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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046359
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/0446 20230101AFI20240327BHJP
   H04L 7/00 20060101ALI20240327BHJP
   H04B 7/15 20060101ALI20240327BHJP
   H04W 28/04 20090101ALI20240327BHJP
   H04W 12/03 20210101ALI20240327BHJP
【FI】
H04W72/04 131
H04L7/00 990
H04B7/15
H04W28/04 110
H04W12/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151688
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】庄司 智也
(72)【発明者】
【氏名】河野 日向子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 道奉
(72)【発明者】
【氏名】武井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山本 和弘
(72)【発明者】
【氏名】西田 順一
【テーマコード(参考)】
5K047
5K067
5K072
【Fターム(参考)】
5K047AA18
5K067AA23
5K067DD11
5K067DD30
5K067EE10
5K067EE16
5K067HH23
5K067HH28
5K072AA04
5K072AA24
5K072BB02
5K072BB25
5K072EE33
(57)【要約】
【課題】 送信時間や送信周期に制約があっても、ネットワークの揺らぎを反映した送信開始時刻を設定して、広域網を利用してセキュリティを確保しつつダイバシティ受信を行うことができる通信システムを提供する。
【解決手段】 複数の無線装置3と通信制御装置1が広域網で接続され、複数の無線装置3が、時刻情報を取得して通信制御装置1に送信し、通信制御装置1は、複数の無線装置3からの時刻情報を受信し、受信した無線装置3の時刻情報と当該受信時の時刻情報とから到達時間を演算して記憶し、記憶した複数の無線装置3に対応した到達時間の最大値から通信開始時刻を決定して複数の無線装置3に送信し、複数の無線装置3は、通信制御装置1から送信された通信開始時刻でデータの送信を行い、通信制御装置1は、通信開始時刻から到達時間の最大値に基づく特定のタイムアウト時間が経過した後に到達したデータは誤りとして処理する通信システムである。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線によりデータの送受信を行う複数の無線装置と、前記複数の無線装置と広域ネットワークにより接続する通信制御装置とを有する通信システムであって、
前記複数の無線装置及び前記通信制御装置は各々時刻情報を取得するものであり、
前記複数の無線装置は、取得した時刻情報を前記通信制御装置に送信し、
前記通信制御装置は、前記複数の無線装置からの時刻情報を受信し、前記受信した無線装置の時刻情報と当該受信時の時刻情報の差分から到達時間を演算して記憶し、当該記憶した複数の無線装置に対応した到達時間の最大値から通信開始時刻を決定して前記複数の無線装置に送信すると共に前記到達時間の最大値からタイムアウト時間を設定し、
前記複数の無線装置は、前記通信制御装置から送信された通信開始時刻でデータの送信を行い、
前記通信制御装置は、前記通信開始時刻から前記タイムアウト時間の経過後に到達したデータは誤りとして処理することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記通信制御装置は、受信データをフレーム毎に記憶する受信フレームリストと、前記フレーム毎に誤り状況を記憶する誤り状況リストとをデータリンク制御部に備え、前記誤り状況リストを前記複数の無線装置に送信し、前記誤り状況リストで誤りのあるフレームの受信データを前記複数の無線装置から再度受信して、誤りのない受信フレームリストを生成して、接続するユーザ端末に出力することを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
前記通信制御装置は、前記複数の無線装置からの受信データを記憶するキャッシュマップをネットワークインタフェース部に備え、前記誤り状況リストで誤りのあるフレームの受信データを前記複数の無線装置から再度受信すると、前記キャッシュマップに記憶して、前記ネットワークインタフェース部が誤りのない受信データを前記データリンク制御部に出力することを特徴とする請求項2記載の通信システム。
【請求項4】
前記無線装置は、前記通信制御装置に暗号による接続を要求し、
前記通信制御装置は、前記無線装置の認証情報を判断して、暗号方式を決定して前記無線装置からの接続を許可することを特徴とする請求項1又は2記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに係り、特に送信時間や送信周期に制約がある場合でも、セキュリティを確保しつつ広域網を利用してダイバシティ受信を行うことができる通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明:図10
従来、専用回線を用いたネットワーク上の複数拠点に配置された無線装置を用いて送受信を行う通信システムがある。
従来の通信システムの構成について図10を用いて説明する。図10は、従来の通信システムの概略構成を示す説明図である。
図10に示すように、従来の通信システムは、通信制御装置51と、複数の音声回線交換機52と、複数の無線装置53とを備えており、音声信号による専用回線で接続されている。
【0003】
通信制御装置51は、システム全体を制御する。
音声回線交換機52は、回線交換制御を行う。
無線装置53は、拠点ごとに複数設けられ、移動局(図示せず)と無線通信を行うと共に、音声回線交換機52を介して通信制御装置51と通信を行う。
