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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046289
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】モータ制御ユニット
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240327BHJP
   H03H 7/01 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H03H7/01 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151592
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】平塚 良秋
【テーマコード(参考)】
5E338
5J024
【Fターム(参考)】
5E338AA03
5E338AA16
5E338BB75
5E338CC09
5E338CD17
5E338CD24
5E338EE13
5J024AA01
5J024DA22
5J024DA25
5J024EA08
5J024EA09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ノイズ対策素子を通り抜けるようにノイズが伝播することを制御できるモータ制御ユニットを提供する。
【解決手段】モータ制御ユニットは、電気素子11と、ノイズの伝搬を抑制するノイズ対策素子10と、外部端子が接続されるコネクタ12と、電気素子、ノイズ対策素子およびコネクタが実装され、厚さ方向に沿って複数の層が積層される多層基板40と、を備える。多層基板には、電気素子とコネクタとをノイズ対策素子を経由して繋ぐ接続ライン60が設けられる。多層基板は、厚さ方向の一方側を向く第1面と、内部に位置する内部層と、を有する。第1面には、ノイズ対策素子とコネクタとを繋ぎ、接続ラインの一部を担う接続パターン62が設けられる。内部層には、複数のダミーパターン51が離散的に配置されるノイズ遮断領域が設けられる。接続パターンのノイズ対策素子側の端部は、厚さ方向から見てノイズ遮断領域43Bと重なる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気素子と、
ノイズの伝搬を抑制するノイズ対策素子と、
外部端子が接続されるコネクタと、
前記電気素子、前記ノイズ対策素子、および前記コネクタが実装され、厚さ方向に沿って複数の層が積層される多層基板と、を備え、
前記多層基板には、前記電気素子と前記コネクタとを前記ノイズ対策素子を経由して繋ぐ接続ラインが設けられ、
前記多層基板は、
厚さ方向の一方側を向く第1面と、
内部に位置する内部層と、を有し、
前記第1面には、前記ノイズ対策素子と前記コネクタとを繋ぎ前記接続ラインの一部を担う接続パターンが設けられ、
前記内部層には、複数のダミーパターンが離散的に配置されるノイズ遮断領域が設けられ、
前記接続パターンの前記ノイズ対策素子側の端部は、厚さ方向から見て前記ノイズ遮断領域と重なり、
厚さ方向から見て前記ダミーパターンの寸法は、前記ノイズの最大周波数に対応する波長の1/2未満である、
モータ制御ユニット。
【請求項2】
厚さ方向から見て前記ダミーパターンの寸法は、前記ノイズの最大周波数に対応する波長の1/10未満である、
請求項1に記載のモータ制御ユニット。
【請求項3】
厚さ方向から見て前記ダミーパターンの寸法は、3mm未満である、
請求項1又は2に記載のモータ制御ユニット。
【請求項4】
前記ノイズ遮断領域の複数の前記ダミーパターンは、厚さ方向からみて格子状に配列される、
請求項1に記載のモータ制御ユニット。
【請求項5】
前記ダミーパターンは、厚さ方向から見て円形である、
請求項1に記載のモータ制御ユニット。
【請求項6】
前記ノイズ対策素子は、インダクタ素子である、
請求項1に記載のモータ制御ユニット。
【請求項7】
前記接続パターンは、厚さ方向から見て、前記ノイズ遮断領域に重なる重複部を有し、
前記多層基板は、
前記第1面の反対側を向く第2面と、
複数の前記内部層と、を有し、
