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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046356
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】成形機
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/20 20060101AFI20240327BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20240327BHJP
   B22C 23/02 20060101ALI20240327BHJP
   B22D 17/26 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B22D17/20 D
B22D17/22 A
B22C23/02 C
B22D17/26 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151685
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】594124421
【氏名又は名称】新日本金属工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】日野 耕一郎
【テーマコード(参考)】
4E094
【Fターム(参考)】
4E094CC55
(57)【要約】
【課題】スプレー装置と干渉せずに金型を交換可能な成形機を提供する。
【解決手段】成形機は、支持面を斜め上方に向けた状態で載置面に載置される傾斜フレームと、支持面に支持されて、金型を開閉及び型締する型締装置と、支持面の型締装置より上方側に支持されて、キャビティに成形材料を射出する射出装置と、型開された金型の金型面に流体を噴射するスプレー装置とを備える。型締装置は、支持面に固定されて、固定側金型を支持する固定ダイプレートと、支持面の固定ダイプレートより下方側で可動側金型を支持し、固定側金型に対して可動側金型を接離させる向きに移動する可動ダイプレートとを備える。スプレー装置は、上下方向から見て、型開された固定側金型及び可動側金型の間の金型間領域に重なる使用姿勢と、上下方向から見て、金型間領域から外れる退避姿勢とに姿勢変化が可能に構成されている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持面を斜め上方に向けた状態で載置面に載置される傾斜フレームと、
前記支持面に支持されて、固定側金型及び可動側金型を開閉及び型締する型締装置と、
前記支持面の前記型締装置より上方側に支持されて、前記型締装置によって型締された前記固定側金型及び前記可動側金型の内部に形成されたキャビティに成形材料を射出する射出装置と、
型開された前記固定側金型及び前記可動側金型の金型面に流体を噴射するスプレー装置とを備える成形機であって、
前記型締装置は、
前記支持面に固定されて、前記固定側金型を支持する固定ダイプレートと、
前記支持面の前記固定ダイプレートより下方側で前記可動側金型を支持し、前記固定側金型に対して前記可動側金型を接離させる向きに移動する可動ダイプレートとを備え、
前記スプレー装置は、
上下方向から見て、型開された前記固定側金型及び前記可動側金型の間の金型間領域に重なる使用姿勢と、
上下方向から見て、前記金型間領域から外れる退避姿勢とに姿勢変化が可能に構成されていることを特徴とする成形機。
【請求項2】
前記スプレー装置は、
前記固定ダイプレートの上方に立設されたスタンドと、
前記スタンドの上端に支持されて、圧縮された流体を貯留するスプレー本体と、
前記スプレー本体に貯留された流体を噴射するノズルと、
前記可動ダイプレートの移動方向及び上下方向に直交する第1回動軸周りに、前記スタンドを回動させる第1駆動源とを備え、
前記スプレー装置は、
前記可動ダイプレートの移動方向に直交する方向に前記スタンドを延設した前記使用姿勢と、
前記使用姿勢から前記スタンドを前記可動ダイプレートと反対側に回動させた前記退避姿勢とに姿勢変化することを特徴とする請求項1に記載の成形機。
【請求項3】
前記スプレー装置は、前記スタンドの延設方向に延びる第2回動軸周りに、前記スタンドに対して前記スプレー本体を回動させる第2駆動源を備え、
前記スプレー装置は、
前記可動ダイプレートの移動方向に直交する方向に前記スタンドを延設し、且つ前記金型間領域に進入可能な位置に前記ノズルを保持した前記使用姿勢と、
前記使用姿勢から前記第2回動軸周りに前記スプレー本体を回動させて、上下方向から見て前記金型間領域から外れた位置に前記ノズルを保持する中間姿勢と、
前記中間姿勢から前記第1回動軸周りに前記可動ダイプレートと反対側に前記スタンドを回動させた前記退避姿勢とに姿勢変化することを特徴とする請求項2に記載の成形機。
【請求項4】
前記第1駆動源は、前記スタンドに接続されたワイヤを巻取り及び繰出すウインチであり、
前記第2駆動源は、エアシリンダであることを特徴とする請求項3に記載の成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形材料を金型内に射出して成形品を成形する成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、固定側金型及び可動側金型を開閉及び型締する型締装置と、型締装置によって型締された固定側金型及び可動側金型の内部に形成されたキャビティに成形材料を射出する射出装置とを備える成形機が知られている。
【0003】
上記構成の成形機において、射出装置が成形材料を射出する際にエアーを巻き込んで、鋳肌欠陥や鋳巣欠陥を引き起こすという課題がある。そこで、特許文献1~4には、このような課題を解決することを目的として、射出装置が型締装置の斜め上方に位置するように傾斜した成形機が開示されている。
【0004】
