(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046294
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】無線通信システム及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
H04B 1/712 20110101AFI20240327BHJP
【FI】
H04B1/712
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151598
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭
(72)【発明者】
【氏名】仲田 樹広
(72)【発明者】
【氏名】岡 晃弘
(57)【要約】
【課題】 データフレームに既知信号が挿入されていない直交符号化によるスペクトラム拡散通信に対して誤り訂正能力を向上させ、通信の確達性の改善、通信の高速化を実現する無線通信システム及び無線通信方法を提供する。
【解決手段】 送信装置が、送信する信号に対して完全直交符号化を用いたスペクトラム拡散を行う拡散処理部103を備え、受信装置が、スペクトラム拡散された信号に対して完全直交符号化パターンとの相互相関の演算を行い、電力のピークの値と当該ピークの位置を探索する逆拡散処理部105と、ピークの値から雑音電力を推定する雑音算出部106と、相関演算の結果に対して推定された雑音電力で重み付けを行うデマッピング部107とを備える無線通信システム及び無線通信方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置と受信装置を備える無線通信システムであって、
前記送信装置は、送信する信号に対して完全直交符号化を用いたスペクトラム拡散を行う拡散処理部を備え、
前記受信装置は、前記スペクトラム拡散された信号に対して完全直交符号化パターンとの相互相関の演算を行い、電力のピークの値と当該ピークの位置を探索する逆拡散処理部と、前記ピークの値から雑音電力を推定する雑音算出部と、前記相関演算の結果に対して前記推定された雑音電力で重み付けを行うデマッピング部とを備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
逆拡散処理部は、受信信号と当該受信信号に対する全符号パターンの参照信号との相関演算を行う相関演算部と、特定の区間で電力が最大となるピークの値と当該ピークの位置を探索し、当該ピークの位置の各符号パターンの値を逆拡散結果として決定するピーク検出部とを備え、
デマッピング部は、前記逆拡散結果と雑音電力を用いてビット対数尤度比を算出することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
逆拡散処理部は、電力の複数のピークについてピークの値とピークの位置を探索し、当該探索された複数のピークの値を合成するRAKE合成部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の無線通信システム。
【請求項4】
送信装置と受信装置との間の無線通信方法であって、
前記送信装置が、送信する信号に対して完全直交符号化を用いたスペクトラム拡散を行い、
前記受信装置が、前記スペクトラム拡散された信号に対して完全直交符号化パターンとの相互相関の演算を行い、電力のピークの値と当該ピークの位置を探索し、前記ピークの値から雑音電力を推定し、前記相関演算の結果に対して前記推定された雑音電力で重み付けを行うことを特徴とする無線通信方法。
【請求項5】
受信装置が、電力の複数のピークについてピークの値とピークの位置を探索し、当該探索された複数のピークの値を合成することを特徴とする請求項4記載の無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに係り、特に、パイロット信号等の既知の信号を利用することなく雑音電力を推定できる無線通信システム及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
一般に、無線通信システムでは同期捕捉やAFC(Auto Frequency Control)を目的としたプリアンブルや伝搬路を推定するために定期的にパイロットのような既知信号が挿入されている。
【0003】
従来の技術として、上記の既知信号から雑音電力を推定し、データシンボルの復調の際、推定した雑音電力で重み付けを行ったビットLLR(Log Likelihood Ratio:対数尤度比)を算出し、誤り訂正能力を向上させるものがあった。