前記第2面、および複数の前記内部層には、信号を伝達する信号パターン、電源を伝達する電源パターン、又は金属箔からなるグランドパターンが配置される配線領域が設けられ、
厚さ方向から見て、前記第2面、および前記内部層の前記配線領域は、前記重複部と異なる位置に設けられる、
請求項1に記載のモータ制御ユニット。
【請求項8】
前記コネクタは、厚さ方向から見て、前記ノイズ遮断領域に重なる、
請求項1に記載のモータ制御ユニット。
【請求項9】
前記多層基板は、複数の前記内部層を有し、
複数の前記内部層には、それぞれ前記ノイズ遮断領域が設けられる、
請求項1に記載のモータ制御ユニット。
【請求項10】
前記ノイズ遮断領域が設けられる前記内部層には、信号を伝達する信号パターン、電源を伝達する電源パターン、又は金属箔からなるグランドパターンの少なくとも1つが配置される配線領域が設けられ、
厚さ方向から見て、前記内部層の前記配線領域は、前記コネクタと異なる位置に設けられる、
請求項1に記載のモータ制御ユニット。
【請求項11】
前記内部層の前記信号パターン、前記電源パターン、およびグランドパターンのコーナー部は、滑らかに湾曲する、
請求項10に記載のモータ制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
精密機器では、ノイズの影響を低減するために様々な工夫がなされている。例えば特許文献1には、1つのインダクタ素子と2つのキャパシタ素子によって構成されるノイズフィルタを備える電子装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-131191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ノイズフィルタを構成するノイズ対策素子を多層基板上に実装する場合、ノイズが内層のパターンを経由することでノイズ対策素子を通り抜けて伝搬してしまう虞がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、ノイズ対策素子を通り抜けるようにノイズが伝搬することを抑制できるモータ制御ユニットを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータ制御ユニットの一つの態様は、電気素子と、ノイズの伝搬を抑制するノイズ対策素子と、外部端子が接続されるコネクタと、前記電気素子、前記ノイズ対策素子、および前記コネクタが実装され、厚さ方向に沿って複数の層が積層される多層基板と、を備える。前記多層基板には、前記電気素子と前記コネクタとを前記ノイズ対策素子を経由して繋ぐ接続ラインが設けられる。前記多層基板は、厚さ方向の一方側を向く第1面と、内部に位置する内部層と、を有する。前記第1面には、前記ノイズ対策素子と前記コネクタとを繋ぎ前記接続ラインの一部を担う接続パターンが設けられる。前記内部層には、複数のダミーパターンが離散的に配置されるノイズ遮断領域が設けられる。前記接続パターンの前記ノイズ対策素子側の端部は、厚さ方向から見て前記ノイズ遮断領域と重なる。厚さ方向から見て前記ダミーパターンの寸法は、前記ノイズの最大周波数に対応する波長の1/2未満である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、ノイズ対策素子を通り抜けるようにノイズが伝搬することを抑制できるモータ制御ユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態のモータ制御ユニットの模式図である。
図2図2は、一実施形態の多層基板の断面模式図である。
図3図3は、一実施形態の多層基板の平面図である。
図4図4は、一実施形態のノイズ遮断領域の模式図である。
図5図5は、変形例のノイズ遮断領域の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
【0010】
図1は、本実施形態のモータ制御ユニット1の模式図である。
本実施形態のモータ制御ユニット1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)などの車両に搭載され、当該車両を駆動するモータ85を制御する。
【0011】
