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特開2024-46365トランスグルタミナーゼ産生促進剤およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046365
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】トランスグルタミナーゼ産生促進剤およびその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/365 20060101AFI20240327BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240327BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240327BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240327BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
A61K8/365
A61Q19/00
A61P17/00
A61P43/00 105
A61K31/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151704
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 ひとみ
(72)【発明者】
【氏名】菱谷 梨江
【テーマコード(参考)】
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC432
4C083BB51
4C083CC03
4C083DD22
4C083DD23
4C083EE12
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA07
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA36
4C206MA48
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZB21
4C206ZC41
(57)【要約】
【課題】皮膚の表皮細胞や角質細胞の形成過程などに作用するトランスグルタミナーゼの産生を向上できるトランスグルタミナーゼ産生促進剤を提供する。
【解決手段】3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩を含むトランスグルタミナーゼ産生促進剤を調製する。前記3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩はR体を含んでいてもよい。前記トランスグルタミナーゼ産生促進剤は、トランスグルタミナーゼ1の産生を促進する促進剤であってもよい。前記トランスグルタミナーゼ産生促進剤は、角質細胞の形成過程でトランスグルタミナーゼの産生を促進する促進剤であってもよい。前記トランスグルタミナーゼ産生促進剤は、乾燥肌の皮膚でトランスグルタミナーゼの産生を促進する促進剤であってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩を含むトランスグルタミナーゼ産生促進剤。
【請求項2】
前記3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩がR体を含む請求項1記載のトランスグルタミナーゼ産生促進剤。
【請求項3】
トランスグルタミナーゼ1の産生を促進する請求項1または2記載のトランスグルタミナーゼ産生促進剤。
【請求項4】
角質細胞の形成過程でトランスグルタミナーゼの産生を促進する請求項1または2記載のトランスグルタミナーゼ産生促進剤。
【請求項5】
乾燥肌の皮膚でトランスグルタミナーゼの産生を促進する請求項1または2記載のトランスグルタミナーゼ産生促進剤。
【請求項6】
3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩を含み、かつトランスグルタミナーゼの産生を促進するための組成物。
【請求項7】
経皮用組成物である請求項6記載の組成物。
【請求項8】
液状または半固形状組成物である請求項6または7記載の組成物。
【請求項9】
スキンケア用品である請求項6または7記載の組成物。
【請求項10】
コーニファイドエンベロープを構成するタンパク質の産生を促進するためのタンパク質産生促進剤であって、3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩を含むタンパク質産生促進剤。
【請求項11】
前記タンパク質がインボルクリンおよび/またはフィラグリンである請求項10記載のタンパク質産生促進剤。
【請求項12】
3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩を含むコーニファイドエンベロープ形成能向上剤。
【請求項13】
3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩を含むリピッドエンベロープ形成能向上剤。
【請求項14】
3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩を含む皮膚のバリア機能向上剤。
【請求項15】
請求項1または2記載のトランスグルタミナーゼ産生促進剤を皮膚に浸透させることにより、角質細胞の形成過程でトランスグルタミナーゼの産生を促進する方法。
【請求項16】
請求項1または2記載のトランスグルタミナーゼ産生促進剤を皮膚に浸透させることにより、角質を正常化する方法。
【請求項17】
請求項1または2記載のトランスグルタミナーゼ産生促進剤を皮膚に浸透させることにより、皮膚のバリア機能を向上させる方法。
【請求項18】
24時間以上に亘って間欠的に繰り返してトランスグルタミナーゼ産生促進剤を皮膚に浸透させる請求項15記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩を含むトランスグルタミナーゼ産生促進剤およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの皮膚は、表面側から、表皮、真皮、皮下組織の順で積層された三層構造を有しており、さらに表皮の皮膚表面側では、皮膚の最外層としての角質(角層)が形成されている。この角質は、タイルまたはレンガ状に積層された複数の角質細胞(角層細胞)と、これらの角質細胞間に存在するスフィンゴ脂質(セラミド)などの細胞間脂質とで形成されている。また、角質は肌を潤すための水分を蓄えており、詳しくは、前記角質細胞内には、水分を蓄えたNMF(天然の保湿因子)が保持され、前記角質細胞間にも、細胞間脂質と共に水分が保持されている。特に、角質細胞の外壁構造は、コーニファイドエンベロープ(cornified envelopeまたはCE)と称され、各種の構成タンパク質で形成されており、皮膚のバリア機能を担っている。
【0003】
前記角質細胞は、表皮の最深部に存在する基底層で形成された角化細胞(基底細胞)が、新たに発生する角化細胞に押し上げられて有棘細胞、顆粒細胞に変化しながら皮膚表面に移行する過程で、インボルクリン(IVN)、フィラグリン(FLG)などのCEを構成するタンパク質がトランスグルタミナーゼ1(TGM-1)の作用でイソペプチド結合(グルタミル-リジン結合)を形成して架橋され、水に不溶で強固なCEが形成されることによって生成する。さらに、TGM-1は、CEを構成するタンパク質と細胞間脂質とを結合する作用も有しており、前記過程において細胞間脂質をCEの表面に結合させ、ラメラ構造を形成できる。そのため、成熟したCEを有する角質細胞の外壁の表面には、CEに結合した細胞間脂質が層状に配列してCEの表面で膜状になり、リピッドエンベロープを形成している。
【0004】
健康な肌では、角質細胞は、強固なCEによって均一な形状に形成され、CEの周囲がリピッドエンベロープで被覆された状態で、規則的に配列されることにより、NMFおよび水分が十分に角質に保持されている。しかし、老化やアレルギーなどによって肌が荒れると、角質細胞の規則性が崩れ、水分を角質に十分に保持することができず、くすみやガサつきの原因となる。そのため、表皮細胞において、トランスグルタミナーゼ1の産生能が肌の健康状態に大きく影響する。
【0005】
一方、ケトン体の一種である3-ヒドロキシ酪酸(3HBまたはBHB)やその塩は、肝臓で生産され、母乳にも含まれる生体内物質であるが、皮膚に対する各種の機能が報告されている。
【0006】
特開2017-200883号公報(特許文献1)には、3HBを含有する化粧用組成物が開示されている。この文献では、化粧料の効果として、ヒト色素細胞を用いてチロシナーゼ活性(単位タンパク量当たりのメラニン生成量)を評価した美白効果(美白化粧料としての効果)、栄養不足状態や老化状態の線維芽細胞、表皮細胞を用いてMTT還元活性を評価した細胞賦活効果(細胞賦活化粧料としての効果)、前腕の角層水分量を測定した保湿効果(保湿化粧料としての効果)が記載されている。
【0007】
特許第6804352号公報(特許文献2)には、有効成分としてR-3-ヒドロキシ酪酸を含有するコラゲナーゼMMP1および3の産生抑制剤が開示されている。この文献では、コラゲナーゼMMP1および3の産生抑制効果について、ヒト皮膚線維芽細胞の正常細胞と、正常細胞を過酸化水素処理した老化モデル(セネッセンス細胞)とで評価されている。
【0008】