【0004】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2014-036397号公報「OFDM受信機の正規化回路」(特許文献1)、特開2014-236337号公報「OFDM受信装置」(特許文献2)がある。
【0005】
特許文献1には、受信信号の正規化出力が雑音の絶対量でなく、雑音の平均値を基準に変動するようにしたOFDM受信機の正規化回路が示されている。
特許文献2には、雑音や干渉波の影響を受けながらも、適切な尤度を算出できるOFDM受信装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-036397号公報
【特許文献2】特開2014-236337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の既知信号を挿入する技術に対して、MIL-STD-188-110Dのような通信規格では、スペクトラム拡散通信で完全直交符号であるWalsh符号が採用されており、また、データフレームに既知信号が挿入されておらず、特に動特性での誤り訂正能力を向上させるため、リアルタイムに雑音電力を算出する必要があるものの、従来の技術では対応できていないという問題点があった。
【0008】
尚、特許文献1,2には、データフレームに既知信号が挿入されていない直交符号を用いてスペクトラム拡散通信に対する誤り訂正能力を向上させる構成についての記載がない。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、データフレームに既知信号が挿入されていない直交符号化によるスペクトラム拡散通信に対して誤り訂正能力を向上させ、通信の確達性の改善、通信の高速化を実現する無線通信システム及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、送信装置と受信装置を備える無線通信システムであって、送信装置が、送信する信号に対して完全直交符号化を用いたスペクトラム拡散を行う拡散処理部を備え、受信装置が、スペクトラム拡散された信号に対して完全直交符号化パターンとの相互相関の演算を行い、電力のピークの値と当該ピークの位置を探索する逆拡散処理部と、ピークの値から雑音電力を推定する雑音算出部と、相関演算の結果に対して推定された雑音電力で重み付けを行うデマッピング部とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明は、上記無線通信システムにおいて、逆拡散処理部が、受信信号と当該受信信号に対する全符号パターンの参照信号との相関演算を行う相関演算部と、特定の区間で電力が最大となるピークの値と当該ピークの位置を探索し、当該ピークの位置の各符号パターンの値を逆拡散結果として決定するピーク検出部とを備え、デマッピング部が、逆拡散結果と雑音電力を用いてビット対数尤度比を算出することを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記無線通信システムにおいて、逆拡散処理部が、電力の複数のピークについてピークの値とピークの位置を探索し、当該探索された複数のピークの値を合成するRAKE合成部を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明は、送信装置と受信装置との間の無線通信方法であって、送信装置が、送信する信号に対して完全直交符号化を用いたスペクトラム拡散を行い、受信装置が、スペクトラム拡散された信号に対して完全直交符号化パターンとの相互相関の演算を行い、電力のピークの値と当該ピークの位置を探索し、ピークの値から雑音電力を推定し、相関演算の結果に対して推定された雑音電力で重み付けを行うことを特徴とする。
【0014】
本発明は上記無線通信方法において、受信装置が、電力の複数のピークについてピークの値とピークの位置を探索し、当該探索された複数のピークの値を合成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、送信装置が、送信する信号に対して完全直交符号化を用いたスペクトラム拡散を行う拡散処理部を備え、受信装置が、スペクトラム拡散された信号に対して完全直交符号化パターンとの相互相関の演算を行い、電力のピークの値と当該ピークの位置を探索する逆拡散処理部と、ピークの値から雑音電力を推定する雑音算出部と、相関演算の結果に対して推定された雑音電力で重み付けを行うデマッピング部とを備える無線通信システムとしているので、データフレームに既知信号が挿入されていない直交符号化によるスペクトラム拡散通信に対して誤り訂正能力を向上させ、通信の信頼性を改善し、更に通信の高速化を実現できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】2ビット伝送のWalsh符号の例を示す図である。
【
