(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046351
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理装置、情報処理方法、および、演奏データ処理システム
(51)【国際特許分類】
G10G 1/00 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
G10G1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151677
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100209048
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 元嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】加福 滋
(72)【発明者】
【氏名】奥田 広子
(72)【発明者】
【氏名】田中 飛雄太
【テーマコード(参考)】
5D182
【Fターム(参考)】
5D182AA24
5D182AB03
5D182AD04
(57)【要約】
【課題】演奏にマッチする画像を高い精度で提示できるようにすること。
【解決手段】本発明のプログラムは、コンピュータに、演奏に伴って発生する演奏データに基づいて特定された、演奏に対応する楽曲に適合する画像を表示装置に表示させ、連続して演奏される演奏に伴って発生する演奏データの時系列に基づいて、演奏と特定された楽曲との合致度を繰り返し導出させ、合致度が基準を満たさない場合に、演奏に対応する楽曲を再検索させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
演奏に伴って発生する演奏データに基づいて特定された、前記演奏に対応する楽曲に適合する画像を表示装置に表示させる画像表示処理と、
連続して演奏される演奏に伴って発生する前記演奏データの時系列に基づいて、前記演奏と前記特定された楽曲との合致度を繰り返し導出する導出処理と、
前記合致度が基準を満たさない場合に、前記演奏に対応する楽曲を再検索させる処理と、を実行させる命令を含む、プログラム。
【請求項2】
前記演奏に伴って発生する前記演奏データに基づいて、前記演奏に対応する楽曲を検索によって特定する楽曲検索処理をさらに含み、
前記楽曲検索処理は、複数の楽曲ごとに、関連する情報を対応付けて登録した楽曲検索用データベースを検索して前記楽曲を特定する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記画像表示処理は、複数の画像データを登録した画像データベースから、前記表示に係わる画像の画像データを取得する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
前記画像表示処理は、画像の識別子を取得し、前記識別子にしたがったタイミングに対応する画像データを、前記識別子にしたがったタイミングの前に、前記画像データベースから取得する、請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記画像表示処理は、前記識別子にしたがったタイミングで、前記タイミングに対応する画像データの画像を前記表示装置に表示させる、請求項4記載のプログラム。
【請求項6】
前記導出処理は、複数の楽曲ごとに前記楽曲のメロディ情報を対応付けて登録したアライメントデータベースから取得した前記メロディ情報と、前記演奏データとの合致度を導出する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項7】
前記画像表示処理は、前記合致度が基準を満たさない状態、または、前記楽曲が特定されていない状態において、予め用意された汎用的画像を前記表示装置に表示させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項8】
演奏データを発生させる電子機器に接続可能なインタフェースと、
プロセッサとを具備し、
前記プロセッサが、
演奏に伴って発生する前記演奏データに基づいて、前記演奏に対応する楽曲を検索して特定し、
前記特定された楽曲に対応する画像を選択して表示装置に表示し、
前記演奏データの時系列に基づいて、前記演奏と前記特定された楽曲との合致度を繰り返し計算し、
前記合致度が既定の基準を満たさない場合に、前記演奏に対応する楽曲を再検索する、情報処理装置。
【請求項9】
情報処理装置の情報処理方法において、
演奏に伴って発生する演奏データに基づいて特定された、前記演奏に対応する楽曲に適合する画像を表示装置に表示させ、