また、特許文献5には、固定側金型及び可動側金型の金型面に離型剤を噴射するスプレー装置が開示されている。特許文献5に記載のスプレー装置は、型開された固定側金型及び可動側金型の間に進入させたノズルから離型剤を噴射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭53-001130号公報
【特許文献2】特開2001-105115号公報
【特許文献3】特開2003-039148号公報
【特許文献4】実開昭63-127748号公報
【特許文献5】特開2010-099720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~4のように傾斜した成形機に、特許文献5のスプレー装置を取り付けると、クレーンで金型を吊って交換する際に、スプレー装置に干渉するという新たな課題を生じる。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、射出装置が型締装置の斜め上方に位置するように傾斜した成形機において、スプレー装置と干渉せずに金型を交換する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するため、支持面を斜め上方に向けた状態で載置面に載置される傾斜フレームと、前記支持面に支持されて、固定側金型及び可動側金型を開閉及び型締する型締装置と、前記支持面の前記型締装置より上方側に支持されて、前記型締装置によって型締された前記固定側金型及び前記可動側金型の内部に形成されたキャビティに成形材料を射出する射出装置と、型開された前記固定側金型及び前記可動側金型の金型面に流体を噴射するスプレー装置とを備える成形機であって、前記型締装置は、前記支持面に固定されて、前記固定側金型を支持する固定ダイプレートと、前記支持面の前記固定ダイプレートより下方側で前記可動側金型を支持し、前記固定側金型に対して前記可動側金型を接離させる向きに移動する可動ダイプレートとを備え、前記スプレー装置は、上下方向から見て、型開された前記固定側金型及び前記可動側金型の間の金型間領域に重なる使用姿勢と、上下方向から見て、前記金型間領域から外れる退避姿勢とに姿勢変化が可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、射出装置が型締装置の斜め上方に位置するように傾斜した成形機において、スプレー装置と干渉せずに金型を交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るダイカストマシンの側面図である。
図2】型締装置の概略構成図である。
図3】上り方向の上流側からロック機構を見た図である。
図4】型開閉シリンダに対して作動油を給排する油圧回路の概略図である。
図5】射出装置の概略構成図である。
図6】射出装置周辺の作動油の流路の拡大図である。
図7】ダイカストマシンのハードウェア構成図である。
図8】可動ダイプレートロック処理のフローチャートである。
図9】型閉処理のフローチャート、及び型閉処理における流量制御弁の流量の推移を示す図である。
図10】使用姿勢のスプレー装置を示す図である。
図11】中間姿勢のスプレー装置を示す図である。
図12】退避姿勢のスプレー装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係るダイカストマシン10の側面図である。ダイカストマシン10は、金型内に溶湯金属を射出して、成形品を製造する装置である。但し、成形機の具体例はダイカストマシン10に限定されず、金型内に樹脂(成形材料)を射出して、成形品を成形する射出成形機でもよい。図1に示すように、ダイカストマシン10は、傾斜フレーム11と、型締装置20と、射出装置30と、作動油供給ユニット40とを主に備える。
【0012】
傾斜フレーム11は、側面視したときに、直角三角形の外形を呈する。そして、傾斜フレーム11は、直角三角形の斜辺に相当する部分(以下、「支持面12」と表記する)を斜め上方に向けた状態で、載置面Gに載置される。通常、載置面Gは水平面とされる。そして、支持面12は、載置面Gに対して所定の角度(例えば、30°)傾斜している。但し、載置面Gに対する支持面12の傾斜角度は、前述の例に限定されない。また、載置面Gに対する支持面12の傾斜角度は、固定でもよいし、可変でもよい。
【0013】
型締装置20及び射出装置30は、傾斜フレーム11の支持面12に支持されている。型締装置20は、射出装置30より斜め下方において、支持面12に支持されている。射出装置30は、型締装置20より斜め上方において、支持面12に支持されている。一方、作動油供給ユニット40は、傾斜フレーム11と異なる位置において、載置面Gに設置されている。
【0014】
型締装置20は、金型21の開閉及び型締を行う。具体的には、型締装置20は、固定側金型21aを支持する固定ダイプレート22aと、可動側金型21bを支持する可動ダイプレート22bとを主に備える。固定ダイプレート22aは、射出装置30より斜め下方で且つ可動ダイプレート22bより斜め上方において、支持面12に固定されている。可動ダイプレート22bは、固定ダイプレート22aより斜め下方において、支持面12に支持されている。固定側金型21a及び可動側金型21bは、支持面12の傾斜方向において、互いに対面して配置されている。
【0015】
また、可動ダイプレート22bは、固定側金型21aに対して可動側金型21bを接離させる向きに、支持面12に沿って移動可能に構成されている。以下、可動側金型21bを固定側金型21aに近接させる方向(図1の右上方向)を「上り方向」と表記し、可動側金型21bを固定側金型21aから離間させる方向(図1の左下方向)を「下り方向」と表記する。
【0016】
図2は、型締装置20の概略構成図である。図2に示すように、型締装置20は、固定側金型21aに対して可動側金型21bを接離させる(換言すれば、金型21を開閉及び型締する)構成要素として、テールストック23と、タイバー24a、24bと、駆動ナット25a、25bと、駆動モータ26と、トグルリンク機構27と、型開閉シリンダ28と、ロック機構29とをさらに備える。
