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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004640
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】切粉回収システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20240110BHJP
   B23K 11/30 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B23Q11/00 M
B23K11/30 350
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104346
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】591260948
【氏名又は名称】株式会社キョクトー
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】草野 寛和
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011BB03
(57)【要約】
【課題】切粉回収能力を低下させることなく使用時における騒音を低減させて作業環境を良くすることができる切粉回収システムを提供する。
【解決手段】切粉回収システム1は、チップドレッサー10でスポット溶接用電極チップT1の先端を切削する際に発生する切粉M1を吸引ユニット2で吸引して回収する。吸引ユニット2は、回転駆動する電動モータ6と、電動モータ6により回転して吸引力を発生させる遠心羽根車5と、切粉M1を回収可能な切粉回収ケース9とを備え、遠心羽根車5により吸引するエアと共に移動する切粉M1を切粉回収ケース9に回収するよう構成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップドレッサーでスポット溶接用電極チップの先端を切削する際に発生する切粉を吸引ユニットで吸引して回収する切粉回収システムであって、
前記吸引ユニットは、回転駆動する電動モータと、該電動モータにより回転して吸引力を発生させる羽根車と、前記切粉を回収可能な切粉回収ケースとを備え、前記羽根車の回転動作により吸引するエアと共に移動する切粉を前記切粉回収ケースに回収するよう構成されていることを特徴とする切粉回収システム。
【請求項2】
請求項1に記載の切粉回収システムにおいて、
中心線が上下に延びる円板状の上壁部及び該上壁部の外周縁から下方に延びる円筒状の側壁部を有するとともに下方に開口する形状をなすカバー体を備え、該カバー体は、前記電動モータ及び前記羽根車を覆っていることを特徴とする切粉回収システム。
【請求項3】
請求項2に記載の切粉回収システムにおいて、
前記羽根車は、回転中心が上下方向に延び、且つ、吸引口が下方に向く遠心羽根車であり、
前記電動モータは、前記羽根車の上方に配設されていることを特徴とする切粉回収システム。
【請求項4】
請求項3に記載の切粉回収システムにおいて、
前記カバー体には、前記切粉を含むエアを外側から内側に導入する切粉導入口が設けられ、
前記カバー体の内側には、当該カバー体の内部空間を前記電動モータ及び前記羽根車を収容する上側領域と前記切粉導入口に対応する下側領域とに仕切るとともに中央に前記吸引口に対応する連通孔が形成された仕切板が設けられ、
該仕切板の下方には、前記連通孔に繋がるエア出口を有するとともに上下に延びる有底筒状をなし、外側から内側へとエアが入り込む複数のエア入口を外周面に有するエアフィルタが配設され、
前記切粉回収ケースは、前記カバー体の下端開口を塞ぐように取付可能な上方に開口する取付開口部を有する有底筒状をなしていることを特徴とする切粉回収システム。
【請求項5】
請求項4に記載の切粉回収システムにおいて、
前記エアフィルタの内部には、多孔質材が配設されていることを特徴とする切粉回収システム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の切粉回収システムにおいて、
前記吸引ユニットを被取付体に取り付ける取付ブラケットをさらに備え、
前記カバー体には、中心線方向に見て外周面が当該中心線を中心とした正多角形状をなす嵌合壁部が形成され、
