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特開2024-46383交換式テント内幕、及び当該内幕を有する陰陽圧テント
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  • 特開-交換式テント内幕、及び当該内幕を有する陰陽圧テント 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046383
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】交換式テント内幕、及び当該内幕を有する陰陽圧テント
(51)【国際特許分類】
   E04H 15/14 20060101AFI20240327BHJP
   E04H 15/54 20060101ALI20240327BHJP
   A61G 10/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
E04H15/14
E04H15/54
A61G10/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151734
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 詩織
(72)【発明者】
【氏名】石黒 正
【テーマコード(参考)】
2E141
4C341
【Fターム(参考)】
2E141BB01
2E141CC05
2E141EE03
2E141EE11
2E141GG08
4C341KK05
4C341KL04
(57)【要約】
【課題】 本発明は、容易に交換できる交換式テント内幕及び当該内幕を有する陰陽圧テントを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、骨格と天幕と床敷きシートを含むテント部材を備える陰陽圧テントの、最室内側に設けられる交換式テント内幕1であって、前記テント部材と着脱自在に固定可能な固定手段7を有することを特徴とする。また、当該交換式テント内幕1を有する陰陽圧テント10であることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨格と天幕と床敷きシートを含むテント部材を備える陰陽圧テントの、最室内側に設けられる交換式テント内幕であって、
前記テント部材と着脱自在に固定可能な固定手段を有することを特徴とする交換式テント内幕。
【請求項2】
前記交換式テント内幕は、通気可能であることを特徴とする請求項1記載の交換式テント内幕。
【請求項3】
前記交換式テント内幕は、複数のシートを繋ぎ合わせた部分である繋ぎ部を備え、
前記繋ぎ部は、隣接するシート同士が重なり接着された接着部と、接着されていない非接着部とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の交換式テント内幕。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の交換式テント内幕を有する陰陽圧テント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容易に交換可能なテント内幕に関し、テントの居住空間であるテント内部を陰圧又は陽圧にするためのテント(以下、「陰陽圧テント」と称する)に用いるのに適したものである。
【背景技術】
【0002】
防災・医療用テントは、地震、洪水などの災害や事故現場といった非常時等に急遽必要な空間を設営するため、簡易な構造で展張が容易であること、軽量で持ち運びが容易であることなどが必要とされる。その中でも、感染症対策用として、外部から感染物質が入り込まないよう、又は外部に感染物質を拡散しないよう、空間内を陽圧又は陰圧保つことができる陰陽圧テントの需要が高まっている。
例えば、特許文献1には、エアチューブからなる骨格と、当該骨格の外側と内側の両方に設けられる天幕と、床敷きシートとからなるテントであって、内部空間を陰圧又は陽圧にできることが開示されている。特許文献1に記載のテントは、外側天幕及び内側天幕が床敷きシートと接合することで、内部空間を気密にして圧力を維持できる構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-2645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、感染症対策が必要な現場では、細菌やウイルスなど目に見えない汚染物質と接触しないよう、人が身に着けるガウン、手袋などを頻繁に新しいものと交換し、使用後は廃棄することにより、感染リスクを抑えている。感染症対策用のテントにおいても人が触れる可能性があり、使用した後の二次感染などを防止する観点から、同様に汚染物質の付着したものをすべて廃棄する必要がある。
