(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046363
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】太陽光発電装置の固定構造
(51)【国際特許分類】
H02S 20/10 20140101AFI20240327BHJP
H02S 30/00 20140101ALI20240327BHJP
H02S 20/20 20140101ALI20240327BHJP
【FI】
H02S20/10 Z
H02S30/00
H02S20/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151695
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松島 和司
(72)【発明者】
【氏名】横田 生吹樹
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151AA05
5F151AA10
5F151AA11
5F151BA15
5F151DA15
5F151FA03
5F151FA04
5F151FA06
5F151JA02
5F151JA04
5F151JA05
5F151JA13
5F251AA05
5F251AA10
5F251AA11
5F251BA15
5F251DA15
5F251FA03
5F251FA04
5F251FA06
5F251JA02
5F251JA04
5F251JA05
5F251JA13
(57)【要約】
【課題】太陽光発電装置と、太陽光発電装置を固定するための固定具とを備えた太陽光発電装置の固定構造であって、固定具が飛散しても周辺物の損傷を抑制可能であり、固定具から太陽光発電装置に加えられる単位面積当たりの固定力を小さく抑えることができることで、固定具による太陽光発電装置の破損を抑制可能である太陽光発電装置の固定構造を提供する。
【解決手段】本発明の太陽光発電装置1の固定構造2は、太陽光発電装置1と、太陽光発電装置1を固定対象3に固定するための複数の樹脂製の固定具4とを備える。固定具4は、太陽光発電装置1を固定対象3側へ押し付ける押付面30aを有した押さえ部30と、押さえ部30と一体に設けられ、一部31aが固定対象3に埋設される埋設部31とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光の入射により発電を行う発電シートを有する太陽光発電装置と、
前記太陽光発電装置を固定対象に固定するための一又は複数の樹脂製の固定具とを備え、
前記固定具は、前記太陽光発電装置を前記固定対象側へ押し付ける押付面を有した押さえ部と、前記押さえ部と一体に設けられ、一部又は全体が前記固定対象に埋設される少なくとも一つの埋設部とを備える太陽光発電装置の固定構造。
【請求項2】
前記埋設部は、前記太陽光発電装置を上下方向に貫通して、前記埋設部の下側部分が前記固定対象に埋設され、
前記押さえ部は、前記埋設部の上端部に設けられる請求項1に記載の太陽光発電装置の固定構造。
【請求項3】
遮光性を有する遮光部材をさらに備え、
前記押さえ部は、前記遮光部材によって被覆される請求項1に記載の太陽光発電装置の固定構造。
【請求項4】
前記発電シートの曲げ強さは、10MPa以上150MPa以下である請求項1に記載の太陽光発電装置の固定構造。
【請求項5】
前記押さえ部の前記押付面と側面との間の角は、丸みを帯びた形状、或いは面取りが施されている請求項1に記載の太陽光発電装置の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電装置と、太陽光発電装置を固定するための固定具とを備えた太陽光発電装置の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電装置を金属製の固定具を用いて固定することが行われている。例えば特許文献1には、押さえ金具の主板と挟込金具の受け板との間に太陽光発電装置の端部を挟み込んで、ボルトにより押さえ金具及び挟込金具を締結することで、太陽光発電装置を固定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の技術では、押さえ金具及び挟込金具が金属製であるため、強風等により太陽光発電装置に強い外力が加わって押さえ金具或いは挟込金具が飛散した際に、当該飛散した押さえ金具或いは挟込金具によって周辺物が損傷する虞がある。またペグ等の金属製治具で太陽光発電装置を固定すると、局所的に固定力が生じることにより太陽光発電装置に破損が生じる虞がある。
【0005】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであって、その目的は、太陽光発電装置と、太陽光発電装置を固定するための固定具とを備えた太陽光発電装置の固定構造であって、固定具が飛散しても周辺物の損傷を抑制可能であり、固定具から太陽光発電装置に加えられる単位面積当たりの固定力を小さく抑えることができることで、固定具による太陽光発電装置の破損を抑制可能である太陽光発電装置の固定構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
【0007】
項1.太陽光の入射により発電を行う発電シートを有する太陽光発電装置と、
前記太陽光発電装置を固定対象に固定するための一又は複数の樹脂製の固定具とを備え、
前記固定具は、前記太陽光発電装置を前記固定対象側へ押し付ける押付面を有した押さえ部と、前記押さえ部と一体に設けられ、一部又は全体が前記固定対象に埋設される少なくとも一つの埋設部とを備える太陽光発電装置の固定構造。
【0008】
項2.前記埋設部は、前記太陽光発電装置を上下方向に貫通して、前記埋設部の下側部分が前記固定対象に埋設され、
前記押さえ部は、前記埋設部の上端部に設けられる項1に記載の太陽光発電装置の固定構造。
【0009】
項3.遮光性を有する遮光部材をさらに備え、
前記押さえ部は、前記遮光部材によって被覆される項1又は2に記載の太陽光発電装置の固定構造。
【0010】
項4.前記太陽光発電装置は、受光面から光が入射することにより発電を行う発電シートを備えており、
前記発電シートの曲げ強さは、10MPa以上150MPa以下である項1乃至3のいずれかに記載の太陽光発電装置の固定構造。
【0011】
項5.前記押さえ部の前記押付面と側面との間の角は、丸みを帯びた形状、或いは面取りが施されている請求項1乃至4のいずれかに記載の太陽光発電装置1の固定構造2。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、固定具が樹脂製であるため、固定具が飛散しても固定具による周辺部の損傷を抑制可能である。
【0013】