モータ制御ユニット1は、車両全体の制御を行うマスタ制御ユニット90に接続される。マスタ制御ユニット90は、モータ制御ユニット1の他、複数の制御ユニット1A、1Bに接続される。すなわち、マスタ制御ユニット90は、複数の他の制御ユニット1A、1Bを従える。他の制御ユニット1A、1Bは、それぞれモータ、発電機などの他の装置を制御する。他の制御ユニット1A、1Bは、本実施形態のモータ制御ユニット1と同様の構成を有する。
【0012】
モータ制御ユニット1と他の制御ユニット1A、1Bとは、互いに接続される。マスタ制御ユニット90は、本実施形態のモータ制御ユニット1を介して他の制御ユニット1A、1Bと通信する。マスタ制御ユニット90は、モータ制御ユニット1、およびそれぞれの制御ユニット1A、1Bに指令を発する。モータ制御ユニット1は、マスタ制御ユニット90からの指令に応じてモータ85を制御する。同様に、他の制御ユニット1A、1Bは、マスタ制御ユニット90からの指令に応じてそれぞれが接続される装置を制御する。
【0013】
本実施形態のモータ制御ユニット1は、処理装置83とインバータ84とを介してモータ85に接続される。処理装置83およびインバータ84は、モータ85の駆動ユニット86を構成する。処理装置83は、例えば、汎用マイコンである。モータ制御ユニット1は、処理装置83に指令を送る。処理装置83は、モータ制御ユニット1からの指令に応じて、処理信号を生成し処理信号をインバータ84に送る。インバータ84は、処理装置83からの処理信号を基にモータ85に動作電圧を付与する。このように、モータ制御ユニット1は、処理装置83およびインバータ84を介してモータ85を制御する。
【0014】
モータ制御ユニット1は、電気素子11と複数のノイズ対策素子10と複数のコネクタ12と制御素子19と多層基板40と、を備える。電気素子11、複数のノイズ対策素子10、複数のコネクタ12、および制御素子19は、多層基板40に実装される。接続ライン60は、多層基板40に設けられ、電気素子11とコネクタ12とをノイズ対策素子10を経由して繋ぐ。
【0015】
コネクタ12は、多層基板40に接続される。複数のコネクタ12には、それぞれモータ85、マスタ制御ユニット90、および他の制御ユニット1Aから延びる外部端子91が接続される。
【0016】
制御素子19は、集積回路である。制御素子19は、モータ85を制御する。制御素子19は、処理装置83に対してモータ85を制御するための信号を送る。また、制御素子19は、モータ85の情報を、電気素子11を通じて他の機器に伝搬する。
【0017】
電気素子11は、集積回路である。本実施形態において、電気素子11は、主にモータ85と他の機器との間の通信を行う通信素子である。本実施形態の電気素子11は、他の機器の情報を、制御素子19を通じてモータ85の駆動ユニット86に伝搬する。電気素子11が通信を行う他の機器とは、マスタ制御ユニット90、又は他の制御ユニット1A、1Bである。また、モータ85の情報とは、例えば、モータ85の温度、モータ85の駆動ユニット86の駆動状況等である。さらに、他の機器の情報とは、他のモータの情報や、マスタ制御ユニット90からの緊急停止の指令などである。本実施形態によれば、複数のモータ制御ユニット1、1A、1Bが電気素子11を介して互いに接続されているため、複数のモータ制御ユニット1、1A、1Bの間で同期ずれが生じ難く、相互の円滑な動作が可能となる。
【0018】
ノイズ対策素子10は、接続ライン60の経路中に配置されて、接続ライン60のノイズNの伝搬を抑制する。より具体的には、ノイズ対策素子10は、電気素子11で発生したノイズNpが、コネクタ12を介して外部に流出することを抑制する。また、ノイズ対策素子10は、コネクタ12を介して外部から侵入したノイズNqが電気素子11に伝わることを抑制する。なお、外部から侵入するノイズNqの発生源としては、例えば、モータ制御ユニット1の周囲に配置される他の電子機器などが挙げられる。
【0019】
本実施形態において、ノイズ対策素子10は、インダクタ素子である。ノイズ対策素子10に採用されるインダクタ素子としては、例えば、チョークコイルやフェライトビーズが例示される。また、ノイズ対策素子10に作用されるインダクタ素子として、周波数によらずノイズNと信号を分離できるコモンモードチョークコイルを採用してもよい。
【0020】
図2は、多層基板40の断面模式図であり、図3は、多層基板40の平面図である。
図2に示すように、多層基板40は、厚さ方向に沿って複数の層が積層される板状のリジッド基板である。多層基板40を構成する材料としては、エポキシ樹脂など公知のものが用いられる。