【0004】
[従来の無線装置の構成:図11
従来の無線装置53の構成について図11を用いて説明する。図11は、従来の無線装置53の概略構成を示す説明図である。
図11に示すように、従来の無線装置53は、音声入出力部531と高周波部532とを備えている。
【0005】
そして、音声入出力部531は、通信制御装置51から送信された音声信号を入力し、アナログ変調を行って高周波部532に出力し、高周波部532からの音声信号を入力して、アナログ復調を行って通信制御装置51に送信する。
高周波部532は、音声入出力部531からの音声信号を高周波信号に変換して電力増幅し、アンテナに出力する。また、高周波部532は、アンテナから入力された他通信局からの高周波を低雑音化し、音声信号に変換して音声入出力部531に出力する。
【0006】
[従来の通信制御装置の構成:図12
次に、従来の通信制御装置の構成について図12を用いて説明する。図12は、従来の通信制御装置の構成を示す説明図である。
図12に示すように、従来の通信制御装置51は、制御部54と、変復調部55と、音声入出力部56とを備えている。
更に、制御部54は、フレーム生成部541と、フレーム選択・合成部542と、ユーザ情報変換部543と、通信制御部544とを備えている。
【0007】
フレーム生成部541は、ユーザ端末からの送信用のデータに基づいて送信用のフレームを生成し、変復調部55に出力する。
フレーム選択・合成部542は、変復調部55から入力された受信データについて、フレーム形成後に受信の誤り有無を見て受信誤りのないフレームを選択、合成(ダイバシティ)する。
ユーザ情報変換部543は、受信データをユーザ向けの情報に変換して、ユーザ端末に出力する。
通信制御部544は、ユーザ端末からの指示に応じて無線装置53と制御情報の送受信を行う。
【0008】
変復調部55は、変復調・誤り訂正部551を備え、送信フレームについて誤り訂正符号化を施してデジタル変調し、音声信号に変換して音声入出力部に出力する。
また、変復調部55は、音声入出力部56からの受信信号についてデジタル復調し、誤り訂正復号化を行って制御部54に出力する。
音声入出力部56は、音声信号の入出力を行う。
【0009】
通信制御装置51において、ユーザ端末からの送信データは、制御部54でフレームに生成され、変復調部55で誤り訂正符号化及びデジタル変調が行われて音声信号に変換され、音声入出力部56から専用回線に出力されて無線装置53に伝送される。
また、無線装置53で受信され専用回線を介して伝送された音声信号は、音声入出力部56から入力されて変復調部55でデジタル復調及び誤り訂正復号化が施され、制御部54で誤りのないフレームが選択されて合成され、ユーザ向けの情報に変換されて、ユーザ端末に出力される。
【0010】
[従来の通信システムにおける通信の流れ:図13
次に、従来の通信システムにおける移動局から通信制御装置51への通信の流れについて図13を用いて説明する。図13は、従来の通信システムにおける通信の流れを示す説明図である。
図13では、ユーザ端末、通信制御装置51、音声回線交換機52を備えた中央局と、音声回線交換機52と、複数の無線装置53を備えた無線局#1及び無線局#2とを有する通信システムが、移動局(送信局)60からの信号を受信する際の通信の例を示している。尚、送信局60は、図を簡単にするために、複数の移動局をまとめて示したものである。
【0011】
送信局60からチャンネル(n)で高周波信号が送信されると、無線局#2の無線装置#2-N及び無線局#1の無線装置#1-Nに受信される。また、別の移動局である送信局60からチャンネル(1)で高周波信号が送信されると、無線局#2の無線装置#2-1及び無線局#1の無線装置#1-1に受信される(S101)。
【0012】
無線局#2の無線装置#2-N及び無線局#1の無線装置#1-Nは、チャンネル(n)で高周波信号を受信すると、音声信号に変換して音声回線交換機52に出力し(S102)、無線局#2の無線装置#2-1及び無線局#1の無線装置#1-1は、チャンネル(1)で高周波信号を受信すると、音声信号に変換して音声回線交換機52に出力する(S103)。
【0013】
各無線局に設けられた音声回線交換機52は、音声信号を音声回線を介して中央局に伝送し(S104)、通信制御装置51は、中央局の音声回線交換機を介して音声信号を受信する(S105)。
そして、上述したように、チャンネル(n)については無線装置#2-N及び無線装置#1-Nからの受信フレームに基づいて誤りのないフレームを選択して合成し、チャンネル(1)については無線装置#2-1及び無線装置#1-1からの受信フレームに基づいて誤りのないフレームを選択して合成し、受信データを生成して、ユーザ情報としてユーザ端末に出力する(S106)。
このようにして、ダイバシティ受信が行われる。
【0014】
また、従来の通信システムでは、同一チャネルを受信している無線装置#2-Nと無線装置#1-N、及び無線装置#2-1及び無線装置#1-1は、互いに同じタイミングで送信を開始するよう、予め設定されている。
【0015】
そして、次に送信局60からチャンネル(n)及びチャンネル(1)で送信が行われると(S111)、処理S102~S106と同様に処理S112~S116が行われる。
【0016】
ここで、従来の通信システムにおいては、通信制御装置51と無線装置53との間は専用回線で接続されているため、回線の揺らぎ等はなく、音声信号の送受信の際に発生する遅延は通信制御装置51と無線装置53との間の距離によって固定されていた。
つまり、同一の無線装置53から伝送される音声信号について、図13に示した処理S104と処理S114における遅延時間は同一時間となる。
【0017】
このように、従来の通信システムは、専用回線を利用した閉塞網であることが多いため、回線遅延や揺らぎによる影響を抑えることは比較的容易であった。
しかし、広域網を利用する場合には、回線遅延や揺らぎに対応することは困難であり、更にセキュリティリスクへの対応も必要となる。
従来の無線装置では、WEBアクセスをはじめとする一般的なセキュリティ保護を行うと、処理が増大して通信の遅延にもつながってしまう。
【0018】