また本発明によれば、押さえ部が太陽光発電装置を面的に押さえつけることで(つまり押さえ部の押付面が太陽光発電装置を押さえつけることで)、固定具から太陽光発電装置に加えられる単位面積当たりの固定力を小さく抑えることができる。このため、固定具による太陽光発電装置の破損を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る太陽光発電装置の固定構造を示す概略平面図である。
【
図3】(A)は
図1におけるb-b線概略断面図であり、(B)は(A)のc部分の拡大図であり、(C)は(A)のd-d線に沿って発電部を切断した状態を示す断面図である。
【
図4】(A)~(F)の下図は固定具の断面図である。
【
図5】(A)~(F)は固定具を示す図であり、(A)~(F)の上図は固定具の平面図であり、(A)~(F)の下図は固定具の断面図である。
【
図6】(A)は固定具の断面図であり、(B)は(A)のe部分の拡大図である。
【
図7】(A)は固定具の断面図であり、(B)は(A)のf部分の拡大図である。
【
図8】(A)~(D)は本発明の変形例に係る太陽光発電装置の固定構造を示す概略断面図である。
【
図9】(A)~(E)は本発明の変形例に係る太陽光発電装置の固定構造を示す概略断面図である。
【
図10】(A),(B)は本発明の変形例に係る太陽光発電装置の固定構造を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る太陽光発電装置1の固定構造2を示す概略平面図である。
図2は、
図1におけるa-a線概略断面図である。
図3(A)は、
図1におけるb-b線概略断面図である。
図3(B)は、
図3(A)のc部分の拡大図である。
図3(C)は、
図3(A)のd-d線に沿って発電部を切断した状態を示す断面図である。
【0016】
本実施形態に係る固定構造2は、太陽光発電装置1と、太陽光発電装置1を固定対象3に固定するための複数の固定具4とを備える。本実施形態では、固定対象3が地盤である場合について説明するが、本発明は固定対象3を地盤に限定するものではない。
【0017】
本発明において、「太陽光発電装置」とは、太陽光の入射により発電を行う発電シート5を有する装置を意味する。発電シート5と一体に設けられる部材(後述の繊維含有シート51及び接着層52など)は、「太陽光発電装置」の構成に含まれる。また本明細書でいう「シート」は、その物体の厚さが、平面視における外縁の間の最大長さに対して、10%以下である形状を意味する。平面視における形状が矩形状である場合、「平面視における外縁の間の最大長さ」は、対角線の長さを意味する。平面視における形状が円形状である場合、「平面視における外縁の間の最大長さ」は、直径の長さを意味する。本明細書では、膜状、箔状、フィルム状等も、「シート状」に含まれる。
【0018】
(太陽光発電装置1)
本実施形態では、太陽光発電装置1は、上記の発電シート5のみを備える。発電シート5は、平面視略矩形状に形成されている。発電シート5の形状としては、例えば、平面視略円形状、平面視楕円形状、平面視多角形状等であってもよく、特に制限はない。
【0019】
図3(A)に示すように、発電シート5は、バックシート10と、発電部11と、バリアシート12と、封止剤13と、封止縁材14とを備える。バリアシート12は、発電シート5の上面の大半をなす受光面6を構成する。バックシート10は、発電シート5の下面の大半を構成する。発電部11及び封止剤13は、バックシート10とバリアシート12との間に配置される。封止縁材14は、バックシート10の外周縁15とバリアシート12の外周縁16との間を封止する。
【0020】
発電シートの曲げ強さは、好ましくは10MPa以上150MPa以下であり、より好ましくは20MPa以上50MPa以下である。発電シート5の曲げ弾性率の設定は、主に、バックシート10及びバリアシート12の曲げ強さによって実現され得る。バックシート10及びバリアシート12については、後ほど詳述する。発電シート5の曲げ弾性率が、50MPa以上150MPa以下に設定されることで、施工性を良好にしながら、ひび割れ等の破損が生じることを抑制できる。本明細書でいう「曲げ弾性率」は、例えば、JIS 7171に準拠する測定方法で測定される。
【0021】
本明細書において「発電シート5」には、複数の発電部11を有する太陽光発電シートモジュール、複数の太陽光発電シートモジュールを有する太陽光発電シートストリング、及び複数の太陽光発電シートストリングを有する太陽光発電シートアレイを含む。
【0022】
(バックシート10)
バックシート10は、水蒸気に対するバリア性能、及び外力に対する保護性能を有する。バックシート10は、透光性があってもよいが、必ずしも透光性は必要ではない。本明細書でいう「透光性がある」とは、光の透過率が、入射前の光のピーク波長に対して、10%以上であることを意味する。
【0023】
バックシート10は、可撓性を有する。バックシート10に用いられる材料としては、縦弾性係数が100MPa以上10000MPa以下であることが好ましく、より好ましくは、1000MPa以上5000MPa以下である。バックシート10の材料として、具体的には、例えば、プラスチックフィルム、プラスチック基板等が挙げられる。
【0024】
バックシート10の厚さは、50μm以上であることが好ましく、より好ましくは、100μm以上であり、より好ましくは、200μm以上である。また、バックシート10の厚さは、1000μm以下であることが好ましく、より好ましくは、800μm以下であり、より好ましくは、600μm以下である。バックシート10の厚さが50μm以上1000μm以下であることにより、発電シート5の曲げ弾性率を、50MPa以上150MPa以下に設定しやすい。
【0025】
(発電部11)
発電部11は、光起電力効果を利用した光電変換素子であり、太陽光を受けることで発電を行う発電セル110を備える。本実施形態では、発電部11は、複数の発電セル110が発電シート5の面方向(例えば発電シート5の長手方向或い幅方向)に配置された光電変換ユニットから構成される。なお、発電部11は一つの発電セル110によって構成されてもよい。
【0026】
図3(A)に示すように、発電セル110は、透光性基材20と、透光性導電層21と、発電層22と、電極23と、を備える。透光性基材20、透光性導電層21、発電層22、及び電極23は、バリアシート12からバックシート10に向かう方向に沿って、この順で積層されている。すなわち、透光性基材20がバリアシート12に対向し、電極23がバックシート10に対向するように配置される。
【0027】
(透光性基材20)
透光性基材20は、透光性導電層21、発電層22、及び電極23を支持する。透光性基材20は、透光性を有する。透光性基材20の透光性は、光の透過率が、入射前の光のピーク波長に対して、10%以上であればよいが、好ましくは、50%以上であり、より好ましくは、80%以上である。本明細書では、光の透過率が、入射前の光のピーク波長に対して、80%以上であることを、「透明」であるとする。