連続して演奏される演奏に伴って発生する前記演奏データの時系列に基づいて、前記演奏と前記特定された楽曲との合致度を繰り返し導出し、
前記合致度が基準を満たさない場合に、前記演奏に対応する楽曲を再検索させる、情報処理方法。
【請求項10】
情報処理装置と、表示装置とを具備する演奏データ処理システムであって、
前記情報処理装置は、
演奏データを発生させる機器に接続可能なインタフェースと、
演奏に伴って発生する前記演奏データに基づいて特定された、前記演奏に対応する楽曲に適合する画像を前記表示装置に表示させる画像表示処理部と、
連続して演奏される演奏に伴って発生する前記演奏データの時系列に基づいて、前記演奏と前記特定された楽曲との合致度を繰り返し導出する導出処理部とを備え、
前記導出処理部は、前記合致度が基準を満たさない場合に、前記演奏に対応する楽曲を再検索させる、演奏データ処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、情報処理装置、情報処理方法、および、演奏データ処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザが楽器で弾き始めたり歌い始めた楽曲を認識し、認識された楽曲に関連した画像(動画または静止画)を自動的に表示する機能を有する画像表示装置が、提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
せっかく楽器を買ったのに、練習が大変で途中であきらめてしまう人は多い。音楽を楽しむことへの入り口に立ったばかりの人に練習の意欲を高めてもらうためにも、音楽演奏を可視化して、視覚的な効果を利用する技術に注目が集まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に、歌詞のある楽曲にマッチする画像を表示する技術では、適切な画像を選択して提示することは難しい。例えば、曲の演奏の進行状態に応じて演奏に適合する画像を適宜変えることが好ましい場合がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、演奏にマッチする画像を高い精度で提示できるプログラム、情報処理装置、情報処理方法、および、演奏データ処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態であるプログラムは、コンピュータに、演奏に伴って発生する演奏データに基づいて特定された、演奏に対応する楽曲に適合する画像を表示装置に表示させる画像表示処理と、連続して演奏される演奏に伴って発生する演奏データの時系列に基づいて、演奏と特定された楽曲との合致度を繰り返し導出する導出処理と、合致度が基準を満たさない場合に、演奏に対応する楽曲を再検索させる処理と、を実行させる命令を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、演奏にマッチする画像を高い精度で提示できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係わる演奏データ処理システムの一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される演奏データ処理システムのシステム構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係わる演奏データ処理システムを構成する要素の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、コンピュータ200の一例を示す機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係わる演奏データ処理システムにおける処理手順の一例を示すシーケンス図である。
【
図6】
図6は、楽曲検索処理部11aの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1の実施形態での画像表示処理部11cの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、アライメント処理部11bの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、DPマッチング法による合致度の計算(導出)について説明するための図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態での画像表示処理部11cの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、第2の実施形態での画像表示処理部11cの処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施形態に係わる演奏データ処理システムの一例を示す模式図である。