【0017】
テールストック23は、可動ダイプレート22bより斜め下方において、支持面12に支持されている。また、テールストック23は、支持面12に沿って上り方向及び下り方向に移動可能に構成されている。タイバー24a、24bは、固定ダイプレート22a及びテールストック23の間に、支持面12と平行に延設されている。また、タイバー24a、24bは、可動ダイプレート22bに挿通されている。そして、可動ダイプレート22bは、タイバー24a、24bにガイドされて、上り方向及び下り方向に移動する。
【0018】
タイバー24a、24bのテールストック23側の端部には、外周面にネジ部24c、24dが形成されている。タイバー24a、24bのネジ部24c、24dは、テールストック23を貫通して、可動ダイプレート22bと反対側に突出している。そして、テールストック23から貫通したネジ部24c、24dには、駆動ナット25a、25bが螺合されている。駆動モータ26は、駆動ナット25a、25bを回転させる駆動力を発生させる。
【0019】
駆動モータ26が第1方向に回転すると、駆動ナット25a、25bがネジ部24c、24dに沿って上り方向に移動する。これにより、可動ダイプレート22b、テールストック23、トグルリンク機構27、型開閉シリンダ28、及びロック機構29が一体となって上り方向に移動する。一方、駆動モータ26が第1方向と逆向きの第2方向に回転すると、駆動ナット25a、25bがネジ部24c、24dに沿って下り方向に移動する。これにより、可動ダイプレート22b、テールストック23、トグルリンク機構27、型開閉シリンダ28、及びロック機構29が一体となって下り方向に移動する。
【0020】
トグルリンク機構27は、一端が可動ダイプレート22bに接続され、他端がテールストック23に接続されている。そして、トグルリンク機構27は、可動ダイプレート22b及びテールストック23の間において、伸縮可能に構成されている。型開閉シリンダ28は、テールストック23に支持されている。型開閉シリンダ28は、作動油供給ユニット40から作動油が供給されることによって、トグルリンク機構27を伸縮させる。型開閉シリンダ28に作動油を供給する油圧回路については、図4を参照して後述する。
【0021】
トグルリンク機構27が伸長すると、テールストック23に対して可動ダイプレート22bが上り方向に移動する。これにより、可動側金型21bが固定側金型21aに当接(型閉)する。可動ダイプレート22bを上り方向に移動させる向きの圧力がさらに加わると、固定側金型21a及び可動側金型21bが型締される。一方、トグルリンク機構27が収縮すると、テールストック23に対して可動ダイプレート22bが下り方向に移動する。これにより、可動側金型21bが固定側金型21aから離間(型開)する。
【0022】
テールストック23及びタイバー24a、24bは、例えば、FCD450、SCM435、またはこれらの組み合わせで形成される。一方、駆動ナット25a、25bは、例えば、摺動するテールストック23及びタイバー24a、24bより硬度の低い材料(例えば、HBSC2)で形成される。但し、テールストック23、タイバー24a、24b、及び駆動ナット25a、25bを形成する材料の組み合わせは、前述の例に限定されない。
【0023】
図3は、上り方向の上流側(すなわち、左下側)からロック機構29を見た図である。ロック機構29は、重力によって可動ダイプレート22bが下り方向に移動するのを阻止する役割を担う。より詳細には、ロック機構29は、図3(A)に示す阻止状態と、図3(B)に示す許容状態とに切り替え可能に構成されている。図2及び図3に示すように、本実施形態に係るロック機構29は、ラチェット部材29aと、被係止ブロック29bと、エアシリンダ29cと、リミットスイッチ29dとを主に備える。
【0024】
ラチェット部材29aは、可動ダイプレート22bの移動方向に延設された長尺棒状の部材である。ラチェット部材29aは、可動ダイプレート22bに取り付けられて、可動ダイプレート22bと共に移動する。ラチェット部材29aの上面には、ラチェット歯29e(係止部材)が形成されている。ラチェット歯29eは、可動ダイプレート22bの移動方向に離間した複数の位置に形成されている。但し、ラチェット歯29eは、1つだけでもよい。そして、ラチェット歯29eは、第1面29f及び第2面29gを有する。
【0025】
第1面29fは、ラチェット歯29eの上り方向の下流側(図2の右上側)の面である。第1面29fは、下り方向に向かって上り傾斜となっている。換言すれば、第1面29fの傾斜角度は、可動ダイプレート22bが上り方向に移動する際に、被係止ブロック29bが乗り上げ可能な角度に設定されている。
【0026】
第2面29gは、ラチェット歯29eの下り方向の下流側(図2の左下側)の面である。第2面29gは、可動ダイプレート22bの移動方向に直交している。但し、第2面29gの傾斜角度は、前述の例に限定されず、可動ダイプレート22bが下り方向に移動しようとする際に、被係止ブロック29bを係止可能な角度であればよい。
【0027】
図3に示すように、被係止ブロック29bは、概ね直方体形状の外形を呈する。被係止ブロック29bは、可動ダイプレート22bの移動方向に延びる回動軸29h周りに回動可能に、テールストック23に支持されている。エアシリンダ29cは、回動軸29hの一方側(図3の左端)で且つ被係止ブロック29bの上方において、テールストック23に支持されている。エアシリンダ29cは、圧縮空気が給排されることによって、上下方向に伸縮する。リミットスイッチ29dは、エアシリンダ29cが伸長したときの被係止ブロック29bを検知する。
【0028】
図3(A)に示すように、エアシリンダ29cが収縮すると、被係止ブロック29bが時計回りに回転する。これにより、被係止ブロック29bの一端が上昇し、他端が下降する。その結果、被係止ブロック29bの他端(被係止部材)は、可動ダイプレート22bの移動方向において、ラチェット歯29eに接触し得る位置に配置される。