しかしながら、防災・医療用テントの天幕が、汚れや破損した場合には交換することができる構造であったとしても、一回使用する度に天幕を新しいものに交換していては、コストが高くなってしまう。特に、陰陽圧テントでは、天幕を骨格や床敷きシートなどに気密性良く固定して内部空間の圧力を維持する必要があるため、例えば、床敷きシートの全周縁に天幕を接合するための線ファスナーを設けるなどといった気密手段により構造が複雑となってしまう。そうすると、当該天幕を容易かつ頻繁に交換することがより難しいものであった。
【0005】
本発明は、容易に交換できる交換式テント内幕及び当該内幕を有する陰陽圧テントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、骨格と天幕と床敷きシートを含むテント部材を備える陰陽圧テントの、最室内側に設けられる交換式テント内幕であって、前記テント部材と着脱自在に固定可能な固定手段を有することを特徴とする。
【0007】
また、前記交換式テント内幕は、通気可能であるものが好ましい。
【0008】
さらに、前記交換式テント内幕は、複数のシートを繋ぎ合わせた部分である繋ぎ部を備え、前記繋ぎ部は、隣接するシート同士が重なり接着された接着部と、接着されていない非接着部とを有することが好ましい。
【0009】
本発明は、このような交換式テント内幕を有する陰陽圧テントである。
【発明の効果】
【0010】
本発明であれば、容易に交換できる交換式テント内幕及び当該内幕を有する陰陽圧テントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の交換式テント内幕を説明する図であって、(a)は分離タイプ、(b)は連結タイプである。
図2】本発明の交換式テント内幕における右側面シート21を説明する図であって、(a)は正面図(室内側)、(b)は(a)のA-A切断部を説明する図、(c)は背面図(室外側)である。
図3】別の実施態様において、本発明の交換式テント内幕における右側面シート21´を説明する図であって、(a)は正面図(室内側)、(b)は(a)のA´-A´切断部を説明する図、(c)は背面図(室外側)である。
図4】別の実施態様において、本発明の交換式テント内幕における右側面シート21´´を説明する図である。
図5】本発明の交換式テント内幕における前面シート3を説明する図であって、(a)は室内側、(b)は室外側である。
図6】本発明の陰陽圧テント10を説明する図である。
図7】本発明の陰陽圧テント10の断面を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施態様について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施態様の交換式テント内幕、図2~4は本発明の交換式テント内幕における右側面シート、図5は本発明の交換式テント内幕における前面シートを説明する図であり、図6は本発明の交換式テント内幕を用いた陰陽圧テントを説明する図であり、図7図6の陰陽圧テントの長さ方向の略中央部を切断した面を説明する図である。なお、本発明は当該実施態様に限定されるものではない。
【0013】
本発明は、骨格と天幕と床敷きシートを含むテント部材を備える陰陽圧テントの、最室内側に設けられる交換式テント内幕である。図1には、本発明の実施態様として、テント部材内側の側面領域と天井領域を被覆する側面シート2(右側面シート21、左側面シート22)、テント部材内側の前後面を被覆する前面シート3及び後面シート4、テント部材内側の床面を被覆する床面シート5を有する交換式テント内幕1を示す。各シートそれぞれには、テント部材と着脱自在に固定可能な固定手段7を備えている。ここで、天井領域とは、例えば横気柱12が設けられる位置に相当する箇所より上方を指し、縦気柱11のアーチ形状に沿った曲面を備えた領域とし、側面領域とは、天井領域の下方であって、床面より上方を指し、曲面を有さない平面の領域とする。
