(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046379
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】アクティブマトリクス基板および液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20240327BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20240327BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20240327BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240327BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
G09F9/30 338
G02F1/1368
H01L29/78 618B
H01L29/78 613Z
H01L29/78 612Z
G09F9/30 348A
G09F9/30 349C
G02B27/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151728
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100216770
【弁理士】
【氏名又は名称】三品 明生
(74)【代理人】
【識別番号】100217364
【弁理士】
【氏名又は名称】田端 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】岡田 訓明
(72)【発明者】
【氏名】東田 晋平
【テーマコード(参考)】
2H192
2H199
5C094
5F110
【Fターム(参考)】
2H192BC33
2H192BC42
2H192CB05
2H192CB37
2H192CB81
2H192CC42
2H192JB01
2H199AB13
2H199AB52
2H199CA23
2H199CA63
2H199CA86
5C094AA06
5C094BA03
5C094BA43
5C094CA19
5C094DA15
5C094DB01
5C094EA04
5C094EA05
5C094ED14
5C094ED15
5C094FA01
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5C094FB02
5C094FB14
5C094FB15
5C094JA08
5C094JA09
5C094JA13
5F110AA06
5F110BB01
5F110BB11
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5F110DD14
5F110EE07
5F110FF02
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5F110GG01
5F110GG02
5F110HK07
5F110HM18
5F110NN71
(57)【要約】
【課題】より高いコントラストの表示を行うことが可能なアクティブマトリクス基板および液晶表示装置を提供する。
【解決手段】アクティブマトリクス基板は、基板と、基板上に位置する複数の画素を備える。各画素は、酸化物半導体層と、酸化物半導体層を覆う第1絶縁体と、第1絶縁体に位置する第1コンタクトホールと、第1絶縁体上および第1コンタクトホール内に位置し、酸化物半導体層と接続された第1引き出し電極と、第1引き出し電極を覆う第2絶縁体と、第2絶縁体に位置する第2コンタクトホールと、第2絶縁体上および第2コンタクトホール内に位置し、第1引き出し電極と接続された第2引き出し電極と、第2引き出し電極と接続された画素電極とを備える。第1および第2引き出し電極は透光性を有し、第1および第2コンタクトホールの少なくとも一方の側面の一部は、第1および第2引き出し電極で覆われていない。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域を有する基板と、
前記表示領域において、第1方向に延びる複数のソースバスラインと、
前記第1方向と交差する第2方向に延びる複数のゲートバスラインと、
前記基板の表示領域上に位置する複数の画素であって、各画素が前記複数のソースバスラインの1つおよび前記複数のゲートバスラインの1つと電気的に接続された、複数の画素と、
を備えたアクティブマトリクス基板であって、
前記各画素は、
前記基板上に位置し、平面視において、前記複数のゲートバスラインの1つと部分的に重なる酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層を覆う第1絶縁体と、
前記第1絶縁体に位置しており、前記酸化物半導体層の一部を露出させる第1コンタクトホールと、
前記第1絶縁体上および前記第1コンタクトホール内の少なくとも一部に位置し、前記酸化物半導体層と接続された第1引き出し電極と、
前記第1引き出し電極を覆う第2絶縁体と、
前記第2絶縁体に位置しており、前記第1引き出し電極の一部を露出させる第2コンタクトホールと、
前記第2絶縁体上および前記第2コンタクトホール内の少なくとも一部に位置し、前記第1引き出し電極と接続された第2引き出し電極と、
前記第2絶縁体上に位置し、前記第2引き出し電極と接続された画素電極と
を備え、
前記第1引き出し電極および前記第2引き出し電極は透光性を有し、
前記第1コンタクトホールおよび前記第2コンタクトホールの少なくとも一方の側面の一部は、前記第1引き出し電極および前記第2引き出し電極で覆われていない、アクティブマトリクス基板。
【請求項2】
前記各画素は、前記基板上に位置し、平面視において、前記複数のゲートバスラインの1つと重なる遮光層をさらに備え、
前記第2引き出し電極は、前記第2コンタクトホールの側面の一部のみを覆っており、
平面視において、前記第2引き出し電極のうち前記側面を覆う部分は、前記複数のゲートバスラインの1つと重なっており、かつ、前記第2コンタクトホールの前記側面のうち、前記第2引き出し電極で覆われていない部分は、前記遮光層と重なっていない、請求項1に記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項3】
前記各画素は、前記基板上に位置し、平面視において、少なくとも前記複数のゲートバスラインの1つと重なる遮光層をさらに備え、
前記第1引き出し電極は、前記第1コンタクトホールの側面の一部のみを覆っており、
平面視において、前記遮光層は、前記第1引き出し電極のうち前記側面を覆う部分と重なっており、かつ、前記第1コンタクトホールの前記側面のうち、前記第1引き出し電極で覆われていない部分は、前記遮光層と重なっていない、請求項1に記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項4】
表示領域を有する基板と、
前記表示領域において、第1方向に延びる複数のソースバスラインと、
前記第1方向と交差する第2方向に延びる複数のゲートバスラインと、
前記基板の表示領域上に位置する複数の画素であって、各画素が前記複数のソースバスラインの1つおよび前記複数のゲートバスラインの1つと電気的に接続された、複数の画素と、
を備えたアクティブマトリクス基板であって、
前記各画素は、
前記基板上に位置し、平面視において、前記複数のゲートバスラインの1つと部分的に重なる酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層を覆う第1絶縁体と、
前記第1絶縁体に位置しており、前記酸化物半導体層の一部を露出させる第1コンタクトホールと、
前記第1絶縁体上および前記第1コンタクトホール内の少なくとも一部に位置し、前記酸化物半導体層と接続された第1引き出し電極と、
前記第1引き出し電極を覆い、前記第1コンタクトホール内および前記第1絶縁体上に位置する第2絶縁体と、
前記第2絶縁体に位置しており、前記第1引き出し電極の一部を露出させる第2コンタクトホールと、
前記第2絶縁体上および前記第2コンタクトホール内の少なくとも一部に位置し、前記第1引き出し電極と接続された第2引き出し電極と、
前記第2コンタクトホール内位置する第3絶縁体と、
前記第2絶縁体上に位置し、前記第2引き出し電極と接続された画素電極と
を備え、
前記第1引き出し電極および前記第2引き出し電極は透光性を有し、
前記第1絶縁体、前記第2絶縁体および前記第3絶縁体の屈折率は、それぞれn1、n2およびn3とし、 前記第1コンタクトホールの側面および前記第2コンタクトホールの側面と前記基板の主面とのなす角度をそれぞれθ1およびθ2としたとき、
下記不等式(1)および(2)の少なくとも一方を満たしている、
n1×sinθ1>n2 (1)
n2×sinθ2>n3 (2)
アクティブマトリクス基板。
【請求項5】
前記不等式(1)の関係を満たしており、
前記第1絶縁体は、第1無機絶縁層および第2無機絶縁層を含み、
前記第1無機絶縁層の屈折率は、前記第2無機絶縁層の屈折率よりも大きく、前記第1前記無機絶縁層は前記n1の屈折率を有しており、前記第1無機絶縁層の厚さは前記第2無機絶縁層の厚さよりも大きい、請求項4に記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項6】