【0021】
多層基板40は、厚さ方向の一方側を向く第1面41と、厚さ方向の他方側を向く第2面42と、内部に位置する第1内部層(内部層)43、および第2内部層(内部層)44と、を有する。第1内部層43は、第2内部層44よりも第1厚さ方向の一方側に位置する。なお、本実施形態では、多層基板40が、2つの内部層43、44を有する場合について説明するが、多層基板40は、1つの内部層のみを有していてもよいし、3つ以上の内部層を有していてもよい。
【0022】
第1面41、第2面42、第1内部層43、および第2内部層44には、それぞれ回路を構成するパターンが設けられる。また、第1面41、第2面42、第1内部層43、および第2内部層44のパターン同士は、多層基板40を厚さ方向に貫通するビア(図示略)によって互いに接続される。
【0023】
本実施形態において、第1面41には、電気素子11、ノイズ対策素子10、およびコネクタ12が実装される。また、第1面41には、電気素子11とノイズ対策素子10とを繋ぐ第1接続パターン61と、ノイズ対策素子10とコネクタ12とを繋ぐ第2接続パターン(接続パターン)62と、が設けられる。
【0024】
第1接続パターン61と第2接続パターン62とは、接続ライン60を構成する。すなわち、多層基板40には、接続ライン60が設けられる。また、第1接続パターン61、および第2接続パターン62は、それぞれ接続ライン60の一部を担う。接続ライン60は、電気素子11とコネクタ12とをノイズ対策素子10を経由して繋ぐ。
なお、ここでは図示を省略するが、多層基板40には、電気素子11と制御素子19とを繋ぐ接続ラインなど、他の接続ラインも設けられる。
【0025】
第2面42には、配線領域42Aとブランク領域42Bとが設けられる。また、第1内部層43、および第2内部層44には、配線領域43A、44Aとノイズ遮断領域43B、44Bとがそれぞれ設けられる。
【0026】
図3に示すように、第2面42のブランク領域42B、第1内部層43のノイズ遮断領域43B、および第2内部層44のノイズ遮断領域44Bは、軸方向から見て互いに重なる。本実施形態において、ブランク領域42B、およびノイズ遮断領域43B、44Bは、軸方向から見て、多層基板40の縁部に沿って配置される矩形状である。第2面42において、配線領域42Aは、ブランク領域42Bを3方向から囲むように設けられる。同様に、第1内部層43、および第2内部層44の配線領域43A、44Aは、それぞれブランク領域42Bを3方向から囲むように設けられる。なお、ブランク領域42B、ノイズ遮断領域43B、44B、並びに配線領域42A、43A、44Aの平面視形状については、本実施形態に限定されない。
【0027】
本実施形態において、第2面42における配線領域42Aとブランク領域42Bとの境界線B1、第1内部層43における配線領域43Aとノイズ遮断領域43Bとの境界線B2、および第2内部層44における配線領域44Aとノイズ遮断領域44Bとの境界線B3は、多層基板40の厚さ方向から見て、互いに一致する。なお、これらの境界線B1、B2、B3は、厚さ方向から見て必ずしも一致している必要はない。
【0028】
配線領域42A、43A、44Aには、信号を伝達する信号パターン42e、電源を伝達する電源パターン43e、又は金属箔からなるグランドパターン44eの少なくとも1つがそれぞれ配置される。すなわち、それぞれの配線領域42A、43A、44Aには、電流が流れるパターンが配置される。
【0029】
本実施形態において、第2面42の配線領域42Aには、信号パターン42eが配置され、第1内部層43の配線領域43Aには、電源パターン43eが配置され、第2内部層44の配線領域44Aには、グランドパターン44eが配置される。しかしながら、それぞれの配線領域42A、43A、43Aに何れのパターンが配置されるかについては限定されることがなく、2種類以上のパターンが同一の内部層又は面に配置されていても良い。
【0030】
図3に示すように、第2面42、および内部層43、44に設けられる信号パターン42e、電源パターン43e、およびグランドパターン44eのコーナー部Rは、滑らかに湾曲することが好ましい。コーナー部Rが鋭利な形状となっていないことで、これらのパターンから放射ノイズが発生して他の層のパターンにノイズを伝えることを抑制できる。なお、図3には、グランドパターン44eのコーナー部Rを図示した。信号パターン42e、および電源パターン43eにおいても、グランドパターン44eと同様に、コーナー部を湾曲させることで同様の効果を得ることができる。