図3】4ビット伝送のWalsh符号の例を示す図である。
【
図4】第1のシステムの逆拡散処理部の構成ブロック図である。
【
図5】雑音がない場合の相関出力イメージを示す説明図である。
【
図6】雑音がある場合の相関出力イメージを示す説明図である。
【
図8】第2のシステムの逆拡散処理部の構成ブロック図である。
【
図9】マルチパスがある場合の相関出力イメージを示す説明図である。
【
図10】第2のシステムのRAKE合成部の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線通信システム(本システム)は、送信装置が、送信する信号に対して完全直交符号化を用いたスペクトラム拡散を行う拡散処理部を備え、受信装置が、スペクトラム拡散された信号に対して完全直交符号化パターンとの相互相関の演算を行い、電力のピークの値と当該ピークの位置を探索する逆拡散処理部と、ピークの値から雑音電力を推定する雑音算出部と、相関演算の結果に対して推定された雑音電力で重み付けを行うデマッピング部とを備えるものであり、これにより、データフレームに既知信号が挿入されていない直交符号化によるスペクトラム拡散通信に対して誤り訂正能力を向上させ、通信の確達性を改善し、通信の高速化を実現できるものである。
【0018】
具体的には、Walsh符号で拡散された送信信号を受信する無線通信装置において、Walsh符号の特徴を利用し、受信シンボル自身で受信雑音電力を算出し、その受信雑音電力を逆拡散により得られた尤度の重み付けに利用し、誤り訂正能力を向上させるものであり、つまり、受信シンボル自身で雑音電力算出し、それをLLR算出に用いるものである。
【0019】
また、本システムは、RAKE合成した受信シンボル自身の尤度に対してRAKE合成を考慮した受信雑音電力を重み付けすることによりマルチパス利得を利用することができ、伝搬路の変動への追従性を高めて誤り訂正能力を向上させ、通信の確達性を改善し、通信の高速化を実現できるものである。
【0020】
本システムは、以下に説明する第1の実施形態(第1のシステム)を基本とし、第2の実施形態(第2のシステム)を応用例とするものである。
【0021】
[第1のシステム:
図1]
本システムにおける第1の実施形態(第1のシステム)について
図1を参照しながら説明する。
図1は、第1のシステムの構成ブロック図である。
第1のシステムは、
図1に示すように、送信側(送信装置)として、誤り訂正符号化部101と、インタリーブ部102と、拡散処理部103と、マッピング部104とを備え、受信側(受信装置)として、逆拡散処理部105と、雑音算出部106と、デマッピング部107と、デインタリーブ部108と、誤り訂正復号部109とを備えている。
以下、第1のシステムの送信装置と受信装置の各部を具体的に説明する。
【0022】
[第1のシステムの送信装置]
[誤り訂正符号化部101]
誤り訂正符号化部101は、入力された送信データに対して、例えば、畳み込み符号やLDPC(Low-Density Parity-Check)符号化のような誤り訂正符号化を行い、伝送ビット系列を形成して、インタリーブ部102へ出力する。
【0023】
[インタリーブ部102]
インタリーブ部102は、送信フレームの誤りを分散させるため、所定の順序で伝送ビット系列を入れ替えて拡散処理部103へ出力する。
【0024】
[拡散処理部103]
拡散処理部103は、完全直交符号であるWalsh符号による拡散処理を行い、拡散結果をマッピング部104へ出力する。拡散処理部103では、Walsh符号を用いているが、完全直交している符号であれば、この符号パターンに限らない。
【0025】
[Walsh符号の例:
図2,3]
ここで、Walsh符号の一例を
図2、
図3に示す。
図2は、2ビット伝送のWalsh符号の例を示す図であり、
図3は、4ビット伝送のWalsh符号の例を示す図である。
Walsh符号は、拡散数に応じてこの符号パターンを繰り返すものである。
【0026】
例えば、拡散数32で2ビット伝送の場合は、32/4=8回当該符号パターンを繰り返す。
また、拡散数32で4ビット伝送の場合は、32/16=2回当該符号パターンを繰り返す。この符号パターンは互いに完全直交している。
ここで符号パターン数をKとする。
図2の例ではK=4、
図3の例ではK=16である。
【0027】
例えば、2ビット伝送、拡散数32で“01”を送信するときの符号パターンは数式1となる。
【数1】
ここで、iは符号パターンのインデックスで伝送ビットを10進数にしたものである。例えば、伝送ビット数が2ビットであればi=0,1,2,3である。
【0028】
送信シンボルのインデクッスをmとするとき、拡散後のインデクッスをnとすると、mシンボル目の拡散後の送信系列s(n) は数式2となる。
【数2】