表示領域を有する基板と、
前記表示領域において、第1方向に延びる複数のソースバスラインと、
前記第1方向と直交する第2方向に延びる複数のゲートバスラインと、
前記基板の表示領域上に位置する複数の画素であって、各画素が前記複数のソースバスラインの1つおよび前記複数のゲートバスラインの1つと電気的に接続された、複数の画素と、
を備えたアクティブマトリクス基板であって、
前記各画素は、
前記基板上に位置し、平面視において、前記複数のゲートバスラインの1つと部分的に重なる酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層を覆う第1絶縁体と、
前記第1絶縁体に位置しており、前記酸化物半導体層の一部を露出させる第1コンタクトホールと、
前記第1絶縁体上および前記第1コンタクトホール内の少なくとも一部に位置し、前記酸化物半導体層と接続された第1引き出し電極と、
前記第1引き出し電極を覆う第2絶縁体と、
前記第2絶縁体に位置しており、前記第1引き出し電極の一部を露出させる第2コンタクトホールと、
前記第2絶縁体上および前記第2コンタクトホール内の少なくとも一部に位置し、前記第1引き出し電極と接続された第2引き出し電極と、
前記第2絶縁体上に位置し、前記第2引き出し電極と接続された画素電極と
を備え、
前記第1引き出し電極および前記第2引き出し電極は透光性を有し、
前記第2コンタクトホールは、前記第2方向と平行に伸び、隣接する画素の前記第2コンタクトホールと連続している溝形状を有する、アクティブマトリクス基板。
【請求項7】
表示領域を有する基板と、
前記表示領域において、第1方向に延びる複数のソースバスラインと、
前記第1方向と直交する第2方向に延びる複数のゲートバスラインと、
前記基板の表示領域上に位置する複数の画素であって、各画素が前記複数のソースバスラインの1つおよび前記複数のゲートバスラインの1つと電気的に接続された、複数の画素と、
を備えたアクティブマトリクス基板であって、
前記各画素は、
前記基板上に位置し、平面視において、前記複数のゲートバスラインの1つと部分的に重なる酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層を覆う第1絶縁体と、
前記第1絶縁体に位置しており、前記酸化物半導体層の一部を露出させる第1コンタクトホールと、
前記第1絶縁体上および前記第1コンタクトホール内の少なくとも一部に位置し、前記酸化物半導体層と接続された第1引き出し電極と、
前記第1引き出し電極を覆う第2絶縁体と、
前記第2絶縁体に位置しており、前記第1引き出し電極の一部を露出させる第2コンタクトホールと、
前記第2絶縁体上および前記第2コンタクトホール内の少なくとも一部に位置し、前記第1引き出し電極と接続された第2引き出し電極と、
前記第2絶縁体上に位置し、前記第2引き出し電極と接続された画素電極と
を備え、
前記第1引き出し電極および前記第2引き出し電極は透光性を有し、
前記第1引き出し電極の第1コンタクトホールの側面における厚さd1、および、前記第2引き出し電極の第2コンタクトホールの側面における厚さd2の少なくとも一方は、175nm以上、215nm以下である、アクティブマトリクス基板。
【請求項8】
前記第2コンタクトホールの底部の形状は円形である、請求項1に記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項9】
前記複数の画素を駆動する駆動回路をさらに備え、
前記駆動回路は、前記基板の前記表示領域の周囲に位置する非表示領域に配置されており、
前記駆動回路は、多結晶シリコン半導体層をそれぞれ含む複数のTFTを含む、請求項1に記載のアクティブマトリクス基板。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のアクティブマトリクス基板と、
前記アクティブマトリクス基板と対向して位置する対向基板と、
前記アクティブマトリクス基板と前記対向基板との間に位置する液晶層と、
少なくとも前記液晶層を介して互いに対向する一対の偏光板と
を備え、
前記一対の偏光板は、クロスニコルに配置されており、
前記一対の偏光板の偏光軸は前記第1方向と平行または垂直である、液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクティブマトリクス基板および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、有機EL表示装置などの表示装置は種々の画像表示装置に用いられており、例えば、ヘッドマウントディスプレイにも用いられている。ヘッドマウントディスプレイは、一般的には、眼鏡のように目の直前に配置されるため、表示装置と目との間の距離が短く、表示装置には非常に高い解像度(例えば、1000ppi以上)が求められる。
【0003】
ヘッドマウントディスプレイは頭部に装着されるものであるため、内部電源で駆動されることが好ましい。このため、画素を駆動するTFTには、低リーク性能に優れる酸化物半導体層を有するTFTを用いることが好ましい。例えば特許文献1はこのような液晶表示装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘッドマウントディスプレイでは、さらなる表示品位の向上が求められる。具体的には、よりコントラストの高い表示が求められる。本開示は、より高いコントラストの表示を行うことが可能なアクティブマトリクス基板および液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係るアクティブマトリクス基板は、表示領域を有する基板と、前記表示領域において、第1方向に延びる複数のソースバスラインと、前記第1方向と交差する第2方向に延びる複数のゲートバスラインと、前記基板の表示領域上に位置する複数の画素であって、各画素が前記複数のソースバスラインの1つおよび前記複数のゲートバスラインの1つと電気的に接続された、複数の画素と、を備えたアクティブマトリクス基板であって、前記各画素は、前記基板上に位置し、平面視において、前記複数のゲートバスラインの1つと部分的に重なる酸化物半導体層と、前記酸化物半導体層を覆う第1絶縁体と、前記第1絶縁体に位置しており、前記酸化物半導体層の一部を露出させる第1コンタクトホールと、前記第1絶縁体上および前記第1コンタクトホール内の少なくとも一部に位置し、前記酸化物半導体層と接続された第1引き出し電極と、前記第1引き出し電極を覆う第2絶縁体と、前記第2絶縁体に位置しており、前記第1引き出し電極の一部を露出させる第2コンタクトホールと、前記第2絶縁体上および前記第2コンタクトホール内の少なくとも一部に位置し、前記第1引き出し電極と接続された第2引き出し電極と、前記第2絶縁体上に位置し、前記第2引き出し電極と接続された画素電極とを備え、前記第1引き出し電極および前記第2引き出し電極は透光性を有し、前記第1コンタクトホールおよび前記第2コンタクトホールの少なくとも一方の側面の一部は、前記第1引き出し電極および前記第2引き出し電極で覆われていない。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、より高いコントラストの表示を行うことが可能なアクティブマトリクス基板および液晶表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態のアクティブマトリクス基板の平面構造の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のアクティブマトリクス基板の画素の平面構造を拡大して示す模式図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態のアクティブマトリクス基板を液晶表示装置に適用した場合の構成例を示す模式的断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のアクティブマトリクス基板の各画素の構造を示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図4におけるA-A線断面におけるアクティブマトリクス基板の構造を示す模式図である。
【
図6A】
図6Aは、コンタクトホールに透明な引き出し電極が配置されている状態において、バックライトから光Lが入射する様子を説明するための模式図である。
【
図6B】
図6Bは、S偏光が境界面に入射した場合の反射光と透過光を説明する模式図である。
【
図6C】
図6Cは、P偏光が境界面に入射した場合の反射光と透過光を説明する模式図である。
【
図7】
図7は、コンタクトホールのテーパー角度θに対するS偏光およびP偏光の透過率の依存性ならびに、透過光の偏光方位の回転角度を示す。
【
図8】
図8は、コンタクトホールの底部が円形状を有している場合において、側面に形成された引き出し電極による入射境界面と入射する光の偏光軸との関係を示す。
【
図9】
図9は、位置P3において、コンタクトホールに入射する光および透過した光の偏光軸を説明する模式図である。
【
図10】
図10は、コンタクトホールの側面全体に引き出し電極が形成されている場合における、入射光と透過光の偏光軸の回転方位の分布を示す。
【
図11】