なお、本発明の交換式テント内幕1は、感染症対策用の陰陽圧テントに使用する場合において、テント部材内側の側面領域、前面、後面、天井領域、床面といった全面を覆う態様であることが望ましいが、使用状況によって汚染箇所が特定される場合には、少なくとも当該特定箇所を覆うことができる態様であればよい。すなわち、本発明はテント部材内側の全面を覆うことに限定されるものではなく、部分的に使用される態様をも含む。
【0014】
本発明の側面シート2(21,22)、前面シート3、後面シート4及び床面シート5には、テント部材と着脱自在に固定可能な固定手段7を備えている。
固定手段7を設ける位置としては、テントの形状にもよるが、各シートが交換しやすく、内部空間を陰圧又は陽圧にしても各シートが剥がれ難いことを考慮して決めればよい。
【0015】
例えば、図6に示す陰陽圧テント10に交換式テント内幕1を固定する場合を説明する。陰陽圧テント10は、骨格となるアーチ状の縦気柱11と横気柱12、当該気柱11、12を覆う内側天幕13、外側天幕14(図示省略)及び床敷きシート15からなり、アーチ状の縦気柱11に沿って内側天幕13及び外側天幕14が取り付けられている。そのため、テント部材内側の天井領域はアーチ形状に沿った曲面を備えた領域となっている。
このような陰陽圧テント10に固定する交換式テント内幕1は、図1に示すように、側面シート2(21、22)、前面シート3及び後面シート4の室外側であって、テント部材の横気柱12が設けられる位置に相当する箇所より上方を天井領域T、その下方を側面領域Sとしたとき、天井領域Tと側面領域Sの境界付近に固定手段7i、天井領域Tに固定手段7j及び7kが設けられている。
【0016】
より具体的には、図1に示すように、側面シート2(21、22)の側面領域Sであって、天井領域Tとの境界付近に固定手段7i、天井領域Tであって、テントの天頂付近に相当する箇所に固定手段7kと、固定手段7iと7kの間に固定手段7jが設けられている。このように、固定手段7i~kを設けることで、アーチ状の天井領域に沿うように側面シート2(21、22)を内側天幕13に固定することができる。その上、固定手段7iが側面領域Sであって、天井領域Tとの境界付近に設けられているため、テント内部の空間をより広く確保することができる。また、図1に示すように、前面シート3、後面シート4の天井領域Tには、シート上方の周縁部に固定手段7lが設けられている。
このように、各シートにおいて、少なくとも天井領域Tに固定手段7を設けることで、各シートが天井から垂れることがなく、テント内部の空間を確保しやすい。また、天井領域Tと、天井領域Tとの境界付近の側面領域Sの両方に固定手段7を設けることで、テント内部の空間をより広く確保することができるため、好ましい。
【0017】
内側天幕13と外側天幕14の二重膜を有する陰陽圧テント10においては、内側天幕13に交換式テント内幕の固定手段7を固定すればよい。また、天幕が単膜であるテントに対しては、当該天幕の他、必要に応じて縦気柱11、横気柱12に固定するようにしてもよい。
【0018】
床面シート5の固定手段7を設ける位置としては、テント部材の床敷きシート15上に固定できればよい。例えば、図1(a)では、床面シート5の裏面(床敷きシート15と接する面)の全面に固定手段7が設けられている。
【0019】
本発明の交換式テント内幕1では、後述するように、内部空間の気密性を考慮する必要がないので、各シート(2、3、4、5)に設けられる固定手段7としては、テント部材から着脱自在に固定できるものであればよい。例えば、粘着剤、両面粘着テープ、面ファスナー、スナップボタン、フック、磁石などが使用できる。床面シート5の場合は、シート自体が自己粘着性を有するものなどシート自体が固定手段7を兼ねるものであってもよい。
また、固定手段7は、テントの長さ方向に長尺のものを連続して設けてもいいし、同一線上に間隔を空けて部分的に設けてもよい。床面シート5の場合もまた、全面でもよく、部分的に設けてもよい。
【0020】
本発明の交換式テント内幕1は、通気可能なものが好ましい。通気可能な交換式テント内幕1は、たとえば図7の矢印で示すように、テント内部が気密にされ陰圧になった状態において、テント部材と交換式テント内幕1(側面シート2)との間の空気を通過させることができる。そのため、テントの内部空間が小さくなることを防ぐとともに、交換式テント内幕1が引っ張られて固定が外れてしまうことがなくなる。