【0028】
透光性基材20の材料としては、例えば、無機材料、有機材料、金属材料等が挙げられる。無機材料としては、例えば、石英ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。有機材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET; polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(PEN; polyethylene naphthalene)、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマー等のプラスチック、高分子フィルム等が挙げられる。金属材料としては、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、シリコン等が挙げられる。
【0029】
透光性基材20の厚さは、透光性導電層21、発電層22及び電極23を支持することができれば、特に制限はなく、例えば、30μm以上300μm以下が挙げられる。
【0030】
透光性基材20は、発電セル11の製造過程で必要になる基材であり、必ずしも必要な構成ではない。透光性基材20は、例えば、発電シート5の製造途中にだけ利用されてもよく、製造後又は製造途中に取り除かれてもよい。なお、取り除かれる場合、透光性基材20に代えて、透光性を有さない基材を用いてもよい。
【0031】
(透光性導電層21)
透光性導電層21は、導電性を有する層であり、カソードとして機能する。透光性導電層21は、透光性を有する。透光性導電層21は、透明であることが好ましい。
【0032】
透光性導電層21としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO; Indium Tin Oxide)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO; F-doped Tin Oxide)、ネサ膜等の透明な材料が挙げられる。透光性導電層21は、透光性基材20の表面に対して、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法、塗布法等により形成される。
【0033】
また、透光性導電層21としては、不透光性材料を用いつつ、光を透過可能なパターンを形成することで、透光性を有するように構成してもよい。不透光性材料としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム、チタン、ニッケル、スズ、亜鉛、又はこれらを含む合金等が挙げられる。光を透過可能なパターンとしては、例えば、格子状、線状、波線状、ハニカム状、丸穴状等が挙げられる。
【0034】
透光性導電層21の厚さは、例えば、30nm以上300nm以下であることが好ましい。透光性導電層21が、30nm以上300nm以下であると、可撓性を高く保ちながら、良好な導電性を得ることができる。
【0035】
(発電層22)
発電層22は、光の照射によって光電変換を生じさせる層であり、光を吸収することで生成された励起子から、電子と正孔とを生じさせる。
図3(B)に示すように、発電層22は、正孔輸送層221と、光電変換層222と、電子輸送層223と、を備える。正孔輸送層221、光電変換層222、及び電子輸送層223は、透光性導電層21から電極23に向かう方向に沿って、この順で積層されている。
【0036】
(正孔輸送層221)
正孔輸送層221は、光電変換層222で発生した正孔を、透光性導電層21へ抽出し、かつ光電変換層222で発生した電子が、透光性導電層21へ移動するのを妨げる。正孔輸送層221の材料としては、例えば、金属酸化物を用いることができる。金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化リチウム、酸化カルシウム、酸化セシウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。また、その他、デラフォサイト型化合物半導体(CuGaO2)、酸化銅、チオシアン酸銅(CuSCN)、五酸化バナジウム(V2O5)、酸化グラフェン等が用いられてもよい。また、正孔輸送層221の材料として、p型有機半導体又はp型無機半導体を用いることもできる。
【0037】
正孔輸送層221の厚さは、例えば、1nm以上1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは、10nm以上500nm以下であり、更に好ましくは、10nm以上50nm以下である。正孔輸送層221の厚さが、1nm以上1000nm以下であれば、正孔の輸送が実現できる。
【0038】
(光電変換層222)
光電変換層222(光活性層)は、吸収した光を光電変換する層である。光電変換層222の材料としては、吸収した光を光電変換することができれば特に制限はない。以下では、光電変換層222の一例として、ペロブスカイト化合物が用いられる光電変換層を挙げて説明する。ペロブスカイト化合物を含む光電変換層222は、入射光の角度に対する発電効率の依存性(以下、入射角依存性という場合がある)が比較的低いという利点がある。これにより、本実施形態では、より高い発電効率を得ることができる。
【0039】
ペロブスカイト化合物は、ペロブスカイト結晶構造体及びこれに類似する結晶を有する構造体である。ペロブスカイト結晶構造体は、組成式 ABX3 で表される。この組成式において、例えば、Aは有機カチオン、Bは金属カチオン、Xはハロゲンアニオンを示す。ただし、Aサイト、Bサイト及びXサイトはこれに限定されない。
【0040】
Aサイトを構成する有機カチオンの有機基としては、特に制限はなく、例えば、アルキルアンモニウム誘導体、ホルムアミジニウム誘導体等が挙げられる。Aサイトを構成する有機カチオンは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0041】
Bサイトを構成する金属カチオンの金属としては、特に制限はなく、例えば、Cu、Ni、Mn、Fe、Co、Pd、Ge、Sn、Pb、Eu等が挙げられる。Bサイトを構成する金属カチオンは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0042】
Xサイトを構成するハロゲンアニオンのハロゲンには、特に制限はなく、例えば、F、Cl、Br、I等が挙げられる。Xサイトを構成するハロゲンアニオンは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0043】