前記取付ブラケットには、前記嵌合壁部が嵌合可能な当該嵌合壁部と同じ正多角形状をなす嵌合孔が形成されていることを特徴とする切粉回収システム。
【請求項7】
請求項3から5のいずれか1つに記載の切粉回収システムにおいて、
前記カバー体の外周面における前記遠心羽根車に対応する位置には、当該遠心羽根車から径方向外側に出されるエアを前記カバー体の外側へと排気する排気孔が前記カバー体の全周に亘って多数形成されていることを特徴とする切粉回収システム。
【請求項8】
請求項7に記載の切粉回収システムにおいて、
前記カバー体の外周面における前記各排気孔を除く領域には、同方向に延びる複数の凹条溝が並設されるとともに、当該各凹条溝の間に同方向に延びる複数の突条部が並設されていることを特徴とする切粉回収システム。
【請求項9】
請求項8に記載の切粉回収システムにおいて、
前記カバー体は、中心線を境に2分割された半割形状で、且つ、同形状をなすとともに各々の開口端縁部を突き合わせて組み立てる一対の樹脂製分割体を備え、
前記各凹条溝は、前記両分割体の並設方向に窪んでおり、
前記各突条部は、前記両分割体の並設方向に突出しており、
前記各排気孔は、前記両分割体の並設方向に貫通していることを特徴とする切粉回収システム。
【請求項10】
請求項1に記載の切粉回収システムにおいて、
前記切粉回収ケースは、透明樹脂材で一体成形されていることを特徴とする切粉回収システム。
【請求項11】
請求項4又は5に記載の切粉回収システムにおいて、
前記切粉回収ケースの外周面には、筒中心線に沿う断面が弓形状に窪むとともに筒中心線を中心として全周に亘って延びる環状溝部が筒中心線に沿って複数形成されていることを特徴とする切粉回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット溶接用電極チップの先端をチップドレッサーで切削する際に発生する切粉を回収する切粉回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スポット溶接に用いる溶接ガンのシャンク先端には、銅製の電極チップが着脱可能に取り付けられ、該電極チップの先端部分は、溶接を所定回数行うと磨耗したり、或いは、酸化皮膜等が付着して状態が悪化するので、チップドレッサーを用いて周期的に切削して酸化被膜等を取り除く作業が行われる。
【0003】
ところで、チップドレッサーで電極チップの先端を切削する際に発生する切粉は、装置の駆動部に付着すると当該駆動部の負荷を高めてしまい、最悪の場合、装置が故障するおそれもあるので、発生した直後に回収するのが望ましい。
【0004】
これに対応するために、例えば、特許文献1に開示されている切粉回収システムは、切粉を吸引可能な吸引ユニットを備えている。該吸引ユニットは、切粉吸込口が一端に設けられる一方、切粉回収ケースに他端が接続されたダクト部を備え、該ダクト部の中途部には、当該ダクト部の内側に圧縮エアを導入可能なエア導入口が設けられている。そして、エア導入口からダクト部内側における切粉回収ケース側に圧縮エアを導入してダクト部内側の切粉吸込口側を負圧にすることにより、ダクト部内に切粉回収ケースへと向かうエア流れを発生させてチップドレッサーから落下する切粉を切粉吸込口からエアとともに吸い込んで切粉回収ケースに回収するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1696263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では、工場における作業環境の改善を目的として、騒音を大きく低減させて静かで働き易くすることが要求されており、工場において一般的に設置されている圧縮エアを供給するコンプレッサを出来るだけ使用しないようにする取り組みがなされている。したがって、特許文献1の如きチップドレッサーに使用される吸引ユニットにおいても、工場に設置されたコンプレッサの圧縮エアを使用することなく静かに切粉を回収することが求められている。