【0029】
このとき、可動ダイプレート22bが上り方向に移動すると、被係止ブロック29bの他端がラチェット歯29eの第1面29fに乗り上げて、被係止ブロック29bが回動軸29h周りに反時計回りに回動する。その結果、可動ダイプレート22bの上り方向の移動が許容される。一方、可動ダイプレート22bが下り方向に移動しようとすると、被係止ブロック29bの他端がラチェット歯29eの第2面29gに当接して係止される。その結果、可動ダイプレート22bの下り方向の移動が阻止される。
【0030】
一方、図3(B)に示すように、エアシリンダ29cが伸長すると、被係止ブロック29bが反時計回りに回転する。これにより、被係止ブロック29bの一端が下降し、他端が上昇する。その結果、被係止ブロック29bの他端は、ラチェット歯29eより上方に退避する。その結果、可動ダイプレート22bが上り方向及び下り方向のどちらに移動しても、被係止ブロック29bの他端はラチェット歯29eに接触しない。すなわち、可動ダイプレート22bは、上り方向及び下り方向のどちらにも移動できる。
【0031】
すなわち、図3(A)に示すロック機構29の状態は、可動ダイプレート22bの上り方向の移動を許容し且つ下り方向の移動を阻止する阻止状態の一例である。また、図3(B)に示すロック機構29の状態は、可動ダイプレート22bの上り方向及び下り方向に移動を許容する許容状態の一例である。そして、リミットスイッチ29dは、ロック機構29が阻止状態になったことを検知して、検知結果を示す検知信号を後述する制御装置60(図7参照)に出力する。
【0032】
図4は、型開閉シリンダ28に対して作動油を給排する油圧回路の概略図である。図4に示すように、ダイカストマシン10は、型開閉シリンダ28に対して作動油を給排する油圧部品として、方向切替弁51と、流量制御弁52とを主に備える。
【0033】
方向切替弁51は、型開閉シリンダ28に対する作動油の供給方向を切り替える。方向切替弁51は、制御装置60の制御に従って、上り位置Aと、下り位置Bと、遮断位置Cとに切り替え可能な電磁切替弁である。
【0034】
上り位置Aは、作動油供給ユニット40の油圧ポンプ42から圧送された作動油を型開閉シリンダ28のヘッド室に供給し、型開閉シリンダ28のロッド室から排出された作動油を作動油供給ユニット40の作動油タンク41に還流させる位置である。すなわち、方向切替弁51を上り位置Aに切り替えると、型開閉シリンダ28が伸長する。これにより、可動ダイプレート22bが上り方向に移動する。
【0035】
下り位置Bは、作動油供給ユニット40の油圧ポンプ42から圧送された作動油を型開閉シリンダ28のロッド室に供給し、型開閉シリンダ28のヘッド室から排出された作動油を作動油供給ユニット40の作動油タンク41に還流させる位置である。すなわち、方向切替弁51を下り位置Bに切り替えると、型開閉シリンダ28が収縮する。これにより、可動ダイプレート22bが下り方向に移動する。
【0036】
遮断位置Cは、油圧ポンプ42によって圧送された作動油の型開閉シリンダ28への流入と、型開閉シリンダ28からの作動油の排出との両方を遮断する位置である。換言すれば、遮断位置Cは、油圧ポンプ42及び型開閉シリンダ28の間と、型開閉シリンダ28及び作動油タンク41の間とを遮断する位置である。すなわち、遮断位置Cは、型開閉シリンダ28のヘッド室に接続されるポート、型開閉シリンダ28のロッド室に接続されるポート、作動油タンク41に接続されるポート、及び油圧ポンプ42に接続されるポートの全てをブロックする、所謂「オールポートブロック」である。
【0037】
流量制御弁52は、油圧ポンプ42から方向切替弁51に至る流路上に配置されている。流量制御弁52は、制御装置60の制御に従って、油圧ポンプ42から方向切替弁51への作動油の流量を制御(増減)する。より詳細には、流量制御弁52は、方向切替弁51を通じて油圧ポンプ42から型開閉シリンダ28に供給される単位時間当たりの作動油の量を制御(増減)する。方向切替弁51及び流量制御弁52を制御する具体的な処理は、図8及び図9を参照して後述する。
【0038】
図5は、射出装置30の概略構成図である。図6は、射出装置30周辺の作動油の流路の拡大図である。射出装置30は、型締された金型21内に溶湯金属(成形材料)を射出する。射出装置30は、射出スリーブ31(スリーブ)と、プランジャ32と、射出シリンダ33とを主に備える。
【0039】
射出スリーブ31は、固定ダイプレート22aに取り付けられた円筒形状の部材である。射出スリーブ31の先端部は、型締された金型21の内部空間(以下、「キャビティ」と表記する。)に連通している。また、射出スリーブ31は、固定側金型21aから上り方向に延設されている。そして、射出スリーブ31には、ラドル(図示省略)によって供給された溶湯金属が貯留される。
【0040】
プランジャ32は、射出スリーブ31内に進退可能に収容されている。プランジャ32が下り方向に前進すると、射出スリーブ31に貯留された溶湯金属がキャビティに供給される。一方、プランジャ32が上り方向に後退すると、ラドルから供給される溶湯金属を貯留する空間が射出スリーブ31内に形成される。
【0041】
射出シリンダ33は、作動油が給排されて伸縮することによって、プランジャ32を進退させる。射出シリンダ33のヘッド室に作動油が供給され且つロッド室から作動油が排出されると、射出シリンダ33が伸長する。これにより、射出スリーブ31内でプランジャ32が前進する。一方、射出シリンダ33のロッド室に作動油が供給され且つヘッド室から作動油が排出されると、射出シリンダ33が収縮する。これにより、射出スリーブ31内でプランジャ32が後退する。
【0042】
ダイカストマシン10は、射出シリンダ33に対して作動油を給排する油圧部品として、アキュームレータ34と、チェックバルブ35と、パイロットバルブ36と、開閉バルブ37、39と、給排制御バルブ38とを主に備える。パイロットバルブ36、開閉バルブ37、39、及び給排制御バルブ38は、制御装置60の制御に従って流路の状態を切り替える電磁切替弁である。