図1に示される演奏データ処理システムは、入力装置と、アプリケーションと、出力装置とを含む。入力装置は、例えばデジタルキーボード(電子機器)100であり、ユーザの演奏から演奏データ(例えばMIDI(Musical Instrument Digital Interface)データあるいはMIDIメッセージ列)を生成してアプリケーションに渡す。アプリケーションは、例えば、専用サーバやノートPCやタブレット等のコンピュータ(情報処理装置)200にインストールされ、演奏データを解析する。解析により取得された画像データは出力装置に渡され、コンピュータ200の表示指示に従って、出力装置としてモニタやプロジェクター等の画像表示装置300などにより画像として表示される。このように、ユーザ(演奏者)の演奏に基づく演奏データはアプリケーションにより処理されて、視覚的な画像として出力される。
【0011】
図2は、
図1に示される演奏データ処理システムのシステム構成例を示す図である。デジタルキーボード100は、MIDIインタフェース400を介してコンピュータ200に接続される。コンピュータ200は、映像インタフェース500を介してプロジェクター300に接続される。
【0012】
図3は、演奏データ処理システムを構成する要素の一例を示すブロック図である。演奏データ処理システムは、アプリケーションを中核とし、入力装置と出力装置、そしてアプリケーションからアクセス可能な各種のデータベースを組み合わせて構成される。
【0013】
図3において、入力装置としてのMIDI入力装置は、
図1のデジタルキーボード100に相当し、ユーザの演奏をMIDIメッセージとしてアプリケーションに渡すための装置である。またデジタルキーボード100は、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)やMIDIデータを解析して音出力データを生成するDSP(Digital Signal Processor)等の演算処理ユニットと、デジタルの音出力データをアナログ化して外部に音出力するスピーカ等の出力装置と、を備えている。MIDIメッセージを受信したアプリケーションは、楽曲検索用データベース(DB)、画像DB、およびアライメントDBにアクセスして、MIDIメッセージから適切な画像を選択し、出力装置に渡す。出力装置は、表示装置により画像を表示する。
【0014】
ここで、アプリケーションは、例えばソフトウェアモジュールとしての楽曲検索処理部、アライメント処理部(導出処理部)、および、画像表示処理部を備える。これらのモジュールおよび各データベースについて、
図4を参照してさらに詳しく説明する。
【0015】
図4は、コンピュータ200の一例を示す機能ブロック図である。コンピュータ200は、プロセッサ11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、内部バス14、入出力インタフェース15、入力部16、通信部17、および、出力部21を備える。
【0016】
プロセッサ11は、少なくとも1つのCPU、またはMPU(Micro Processing Unit)等の演算処理ユニットであり、ROM12に記憶されたプログラム12aに従って実施形態の諸機能を実現する。
RAM13は、プロセッサ11のワーキングメモリとして機能するとともに、楽曲データ13aを記憶する。楽曲データ13aは、例えばMIDIデータであり、複数の曲ごとに、音符の位置や長さ、拍子などの情報を記録したデータである。
入力部16は、キーボードやポインティングデバイスを備えた操作部201に接続され、ユーザの操作を受け付ける。
【0017】
通信部17は、デジタルキーボード100に接続可能なインタフェースであり、MIDIインタフェース400を介して、デジタルキーボード100からの演奏データ(MIDIメッセージ)を受信する。
出力部21は、プロセッサ11により選択された画像を、映像インタフェース500経由でプロジェクター300に送信し、ビジュアルに出力させる。
【0018】
ROM12は、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶デバイスであり、コンピュータ200を制御するプログラム12aに加えて、楽曲検索用データベース12b、画像データベース12c、および、アライメントデータベース12dを記憶する。
楽曲検索用データベース12bは、プロセッサ11による楽曲検索処理時に参照されるデータベースであり、複数の楽曲ごとに、当該楽曲に関する情報を対応付けて登録したデータベースである。楽曲検索用データベース12bは、例えば、各楽曲の検索のためのキーやタイトル、画像取得のための情報等を保持する。演奏データから生成されたクエリを検索キーとして楽曲検索用データベース12bに送信することで、対応する楽曲の楽曲情報が抽出される。