【0031】
配線領域42A、43A、44Aは、厚さ方向から見て、電気素子11と重なり、コネクタ12と異なる位置に設けられる。配線領域42A、43A、44Aは、厚さ方向から見て、ノイズ対策素子10の一部と重なる。一方で、ブランク領域42B、およびノイズ遮断領域43B、44Bは、厚さ方向から見て、コネクタ12と重なり、電気素子11と異なる位置に設けられる。ブランク領域42B、およびノイズ遮断領域43B、44Bは、厚さ方向から見て、ノイズ対策素子10の一部と重なる。
【0032】
図2に示すように、ブランク領域42Bは、何れのパターンも配置しない領域である。したがって、ブランク領域42Bには、電流が流れることがない。また、ノイズ遮断領域43B、44Bには、複数のダミーパターン51が離散的に配置される。ダミーパターン51は、他のパターンと同様に導電性の薄膜から構成される。ダミーパターン51同士は、互いに離間して配置される。また、ダミーパターン51は、他のパターンに繋がっていない。したがって、それぞれのダミーパターンには、電流が流れない。また、ダミーパターン51は、ノイズNrの伝搬が抑制される。
【0033】
電気素子11などで発生するノイズNpの大部分は、接続ライン60を伝搬してコネクタ12に向かう。同様に、外部端子91からコネクタ12を介してモータ制御ユニット1内に侵入するノイズNqの大部分は、接続ライン60を伝搬して電気素子11に向かう。このため、接続ライン60にノイズ対策素子10を配置することで、電気素子11とコネクタ12との間のノイズNの大部分の伝搬を抑制できる。
【0034】
しかしながら、電気素子11で発生するノイズNpの一部は、接続ライン60から内部層43、44に伝わる。内部層43、44に伝わるノイズNrは、内部層43、44を伝搬し、さらに内部層43、44から第2接続パターン62に伝わり、結果的にコネクタ12に達する虞がある。同様に、また、コネクタ12からモータ制御ユニット1内に侵入したノイズNqについても、同様の経路を逆向きに伝搬する虞がある。このように、電気素子11とコネクタ12との間のノイズNの伝搬経路は、接続ライン60のみを通過するものだけではなく、内部層43、44を経由する経路が想定される。したがって、電気素子11とコネクタ12との間のノイズ対策は、ノイズ対策素子10を接続ライン60に配置するのみでは不十分であると考えられる。
【0035】
本実施形態では、第2接続パターン62は、厚さ方向から見てノイズ遮断領域43B、44Bと重なる。上述したように、ノイズ遮断領域43B、44Bには、離散的に配置されるダミーパターン51が設けられており、ノイズNの伝搬が抑制される。このため、第2接続パターン62には、厚さ方向に重なる内部層43、44からのノイズNrが伝わり難く、電気素子11で発生するノイズNpが内部層43、44を介してコネクタ12に伝わることを抑制できる。同様に、第2接続パターン62は、コネクタ12から伝搬したノイズNを厚さ方向に重なる内部層43、44に伝え難く、外部のノイズNqが内部層43、44を介して電気素子11に伝わることを抑制できる。第2接続パターン62は、少なくともノイズ対策素子10側の端部が、厚さ方向から見てノイズ遮断領域43B、44Bと重なる。これにより、内部層43、44を経由して、電気素子11とコネクタ12との間のノイズNの伝搬を抑制できる。
【0036】
ここで、遮断領域を設ける目的を単純にノイズNの遮断と考える場合、遮断領域を第2面42のブランク領域42Bと同様に、如何なるパターンも配置しない領域とすることが考えられる。しかしながら、その場合、内部層は遮断領域において厚さ寸法が局所的に小さくなる。また、多層基板40の板厚は、遮断領域と重なる領域で薄くなる。この現象は、内部層の数が多い多層基板においてより顕著となり、多層基板の表面の実装面(第1面、第2面に相当)に段差が生じてしまう。実装面に段差が生じると、素子が段差を跨いで実装される場合などに、素子が傾いて半田付けされることになり、素子に力が付与される場合や振動が付与される場合に、半田に負荷が集中し素子の離脱の原因となる虞がある。
【0037】