また、TDMA(Time Division Multiple Access:時分割多重)やCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)等のアクセス方式による無線でのネットワーク通信やデータ通信では、無線受信に対する応答の送信時間や、時刻同期情報の送信時間に制約がある場合が多い。
そのような通信を行う場合には、各無線装置の送信時刻が同一となるよう、制御する必要がある。
【0019】
[関連技術]
尚、通信システムに関する従来技術としては、特開2016-111396号公報「無線通信装置」(特許文献1)がある。
特許文献1には、伝送遅延時間を考慮して基準遅延時間との差分をタイミング調整時間として算出し、単一周波数FM同期放送を実現することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2016-111396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述したように、従来の通信システムでは、公衆回線による広域網を利用した場合、ネットワークの揺らぎによる遅延時間のバラつきを反映した送信開始時刻を設定したり、セキュリティを確保して、安全にダイバシティ受信を行うことが困難であるという問題点があった。
【0022】
尚、特許文献1には、通信制御サーバが、ネットワークの揺らぎを含む遅延時間に応じて無線装置に送信開始時刻を設定すると共に、タイムアウト時間を設けて受信を待ち受け、タイムアウト後に到達したデータは誤りであるとして削除することは記載されていない。
【0023】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、送信時間や送信周期に制約がある場合でも、ネットワークの揺らぎを反映した送信開始時刻を設定して、広域網を利用してセキュリティを確保しつつダイバシティ受信を行うことができる通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、無線によりデータの送受信を行う複数の無線装置と、複数の無線装置と広域ネットワークにより接続する通信制御装置とを有する通信システムであって、複数の無線装置及び通信制御装置は各々時刻情報を取得するものであり、複数の無線装置は、取得した時刻情報を通信制御装置に送信し、通信制御装置は、複数の無線装置からの時刻情報を受信し、受信した無線装置の時刻情報と当該受信時の時刻情報の差分から到達時間を演算して記憶し、当該記憶した複数の無線装置に対応した到達時間の最大値から通信開始時刻を決定して複数の無線装置に送信すると共に到達時間の最大値からタイムアウト時間を設定し、複数の無線装置は、通信制御装置から送信された通信開始時刻でデータの送信を行い、通信制御装置は、通信開始時刻からタイムアウト時間の経過後に到達したデータは誤りとして処理することを特徴としている。
【0025】
また、本発明は、上記通信システムにおいて、通信制御装置は、受信データをフレーム毎に記憶する受信フレームリストと、フレーム毎に誤り状況を記憶する誤り状況リストとをデータリンク制御部に備え、誤り状況リストを複数の無線装置に送信し、誤り状況リストで誤りのあるフレームの受信データを複数の無線装置から再度受信して、誤りのない受信フレームリストを生成して、接続するユーザ端末に出力することを特徴としている。
【0026】
また、本発明は、上記通信システムにおいて、通信制御装置は、複数の無線装置からの受信データを記憶するキャッシュマップをネットワークインタフェース部に備え、誤り状況リストで誤りのあるフレームの受信データを複数の無線装置から再度受信すると、キャッシュマップに記憶して、ネットワークインタフェース部が誤りのない受信データをデータリンク部に出力することを特徴としている。
【0027】
また、本発明は、上記通信システムにおいて、無線装置は、通信制御装置に暗号による接続を要求し、通信制御装置は、無線装置の認証情報を判断して、暗号方式を決定して無線装置からの接続を許可することを特徴としている。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、無線によりデータの送受信を行う複数の無線装置と、複数の無線装置と広域ネットワークにより接続する通信制御装置とを有する通信システムであって、複数の無線装置及び通信制御装置は各々時刻情報を取得するものであり、複数の無線装置は、取得した時刻情報を通信制御装置に送信し、通信制御装置は、複数の無線装置からの時刻情報を受信し、受信した無線装置の時刻情報と当該受信時の時刻情報の差分から到達時間を演算して記憶し、当該記憶した複数の無線装置に対応した到達時間の最大値から通信開始時刻を決定して複数の無線装置に送信すると共に到達時間の最大値からタイムアウト時間を設定し、複数の無線装置は、通信制御装置から送信された通信開始時刻でデータの送信を行い、通信制御装置は、通信開始時刻からタイムアウト時間の経過後に到達したデータは誤りとして処理する通信システムとしているので、実際のネットワークの揺らぎを反映した到達時間に基づいて送信開始時刻やタイムアウト時間を設定でき、送信時間や送信周期に制約がある場合でも、広域網を利用してダイバシティ受信を行うことができる効果がある。
【0029】
また、本発明によれば、無線装置は、通信制御装置に暗号による接続を要求し、通信制御装置は、無線装置の認証情報を判断して、暗号方式を決定して無線装置からの接続を許可する上記通信システムとしているので、広域網を利用した場合のセキュリティリスクを低減することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本通信システムの概略構成を示す説明図である。
図2】本通信システムの無線装置3の構成を示す説明図である。
図3】本通信システムの通信制御装置1の構成を示す説明図である。
図4】本通信システムのネットワークインタフェース部13の保持データ構造を示す説明図である。
図5】本通信システムの暗号化通信開始・通信開始時刻通知のシーケンスを示す説明図である。
図6】本通信システムの通信の流れを示す説明図である。
図7】本通信システムのタイムアウトのシーケンスを示す説明図である。
図8】本通信システムの通信制御装置1の受信時の動作を示す説明図である。
図9】本通信システムの再送があった場合の通信制御装置1の受信時の動作を示す説明図である。
図10】従来の通信システムの概略構成を示す説明図である。