【0019】
画像データベース12cは、静止画表示或いは動画表示を行うための画像を保持するデータベースであり、複数の画像の画像データを、例えばjpegやPNGなどのフォーマットで登録したデータベースである。
アライメントデータベース12dは、複数の楽曲ごとに、アライメント処理を行うための楽曲全体のメロディ情報を対応付けて登録したデータベースである。
【0020】
プロセッサ11は、実施形態に係わる処理機能として楽曲検索処理部11a、アライメント処理部11b、および、画像表示処理部11cを備える。楽曲検索処理部11a、アライメント処理部11b、および、画像表示処理部11cは、プログラム12aに基づくプロセッサ11の演算処理により実現される、処理機能である。すなわちプログラム12aは、プロセッサ11に、楽曲検索処理部11a、アライメント処理部11b、および、画像表示処理部11cのそれぞれの機能を実行させる命令を含む。
【0021】
楽曲検索処理部11aは、ユーザがデジタルキーボード100を演奏することに伴って発生する演奏データ(MIDIメッセージ列)に基づいて、楽曲検索用データベース12bを検索し、その演奏に対応する楽曲を特定する。楽曲が特定されると、楽曲検索処理部11aは、その楽曲の情報を楽曲検索用データベース12bから取得する。
【0022】
アライメント処理部11bは、楽曲検索処理部11aにより特定された楽曲とユーザの演奏との合致度を、演奏データの時系列に基づいて繰り返し計算する。合致度の計算には、演奏データと、アライメントデータベース12dに保持された情報との双方が参照される。すなわちアライメント処理部11bは、アライメント処理を実行する。アライメント処理により、現在、その時点において楽曲のどの部分が演奏されているか等の情報も取得することができる。
【0023】
ちなみに、演奏と楽譜との同期をとる技術は、スコアアライメントと称して知られている。また、演奏と音源(PCM)との同期はオーディオ・トゥ・オーディオ(audio to audio)アライメント、演奏と音源(midi)との同期はオーディオ・トゥ・MIDI(audio to midi)アライメント等と称される。
さらに、アライメント処理部11bは、演奏の途中で合致度が既定の基準を満たさなくなった場合に、現在の演奏に対応する楽曲の再検索を楽曲検索処理部11aにリクエストする。
【0024】
画像表示処理部11cは、楽曲検索処理部11aにより特定された楽曲に対応する画像を、画像データベース12cに保持された画像から選択し、出力部21に送出する。これにより、演奏に対応する画像(イラスト等)がプロジェクター300から出力される。
【0025】
次に、上記構成を基礎として、複数の実施形態について説明する。
[第1の実施形態]
図5は、実施形態に係わる演奏データ処理システムにおける処理手順の一例を示すシーケンス図である。
図5において、演奏者がデジタルキーボード100を演奏することで発生するMIDIメッセージは、楽曲検索処理部11aおよびアライメント処理部11bに入力される(処理p1,p2)。
【0026】
楽曲検索処理部11aは、取得したMIDIメッセージの時系列(MIDIメッセージ列)から、楽曲検索のためのクエリを生成する(処理p3)。そして、楽曲検索処理部11aは、生成したクエリをキーとして楽曲検索用データベース12bを検索し(処理p4)、該当する楽曲の楽曲情報を取得する(処理p5)。取得された楽曲情報はアライメント処理部11bに渡される(処理p6)。
【0027】
アライメント処理部11bは、楽曲情報をキーとしてアライメントデータベース12dを検索し(処理p7)、曲全体のメロディ情報を取得する(処理p8)。アライメント処理部11bは、MIDIメッセージ列と、取得されたメロディ情報との合致度を繰り返し計算(導出)する(処理p9)。つまり、処理p9では、演奏している楽曲と、楽曲検索用データベース12bに保存されている複数の楽曲とのそれぞれの合致度を算出(導出)している。
【0028】
ここで、演奏中に一旦、合致度が既定の基準を満たしていたとしても、例えば、演奏を中断することなく連続して次々と別の曲が演奏されると(メドレーなど)、楽曲単位での合致度が変わる場合がある。また、演奏している楽曲と似たようなフレーズの別の楽曲があり、合致度を算出する対象がこの別の曲であるために、演奏が進むたびに合致度が変わってくる場合がある。
【0029】
このように、メドレーのような曲の切り替えにより、または、同一曲の演奏過程において、合致度が既定の基準を満たした状態から満たさない状態に遷移する場合(例えば、予め定められたしきい値よりも低くなった場合)がある。合致度が既定の基準を満たした状態から満たさない状態に遷移すると、アライメント処理部11bは、楽曲の再検索を楽曲検索処理部11aに依頼する(処理p10)。この場合、処理p3に戻り、処理p3~p9の手順が繰り返される。