光電変換層222の厚さは、例えば、1nm以上100000nm以下が好ましく、より好ましくは、5nm以上50000nm以下であり、更に好ましくは、10nm以上1000nm以下である。光電変換層222の厚さが、1nm以上100000nm以下であると、光電変換効率が向上する。
【0044】
(電子輸送層223)
電子輸送層223は、光電変換層222で発生した電子を電極23へ抽出し、かつ光電変換層222で発生した正孔が、電極23へ移動するのを妨げる。電子輸送層223としては、例えば、ハロゲン化合物又は金属酸化物のいずれかを含むことが好ましい。
【0045】
ハロゲン化合物としては、例えば、ハロゲン化リチウム(LiF、LiCl、LiBr、LiI)、ハロゲン化ナトリウム(NaF、NaCl、NaBr、NaI)等が挙げられる。金属酸化物を構成する元素としては、チタン、モリブデン、バナジウム、亜鉛、ニッケル、リチウム、カリウム、セシウム、アルミニウム、ニオブ、スズ、バリウム等が挙げられる。また、電子輸送層223の材料として、n型有機半導体又はn型無機半導体を用いることもできる。
【0046】
電子輸送層223の厚さは、例えば、1nm以上1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは、10nm以上500nm以下であり、更に好ましくは、10nm以上50nm以下である。電子輸送層223の厚さが、1nm以上1000nm以下であれば、電子の輸送が実現できる。
【0047】
(電極23)
電極23は導電性を有し、アノードとして機能する。電極23は、光電変換層222によって生じた光電変換に応じて、光電変換層222から電子を取り出すことができる。電極23は、透光性を有していてもよいし、不透光性材料で構成されてもよい。電極23の材料としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム、チタン、ニッケル、スズ、亜鉛、又はこれらを含む合金等が挙げられる。
【0048】
(バリアシート12)
バリアシート12は、透光性及び可撓性を有しており、透明であることが好ましい。バリアシート12は、水蒸気に対するバリア性能、及び外力に対する保護性能を有する。
【0049】
バリアシート12に用いられる材料としては、縦弾性係数が100MPa以上10000MPa以下であることが好ましく、より好ましくは、1000MPa以上5000MPa以下である。バリアシート12の材料として、具体的には、例えば、プラスチックフィルム、ビニルフィルム等が挙げられる。
【0050】
バリアシート12の厚さは、50μm以上であることが好ましく、より好ましくは、100μm以上であり、より好ましくは、200μm以上である。また、バリアシート12の厚さは、1000μm以下であることが好ましく、より好ましくは、800μm以下であり、より好ましくは、600μm以下である。バリアシート12の厚さが50μm以上1000μm以下であることにより、発電シート5の曲げ弾性率を、50MPa以上150MPa以下に設定しやすい。
【0051】
(封止剤13)
封止剤13は、バリアシート12とバックシート10との間に発電層22を配置した状態で、バリアシート12とバックシート10との間に充填される。封止剤13は、発電層22に対して、発電層22の周囲から浸水するのを妨げる。封止剤13は、透光性を有しており、好ましくは、透明である。
【0052】
封止剤13として、例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA; Ethylene-vinyl acetate)、ポリオレフィン、ブチルゴム、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール等を使用できる。
【0053】
(封止縁材14)
封止縁材14は、バックシート10とバリアシート12との間に複数の発電セル110及び封止剤13が配置された状態で、バックシート10の外周縁15とバリアシート12の外周縁16との間を封止する。発電シート5の外周縁17は封止縁材14の外周縁によって構成される。
図3(A)に示すように、封止縁材14は、第1接着部101と、第2接着部102と、第1接着部101と第2接着部102とをつなぐ封着部103と、を備える。第1接着部101は、発電シート5の受光面6(バリアシート12の上面)に接着される。第2接着部102は、発電シート5の下面(バックシート10の下面)に接着される。第1接着部101、封着部103、及び第2接着部102は、一体に形成されている。
【0054】
封止縁材14の材料としては、例えば、ブチルゴム、シリコーンゴム等からなるテープ材が挙げられる。
【0055】
(発電シート5の作用)
発電シート5の受光面6から発電シート5に光が照射されると、発電層22の光電変換層222が光を吸収して光電変換を行うことで、光電変換層222で電子と正孔とが生じる。当該電子が電子輸送層223を介して電極23(アノード)へ抽出され、正孔が正孔輸送層221を介して透光性導電層21(カソード)へ抽出されることで、透光性導電層21から電極23へと電流が流れる(すなわち発電が行われる)。
【0056】
発電部11を構成する光電変換ユニットでは、各発電セル110の電極23(アノード)に延長部23aが設けられる(
図3(C))。当該電極23の延長部23aは透光性導電層21(カソード)側へ延びる。隣り合う2つの発電セル110,110では、一方のセル110の電極23の延長部23aが、他方のセル110の透光性導電層21に接合される。この接合により、発電シート5に光が照射される間では、発電部11(光電変換ユニット)の一方側端にある透光性導電層21Aから、発電部11の他方側端にある電極23Aへと電流が流れる(
図3(C)では電流の流れを矢印で示している)。当該電流は、図示しない配電線を介して取り出される。
【0057】
発電部11を上記の光電変換ユニットから構成することで、一部の発電セル110で不具合が生じても、発電部11からの電気取り出し量を安定化させることができる。
【0058】
なお各発電セル110の電極23(アノード)に延長部23aを設けることの代わりに、各発電セル110の透光性導電層21(カソード)に、電極23(アノード)側へ延びる延長部を設けてもよい。この場合、隣り合う2つの発電セル110,110では、一方のセル110の透光性導電層21の延長部が、他方のセル110の電極23に接合される。このようにしても上記と同様の効果が得られる。
【0059】
また発電部11に透光性基材20を設ける場合には、発電部11の製造を容易にする観点から、
図3(C)に示すように、各発電セル110の透光性導電層21、発電層22及び電極23を、共通の透光性基材20に支持させることが好ましい。
【0060】