本実施形態によれば、内部層43、44のノイズ遮断領域43B、44Bには、複数のダミーパターン51が離散的に配置される。ノイズ遮断領域43B、44Bにダミーパターン51が設けられることで、内部層43、44の厚さ寸法がノイズ遮断領域43B、44Bで局所的に小さくなることを抑制できる。これにより、多層基板40の第1面41および第2面42に段差が生じることを抑制でき、第1面41および第2面42において、素子を安定的に保持できる。また、ノイズ遮断領域43B、44Bにダミーパターン51を設けることで、ノイズ遮断領域43B、44Bが設けられる領域における多層基板40の強度および剛性を高めることができる。
【0038】
本実施形態の多層基板40は、複数の内部層43、44を有する。このため、ノイズ遮断領域43B、44Bにダミーパターン51を設けることによる効果をより顕著に得ることができる。すなわち、本実施形態によれば、複数の内部層43、44には、それぞれノイズ遮断領域43B、44Bが設けられるため、第1面41および第2面42に大きな段差が生じることを抑制できる。
【0039】
本実施形態において、コネクタ12は、厚さ方向から見て、ノイズ遮断領域43B、44Bに重なる。本実施形態によれば、コネクタ12に対し厚さ方向に重なる内部層43、44からノイズNrが伝搬することを抑制することができる。また、同様に、内部層43、44に対し、コネクタ12からノイズNqが伝搬することを抑制することができる。これにより、内部層43、44を介して電気素子11とコネクタ12との間で、ノイズNが伝搬されることを抑制できる。
【0040】
本実施形態によれば、第2接続パターン62、コネクタ12、およびノイズ遮断領域43B、44Bは、厚さ方向から見て、第2面42のブランク領域42Bに重なる。本実施形態によれば、第2面を介して電気素子11とコネクタ12との間で、ノイズNが伝搬されることを抑制できる。
【0041】
ここで、第2接続パターン62のうち、厚さ方向から見て、ノイズ遮断領域43B、44Bに重なる部分を重複部62aと呼ぶこととする。すなわち、第2接続パターン62は、重複部62aを有する。本実施形態によれば、重複部62aが設けられることで内部層43、44と第2接続パターン62との間でノイズNが伝わることを抑制することができる。また、本実施形態において、厚さ方向から見て、第2面42、および内部層43、44の配線領域42A、43A、44Aは、重複部62aと異なる位置に設けられる。上述したように、配線領域42A、43A、44Aには、電流が流れることが想定されるためノイズNの伝搬経路になり得る。本実施形態によれば、厚さ方向から見て、配線領域42A、43A、44Aが、重複部62aと重ならないため、配線領域42A、43A、44Aを伝搬するノイズNが重複部62aに伝わることを抑制できる。これにより、電気素子11とコネクタ12との間のノイズ伝搬がなされることをより確実に抑制することができる。
【0042】
さらに、本実施形態によれば、厚さ方向から見て、内部層43、44の配線領域43A、44Aは、コネクタ12と異なる位置に設けられる。このため、配線領域42A、43A、44Aを伝搬するノイズNがコネクタ12に伝わることを抑制できる。これにより、電気素子11とコネクタ12との間のノイズ伝搬がなされることをより確実に抑制することができる。
【0043】
図4は、本実施形態のノイズ遮断領域43Bにおけるダミーパターン51の配置を説明する模式図である。なお、本実施形態では、第1内部層43のノイズ遮断領域43Bと、第2内部層44のノイズ遮断領域44Bとは、同様の構成を有する。しかしながら、それぞれのノイズ遮断領域43B、44Bの構成は、説明する範囲を逸脱しない範囲で互いに異なっていてもよい。
【0044】
本実施形態のダミーパターン51は、それぞれ円形であり、縦横等間隔の正方格子状に配列される。ここで、厚さ方向から見てダミーパターン51の寸法D1を定義する。「ダミーパターンの寸法」とは、1つのダミーパターン51を厚さ方向から見たとき、ダミーパターン51の代表寸法であり、このダミーパターン51の外縁同士を繋ぐ無数の直線のうち最も長いものの長さである。本実施形態のダミーパターン51は、厚さ方向から見て円形であるため、ダミーパターン51の寸法D1は直径である。
【0045】