【0043】
アキュームレータ34は、開閉バルブ39を通じて油圧ポンプ42から供給された作動油を圧縮した状態で貯留(蓄圧)し、圧縮された作動油を射出シリンダ33のヘッド室及びチェックバルブ35のパイロットポートに供給する。チェックバルブ35は、アキュームレータ34から射出シリンダ33のヘッド室に至る流路を開閉する。パイロットバルブ36は、アキュームレータ34からチェックバルブ35のパイロットポートに作動油を供給する供給位置と、チェックバルブ35のパイロットポートから作動油タンク41に作動油を還流させる還流位置とに切り替え可能に構成されている。
【0044】
開閉バルブ37は、射出シリンダ33のヘッド室から作動油タンク41に至る流路を開閉する。給排制御バルブ38は、油圧ポンプ42から圧送された作動油を射出シリンダ33のロッド室に供給する供給位置と、射出シリンダ33のロッド室から排出された作動油を作動油タンク41に還流させる還流位置とに切り替え可能に構成されている。開閉バルブ39は、油圧ポンプ42からアキュームレータ34に至る流路を開閉する。
【0045】
射出シリンダ33を伸長させるとき、パイロットバルブ36を供給位置にし、開閉バルブ37に流路を閉塞させ、給排制御バルブ38を還流位置にする。これにより、チェックバルブ35が流路を開放して、アキュームレータ34から射出シリンダ33のヘッド室に作動油が供給される。また、給排制御バルブ38を通じて射出シリンダ33のロッド室から作動油タンク41に作動油が還流する。
【0046】
一方、射出シリンダ33を収縮させるとき、パイロットバルブ36を還流位置にし、開閉バルブ37に流路を開放させ、給排制御バルブ38を供給位置にする。これにより、チェックバルブ35が流路を閉塞して、アキュームレータ34から射出シリンダ33のヘッド室への作動油の供給が停止する。また、給排制御バルブ38を通じて油圧ポンプ42から射出シリンダ33のロッド室に作動油が供給される。さらに、開閉バルブ37を通じて射出シリンダ33のヘッド室から作動油タンク41に作動油が還流する。
【0047】
また、図6に示すように、射出装置30には、スペーサ50が取り付けられている。スペーサ50は、射出装置30に取り付けられたときに、傾斜フレーム11の傾斜角度を相殺して、上面が載置面Gと平行になる形状になっている。そして、アキュームレータ34は、載置面Gと平行なスペーサ50の上面(すなわち、水平面)に支持されている。
【0048】
作動油供給ユニット40は、型開閉シリンダ28及び射出シリンダ33に対して作動油を給排し、アキュームレータ34に作動油を供給するのに必要な油圧部品をユニット化したものである。作動油供給ユニット40は、前述した作動油タンク41及び油圧ポンプ42の他に、油圧ポンプ42を駆動するポンプモータ43、作動油から異物を除去するオイルクリーナ、作動油を冷却するオイルクーラなどを含む。
【0049】
油圧アクチュエータ(すなわち、型開閉シリンダ28、射出シリンダ33、及びアキュームレータ34)を作動油供給ユニット40に接続する流路は、鋼管44と、可撓性のホース45とを組み合わせて構成される。より詳細には、流路のうちの作動油供給ユニット40側の端部は、ホース45で構成されている。
【0050】
ここで、射出シリンダ33を伸長させる際、射出シリンダ33のロッド室からは、瞬間的に高速で作動油が排出される為、サージ圧の発生が予測される。そこで、図5及び図6に示すように、射出シリンダ33のロッド室から作動油タンク41に至る流路(換言すれば、射出シリンダ33のロッド室から排出された作動油を作動油タンク41に還流させる流路)には、サージ吸収シリンダ46、47が取り付けられている。
【0051】
サージ吸収シリンダ46、47は、流路上を流れる作動油が当該流路に連通する空間の容積を増加させることによって、作動油の圧力(すなわち、サージ圧)を吸収する役割を担う。サージ吸収シリンダ46、47は、作動油の流通方向に離間した位置に設けられている。サージ吸収シリンダ46、47は、例えば、鋼管44の屈曲する位置、または作動油の流れ方向に対し垂直に設けられるのが望ましい。
【0052】
図7は、ダイカストマシン10のハードウェア構成図である。ダイカストマシン10は、制御装置60を備える。制御装置60は、例えば、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)61、各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)62、及び演算手段の作業領域となるRAM(Random Access Memory)63を備える。そして、ROM62に記憶されたプログラムをCPU61が読み出して実行することによって、後述する各処理を実現してもよい。
【0053】
但し、制御装置60の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0054】
制御装置60は、ダイカストマシン10全体の動作を制御する。より詳細には、制御装置60は、リミットスイッチ29d、ドアセンサ64、表示入力装置65から出力される各種信号に基づいて、駆動モータ26、エアシリンダ29c、75、パイロットバルブ36、開閉バルブ37、給排制御バルブ38、ポンプモータ43、方向切替弁51、及び流量制御弁52の動作を制御する。
【0055】
ドアセンサ64は、ダイカストマシン10の正面に開閉可能に設けられたドア(図示省略)の開閉を検知し、検知結果を示す開閉信号を制御装置60に出力する。ドアは、金型21に対面する位置に配置されている。すなわち、ドアが閉鎖されると、オペレータが金型21にアクセスできず、且つダイカストマシン10が成形品を製造できる状態になる。一方、ドアが開放されると、オペレータが金型21にアクセスでき、且つダイカストマシン10が成形品を製造できない状態になる。
【0056】