特許第6979918号公報(特許文献3)には、有効成分として3-ヒドロキシ酪酸アルキルエステルを含有するヒト老化細胞賦活剤が開示されている。この文献では、ヒト老化細胞賦活効果について、ヒト正常線維芽細胞を過酸化水素水で処理した老化細胞のコラーゲン含有量を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2017-200883号公報
【特許文献2】特許第6804352号公報
【特許文献3】特許第6979918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1~3にはトランスグルタミナーゼについては記載されていない。
【0011】
従って、本発明の目的は、皮膚の表皮細胞や角質細胞の形成過程などに作用するトランスグルタミナーゼの産生を向上できるトランスグルタミナーゼ産生促進剤およびその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩が、皮膚の表皮細胞や角質細胞の形成過程などに作用するトランスグルタミナーゼの産生を促進できることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の態様[1]としてのトランスグルタミナーゼ産生促進剤は、3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩を含む。
【0014】
本発明の態様[2]は、前記態様[1]において、前記3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩がR体を含む態様である。
【0015】
本発明の態様[3]は、前記態様[1]または[2]において、トランスグルタミナーゼ1の産生を促進する態様である。
【0016】
本発明の態様[4]は、前記態様[1]~[3]のいずれかの態様において、角質細胞の形成過程でトランスグルタミナーゼの産生を促進する態様である。
【0017】
本発明の態様[5]は、前記態様[1]~[4]のいずれかの態様において、乾燥肌の皮膚でトランスグルタミナーゼの産生を促進する態様である。
【0018】
本発明には、態様[6]として、3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩を含み、かつトランスグルタミナーゼの産生を促進するための組成物も含まれる。
【0019】
本発明の態様[7]は、前記態様[6]の組成物が、経皮用組成物(または外用組成物)である態様である。
【0020】
本発明の態様[8]は、前記態様[6]または[7]の組成物が液状または半固形状組成物である態様である。
【0021】
本発明の態様[9]は、前記態様[6]~[8]のいずれかの組成物がスキンケア用品である態様である。
【0022】
本発明には、態様[10]として、コーニファイドエンベロープを構成するタンパク質の産生を促進するためのタンパク質産生促進剤であって、3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩を含むタンパク質産生促進剤も含まれる。
【0023】
本発明の態様[11]は、前記態様[10]において、前記タンパク質がインボルクリンおよび/またはフィラグリンである態様である。
【0024】
本発明には、態様[12]として、3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩を含むコーニファイドエンベロープ形成能向上剤も含まれる。
【0025】
本発明には、態様[13]として、3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩を含むリピッドエンベロープ形成能向上剤も含まれる。
【0026】
本発明には、態様[14]として、3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩を含む皮膚のバリア機能向上剤も含まれる。
【0027】
本発明には、態様[15]として、前記態様[1]~[5]のいずれかの態様であるトランスグルタミナーゼ産生促進剤を皮膚に浸透させることにより、角質細胞の形成過程でトランスグルタミナーゼの産生を促進する方法も含まれる。
【0028】
本発明には、態様[16]として、前記態様[1]~[5]のいずれかの態様であるトランスグルタミナーゼ産生促進剤を皮膚に浸透させることにより、角質を正常化する方法も含まれる。
【0029】
本発明には、態様[17]として、前記態様[1]~[5]のいずれかの態様であるトランスグルタミナーゼ産生促進剤を皮膚に浸透させることにより、皮膚のバリア機能を向上させる方法も含まれる。
【0030】
本発明の態様[18]は、前記態様[15]~[17]のいずれかの態様において、24時間以上に亘って間欠的に繰り返してトランスグルタミナーゼ産生促進剤を皮膚に浸透させる態様である。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、トランスグルタミナーゼ産生促進剤が3-ヒドロキシ酪酸(「3HB」または「BHB」とも称される)および/またはその塩を含むため、生体内でトランスグルタミナーゼの産生を促進できる。そのため、角質細胞の形成過程でトランスグルタミナーゼ1の産生を促進できるため、強固なコーニファイドエンベロープおよびリピッドエンベロープを形成でき、肌のバリア機能(すなわち、皮膚表面の物理的強度を高めるとともに、保湿機能を高める機能)を向上できる。さらに、トランスグルタミナーゼ1の産生だけでなく、CEを構成するタンパク質であるインボルクリン(IVN)、フィラグリン(FLG)の産生も向上できるため、より強固なCEを形成できる。特に、健康な肌だけでなく、老化やアレルギーなどの皮膚疾患による乾燥肌(特に、老化による乾燥肌)であっても、トランスグルタミナーゼ産生促進剤を皮膚に浸透させることにより、角質を正常化でき、保湿性が高く、うるおいのある肌を再生することができる。さらに、皮膚のバリア機能が向上し、角質細胞がタイル状に規則的に配列して正常な角質を再生できるため、外界からの刺激、例えば、紫外線や物理的な力や、病原菌に対しても対処できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、実施例1において、3HBの添加量とTGM-1 mRNA発現量の変化を比較したグラフである。
図2図2は、実施例1において、3HBの有無によるTGM-1 mRNA発現量の違いを示す加工写真である。
図3図3は、実施例1において、3HBの添加量とIVN mRNA発現量の変化を比較したグラフである。
図4図4は、実施例1において、3HBの添加量とFLG mRNA発現量の変化を比較したグラフである。
図5図5は、実施例2と比較例1との経皮水分蒸散量を比較したグラフである。
図6図6は、実施例2と比較例1との角質水分量を比較したグラフである。
図7図7は、実施例2と比較例1との保湿能を比較したグラフである。
図8図8は、実施例2および比較例1において、ブリリアントグリーン・ゲンチアナバイオレットで染色した角層を液状組成物の使用前後で比較した写真である。
図9図9は、実施例2と比較例1との角層細胞面積の平均値を比較したグラフである。
図10図10は、実施例2と比較例1との多重剥離率を比較したグラフである。
図11図11は、実施例2および比較例1において、ダンシルカダベリンで染色した角層を液状組成物の使用前後で比較した加工写真である。
図12図12は、実施例2と比較例1とのTGM-1活性を比較したグラフである。
図13図13は、実施例2および比較例1において、ナイルレッドで染色した角層を液状組成物の使用前後で比較した加工写真である。
図14図14は、実施例2と比較例1とのナイルレッド染色度を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[トランスグルタミナーゼ産生促進剤]
本発明のトランスグルタミナーゼ産生促進剤は、3-ヒドロキシ酪酸および/またはその塩[以下「3HB(塩)」と総称する場合がある]を含み、3HB(塩)が有効成分として作用する。
【0034】
本発明のトランスグルタミナーゼ産生促進剤は、微生物から哺乳類まで多種多様の生体内でトランスグルタミナーゼの産生を促進できる。トランスグルタミナーゼは、タンパク質を架橋(グルタミンとリジンとの架橋など)できればよく、特に限定されないが、表皮細胞との関係が大きい点から、8種類のアイソザイムのうち、トランスグルタミナーゼ1(TGM-1)、TGM-3、TGM-5が好ましく、TGM-1が特に好ましい。特に、TGM-1(CEタンパク質架橋酵素)は、表皮の基底層における基底細胞が、有棘細胞、顆粒細胞を経て角質細胞が形成される過程で、CEを構成するタンパク質の結合を促進するとともに、CEと細胞間脂質との結合も促進できる。そのため、本発明には、3HB(塩)を有効成分とするコーニファイドエンベロープ形成能向上剤、3HB(塩)を有効成分とするリピッドエンベロープ形成能向上剤も含まれる。
【0035】
3HB(またはBHB)は、光学異性体(R体またはS体)であってもよく、ラセミ体であってもよいが、生体適合性などの観点から、R体(R-3-ヒドロキシ酪酸)を少なくとも含むのが好ましい。
【0036】
3HB中のR体の割合、特に、光学純度(鏡像体または光学異性体過剰率)は、例えば50%e.e.以上(例えば80%e.e.以上)、好ましくは90%e.e.以上(例えば95~100%e.e.)、さらに好ましくは98~100%e.e.(例えば99~100%e.e.特に実質的に100%e.e.)である。光学純度が低すぎると、生体適合性が低下する虞がある。