ダミーパターン51は、寸法D1以下の波長のノイズNを共振させる虞がある。ダミーパターン51の寸法D1を、ノイズNの最大周波数に対応する波長の1/2未満とすることで、それぞれのダミーパターン51においてノイズNが共振することを十分に抑制することができ、ノイズ遮断領域43B、44BにおけるノイズNの伝搬を遮断できる。また、ダミーパターン51の寸法D1は、ノイズNの最大周波数に対応する波長の1/10未満であることがより好ましい。この場合には、ノイズ遮断領域43B、44BにおけるノイズNの遮断の確実性をさらに高めることができる。
【0046】
ノイズNの最大周波数は、例えば約10GHzである。ノイズNの最大周波数を10GHzとする場合、ノイズNの最大周波数に対応する波長は、約30mmとなる。このため、ダミーパターン51の寸法D1は、ノイズNの波長の1/10未満である3mm未満であることが好ましい。この場合に、10GHz以上のノイズNが、ノイズ遮断領域43B、44Bを伝搬することを抑制できる。
【0047】
また、厚さ方向から見てダミーパターン51の寸法D1は、除去対象となるノイズNの波長のn倍の大きさとなることを避けることが好ましい。ここでnは、1以上の自然数である。ダミーパターン51は、寸法D1の1/N倍のノイズNが共振し易くなるという性質を有している。このため、除去対象となるノイズNの波長のn倍とならないように、ダミーパターン51の寸法D1を設定することで、ダミーパターン51におけるノイズNの伝搬をより確実に抑制できる。
【0048】
本実施形態において、ダミーパターン51は、厚さ方向から見て円形であるため、ダミーパターン51において共振し得るノイズNの周波数帯を狭い範囲に制限することができる。本実施形態によれば、ダミーパターン51が伝搬し得るノイズNの周波数帯を制限することで、多くの周波数帯のノイズNの伝搬を遮断できる。さらに、ダミーパターン51を円形とする場合、ダミーパターン51の形成に要するコストを低減することができ、モータ制御ユニット1を安価に製造できる。
【0049】
ノイズ遮断領域43B、44Bの複数のダミーパターン51は、厚さ方向からみて格子状に配列される。ダミーパターン51を格子状に配置することで、単位面積あたり配置されるダミーパターン51の密度を安定させることができ、多層基板40の板厚を安定させることができる。
【0050】
なお、本実施形態のダミーパターン51は、正方格子状に配置される。このため、1つのダミーパターン51の周りには同距離に並ぶ4つのダミーパターン51が配置される。ダミーパターン51の配置は、図5に変形例のノイズ遮断領域143Bとして示すように、六方格子状であってもよい。この場合、1つのダミーパターン51の周りには同距離に並ぶ6つのダミーパターン51が配置される。
【0051】
ノイズ遮断領域43B、44Bにおけるダミーパターン51の密度は、30%以上であれることが好ましい。ここでダミーパターン51の密度とは、ノイズ遮断領域43B、44Bの面積全体に対するダミーパターン51の面積の占める割合を意味する。ダミーパターン51の密度を30%以上とすることで、多層基板40の板厚を十分に安定させることができる。また、隣り合うダミーパターン51同士は、ダミーパターン51の寸法D1以上に離れないことが好ましい。これにより、ノイズ遮断領域43B、44B内に、ダミーパターン51が配置されない一定以上の広さの領域が設けられることを抑制できる。
【0052】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0053】
例えば、多層基板40の積層数は、本実施形態に限定されない。すなわち、多層基板40は、第1内部層43、および第2内部層44の他に、他の内部層を有していてもよい。この場合、他の内部層にも第1内部層43、および第2内部層44と同様の遮断領域が設けられることが好ましい。
【0054】
また、上述の実施形態では、電気素子11、ノイズ対策素子10、およびコネクタ12、並びに接続ライン60を構成する第1接続パターン61、および第2接続パターン62が、何れも第1面41に設けられる場合について説明した。しかしながら、第1面41には、少なくともノイズ対策素子10、コネクタ12、および第2接続パターン62が設けられていればよい。すなわち、電気素子11は、第2面42に設けられていてもよく、第1接続パターン61は、第2面42、又は内部層43、44に設けられていてもよい。
【0055】