図11は、第1実施形態の第2コンタクトホールの側面に設けられた第2引き出し電極の配置と、第2コンタクトホールにおける入射光と透過光の偏光軸の方位の分布を示す。
【
図12】
図12は、第2実施形態のアクティブマトリクス基板の各画素の構造を示す平面図である。
【
図13】
図13は、
図12におけるB-B線断面におけるアクティブマトリクス基板の構造を示す模式図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態のアクティブマトリクス基板の断面構造を示す模式図である。
【
図15】
図15は、第3実施形態において、第2コンタクトホールを透過する光を説明する模式図である。
【
図16】
図16は、第4実施形態のアクティブマトリクス基板の断面構造を示す模式図である。
【
図17】
図17は、第5実施形態のアクティブマトリクス基板の各画素の構造を示す平面図である。
【
図18】
図18は、第6実施形態のアクティブマトリクス基板の断面構造を示す模式図である。
【
図19】
図19は、緑色光が、厚さdの第2引き出し電極を透過する場合における、厚さdと、P偏光およびS偏光の透過率との関係、および、透過した光の偏光方位回転角度との関係を示す。
【
図20】
図20は、赤色光、青色光および緑色光が、厚さdの第2引き出し電極を透過する場合における、厚さdと、透過した光の偏光方位回転角度との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
例えば1000ppi以上の超高解像度の液晶表示装置を実現する場合、各画素のサイズが小さくなるため、開口率を大きくして白表示の輝度を高めることが好ましい。例えば、酸化物半導体が透明であることを利用して、画素電極と酸化物半導体層とをコンタクトホールを介して透明な引き出し電極で接続することが考えられる。
【0010】
しかしながら、本願発明者がこのような構造を備えた液晶表示装置の表示品位を検討したところ、黒表示の際にコンタクトホールにおいて光漏れが生じ、黒輝度が十分に低くならないことが分かった。以下において詳述するように、液晶表示装置における黒表示は、液晶層を透過した偏光が観察者側に位置する偏光板の透過軸(偏光軸)によって遮断されることにより、実現する。しかし、コンタクトホールに偏光を透過させる構造の液晶表示装置では、コンタクトホールの形状に起因して、透過する偏光の偏光方位が回転してしまうと考えられる。
【0011】
このような課題に鑑み、本願発明者は新規な構造を有するアクティブマトリクス基板を想到した。以下本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。また、以下の説明において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、実施形態及び変形例に記載された各構成は、本開示の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。直交および平行とは、辺あるいは面が、厳密に90°または180°の関係で配置されている場合に限らず、許容される誤差(例えば±3°程度)の範囲、つまり、例えば、87°~93°、および177°~183°の範囲で2つの辺や2つの面あるいは、辺と面とが配置されている場合を含む。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態のアクティブマトリクス基板201の平面構造の一例を示す模式図である。アクティブマトリクス基板201は、主面に表示領域DRと表示領域以外の非表示領域FRとを含む基板10を備えている。表示領域DRは、例えば、x方向(第2方向)、および、x方向に直交するy方向(第1方向)のマトリクス状に配列された複数の画素PXを含む。非表示領域FRは、表示領域の周縁に位置し、表示に寄与しない領域である。
【0013】
アクティブマトリクス基板201は、表示領域DRに、複数のソースバスラインSLと、複数のゲートバスラインGLとを備えている。例えば、複数のソースバスラインSLは、y方向に延びており、複数のゲートバスラインGLは、x方向に延びている。
【0014】
各画素PXは、画素TFT101と画素電極PEとを含む。
図2は、アクティブマトリクス基板201の画素PXの平面構造を拡大して示す模式図である。
図2に示すように、各画素PXは、複数のゲートバスラインGLの1つおよび複数のソースバスラインSLの1つと接続されている。より具体的には、画素TFT101のゲートGがゲートバスラインGLと接続され、ソースSがソースバスラインSLと接続されている。また、ドレインDは画素電極PEに電気的に接続されている。
【0015】
図1に示すように、アクティブマトリクス基板201は、基板10の非表示領域FRに位置し、ゲートドライバGDおよびソースドライバSDを含む駆動回路をさらに備える。
【0016】
上述したように、アクティブマトリクス基板201が、例えば、ヘッドマウントディスプレイ用の表示装置に用いられる場合、画素を駆動するTFTには、低リーク性能に優れる酸化物半導体層を有することが好ましい。一方、駆動回路は、駆動電流が大きいTFTによって構成されていることが好ましい。例えば、駆動回路は、低温ポリシリコン(多結晶シリコン)半導体層を有する複数のTFTを含むことが好ましい。
【0017】
図3は、本実施形態の液晶表示装置301の構成例を示す模式的断面図である。液晶表示装置301は、アクティブマトリクス基板201と対向基板210と、液晶層220と、偏光板230および偏光板240とを備える。
【0018】
対向基板210は、スペーサ250によってアクティブマトリクス基板201の主面と所定の間隙を隔てて配置され、液晶層220はアクティブマトリクス基板201と対向基板210とに挟まれて位置する。偏光板230および偏光板240は、少なくとも液晶層220を介して互いに対向している。より具体的には、偏光板230および偏光板240は、対向基板210、液晶層220およびアクティブマトリクス基板201を挟むように位置している。
【0019】
一対の偏光板230、240は、クロスニコルに配置されている。例えば、偏光板230の透過軸(偏光軸)はy方向に平行であり、偏光板240の透過軸(偏光軸)はx方向に平行である。偏光板230の透過軸はx方向に平行であり、偏光板240の透過軸はy方向に平行であってもよい。したがって、アクティブマトリクス基板201には、偏光板230を透過した直線偏光が入射する。
【0020】
図4は、アクティブマトリクス基板201の画素PXの主要な構成要素を示す平面図であり、
図5は、
図4のA-A線断面におけるアクティブマトリクス基板201の構造を示す。
図4において、構成要素の重なりを分かりやすく示すため、一部の構成要素は、その下の構造が見えるように示している。また、
図4において後述するコモン電極および種々の絶縁層は示していない。
【0021】
アクティブマトリクス基板201の画素PXは、前述した画素TFT101および画素電極PEに加えて、遮光層11と、下地層25と、第1絶縁体21と、第2絶縁体22と、第3絶縁体23と、誘電体24と、第1引き出し電極31と、第2引き出し電極32とコモン電極33とを含む。また、画素TFT101は、酸化物半導体層30と、ゲートバスラインGLの一部であるゲート電極とを含む。
【0022】
基板10は、例えば、透光性を有するガラス基板である。本願明細書において透光性とは、少なくとも可視光の波長帯域の光を透過する。
【0023】
遮光層11は、平面視において、少なくともゲートバスラインGLと重なるように基板10上に配置されている。本願明細書において、平面視とは、基板10に対して垂直な方向から見ることをいう。
【0024】
下地層25は、遮光層11を覆って基板10上に配置されている。下地層25は、絶縁性を有しており、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素などの無機材料によって構成されている。
【0025】
図4に示すように、平面視において、ゲートバスラインGLと交差するように酸化物半導体層30が配置されている。酸化物半導体層30は、チャネル領域30Cと、ソース領域30Sと、ドレイン領域30Dとを含む。チャネル領域30Cは遮光層11に位置している。一方、ソース領域30Sおよびドレイン領域30Dはチャネル領域30Cにそれぞれ隣接している。
【0026】
酸化物半導体層30は、アモルファス酸化物半導体であってもよいし、結晶質部分を有する結晶質酸化物半導体であってもよい。結晶質酸化物半導体としては、多結晶酸化物半導体、微結晶酸化物半導体、c軸が層面に概ね垂直に配向した結晶質酸化物半導体などが挙げられる。
【0027】
酸化物半導体層30は、単層であってもよいし、2層以上の積層構造を有していてもよい。酸化物半導体層30が積層構造を有する場合には、酸化物半導体層は、アモルファス酸化物半導体層と結晶質酸化物半導体層とを含んでいてもよい。あるいは、結晶構造の異なる複数の結晶質酸化物半導体層を含んでいてもよい。また、複数の非晶質酸化物半導体層を含んでいてもよい。酸化物半導体層が上層と下層とを含む2層構造を有する場合、上層に含まれる酸化物半導体のエネルギーギャップは、下層に含まれる酸化物半導体のエネルギーギャップよりも大きいことが好ましい。ただし、これらの層のエネルギーギャップの差が比較的小さい場合には、下層の酸化物半導体のエネルギーギャップが上層の酸化物半導体のエネルギーギャップよりも大きくてもよい。酸化物半導体層は、例えば特開2014-007399号公報に詳述されている。