【0030】
合致度の値が基準を満たしているならば、楽曲検索処理部11aは、楽曲情報を画像表示処理部11cに与える(処理p11)とともに、アライメント処理部11bは、計算された合致度情報を画像表示処理部11cに渡す(処理p12)。画像表示処理部11cは、与えられた楽曲情報に含まれる歌詞情報(例えば歌詞「赤とんぼ」)に対応する画像(例えば「赤とんぼ」の絵、写真、動画等)を画像データベース12cから選択し、取得する(処理p13)。これに応じて画像データベース12cは、選択された画像の画像データを画像表示処理部11cに返送する(処理p14)。画像表示処理部11cは、受信した画像データを出力装置に表示する(処理p15)。
【0031】
図6を参照して、
図5における処理p3,p4について詳しく説明する。
図6は、楽曲検索処理部11aの処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6において、楽曲検索処理部11aは、デジタルキーボード100から取得したMIDIメッセージ列からNote On情報を取得する(ステップS11)。次に、楽曲検索処理部11aは、クエリ生成に十分な数のNote On情報が取得されたかどうかを確認し(ステップS12)、不十分である場合には(No)、再度Note Onの取得を繰り返す。
【0032】
十分な数のNote On情報が取得されると(Yes)、楽曲検索処理部11aは、Note Onメッセージ列に含まれる音高の遷移から、楽曲検索用データベース12b向けのクエリを生成する(ステップS13)。最後に、楽曲検索処理部11aは、生成したクエリを用いて楽曲検索用データベース12bを検索する(ステップS14)。
【0033】
図7を参照して、
図5における処理p12~p15について詳しく説明する。
図7は、第1の実施形態での画像表示処理部11cの処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7において、画像表示処理部11cは、処理p5で取得した楽曲情報の歌詞情報と、比較対象となる画像の情報との適合度合を示す合致度を含む合致度情報をアライメント処理部11bから取得する(ステップS21)。次に、画像表示処理部11cは、合致度の値を参照し、既定の閾値と比較する(ステップS22)。ここで、合致度が高い(閾値以上である)場合には(Yes)、楽曲検索により取得した楽曲情報における歌詞情報に対応する画像を画像データベース12cから取得する(ステップS23)。
【0034】
なお、画像データベース12cに歌詞情報に対応する画像が複数保持されている場合、コンピュータ200は、演奏中に、対応する複数の画像のうちの2つ以上を順次、或いは交互に表示するように適宜調整してもよい。さらに、画像が動画である場合、コンピュータ200は、残りの演奏推定時間に合わせて最適な長さの動画を選択して表示装置に出力してもよい。ここで最適な長さの動画としては、残りの演奏推定時間と実質的に同等の表示時間の動画が最も好ましい。次に、残りの演奏推定時間以上の動画が好ましい。
【0035】
なお、残りの演奏推定時間より短い表示時間の動画であっても、コンピュータ200は、表示装置に繰り返し表示を指示したり、表示装置での表示速度を遅らせることで動画の表示時間を演奏推定時間と実質的に同等となるように調整してもよい。
【0036】
一方、画像データベース12cに保持されている全ての画像による合致度が全て低い(閾値未満である)場合には、画像表示処理部11cは、予め用意された汎用的画像を画像データベース12cから取得する(ステップS24)。汎用的画像とは、例えば、抽象的な画像であったり、あるいは、今まで表示していた絵柄とタッチやイメージが似ている別の画像など、どのような曲想にも対応する画像にするとよい。特に、演奏開始直後であって最初の検索が終了するまでは合致度が低くならざるを得ないので、どのような曲でもそれなりにマッチするような画像を予め設定しておくとよい。
【0037】
次に、画像表示処理部11cは、取得した画像を画像を表示装置(プロジェクター300)に出力して表示するよう指示する(ステップS25)。そして、画像表示処理部11cは、最後の打鍵・離鍵からの経過時間をカウントアップし、カウント値を既定の値と比較するなどの処理により、演奏が終了したか否かを判断する(ステップS26)。演奏終了が判断されると(Yes)、画像表示処理部11cは、画像の表示を停止して(ステップS27)処理を終了する。
【0038】
一方、演奏の継続中が判断されると(ステップS26でNo)、画像表示処理部11cは次の画像を表示するか、つまり、画像の切り替えタイミングか否かを判断する(ステップS28)。画像切り替えのタイミングでなければ(No)、処理手順は表示装置への表示を継続した状態でステップS26に戻ってループする。