詳細には、テント内部が陰圧状態、すなわちテントの排気口からテント内部の空気を強制的に排気すると、テントの内部空間が縮む力が働く。そのため、陰陽圧テントの骨格と天幕とは、その縮む力に耐え得るよう強固に固定され、陰圧時にもテント部材の形状を保持できるような構造としている。本発明の交換式テント内幕1を当該テント部材に固定したとき、内部空間を陰圧状態にすれば、交換式テント内幕1は内部空間内に引っ張られることとなる。このとき、通気可能でない交換式テント内幕1では、その引っ張り力に抵抗できずテントの内部空間が縮み、内部空間を維持することが難しくなる虞がある。さらに、交換式テント内幕1が通気可能でない、その上簡易的な固定手段で固定したものだと、引っ張られる力に耐えられず固定が外れてしまう虞がある。交換式テント内幕1が通気可能であることで、テント部材と側面シート2との間の空気が通過でき、この引っ張り力を除くことが可能となるため、テントの内部空間が小さくなることを防ぐとともに、交換式テント内幕1が引っ張られて固定が外れてしまうことがなくなる。
【0021】
本発明の交換式テント内幕1は、通気可能である第一実施形態として、複数のシートを繋ぎ合わせた部分である繋ぎ部6を備え、前記繋ぎ部6は、隣接するシート同士が重なり接着された接着部61と、接着されていない非接着部62とを有することが好ましい。例えば、側面シート2には、図2に示すように、複数のシートを繋ぎ合わせた部分である繋ぎ部6を備えている。当該繋ぎ部6は、テントの高さ方向に沿って設けられており、隣接するシート同士が重なり接着された接着部61と、接着されていない非接着部62を有している。非接着部62を備えることで、交換式テント内幕1がテント部材と交換式テント内幕1との間が通気可能となる。
なお、本実施態様では、側面シート2がテント部材内側の側面領域と天井領域を被覆するものであって、テントの天頂から分かれて右側面21と左側面22をそれぞれ覆うシートからなり、図2に示す側面シートは、そのうちの右側面シート21のみを示している。図示しないが、左側面シート22も同様に繋ぎ部6を有している。
【0022】
本発明の右側面シート21は、例えば、図2(b)に示すように、3枚のシートX、Y、Zが繋ぎ合わされてなり、当該繋ぎ部6において、中央のシートYの室内側に、隣接するシートX、Zの端部を重ねて繋ぎ合わされている。また、別の実施態様として、図3(b)に示す右側面シート21´のように、中央のシートYの室内側に、隣接するシートXの端部を重ね、もう一方の隣接するシートZの端部は、シートYの室外側に重ねて繋ぎ合わされていてもよい。
このとき、繋ぎ部6の幅としては、150~500mmであることが好ましい。150mm未満だと、シート同士が重なる範囲が少なすぎるため、捲れやすくなり、また隙間が生じやすくそこから汚染物質がテント部材の方に移動してしまう虞がある。また、500mmを超えると、非接着部62でシート同士が貼り付きやすくなってしまい、後述する空気の通過を阻害してしまう虞がある。
なお、当該シート同士の貼り付きは、シート間の滑りをよくすることで改善でき、例えばシート表面に凹凸を設けることや、ポリウレタンフォームなどの間隙材を設けてもよい。ただし、繋ぎ部6の幅が500mmを超えると、このような対策を取ってもシート同士の貼り付きを改善することは難しい。
【0023】
本発明の接着部61としては、テント部材に固定する際の作業に支障のない程度にシート同士が繋がれていればよく、例えば、展張時の大きさが幅4000mm、長さ5000mm、高さ2800mmのテントにおいて、一枚の大きさが縦3300mm、横1830mmのシートを図2(a)に示すように3枚繋いで右側面シート21とする場合、接着部61として縦1600mm、横400mm程度の範囲が接着されていればよい。
また、接着部61は、図2(a)のように短冊状に設けられること以外にも、図4に示す右側面シート21´´のように間隔を空けて設けられてもよい。さらに、接着部61を設ける位置も、図2のように上端部であればテント部材に固定しやすいが、それ以外の位置でも構わない。
【0024】
本発明の接着部61を形成する方法としては、高周波ウェルダー溶着などの熱溶着加工、接着剤加工、縫製など公知の方法を用いればよい。
【0025】
本発明の交換式テント内幕1における前面シート3及び後面シート4は、設置するテントの形状に応じた形状とすればよく、図5には、アーチ状の縦気柱11に倣った形状の前面シート3を示す。
また、前面シート3及び/又は後面シート4には、テントの出入口に相当する箇所に出入口8が設けられている。当該出入口8は、単なる直線状のスリットでもよく、複数のシートを重ねるようにして設けられてもよい。なお、当該出入口8は、側面シート2の非接着部62と同様の作用を示すこととなる。