【0028】
酸化物半導体層は、例えば、In、GaおよびZnのうち少なくとも1種の金属元素を含んでもよい。本実施形態では、酸化物半導体層は、例えば、In-Ga-Zn-O系の半導体(例えば酸化インジウムガリウム亜鉛)を含む。ここで、In-Ga-Zn-O系の半導体は、In、Ga、Znの三元系酸化物であって、In、GaおよびZnの組成比は特に限定されず、例えばIn:Ga:Zn=2:2:1、In:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=1:1:2等であってもよい。このような酸化物半導体層は、In-Ga-Zn-O系の半導体を含む酸化物半導体膜から形成され得る。
【0029】
酸化物半導体層は、In-Ga-Zn-O系半導体の代わりに、他の酸化物半導体を含んでいてもよい。例えばIn-Sn-Zn-O系半導体(例えばIn2O3-SnO2-ZnO;InSnZnO)を含んでもよい。In-Sn-Zn-O系半導体は、In(インジウム)、SnおよびZnの三元系酸化物である。あるいは、酸化物半導体層は、In-Al-Zn-O系半導体、In-Al-Sn-Zn-O系半導体、Zn-O系半導体、In-Zn-O系半導体、Zn-Ti-O系半導体、Cd-Ge-O系半導体、Cd-Pb-O系半導体、CdO(酸化カドミウム)、Mg-Zn-O系半導体、In-Ga-Sn-O系半導体、In-Ga-O系半導体、Zr-In-Zn-O系半導体、Hf-In-Zn-O系半導体、Al-Ga-Zn-O系半導体、Ga-Zn-O系半導体などを含んでいてもよい。
【0030】
ソース領域30Sおよびドレイン領域30Dは、導電性を有する。ソース領域30Sおよびドレイン領域30Dは、例えば、ゲートバスラインGLまたは遮光層11をマスクとして用い、レーザ光を酸化物半導体層30に照射し、酸化物半導体を低抵抗化することによって形成してもよい。あるいは、酸化物半導体層30にアルゴンプラズマ処理を施してソース領域30Sおよびドレイン領域30Dを形成してもよいし、酸化物半導体層30にAl膜を形成し、反応させることによって、ソース領域30Sおよびドレイン領域30Dを形成してもよい。
【0031】
酸化物半導体層30を覆って下地層25上に膜状の第1絶縁体21が配置されている。本実施形態では、第1絶縁体21は、ゲート絶縁層21Aと、第1無機絶縁層21Bと、第2無機絶縁層21Cとを含む。ゲート絶縁層21Aは、酸化物半導体層30の一部を覆って下地層25上であって、ゲートバスラインGLの下に配置されている。ゲート絶縁層21Aは例えば酸化ケイ素によって構成されており、例えばゲートバスラインGLをマスクとしてドライエッチングにより形成される。
【0032】
ゲート絶縁層21A上にゲートバスラインGLが位置している。また、ゲートバスラインGLを覆ってゲート絶縁層27上に第1無機絶縁層21Bが配置されている。第1無機絶縁層21Bは、例えば、窒化ケイ素膜から構成されている。
【0033】
第1無機絶縁層21B上にはソースバスラインSLが位置している。ソースバスラインSLは、平面視において酸化物半導体層30と重なっており、第1無機絶縁層21Bに設けられたコンタクトホール43によってソースバスラインSLと、酸化物半導体層30のソース領域30Sとが接続されている。
【0034】
第2無機絶縁層21Cは、ソースバスラインSLを覆って第1無機絶縁層21B上に位置している。第2無機絶縁層21Cは、例えば酸化ケイ素によって構成されている。
【0035】
第1絶縁体21には、第1絶縁体21を厚さ方向に貫通する第1コンタクトホール41が設けられている。第1コンタクトホール41は、底部41bにおいて酸化物半導体層30の一部を露出させている。第1コンタクトホール41は、具体的には、底部41bが開口41aよりも小さい逆テーパー形状を有している。本実施形態では、開口41aおよび底部41bは、概ね円形状を有している。
【0036】
第1引き出し電極31は、第1絶縁体21上および第1コンタクトホール41内の少なくとも一部に位置している。第1コンタクトホール41内において、第1引き出し電極31は、酸化物半導体層30と接続されている。本実施形態では、第1引き出し電極31は、第1コンタクトホール41の側面41s全体および底部41b全体に位置している。第1引き出し電極31は、ITOやIZOなどの透明な導電体によって構成されている。
【0037】
第2絶縁体22は、第1引き出し電極31を覆って第1絶縁体21上に位置している。第2絶縁体22は、さらに、第1コンタクトホール41内にも配置されている。第2絶縁体22は、第1絶縁体21の表面の凹凸を平坦化する平坦化膜であり、第2絶縁体22の上面は概ね平坦である。第2絶縁体22は、例えば、感光性アクリル樹脂などの有機絶縁体によって構成されている。
【0038】
第2絶縁体22には、第2絶縁体22を厚さ方向に貫通する第2コンタクトホール42が設けられている。第2コンタクトホール42は、底部42bにおいて第1引き出し電極31の一部を露出させている。第2コンタクトホール42は、具体的には、底部42bが開口42aよりも小さい逆テーパー形状を有している。本実施形態では、開口42aおよび底部42bは、概ね円形状を有している。
【0039】
第2コンタクトホール42は、平面視において、一部がゲートバスラインGLおよび遮光層11と重なっており、残りの部分はゲートバスラインGLおよび遮光層11と重なっていない。また、第2コンタクトホール42は、平面視において、全体が第1引き出し電極31と重なっている。
【0040】
第2引き出し電極32は、第2絶縁体22上および第2コンタクトホール42内の少なくとも一部に位置しており、第2コンタクトホール42内において、第2引き出し電極32は、第1引き出し電極31と接続されている。本実施形態では、第2引き出し電極32は、第2コンタクトホール42の側面42sの一部のみを覆っており、側面42sの残りの部分を覆っていない。より具体的には、第2コンタクトホール42の側面42sのうち、平面視においてゲートバスラインGLおよび遮光層11と重なる部分に第2引き出し電極32は位置しており、ゲートバスラインGLおよび遮光層11と重ならない部分には、第2引き出し電極32は位置していない。このため、側面42sのうち、ゲートバスラインGLおよび遮光層11と重ならない部分には、第2絶縁体22が露出している。
【0041】
図5に示す形態では、第2コンタクトホール42の底部42bも同様に、第2コンタクトホール42の底部42bのうち、平面視においてゲートバスラインGLおよび遮光層11と重なる部分に第2引き出し電極32は位置しており、ゲートバスラインGLおよび遮光層11と重ならない部分には、第2引き出し電極32は位置していない。しかし、第2引き出し電極32は、底部42bの全体を覆っていてもよい。第2引き出し電極32も、ITOやIZOなどの透明な導電体によって構成されている。第1引き出し電極31と第2引き出し電極32を同じ材料で構成した場合、第2引き出し電極32のエッチングの際に第1引き出し電極31の一部も欠損するケースが生じる。それを防ぐために、第1引き出し電極31と第2引き出し電極32の材料を変え、それぞれのエッチング液を変えてもよい。第2引き出し電極32の形成の際に、第1引き出し電極31が侵されない組合せを選ぶ。
【0042】
第3絶縁体23は、第2コンタクトホール42内に位置している。より具体的には、第3絶縁体23は、第2コンタクトホール42内に配置された第2引き出し電極32を覆って第2コンタクトホール42の窪みを平坦化している。第3絶縁体23の上面と、第2絶縁体22の上面とは同じ高さに位置している。
【0043】
上述したように、第2コンタクトホール42の側面42sおよび底部42bは、部分的に第2引き出し電極32で覆われているため、第3絶縁体23は、第2コンタクトホール42内において、第2引き出し電極32と接している部分と、第1絶縁体21または第1引き出し電極31と接する部分とを有する。
【0044】
具体的には、第3絶縁体23のうち、平面視において、ゲートバスラインGLおよび遮光層11と重なる部分は、第2引き出し電極32と接している。また、第3絶縁体23のうち、平面視において、ゲートバスラインGLおよび遮光層11と重ならない部分は、側面42sでは、第2絶縁体22と接し、底部42bでは、第2引き出し電極32と接している。
【0045】
第3絶縁体23は、例えば、感光性アクリル樹脂などの有機絶縁体によって構成されている。第2絶縁体22を構成する材料と第3絶縁体23を構成する材料は、同程度の屈折率を有していることが好ましく同じ値の屈折率を有することがより好ましい。例えば、第3絶縁体23は、第2絶縁体を構成する材料と同じ材料によって構成されている。
【0046】
画素電極PEは、少なくとも第2絶縁体22上に位置し、第2引き出し電極32と接続されている。本実施形態では、画素電極PEは、第2コンタクトホール42内の第3絶縁体23上にも位置している。また、第2絶縁体22上に位置する第2引き出し電極32の一部上に位置することによって、画素電極PEと第2引き出し電極32とが接続されている。画素電極PEは、ITOなどの透明な導電体によって構成されている。
【0047】
図4および