ここで、Lは拡散数である。a:bはaからbの離散ステップ1の系列である。例えば、1:32であれば、1,2,3,…,31,32である。
【0029】
[マッピング部104]
マッピング部104は、入力された拡散結果s(n)を基にシンボルマッピングを行う。
シンボルマッピングは、例えば、数式3のように拡散結果が0の時は1+j0、1の時は-1+j0にマッピングする。
【数3】
ここで、jは虚数単位である。
【0030】
[第1のシステムの受信装置]
[逆拡散処理部105:
図4]
逆拡散処理部105は、受信信号に対して数式1に示した全符号パターンとの相関演算を行い、その相関結果を雑音算出部106とデマッピング部107へ出力する。
逆拡散処理部105について
図4を用いて説明する。
図4は、第1のシステムの逆拡散処理部の構成ブロック図である。
逆拡散処理部105は、
図4に示すように、相関演算部201と、ピーク検出部202とを備える。
【0031】
[相関演算部201]
相関演算部201は、受信信号y(n)と参照信号r
i との相関演算、すなわち逆拡散を行う。符号パターンiの相関出力C
i (n)は次式により算出される。
【数4】
【0032】
ここで、r
i は、拡散数に応じて繰り返した数式2に示すような符号パターンs
i を数式3に基づいてマッピングしたもので、l(エル)は、拡散のチップインデックス、「
*」は、複素共役である。また、受信信号y(n)は、送信信号をx(n)、雑音をv(n)とすると、は数式5となる。
【数5】
【0033】
[ピーク検出部202:
図5,6]
ピーク検出部202は、長さLの区間で電力が最大となる全符号インデックスの最大値P
v,maxとその位置となるピーク位置P
n を探索し、そのピーク位置P
n の各符号パターンiの値P
v,i(m)を決定する。最大値は数式6となり、ピーク位置の各符号パターンiの値P
v,i(m)を数式7となる。
【0034】
【数6】
【数7】
ここで、[a,b]=max(・)のaは最大値、bは最大値のインデックスを示す。P
v,i(m)は逆拡散した結果であるので、インデックスはmとなる。
【0035】
尚、ピーク位置の値P
v,i は、送信のWalsh符号のインデックスをkとするとWalsh符号の完全直交性により、雑音がなければ数式8となる。
【数8】
図5に雑音がない場合の|C
i (n)|
2 のイメージ図を示す。
図5は、雑音がない場合の相関出力イメージを示す説明図である。
図6に雑音がある場合の|C
i (n)|
2 のイメージ図を示す。
図6は、雑音がある場合の相関出力イメージを示す説明図である。
【0036】
[雑音算出部106]
雑音算出部106は、各Walsh符号のピーク値P
v,i から数式14の雑音電力を推定し、デマッピング部107へ出力する。
送信したWalsh符号以外の相関出力は、雑音がなければ
図5のように0であるので、Walsh符号以外の相関出力は雑音成分であると考えることができる。
【0037】
数式4のピーク位置ではx(n-l)=r
k (L-l-1)であり、y(n-l)は、数式9のように書き換えられる。
【数9】
数式9を数式4に代入すると数式10となる。
【数10】
【0038】
数式8の性質を用いると、P
v,i(m)は数式11のようになる。
【数11】
【0039】
数式11よりi≠kのP
v,i(m)は符号化したデータ部分がキャンセルされ、理論的に雑音成分を抽出できることが分かる。ここで、r
i
*(l)の大きさは「1」であり、v(n)が白色ガウス雑音であると仮定すると、nの値に関わらず等しい分散をもつ。
この分散を[数12]に示すものとすると、i≠kのP
v,i(m)の期待値は[数13]の数式12となる。
【数12】
【数13】
【0040】
ここで、Lは拡散数であり、数式12の右辺Lσ
2
v,i は当該受信シンボルの雑音電力となる。i≠kの全P
v,i(m)の平均雑音電力は[数14]の数式13となる。
【数14】
【0041】
すなわち、雑音電力(数式14の右辺)は、P
v,i(m)の電力の全加算結果から最大P
v,i(m)の電力を減じたものの平均を計算すればよく、[数15]の数式14により算出する。
【数15】
【0042】
[デマッピング部107]
デマッピング部107は、逆拡散処理部105で算出された全逆拡散値P
v,i(m)と雑音算出部106で数式14により算出された雑音電力を用いて[数16]に示すビットLLRを算出し、デインタリーブ部108に出力する。
【数16】
【0043】
一般的なシングルキャリアやOFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)の同期検波による通信では、理想コンステレーションと受信点の距離を尤度に用いるが、逆拡散における尤度は、例えば、[数17]に示す全符号パターンの最大値を尤度にすることができるし、あるいは[数17]に示す全符号パターンを大きい順にソートし、1番目と2番目の差を尤度にすることができる。
