走行方向後方に掻き出し飛ばしてしまう。したがって、タイヤを回転させても、タイヤの回転によってタイヤチェーンが砂を走行方向後方に掻き出してしまい、車両を前方に走行させる推進力を得ることはできない。
【0072】
以上、本発明者によってなされた発明を、上述した発明の実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上述した発明の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。