図5に示すように、画素電極PEは、一対のソースバスラインSLおよび一対のゲートバスラインGLによって囲まれる領域に配置されている。
図5において右側に示される画素電極PEは、隣接する画素PXの画素電極である。本実施形態では、TFT101の酸化物半導体層30は、平面視において、ゲートバスラインGLと交差している。このため、TFT101の一部は、隣接する画素に位置している。特に本実施形態では、画素電極PEと第2引き出し電極32とが接続される領域と、第1コンタクトホール41とは、ゲートバスラインGLを挟んで互いに反対側に位置している。このため、第1コンタクトホール41は、隣接する画素の領域に位置している。また、第2コンタクトホールの一部をゲートバスラインGLのうちのTFT101のゲートとして機能する部分上に配置しているため、画素電極PEの一部もゲートバスラインGL上に位置している。
【0048】
誘電体24は、画素電極PEを覆って第2絶縁体22および第3絶縁体23上に位置している。誘電体24は絶縁性を有し、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素などの無機材料によって構成されている。
【0049】
コモン電極33は、誘電体24上に位置し、アクティブマトリクス基板201の表示領域DR全体を覆っている。コモン電極33は、ITOなどの透明な導電体によって構成されている。
【0050】
本実施形態のアクティブマトリクス基板201によれば、第2コンタクトホール42の側面42sの一部が第2引き出し電極32で覆われていないことによって、黒表示の際にコンタクトホールにおいて光漏れが生じることが抑制される。この理由を詳細に説明する。
【0051】
上述したように、画素TFTの酸化物半導体層にも光を透過させて液晶表示装置の開口率を高める場合、画素電極と酸化物半導体層とをコンタクトホールを介して透明な引き出し電極で接続する構造を採用することが考えられる。
図6Aは、コンタクトホール401の側面全体に透明な引き出し電極402配置されている状態において、バックライトから光Lが入射する様子を説明するための模式図である。バックライトからの光Lは、コンタクトホールの側面において、低い(小さい)入射角度θiで第2引き出し電極32に入射し、一部が側面で全反射して反射光Lrとなり、残りの光がコンタクトホール内へ進む入射光Liとなる。
【0052】
この時、引き出し電極402の側面における透過率および反射率は、光LがS偏光であるかP偏光であるかによって異なる。
図6Bに示すように、紙面に対して垂直な境界面に対し、境界面と平行な方向に電場を有する光はS偏光である。
図6Cに示すように、入射光および反射光を含む平面に対して平行な方向に電場を有する光はP偏光である。
【0053】
図7は、コンタクトホールのテーパー角度θに対するS偏光およびP偏光の透過率を示す。テーパー角度θは
図6Aに示されるように水平方向に対して側面がなす角度で定義され、θ+θi=90°の関係を満たす。コンタクトホールの外部の媒体の屈折率を1.45とし、引き出し電極が厚さ70nm、屈折率2.00の媒体で構成されていると仮定してフレネルの式に基づき計算を行い、
図7に示す結果を得た。
図7に示されるように、テーパー角度θが0°ではS偏光およびP偏光の透過率はいずれも90%程度であり、透過率の値も等しい。P偏光の透過率は、テーパー角度θが58°程度までは増大し、ほぼ100%に達する。その後、58°を超えると透過率は低下する。テーパー角度θが90°では透過率は0%である。一方、S偏光の透過率は、テーパー角度θが15°程度まではほぼ一定であり、15°を超えると透過率が低下する。テーパー角が90では透過率は0%である。
【0054】
図8は、コンタクトホールの開口および底部が円形状を有している場合において、側面に形成された第2引き出し電極32による入射境界面PLと入射する光の偏光軸との関係を示している。入射境界面PLは、コンタクトホールの側面における任意の母線を含む平面である。入射境界面PLの位置を特定するために、平面視においてコンタクトホールの底部(開口)の中心を原点として、x軸およびy軸をとる。正方向に向かうx軸から半時計周りの角度φで入射境界面PLの位置を特定する。
【0055】
入射する光は、例えば、y軸と平行な透過軸を有する偏光板を透過することによって、
図8に示すように、y軸と平行な偏光軸Aを有している。
図8において、φ=0°のP1の位置において、第2コンタクトホール42の第2の引き出し電極に光が入射する場合、入射境界面PLは、光の偏光軸に平行である。このため、入射光はS偏光成分のみを含み、P偏光成分を含まない。その結果、
図7に示すようなS偏光とP偏光との間に透過率差があっても、この影響を受けない。つまり第2引き出し電極を透過した光はS偏光成分のみを含み、P偏光成分を含まない。φ=180°に位置する入射境界面PLにおける入射光および透過光の偏光成分についても同様である。
【0056】
また、φ=90°のP2の位置において、第2コンタクトホール42の第2引き出し電極32に光が入射する場合、入射境界面は、光の偏光軸Aに垂直である。このため、入射光はP偏光成分のみを含み、S偏光成分を含まない。また、引き出し電極を透過した光はP偏光成分のみを含み、S偏光成分を含まない。φ=270°に位置する入射境界面PLにおける入射光および透過光の偏光成分についても同様である。
【0057】
一方、φ=45°のP3の位置おいて、コンタクトホール側面の第2引き出し電極32に光が入射する場合、入射境界面は、光の偏光軸Aに対して45°の角度をなしている。
【0058】
図9は、位置P3において、コンタクトホールに入射する光および透過した光の偏光軸を説明する模式図である。
図9に示すように、入射光は、同じ大きさのP偏光成分とS偏光成分を含む。しかし、
図9に示すように、入射境界面では、例えばテーパー角が70°程度である場合、P偏光成分の透過率のほうがS偏光成分の透過率よりも約25%大きい。このため、透過光中のP偏光成分はS偏光成分よりも25%程度大きくなる。
【0059】
したがって、P偏光成分とS偏光成分とを合成した透過光の偏光軸は、入射光の偏光軸から回転することになる。表示装置の手前にある偏光板は、入射光の偏光軸と直交する方向に透過軸を有しているため、
図9に示すように、透過光は、透過軸を通過するLleakの成分を有する。これが黒表示時に光漏れとなる。
図7は、テーパー角度θと偏光軸の回転角度との関係を示す。
【0060】
P偏光成分とS偏光成分との透過率差の影響は、P偏光成分とS偏光成分の大きさが等しくなるφ=45°の位置において最も大きくなる。φ=135°、φ=225°およびφ=315°に位置する入射境界面PLにおける入射光および透過光の偏光成分についても同様である。
【0061】
図10は、第2コンタクトホール42の側面全体に第2引き出し電極32が設けられている場合において、第2コンタクトホール42における入射光と透過光の偏光軸の方位の分布をまとめて示す。上述したように、φ=45°、135°、225°および315°の位置において透過光の偏光軸の方位が回転し、液晶表示装置の黒表示時に光漏れが生じる。
【0062】
第2コンタクトホール42の底部42bに入射する光はテーパー角度θ=0°であるため、
図6に示すように、P偏光とS偏光とで、透過率の値に差異が生じない。このため、底部では透過する光の偏光方位は回転しない。
【0063】
本実施形態のアクティブマトリクス基板201では、これらの位置における光漏れを抑制するために、第2コンタクトホール42の側面42sの一部が第2引き出し電極32で覆われないように構成している。
【0064】
図11は、本実施形態の第2コンタクトホール42の側面42sに設けられた第2引き出し電極32の配置と、第2コンタクトホール42における入射光と透過光の偏光軸の方位の分布をまとめて示す。
図4を参照して説明したように、第2引き出し電極32は、第2コンタクトホール42の側面42sのうち平面視において、ゲートバスラインGLと重ならない領域には位置していない。この領域では、第2コンタクトホール42の側面42sは、第1絶縁体21と第2絶縁体22とが接している。
【0065】
P偏光とS偏光の透過率差は、光が屈折することによって生じる。第2コンタクトホール42においては、第2コンタクトホール42が形成されている第2絶縁体22および第2引き出し電極32を構成している材料の屈折率差が大きいことによって生じる。したがって、第2コンタクトホール42において、第2引き出し電極32を設けないことによって上述した光漏れが抑制できる。
【0066】
具体的には、第2コンタクトホール42において、第2引き出し電極32が設けられていない領域では、第2絶縁体22と第3絶縁体23とが接している。したがって、第2絶縁体22が、第2引き出し電極32と接する場合に比べて屈折率差が小さくなり、光漏れが抑制できる。特に、第2絶縁体22と第3絶縁体23とがそれぞれ有機絶縁体である場合、絶縁体の種類によらず、屈折率は、1.4~1.5程度であるため、P偏光とS偏光の透過率差を小さくすることができる。さらに、第2絶縁体22と第3絶縁体23とが同じ樹脂材料によって構成されている場合には、第2絶縁体22と第3絶縁体23との屈折率差がゼロになるため、第2コンタクトホール42の側面42sにおける屈折が生じない。このため、光漏れをさらに抑制することができる。
【0067】