表示入力装置65は、オペレータに報知すべき各種情報を表示するディスプレイ、及びオペレータによる操作を受け付けるボタン、スイッチ、ダイヤルなどを備えるユーザインタフェースである。また、表示入力装置65は、ディスプレイに重畳されたタッチパネルを備えてもよい。表示入力装置65は、オペレータの入力操作を受け付けて、受け付けた入力操作に対応する入力信号を制御装置60に出力する。
【0057】
表示入力装置65は、例えば、[モード切替]ボタンと、[型閉]ボタンと、[型開]ボタンとを備える。[モード切替]ボタンは、ダイカストマシン10が設定された速度及び圧力で動作する手動モードと、金型21を交換する金型交換モードとに切り替える操作を受け付ける。[型閉]ボタンは、金型21を型閉する操作を受け付ける。[型開]ボタンは、金型21を型開する操作を受け付ける。
【0058】
手動モードのダイカストマシン10において、[型閉]ボタン及び[型開]ボタンが操作されると、制御装置60は、表示入力装置65を通じて予め設定された速度及び圧力で金型21を開閉させる。一方、金型交換モードのダイカストマシン10において、[型閉]ボタン及び[型開]ボタンが操作されると、制御装置60は、規制された速度及び圧力(すなわち、手動モードのときより遅い速度、小さい圧力)で金型21を開閉させる。
【0059】
制御装置60は、[型閉]ボタンが操作されている間、方向切替弁51を上り位置Aに切り替えることによって、可動ダイプレート22bを上り方向に移動させる。また、制御装置60は、[型開]ボタンが操作されている間、方向切替弁51を下り位置Bに切り替えることによって、可動ダイプレート22bを下り方向に移動させる。これにより、オペレータは、固定側金型21a及び可動側金型21bの間に、所望の間隔を設けることができる。さらに、制御装置60は、[型閉]ボタン、[型開]ボタンの操作が終了すると、方向切替弁51を遮断位置Cに切り替える。これにより、可動ダイプレート22bが重力によって下り方向に移動するのを防止できるので、オペレータが設定した間隔を維持することができる。
【0060】
図8は、可動ダイプレートロック処理のフローチャートである。可動ダイプレートロック処理は、オペレータが金型21を交換する際に、可動ダイプレート22bが下り方向に移動するのを阻止するために、ロック機構29の状態を切り替える処理である。
【0061】
まず、制御装置60は、モード切替及び安全ドアの開閉に関係なく、可動ダイプレート22bを型開閉停止位置でロックする。より詳細には、制御装置60は、エアシリンダ29cを収縮させることによって、被係止ブロック29bの他端を下降させる(S11)。これにより、ロック機構29が許容状態から阻止状態に切り替えられる。
【0062】
これにより、遮断位置Cの方向切替弁51と、阻止状態のロック機構29とによって、可動ダイプレート22bの下り方向への移動が二重にロックされる。次に、オペレータは、ドアを開放して金型21を交換する作業を実施する。そして、オペレータは、金型21を交換した後に、ドアを閉鎖する。なお、金型21の交換方法の詳細は、図10図12を参照して後述する。
【0063】
金型21を交換が終了すると、制御装置60は、エアシリンダ29cを伸長させるための信号を出力して、被係止ブロック29bの他端を上昇させようとする(S12)。しかしながら、可動側金型21b及び可動ダイプレート22bの重量によって、被係止ブロック29bの他端がラチェット歯29eに強く押し付けられて、被係止ブロック29bが回動できない可能性がある。そこで、制御装置60は、リミットスイッチ29dの検知信号に基づいて、ロック機構29が阻止状態から許容状態に切り替わったか否かを判断する(S13)。
【0064】
制御装置60は、エアシリンダ29cを伸長させるための信号を出力しても、ロック機構29が許容状態に切り替わらない場合に(S13:No)、方向切替弁51を上り位置Bに切り替える(S14)。そして、制御装置60は、方向切替弁51を上り位置Bに切り替えた状態で(S14)、エアシリンダ29cを伸長させるための信号を出力して、被係止ブロック29bの他端を上方に退避させる(S12)。そして、制御装置60は、ロック機構29が阻止状態から許容状態に切り替えられた場合に(S13:Yes)、方向切替弁51を遮断位置Cに切り替える(S15)。
【0065】
図9は、型閉処理のフローチャート、及び型閉処理における流量制御弁52の流量の推移を示す図である。型閉処理は、可動ダイプレート22bを上り方向に移動させることによって、可動側金型21bを固定側金型21aに近接(すなわち、金型21を型閉)させる処理である。なお、型閉処理の開始時点において、可動側金型21bは固定側金型21aから離間しており、方向切替弁51は遮断位置Cであるものとする。
【0066】
まず、制御装置60は、型閉指示を取得するまで(S21:No)、ステップS22以降の処理の実行を待機する。型閉指示は、例えば、表示入力装置65を通じた射出成形の実行指示でもよいし、[型閉]ボタンの操作でもよい。
【0067】
そして、制御装置60は、型閉指示を取得した場合に(S21:Yes)、方向切替弁51を遮断位置Cから上り位置Bに切り替える(S22)。しかしながら、方向切替弁51を上り位置Bを切り替えてから、型開閉シリンダ28のヘッド室に作動油が供給されて、型開閉シリンダ28が伸長を開始するまでには、タイムラグがある。そのため、可動側金型21b及び可動ダイプレート22bの自重によって、このタイムラグの間に可動ダイプレート22bが下り方向に移動する可能性がある。
【0068】
そこで、制御装置60は、方向切替弁51を上り位置Bに切り替えるのと並行して、流量制御弁52の流量を第1流量に設定する(S23)。そして、制御装置60は、流量制御弁52の流量を第1流量に設定してから所定の時間が経過するまで(S24:No)、ステップS25以降の処理の実行を待機する。所定の時間は、例えば、方向切替弁51を上り位置Bに切り替えてから、型開閉シリンダ28が安定して伸長し始めるまでに必要な時間に設定される。
【0069】