【0037】
また、R体[(R)3HB]と、S体[(S)3HB]および/またはラセミ体とを組みあわせて使用してもよいが、3HB中のR体の質量割合は10質量%以上が好ましく、さらに好ましくは50質量%以上、より好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。R体の割合が多いと、化粧品や医薬品として利用した場合、生体適合性が高いため、3HBの機能を効率的に生体内で発現できる。
【0038】
3HBとしては、市販品を用いてもよい。市販品としては、化学合成された3HB、微生物により発酵生産した3HBなどが挙げられる。これらのうち、R体の純度が高い点から、発酵生産した3HB(発酵由来の3HB)が好ましく、バイオマス原料(生物由来の資源)を用いて微生物により発酵生産した3HBが特に好ましい。
【0039】
3HBは、酸の形態である3HB単独、塩の形態である3HB塩単独、3HBと3HB塩との組み合わせ(混合物)のいずれであってもよい。これらのうち、取り扱い性などの点から、3HB塩単独が好ましい。
【0040】
塩の種類としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;アミン塩;塩基性アミノ酸との塩などが挙げられる。これらの3HBの塩(3HB塩)は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、潮解性が比較的低く、取り扱い性に優れる点から、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩が好ましく、諸特性のバランスを容易に調整できる点から、ナトリウム塩が特に好ましい。
【0041】
3HB(塩)の割合は、トランスグルタミナーゼ産生促進剤中10質量%以上であってもよく、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0042】
本発明のトランスグルタミナーゼ産生促進剤は、3HBのオリゴマーをさらに含んでいてもよい。3HBオリゴマーの平均重合度は2以上であればよいが、例えば2~10、好ましくは2~5、さらに好ましくは2~4、より好ましくは2~3、最も好ましくは2である。3HBのオリゴマーは、3HBの製造過程などにおいて、不可避的に混入したオリゴマーであってもよい。
【0043】
3HBオリゴマーの割合は、3HB(塩)(有効成分)100質量部に対して10質量部以下であってもよく、好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、最も好ましくは1質量部以下である。本発明のトランスグルタミナーゼ産生促進剤は、3HBのオリゴマーを実質的に含んでいなくてもよく、3HBのオリゴマーを含んでいないのが特に好ましい。
【0044】
本発明のトランスグルタミナーゼ産生促進剤は、ヒトなどの哺乳類の生体内におけるトランスグルタミナーゼの産生を促進するために使用でき、中型または大型の哺乳類(特にヒト)の表皮におけるトランスグルタミナーゼの産生を促進するために使用するのが好ましい。
【0045】
本発明のトランスグルタミナーゼ産生促進剤の適用(または投与)方法は、経口で適用する方法であってもよく、非経口で適用する方法であってもよい。これらのうち、非経口で適用する方法が好ましい。非経口で適用する方法としては、例えば、吸入して適用する方法、注射で適用する方法、経皮で適用する方法、経鼻で適用する方法などが挙げられる。これらのうち、表皮でトランスグルタミナーゼの産生を効果的に促進できるため、経皮で適用する方法が好ましい。
【0046】
経皮で適用する方法としては、皮膚表面に適用されたトランスグルタミナーゼ産生促進剤が外皮に浸透できる方法であれば、特に限定されない。具体的な方法としては、例えば、滴下またはスプレーによって皮膚にトランスグルタミナーゼ産生促進剤を直接塗布する方法、トランスグルタミナーゼ産生促進剤を含浸した担体(不織布などで形成されたマスク、コットン、スポンジ、フィルムなど)を皮膚に接触させる方法などが挙げられる。ヒトの皮膚における適用箇所は、特に限定されず、頭皮や唇なども含めた全身の皮膚に適用できる。
【0047】
本発明のトランスグルタミナーゼ産生促進剤の適用量(または投与量)は、適用対象、適用対象の年齢および体重、適用時間、トランスグルタミナーゼ産生促進剤の形態、適用経路、適用方法などに応じて、適宜選択することができる。例えば、経皮で適用する場合、本発明のトランスグルタミナーゼ産生促進剤は、必要な部位(皮膚など)に対して、1日当たり、例えば1~10回程度適用してもよく、好ましくは1~5回、さらに好ましくは1~4回、より好ましくは1~3回、最も好ましくは1~2回である。
【0048】
本発明のトランスグルタミナーゼ産生促進剤を皮膚に適用すると、表皮において角質細胞の形成過程でトランスグルタミナーゼ1の産生を促進できるだけでなく、さらにCEを構成するタンパク質であるインボルクリンおよびフィラグリンの産生も促進できるため、強固なCEおよびリピッドエンベロープを有する正常な角質細胞を形成できる。角質細胞が基底細胞から角質細胞に変化して皮膚表面で垢として剥離するサイクルは「ターンオーバー」と称され、このサイクルは一般的に4~6週間程度と推測されている。そのため、本発明のトランスグルタミナーゼ産生促進剤は、ターンオーバーに影響を及ぼすように所定の日数に亘り間欠的(または定期的)に繰り返して適用するのが好ましく、例えば24時間以上に亘って間欠的に繰り返して適用してもよく、好ましくは1週間以上(例えば1~20週間)、さらに好ましくは4週間以上、より好ましくは6週間以上、最も好ましくは8週間以上適用してもよい。例えば、1日当たり1~2回、4週間以上適用すれば、角質細胞は、本発明のトランスグルタミナーゼ産生促進剤によって正常な角質細胞で置き換えることができる。
【0049】
本発明のトランスグルタミナーゼ産生促進剤は、正常な角質細胞を生成(再生)できるため、老化やアレルギーなどによる乾燥肌であっても、間欠的に繰り返して皮膚に適用することにより、乾燥肌を正常化できる。特に、トランスグルタミナーゼの産生を促進する効果は、健康な肌よりも乾燥肌においてより効果的である。そのため、本発明のトランスグルタミナーゼ産生促進剤は、乾燥肌に適用するのが好ましく、アンチエイジングの目的で、老化による乾燥肌に適用するのが特に好ましい。
【0050】
なお、本明細書および特許請求の範囲において「乾燥肌」とは、保湿状態が低い肌だけでなく、保湿状態が低く、肌が荒れた状態(くすみ、ガサつき、ささくれ、皺など)の肌も包含する。
【0051】
[トランスグルタミナーゼの産生を促進するための組成物]
本発明の組成物は、トランスグルタミナーゼの産生を促進するための組成物であり、有効成分として3HB(塩)、好ましくは(R)3HB(塩)を含有する。
【0052】
本発明の組成物は、液状組成物、半固形状組成物、固形状組成物のいずれであってもよい。すなわち、本発明の組成物では、(R)3HB(塩)が前述のトランスグルタミナーゼ産生促進剤として液状組成物、半固形状組成物または固形状組成物に配合される。
【0053】
液状組成物としては、例えば、液剤、ドリンク剤(飲料)、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、注射剤などが挙げられる。
【0054】
半固形状組成物(半固形剤)としては、例えば、ゲル剤(ジェル)、クリーム剤、スラリー、ペーストなどが挙げられる。
【0055】
固形状組成物(固形剤)としては、例えば、粉末剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、フレーク剤、ケーク剤、グミ剤、ヌガー剤、フィルム剤、カプセル剤などが挙げられる。
【0056】
これらのうち、本発明の組成物が皮膚に対して特に有効であり、経皮で適用し易い点から、外用組成物(または外用剤)、例えば、液状組成物、半固体状組成物が好ましく、液状組成物が特に好ましい。
【0057】
組成物中の有効成分は、好ましい態様も含めて、前記トランスグルタミナーゼ産生促進剤として記載されている有効成分と同様である。
【0058】
有効成分[3HB(塩)]の割合は、組成物中0.01~99質量%程度の範囲から選択でき、好ましくは0.1~95質量%、さらに好ましくは0.5~90質量%である。有効成分の割合は、組成物の形態に応じて選択してもよい。
【0059】
本発明の組成物の適用方法は、好ましい態様も含めて、前記トランスグルタミナーゼ産生促進剤として記載されている適用方法と同様である。そのため、本発明の組成物は経皮用組成物であるのが好ましい。
【0060】
本発明の経皮用組成物は、経皮用液状組成物または経皮用半固形状組成物であってもよい。
【0061】
(経皮用液状組成物)
経皮用液状組成物(または外用液状組成物)において、有効成分の割合は、経皮用液状組成物中、例えば0.01質量%以上であり、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がとりわけ好ましく、0.8質量%以上が最も好ましい。有効成分の割合が少なすぎると、トランスグルタミナーゼの産生を促進できない虞がある。また、経皮用液状組成物において、有効成分の割合は、経皮用液状組成物中、例えば30質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましく、2質量%以下がとりわけ好ましく、1.5質量%以下が最も好ましい。有効成分の割合は、経皮用液状組成物中0.1~5質量%(特に0.3~3質量%)であってもよい。また、有効成分の割合が多すぎると、取り扱い性が低下する虞がある。