特に、第2コンタクトホール42が設けられる第2絶縁体22は、平坦化膜として機能し、他の絶縁層に比べて相対的に大きな厚さを有している。このため、第2コンタクトホール42の側面42sの面積も相対的に大きく、光漏れが生じ得る面積も大きくなる。したがって、上述した構成による光漏れ抑制の効果は大きい。
【0068】
一方、第2コンタクトホール42において、第2引き出し電極32が設けられている領域は、平面視において、ゲートバスラインGL(および遮光層11)と重なっており、基板10側から第2コンタクトホール42へ光が入射するのが遮られている。したがって、第2コンタクトホール42の側面42sでの光漏れも抑制される。この光の遮蔽は、ゲートバスラインGLを利用しており、遮光する領域を拡大しなくてもよいので、開口率の低下も抑制することができる。
【0069】
本実施形態のアクティブマトリクス基板201は、一般的なアクティブマトリクス基板と同様の方法によって製造することができる。第2引き出し電極32が上記構造を有するように、ITO等からなる透明導電性膜を形成し、透明導電性膜をパターニングすればよい。
【0070】
本実施形態のアクティブマトリクス基板201および液晶表示装置301によれば、画素TFTが酸化物半導体層を含み、画素電極と酸化物半導体層とがコンタクトホールを介して透明な引き出し電極で接続されているため、高い開口率を実現することができる。また、第2コンタクトホールの側面の一部を第2引き出し電極で覆わないことによって黒表示の際の光漏れを抑制することができる。
【0071】
[第2の実施形態]
図12は、本実施形態のアクティブマトリクス基板202の画素PXの主要な構成要素を示す平面図であり、
図13は、
図12のB-B線断面におけるアクティブマトリクス基板202の構造を示す。第1の実施形態と同様、
図12において、構成要素の重なりを分かりやすく示すため、一部の構成要素は、その下の構造が見えるように示しており、コモン電極および種々の絶縁層は示していない。
【0072】
アクティブマトリクス基板202およびアクティブマトリクス基板202を備えた液晶表示装置の特徴の1つは、第1コンタクトホール41において、側面41sの一部が、第1引き出し電極31で覆われていない点にある。
【0073】
第1コンタクトホール41は本実施形態では、y方向に伸びた長円形状または楕円形状を有している。また、遮光層11は、ゲートバスラインGLよりもy方向に大きい幅を有しており、第1コンタクトホール41側に広がっている。第2コンタクトホール42の全体は、平面視において遮光層11と重なっている。
図12に示す形態では、遮光層11は、y方向の幅はx方向の任意の位置で同じであるが、例えば平面視において、第1引き出し電極31と重ならない部分の幅はゲートバスラインGLと同程度であってもよい。
【0074】
第1引き出し電極31は、第1絶縁体21上および第1コンタクトホール41内の少なくとも一部に位置しており、第1コンタクトホール41内において、酸化物半導体層30と接続されている。第1引き出し電極31は、第1コンタクトホール41の側面41sの一部のみを覆っており、側面41sの残りの部分を覆っていない。より具体的には、第1コンタクトホール41の側面41sのうち、平面視において遮光層11と重なる部分に第1引き出し電極31は位置しており、側面41sのうち遮光層11と重ならない部分には、第1引き出し電極31は位置していない。
【0075】
第2引き出し電極32は、第2絶縁体22上および第2コンタクトホール42内の少なくとも一部に位置しており、第2コンタクトホール42内において、第1引き出し電極31と接続されている。また、第2引き出し電極32は、第1コンタクトホール41側の第2絶縁体22上に位置している。画素電極PEの一部が第2絶縁体22上の第2引き出し電極32と重なっている。このため、本実施形態では、第1コンタクトホールが位置する画素上に画素電極PEが配置されている。また、TFT101のソースは、隣接する画素に位置している。
【0076】
図12および
図13に示す形態では、第2引き出し電極32は、第2コンタクトホール42の側面42sのうち、隣接する画素側に位置する領域を覆っていない。しかし、第2コンタクトホール42の側面42s全体が第2引き出し電極32で覆われていてもよい。
【0077】
本実施形態のアクティブマトリクス基板202および液晶表示装置によれば、第1コンタクトホール41の側面41sの一部は、第1引き出し電極31で覆われていない。このため、第1実施形態における第2コンタクトホール42と同様、黒表示の際の光漏れを抑制することができる。また、第1コンタクトホール41の側面41sのうち、第1引き出し電極31で覆われている領域は、平面視において遮光層11と重なっており、遮光層11によって基板10から入射する光は遮光層11で遮られる。したがって、第1コンタクトホール41全体において、黒表示の際の光漏れを抑制することができる。また、第2コンタクトホール42全体は平面視において遮光層11と重なっており、遮光層11によって基板10から入射する光は遮光層11で遮られる。したがって、第2コンタクトホール42全体において、黒表示の際の光漏れを抑制することができる。
【0078】
また、第1コンタクトホール41がy方向に伸びた長円形状または楕円形状を有していることによって側面41sのうち、黒表示時の光漏れとなり得るφ=45°、135°、225°、315°の位置となる領域を大きく増大させることなく、φ=90°、270°の位置となる領域を増大させることができる。このため、側面41sにおいて、光漏れを抑制するための、第1引き出し電極31を設けない領域が大きくなるのを抑制し、第1引き出し電極31の幅が狭くなり抵抗が増大するのを抑制することができる。また、第1実施形態で説明したように、φ=90°、270°の位置となる領域では、光漏れが抑制されるため、側面41sのうちこれらの領域は遮光層11で覆わなくてもよい。その結果、遮光層11で覆うべき領域が広くなるのを抑制し、遮光層11の面積が大きくなり開口率が大きく低下するのを抑制することができる。
【0079】
[第3の実施形態]
図14は、本実施形態のアクティブマトリクス基板203の断面構造を示す。本実施形態のアクティブマトリクス基板203は、第2コンタクトホール42の側面42s全体が第2引き出し電極32で覆われており、第2絶縁体22および第3絶縁体23の屈折率と、第2コンタクトホール42のテーパー角度が所定の関係を満たしている点で、第1実施形態のアクティブマトリクス基板203と異なる。また、画素電極PEはゲートバスラインGLに対して第1コンタクトホール41側で第2引き出し電極32と重なっている。
【0080】
図15に示すように、側面42sに垂直な直線に対して第2絶縁体22から第2引き出し電極32に入射する光の入射角度をθ
2とし、第2絶縁体22から第2引き出し電極32への出射角度をθ
dとし、第2引き出し電極32から第3絶縁体23への出射角度をθ
3とする。また、第2絶縁体22、第2引き出し電極32および第3絶縁体23の屈折率を、それぞれ、n
2、n
dおよびn
3とする。スネルの法則から、
n
2×sinθ
2=n
4×sinθ
d=n
3×sinθ
3
が成り立つ。
【0081】
第2絶縁体22と第3絶縁体23とに着目すると、θ2が臨界角であるとき、光は、第3絶縁体23には入射せず、第2引き出し電極32と第3絶縁体23との界面を進む(θ3=90°)。つまり、基板10側から入射した光が、第2コンタクトホール42の側面42sにおいて、全反射する条件は下記不等式(1)で示される。
【0082】
n2×sinθ2>n3 (1)
不等式(1)の関係を満たすことによって、側面42sに第2引き出し電極32が位置していても、第2コンタクトホール42における光の透過が抑制される。
【0083】
第2絶縁体22および第3絶縁体23の屈折率は、それぞれを構成する材料、例えば透明樹脂材料を選択することによって、調整することができる。第2コンタクトホール42の側面42sのテーパー角度は、第2コンタクトホール42を形成する際のエッチング条件を適切に設定することにより制御できる。具体的には、第2コンタクトホール42が形成される第2絶縁体22をエッチングする際の深さ方向(厚さ方向)のエッチング速度と横方向のエッチング速度との比(アスペクト比)を制御することによって、テーパー角度θ2を制御できる。より具体的には、第2絶縁体22の材料、および、エッチングに用いるエッチングガス(COF2、CF4、CHF3、H2、O2、Arなど)の種類および組み合わせ、ガスの混合比や流量比、エッチング時の圧力、放電パワーなどを調整することによって、テーパー角度θ2を制御できる。
【0084】
本実施形態によれば、第2コンタクトホール42のテーパー角度と、第2絶縁体22および第3絶縁体23の屈折率が、不等式(1)の関係を満たすことによって、黒表示の際の光漏れを抑制することができる。
【0085】
[第4の実施形態]
図16は、本実施形態のアクティブマトリクス基板204の断面構造を示す。本実施形態のアクティブマトリクス基板204は、第1コンタクトホール41の側面41s全体が第1引き出し電極31で覆われており、第1絶縁体21および第3絶縁体23の屈折率と、第2コンタクトホール42のテーパー角度が所定の関係を満たしている点で、第3実施形態のアクティブマトリクス基板203と異なる。
【0086】