また発電部11が一つの発電セル110によって構成される場合には、電極23から透光性導電層21へと流れる電流が配電線を介して取り出される。
【0061】
なお発電シート5には、複数の発電部11が含まれていてもよい。この場合、複数の発電部11は、発電シート5の面方向に配置されて、直列又は並列に電気的に接続される。
【0062】
発電部11が光電変換ユニットから構成される場合には、複数の発電部11を直列に接続するために、隣り合う2つの発電部11,11において、一方の発電部11の端にある透光性導電層21Aと、他方の発電部11の端にある電極23Aとを、配電線を介して接続することが行われる。複数の発電部11を並列に接続する場合には、隣り合う2つの発電部11,11の端にある透光性導電層21A,21A同士と、上記隣り合う2つの発電部11,11の端にある電極23A,23A同士とを、それぞれ配電線を介して接続することが行われる。
【0063】
また発電部11が一つの発電セル110から構成される場合には、複数の発電部11を直列に接続するために、隣り合う2つの発電部11,11において、一方の発電部11の透光性導電層21と、他方の発電部11の電極23とを配電線を介して接続することが行われる。複数の発電部11を並列に接続する場合には、隣り合う2つの発電部11,11の透光性導電層21,21同士と、上記隣り合う2つの発電部11,11の電極23,23同士とを、それぞれ配電線を介して接続することが行われる。
【0064】
なお発電部11が、上記の光電変換ユニット及び一つの発電セル110のいずれから構成される場合においても、隣り合う発電部11,11の間の距離は、0mm超であればよく、好ましくは2mm以上であり、より好ましくは10mm以上であり、更に好ましくは、15mm以上である。また、隣り合う発電部11,11の間の距離は、100mm以下が好ましく、より好ましくは50mm以上であり、更に好ましくは、20mm以下である。
【0065】
(固定具4)
固定具4の各々は、樹脂製であり、太陽光発電装置1を固定対象3(地盤)側へ押し付ける押付面30aを有した押さえ部30と、押さえ部30と一体に設けられ、一部31aが固定対象3(地盤)に埋設される埋設部31とを備える。固定具4を形成する樹脂として、例えば、ポリエチレン、塩化ビニル、ABS、ポリプロピレン、PPS、ポリカーボネートを使用できる。
【0066】
本実施形態では、太陽光発電装置1の四つの角部と各辺の中央に固定具4を設ける例を示しているが、固定具4の数や位置は図示例に限定されない。太陽光発電装置1を固定可能な限りにおいて、任意の複数の固定具4が任意の位置に設けられ得る。なお太陽光発電装置1の発電性能を低下させない観点から、太陽光発電装置1における発電部11以外の範囲に固定具4を設けることが好ましい(
図1)。この観点から例えば、固定具4は封止縁材14(
図3(A))の範囲に設けられる。
【0067】
(埋設部31)
図2に示すように、埋設部31は、太陽光発電装置1を上下方向に貫通しており、埋設部31において太陽光発電装置1の下側に延び出た下側部分31aが固定対象3(地盤)に埋設され、埋設部31の上端部に押さえ部30が設けられる。上述のように固定具4が封止縁材14の範囲に設けられる場合には、埋設部31は封止縁材14(
図3)を上下方向に貫通するものとされる。
【0068】
本実施形態では、埋設部31は円柱状とされるが、固定対象3への埋設ができれば、埋設部31の形状は特に限定されず、例えば埋設部31は板状とされてもよい。
【0069】
また
図4(A),
図4(B)に示すように、埋設部31は、押さえ部30から延びる円柱状又は板状の本体部32と、本体部32の外周面から環状に突出する一又は複数の突出部33とを備えていてもよい。複数の突出部33が設けられる場合には、複数の突出部33は本体部32の長手方向に間隔をあけて設けられる(
図4(A))。一の突出部33が設けられる場合には、例えば本体部32における押さえ部30と反対側の端部(本体部32の下端部)に突出部33が設けられる(
図4(B))。また上記の突出部33を設ける場合には、押さえ部30側(上側)になるほど突出部33の外径を大きくすることが好ましい。このようにすることで、固定対象3への埋設部31の挿入の容易さと、固定対象3からの埋設部31の抜けにくさとを両立できる。
【0070】
また
図4(C)に示すように、埋設部31は、押さえ部30から延びる円柱状の本体部34と、本体部34の外周面に形成された螺旋状の螺子部35と備えていてもよい。この場合には、埋設部31を太陽光発電装置1及び固定対象3に順次ねじ込むことで、埋設部31が、太陽光発電装置1を上下方向に貫通して、埋設部31の下側部分31aが固定対象3に埋設される。
【0071】
また
図4(D),
図4(E),
図4(F),
図4(G)に示すように、埋設部31は、押さえ部30から延びる筒状の本体部36を備えていてもよい。このようにすれば、埋設部31が固定対象3に接触する面積を大きく確保できるので、固定具4によって太陽光発電装置1が固定対象3に固定される力を向上できる。
【0072】
また
図4(E)に示すように、埋設部31は、本体部36の内周面から環状に突出する一又は複数の突出部37をさらに備えていてもよい。また
図4(F)に示すように、埋設部31は、本体部36の外周面から環状に突出する一又は複数の突出部38を備えていてもよい。また
図4(G)に示すように、埋設部31は、本体部36の内周面及び外周面からそれぞれ環状に突出する一又は複数の突出部37,38を備えていてもよい。以上のようにすれば、固定具4によって太陽光発電装置1が固定される力をより一層向上できる。
【0073】
また本体部36の内周面に突出部37を設ける場合(
図4(E),
図4(G))には、押さえ部30側(上側)になるほど突出部37の内径が小さくなるように突出部37を設けることが好ましい。また本体部36の外周面に突出部38を設ける場合(
図4(F),
図4(G))には、押さえ部30側(上側)になるほど突出部38の外径が大きくなるように突出部38を設けることが好ましい。
【0074】
固定対象3に埋設される埋設部31の長さLは、特に限定されるものではないが、好ましくは10mm以上であり、より好ましくは25mm以上であり、より好ましくは100mm以上である。また上記の埋設部31の長さLは、好ましくは500mm以下であり、より好ましくは200mm以下である。
【0075】
また押さえ部30から延びる埋設部31の部分は、延伸方向Jでその直径が変わらないように形成されていてもよいし、延伸方向Jで次第にその直径が変わるように形成されてもよい(例えば下端部が先細りとなるように形成されていてもよい)。上記の「押さえ部30から延びる埋設部31の部分」は、
図2の例における埋設部31の全部や、
図4(A),
図4(B),
図4(C),
図4(D),
図4(E),
図4(F),