【0039】
ステップS28において、画像の切り替えのタイミングと判断されると(Yes)、画像切替時のエフェクト処理(フェードなど)を適宜設定し(ステップS29)、処理手順はステップS22に戻って次の画像の選択からの手順が繰り返される。
【0040】
図8を参照して、
図5における処理p6~p9について詳しく説明する。
図8は、アライメント処理部11bの処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8において、アライメント処理部11bは、楽曲検索処理部11aによる楽曲の検索結果としてヒットした楽曲の、楽曲情報を取得する(ステップS41)。また、アライメント処理部11bは、現時点までの演奏で発生したMIDIデータ列に含まれるNote情報を取得する(ステップS42)。これらの情報に基づいて、アライメント処理部11bはアライメントデータベース12dを検索し(ステップS43)、楽曲のメロディ情報を取得する。
【0041】
そして、アライメント処理部11bは、取得したNote情報とメロディ情報との合致度を計算し(ステップS44)、合致度情報を算出(導出)する。なお演奏開始直後は、合致度情報として低い値を返すようにしても良い。得られた合致度情報は、画像表示処理部11cに渡される(ステップS45)。ここで、合致度が閾値未満であれば(ステップS46でYes)、アライメント処理部11bは、楽曲検索処理部11aに楽曲の再検索を依頼する(ステップS47)。
【0042】
図9は、
図8のステップS44における合致度の計算について説明するための図である。例えば、DPマッチング法により楽曲情報とメロディラインとの合致度を計算することができる。
【0043】
図9において、横軸は演奏のNote情報でありa,b,cは音高を示す。縦軸はアライメントデータベース12dから取得したメロディ情報であり、同様にa,b,cは音高を示す。状態は、左下の始状態から右上の終状態へと遷移してゆく。隣り合う状態へのパスごとに、各状態の累積値が設定される。
【0044】
縦軸と横軸が異なる状態(音高)の場合、ペナルティ加算される
図9では、横方向の遷移で状態が同じならば2点、異なるならば20点が加算される。縦方向の遷移で状態が同じならば2点、異なるならば20点が加算される。斜め方向の遷移では、状態が同じならば1点、異なるならば10点が加算される。
【0045】
図9の右端の囲み部分(7フレーム目)を現在時刻とすると、7音目での最小スコアは14であり、この値は、基本的に演奏とメロディ情報とが似ているほど小さくなる。そこで、式(1)のようにフレーム数で正規化することにより、合致度を簡易的に計算することができる。加えて、最小値を記録した縦軸の位置により、楽曲が演奏されている凡その位置(場所)を知ることもできる。
【0046】
【0047】
以上説明したように、第1の実施形態では、演奏で生じる演奏データからクエリを生成し、楽曲検索用データベースを検索することにより楽曲情報を取得する。また、楽曲情報に対応するメロディ情報をアライメントデータベースから取得し、アライメント処理により、楽曲情報とメロディラインとの合致度を継続的に計算する。そして、合致度が低下すると、楽曲検索用データベースを再検索することにより再度、演奏にマッチする曲を特定する。このように、演奏が続いている限り、演奏と楽曲との合致の度合いが常に計算され続けるので、曲にマッチする画像データを常時、取得できるようになる。
【0048】
上述のように、合致度が低くなった場合、これまでの演奏における合致度を加味して総合的に適合する曲を取得してもよいし、あるフレーズから極端に合致度が低くなった場合、これまでの演奏の合致度をリセットして、低くなった時点から合致度を算出(導出)するようにしてもよい。後者の場合、演奏を中断することなく、メドレーのように曲が次々と変わっていっても、適切な画像が常に選択されて画像表示されるようになる。
【0049】
既存の技術では、一旦、曲が特定されてしまうと途中での修正が効かず、曲に応じた画像に違和感を生じさせる場合があった。つまり、一度検索を終えて、合致度の高い曲が確定してしまうと、続けて違う曲を演奏したとしても、合致度が高い曲と関連したイラストが続けて表示されてしまう場合があった。これに対し第1の実施形態の技術によれば、そのようなミスマッチを生じる恐れがない。つまり第1の実施形態によれば、演奏と表示画像とが一致しなくなるとただちに修正され、また、ミスマッチが目立たないような画像を選択することもできる。また、演奏している楽曲と似たようなフレーズの別の楽曲があり、合致度を算出する対象がこの別の曲であるために、演奏が進むたびに合致度が変わってくる場合でも上述と同様な効果を奏することができる。
【0050】