図11】従来の通信システムの無線装置の概略構成を示す説明図である。
図12】従来の通信システムの通信制御装置の構成を示す説明図である。
図13】従来の通信システムにおける通信の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る通信システム(本通信システム)は、無線によりデータの送受信を行う複数の無線装置と、複数の無線装置と広域ネットワークにより接続する通信制御装置とを有し、複数の無線装置は、時刻情報を取得して通信制御装置に送信し、通信制御装置は、複数の無線装置からの時刻情報を受信し、受信した無線装置の時刻情報と当該受信時の時刻情報とから到達時間を演算して記憶し、当該記憶した複数の無線装置に対応した到達時間の最大値から通信開始時刻を決定して複数の無線装置に送信し、複数の無線装置は、通信制御装置から送信された通信開始時刻でデータの送信を行い、通信制御装置は、通信開始時刻から到達時間の最大値に基づく特定のタイムアウト時間が経過した後に到達したデータは誤りとして処理するものであり、実際のネットワークの揺らぎを反映した到達時間に基づいて送信開始時刻や受信待ち受けのタイムアウト時間を設定でき、送信時間や送信周期に制約がある場合でも、広域網を利用してダイバシティ受信を行うことができるものである。
【0032】
[本通信システムの概略構成:図1
本通信システムの概略構成について図1を用いて説明する。図1は、本通信システムの概略構成を示す説明図である。
図1に示すように、本通信システムの基本的な構成は、中央局の通信制御装置1と、複数の拠点(無線局)に設けられた複数の無線装置3(無線装置3-11,3-12,…3-1N,…3-N1,…3-NN)とがそれぞれルータを介してWAN(Wide Area Network:広域通信網)で接続された構成である。
また、図示は省略するが、無線装置3は、移動局と無線送受信を行う。尚、本明細書では、移動局を送信局と呼ぶことがある。
【0033】
つまり、本通信システムは、移動局から送信された信号を複数の無線装置3が受信し、音声信号ではなく高周波信号として広域網を介して通信制御装置1に伝送し、通信制御装置1においてダイバシティ受信するものである。
【0034】
中央局の時刻管理サーバ2は、通信制御装置1にGNSSに同期した時刻情報を配信する。
通信制御装置1は、従来と同様にユーザ端末に接続され、複数の無線装置3を利用したダイバシティ受信を行って、ユーザ端末に情報を出力するものである。
【0035】
特に、本通信システムの通信制御装置1は、複数の無線装置3が同一の時刻に広域網を介して送信を開始するよう、送信開始時刻を決定して複数の無線装置3に通知する。
具体的には、通信制御装置1は、各無線装置3と通信制御装置1との間の伝送に要する時間(到達時間)を算出して、複数の無線装置3の到達時間の内の最大の時間(最大到達時間)に基づいて、送信開始時刻を決定する。
また、通信制御装置1は、無線装置3からの受信を待ち受ける特定時間をタイムアウト時間として設定し、タイムアウト時間後に到達したデータは誤りとして処理する。
【0036】
これにより、本通信システムでは、送信時間や送信周期に制約がある場合でも、誤りがあったフレームの再送を迅速に実施でき、効率よくダイバシティ受信を行うことができるものである。
【0037】
また、通信制御装置1は、無線装置3からの要求に対して認証を行って、認証した無線装置3との暗号化通信を実現し、セキュリティリスクの低減を図るものである。
通信制御装置1における具体的な動作については後述する。
【0038】
各拠点の無線装置3は、移動局から送信されたデータを受信して、広域網を介して通信制御装置1に送信するものであり、通信制御装置1から通知された送信開始時刻に従って送信を開始する。
また、本通信システムの無線装置3は、通信制御装置1との通信を暗号化通信で行い、セキュリティを向上させる。
無線装置3の構成及び動作については後述する。
【0039】
また、時刻管理サーバ4(時刻管理サーバ4-1,4-2,…4-n)は、拠点ごとに設けられ、拠点内の無線装置3に対してGNSSに同期した時刻情報及び基準信号を配信するNTP(Network Time Protocol)サーバである。
【0040】
[無線装置3の構成:図2
次に、本通信システムの無線装置3の構成について図2を用いて説明する。図2は、本通信システムの無線装置3の構成を示す説明図である。
図2に示すように、本通信システムの無線装置3は、ネットワーク部31と、無線アクセス制御部32と、無線信号処理部33と、高周波部34と、セキュリティクライアント部35とを備えている。
また、無線装置3は、時刻管理サーバ4に接続され、更に広域ネットワーク(図示せず)を介して、通信制御装置1に接続されている。
【0041】
無線装置3の各部について説明する。
ネットワーク部31は、通信制御装置データ入出力部311と、通信方式制御部312とを備えている。
通信制御装置データ入出力部311は、通信制御装置1とのインタフェースであり、移動局から受信したデータや、通信制御装置1からの送信開始時刻等の制御情報のやり取りを行う。
特に、本無線通信システムの通信制御装置データ入出力部311は、通信制御装置1から通知された送信開始時刻に従って、セキュリティクライアント部35に通信制御装置1への送信データを出力する。
通信方式制御部312は、設定された通信方式に基づいて、無線アクセス制御部32、無線信号処理部33、高周波部34の設定を切り替える。
【0042】
無線アクセス制御部32は、制御データ生成部321と、誤り検出・フレーム抽出部322とを備えている。
制御データ生成部321は、ネットワーク部31から入力された通信制御装置1からの制御データに基づいて、送信局向けの制御データを生成する。
【0043】
誤り検出・フレーム抽出部322は、無線信号処理部でデジタル復調されたフレームを入力して誤り検出及び訂正復号を行い、誤りのないフレームを選択して、通信制御装置1に伝送するデータとしてネットワーク部31に出力する。
その際、誤り検出・フレーム抽出部322は、誤り訂正後のフレームと順序番号、復号結果からの誤り検出結果を、時刻管理サーバ4から取得した時刻情報と共にネットワーク部31に出力する。また、当該フレームについて、継続データの有無を示すモアフラグも付して出力する。
【0044】