図4(G)の例における本体部32,34,36に相当する。また上記の直径は、上記の「押さえ部30から延びる埋設部31の部分」が円柱状もしくは円筒状であれば、その直径もしくは外径を指し、上記の「押さえ部30から延びる埋設部31の部分」が円柱状もしくは円筒状でない場合は、上記の「押さえ部30から延びる埋設部31の部分」の横断面の外接円の直径を指す。上記の横断面は、埋設部31の延伸方向Jと直交する方向Kにおける断面を意味する。
【0076】
また押さえ部30から延びる埋設部31の部分の直径は、特に限定されるものではないが、好ましくは10mm以上であり、より好ましくは25mm以上である。また上記の押さえ部30から延びる埋設部31の部分の直径は、好ましくは200mm以下であり、より好ましくは150mm以下である。延伸方向Jで埋設部31の横断面が変わる場合は、上記の直径は、「押さえ部30から延びる埋設部31の部分」の最大直径を意味する。
【0077】
(押さえ部30)
押さえ部30は、下端における直径が、上記の「押さえ部30から延びる埋設部31の部分の直径」よりも大きなものである。押さえ部30の下面は埋設部31の外側へ延びている。当該押さえ部30の下面は、上記の押付面30aを構成しており、太陽光発電装置1の上面(例えば封止縁材14の上面或いは受光面6)を固定対象3側に押し付ける。上述したように封止縁材14の範囲に固定具4が設けられる場合には、押付面30aは、封止縁材14の上面を固定対象3側に押し付けるものとされる。
【0078】
本実施形態では、押さえ部30の横断面形状は円形を呈しているが(
図1,
図5(A))、太陽光発電装置1を押さえ付けることができれば、押さえ部30の横断面形状は特に限定されない。例えば、押さえ部30の横断面形状は、六角形状(
図5(B))、角が尖った四角形(
図5(C))、角に丸みのある四角形(
図5(D))、十字状(
図5(E))、或いは卍字状(
図1,
図5(F))であってもよい。なお上記の押さえ部30の横断面形状とは、埋設部31の延伸方向Jと直交する方向Kにおける押さえ部30の断面の形状を意味する。
【0079】
また押さえ部30の押さえ付けによる太陽光発電装置1の損傷を抑制する観点から、
図6(A)及び
図6(B)に示すように、押さえ部30の押付面30aと側面30bとの間の角30cは丸みを帯びた形状とすることが好ましい。或いは同様の観点から、
図7(A)及び
図7(B)に示すように、押さえ部30の押付面30aと側面30bとの間の角30cは面取りが施されたものであってもよい。上記のようにする場合には、埋設部31の延伸方向Jにおける押さえ部30の厚みTに対する角30cの曲率半径r(
図6(B))の比率(r/T×100%)、或いは、上記の厚みTに対する方向J,Kにおける面取りの幅t1,t2(
図7(B))の比率(t1/T×100%,t2/T×100%)を、1%以上100%以下とすることが好ましく、5%以上75%以下とすることがより好ましく、10%以上50%以下とすることが好ましい。上記の面取りの幅t1は、埋設部31の延伸方向Jにおける角30cの面取りの幅を意味し、上記の面取りの幅t2は、埋設部31の延伸方向Jと直交する方向Kにおける角30cの面取りの幅を意味する。また曲率半径r或いは面取りの幅t1,t2を、0.1mm以上15mm以下とすることが好ましく、0.5mm以上10mm以下とすることがより好ましく、1mm以上5mm以下とすることがさらに好ましい。
【0080】
押付面30aの直径(すなわち押さえ部30の下端における直径)は、特に限定されるものではないが、押さえ部30により太陽光発電装置1を広く固定対象3に押さえ付ける観点から、好ましくは30mm以上であり、より好ましくは50mm以上である。また、押付面30aの直径は、好ましくは500mm以下であり、より好ましくは200mm以下である。なお上記の「押付面30aの直径」は、押付面30aの外周縁の形状が円形状或いは円環状であれば押付面30aの直径或いは外径を指し、押付部80Aの外周縁の形状が円形状或いは円環状でない場合は押付面30aの外接円の直径を指す。
【0081】
押付面30aの面積(すなわち押さえ部80Aの下面の面積)は、特に限定されるものではないが、押付面30aにより太陽光発電装置1をしっかりと強く固定対象3に押さえ付ける観点から、好ましくは650mm2以上であり、より好ましくは2000mm2以上である。また、押付面30aの面積は、特に限定されるものではないが、好ましくは200,000mm2以下であり、より好ましくは20,000mm2以下である。
【0082】
上記の「押付面30aの直径」と上記の「押さえ部30から延びる埋設部31の部分の直径(埋設部31の延伸方向Jで直径が変わる場合は最大直径)」との比率は、特に限定されるものではないが、太陽光発電装置1を広く押さえつけて固定対象3に固定するためには、上記の「押付面30aの直径」は、上記の「押さえ部30から延びる埋設部31の部分の直径」の1.1倍以上とすることが好ましく、1.8倍以上とすることがより好ましい。また、上記の「押付面30aの直径」は、上記の「押さえ部30から延びる埋設部31の部分の直径」の2.5倍以下とすることが好ましい。
【0083】
(作用効果)
本実施形態に係る固定構造2によれば、固定具4が樹脂製であるため、強風等により太陽光発電装置1に強い外力が加わって固定具4が飛散しても、固定具4による周辺部材の損傷を抑制できる。
【0084】
また押さえ部30が太陽光発電装置1を面的に押さえつけることで(つまり押さえ部30の押付面30aが太陽光発電装置1を押さえつけることで)、固定具4から太陽光発電装置1に加えられる単位面積当たりの固定力を小さく抑えることができる。このため、固定具4による太陽光発電装置1の破損を抑制可能である。なお本効果を確実に得るために、太陽光発電装置1の上面の面積S1に対する各押さえ部30の押付面30aの面積S2の比率(S2/S1×100%)を、0.1%以上、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは5%以上とし、且つ、太陽光発電装置1の上面の面積S1に対する「固定構造2に設けられる全ての押さえ部30の押付面30aの面積S2の合計ΣS2」の比率(ΣS2/S1×100%)を、5%以上、より好ましくは10%、さらに好ましくは20%とすることが好ましい。
【0085】
また上記の効果を確実に得るために、太陽光発電装置1の上面の面積S1から太陽光発電装置1の発電部11の面積S3の総和ΣS3を引いた面積S4(S4=S1-ΣS3)に対する、各押さえ部30の押付面30aの面積S2の比率(S2/S4×100%)を、10%以上とすることが好ましく、50%以上とすることがより好ましく、80%以上とすることがさらに好ましい。なお必ずしも。比率(S2/S1×100%)及び比率(ΣS2/S1×100%)を上記の値に調整することと、比率(S2/S4×100%)を上記の値に調整することとを両立する必要はなく、いずれか一方のみの調整を行うようにしてもよい。