また、上述の実施形態では、ダミーパターン51が、厚さ方向から見て円形である場合について説明した。しかしながら、ダミーパターン51の厚さ方向から見た形状は、円形に限らず、例えば、楕円形状、又は四角形状、六角形状、その他の多角形状としてもよい。また、上述の実施形態において、複数のダミーパターン51同士の厚さ方向から見た形状は互いに等しい。しかしながら、ダミーパターン51同士の厚さ方向から見た形状は、互いに異なっていてもよい。
【0056】
また、モータ制御ユニット1が制御するモータ85の駆動対象は、特に限定されない。モータ制御ユニット1は、必ずしも車両に搭載されなくてもよい。
【0057】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) 電気素子と、ノイズの伝搬を抑制するノイズ対策素子と、外部端子が接続されるコネクタと、前記電気素子、前記ノイズ対策素子、および前記コネクタが実装され、厚さ方向に沿って複数の層が積層される多層基板と、を備え、前記多層基板には、前記電気素子と前記コネクタとを前記ノイズ対策素子を経由して繋ぐ接続ラインが設けられ、前記多層基板は、厚さ方向の一方側を向く第1面と、内部に位置する内部層と、を有し、前記第1面には、前記ノイズ対策素子と前記コネクタとを繋ぎ前記接続ラインの一部を担う接続パターンが設けられ、前記内部層には、複数のダミーパターンが離散的に配置されるノイズ遮断領域が設けられ、前記接続パターンの前記ノイズ対策素子側の端部は、厚さ方向から見て前記ノイズ遮断領域と重なり、厚さ方向から見て前記ダミーパターンの寸法は、前記ノイズの最大周波数に対応する波長の1/2未満である、モータ制御ユニット。
(2) 厚さ方向から見て前記ダミーパターンの寸法は、前記ノイズの最大周波数に対応する波長の1/10未満である、(1)に記載のモータ制御ユニット。
(3) 厚さ方向から見て前記ダミーパターンの寸法は、3mm未満である、(1)又は(2)に記載のモータ制御ユニット。
(4) 前記ノイズ遮断領域の複数の前記ダミーパターンは、厚さ方向からみて格子状に配列される、(1)~(3)の何れか一項に記載のモータ制御ユニット。
(5) 前記ダミーパターンは、厚さ方向から見て円形である、(1)~(4)の何れか一項に記載のモータ制御ユニット。
(6) 前記ノイズ対策素子は、インダクタ素子である、(1)~(5)の何れか一項に記載のモータ制御ユニット。
(7) 前記接続パターンは、厚さ方向から見て、前記ノイズ遮断領域に重なる重複部を有し、前記多層基板は、前記第1面の反対側を向く第2面と、複数の前記内部層と、を有し、前記第2面、および複数の前記内部層には、信号を伝達する信号パターン、電源を伝達する電源パターン、又は金属箔からなるグランドパターンが配置される配線領域が設けられ、厚さ方向から見て、前記第2面、および前記内部層の前記配線領域は、前記重複部と異なる位置に設けられる、(1)~(6)の何れか一項に記載のモータ制御ユニット。
(8) 前記コネクタは、厚さ方向から見て、前記ノイズ遮断領域に重なる、(1)~(7)の何れか一項に記載のモータ制御ユニット。
(9) 前記多層基板は、複数の前記内部層を有し、複数の前記内部層には、それぞれ前記ノイズ遮断領域が設けられる、(1)~(8)の何れか一項に記載のモータ制御ユニット。
(10) 前記ノイズ遮断領域が設けられる前記内部層には、信号を伝達する信号パターン、電源を伝達する電源パターン、又は金属箔からなるグランドパターンの少なくとも1つが配置される配線領域が設けられ、厚さ方向から見て、前記内部層の前記配線領域は、前記コネクタと異なる位置に設けられる、(1)~(9)の何れか一項に記載のモータ制御ユニット。
(11) 前記内部層の前記信号パターン、前記電源パターン、およびグランドパターンのコーナー部は、滑らかに湾曲する、(10)に記載のモータ制御ユニット。
【符号の説明】
【0058】
1…モータ制御ユニット、10…ノイズ対策素子、11…電気素子、12…コネクタ、40…多層基板、41…第1面、42…第2面、42e…信号パターン、42A,43A,44A…配線領域、43…第1内部層(内部層)、43e…電源パターン、43B,44B,143B…ノイズ遮断領域、44…第2内部層(内部層)、44e…グランドパターン、51…ダミーパターン、60…接続ライン、61…第1接続パターン、62…第2接続パターン(接続パターン)、62a…重複部、85…モータ、91…外部端子、D1…寸法、N…ノイズ、R…コーナー部
図1
図2
図3
図4
図5