そして、制御装置60は、流量制御弁52の流量を第1流量に設定してから所定の時間が経過したタイミングで(S24:Yes)、流量制御弁52の流量を第2流量に設定する(S25)。第2流量は、表示入力装置65を通じて設定された流量である。なお、第1流量及び第2流量の大小関係は、図9(B)の例に限定されない。すなわち、制御装置60は、図9(B)に示すように、方向切替弁51を遮断位置Cから上り位置Aに切り替えてから所定の時間は流量制御弁52を第1流量に設定し、所定の時間が経過した後は設定された第2流量で動作する。
【0070】
図1に示すように、ダイカストマシン10は、スプレー装置70をさらに備える。スプレー装置70は、型開された固定側金型21a及び可動側金型21bの金型面(すなわち、キャビティを画定する面)に流体を噴射する装置である。流体とは、例えば、液状の離型剤やエアーなどを含む。
【0071】
図10は、使用姿勢のスプレー装置70を示す図である。図11は、中間姿勢のスプレー装置70を示す図である。図12は、退避姿勢のスプレー装置70を示す図である。図10図12に示すように、スプレー装置70は、スタンド71と、スプレー本体72と、ノズル73と、ウインチ74(第1駆動源)と、エアシリンダ75(第2駆動源)とを主に備える。
【0072】
スタンド71は、固定ダイプレート22a(より詳細には、固定ダイプレート22aに取り付けられたC型フレーム)に立設されている。また、スタンド71は、第1回動軸76周りに回動可能に構成されている。第1回動軸76は、可動ダイプレート22bの移動方向及び上下方向に直交(すなわち、図10図12の紙面の奥行方向)する方向に延設されている。
【0073】
そして、スタンド71は、可動ダイプレート22bの移動方向に直交する方向に延びる位置(図10及び図11)と、図10及び図11から可動ダイプレート22bと反対側(換言すれば、後述する金型間領域79から離れる方向)に傾いた位置(図12)との間を回動する。なお、図12では、スタンド71が上下方向に延設されている状態を図示しているが、図10及び図11の状態から可動ダイプレート22bと反対側に回動していれば、図10及び図11に示すスタンド71と図12に示すスタンド71との間の具体的な回動角は限定されない。
【0074】
スプレー本体72は、スタンド71の上端に支持されている。また、スプレー本体72は、ノズル73を支持している。そして、スプレー本体72は、圧縮された流体を貯留すると共に、貯留した流体をノズル73を通じて噴射する。さらに、スプレー本体72は、スタンド71に対して第2回動軸77周りに回動可能に構成されている。スプレー本体72は、可動ダイプレート22bの移動方向にスタンド71を直交させた状態で、上下方向から見て金型間領域79に重なる位置にノズル73を保持する位置(図10)と、上下方向から見て金型間領域79から外れた位置にノズル73を保持する位置(図11)との間を回動する。さらに、スプレー本体72は、スタンド71の延設方向に昇降可能に、ノズル73を支持する。
【0075】
ウインチ74は、先端がスタンド71に接続されたワイヤ78を巻取り及び繰出すことによって、第1回動軸76周りにスタンド71を回動させる。本実施形態に係るウインチ74は、ワイヤ78の巻取り量及び繰り出し量を、オペレータが手動で調整できるものである。但し、第1駆動源の具体例は手動のウインチ74に限定されず、電動ウインチでもよいし、エアシリンダ等でもよい。エアシリンダ75は、制御装置60の制御に従って伸縮することによって、第2回動軸77周りにスプレー本体72を回動させる。但し、第2駆動源の具体例はエアシリンダ75に限定されず、電動モータ等でもよい。
【0076】
図10及び図11に示すスプレー装置70は、上下方向から見て、金型間領域79に重なっている。そのため、固定側金型21a及び可動側金型21bをウインチ等で吊上げて交換しようとすると、スプレー装置70に干渉する。そこで、本実施形態に係るスプレー装置70は、図10に示す使用姿勢と、図11に示す中間姿勢と、図12に示す退避姿勢とに姿勢変化が可能に構成されている。金型間領域79は、型開された固定側金型21a及び可動側金型21bの間の領域を指す。
【0077】
図10に示す使用姿勢は、可動ダイプレート22bの移動方向に直交する方向にスタンド71を延設し、且つ金型間領域79に進入可能な位置にノズル73を保持した姿勢である。図10の使用姿勢でノズル73を下降させると、ノズル73が金型間領域79に進入する。そして、金型間領域79に進入したノズル73から流体を噴射することによって、離型剤及びエアーを金型面に塗布することができる。
【0078】
図11に示す中間姿勢は、可動ダイプレート22bの移動方向に直交する方向にスタンド71を延設し、且つ上下方向から見て金型間領域79から外れた位置にノズル73を保持する姿勢である。図11の中間姿勢でノズル73を下降させても、ノズル73を金型間領域79に進入させることができない。但し、スプレー装置70全体としては、未だ上下方向から見て金型間領域79に重なるので、金型21を交換する際には干渉する。
【0079】
図12に示す退避姿勢は、上下方向から見てスプレー装置70全体が金型間領域79から外れる位置まで、スタンド71を可動ダイプレート22bと反対側に回動させた姿勢である。図12の退避姿勢でノズル73を下降させても、ノズル73を金型間領域79に進入させることができない。また、上下方向から見てスプレー装置70全体が金型間領域79から外れるので、金型21を交換する際に干渉しない。
【0080】
本実施形態に係るスプレー装置70は、使用姿勢から中間姿勢を経て退避姿勢に姿勢変化する。すなわち、スプレー装置70は、使用姿勢からスプレー本体72を第2回動軸77周りに回動させると、中間姿勢になる。また、スプレー装置70は、中間姿勢からワイヤ78を巻き取ると、退避姿勢になる。
【0081】
また、本実施形態に係るスプレー装置70は、退避姿勢から中間姿勢を経て使用姿勢に姿勢変化する。すなわち、スプレー装置70は、退避姿勢からワイヤ78を繰り出すと、中間姿勢になる。また、スプレー装置70は、中間姿勢からスプレー本体72を第2回動軸77周りに回動させると、使用姿勢になる。