これらのことから第1の実施形態によれば、演奏にマッチする画像を高い精度で提示できるようになり、これにより、演奏することの楽しさをさらに高めたプログラム、情報処理装置、情報処理方法、および、演奏データ処理システムを提供することが可能になる。
【0051】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、合致度がしきい値以上と判定された後、引き続き演奏中に合致度が低くなった場合に、演奏にマッチする画像データを画像データベース12cから再検索する例について説明した。第1の実施形態では、例えば最初に曲「赤とんぼ」の演奏が認識されると、画像表示装置は赤とんぼに関係する絵を表示する。また、最初に曲「雪の降るまちを」の演奏が認識されると、画像表示装置は、例えば雪が降っている街並み等の画像を表示する。そして、演奏が終了するまで同じパターンの画像を表示し続けることもあり得る。
【0052】
しかし、演奏とともにフレーズが進行していくと、歌詞の内容や曲調(曲の明るさ、暗さ等の雰囲気や短調、長調を含む)が変化することがある。つまり、同じ曲であっても、歌詞の内容、あるいは曲調が変わることにより、求められる画像が変わっていくことがある。曲「赤とんぼ」や曲「雪の降るまちを」の演奏においても、フレーズの進行とともに求められる画像が変わっていくことがある。このようなケースでも、演奏しているフレーズに対してより適合した画像を表示することが好ましい。
【0053】
そこで、第2の実施形態では、楽曲データにおける歌詞内容を含む歌詞情報の変化や曲調の変化に応じて、同一楽曲の演奏中に適切なタイミングで歌詞情報や曲調に合った表示画像に切り替えることを実現する。第2の実施形態において、第1実施形態と同様な部分は適宜説明を省略する。
【0054】
図10は、第2の実施形態での画像表示処理部11cの処理手順の一例を示すフローチャートである。
図2において、画像表示処理部11cは、処理p5で取得した楽曲情報における、楽曲を構成する複数のフレーズから、演奏予定順に1つずつフレーズを抽出する。そして、画像表示処理部11cは、抽出された1つのフレーズの歌詞情報と曲調情報との少なくともいずれか一方と、画像との適合度合を示す合致度を含む合致度情報をアライメント処理部11bから順次取得する(ステップS21)。ここで、歌詞情報は、例えば歌詞の内容に応じたデジタル値のデータを含む。曲調情報は、曲調に応じたデジタル値のデータを含む。
【0055】
次に、画像表示処理部11cは、フレーズごとの合致度の値を参照し、既定の閾値と比較する(ステップS22)。ここで、楽曲検索により取得した楽曲情報における楽曲を構成する各フレーズに対する合致度がそれぞれ高い(閾値以上である)画像が画像データベース12cにあった場合(Yes)、画像表示処理部11cは、各フレーズに対応する画像を画像データベース12cから順次取得する(ステップS30)。
【0056】
ここで、ある1つのフレーズに合致度の高い画像データが画像データベース12cに複数あった場合、コンピュータ200は、その中からランダムに選ばれた画像を表示するよう指示してもよい。あるいは、過去の表示履歴を読み出し、直近に表示した画像を除いた画像の中から選択して表示するよう指示してもよい。
【0057】
一方、ステップS22において、合致度が全て低い(閾値未満である)場合には、画像表示処理部11cは、予め用意された汎用的画像を画像データベース12cから取得する(ステップS24)。そして画像表示処理部11cは、ステップS30またはステップS24において取得した画像を画像を、表示装置(プロジェクター300)に出力して表示するよう指示する(ステップS25)。その後、第1の実施形態と同様にステップS26~ステップS29の処理手順が実行される。
【0058】
図11は、きらきら星の譜例を示し、第2の実施形態では、この譜例を表現する楽曲データを例えば
図12のような構造とする。
【0059】
図12は、楽曲データ13aの一例を示す図である。
図11の譜例に対応する楽曲データ13a(
図4)は、小節のそれぞれの拍ごとに、音符の音高と音長、および微妙なタイミングを示すティック(tick)が対応付けて記録されている。また、メタイベントとしてテンポ、拍子を含み、さらにフレーズ番号が埋め込まれている。
【0060】
第2の実施形態ではさらに、楽曲データ13aのフレーズ番号に対応する領域に、フレーズ単位の歌詞情報及び曲調情報の少なくとも一方に合わせてフレーズを演奏中に表示すべき画像の画像番号(識別子)を追加して登録する。そして、演奏の進行に対応する位置の画像番号をキーとして画像データベース12cから適合する画像を検索する。検索の結果、特定された画像データに基づいた画像を、演奏中であって且つ画像番号に合わせたタイミング(フレーズと次のフレーズとの切り替えタイミング)で表示装置に表示させる。
【0061】