【0062】
本発明の経皮用液状組成物は、さらに液状基剤を含んでいてもよい。液状基剤には、溶媒、液状油などが含まれる。
【0063】
溶媒は、親油性溶媒であってもよいが、安全性などの点から、親水性溶媒が好ましい。親水性溶媒としては、例えば、水、低級脂肪族アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノールなどのC1-4アルキルアルコールなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。液状油としては、例えば、動植物系油(例えば、ホホバ油、オリーブ油、やし油、つばき油、マカデミアンナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、ゴマ油、小麦胚芽油、アマニ油、ひまし油など)、鉱物系油(例えば、流動パラフィン、ポリブテン、シリコーン油など)、合成系油(例えば、合成エステル油、合成ポリエーテル油など)などが挙げられる。これらの液状油は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0064】
液状基剤としては、水やエタノールなどの親水性溶媒に対して、添加剤(油分)として液状油を組み合わせて使用してもよい。これらの液状基剤のうち、水、低級アルコールまたはこれらの混合物が好ましく、水および/またはエタノール(特に水)が特に好ましい。
【0065】
液状基剤の割合は、経皮用液状組成物中50~99.9質量%、好ましくは60~99質量%、さらに好ましくは70~95質量%、より好ましくは80~93質量%、最も好ましくは85~90質量%である。
【0066】
本発明の経皮用液状組成物は、保湿剤をさらに含んでいてもよい。保湿剤としては、例えば、アルキレングリコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジメチルエーテルなどのポリアルキレングリコールまたはそのモノアルキルエステルなど)、水溶性ビニル系重合体(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなど)、多価アルコール類(例えば、濃グリセリンなどのグリセリン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジグリセリンプロピレンオキサイド付加体など)、有機酸類(例えば、乳酸、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウムなど)、アミノ酸類(例えば、セリン、グリシン、スレオニン、アラニンなど)、糖類(例えば、キシリトール、ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール;ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コンドロイチンヘパリンなどの多糖類など)、水溶性セルロースエーテル(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)、タンパク質(例えば、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ケラチン、エラスチン、ローヤルゼリー、セリシンなど)などが挙げられる。
【0067】
これらの保湿剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの保湿剤のうち、ジプロピレングリコールや1,3-ブチレングリコール、ペンタンジオール(ペンチレングリコール)、ポリエチレングリコールなどのアルキレングリコール類、グリセリンなどの多価アルコール類、ヒアルロン酸ナトリウムなどの糖類が好ましい。
【0068】
保湿剤の割合は、液状基剤100質量部に対して、例えば1~100質量部、好ましくは3~80質量部、さらに好ましくは5~50質量部、より好ましくは8~30質量部、最も好ましくは10~20質量部である。
【0069】
本発明の経皮用液状組成物は、エモリエント剤をさらに含んでいてもよい。エモリエント剤としては、例えば、高級脂肪酸または油脂類(例えば、オレイン酸、イソステアリン酸、オキシステアリン酸、オレイルアルコール、セテアリルアルコール、ステアリン酸イソプロピル、オキシステアリン酸オクチル、オキシステアリン酸グリセリン、オレイン酸デシル、12-ステアロイルステアリン酸オクチルドデシル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、トリエチルヘキサノイン、ジメチコンなど)、ワックス類(例えば、ラノリン、ラノリンアルコール、ラノリンオイル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンプロピレンラノリン、ミツロウ、ポリオキシエチレンミツロウなど)、糖類(例えば、ポリオキシエチレンメチルグリコシド、セスキステアリン酸メチルグリコシド、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンショ糖オレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジオレイン酸メチルグリコシド、セスキステアリン酸ポリオキシエチレンメチルグリコシドなど)、セラミド類、スクワラン、スクワレン、ハチミツ、油性成分の乳化物(例えば、トリグリセリド油、スクワラン、エステル油などの油性成分を、モノグリセリドなどの非イオン乳化剤などにより乳化した乳化物など)などが挙げられる。
【0070】
これらのエモリエント剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのエモリエント剤のうち、セテアリルアルコールなどの高級アルコール、トリエチルヘキサノインやジメチコンなどの油脂類、ポリオキシエチレンメチルグリコシドなどのポリオキシエチレン基含有糖類、オキシステアリン酸グリセリンやポリオキシエチレン硬化ひまし油などの油脂類、ミツロウ、ラノリンなどのワックス類が好ましい。
【0071】
エモリエント剤の割合は、液状基剤100質量部に対して、例えば50質量部以下であってもよく、好ましくは0.01~30質量部、さらに好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.5~20質量部、最も好ましくは1~10質量部である。
【0072】
本発明の経皮用液状組成物は、さらに界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤は、可溶化剤や乳化剤として使用してもよい。界面活性剤は、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれであってもよい。
【0073】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「POE」はポリオキシエチレン(ポリエチレンオキシド)を意味し、「POP」はポリオキシプロピレン(ポリプロピレンオキシド)を意味する。
【0074】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリルモノステアレート(ステアリン酸グリセリル)などのグリセリン脂肪酸エステル類;ラウリン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸セッケン;ラウリル硫酸ナトリウムなどの高級アルキル硫酸エステル塩;POE-ラウリル硫酸ナトリウム、POE-ラウリル硫酸トリエタノールアミンなどのアルキルエーテル硫酸エステル塩;N-ラウロイルサルコシンナトリウムなどのN-アシルサルコシン塩;N-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウム、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、N-ラウリル-N-メチルタウリンナトリウムなどの高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;POE-オレイルエーテルリン酸ナトリウムなどのリン酸エステル塩;ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウムなどのスルホコハク酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミンなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;N-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ジナトリウムなどのN-アシルグルタミン酸塩;硫酸化油(例えば、ロート油など)などが挙げられる。