【0082】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0083】
上記の実施形態によれば、スプレー装置70を使用姿勢と退避姿勢とに姿勢変化させることによって、金型21の交換時に金型間領域79に重なる位置からスプレー装置70を退避させることができる。その結果、傾斜フレーム11上に型締装置20を設置した場合でも、スプレー装置70に干渉せずに、金型21をウインチで吊り下げて交換することができる。
【0084】
また、上記の実施形態によれば、中間姿勢を経由して使用姿勢と退避姿勢とに姿勢変化させることによって、スプレー装置70が金型間領域79に重なるのを、さらに効果的に防止できる。但し、スプレー装置70を姿勢変化させる具体的な方法は、前述の例に限定されず、中間姿勢を省略(換言すれば、スタンド71に対するスプレー本体72の回動を省略)して、使用姿勢と退避姿勢とに直接姿勢変化してもよい。
【0085】
また、上記の実施形態によれば、可動ダイプレート22bの下り方向の移動を阻止するロック機構29を設けることによって、傾斜フレーム11上に型締装置20を設置した場合でも、重力によって可動ダイプレート22bが意図せず下り方向に移動するのを防止できる。その結果、例えば金型21の交換作業中に、可動ダイプレート22bを所望の位置に保持することができる。
【0086】
また、上記の実施形態によれば、ラチェット部材29aと被係止ブロック29bとでロック機構29を構成することによって、シンプルな構成で前述の作用効果を得ることができる。但し、ロック機構29の具体的な構成は、図2及び図3の例に限定されない。さらに、可動ダイプレート22bの移動方向に離間した複数の位置にラチェット歯29eを設けることによって、可動ダイプレート22bを保持できる位置の選択肢を増やすことができる。
【0087】
また、上記の実施形態によれば、ロック機構29を阻止状態から許容状態に状態変化させる際に、方向切替弁51を上り位置Bに切り替える。これにより、被係止ブロック29bの他端がラチェット歯29eの第2面29gに押し付けられた状態が解除されるので、ロック機構29をスムーズに状態変化させることができる。
【0088】
また、上記の実施形態によれば、方向切替弁51の遮断位置Cをオールポートブロックにすることによって、重力によって可動ダイプレート22bが意図せず下り方向に移動するのを防止できる。さらに、ロック機構29及び方向切替弁51の両方を採用することによって、可動ダイプレート22bの下り方向への移動を二重にロックできる。
【0089】
また、上記の実施形態によれば、可動ダイプレート22bを上り方向に移動させる際に、最初の所定時間に型開閉シリンダ28のヘッド室に供給する作動油の流量を増加させる。これにより、型開閉シリンダ28が伸長し始めるまでに、可動ダイプレート22bが下り方向に移動するのを防止できる。
【0090】
また、上記の実施形態によれば、作動油供給ユニット40を傾斜フレーム11と異なる位置で載置面Gに自立させることによって、傾斜フレーム11上に配置する場合と比較して、ダイカストマシン10を低床化することができる。また、油圧アクチュエータを作動油供給ユニット40に接続する流路のうちの作動油供給ユニット40側の端部を、可撓性のホース45で構成することによって、作動油供給ユニット40のレイアウトの自由度が向上する。
【0091】
また、上記の実施形態によれば、射出シリンダ33のロッド室から作動油タンク41に至る流路上に複数のサージ吸収シリンダ46、47を設けることによって、サージ圧を適切に吸収できる。これにより、作動油供給ユニット40のレイアウトの自由度を高めるために、可撓性のホース45の割合を多くしても、サージ圧によってホース45が振動するのを防止できる。
【0092】
また、上記の実施形態によれば、載置面Gと平行なスペーサ50の上面でアキュームレータ34を支持する。これにより、シェル内のプラダが傾いた状態で使用されることによって、プラダが損傷するのを防止できる。
【0093】
また、傾斜フレーム11上に型締装置20を設置した場合、テールストック23及びタイバー24a、24bと、駆動ナット25a、25bとの摺動部分に齧りが生じる可能性がある。そこで、上記の実施形態のように、テールストック23及びタイバー24a、24bより硬度の低い材料で駆動ナット25a、25bを形成することによって、交換の容易な駆動ナット25a、25bを積極的に消耗させることができる。
【0094】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0095】
10…ダイカストマシン、11…傾斜フレーム、12…支持面、20…型締装置、21…金型、21a…固定側金型、21b…可動側金型、22a…固定ダイプレート、22b…可動ダイプレート、23…テールストック、24a,24b…タイバー、24c,24d…ネジ部、25a,25b…駆動ナット、26…駆動モータ、27…トグルリンク機構、28…型開閉シリンダ、29…ロック機構、29a…ラチェット部材、29b…被係止ブロック、29c,75…エアシリンダ、29d…リミットスイッチ、29e…ラチェット歯、29f…第1面、29g…第2面、29h…回動軸、30…射出装置、31…射出スリーブ、32…プランジャ、33…射出シリンダ、34…アキュームレータ、35…チェックバルブ、36…パイロットバルブ、37,39…開閉バルブ、38…給排制御バルブ、40…作動油供給ユニット、41…作動油タンク、42…油圧ポンプ、43…ポンプモータ、44…鋼管、45…ホース、46,47…サージ吸収シリンダ、50…スペーサ、51…方向切替弁、52…流量制御弁、60…制御装置、61…CPU、62…ROM、64…ドアセンサ、65…表示入力装置、70…スプレー装置、71…スタンド、72…スプレー本体、73…ノズル、74…ウインチ、76…第1回動軸、77…第2回動軸、78…ワイヤ、79…金型間領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12