【数17】
【0044】
例として、最大値を尤度に用いる方法を説明する。
[数17]に示す全符号パターンの逆拡散値の最大値Φ(m)及び最大値の符号パターンインデックスP
i(m)を[数18]の数式15で抽出する。
【数18】
【0045】
雑音の重み付けは、Φ(m)とP
i(m)を用いて[数19]の数式16で計算する。
【数19】
【0046】
ここで、bitget(a,b)は、aを2進数で表現したときのMSBから数えてbビット目を表す。数式16の右辺の「1-2・bitget(Pi(m),b)」の計算により元の符号パターンの当該ビットが0のとき+1(正の値)を、当該ビットが1のとき-1(負の値)をとるように操作する。
【0047】
[デインタリーブ部108]
デインタリーブ部108は、インタリーブ部102で所定の順序に入れ替えた伝送ビット系列に相当するLLR系列を元の順序に戻し、誤り訂正復号部109へ出力する。
[誤り訂正復号部109]
は、誤り訂正符号化部101により符号化されたアルゴリズムに対応する誤り訂正復号、例えば、ビタビ復号やLDPC(Low Density Parity Check)復号を行う。
【0048】
以上説明した第1のシステムにより、受信シンボル自身から受信雑音電力を算出し、受信シンボル自身の尤度に対して受信雑音電力を重み付けすることにより伝搬路の変動への追従性を高めて誤り訂正能力を向上させ、通信の確達性の改善、通信の高速化を実現できるものである。
【0049】
[第2のシステム:
図7]
本システムにおける第2の実施形態(第2のシステム)について
図7を参照しながら説明する。
図7は、第2のシステムの構成ブロック図である。
第2のシステムは、
図7に示すように、送信側(送信装置)として、誤り訂正符号化部101と、インタリーブ部102と、拡散処理部103と、マッピング部104とを備え、受信側(受信装置)として、逆拡散処理部301と、雑音算出部302と、デマッピング部107と、デインタリーブ部108と、誤り訂正復号部109とを備えている。
【0050】
誤り訂正符号化部101と、インタリーブ部102と、拡散処理部103と、マッピング部104と、デマッピング部107と、デインタリーブ部108と、誤り訂正復号部109とは、第1のシステムと同一であるため、説明は省略する。
【0051】
[逆拡散処理部301:
図8]
逆拡散処理部301は、受信信号に対して全符号パターンとの相関演算を行い、その相関結果を雑音算出部302とデマッピング部107へ出力する。逆拡散処理部301について
図8を用いて説明する。
図8は、第2のシステムの逆拡散処理部の構成ブロック図である。
図8に示すように、逆拡散処理部301は、相関演算部201と、ピーク検出部401と、RAKE合成部402とを備えている。
尚、相関演算部201は、第1のシステムと同一であるため説明は省略する。
【0052】
[ピーク検出部401]
ピーク検出部401は、[数20]に示すように、長さLの区間で電力が最大となる全符号インデックスの最大値位置となるピーク位置Pn1を数式17で探索し、そのピーク位置の各符号パターンの値Pv1,iを数式18で決定し、ピーク位置Pn1を除いた同区間での電力が最大となる全符号インデックスの最大値位置、すなわち第2ピークとなるピーク位置Pn2を数式19で探索し、その第2ピーク位置の各符号パターンの値Pv2,iを数式20で決定する。
【0053】
【0054】
[RAKE合成部402:
図9、
図10]
RAKE合成部402は、第1ピーク成分とマルチパス成分である第2ピーク成分を合成し、マルチパス利得を加えるものである。
マルチパスがある場合の[数21]に示す値のイメージを
図9に示す。
図9は、マルチパスがある場合の相関出力イメージを示す説明図である。
【数21】
【0055】
そして、RAKE合成部402の構成について
図10を参照しながら説明する。
図10は、第2のシステムのRAKE合成部の構成ブロック図である。
RAKE合成部402は、
図10に示すように、位相補正係数算出部501と、電力差判定部502と、最大比合成部503とを備える。
【0056】
[位相補正係数算出部501]
位相補正係数算出部501は、第1ピークと第2ピークの位相を揃えるための位相補正係数を算出して最大比合成部503と雑音算出部302に出力する。
位相補正係数の算出は、例えば、[数22]の数式21と数式22のように当該シンボルの前後Mシンボルの移動平均により算出する。
【数22】
【0057】
ここで、w1(m)は、第1ピークの位相補正係数であり、w2(m)は、第2ピークの位相補正係数であり、kpは、ピーク値の符号インデックスである。この位相補正係数を乗じることで位相は実軸に揃えられることになる。