図13は、第2の実施形態での画像表示処理部11cの処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7との比較において異なる部分についてのみ説明する。
図13のステップS26までは第1の実施形態と同様の手順が実施される。ステップS26で演奏の継続中が判断されると(No)、画像表示処理部11cは次の画像を表示するか、つまり、次のフレーズに移行する際に次のフレーズに適合した画像に切り替えるタイミングか否かを判断する(ステップS31)。画像表示処理部11cは、検索された楽曲の楽曲データ13aの進行と対応付けてステップS31の判断を実行する。
【0062】
つまり、演奏により次々に発生するMIDIデータ列と、楽曲データ13aとの対応付けにより、例えば(現在、7小節目の1拍目冒頭に差し掛かった)ということが判断できる。
図12を参照すると、この位置にはフレーズP4とともに、画像番号G4が対応付けられている。そこで、コンピュータ200は、フレーズP4を演奏する前に、画像番号G4に対応する画像を画像表示処理部11cから取得する(ステップS32)。そして、画像に必要なエフェクト処理を施したのち(ステップS29)、フレーズP4の演奏開始タイミングに合わせて画像番号G4に対応する画像を表示装置の表示を開始させる。つまり演奏している楽曲を特定することによって、この楽曲における、少なくとも1つ以上のフレーズ単位に合わせた画像を、演奏中に発生する、この少なくとも1つ以上のフレーズ単位の切り替えタイミングに表示開始させることができる。
【0063】
以上説明したように、第2の実施形態では、楽曲データ13aに、画像の切り替えタイミングと、表示するイラストを示す識別子(番号やファイル名など)とを予め格納し、入力された演奏データと楽曲データ13aとのタイミングとを照合し、両者のタイミングが合致した時点で、画像を切り替えるようにした。このようにすることで、最適な画像を最適なタイミングで切り替えることができるようになる。
【0064】
楽曲データとしても使用されるレッスンデータには、
図12に示されるように、フレーズデータが定義されているものも多い。そこで、第2の実施形態のように、フレーズデータとともに画像データの番号を楽曲データに埋め込んでおくことで、フレーズ切り替えのタイミングで適切な画像に切り替えることができる。
【0065】
また、歌詞も、フレーズ位置に応じて内容に区切りのあるものが多い。そこで、楽曲データ13aに画像の切り替え情報を含めることで、歌詞の細かいタイミングに合わせた最適な画像表示が可能になる。さらに、画像の切り替えのタイミングをさらに細かくしたい場合には、例えば未定義のコントロールチェンジなどを使うことも可能である。
【0066】
これらのことから第2の実施形態によっても、演奏にマッチする画像を高い精度で提示できるようになり、これにより、演奏することの楽しさをさらに高めたプログラム、情報処理装置、情報処理方法、および、演奏データ処理システムを提供することが可能になる。
【0067】
なお、本発明は、具体的な実施形態に限定されるものではない。例えば実施形態では、実施形態に係わる処理部(ハードウェア)や機能(アプリケーション(ソフトウェア))をコンピュータ200に実装する例を開示した。コンピュータ200に代えて、デジタルキーボード100に実施形態に係わる処理部や機能を実装してもよい。同様に、コンピュータ200が表示手段を有していれば、画像表示装置300の代替として、コンピュータ200を表示装置として適用することができる。また、デジタルキーボード100が表示手段を有していれば、画像表示装置300の代替として、デジタルキーボード100を適用することができる。
【0068】
上記実施形態では、計算処理によって合致度を導出したが、これに限らない。例えば、演奏中の演奏曲が、楽曲検索用データベース12cに保持されている複数の楽曲のいずれかに適合するかどうかが判断できるテーブル、すなわち、演奏中の内容を示すデータ値を入力することによって、適合する楽曲を自動的に抽出するテーブルを用いることでも導出できる。
【0069】
さらに、本発明の技術的範囲には、本発明の目的が達成される範囲での様々な変形や改良などが含まれるものであり、そのことは当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0070】
11…プロセッサ11a…楽曲検索処理部11b…アライメント処理部11c…画像表示処理部12a…プログラム12b…楽曲検索用データベース12c…画像データベース12d…アライメントデータベース13…RAM13a…楽曲データ14…内部バス15…入出力インタフェース16…入力部17…通信部21…出力部100…デジタルキーボード200…コンピュータ201…操作部300…プロジェクター400…MIDIインタフェース500…映像インタフェース。