【0075】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、POE-ソルビタンモノオレエート、POE-ソルビタンモノステアレート、POE-ソルビタンモノオレエート、POE-ソルビタンテトラオレエートなどのPOE-ソルビタン脂肪酸エステル類;POE-ソルビットモノラウレート、POE-ソルビットモノオレエート、POE-ソルビットペンタオレエート、POE-ソルビットモノステアレートなどのPOE-ソルビット脂肪酸エステル類;ショ糖ラウリン酸エステルなどのショ糖脂肪酸エステル;POE-グリセリンモノステアレート、POE-グリセリンモノイソステアレート、POE-グリセリントリイソステアレートなどのPOE-グリセリン脂肪酸エステル類;POE-脂肪酸エステル類(例えば、POE-ジステアレート、POE-モノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコールなど);POE-アルキルエーテル類(例えば、POE-ラウリルエーテル、POE-オレイルエーテル、POE-ステアリルエーテル、POE-ベヘニルエーテル、POE-2-オクチルドデシルエーテル、POE-コレスタノールエーテルなど);プルロニック型類(例えば、プルロニック(登録商標)など);POE・POP-アルキルエーテル類(例えば、POE・POP-セチルエーテル、POE・POP-2-デシルテトラデシルエーテル、POE・POP-モノブチルエーテル、POE・POP-水添ラノリン、POE・POP-グリセリンエーテルなど);テトラPOE・テトラPOP-エチレンジアミン縮合物類(例えば、テトロニックなど);POE-ヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体(例えば、POE-ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE-硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE-硬化ひまし油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE-硬化ひまし油マレイン酸など);POE-ミツロウ・ラノリン誘導体(例えば、POE-ソルビットミツロウなど);アルカノールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミドなど);POE-プロピレングリコール脂肪酸エステル;POE-アルキルアミン;POE-脂肪酸アミド;アルキルエトキシジメチルアミンオキシド;トリオレイルリン酸などが挙げられる。
【0076】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム;塩化セチルピリジニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。
【0077】
両性界面活性剤としては、例えば、水添レシチンなどのリン脂質系両性界面活性剤;イミダゾリン系両性界面活性剤;ベタイン系界面活性剤などが挙げられる。
【0078】
界面活性剤として、シリコーン系界面活性剤も利用できる。シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シリコーン(ポリジメチルシロキサンに少なくともエチレンオキサイドが付加した付加体)などが挙げられる。
【0079】
これらの界面活性剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの界面活性剤のうち、ステアリン酸グリセリル、ラウリル硫酸ナトリウムやラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤、POE-硬化ひまし油などのノニオン性界面活性剤、水添レシチンなどの両性界面活性剤が好ましい。
【0080】
界面活性剤の割合は、液状基剤100質量部に対して、例えば0.01~5質量部、好ましくは0.03~3質量部、さらに好ましくは0.05~1質量部、より好ましくは0.1~0.5質量部、最も好ましくは0.2~0.3質量部である。
【0081】
本発明の経皮用液状組成物は、保存剤をさらに含んでいてもよい。保存剤には、防腐剤、殺菌剤または抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤または紫外線散乱剤などが含まれる。
【0082】
防腐剤としては、例えば、フェノキシエタノール、クロルフェネシン、安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル(パラベン)などが挙げられる。
【0083】
殺菌剤または抗菌剤としては、例えば、安息香酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0084】
酸化防止剤としては、例えば、リン酸、ピロ亜硫酸ナトリウムなどの無機酸;マロン酸、コハク酸、アスコルビン酸、マレイン酸、フマル酸、エデト酸などの有機酸;ケファリン、フィチン酸などのリン化合物;アントシアニンなどのポリフェノール類などが挙げられる。
【0085】
紫外線吸収剤または紫外線散乱剤としては、例えば、酢酸トコフェロール、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチルヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン、酸化亜鉛、酸化チタンなどが挙げられる。
【0086】
これらの保存剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの保存剤のうち、フェノキシエタノールなどの防腐剤が好ましい。
【0087】
保存剤の割合は、液状基剤100質量部に対して、例えば0.01~10質量部、好ましくは0.05~5質量部、さらに好ましくは0.1~3質量部、より好ましくは0.2~1質量部、最も好ましくは0.3~0.5質量部である。
【0088】
本発明の経皮用液状組成物は、香料をさらに含んでいてもよい。香料は、天然香料であってもよく、合成香料であってもよい。
【0089】
天然香料としては、例えば、ストロベリー、ブルーベリー、リンゴ、うめ、オレンジ、レモン、ライム、バニラ、ペッパーなどの果実系エッセンス又はオイル(バニリン、レモン油など);オレンジ、ホワイトグレープ、グレープフルーツ、レモンなどの果皮系エッセンス又はオイル;ニッキ(シナモン)などの樹皮系エッセンスまたはオイル;シナモンパウダーなどの樹皮系パウダー;ジンジャーなどの根菜系エッセンスまたはオイル;ジンジャーパウダーなどの根菜系パウダー;バニラビーンズ、カカオ末などの種子系パウダー;ペパーミント、スペアミント、ローズマリー、シソなどの枝葉系エッセンスまたはオイル;ペパーミントパウダーなどの枝葉系パウダー;ジャスミン、ラベンダー、ローズ、ローズマリー、ヒヤシンスなどの花系エッセンスまたはオイルなどが挙げられる。
【0090】
合成香料としては、例えば、酢酸ベンジル、酢酸リナリル、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、シスジャスミン、シス-3-ヘキセノール、メントールなどが挙げられる。
【0091】
これらの香料は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0092】
香料の割合は、液状基剤100質量部に対して、例えば0.001~5質量部、好ましくは0.003~1質量部、さらに好ましくは0.005~0.5質量部、より好ましくは0.01~0.1質量部、最も好ましくは0.015~0.05質量部である。
【0093】
本発明の経皮用液状組成物は、pH調整剤をさらに含んでいてもよい。pH調整剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウムなどの塩基;クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウムなどの酸;ホウ砂などが挙げられる。これらのpH調整剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、クエン酸、クエン酸ナトリウムなどの有機酸が好ましい。pH調整剤の割合は、目的のpHに応じて適宜選択できる。
【0094】
本発明の経皮用液状組成物は、生理活性または薬理活性成分をさらに含んでいてもよい。
【0095】
生理活性成分(または薬理活性成分)としては、例えば、細胞賦活剤(例えば、リボフラビン、ピリドキシン、ニコチン酸、パントテン酸、α-トコフェロールまたはこれらの誘導体;ユキノシタエキスなどの植物抽出物など)、肌荒れ防止剤(例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどのビタミン類など)、美白剤(例えば、アスコルビン酸またはその誘導体、システイン、プラセンタエキス、アルブチン、コジ酸、ルシノール、エラグ酸、カミツレ抽出物など)、しみそばかす抑制剤(例えば、チロシナーゼ活性阻害剤、メラニン還元剤など)、ニキビ抑制剤(例えば、硫黄などの角質軟化剤、消炎剤、副腎皮質ホルモン、皮脂分泌抑制剤など)、皮膚軟化剤(例えば、サリチル酸またはその誘導体、尿素など)、抗炎症剤(例えば、アラントイン、グアイアズレン、グリチルリチン酸またはその塩、グリチルレチン酸またはその塩、ε-アミノカプロン酸、トラネキサム酸、イブプロフェン、インドメタシン、酸化亜鉛またこれらの誘導体;アルニカ抽出物などの植物抽出物など)、皮膚かゆみ抑制剤、血行促進剤などが挙げられる。これらの生理活性成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0096】
生理活性成分の割合は、液状基剤100質量部に対して、例えば0.001~10質量部、好ましくは0.01~5質量部、さらに好ましくは0.03~3質量部、より好ましくは0.05~2質量部、最も好ましくは0.1~1質量部である。
【0097】
本発明の液状組成物は、さらに他の成分を含んでいてもよい。
【0098】