【0086】
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されず種々改変できる。以下、本発明の変形例を説明する。なお以下では上記実施形態と相違する点を中心に説明し、上記実施形態と共通する点については同一の符号を付して説明を省略する。
【0087】
例えば、本発明の固定構造は、
図8(A)~
図8(D)に示すように変形されてもよい。
【0088】
図8(A)に示す固定構造40は、上記実施形態に示した太陽光発電装置1及び固定具4に加えて、遮光性を有する遮光部材50をさらに備える。遮光部材50は固定具4毎に設けられるものであって、各固定具4の押さえ部30はそれぞれ遮光部材50によって被覆される。遮光部材50の材料として、例えば、アルミニウム等の金属を使用できる。遮光部材50が金属製とされる場合には、接着剤やボルト等を用いて遮光部材50を押さえ部30に固定することが行われる。上記の固定構造40によれば、遮光部材50が光を遮ることで、光に含まれる紫外線によって固定具4が劣化することを防止できる。
【0089】
図8(B),
図8(C)に示す固定構造41,42は、太陽光発電装置1が、発電シート5と、発電シート5よりも固定対象3(地盤)側に配置される繊維含有シート51と、発電シート5と繊維含有シート51とを接着する接着層52とを備える。繊維含有シート51の外周部51aは、発電シート5の外側に延び出る。各固定具4の押さえ部30は、繊維含有シート51の外周部51aを固定対象3側へ押し付ける押付面30aを有する。固定部の埋設部31は、繊維含有シート51の外周部51aを貫通しており、外周部51aから延び出た埋設部31の一部31a(埋設部31の下側部分)が固定対象3に埋設される。
【0090】
繊維含有シート51は、繊維を含有するシートである。繊維含有シート51として、繊維の周囲が樹脂で被覆された繊維強化シート、或いは不織布を使用できる。この場合、繊維含有シート51に含ませる繊維の材料として例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリオレフィン、アスファルト、珪砂が使用される。繊維含有シート51の引張強度は1N/cm以上10000N/cm以下であることが好ましい。繊維含有シート51の厚さは、例えば、0.1mm以上100mm以下であることが好ましい。
【0091】
接着層52は、繊維含有シート51と発電シート5のバックシート10(
図3(A))とを接着する層である。接着層52の材料として、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シアノアクリレート樹脂、アクリル樹脂、クロロプレンゴム、スチレン、ブタジエンゴム、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上を含む樹脂組成物を使用できる。接着層52の厚さは、例えば、0.1mm以上100mm以下であることが好ましい。また接着層52を介する繊維含有シート51とバックシート10との接合を安定して維持する観点から、接着層52を介する繊維含有シート51とバックシート10のせん断剥離強度を0.1N/cm以上とすることが好ましい(上記のせん断剥離強度は、JIS K6850の方法によって計測される値である)。
【0092】
上記の固定構造41,42(
図8(B),
図8(C))によれば、太陽光が繊維含有シート51によって遮られることで、草木が固定対象3(地盤)に生えてくることを防止できる。
【0093】
なお
図8(B)に示す固定構造41では、光による各固定具4の劣化を防止するために、各固定具4の押さえ部30が、それぞれ固定対象3(地盤)を構成する物質53(土)によって被覆されている。また
図8(C)に示す固定構造42では、各固定具4の劣化を防止するために、固定構造40(
図8(A))と同様に、各固定具4の押さえ部30が、それぞれ遮光部材50によって被覆されている。
【0094】
また本発明は、太陽光発電装置1に設けられる発電シート5以外のシートを、上記の樹脂含有シート51に限定するものではなく、上記の発電シート5及び樹脂含有シート51と異なる他のシートが太陽光発電装置1に設けられてもよい。
【0095】
図8(D)に示す固定構造43では、太陽光発電装置1から延び出た埋設部31の一部31a(埋設部31の下側部分)が、固定対象3(地盤)中に設けられるコンクリート54に埋設される。固定構造43によれば、埋設部31がコンクリート54に埋設されることで、固定対象3が軟弱地盤である場合でも、固定具4によって太陽光発電装置1を安定して固定できる。なお固定構造では、
図4(C)に示した螺子部35を備える固定具4を使用することが好ましい。この場合、コンクリート54に形成した螺子穴に固定具4をねじ込むことで、固定具4がコンクリート54に埋設される。
【0096】
なお
図8(A),
図8(B),
図8(C)に示す固定構造40,41,42においても、上記の固定構造43(
図8(D))と同様に、太陽光発電装置1から延び出た埋設部31の一部31a(埋設部31の下側部分)が、固定対象3(地盤)中に設けられるコンクリート54に埋設されてもよい。
【0097】
また本発明の固定構造が備える固定具は、上記の固定具4に限定されず、太陽光発電装置1を固定可能な様々な樹脂製の固定具とされ得る。
【0098】
例えば本発明の固定構造に設けられる樹脂製の固定具は、
図9に示すように、太陽光発電装置1を貫通しない埋設部72を備えたものとされ得る。
【0099】
図9(A),
図9(B),
図9(C),
図9(D),
図9(E)に示す固定構造60,61,62,63,64は、それぞれ
図2,
図8(A),
図8(B),
図8(C),
図8(D)に示す固定構造2,40,41,42,43から固定具を変更したものである。これら固定構造60,61,62,63,64では、L字状の断面を有する固定具70が設けられている。当該固定具70では、押さえ部71の幅一方側から埋設部72が延びており、押さえ部71の幅他方側の下面が、太陽光発電装置1を固定対象3側に押し付ける押付面71aを構成する。
図9(A),
図9(B),
図9(E)に示す固定構造60,61.64では、埋設部72が発電シート5の外側面に沿うように固定具70が配置されて、埋設部31の一部又は全体が固定対象3に埋設される(
図9(E)の固定構造64について詳細には、埋設部72の一部又は全体が固定対象3中のコンクリート54に埋設される)。
図9(C),
図9(D)に示す固定構造62,63では、埋設部72が繊維含有シート51の外側面に沿うように固定具70が配置されて、埋設部72の一部又は全体が固定対象3に埋設される。なお上記の固定具70は、押さえ部71の幅一方側から複数の埋設部72が延びたものとされてよい。この場合、固定構造60,61.64では、一の埋設部72が発電シート5の外側面に沿うものとされ、固定構造62,63では、一の埋設部72が繊維含有シート51の外側面に沿うものとされる。