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、切粉回収能力を低下させることなく使用時における騒音を低減させて作業環境を良くすることができる切粉回収システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、吸引力を発生させる機構を作動させる駆動源に工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、チップドレッサーでスポット溶接用電極チップの先端を切削する際に発生する切粉を吸引ユニットで吸引して回収する切粉回収システムを対象とし、次のような対策を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明では、前記吸引ユニットは、回転駆動する電動モータと、該電動モータにより回転して吸引力を発生させる羽根車と、前記切粉を回収可能な切粉回収ケースとを備え、前記羽根車の回転動作により吸引するエアと共に移動する切粉を前記切粉回収ケースに回収するよう構成されていることを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、中心線が上下に延びる円板状の上壁部及び該上壁部の外周縁から下方に延びる円筒状の側壁部を有するとともに下方に開口する形状をなすカバー体を備え、該カバー体は、前記電動モータ及び前記羽根車を覆っていることを特徴とする。
【0012】
第3の発明では、第2の発明において、前記羽根車は、回転中心が上下方向に延び、且つ、吸引口が下方に向く遠心羽根車であり、前記電動モータは、前記羽根車の上方に配設されていることを特徴とする。
【0013】
第4の発明では、第3の発明において、前記カバー体には、前記切粉を含むエアを外側から内側に導入する切粉導入口が設けられ、前記カバー体の内側には、当該カバー体の内部空間を前記電動モータ及び前記羽根車を収容する上側領域と前記切粉導入口に対応する下側領域とに仕切るとともに中央に前記吸引口に対応する連通孔が形成された仕切板が設けられ、該仕切板の下方には、前記連通孔に繋がるエア出口を有するとともに上下に延びる有底筒状をなし、外側から内側へとエアが入り込む複数のエア入口を外周面に有するエアフィルタが配設され、前記切粉回収ケースは、前記カバー体の下端開口を塞ぐように取付可能な上方に開口する取付開口部を有する有底筒状をなしていることを特徴とする。
【0014】
第5の発明では、第4の発明において、前記エアフィルタの内部には、多孔質材が配設されていることを特徴とする。
【0015】
第6の発明では、第4又は第5の発明において、前記吸引ユニットを被取付体に取り付ける取付ブラケットをさらに備え、前記カバー体には、中心線方向に見て外周面が当該中心線を中心とした正多角形状をなす嵌合壁部が形成され、前記取付ブラケットには、前記嵌合壁部が嵌合可能な当該嵌合壁部と同じ正多角形状をなす嵌合孔が形成されていることを特徴とする。
【0016】
第7の発明では、第3から第5のいずれか1つの発明において、前記カバー体の外周面における前記遠心羽根車に対応する位置には、当該遠心羽根車から径方向外側に出されるエアを前記カバー体の外側へと排気する排気孔が前記カバー体の全周に亘って多数形成されていることを特徴とする。
【0017】
第8の発明では、第7の発明において、前記カバー体の外周面における前記各排気孔を除く領域には、同方向に延びる複数の凹条溝が並設されるとともに、当該各凹条溝の間に同方向に延びる複数の突条部が並設されていることを特徴とする。
【0018】
第9の発明では、第8の発明において、前記カバー体は、中心線を境に2分割された半割形状で、且つ、同形状をなすとともに各々の開口端縁部を突き合わせて組み立てる一対の樹脂製分割体を備え、前記各凹条溝は、前記両分割体の並設方向に窪んでおり、前記各突条部は、前記両分割体の並設方向に突出しており、前記各排気孔は、前記両分割体の並設方向に貫通していることを特徴とする。
【0019】
第10の発明では、第1の発明において、前記切粉回収ケースは、透明樹脂材で一体成形されていることを特徴とする。
【0020】
第11の発明では、第4又は第5の発明において、前記切粉回収ケースの外周面には、筒中心線に沿う断面が弓形状に窪むとともに筒中心線を中心として全周に亘って延びる環状溝部が筒中心線に沿って複数形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明では、切粉を回収する吸引力を発生させる羽根車を電動モータの駆動力により回転させるので、切粉の回収時に特許文献1の如き工場に一般的に設置されているコンプレッサを作動させる必要が無い。したがって、切粉回収能力を低下させることなく切粉回収システムの使用時における騒音を大きく低減させて作業環境を良くすることができる。