【0026】
本発明の交換式テント内幕1における床面シート5は、設置するテントの形状に応じた形状とすればよい。
【0027】
本発明の非接着部62を設けた交換式テント内幕1の各シートは、同種の素材を使用してもよく、又は部位によって異なる素材を用いてもよい。
シート素材としては、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、合成ゴム等の樹脂フィルム又はシート、不織布、織布などの繊維シート、及びこれら樹脂フィルム又はシートと繊維シートとを積層してなる複合シートなどの柔軟性を有するものが使用できる。
特に、塩化ビニル系樹脂や熱可塑性ポリウレタン系樹脂などのウェルダー溶着加工が可能な素材であれば加工しやすい。
【0028】
また、交換式テント内幕1が通気可能である第二実施態様として、シート素材は、通気性を有する織布、編布、不織布などの繊維シートを用いることが好ましい。織布、織布などの繊維シートであれば、軽量であると共に、通気可能であるため、繋ぎ部6の非接着部62を有さない場合でも、テント内部が陰圧状態で、テント部材と側面シート2との間の空気が通過でき、テントの内部空間が小さくなることを防ぐとともに、交換式テント内幕1(側面シート2)が引っ張られて固定が外れてしまうことがなくなる。
【0029】
また、交換式テント内幕1を織布、編布、不織布などの繊維シートで構成する場合は、通気性を有する、換言すればJIS L 1096 に準拠して測定された通気度が20~300cm3/(cm2・s)のものが好ましい。通気度が20cm3/(cm2・s)未満だと、汚染物質がテント部材の方に移動してしまう虞がある。また、300cm3/(cm2・s)を超えると、テント内部が陰圧状態時に、テント部材と側面シート2との間の空気が通過できず、テントの内部空間が小さくなる虞があると共に、側面シート2が引っ張られて固定が外れてしまう虞がある。
【0030】
本発明の第一、第二実施態様における各シートは、機能性を有することが好ましい。
例えば、抗菌性、抗ウイルス性、消臭性、防汚性、防炎性などを発揮する成分を担持させたものが挙げられる。
担持方法としては、当該成分を樹脂に含有させてシート成形する方法や、当該成分を含有する処理液を塗布又は含浸するなど、公知の方法が使用できる。
【0031】
各シートは、テント部材への着脱のしやすさなどの取り扱い性から、重量が25~500g/mのものが好ましい。重量が25g/m未満だと、シートの強度が弱く、各シートをテント部材に着脱する際に破損しやすく、また皺が寄りやすいなど外観が劣る虞がある。また、500g/mを超えると、テントがその重さに耐えられず内部空間の維持が難しく、また、交換時の取り扱い性に劣ってしまう。
【0032】
本発明の実施態様として、図1(a)には、側面シート2(右側面シート21、左側面シート22)、前面シート3、後面シート4、床面シート5が、それぞれが分離した分割タイプの交換式テント内幕1を示したが、図1(b)のように、それぞれが連結された、又は一部分が連結された連結タイプなどでもよく、テントの大きさや形状、被覆したい箇所などによって分割箇所や連結箇所を適宜設定すればよい。特に、分割タイプの交換式テント内幕は、既設テント、すなわち、すでに所有しているテントに使用する場合にも適している。
【0033】
本発明の交換式テント内幕1は、図7に示すようにテント部材に固定して使用される。本発明の交換式テント内幕1は、テントの内部空間における最室内側に位置するため、汚染物質などで汚れた場合には、当該テント内幕1を新しいものに交換するだけで、テント部材、特に天幕は清潔に保たれ、そのまま使用することができる。すなわち、本発明の交換式テント内幕1を用いることで、これまで交換が難しかった天幕を交換する頻度を減らすことができる。さらに、同じテント部材を繰り返し使用することができるので、交換コストも抑えることができる。
また、陰陽圧テント自体が気密性を維持できる構造であるため、交換式テント内幕1には、内部空間の気密性を考慮する必要がなく、テント部材との固定のための複雑な気密手段を備えなくともよい。
さらに、分割タイプの交換式テント内幕であれば、汚れたシートのみを交換することもできる。
【0034】
本発明の交換式テント内幕1をテント部材に固定する方法について説明する。