【0100】
固定構造60,61,62,63,64では、上記の特徴を有する固定具70が一又は複数設けられ得る。複数の固定具70が設けられる場合には、例えば
図10(A)に示すように、固定具70は太陽光発電装置1の角部や辺の途中位置に設けられる。また一の固定具70が設けられる場合には、例えば
図10(B)に示すように、固定具70は太陽光発電装置1の外周を囲むものとされる。
【0101】
なお図示例では、押さえ部71の平面形状は、角の尖った多角形状或いは矩形環状とされているが(
図10(A),
図10(B))、押さえ部71の平面形状は、角に丸みのある多角形状或いは矩形環状とされてもよい。また押さえ部71の押付面71aと側面71bとの間の角71c(
図9(A)~
図9(E))は、
図6及び
図7に示す例と同様に、丸みを帯びた形状、或いは面取りが施されていることが好ましい。
【0102】
また
図9では、板状の埋設部72を固定具70に設ける例を示しているが、埋設部72は、押さえ部71から延びる板状の本体部に加えて、
図4(A),
図4(B)に示す突出部33と同様、前記本体部の外周面から突出する一又は複数の突出部を備えていてもよい。また上記の突出部が設けられる場合には、押さえ部71側(上側)になるほど突出部の外径を大きくすることが好ましい。
【0103】
また例えば、埋設部72は、
図4(D)~
図4(G)に示す本体部と同様、押さえ部71から延びる筒状の本体部を備えていてもよい。またこの場合には、埋設部72は、本体部の内周面及び/又は外周面から環状に突出する一又は複数の突出部をさらに備えていてもよい。
【0104】
また例えば
図10(B)に示す固定具70は、太陽光発電装置1の外周に沿って配置される環状の押さえ部71から、複数の埋設部が延びるものとされてもよい。複数の埋設部は、押さえ部71の周方向に間隔をあけて設けられるものであり、例えば、円柱状、板状、
図4(A),
図4(B),
図4(D),
図4(E),
図4(F),
図4(G)に示す埋設部31と同様の形状を呈するものとされる。
【0105】
また上記の固定具70も、固定具4と同様に、例えば、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンサルファイド等の樹脂を用いて形成される。また対候性の観点から固定具70の色は黒であることが好ましい。
【0106】
また上記実施形態では、固定対象3が地盤である例を示したが、固定対象3を屋根材等の建造物としてもよい。上記の屋根材としては、例えば、折板屋根、スレート屋根、ルーフデッキ、瓦棒葺き、立平葺き等に用いられる屋根材が挙げられる。屋根材は、縦葺きであってもよいし、横葺きであってもよい。固定対象3が建造物とされる場合には、固定具4は、太陽光発電装置1を建造物(固定対象3)側へ押し付ける押付面を有した押さえ部と、当該押さえ部と一体に設けられ、一部又は全体が建造物(固定対象3)に埋設される少なくとも一つの埋設部とを備えたものとされる。
【0107】
また上記実施形態では、太陽光発電装置の一形態として、ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有する太陽光発電装置を挙げて説明をしたが、本発明では、同等の可撓性を有する太陽光発電装置を使用することができる。
【0108】
また本発明の固定構造が備える太陽光発電装置には、上述したペロブスカイト化合物を含む光電変換層222の代わりに、アモルファスシリコン、或いは非シリコン系材料(半導体材料CIGS)を含む光電変換層が設けられてもよい。なおペロブスカイト化合物を光電変換層に含めるようにすれば、ペロブスカイト化合物の発電効率の依存性が光の入射角度に対して比較的低いことで、高い発電効率を得ることができる。また、光電変換層は、ペロブスカイト化合物、アモルファスシリコン、及び非シリコン系材料のいずれか複数を複合したタンデム型の積層構造としてもよい。非シリコン系材料が用いられた光電変換層は、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)を含む半導体材料CIGSが用いられており、光電変換層の厚さを薄くしやすい。
【0109】
また固定具4,70が飛散した際に固定具4による周辺物の破損を防止する観点から、周辺物を破損させにくい材料である軽量な金属や多孔質な金属を用いて固定具4,70を形成してもよい。固定具4,70を形成する金属は、設置個所の安全基準によって適宜選定することができる。金属を選定することで,固定具4,70を小型化・薄肉化できるため、固定具4,70を樹脂単独で製造することに比べて、固定具4,70の軽量化・小型化が可能となる場合もある。
【0110】
金属を用いて固定具4,70を形成する場合には,固定具4,70そのものの強度及び対候性を向上することもできる。
【0111】
また固定具4,70の強度を向上させる別の手段として、固定具4,70の材料を、樹脂の中に強化繊維を含む複合強化材料とすることも挙げられる。
【0112】
上記の複合強化材に含まれる強化繊維の材質は、特に限定されず、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、金属繊維等が挙げられる。繊維の含有量は、体積中に5%以上であることが好ましく、15%以上がより好ましく、30%以上がより好ましい。これにより、固定具4,70を適切な強度とすることができる。一方、強化繊維の含有量を、体積中に80%以下、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは60%以下とすることで、成形性を付与することができる。なお、強化繊維の平均繊維長さは、押さえ部30,71の直径(延伸方向Jで押さえ部30,71の直径が変わる場合は最大直径)の100%以下、より好ましくは75%以下、より好ましくは50%以下であるとよい。上記の押さえ部30,71の直径とは、押さえ部30,71の横断面形状が円形状であればその直径を指し、押さえ部30,71の横断面形状が円形状でない場合は押さえ部30,71の横断面の外接円の直径を指す。
【0113】
また、本発明の固定構造には、太陽光発電装置の代わりに、光エネルギーを電力以外のエネルギーに変換する装置が設けられてもよい。この種の装置として、例えば光エネルギーを熱エネルギーに変換する光発熱シート(太陽光駆動型熱電変換デバイス)等があげられる。
【符号の説明】
【0114】
1 太陽光発電装置
4,70 固定具
6 受光面
11 発電シート
30,71 押さえ部
30a,71a 押さえ部の押付面
30b 押付面の外周縁
31,72 埋設部
31a 埋設部の下側部分
50 遮光部材