他の成分としては、例えば、収れん剤または制汗剤(例えば、乳酸、酒石酸などのオキシ酸またはこれらの塩など;塩化アルミニウムなどのアルミニウム化合物;硫酸亜鉛、スルホフェノキソ亜鉛などの亜鉛化合物;プロアントシアニジン類;ハマメリス、白樺などのタンニン含有植物抽出物;ガイヨウエキス、ダイオウエキス、スギナエキスなど)、補酵素(例えば、コエンザイムQ10など)、アミノ酸(例えば、トリプトファンなど)、清涼化剤(例えば、メントールまたはその誘導体、カンファー、チモールなど)、無機塩類(例えば、硫酸ナトリウム、塩化カリウムなど)、繊維(例えば、ナイロン繊維などの合成繊維、天然繊維など)、粘結剤(例えば、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナンなど)、キレート剤または金属封鎖剤(例えば、グルコン酸、クエン酸、コハク酸、アスコルビン酸、エデト酸ナトリウム、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸ナトリウム、リン酸、ヘキサメタリン酸ナトリウムなど)、還元剤(例えば、チオグリコール酸またはその塩など)、酵素類(例えば、リパーゼ、プロテアーゼなど)、増粘剤(例えば、ゼラチン、グルテン、魚肉タンパク質など)、塩基性剤、酸化剤、クレンジング剤、冷却剤、着色剤、不透明化剤、固化剤、可塑剤などが挙げられる。
【0099】
これら他の成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0100】
他の成分の割合は、液状基剤100質量部に対して、例えば0.001~30質量部、好ましくは0.01~20質量部、さらに好ましくは0.03~10質量部、より好ましくは0.05~5質量部、最も好ましくは0.1~3質量部である。
【0101】
本発明の経皮用液状組成物のpHは、例えば3~9、好ましくは4~8、さらに好ましくは5~7、より好ましくは5.5~6.5、最も好ましくは5.8~6.2である。
【0102】
本発明の経皮用液状組成物は、液状基剤を含む場合、有効成分と、液状基剤と、必要に応じて有効成分および液状基剤以外の成分とを混合することにより製造でき、有効成分を液状基剤に溶解または分散させて製造する方法が好ましい。
【0103】
(経皮用半固形状組成物)
経皮用半固形状組成物(または外用半固形状組成物)において、有効成分の割合は、経皮用半固形状組成物中0.01質量%以上であり、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がとりわけ好ましく、0.8質量%以上が最も好ましい。有効成分の割合が少なすぎると、トランスグルタミナーゼの産生を促進できない虞がある。また、経皮用半固形状組成物において、有効成分の割合は、経皮用半固形状組成物中、例えば30質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましく、2質量%以下がとりわけ好ましく、1.5質量%以下が最も好ましい。有効成分の割合は、経皮用半固形状組成物中0.1~5質量%(特に0.3~3質量%)であってもよい。また、有効成分の割合が多すぎると、取り扱い性が低下する虞がある。
【0104】
本発明の経皮用半固形状組成物は、さらに液状基剤を含んでいてもよい。液状基剤としては、前記経皮用液状組成物の項で例示された液状基剤などが挙げられる。前記液状基剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。好ましい態様についても、前記経皮用液状組成物と同様である。
【0105】
液状基剤の割合は、経皮用半固形状組成物中10~95質量%、好ましくは30~90質量%、さらに好ましくは50~85質量%、より好ましくは60~80質量%、最も好ましくは65~75質量%である。
【0106】
本発明の経皮用半固形状組成物は、さらにエモリエント剤を含んでいてもよい。エモリエント剤としては、前記経皮用液状組成物の項で例示されたエモリエント剤などが挙げられる。前記エモリエント剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。好ましい態様についても、前記液状組成物と同様である。特に、経皮用半固形状組成物では、複数のエモリエント剤を組み合わせてもよく、例えば、油脂類と、高級脂肪酸またはその誘導体と、ワックス類とを組み合わせてもよい。
【0107】
エモリエント剤の割合は、液状基剤100質量部に対して、例えば1質量部以上であってもよく、例えば1~1000質量部、好ましくは5~100質量部、さらに好ましくは10~80質量部、より好ましくは15~50質量部、最も好ましくは20~30質量部である。エモリエント剤の割合が少なすぎると、半固形状を維持できない虞があり、多すぎると、取り扱い性が低下する虞がある。
【0108】
本発明の経皮用半固形状組成物は、さらにゲル化剤を含んでいてもよい。ゲル化剤としては、例えば、デキストラン、プルラン、寒天、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ガラクトマンナン、グルコマンナン、カードラン、アラビアガム、トラガカントガム、ジェランガム、カラヤガム、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガムなどの水溶性または水膨潤性多糖類;コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン、ローヤルゼリーなどのタンパク質;ベントナイト、有機変性ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、無水ケイ酸などの無機水溶性高分子などが挙げられる。これらのゲル化剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのゲル化剤のうち、キサンタンガムなどの水膨潤性多糖類が好ましい。
【0109】
ゲル化剤の割合は、液状基剤100質量部に対して、例えば0.01~100質量部、好ましくは0.03~10質量部、さらに好ましくは0.05~1質量部、より好ましくは0.08~0.5質量部、最も好ましくは0.1~0.3質量部である。
【0110】
本発明の経皮用半固形状組成物は、さらに保湿剤を含んでいてもよい。保湿剤としては、前記経皮用液状組成物の項で例示された保湿剤などが挙げられる。前記保湿剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。好ましい態様についても、前記経皮用液状組成物と同様である。
【0111】
保湿剤の割合は、液状基剤100質量部に対して、例えば1~100質量部、好ましくは3~80質量部、さらに好ましくは5~50質量部、より好ましくは8~30質量部、最も好ましくは10~20質量部である。
【0112】
本発明の経皮用半固形状組成物は、さらに界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、前記経皮用液状組成物の項で例示された界面活性剤などが挙げられる。前記界面活性剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。好ましい態様についても、前記経皮用液状組成物と同様である。
【0113】
界面活性剤の割合は、液状基剤100質量部に対して、例えば0.01~30質量部、好ましくは0.1~20質量部、さらに好ましくは0.5~15質量部、より好ましくは1~10質量部、最も好ましくは3~5質量部である。
【0114】
本発明の経皮用半固形状組成物は、さらに保存剤を含んでいてもよい。保存剤としては、前記経皮用液状組成物の項で例示された保存剤などが挙げられる。前記保存剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。好ましい態様についても、前記経皮用液状組成物と同様である。
【0115】
保存剤の割合は、液状基剤100質量部に対して、例えば0.01~10質量部、好ましくは0.05~5質量部、さらに好ましくは0.1~3質量部、より好ましくは0.2~1質量部、最も好ましくは0.3~0.5質量部である。
【0116】
本発明の経皮用半固形状組成物は、さらに香料を含んでいてもよい。香料としては、前記経皮用液状組成物の項で例示された香料などが挙げられる。前記香料は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。好ましい態様についても、前記経皮用液状組成物と同様である。
【0117】
香料の割合は、液状基剤100質量部に対して、例えば0.001~5質量部、好ましくは0.003~1質量部、さらに好ましくは0.005~0.5質量部、より好ましくは0.01~0.1質量部、最も好ましくは0.015~0.05質量部である。
【0118】
本発明の経皮用半固形状組成物は、pH調整剤をさらに含んでいてもよい。pH調整剤としては、前記経皮用液状組成物の項で例示されたpH調整剤などが挙げられる。前記pH調整剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。好ましい態様についても、前記経皮用液状組成物と同様である。pH調整剤の割合は、目的のpHに応じて適宜選択できる。
【0119】
本発明の経皮用半固形状組成物は、さらに生理活性成分を含んでいてもよい。生理活性成分としては、前記経皮用液状組成物の項で例示された生理活性成分などが挙げられる。前記生理活性成分は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。好ましい態様についても、前記経皮用液状組成物と同様である。
【0120】