【0022】
第2の発明では、例えば、電極チップを冷却する冷却水が溶接ガン等から漏れ出て吸引ユニットの上方から降り注ぐ状態になったとしても冷却水が直接的に電動モータや羽根車に付着するのを防ぐことができる。
【0023】
第3の発明では、電動モータの下方に遠心羽根車が位置するので、電動モータに対して下方から冷却水等が到達し難くなる。したがって、防水性能の高い切粉回収システムにすることができる。
【0024】
第4の発明では、電動モータを駆動させることにより遠心羽根車を回転させて吸引力を発生させると、切粉導入口から切粉回収ケース内に導入されるエアがエア入口とエア出口とを介してエアフィルタを上昇しながら通過した後、連通孔を介して遠心羽根車に到達するようになる。このエア流れのエアとともに切粉導入口から切粉が導入されると、エアフィルタを通過しようとする切粉が当該エアフィルタに遮られて切粉回収ケース内に留まるようになる。そして、作業者が、切粉回収ケースをカバー体から取り外すと、当該切粉回収ケース内に溜まる切粉を簡単に廃棄することができる。このように、効率良く切粉を回収して廃棄することができる。
【0025】
第5の発明では、エアがエアフィルタを通過する際に発生する音をエアフィルタ内部の多孔質材材が吸音するようになる。したがって、切粉回収システムの使用時に発生する騒音をさらに減少させることができる。
【0026】
第6の発明では、取付ブラケットに対してカバー体をその中心線周りに所望の角度だけ回転させた状態で嵌合壁部を嵌合孔に嵌合させることができるようになる。したがって、吸引ユニット周りの状況に応じて被取付体に対する切粉導入口の位置を変更させることができる。
【0027】
第7の発明では、遠心羽根車から径方向外側に向かって吐出される排気エアのカバー体を通過する領域が広がるとともに、カバー体を通過する領域がそのカバー体の周方向に亘って分散するようになる。したがって、カバー体を通過する排気エアの勢いが弱まるようになってカバー体を通過する際に発生する音が小さくなり、切粉回収システムの使用時における騒音をさらに低減させることができる。
【0028】
第8の発明では、各凹条溝が形成された空間の領域分だけカバー体が軽量になる一方、各突条部の領域において断面係数が大きくなってカバー体の剛性が高まるようになる。したがって、高剛性で、且つ、計量な切粉回収システムにすることができる。
【0029】
第9の発明では、各分割体をその並設方向に型開き方向が対応するように設定した金型を用いて樹脂材でそれぞれ一体成形すると、アンダーカットを回避しながら複数の凹条溝、複数の突条部及び複数の排気孔を有する複雑な外形をなす分割体を1つの金型で成形可能になる。したがって、成形時に使用する金型の数を減らすことができ、吸引ユニットの製作に係るコストを低く抑えることができる。
【0030】
第10の発明では、作業者が切粉回収ケースの内側の状態を外側から目視確認できるようになる。したがって、作業者が切粉の回収状況を確認しながら切粉の廃棄作業を行えるので、作業効率を上げることができる。
【0031】
第11の発明では、筒中心線に沿う断面の断面係数が大きくなるので、切粉回収ケースの筒中心線に向かう方向の力に対する剛性が高くなる。したがって、切粉回収システムの作動時において、切粉回収ケースの筒中心線に位置するエアフィルタに向かう大きな吸引力が発生したとしても、切粉回収ケースが変形して切粉の回収領域が減ってしまうのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態に係る切粉回収システムの概略斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る吸引ユニットにおけるユニット本体の斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る吸引ユニットにおけるユニット本体の上半部分の分解斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る吸引ユニットにおけるユニット本体の下半部分の分解斜視図である。
図5図2のV-V線における断面図である。