【0058】
[電力差判定部502]
電力差判定部502は、判定信号Aを最大比合成部503と雑音算出部302へ出力する。判定信号Aは[数23]の数式23により「0」または「1」を決定する。
【数23】
【0059】
ここで、γは判定閾値である。この判定処理の意図は、第1ピークと第2ピークとの差が大きい場合、第2ピークが雑音である可能性があり、また第1ピークが第2ピークに対して十分大きければ第1ピークのみの復調でも差し支えないからである。例えば、γは「0.25」としている。
【0060】
[最大比合成部503]
最大比合成部503は、位相補正係数算出部501で算出された係数を用いて最大比合成を行い、電力差判定部502の判定結果により出力信号を選択し、デマッピング部107へ出力する。最大比合成は[数24]の数式24による。
【数24】
電力差判定部502の判定信号Aにより出力を[数25]の数式25のように選択する。
【数25】
【0061】
[雑音算出部302]
雑音算出部302は、各Walsh符号のピーク値P
v1,i、P
v2,iからRAKE合成を考慮した合成雑音電力を推定し、デマッピング部107へ出力する。
雑音算出の考え方は、第1のシステムで示したものと同一であり、RAKE合成部402でRAKE合成を実施した場合の雑音電力は[数26]の数式26となる。
【数26】
【0062】
RAKE合成結果は最大比合成されているため、(|w
1|
2+|w
2|
2)で除算することで雑音の正規化を行っている。
RAKE合成部402でRAKE合成を実施しなかった場合の雑音電力は[数27]の数式27となる。
【数27】
RAKE合成を実施しなかった場合は第1のシステムと同様であり、最大比合成を行わないため雑音正規化も行わない。
【0063】
電力差判定部502の判定信号Aにより出力を[数28]の数式28のように選択する。
【数28】
【0064】
以上の第2のシステムによれば、受信シンボル自身の先行波と遅延波の受信雑音電力を算出し、RAKE合成した受信シンボル自身の尤度に対してRAKE合成を考慮した受信雑音電力を重み付けすることによりマルチパス利得を利用すると共に伝搬路の変動への追従性を高めて誤り訂正能力を向上させ、通信の確達性(信頼性)を改善し、通信の高速化を実現する効果がある。
【0065】
また、第2のシステムでは、第2ピークまでの2つのRAKE合成による説明であったが、第3ピーク以上の3つ以上のRAKE合成でも同様であり、RAKE合成の数は2とは限らず3以上であってもよい。
【0066】
本システムは変復調処理部に特化したものであり、以上説明した機能以外に無線通信装置としては周波数変換器、電力増幅器、送受信アンテナ、低雑音増幅器、AFC処理部、同期捕捉部等を備えるが、本システムでは一般的な機能であるため説明を省略している。
【0067】
[実施の形態の効果]
本システムによれば、送信装置が、送信する信号に対して完全直交符号化を用いたスペクトラム拡散を行う拡散処理部103を備え、受信装置が、スペクトラム拡散された信号に対して完全直交符号化パターンとの相互相関の演算を行い、電力のピークの値と当該ピークの位置を探索する逆拡散処理部105と、ピークの値から雑音電力を推定する雑音算出部106と、相関演算の結果に対して推定された雑音電力で重み付けを行うデマッピング部107とを備えるものであり、これにより、データフレームに既知信号が挿入されていない直交符号化によるスペクトラム拡散通信に対して誤り訂正能力を向上させ、通信の確達性を改善し、通信の高速化を実現できる効果がある。
【0068】
また、本システムでは、RAKE合成した受信シンボル自身の尤度に対してRAKE合成を考慮した受信雑音電力を重み付けすることによりマルチパス利得を利用することができ、伝搬路の変動への追従性を高めて誤り訂正能力を向上させ、通信の確達性を改善し、通信の高速化を実現する効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、データフレームに既知信号が挿入されていない直交符号化によるスペクトラム拡散通信に対して誤り訂正能力を向上させ、通信の確達性の改善、通信の高速化を実現する無線通信システム及び無線通信方法に好適である。
【符号の説明】
【0070】
101…誤り訂正符号化部、 102…インタリーブ部、 103…拡散処理部、 104…マッピング部、 105…逆拡散処理部、 106…雑音算出部、 107…デマッピング部、 108…デインタリーブ部、 109…誤り訂正復号部、 201…相関演算部、 202…ピーク検出部、 301…逆拡散処理部、 302…雑音算出部、 401…ピーク検出部、 402…RAKE合成部、 501…位相補正係数算出部、 502…最大比合成部、 503…電力差判定部