生理活性成分の割合は、液状基剤100質量部に対して、例えば0.001~10質量部、好ましくは0.01~5質量部、さらに好ましくは0.03~3質量部、より好ましくは0.05~2質量部、最も好ましくは0.1~1質量部である。
【0121】
本発明の経皮用半固形状組成物は、さらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、前記経皮用液状組成物の項で例示された他の成分などが挙げられる。前記成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。好ましい態様についても、前記経皮用液状組成物と同様である。
【0122】
他の成分の割合は、液状基剤100質量部に対して、例えば0.001~30質量部、好ましくは0.01~20質量部、さらに好ましくは0.03~10質量部、より好ましくは0.05~5質量部、最も好ましくは0.1~3質量部である。
【0123】
本発明の経皮用半固形状組成物のpHは、例えば3~9、好ましくは4~8、さらに好ましくは5~7、より好ましくは5.5~6.5、最も好ましくは5.8~6.2である。
【0124】
本発明の経皮用半固形状組成物は、エモリエント剤を含む場合、有効成分と、エモリエント剤と、必要に応じて有効成分およびエモリエント剤以外の成分とを混合することにより製造できる。
【0125】
(経皮用組成物の用途)
本発明の経皮用組成物(外用剤)は、各種の化粧料、化粧品、医薬品または医薬部外品として利用できる。
【0126】
化粧料としては、例えば、保湿化粧料、美白化粧料、UVケア化粧料、クレンジング剤、スクラブ剤などが挙げられる。
【0127】
化粧品には、基礎化粧品、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、UVケア化粧品、ボディ化粧品、ヘアケア化粧品などが含まれる。
【0128】
基礎化粧品としては、例えば、化粧水、美容液、乳液、クリーム、洗顔料、クレンジング化粧品(オイル状、ジェル状、クリーム状、ローション状、ミルク状化粧品など)などが挙げられる。
【0129】
スキンケア化粧品としては、例えば、化粧水、乳液、ジェルクリーム、スキンケアクリーム、マッサージ料などが挙げられる。
【0130】
メイクアップ化粧品としては、例えば、化粧下地、BBクリーム、ファンデーション(パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、クリームファンデーション、エマルジョンファンデーションなど)、口紅・リップグロス、アイシャドー、アイライナー、アイブロウ、マスカラなどが挙げられる。
【0131】
UVケア化粧品としては、例えば、乳液状、ローション状、ジェル状、クリーム状、スプレー状日焼け止め化粧品などが挙げられる。
【0132】
ボディ化粧品としては、例えば、ボディ洗浄料、ボディローション、ボディミルク、ボディクリーム、ボディパウダー、ボディマッサージ料などが挙げられる。
【0133】
ヘアケア化粧品としては、例えば、シャンプー、コンディショナー、トリートメント、アウトバストリートメント、トニック、整髪料、育毛料、ヘアクリームなどが挙げられる。
【0134】
医薬品または医薬部外品としては、例えば、薬用化粧品、液剤、エアゾール剤、クリーム剤、ゲル剤(ジェリー剤)、軟膏剤、パップ剤、リニメント剤などが挙げられる。
【0135】
これらの用途のうち、本発明の経皮用組成物の効果が発現し易い点から、使用後直ちに洗い流すことなく、皮膚に浸透させる態様で使用される化粧料、化粧品、医薬品または医薬部外品が好ましい。
【0136】
さらに、本発明の経皮用組成物は、皮膚のバリア機能を向上させるためのスキンケア用品が特に好ましい。スキンケア用品は、化粧水、美容液、ローション、ミルク、乳液、ミストなどの経皮用液状組成物であってもよく、クリーム、ジェル、練り(バーム)、フォーム(バブル)などの経皮用半固形状組成物であってもよい。経皮用液状組成物および経皮用半固形状組成物は、美容用組成物や化粧用組成物(化粧品)であってもよく、アンチエイジングを目的としたエイジングケア用品であってもよい。
【実施例0137】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例で使用した原料および実施例で調製された液状組成物の評価方法は以下の通りである。
【0138】
[原料]
3HB:結晶性(R)3HBナトリウム、大阪ガスケミカル(株)製「OHALOS(登録商標)」
BG:1,3-ブチレングリコール、湿潤剤
PD:ペンチレングリコール、高級アルコール工業(株)製「ジオールPD」、湿潤剤
クエン酸:pH調整剤
クエン酸ナトリウム:pH調整剤
エタノール:湿潤機能を有する液状基剤
フェノキシエタノール:防腐剤
PEG-60水添ひまし油:ポリオキシエチレン硬化ひまし油、可溶化剤。
【0139】
実施例1
加齢によってグルコーストランスポーター1(GLUT1)の発現が低下し、細胞内グルコースの取り込み量が低下していることが知られている。そこで、老化細胞モデルとして、GLUT1をノックダウンしたGLUT1ノックダウン表皮角化細胞(以下「GLUT1 KD細胞」と称する)を用いて、皮膚のバリア機能に関する特性を評価した。
【0140】
[GLUT1 KD細胞の作製]
正常ヒト表皮角化細胞(クラボウ社製、以下「NHEK」と称する)を、増殖用培地(クラボウ社製「HuMedia-KG2」、以下「KG2」と称する)を用いて96穴プレートに1.5×10cells/wellの密度で播種し、24時間培養した。
【0141】
次に、NHEKが増殖した前記増殖用培地を、100nM濃度でsiGLUT1(Thermo社製)を含有する基礎培地(クラボウ社製「HuMedia-KB2」以下「KB2」と称する)に交換し、37℃で24時間インキュベートし、GLUT1 KD細胞を作製した。陰性対照として、非標的siRNA(siControl;Thermo社製)含有KB2を処理したNHEKを作成した。
【0142】
[GLUT1 KD細胞を用いた3HB処理による表皮分化、保湿関連遺伝子mRNA発現評価]
GLUT1 KD細胞を培養した培地または陰性対照の培地(定常細胞を培養した培地)を、3種類のKB2(3HBを含まない基礎培地、25.0mM濃度で3HBを含む基礎培地、50.0mM濃度で3HBを含む基礎培地)に交換し、37℃で24時間インキュベートした。
【0143】
インキュベート後の細胞からtotalRNAを抽出し、逆転写酵素にてcDNAを合成した。cDNAをテンプレートとして、各種mRNAをreal-timePCRにて相対定量(ΔΔCt法)した。各種mRNAとしては、トランスグルタミナーゼ1(TGM-1)、インボルクリン(IVN)またはフィラグリン(FLG)の産生をコードするmRNAを用いた。また、各種mRNAの発現量は、グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)の産生をコードするmRNA発現量に対する相対値で表した。mRNAの発現量が多いほど、目的のタンパク質の産生が活発に行われているため、産生量も高いと考えられる。
【0144】
[TGM-1 mRNA発現量の評価結果]
TGM-1 mRNA発現量の評価結果を表1および図1に示す。
【0145】
【表1】
【0146】
なお、表1~3中「S.D.」は標準偏差を意味し、「p vs.0mM(siControl)」は、3HBを含まない定常細胞に対するp値を意味し、「p vs.0mM(siGLUT1)」は、3HBを含まないGLUT1 KD細胞に対するp値を意味する。また、図1中「**」は3HBを含まない定常細胞に対するp値が0.01未満(p<0.01)であることを意味し、「♯♯」は3HBを含まないGLUT1 KD細胞に対するp値が0.01未満(p<0.01)であることを意味する。
【0147】
表1および図1の結果から明らかなように、GLUT1 KD細胞のTGM-1 mRNA発現量は、3HBを含まない場合、定常細胞に比べて1/2程度と少ないにも拘わらず、3HBを含むことにより増加することが確認できる。特に、3HBを含まない場合、定常細胞よりも少なかったGLUT1 KD細胞の発現量が、3HBを含むことにより、逆に定常細胞よりも多く発現している事実は、3HBが定常細胞よりも老化細胞において効果的に作用することを示している。
【0148】
3HBを含まない基礎培地で培養したGLUT1 KD細胞と、50.0mM濃度で3HBを含む基礎培地で培養したGLUT1 KD細胞とを、50mMダンシルカダベリン(dansylcadaverin、TGM-1に結合する蛍光色素)を用いて染色し、蛍光顕微鏡を用いて、紫外線照射下で写真を撮影した。青い蛍光が強いほど、TGM-1活性が高いことを示す。撮影写真について、画像処理により、蛍光の濃さで二値化(閾値:125)した加工写真(画像処理写真)を図2に示す。図2では、白色部がダンシルカダベリン染色された細胞(すなわちTGM-1が産生されている細胞)を意味するが、3HBを含まない基礎培地で培養したGLUT1 KD細胞(図中の3HBなし)に比べて、50.0mM濃度で3HBを含む基礎培地で培養したGLUT1 KD細胞(図中の3HBあり)では多量のTGM-1が産生されていることが確認できる。
【0149】
[IVN mRNA発現量の評価結果]
IVN mRNA発現量の評価結果を表2および図3に示す。
【0150】
【表2】
【0151】
なお、図3中「♯」は3HBを含まないGLUT1 KD細胞に対するp値が0.05未満(p<0.05)であることを意味し、「**」および「♯♯」は図1と同様である。
【0152】