図6図5のVI-VI線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係る切粉回収システム1を示す。該切粉回収システム1は、スポット溶接用溶接ガンGに取り付けられた一対の電極チップT1の先端を切削可能なチップドレッサー10と、該チップドレッサー10で電極チップT1の先端を切削する際に発生する切粉M1(図5参照)を吸引して回収する吸引ユニット2とを備えている。
【0035】
チップドレッサー10は、側面視で略L字状をなす本体ケース10aを備えている。該本体ケース10aは、筒中心線が上下に延びる有底円筒形状のモータ収容部10bと、該モータ収容部10bの上部から側方に略水平方向に延出するホルダ収容部10cとを備え、該ホルダ収容部10cは、平面視で略滴形状をなしている。
【0036】
ホルダ収容部10cの基端側におけるモータ収容部10b側面には、本体ケース10aに加わる衝撃を吸収する衝撃吸収機構部10dが取り付けられている。
【0037】
ホルダ収容部10cは、厚みを有する板状をなしており、その延出側中央には、上下に開口するホルダ支持孔10eが設けられている。
【0038】
ホルダ収容部10cのホルダ支持孔10eには、回転軸心C1が上下方向に延びる回転ホルダ11が配設され、該回転ホルダ11は、モータ収容部10bに収容された図示しない駆動モータにより回転軸心C1周りに回転するようになっている。
【0039】
回転ホルダ11は、平面視で略C字状をなし、回転軸心C1から径方向外側に向かうにつれて次第に回転軸心C1周りの周方向に拡がって外側方に開放するとともに上下にも開放する切欠部11aが形成されている。
【0040】
また、回転ホルダ11の上下面には、当該回転ホルダ11の中央部分に行くにつれて次第に縮径する一対の湾曲凹部11bが回転軸心C1方向に対称に形成されている。尚、図1には、一対の湾曲凹部11bのうち上側に位置する湾曲凹部11bのみ示す。
【0041】
湾曲凹部11bの形状は、電極チップT1の先端の湾曲形状に対応していて、電極チップT1の中心軸が回転軸心C1に一致した状態で電極チップT1の先端を挿入可能になっている。
【0042】
切欠部11aにおける回転軸心C1から外側方に延びる一方の内側面には、電極チップT1の先端を切削するための切削カッター12が取り付けられている。
【0043】
該切削カッター12には、回転軸心C1と交差する方向に延びる切刃部12aが設けられ、該切刃部12aの形状は、各湾曲凹部11bに対応するように緩やかに湾曲している。
【0044】
そして、回転ホルダ11を回転させた状態で互いに対向する一対の電極チップT1の一方を上側の湾曲凹部11bに挿入し、且つ、他方を下側の湾曲凹部(図示せず)に挿入することにより、各電極チップT1の先端をそれぞれ切削カッター12の切刃部12aで切削するようになっている。
【0045】
吸引ユニット2は、柱中心線が上下方向に延びる略円柱形状をなすユニット本体3と、チップドレッサー10で発生する切粉M1をユニット本体3まで案内するダクトホース4とを備えている。
【0046】
該ダクトホース4は、一端に切粉吸込口4aが設けられる一方、他端がユニット本体3に接続されていて、切粉吸込口4aは、チップドレッサー10の回転ホルダ11下方の切粉落下領域に向くように配設されている。
【0047】
ユニット本体3は、図3に示すように、側面視で略T字状をなすブロアユニット30と、該ブロアユニット30を覆う樹脂製のカバー体7とを備えている。
【0048】
ブロアユニット30は、図5に示すように、回転中心C2が上下方向を向く略円盤状をなすとともに吸引口5aが下方に向く遠心羽根車5と、該遠心羽根車5の上方に配設され、回転軸6aが真下に向く電動モータ6とを備えている。
【0049】
遠心羽根車5は、厚みを有する円板状をなすブロアカバー30aに収容され、該ブロアカバー30aは、下方に開放するとともに、その外周面にエア通過窓30bが複数形成されている。
【0050】
そして、遠心羽根車5は、電動モータ6の回転駆動により、回転中心C2周りに回転するようになっていて、吸引口5aから上向きに吸引するエアを径方向外側に移動させて各エア通過窓30bを介してブロアカバー30aの外側に排出させながら吸引力を発生させるようになっている。
【0051】
カバー体7は、図2に示すように、中心線C3が上下に延びる円板状の上壁部7aと、該上壁部7aの外周縁から下方に延びる円筒状の側壁部7bとを備え、下方に開口する形状をなしている。
【0052】
カバー体7の開口周縁には、図3に示すように、上側バネヨット爪7kが中心線C3周りに所定の間隔をあけて複数形成されている。尚、図3では、上側バネヨット爪7kが1つだけ記載されている。