無線信号処理部33は、誤り訂正・デジタル変復調部331を備えており、移動局への送信データに対する誤り訂正符号化及びデジタル変調を行い、移動局から受信した信号についてデジタル復調及び誤り訂正復号化を行う。
高周波部34は、周波数変換を行って、アンテナを介して高周波信号の送受信を行う。
【0045】
セキュリティクライアント部35は、中央局の通信制御装置1との暗号化通信を行うものであり、ベアラ情報取得部351を備え、暗号化や復号に伴う処理を行う。
ベアラ情報取得部351は、通信制御装置1から認証情報としてのベアラ情報を取得すると共に、拠点の時刻管理サーバ4に接続して、時刻情報及び基準信号を取得する。
また、ベアラ情報取得部351は、通信制御装置1に対して認証を要求し、認証後は、セキュリティクライアント部35と通信制御装置1は暗号化通信を行う。
本通信システムの無線装置3は、セキュリティクライアント部35を設けることで、通信のセキュリティ向上を図るようにしている。
【0046】
[通信制御装置1の構成:図3
次に、本通信システムの通信制御装置1の構成について図3を用いて説明する。図3は、本通信システムの通信制御装置1の構成を示す説明図である。
図3に示すように、本通信システムの通信制御装置1は、データリンク制御部11と、時刻サーバ通信部12と、ネットワークインタフェース部13と、セキュリティサーバ部14と、認証管理部15とを備えている。
また、通信制御装置1は、ユーザ端末5及び時刻管理サーバ2に接続している。
【0047】
時刻サーバ通信部12は、時刻管理サーバ2から時刻情報を取得し、通信制御装置1の各部に配信する。
データリンク制御部11は、受信フレームリスト111と、誤り状況リスト112とを記憶しており、複数の無線装置3から受信したデータから誤りのないフレームを選択して受信データを生成し、ユーザ端末5に合わせた情報を生成してユーザ端末5に出力する。誤りのないフレームを選択できない場合には、誤り状況をユーザ端末5に通知する。
受信フレームリスト111及び誤り状況リスト112については後述する。
【0048】
また、データリンク制御部11は、複数の無線装置3に対して、同一時刻で送信を開始するよう、送信開始時刻を決定して無線装置3に通知する。
データリンク制御部11の動作については後述する。
ネットワークインタフェース部13は、ネットワークに対する送受信を行うインタフェースであり、セキュリティサーバ部14から入力された受信フレームを、無線装置3毎に保持するキャッシュマップ131を備えている。
キャッシュマップ131については後述する。
【0049】
セキュリティサーバ部14は、無線装置3のセキュリティクライアント部35と暗号化通信を行い、暗号化や復号の処理を行う。
また、セキュリティサーバ部14は、無線装置3からのデータに付された認証用のベアラ情報を認証管理部15に出力して、認証された無線装置3からのデータであることを確認の上、受信したデータをネットワークインタフェース部13に出力する。
【0050】
認証管理部15は、無線装置3に対して認証を行うためのベアラ情報を管理している。ベアラ情報には、有効期限が設けられている。
認証管理部15は、セキュリティサーバ部14から、無線装置3からの認証要求が入力されると、予め登録されている無線装置3であることを確認後、対応するベアラ情報を出力する。
【0051】
また、認証管理部15は、セキュリティサーバ部14から、無線装置3からの受信データに付されたベアラ情報の確認の指示が入力されると、認証されたベアラ情報か否かをセキュリティサーバ部14に出力する。
本通信システムでは、無線装置3との通信を開始する際に、通信制御装置1の認証管理部15が、無線装置3からの要求に応じて無線装置の認証を行って暗号化方式を決定する。
このように、本通信システムは広域網を介した通信におけるセキュリティを向上させている。
【0052】
[ネットワークインタフェース部で保持するデータ:図4
ここで、ネットワークインタフェース部13のキャッシュマップ131で保持するデータについて図4を用いて説明する。図4は、ネットワークインタフェース部13の保持データ構造を示す説明図であり、(a)はキャッシュマップフォーマット、(b)は無線装置受信情報フォーマットを示している。
キャッシュマップ131は、上述したように、無線装置3毎に受信情報を格納するものであり、図4(a)に示すように、フォーマットとして「無線装置ID」と「無線装置受信情報リスト」とを備えている。
無線装置受信情報リストの内容は、図4(b)の無線装置受信情報フォーマットに示す。
【0053】
無線装置受信情報フォーマットは、図4(b)に示すように、「受信データ」「時刻情報」「誤り検出結果」「順序番号」「モアフラグ」で構成されている。
「受信データ」は、送信局60から受信した受信データのバイナリデータである。
「時刻情報」は、受信時に時刻管理サーバ4から取得した時刻である。
「誤り検出結果」は、誤り検出符号等による誤り検出結果である。
「順序番号」は、受信データごとに付与される番号で、受信データ毎に1ずつ増加する。
「モアフラグ」は、継続する受信データの有無を示す情報であり、継続する受信データがある場合には「1」、ない場合には「0」となる。
【0054】
本通信システムでは、通信制御装置1が無線装置3から情報を受信した際に、ネットワークインタフェース部13のキャッシュマップ131にそれぞれのデータを格納し、データリンク制御部11で正しいデータが選択される。通信制御装置1の受信時の動作については後述する。
【0055】
[暗号化通信開始・通信開始時刻通知のシーケンス:図5
次に、本通信システムにおける暗号化通信開始及び通信開始時刻通知のシーケンスについて図5を用いて説明する。図5は、本通信システムにおける暗号化通信開始・通信開始時刻通知のシーケンスを示す説明図である。
図5の例では、中央局と、2つの拠点(無線局#1,無線局#2)とを備えており、中央局には、ユーザ端末5、時刻管理サーバ2、通信制御装置1が設けられている。
また、無線局#1には、時刻管理サーバ4-1、無線装置#1-1、…無線装置#1-Nが設けられ、同様に、無線局#2には、時刻管理サーバ4-2、無線装置#2-2…、無線装置#2-Nが設けられている。尚、ここでは、無線装置#1-1、無線装置#1-N、無線装置#2-1、無線装置#2-Nを例として説明する。
【0056】