第1絶縁体21に含まれるゲート絶縁層21A、第1無機絶縁層21Bおよび第2無機絶縁層21Cが、例えば、同じ材料によって構成されていることにより、すべて同じ屈折率n1を有しているとし、第1コンタクトホール41のテーパー角度をθ1とする。この場合、第3実施形態で説明したように、第2絶縁体22の屈折率n2との間において下記不等式(2)を満たせば、基板10側から入射した光が、第1コンタクトホール41の側面41sにおいて、全反射する。
【0087】
n1×sinθ1>n2 (2)
あるいは、ゲート絶縁層21A、第1無機絶縁層21Bおよび第2無機絶縁層21Cそれぞれ、n1A、n1B、n1Cの異なる屈折率を有し、それぞれが、
n1A×sinθ1>n2 (2A)
n1B×sinθ1>n2 (2B)
n1C×sinθ1>n2 (2C)
の関係を満たしていてもよい。
これら(2)または(2A)~(2C)の関係を満たしていることによって、黒表示の際の光漏れを抑制することができる。
【0088】
また、(2A)~(2C)のうち、少なくとも1つの関係を満たしていれば、その条件を満たす屈折率を有する層において全反射が抑制される。このため、第1コンタクトホール41の側面41sの少なくとも一部の領域で、黒表示の際の光漏れを抑制することができる。(2A)~(2C)の条件を満たす層の合計の厚さは、第1絶縁体21全体の厚さの1/2以上であることが好ましい。これによって、第1コンタクトホール41の側面41sのうち1/2以上の領域において、黒表示の際の光漏れを抑制することができる。
【0089】
[第5の実施形態]
図17は、本実施形態のアクティブマトリクス基板205の画素PXの主要な構成要素を示す平面図である。
【0090】
本実施形態のアクティブマトリクス基板205は、第2コンタクトホール42が平面視において、溝形状を有しており、側面42sを第2引き出し電極32が覆っている点で、第1の実施形態のアクティブマトリクス基板201と異なる。
【0091】
具体的には、本実施形態の第2コンタクトホール42は、x方向と平行に伸び、隣接する画素の第2コンタクトホール42と連続している溝形状を有している。第2引き出し電極32は、平面視におけるx方向に沿った幅全体で、溝形状の第2コンタクトホール42の側面42sおよび底部42bを覆っている。第2引き出し電極32は、平面視において隣接する画素の第2引き出し電極32とは離隔しているため、x方向に伸びる溝形状の第2コンタクトホール42の側面42sおよび底部42bには、第2引き出し電極32が設けられていない領域がある。
【0092】
溝形状の第2コンタクトホール42の側面42sの側面はx方向と平行である、このため、側面42sは、
図8を参照して説明したφ=0°および180°に入射境界面PLが位置している場合に相当し、側面42sを透過した光の偏光軸は回転しない。したがって、本実施形態のアクティブマトリクス基板205によれば、黒表示の際の光漏れを抑制することができる。
【0093】
[第6の実施形態]
図18は、本実施形態のアクティブマトリクス基板206の断面構造を示す。本実施形態のアクティブマトリクス基板206は、第1引き出し電極31および第2引き出し電極32の少なくとも一方が、第2コンタクトホールの側面において、所定の厚さを有している点で第3実施形態のアクティブマトリクス基板203と異なる。
【0094】
アクティブマトリクス基板206において基板10側から第2コンタクトホール42の側面42sに入射した光は、第2絶縁体22と第2引き出し電極32との界面および第2引き出し電極32と第3絶縁体23との界面で屈折および反射し得る。第2コンタクトホール42の側面42sに位置する第2引き出し電極32の厚さdが、透過する光の波長λとの間で所定の条件を満たす場合、具体的には位相が半波長ずれる場合、第2引き出し電極32を透過し、第3絶縁体23へ向かう光と、第2引き出し電極32と第3絶縁体23との界面で反射し第2絶縁体22側へ戻る光とが、互いに弱めあうことによって、第3絶縁体23側へ透過する光を減少させることができる。この条件は、下記式(3)、(4)で示される。
【0095】
d=λ/(2×n
d×cosθ
d) (3)
θ
d=sin
-1(n
2×sinθ
2/n
d) (4)
ここで、各記号は
図15に示す通りである。具体的には、n
2は第2絶縁体22の屈折率であり、θ
2は、第2絶縁体から第2引き出し電極32への入射角度である。θ
2は第2コンタクトホール42のテーパー角度でもある。また、n
dは、第2引き出し電極32の屈折率であり、θ
dは、第2絶縁体から第2引き出し電極32への出射角度である。
【0096】
図19は、n
2=n
3=1.5、n
d=2.0、θ
2=70°であり波長が550nmの緑色光を用いた場合において、第2引き出し電極32の厚さdと、P波およびS波の透過率との関係、および、透過した光の偏光方位回転角度との関係を示している。
図19に示すように、第2引き出し電極32の厚さdが194nm程度であるとき、偏光方位回転角度がほぼゼロになり、透過光の偏光方位はほとんど回転しないことが分かる。式(3)および式(4)にλ=550nmを代入した場合のdは、194nmである。
【0097】
図20は、波長550nmの青色光および波長650nmの赤色光を用いた場合の第2引き出し電極32の厚さdと、透過した光の偏光方位回転角度との関係を示している。
図20には緑色光の結果も示している。波長が異なることによって、緑光に対して偏光方位回転角度がほぼゼロとなる厚さdと、青色光および赤色光に対して偏光方位回転角度がほぼゼロとなる厚さdとは異なる。しかし緑色光に対して偏光方位回転角度がほぼゼロとなる厚さ195nm付近において、青色光および赤色光の偏光方位回転角度も比較的小さく、8°程度である。
【0098】
3原色のうち、緑色の視感度が一番高いことから、緑色光に対して、偏光方位回転角度が小さくなる厚さdを選択すれば、青色光および赤色光の偏光方位回転角度は同程度に小さくならなくても、光漏れ抑制の効果が十分に認識されると考えられる。例えば、
図19および
図20に示すように、第2引き出し電極32の厚さdが、175nm以上、215nm以下程度の範囲であれば、緑色光の偏光方位回転角度は4°程度以下であり、この時、青色光および赤色光の偏光方位回転角度は12°程度以下である。より好ましくは、第2引き出し電極32の厚さdは、180nm以上210nm以下である。
【0099】
また、多くの樹脂材料および無機絶縁体の屈折率は1.5程度である。一方ITOなどの透明導電体の屈折率は2.0程度である。したがって、本実施形態によれば、第2引き出し電極32の厚さdを175nm以上、215nm以下程度の範囲にすることによって、黒表示時の光漏れを抑制することができることが分かる。
【0100】
ここまで第2コンタクトホール42の第2引き出し電極32の厚さについて説明したが、第1コンタクトホール41の第1引き出し電極31の厚さも、上記範囲に設定することができる。具体的には、第1引き出し電極31の厚さは、175nm以上、215nm以下であってもよいし、180nm以上210nm以下であってもよい。また、第1引き出し電極31および第2引き出し電極32の両方の厚さを175nm以上、215nm以下にしてもよいし、180nm以上210nm以下にしてもよい。これにより、第2コンタクトホール42と同様、第1コンタクトホール41においても黒表示時の光漏れを抑制することができる。
【0101】
[他の形態]
上記実施形態は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせてもよい。この場合、遮光層11は、ゲートバスラインGLと第2コンタクトホール42の一部とを覆う部分と、第1コンタクトホール41を覆う部分とに分けてもよい。また、第3実施形態と第4実施形態を組み合わせてもよいし、第4実施形態と第5実施形態を組み合わせてもよい。
【0102】
また、上記実施形態で説明したアクティブマトリクス基板の構造は、一例であって、本開示のアクティブマトリクス基板の構造はこれらの実施形態で説明した構造に限られない。具体的には、画素TFTの位置や構造は、ここに開示した実施形態に限られないし、絶縁体などの厚さ、材料などの構成もここに開示した実施形態には限られない。
【0103】
本開示のアクティブマトリクス基板および液晶表示装置は、以下のようにも説明することができる。
【0104】
第1の構成に係るアクティブマトリクス基板は、表示領域を有する基板と、表示領域において、第1方向に延びる複数のソースバスラインと、第1方向と交差する第2方向に延びる複数のゲートバスラインと、基板の表示領域上に位置する複数の画素であって、各画素が複数のソースバスラインの1つおよび複数のゲートバスラインの1つと電気的に接続された、複数の画素と、を備える。各画素は、基板上に位置し、平面視において、複数のゲートバスラインの1つと部分的に重なる酸化物半導体層と、酸化物半導体層を覆う第1絶縁体と、第1絶縁体に位置しており、酸化物半導体層の一部を露出させる第1コンタクトホールと、第1絶縁体上および第1コンタクトホール内の少なくとも一部に位置し、酸化物半導体層と接続された第1引き出し電極と、第1引き出し電極を覆う第2絶縁体と、第2絶縁体に位置しており、第1引き出し電極の一部を露出させる第2コンタクトホールと、第2絶縁体上および第2コンタクトホール内の少なくとも一部に位置し、第1引き出し電極と接続された第2引き出し電極と、第2絶縁体上に位置し、第2引き出し電極と接続された画素電極とを備え、第1引き出し電極および第2引き出し電極は透光性を有し、第1コンタクトホールおよび第2コンタクトホールの少なくとも一方の側面の一部は、第1引き出し電極および第2引き出し電極で覆われていない。