【0053】
カバー体7は、図2に示すように、中心線C3を境に2分割された半割形状をなす第1分割体7A及び第2分割体7Bを備えている。
【0054】
第1分割体7Aの中途部領域には、第1分割体7A及び第2分割体7Bの並設方向に貫通するとともに中心線C3を中心とした周方向に延びるスリット状をなす排気孔7cが中心線C3に沿って複数形成されている。
【0055】
第1分割体7Aの下側領域における中央には、図3に示すように、開口部7dが設けられている。
【0056】
第1分割体7Aの外面における各排気孔7cを除く領域には、第1分割体7A及び第2分割体7Bの並設方向に窪むとともに、中心線C3と交差する方向で、且つ、分割面に沿う方向において同方向に延びる複数の凹条溝7eが並設されている。
【0057】
また、第1分割体7Aの外面における各凹条溝7eの間には、第1分割体7A及び第2分割体7Bの並設方向に突出するとともに、各凹条溝7eと同方向に延びる複数の突条部7fが並設されている。
【0058】
第1分割体7Aの下側寄りの内面には、図5に示すように、第2分割体7B側に突出する突出板7gが第1分割体7Aの内側空間を上側領域と下側領域とに仕切るように設けられ、該突出板7gには、当該突出板7gの突出端側に開口する切欠凹部7hが形成されている。
【0059】
第2分割体7Bは、上記第1分割体7Aと同一の構造をしているので、上記第1分割体7Aと同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0060】
第1分割体7A及び第2分割体7Bは、その並設方向に型開き方向が対応するように設定した1つの金型を用いて樹脂材で一体成形されている。
【0061】
そして、カバー体7は、図3に示すように、第1分割体7Aと第2分割体7Bとの間にブロアユニット30を配設した状態で第1分割体7A及び第2分割体7Bの各々の開口端縁部を突き合わせて組み立てるようになっていて、カバー体7を組み立てると、図5に示すように、第1分割体7Aの突出板7gと第2分割体7Bの突出板7gとでカバー体7の内部空間S1をブロアユニット30が収容される上側領域と開口部7dに対応する下側領域とに仕切る仕切板70が形成されるとともに、第1分割体7Aの切欠凹部7hと第2分割体7Bの切欠凹部7hとで遠心羽根車5の吸引口5aに対応する連通孔70aが形成されるようになっている。
【0062】
各排気孔7cは、カバー体7を組み立てた状態において、当該カバー体7における外周面の遠心羽根車5に対応する位置に設けられている。すなわち、各排気孔7cは、カバー体7の全周に亘って設けられていて、遠心羽根車5から径方向外側に吐出されるエアをカバー体7の外側へと排気するようになっている。
【0063】
カバー体7における第1分割体7A側の開口部7dには、筒状部材71が嵌合しており、該筒状部材71の内側の空間は、切粉M1を含むエアをカバー体7の外側から内側に導入する切粉導入口71aとなっている。
【0064】
一方、カバー体7における第2分割体7B側の開口部7dは、矩形板状をなす蓋部材72で外周面側から塞がれている。
【0065】
また、カバー体7外周面の下端寄りの上側バネヨット爪7kに隣接する位置には、中心線C3側に窪むとともに当該中心線C3周りに環状に延びる嵌合壁部73が形成され、該嵌合壁部73は、図6に示すように、中心線C3方向に見て外周面が中心線C3を中心とした正十二角形状をなしている。
【0066】
仕切板70の下方には、図5に示すように、連通孔70aに繋がるエア出口8bを有するとともに上下に延びる細長い有底筒状をなすエアフィルタ8が配設されている。
【0067】
該エアフィルタ8は、その外周面が下方にいくにつれて次第に縮径するテーパ状をなしており、樹脂材で一体成形されたフィルタ本体81と、該フィルタ本体81を上側から覆う不織布からなる濾材82とを備えている。
【0068】
フィルタ本体81の外周面における筒状部材71から遠い側には、中心線C3を中心とした周方向に延びるスリット状をなすエア入口81aが上下に複数並設され、該各エア入口81aによって、エアフィルタ8の外側から内側へとエアが入り込むようになっている。
【0069】
また、フィルタ本体81の内部には、多孔質材83が敷き詰められている。尚、多孔質材83は、例えば、スポンジ材や樹脂製の発泡体等の細孔を多く含む吸音性に優れたものを使用するのが好ましい。