表2および図3の結果から明らかなように、GLUT1 KD細胞のIVN mRNA発現量は、3HBを含まない場合、定常細胞に比べて少ないにも拘わらず、3HBを含むことにより増加することが確認できる。特に、3HBを含む場合は、GLUT1 KD細胞は、定常細胞に比べて発現量が顕著に増加している。
【0153】
[FLG mRNA発現量の評価結果]
FLG mRNA発現量の評価結果を表3および図4に示す。
【0154】
【表3】
【0155】
なお、図4中「*」は3HBを含まない定常細胞に対するp値が0.05未満(p<0.05)であることを意味し、「♯」は図3と同様である。
【0156】
表3および図4の結果から明らかなように、GLUT1 KD細胞のFLG mRNA発現量は、3HBを含まない場合、定常細胞に比べて少ないにも拘わらず、3HBを含むことにより増加することが確認できる。特に、3HBを含む場合は、GLUT1 KD細胞は、定常細胞に比べて発現量が顕著に増加している。
【0157】
実施例2および比較例1
[液状組成物の調製]
ガラスビーカーに精製水、湿潤剤、3HB、pH調整剤を順次投入し、撹拌棒で均一に撹拌した後、さらにエタノール、防腐剤、可溶化剤、香料、精製水を順次投入し同様に撹拌した。pHを測定し、pH調整剤でpHを6に調整した後、メッシュ(200~400メッシュ)ろ過し、液状組成物を得た。なお、比較例1では3HBは投入しなかった。液状組成物の組成を表4に示す。
【0158】
【表4】
【0159】
[ヒト臨床試験の測定方法]
事前に行った肌測定において肌が乾燥傾向であることが認められた被験者9名[男性8名・女性1名、平均年齢43歳(35~56歳)]について、液状組成物を1日2回、顔に塗布し、以下に示す経皮水分蒸散量(TEWL)、角質水分量、角層分析を二重盲検試験で評価した。液状組成物の塗布は、3HBを含む液状組成物(実施例2)と、3HBを含まない液状組成物(比較例1、プラセボ)とを、顔の右半分、左半分で塗り分けた。被験者は、室温:20℃±1℃、湿度:50%±5%の条件で、入室後15分待機し、馴化後に、経皮水分蒸散量(TEWL)、角質水分量および角層分析について、以下の方法で測定した。なお、試験は、社外倫理委員会の承認を受けた試験であり、試験期間は、2022年1~3月の8週間である。
【0160】
(経皮水分蒸散量(TEWL))
試験開始前および8週間後に、マルチ皮膚測定器(Courage+Khazaka Electronic社製「Multi Probe Adapter MPA6」)にプローブとして接続したTewameter(Courage+Khazaka Electronic社製「Tewameter TM Hex」)を用いて、被験者の両頬骨の下部位において経皮水分蒸散量(TEWL)を測定した。
【0161】
測定結果を図5に示す。なお、図5中「++」は実施例2のp値が0.01未満(p<0.01)であることを意味する。図5から明らかなように、3HBを含まない液状組成物を用いた比較例1に比べて、3HBを含む液状組成物を用いた実施例2では、8週間後にTEWLが減少した。
【0162】
(角質水分量)
試験開始前および8週間後に、マルチ皮膚測定器(Courage+Khazaka Electronic社製「Multi Probe Adapter MPA6」)にプローブとして接続したCorneometer(Courage+Khazaka Electronic社製「Corneometer CM825)を用いて、被験者の両頬骨の下部位において角質水分量を測定した。
【0163】
測定結果を図6に示す。なお、図6中「*」は比較例1のp値が0.05未満(p<0.05)であることを意味する。図6から明らかなように、3HBを含む液状組成物を用いた実施例2は、試験開始前は、3HBを含まない液状組成物を用いた比較例1よりも角質水分量が少なかったにも拘わらず、8週間後には角質水分量が多くなるという驚くべき結果を示した。
【0164】
(保湿能)
肌の保湿能として、前記方法で測定したTEWLに対する角質水分量の比率(角質水分量/TEWLまたはW/T)を算出し、算出結果を図7に示す。図7から明らかなように、3HBを含まない液状組成物を用いた比較例1に比べて、3HBを含む液状組成物を用いた実施例2では、8週間後に肌の保湿状態(保湿能)が改善された。
【0165】
(角層分析)
試験開始前および8週間後に、セロテープ(登録商標)を用いて、測定者が被験者の両頬骨の下部位において角層(角質)をテープストリッピングにより採取し、収集した角層について以下の項目を評価した。
【0166】
(1)BG染色による細胞面積および多重剥離度
セロテープで採取した1層目の角層試料を、裁断後にスライドガラスに貼付し、キシレンに一晩浸漬することによりスライドガラス上に転写した。以下、この作業を転写と称する。
【0167】
次に、転写した角層試料を、ブリリアントグリーン・ゲンチアナバイオレット(Brilliant GreenおよびGentian violet)を含む水溶液(BG染色液)に浸漬し、染色した。
【0168】
さらに、流水で洗浄後に風乾し、マリノール(武藤化学(株)製)を用いて封入後、顕微鏡にて画像撮影をした(n=3)。
【0169】
得られた写真を図8に示す。図8の写真において、濃色の部分は、角質が重なって多重剥離が発生していることを示している。図8から明らかなように、3HBを含まない液状組成物を用いた比較例1に比べて、3HBを含む液状組成物を用いた実施例2では、8週間後に多重剥離が抑制されていることが確認できる。
【0170】
一方、画像解析にて、1サンプルごとに、角層細胞面積の平均値(μm)および多重剥離率(%)をそれぞれ算出した。算出した角層細胞面積の平均値の結果を図9に示し、多重剥離率の結果を図10に示す。なお、多重剥離率は、画像中の総角層細胞面積に対する多重剥離部分の面積の割合とした。また、図9中「++」は実施例2のp値が0.01未満(p<0.01)であることを意味する。図9から明らかなように、実施例2の角層細胞面積の平均値における8週間試験後の増加量が65.72μmであり、液状組成物の使用によって大きく増加したのに対して、比較例1の増加量は16.64μmであり、実施例2に比べて増加量が少なかった。また、図10から明らかなように、実施例2の多重剥離率における8週間試験前後の変化量が-0.22%と減少したのに対して、比較例1の変化量は1.19%と増加した。これらの結果から、実施例2では比較例1に比べて角層の状態が改善されていることが確認できた。
【0171】
(2)TGM-1活性
採取した3層目の角層試料を、50μM濃度でダンシルカダベリンを含むリン酸緩衝生理食塩水[PBS(-)]に浸漬し、37℃にて一晩インキュベートした。
【0172】
次に、洗浄風乾後の角層付着面をスライドガラスに貼付し、キシレンに一晩浸漬することによりスライドガラス上に転写した。
【0173】
トランスグルタミナーゼによる架橋形成能を評価するために、蛍光基質として加えたダンシルカダベリンに由来する青色蛍光を蛍光顕微鏡で画像撮影した(n=3)。
【0174】
撮影写真について、画像処理により、蛍光の濃さで二値化(閾値:125)した加工写真(画像処理写真)を図11に示す。図11から明らかなように、3HBを含まない液状組成物を用いた比較例1に比べて、3HBを含む液状組成物を用いた実施例2では、8週間後に多量のTGM-1が産生されていることが確認できる。
【0175】
一方、画像解析にて、角層の多重剥離部分を除いた青色の平均蛍光強度(A.U.)を算出し、TGM-1活性とした。算出した平均蛍光強度(TGM-1活性)の結果を図12に示す。図12から明らかなように、実施例2の平均蛍光強度における8週間試験後の増加量が0.20A.U.であったのに対して、比較例1の増加量は0.05A.U.であり、実施例2に比べて小さかった。
【0176】
(3)ナイルレッド(Nile red)染色
2層目の角層試料を裁断後にスライドガラス上に転写した。次に、3μg/mL濃度でナイルレッド(親油性の蛍光色素)を含有する75%グリセリンを転写された角層に滴下して封入し、蛍光顕微鏡にて画像撮影をした(n=3)。赤い蛍光が強いほど、細胞間脂質の存在量が多いことを示す。
【0177】
撮影写真について、画像処理により、蛍光の濃さで二値化(閾値:125)した加工写真(画像処理写真)を図13に示す。図13から明らかなように、3HBを含まない液状組成物を用いた比較例1に比べて、3HBを含む液状組成物を用いた実施例2では、8週間後に細胞間脂質の存在量が多いことが確認できる。そのため、実施例2では、比較例1に比べてリピッドエンベロープが、広範囲にわたり均一に形成されていることがわかる。
【0178】
一方、画像解析にて、角層の多重剥離部分を除いた赤色の平均蛍光強度(A.U.)を算出し、ナイルレッド染色度とした。算出した平均蛍光強度(ナイルレッド染色度)の結果を図14に示す。なお、図14中「+」は実施例2のp値が0.05未満(p<0.05)であることを意味する。図14から明らかなように、実施例2の平均蛍光強度における8週間試験後の増加量が6.80A.U.であったのに対して、比較例1の平均蛍光強度は2.53A.U.であり、実施例2に比べて小さかった。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本発明のトランスグルタミナーゼ産生促進剤は、生体内でトランスグルタミナーゼの産生を促進できるため、美容または化粧品、食品、医薬品、医薬部外品などの各種用途に利用でき、特に、老化やアレルギーなどによる乾燥肌であっても、正常なCEおよびリピッドエンベロープを形成でき、正常化された角質を有する肌を再生できるため、エイジングケア用品などのスキンケア用品などに好適に利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14