【0105】
第1の構成のアクティブマトリクス基板によれば、第1コンタクトホールおよび第2コンタクトホールの少なくとも一方の側面の一部が第1引き出し電極および第2引き出し電極で覆われていないことにより、コンタクトホールを透過する光の偏光方位の回転が抑制され、黒表示時の光漏れが抑制される。
【0106】
第2の構成は、第1の構成において、各画素が、基板上に位置し、平面視において、複数のゲートバスラインの1つと重なる遮光層をさらに備え、第2引き出し電極は、第2コンタクトホールの側面の一部のみを覆っており、平面視において、第2引き出し電極のうち側面を覆う部分は、複数のゲートバスラインの1つと重なっており、かつ、第2コンタクトホールの側面のうち、第2引き出し電極で覆われていない部分は、遮光層と重なっていなくてもよい。これにより、第2コンタクトホールにおいて、黒表示時の光漏れが抑制される。
【0107】
第3の構成は、第1の構成において、各画素が、基板上に位置し、平面視において、少なくとも複数のゲートバスラインの1つと重なる遮光層をさらに備え、第1引き出し電極は、第1コンタクトホールの側面の一部のみを覆っており、平面視において、遮光層は、第1引き出し電極のうち側面を覆う部分と重なっており、かつ、第1コンタクトホールの側面のうち、第1引き出し電極で覆われていない部分は、遮光層と重なっていなくてもよい。これにより、第1コンタクトホールにおいて、黒表示時の光漏れが抑制される。
【0108】
第4の構成に係るアクティブマトリクス基板は、表示領域を有する基板と、表示領域において、第1方向に延びる複数のソースバスラインと、第1方向と交差する第2方向に延びる複数のゲートバスラインと、基板の表示領域上に位置する複数の画素であって、各画素が複数のソースバスラインの1つおよび複数のゲートバスラインの1つと電気的に接続された、複数の画素と、を備える。各画素は、基板上に位置し、平面視において、複数のゲートバスラインの1つと部分的に重なる酸化物半導体層と、酸化物半導体層を覆う第1絶縁体と、第1絶縁体に位置しており、酸化物半導体層の一部を露出させる第1コンタクトホールと、第1絶縁体上および第1コンタクトホール内の少なくとも一部に位置し、酸化物半導体層と接続された第1引き出し電極と、第1引き出し電極を覆い、第1コンタクトホール内および第1絶縁体上に位置する第2絶縁体と、第2絶縁体に位置しており、第1引き出し電極の一部を露出させる第2コンタクトホールと、第2絶縁体上および第2コンタクトホール内の少なくとも一部に位置し、第1引き出し電極と接続された第2引き出し電極と、第2コンタクトホール内位置する第3絶縁体と、第2絶縁体上に位置し、第2引き出し電極と接続された画素電極とを備え、第1引き出し電極および第2引き出し電極は透光性を有し、第1絶縁体、第2絶縁体および第3絶縁体の屈折率は、それぞれn1、n2およびn3とし、第1コンタクトホールの側面および第2コンタクトホールの側面と基板の主面とのなす角度をそれぞれθ1およびθ2としたとき、下記不等式(1)および(2)の少なくとも一方を満たしている
n1×sinθ1>n2 (1)
n2×sinθ2>n3 (2)
第1の構成のアクティブマトリクス基板によれば、第1絶縁体、第2絶縁体および第3絶縁体の屈折率が上記条件を満たすことにより、コンタクトホールを透過する光の偏光方位の回転が抑制され、黒表示時の光漏れが抑制される。
【0109】
第5の構成は、第4の構成において、不等式(1)の関係を満たしており、第1絶縁体が、第1無機絶縁層および第2無機絶縁層を含み、第1無機絶縁層の屈折率は、第2無機絶縁層の屈折率よりも大きく、第1無機絶縁層はn1の屈折率を有しており、第1無機絶縁層の厚さは第2無機絶縁層の厚さよりも大きくてもよい。これにより、第1コンタクトホールの第1無機絶縁層において、コンタクトホールを透過する光の偏光方位の回転が抑制され、黒表示時の光漏れが抑制される。
【0110】
第6の構成に係るアクティブマトリクス基板は、表示領域を有する基板と、表示領域において、第1方向に延びる複数のソースバスラインと、第1方向と直交する第2方向に延びる複数のゲートバスラインと、基板の表示領域上に位置する複数の画素であって、各画素が複数のソースバスラインの1つおよび複数のゲートバスラインの1つと電気的に接続された、複数の画素と、を備える。各画素は、基板上に位置し、平面視において、複数のゲートバスラインの1つと部分的に重なる酸化物半導体層と、酸化物半導体層を覆う第1絶縁体と、第1絶縁体に位置しており、酸化物半導体層の一部を露出させる第1コンタクトホールと、第1絶縁体上および第1コンタクトホール内の少なくとも一部に位置し、酸化物半導体層と接続された第1引き出し電極と、第1引き出し電極を覆う第2絶縁体と、第2絶縁体に位置しており、第1引き出し電極の一部を露出させる第2コンタクトホールと、第2絶縁体上および第2コンタクトホール内の少なくとも一部に位置し、第1引き出し電極と接続された第2引き出し電極と、第2絶縁体上に位置し、第2引き出し電極と接続された画素電極とを備え、第1引き出し電極および第2引き出し電極は透光性を有し、第2コンタクトホールは、第2方向と平行に伸び、隣接する画素の第2コンタクトホールと連続している溝形状を有する。
【0111】
第6の構成のアクティブマトリクス基板によれば、第2コンタクトホールが上記形状を有することによって、黒表示時の光漏れが抑制される。
【0112】
第7の構成に係るアクティブマトリクス基板は、表示領域を有する基板と、表示領域において、第1方向に延びる複数のソースバスラインと、第1方向と直交する第2方向に延びる複数のゲートバスラインと、基板の表示領域上に位置する複数の画素であって、各画素が複数のソースバスラインの1つおよび複数のゲートバスラインの1つと電気的に接続された、複数の画素と、を備える。各画素は、基板上に位置し、平面視において、複数のゲートバスラインの1つと部分的に重なる酸化物半導体層と、酸化物半導体層を覆う第1絶縁体と、第1絶縁体に位置しており、酸化物半導体層の一部を露出させる第1コンタクトホールと、第1絶縁体上および第1コンタクトホール内の少なくとも一部に位置し、酸化物半導体層と接続された第1引き出し電極と、第1引き出し電極を覆う第2絶縁体と、第2絶縁体に位置しており、第1引き出し電極の一部を露出させる第2コンタクトホールと、第2絶縁体上および第2コンタクトホール内の少なくとも一部に位置し、第1引き出し電極と接続された第2引き出し電極と、第2絶縁体上に位置し、第2引き出し電極と接続された画素電極とを備え、第1引き出し電極および第2引き出し電極は透光性を有し、第1引き出し電極の第1コンタクトホールの側面における厚さd1、および、第2引き出し電極の第2コンタクトホールの側面における厚さd2の少なくとも一方は、175nm以上、215nm以下である。
【0113】
第7の構成のアクティブマトリクス基板によれば、第1引き出し電極および第2引き出し電極の少なくとも一方が上記厚さを有することによって、黒表示時の光漏れが抑制される。
【0114】
第8の構成は、第1~5および7のいずれかの構成において、第2コンタクトホールの底部の形状が円形であってもよい。
【0115】
第9の構成は、第1~9のいずれかの構成において、複数の画素を駆動する駆動回路をさらに備え、駆動回路は、基板の表示領域の周囲に位置する非表示領域に配置されており、駆動回路は、多結晶シリコン半導体層をそれぞれ含む複数のTFTを含んでいてもよい。
【0116】
第10の構成に係る液晶表示装置は、第1~9の構成のいずれか1つのアクティブマトリクス基板と、アクティブマトリクス基板と対向して位置する対向基板と、アクティブマトリクス基板と対向基板との間に位置する液晶層と、少なくとも液晶層を介して互いに対向する一対の偏光板とを備え、一対の偏光板は、クロスニコルに配置されており、一対の偏光板の偏光軸は第1方向と平行または垂直である。第10の構成に係る液晶表示装置によれば、アクティブマトリクス基板が上記構成を備えることによって、黒表示時の光漏れが抑制され、高いコントラストの表示を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本開示の実施形態によるアクティブマトリクス基板は、ヘッドマウントディスプレイ、スマートフォン等に使用される液晶表示装置に好適に用いられる。また、液晶表示装置に限定されず、有機EL表示装置などの種々の表示装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0118】
10…基板、11…遮光層、21…第1絶縁体、21A…ゲート絶縁層、21B…第1無機絶縁層、21C…第2無機絶縁層、22…第2絶縁体、23…第3絶縁体、24…誘電体、25…下地層、27…ゲート絶縁層、30…酸化物半導体層、30C…チャネル領域
30D…ドレイン領域、30S…ソース領域、31…第1引き出し電極、32…第2引き出し電極、33…コモン電極、41…第1コンタクトホール、41a,42a…開口
41b,42b…底部、41s,42s…側面、42…第2コンタクトホール、201~206…アクティブマトリクス基板、210…対向基板、220…液晶層、230…偏光板、240…偏光板、250…スペーサ、301…液晶表示装置