【0070】
カバー体7の下部は、図1に示すように、支持フレーム等の被取付体B1に吸引ユニット2を取り付けるための取付ブラケット13に支持されている。
【0071】
該取付ブラケット13は、図4に示すように、内部に嵌合孔13aを有する平面視でリング状をなすブラケット本体13bと、該ブラケット本体13bの外周縁部の一部から外側方張り出すように連続して設けられ、縦断面が略L字状をなす取付部13cとを備え、嵌合孔13aは、嵌合壁部73が嵌合可能な当該嵌合壁部73と同じ正十二角形状をなしている。
【0072】
取付ブラケット13は、取付部13cの中央の位置で2分割可能になっていて、各分割体でカバー体7の嵌合壁部73を側方から挟み込んで組み立てることにより、当該嵌合壁部73を嵌合孔13aに嵌合した状態にするようになっている。
【0073】
カバー体7の下方には、上方に開口する取付開口部9aを有する有底筒状の切粉回収ケース9が配設され、該切粉回収ケース9は、透明樹脂材で一体成形されている。
【0074】
該切粉回収ケース9の外周面には、図5に示すように、筒中心線C4に沿う断面が当該筒中心線C4側に弓形状に窪むとともに筒中心線C4を中心として全周に亘って延びる環状溝部9bが筒中心線C4に沿って複数形成されている。
【0075】
切粉回収ケース9の取付開口部9aには、図4に示すように、下側バネヨット爪9cが筒中心線C4周りに所定の間隔をあけて一対設けられている。
【0076】
そして、切粉回収ケース9は、カバー体7の各上側バネヨット爪7kに各下側バネヨット爪9cを係合させることにより、カバー体7の下端開口を塞いだ状態で取り付けられるようになっている。
【0077】
ここで、吸引ユニット2における切粉回収動作について説明する。
【0078】
吸引ユニット2は、チップドレッサー10がスポット溶接用の溶接ガンGのシャンクG1先端に取り付けられた電極チップT1を切削し始めると、電源が入り、図5に示すように、電動モータ6が回転駆動する。
【0079】
電動モータ6が回転駆動して回転軸6aが回転すると、それに連動して遠心羽根車5が回転する。すると、遠心羽根車5において、吸引口5aから上向きに吸引されたエアが遠心羽根車5の径方向外側へと向きを変えながら移動してブロアカバー30aの各エア通過窓30bを通過した後、カバー体7の各排気孔7cから排気され、これら一連の動きに伴って吸引ユニット2の内部に吸引力が発生する。
【0080】
吸引ユニット2の内部に吸引力が発生すると、ダクトホース4の切粉吸込口4aから吸い込まれるとともに切粉導入口71aから切粉回収ケース9内に導入されるエアが各エア入口81aとエア出口8bとを介してエアフィルタ8を上昇しながら通過した後、連通孔70aを介して遠心羽根車5に到達する。このエア流れのエアとともに切粉吸込口4aから吸い込まれる切粉M1が切粉導入口71aを介して吸引ユニット2内に導入されると、エアフィルタ8を通過しようとする切粉M1が当該エアフィルタ8に遮られて切粉回収ケース9内に留まる。したがって、作業者が、切粉回収ケース9をカバー体7から取り外すと、当該切粉回収ケース9内に溜まる切粉M1を簡単に廃棄することができる。このように、本発明の実施形態に係る切粉回収システム1は、効率良く切粉M1を回収して廃棄することができる。
【0081】
以上より、本発明の実施形態によると、切粉M1を回収する吸引力を発生させる遠心羽根車5を電動モータ6の駆動力により回転させるので、切粉M1の回収時に特許文献1の如き工場に一般的に設置されているコンプレッサを作動させる必要が無い。したがって、切粉回収能力を低下させることなく切粉回収システム1の使用時における騒音を大きく低減させて作業環境を良くすることができる。
【0082】
また、カバー体7が遠心羽根車5と電動モータ6とを覆っているので、例えば、電極チップT1を冷却する冷却水が溶接ガンG等から漏れ出て吸引ユニット2の上方から降り注ぐ状態になったとしても冷却水が直接的に電動モータ6や遠心羽根車5に付着するのを防ぐことができる。
【0083】
また、電動モータ6の下方に遠心羽根車5が位置するので、電動モータ6に対して下方から冷却水等が到達し難くなる。したがって、防水性能の高い切粉回収システム1にすることができる。
【0084】