シーケンスを実現するネットワーク通信方式としては、認証機能や暗号通信方式が実現されているCoAP(Constrained Application Protocol)及びHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)を用いる。
まず、通信制御装置1は、中央局の時刻管理サーバ2からNTPによる時刻情報を取得する(S11,S12)。
同様に、各拠点の無線装置は、同一拠点の時刻管理サーバ4から時刻情報を取得する(S14~S17)。
【0057】
無線装置#2-1は、通信制御装置1に対して、処理S14で取得した時刻情報と、無線装置名、パスワード等を付して、認証要求を送出する(S21)。
通信制御装置1の認証管理部16では、当該無線装置#2-1のIPアドレスや受信した情報に基づいて、認証予定の無線装置であるかどうかを判断し、認証対象であると判断すると、通信制御装置1は、暗号方式を決定し、当該無線装置#2-1に認証用のベアラ情報と暗号方式を応答する(S22)。これにより、通信制御装置1と無線装置#2-1とは、決定された暗号方式による通信を開始する。暗号方式としては、例えば、公開鍵と秘密鍵による暗号化がある。
【0058】
暗号方式決定の動作は、図示は省略するが、無線装置#2-1は、取得したベアラ情報を付して通信制御装置1に公開鍵で暗号化した情報を送付し、通信制御装置1の認証管理部16は、ベアラ情報に対応する秘密鍵を用いて復号を行い、無線装置#2-1に応答する。これにより、無線装置#2-1と通信制御装置1との間で、公開鍵と秘密鍵とを用いて暗号化された通信接続(セッション)が構築される。
【0059】
そして、無線装置#2-1は、暗号化通信により、処理S22で取得したベアラ情報を付して、通信制御装置1に対してサーバ情報の取得要求を送出する(S23)。
通信制御装置1は、サーバ情報の取得要求を受信すると、付されたベアラ情報を確認し、認証されたものであれば、要求元の無線装置#2-1に対してサーバ情報を応答する(S24)。
【0060】
サーバ情報は、通信に関する制御情報であり、例えば、通信制御装置1で算出した当該無線装置3と通信制御装置1との通信に要する到達時間(ネットワーク遅延)に関する情報等が含まれる。
【0061】
無線装置#1-1、無線装置#2-N、無線装置#1-Nも、無線装置#2-1と同様に、時刻情報を付して通信制御装置1に認証要求を送出し、ベアラ情報を取得して、暗号化通信によりサーバ情報を要求し、サーバ情報を取得する(S25~S36)。
【0062】
ここで、通信制御装置1は、各無線装置3から送信された認証要求を受信すると(S21,S25,S29,S33)、当該要求に含まれる時刻情報と、時刻管理サーバ2から取得した当該要求の受信時刻とを比較して、差分を到達時間(ネットワーク遅延)として算出し、記憶する(S37)。到達時間には、ネットワーク揺らぎによる遅延や認証に要する時間も含まれている。
【0063】
そして、通信制御装置1は、記憶された複数の無線装置3の到達時間の内、最大の到達時間を最大到達時間として特定し、当該最大到達時間に基づいて、送信開始時刻を決定して(S38)、すべての無線装置3に対して送信開始時刻を通知する(図示せず)。送信開始時刻は、当該システムの通信方式等に応じて予め設定されている送信時間や送信周期に応じて決定される。
【0064】
更に、通信制御装置1は、無線装置3から送信されるデータの受信待ち受けを行う時間を一定時間に制限するため、最大到達時間に基づいてタイムアウト時間を設定する(S39)。タイムアウト時間を設けることにより、通信制御装置1は、送信開始時刻からタイムアウト時間が経過するまでに到達したデータについてダイバシティ受信処理を行い、タイムアウト時間経過後に到達したデータは、誤りとして処理する。
これにより、送信時間や送信周期に制限がある場合でも、ダイバシティ受信を効率よく行うことが可能となるものである。
【0065】
尚、各無線装置3は、情報同期のために定期的に時刻情報を付してサーバ情報取得要求を送信するようにしており、通信制御装置1では、サーバ情報取得要求を受信する度に到達時間を算出して集計し、最大到達時間を更新して保持し、サーバ情報を配信する。
これにより、通信制御装置1は、最新のネットワーク状況に基づいた送信開始時刻を各無線装置3に通知できるものである。
【0066】
[本通信システムの通信の流れ:図6]
次に、本通信システムの通信の流れについて図6を用いて説明する。図6は、本通信システムにおける通信の流れを示す説明図である。尚、ここでは、タイムアウトの処理を行わない場合を示している。
図6に示すように、従来と同様に、送信局60からチャンネル(n)で高周波信号が送信されると、無線局#2の無線装置#2-N及び無線局#1の無線装置#1-Nに受信される(S41,S43)。また、別の移動局である送信局60からチャンネル(1)で高周波信号が送信されると、無線局#2の無線装置#2-1及び無線局#1の無線装置#1-1に受信される(S42,S44)。
各無線装置3では、復調し誤り訂正を施したフレーム情報に、時刻情報等を付して保持しておく。時刻情報は、上述した無線アクセス制御部32で付与され、受信時刻に相当している。
【0067】
そして、送信開始時刻になると、無線装置#2-N、無線装置#2-1、無線装置#1-N、及び無線装置#1-1は、ネットワークを介して通信制御装置1に一斉に送信を開始し(S45~S48)、通信制御装置1において受信され、誤りのないフレームが選択されてダイバシティ合成が行われる。
そして、通信制御装置1は、誤りのない受信データが得られた場合には、受信データをユーザに応じた形式に変換してユーザ情報を生成し、ユーザ端末5に出力する(S49)。
【0068】
送信局60が別のタイミングで送信を行って(S51~S54)、無線装置#2-N及び無線装置#1-N、無線装置#2-1及び無線装置#1-1から同時に通信制御装置1に対して送信開始されたとしても、ネットワーク揺らぎの影響で、通信制御装置1への到達が遅れることがある(S55~S58)。
【0069】
このように、到達が多少遅れたとしても、各無線装置3からの情報にタイムスタンプとして受信時刻が付されているため、通信制御装置1での合成には影響がないものである。
具体的には、キャッシュマップ131が更新された際にキャッシュマップ131に登録された時刻情報と順序番号に基づいて、再度受信フレームリスト111への格納を行う。これにより、ネットワーク揺らぎ等で到達が遅れても、ダイバシティ受信が可能となる。