まず、テント部材において、交換式テント内幕1の固定手段7が配置される位置を決める。このとき、必要に応じてテント部材にも固定手段を設けてもよい。
次に、通常の方法でテントを展張する。
テント展張後、右側面シート21、左側面シート22、前面及び後面シート3、4を所定位置に固定し、その後床面シート5を敷く。この場合、分割タイプの交換式テント内幕1を用いると、固定作業が容易である。
【0035】
その他の方法として、テントを展張する前に、テント部材に交換式テント内幕1が固定されていてもよい。例えば、前述したようにテントを展張した後、交換式テント内幕1を取り付けた状態でテントを畳むことで、再度テントを展張したときには、既に交換式テント内幕1が固定されたテントとなる。
【0036】
本発明の交換式テント内幕1は、防災・医療用テントなどの非常時等に急遽必要な空間を設営するためのテントに用いるのに適している。例えば、図6に示す陰陽圧テント10は、骨格となるアーチ状の縦気柱11と横気柱12、当該気柱11、12を覆う内側天幕13、外側天幕14及び床敷きシート15からなり、気柱にエアを注入するだけで簡単にテントを展張することができる。図6では、外側天幕14を省略している。このとき、床敷きシート15の全周縁に内側天幕13を接合するための気密手段16(線ファスナー)が設けられており、当該テントの内部空間の気密性が維持される構造となっている。
本発明の交換式テント内幕1は、通気性を有しているため、陰陽圧テント10に用いるのに最適である。
また、本発明の交換式テント内幕1は、非接着部62を備えているため、陰陽圧テント10に用いるのに最適である。
【0037】
本発明の第一実施態様において、側面シート2の非接着部62の効果を確認した。
陰陽圧テント(アキレス株式会社製、アキレスエアーテント「NP-45」)を用いて、テントの内外圧差を5Paになるよう、陰圧式空気清浄機(荏原実業株式会社製、「ACE-4000NP」)にてエア制御を行った。
厚さ0.1mmの塩化ビニル樹脂フィルム(アキレス株式会社製、商品名「フラーレノンマイグレF」、重量:132g/m)にて、当該陰陽圧テントの形状に倣った側面シート、前面シート、後面シートを準備した。なお、側面シートには、図2で示すように、両端を幅400mmで重ねられた繋ぎ部を有し、高周波ウェルダー溶着にて幅400mm、長さ1600mmの接着部を形成し、非接着部を有するものを使用した。また、床面シートには、厚さ2mmの発泡複層ビニル床シートを用いた。
各シートについて、図1、2、5に示すように、固定手段(面ファスナー)を配置した。
当該各シートをテント部材に固定したところ、陰圧にした状態でも、テントの内部空間が維持でき、側面シートが引っ張られて固定が外れてしまうことがなかった。
【0038】
本発明の第二実施態様において、通気性のある側面シートの効果を確認した。繋ぎ部6における非接着部62がなく、通気性を有する不織布(ポリエステルスパンボンド、通気度:201cm3/(cm2・s))からなる側面シートを用いたこと以外は、前記と同様にして各シートをテント部材に固定したところ、陰圧にした状態でも、テントの内部空間が維持でき、側面シートが引っ張られて固定が外れてしまうことがなかった。
【0039】
一方、交換式テント内幕1に非接着部62がなく、通気性がないフィルムからなる側面シートの実施形態の効果を確認した。
非接着部62がなく、通気性を有さないフィルムからなる側面シート、すなわち繋ぎ部全体を高周波ウェルダー溶着にて接着した側面シートを用いたこと以外は、第一の実施形態と同様にして各シートをテント部材に固定したところ、着脱自在に容易に交換できるものの、当該側面シートが内部空間に引っ張られてしまい、内部空間が縮み、次第に固定手段が外れてしまった。
【0040】
このように、本発明は、既存のテントであっても、固定手段によって着脱自在に容易に交換できる交換式テント内幕であり、陰陽圧テントに用いるのに適したものであった。
【符号の説明】
【0041】
1 交換式テント内幕
2 側面シート
21、21´、21´´ 右側面シート 22 左側面シート
3 前面シート
4 後面シート
5 床面シート
6 繋ぎ部 61 接着部 62 非接着部
7 固定手段
8 出入口
T 天井領域
S 側面領域
10 陰陽圧テント
11 縦気柱(骨格)
12 横気柱
13 内側天幕
14 外側天幕
15 床敷きシート
16 気密手段
17 空気清浄機

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7