また、エアフィルタ8の内部に多孔質材83が敷き詰められているので、エアがエアフィルタ8を通過する際に発生する音をエアフィルタ8内部の多孔質材83が吸音するようになる。したがって、切粉回収システム1の使用時に発生する騒音をさらに減少させることができる。
【0085】
また、カバー体7の嵌合壁部73と該嵌合壁部73が嵌合する取付ブラケット13の嵌合孔13aとが互いに対応する正十二角形状をなしているので、取付ブラケット13に対してカバー体7をその中心線C3周りに所望の角度だけ回転させた状態で嵌合壁部73を嵌合孔13aに嵌合させることができるようになる。したがって、吸引ユニット2周りの状況に応じて被取付体B1に対する切粉導入口71aの位置を変更させることができる。
【0086】
また、カバー体7の遠心羽根車5に対応する位置には、多数の排気孔7cが周方向の全域に亘って形成されているので、遠心羽根車5から径方向外側に向かって吐出される排気エアのカバー体7を通過する領域が広がるとともに、カバー体7を通過する領域がそのカバー体7の周方向に亘って分散するようになる。したがって、カバー体7を通過する排気エアの勢いが弱まるようになってカバー体7を通過する際に発生する音が小さくなり、切粉回収システム1の使用時における騒音をさらに低減させることができる。
【0087】
また、カバー体7には、複数の凹条溝7eと複数の突条部7fとが形成されているので、各凹条溝7eが形成された空間の領域分だけカバー体7が軽量になる一方、各突条部7fの領域において断面係数が大きくなってカバー体7の剛性が高まるようになる。したがって、高剛性で、且つ、計量な切粉回収システム1にすることができる。
【0088】
また、第1分割体7A及び第2分割体7Bをその並設方向に型開き方向が対応するように設定した金型を用いて樹脂材でそれぞれ一体成形すると、アンダーカットを回避しながら複数の凹条溝7e、複数の突条部7f及び複数の排気孔7cを有する複雑な外形をなす第1分割体7A及び第2分割体7Bを1つの金型で成形可能になる。したがって、成形時に使用する金型の数を減らすことができ、吸引ユニット2の製作に係るコストを低く抑えることができる。
【0089】
また、切粉回収ケース9が透明樹脂材で一体成形されたものであるので、作業者が切粉回収ケース9の内側の状態を外側から目視確認できるようになる。したがって、作業者が切粉M1の回収状況を確認しながら切粉M1の廃棄作業を行えるので、作業効率を上げることができる。
【0090】
そして、切粉回収ケース9の外周面には、凹条溝部が筒中心線C4に沿って複数形形成されているので、筒中心線C4に沿う断面の断面係数が大きくなり、切粉回収ケース9の筒中心線C4に向かう方向の力に対する剛性が高くなる。したがって、切粉回収システム1の作動時において、切粉回収ケース9の筒中心線C4に位置するエアフィルタ8に向かう大きな吸引力が発生したとしても、切粉回収ケース9が変形して切粉M1の回収領域が減ってしまうのを防ぐことができる。
【0091】
尚、本発明の実施形態では、吸引力を発生させるのに遠心羽根車5を用いているが、その他の種類の羽根車を用いてもよく、軸流式や斜流式の羽根車を用いてもよい。
【0092】
また、本発明の実施形態では、互いに嵌合する取付ブラケット13の嵌合孔13aとカバー体7の嵌合壁部73とが正十二角形状をなしているが、これに限らず、その他の正多角形状であってもよい。
【0093】
また、本発明の実施形態では、多孔質材83をフィルタ本体81の内部に敷き詰めているが、フィルタ本体81の内部に配設すればよく、例えば、フィルタ本体81の内面を覆うような円筒形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、スポット溶接用電極チップの先端をチップドレッサーで切削する際に発生する切粉を回収する切粉回収システムに適している。
【符号の説明】
【0095】
1 切粉回収システム
2 吸引ユニット
5 遠心羽根車
6 電動モータ
7 カバー体
7A 第1分割体
7B 第2分割体
7a 上壁部
7b 側壁部
7c 排気孔
7e 凹条溝
7f 突条部
8 エアフィルタ
8b エア出口
9 切粉回収ケース
9a 取付開口部
9b 環状溝部
10 チップドレッサー
13 取付ブラケット
13a 嵌合孔
70 仕切板
70a 連通孔
71a 切粉導入口
73 嵌合壁部
81a エア入口
83 多孔質材
B1 被取付体
M1 切粉
T1 電極チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6