【0070】
正常に受信が行われると、通信制御装置1は、ユーザ情報を生成してユーザ端末5に出力する(S59)。
また、誤ったフレームがある場合には、通信制御装置1は、各無線装置3を介して、送信局60に誤り結果を通知し(S60)、ユーザ端末5に対して誤り状況通知を出力する(S61)。
ダイバシティ受信時の通信制御装置1の動作については後述する。
このようにして、本通信システムにおける通信が行われる。
【0071】
[タイムアウト時間]
上述したように、本通信システムの通信制御装置1は、無線装置3からの認証要求時に各無線装置3から通信制御装置1までの伝送に要する到達時間を算出して、記憶し、記憶された到達時間の中から最大到達時間を求め、最大到達時間に基づいて送信開始時刻及びタイムアウト時間を決定する。
【0072】
タイムアウト時間は、送信開始時間から通信制御装置1が受信を待ち受ける特定時間であり、送信開始時刻から計時を始めて、タイムアウト時間が経過すると、それ以降に到達したデータは誤りとして処理する。
タイムアウト時間は、最大到達時間よりも長く設定されるが、通信制御装置1からの誤り結果通知を送信するタイミングより早くタイムアウトするよう設定される。
【0073】
ダイバシティ受信の結果、誤ったフレームがあった場合には、無線装置3からの次の送信時に反映されるよう(正常なフレームが取得できるよう)、通信制御装置1からの誤り結果通知を適切なタイミングで送信する必要がある。また、広域網を利用すると、ネットワーク揺らぎ等の影響で信号の到達が遅れることがある。
【0074】
そのため、本無線通信システムでは、タイムアウト時間を設定することで、ネットワーク揺らぎ等の影響で到達が遅れた信号があっても、当該信号を待ち続けて処理が遅れることがないようにしている。
これにより、送信時間や送信周期に制約がある場合でも、到達が遅れた信号の影響を受けずに、効率よくダイバシティ受信を行うことができるものである。
【0075】
[タイムアウトのシーケンス:図7]
送信周期や時間に制約がある場合には、通信制御装置1は、タイムアウトを設けた処理を行う。タイムアウトのシーケンスについて図7を用いて説明する。図7は、タイムアウトのシーケンスを示す説明図である。
尚、図7の例では、1秒周期で無線装置3から送信局60に対して同期信号や誤り結果通知等の制御情報を送信するものとしており、図7に制御情報を送信した後のシーケンスを示している。
【0076】
図7に示すように、送信局60からチャンネル(n)とチャンネル(1)で送信された高周波信号は、無線装置#2-N、無線装置#1-N、無線装置#2-1、及び無線装置#1-1に受信される(S71~S74)
無線装置#2-N、無線装置#2-1、無線装置#1-N、及び無線装置#1-1は、受信したフレーム情報に誤り訂正を行い、時刻情報等を付与して、送信開始時刻になると一斉に通信制御装置1に送信する(S75~S78)。
一方、通信制御装置1は、送信開始時刻から時間のカウントを開始し、タイムアウト時間になったかどうかを監視する。
【0077】
図7の例では、無線装置#2-N、無線装置#2-1、無線装置#1-Nから送信された信号は、タイムアウトする前に通信制御装置1に受信されているが、無線装置#1-1からの信号は到達していない。
通信制御装置1は、送信開始時刻からのカウント時間がタイムアウト時間に達すると(S79)、それまでに到達した信号に基づいてダイバシティ合成を行い、到達していない信号については欠落したまま処理を進める。
【0078】
そして、通信制御装置1は、無線装置3を介して送信局60に誤り結果通知を送信し、無線装置#1-1、無線装置#2-N、無線装置#2-1、無線装置#1-Nは、次の制御情報の送信タイミング(図7では、15:00:02)で誤り結果通知を含む制御情報を送信局に一斉に送信する(S80)。
【0079】
タイムアウト後に、無線装置#1-1からの信号が到達しても(S81)、当該信号は誤りとして処理し、選択・合成に利用しない。
そして、通信制御装置1は、全フレームが正常に受信できた場合にはユーザ端末用のユーザ情報を生成して出力し(S82)、誤りのフレームがある場合には誤り状況通知を出力する(S83)。
このようにしてタイムアウトの処理が行われる。
【0080】
[通信制御装置1の受信時の動作:図8]
次に、通信制御装置1のネットワークインタフェース部13とデータリンク制御部11の受信時の動作について図8を用いて説明する。図8は、通信制御装置1の受信時の動作を示す説明図である。
図8に示すように、ネットワークインタフェース部13は、キャッシュマップ131と、誤り状況ネットワーク送信部132とを備えている。
【0081】
上述したように、キャッシュマップ131は、無線装置3から送信され、セキュリティサーバ部14で受信されて復調、誤り訂正復号化が為されたフレームデータを記憶するリストであり、IPアドレス情報をインデックスとして無線装置3毎に設けられている。
誤り状況ネットワーク送信部132は、データリンク制御部11から入力された誤り状況リストを、ネットワークを介して無線装置3及び送信局60に送信する。
【0082】
データリンク制御部11は、受信フレームリスト111と、誤り状況リスト112と、キャッシュ取得部113と、ユーザ情報生成部114と、誤り状況ユーザ送信部115と、誤り状況無線装置送信部116とを備えている。
【0083】
受信フレームリスト111は、ネットワークインタフェース部13のキャッシュマップ131から取得したデータの中から選択された正常なデータを保持する。
誤り状況リスト112は、受信フレームリスト111を参照して、フレーム毎の正誤を保持する。フレームリスト111にデータが格納されていないフレームは、正常なデータを受信できていないものである。
【0084】
ユーザ情報生成部114は、全てのフレームについて正常なデータが受信できた場合に、ユーザ情報を生成して、ユーザ端末5に出力する。
誤り状況ユーザ送信部115は、誤りがあった場合に、誤りの状況をユーザ端末5に出力し、誤りがなかった場合に、誤り状況がないこと及び通信完了をユーザ端末5に出力する。
【0085】
誤り状況無線装置送信部116は、誤りがあった場合に、誤り状況リストのデータを無線装置及び送信局に通知するよう、ネットワークインタフェース部13の誤り状況ネットワーク送信部132に指示する。
【0086】
そして、通信制御装置1のネットワークインタフェース部13では、無線装置3から送信されたデータを受信して復号し、誤り訂正復号化を行って、無線装置毎にフレームデータ、誤り検出結果、順序番号、モアフラグ(継続するデータがあるか否か)、付与された時刻情報をキャッシュマップ131に格納する。
図8の例では、無線装置#1-1のリストは、1番と3番のフレームは正常なデータが得られているが、2番と4番のフレームは正常に受信できていないことを示している。
【0087】
データリンク制御部11は、キャッシュ取得部113でキャッシュマップ131から各無線装置の受信情報を取得し、フレームと順序番号を基に正常なデータを受信フレームリスト111に格納する。また、誤り検出結果が誤りありだった場合、誤り状況リストにその旨格納する。
【0088】
データリンク制御部111は、全てのデータが受信フレームリストに格納されたかどうかを確認し、全てのデータが格納されていない場合には、ユーザ情報の出力は行わず、誤り状況ユーザ送信部115が、誤り状況をユーザ端末5に出力する。
図8の例では、複数の無線装置3の受信データを取得しても、2番のフレームは正常なデータが得られておらず、受信フレームリスト111に2番のフレームが格納されていないため、ユーザ情報は出力されず、誤り状況が通知される。
【0089】
尚、データリンク制御部11の誤り状況無線装置送信部116は、誤り状況リスト112を定期的に(又はその都度)無線装置3に転送し、再送依頼を行う。
再送依頼を受信した送信局60は、誤りのあるデータのみを再送する。図8の例では、送信局60は、誤り状況リストを受信して、2番のフレームのみを再送する。
【0090】
[通信制御装置1の受信時(再送があった場合)の動作:図9
次に、送信局から再送があった場合の通信制御装置1の動作について図9を用いて説明する。図9は、再送があった場合の通信制御装置1の動作を示す説明図であり、図8の状態から再送が行われた後の状態を示している。
送信局60から2番のフレームの再送が行われ、複数の無線装置3で受信されて、広域網を介して通信制御装置1に送信されると、図9に示すように、通信制御装置1のネットワークインタフェース部13は、図8の場合と同様に、復号、誤り訂正を行い、フレームデータ、誤り検出結果、順序番号、モアフラグ、時刻情報をキャッシュマップ131の無線装置毎のリストに格納する。
【0091】
データリンク制御部11は、キャッシュマップ131から各無線装置の受信情報を取得し、正常なデータを選択して受信フレームリスト111に格納する。図9の例では、再送により、2番のフレームについて正常なデータが取得できたことを示している。それと共に、データリンク制御部11は、誤り状況リストの2番のフレームについても正常である旨を格納して更新する。
【0092】
そして、データリンク制御部11のユーザ情報生成部114は、受信フレームリストに全てのデータが格納されたので、ユーザ情報を生成して、ユーザ端末5に送信する。
更に、誤り状況ユーザ送信部115は、誤りがないこと及び通信完了した旨をユーザ端末5に通知する。
【0093】
また、誤り状況無線装置送信部116は、誤りがないこと、及び通信完了した旨を無線装置3及び送信局60に通知するよう、ネットワークインタフェース部13の誤り状況ネットワーク送信部132に指示する。
このようにして、再送が行われた際の通信制御装置1の動作が行われる。
【0094】
[実施の形態の効果]
本通信システムによれば、無線によりデータの送受信を行う複数の無線装置3と、複数の無線装置3と広域ネットワークにより接続する通信制御装置1とを有し、複数の無線装置3は、時刻情報を取得して通信制御装置1に送信し、通信制御装置1は、複数の無線装置3からの時刻情報を受信し、受信した無線装置3の時刻情報と当該受信時の時刻情報とから到達時間を演算して記憶し、当該記憶した複数の無線装置3に対応した到達時間の最大値から通信開始時刻を決定して複数の無線装置3に送信し、複数の無線装置3は、通信制御装置1から送信された通信開始時刻でデータの送信を行い、通信制御装置1は、通信開始時刻から到達時間の最大値に基づく特定のタイムアウト時間が経過した後に到達したデータは誤りとして処理するものであり、実際のネットワークの揺らぎを反映した到達時間に基づいて送信開始時刻や受信待ち受けのタイムアウト時間を設定でき、送信時間や送信周期に制約がある場合でも、広域網を利用してダイバシティ受信を行うことができる効果がある。
【0095】
また、本通信システムによれば、無線装置3は、通信制御装置1に暗号による接続を要求し、通信制御装置1は、無線装置3の認証情報を判断して、暗号方式を決定して無線装置3からの接続を許可するようにしているので、広域網を利用してもセキュリティを確保したダイバシティ受信を行うことができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、送信時間や送信周期に制約がある場合でも、セキュリティを確保しつつ広域網を利用してダイバシティ受信を行うことができる通信システムに適している。
【符号の説明】
【0097】
1,51…通信制御装置、 2,4…時刻管理サーバ、 3,53…無線装置、 5…ユーザ端末、 11…データリンク制御部、 12…時刻サーバ通信部、 13…ネットワークインタフェース部、 14…セキュリティサーバ部、 15…認証管理部、 31…ネットワーク部、 32…無線アクセス制御部、 33…無線信号処理部、 34、532…高周波部、 35…セキュリティクライアント部、 52…音声回線交換機、 54…制御部、 55…変復調部、 56,531…音声入出力部、 60…送信局、 111…受信フレームリスト、 112…誤り状況リスト、 113…キャッシュ取得部、 114…ユーザ情報生成部、 115…誤り状況ユーザ送信部、 116…誤り状況無線装置送信部、 131…キャッシュマップ、 132…誤り状況ネットワーク送信部、 311…通信制御装置データ入出力部、 312…通信方式制御部、 321…制御データ生成部、 322…誤り検出・フレーム抽出部、 331…誤り訂正・デジタル変復調部、 351…ベアラ情報取得部
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13