(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046402
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】管渠内センサ装置
(51)【国際特許分類】
E03F 5/02 20060101AFI20240327BHJP
G01D 5/353 20060101ALI20240327BHJP
E03F 7/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
E03F5/02
G01D5/353 A
E03F7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151773
(22)【出願日】2022-09-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼発行日 令和4年9月1日 刊行物 奥村組技術研究年報No.48、第1,45~50頁、株式会社奥村組技術研究所 ▲2▼ウェブサイトの掲載日 令和4年9月1日 http://www.okumuragumi.co.jp/technology/tri/annual_report/2022/
(71)【出願人】
【識別番号】515117682
【氏名又は名称】株式会社コアシステムジャパン
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 大志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博幸
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 治
(72)【発明者】
【氏名】楢崎 雄一
(72)【発明者】
【氏名】南雲 裕樹
【テーマコード(参考)】
2D063
2F103
【Fターム(参考)】
2D063DA07
2D063EA03
2F103CA03
2F103EC08
2F103GA15
(57)【要約】
【課題】固体流入物の堆積を抑制することができ、かつ高精度の検知を行うことができるように、浸漬型のセンサを管渠内に固定することが可能な装置を提供する。
【解決手段】管渠内センサ装置100は、人孔B内の下部を横断する円形断面の管路Cの人孔B側の開口部に固定されるリング状の固定板11と、固定板11の内壁面に固定され、管路C内を流れる水に浸漬された状態で、流れる水の状態を検知するセンサ本体20と、固定板11の内壁面に固定されると共に、流れる水の上流側から下流側に向かって管路C内方に傾斜する傾斜面31を有し、傾斜面31によってセンサ本体20の上流側を下流側に向かって覆うカバーシート30とを備える。センサ本体20は、管路Cの底部位置における最底部より上方にて、固定板11に固定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人孔内の下部を横断する円形断面の管路の人孔側の開口部に固定されるリング状の固定体と、
前記固定体の内壁面に固定され、前記管路内を流れる水に浸漬された状態で、流れる水の状態を検知するセンサ本体と、
前記固定体の内壁面に固定されると共に、流れる水の上流側から下流側に向かって前記管路内方に傾斜する傾斜面を有し、当該傾斜面によって前記センサ本体の上流側を下流側に向かって覆うカバー体と、を備え、
前記センサ本体は、前記管路の底部位置における最底部より上方にて、前記固定体に固定されることを特徴とする管渠内センサ装置。
【請求項2】
人孔内の下部を横断する円形断面の管路の人孔側の開口部に固定されるリング状の固定体と、
前記固定体の内壁面に固定され、前記管路内を流れる水に浸漬された状態で、流れる水の状態を検知するセンサ本体と、
前記固定体の内壁面に固定されると共に、流れる水の上流側から下流側に向かって前記管路内方に傾斜する傾斜面を有し、当該傾斜面によって前記センサ本体の上流側を下流側に向かって覆うカバー体と、を備え、
前記センサ本体がヘテロコア部を途中に有する光ファイバからなる水位センサであることを特徴とする管渠内センサ装置。
【請求項3】
前記固定体は、金属又は樹脂からなる板状弾性体からなり、前記板状弾性体の外面が前記管路の内壁に弾発力で当接した状態で当該管渠内に固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の管渠内センサ装置。
【請求項4】
前記固定体は一部が離間する円環状であるととともに、当該離間する箇所の両端部を板状弾性体の両端部を接続する接続部材を備え、前記接続部材は前記固定体の直径を調整可能に接続することを特徴とする請求項1又は2に記載の管渠内センサ装置。
【請求項5】
前記カバー体は、前記センサ本体の位置より上流側および下流側の端部のうち、少なくとも上流側端部が前記固定体の内壁面に固着されており、当該カバー体の固着されていない両側方より前記センサ本体内に水が流入するよう構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の管渠センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管渠内に固定されるセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、局地的な集中豪雨が頻発しており、雨水が流入する管渠の急激な増水に対する安全対策を図る必要がある。従来から管渠内に固定した水位センサを用いて管渠を流れる水の水位を計測するシステムが構築されている(例えば、特許文献1から3参照)。なお、水位だけでなく、水温、pH値、流量(流速)などの計測値を、管渠内に固定した各種センサを用いて計測することも行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、底板の一部が管渠に内接して固定され、底板の両端部からそれぞれ上方に延在する側板の間に架設される上板にて、超音波式などの非浸漬型の水位センサを支持するセンサ固定具が記載されている。
【0004】
特許文献2には、浸漬型の水位センサを、管渠の内壁に設置されるセンサホルダの底部に収容して保持することが記載されている。また、特許文献3には、水位計ホルダの底板の一部が管渠に内接して固定され、底板の最深部に設けられた水位計ホルダに浸漬側の水位計本体を収容して保持することが記載されている。なお、水位計ホルダは、水位計本体に水流の動圧が作用することを防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6716952号公報
【特許文献2】特開平10-212751号公報
【特許文献3】特許第6822601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1などに記載された非浸漬型の水位センサの技術においては、非浸漬型であるため、水位センサの僅かな固定角度の変化によっても、測定される水位が大きく変化するという課題がある。
【0007】
一方、上記特許文献2,3などに記載された浸漬型の水位センサの技術においては、水に伴って流入する固体流入物が水位センサ又はこれを収容するセンサホルダに堆積して、水位センサによる水位の検知が困難になる、又は、検知精度が劣化するおそれがあるという課題がある。
【0008】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、固体流入物の堆積を抑制することができ、かつ高精度の検知を行うことができるように、浸漬型のセンサを管渠内に固定することが可能な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の管渠内センサ装置は、人孔内の下部を横断する円形断面の管路の人孔側の開口部に固定されるリング状の固定体と、前記固定体の内壁面に固定され、前記管路内を流れる水に浸漬された状態で、流れる水の状態を検知するセンサ本体と、前記固定体の内壁面に固定されると共に、流れる水の上流側から下流側に向かって前記管路内方に傾斜する傾斜面を有し、当該傾斜面によって前記センサ本体の上流側を下流側に向かって覆うカバー体と、を備え、前記センサ本体は、前記管路の底部位置における最底部より上方にて、前記固定体に固定されることを特徴とする。
【0010】
本発明の第1の管渠内センサ装置によれば、上流側から下流側に向かって上方に傾斜する傾斜面を有し、当該傾斜面によってセンサ本体の上流側を下流側に向かって覆うカバー体を備えている。このカバー体の傾斜面に沿って水と共に上流側から流入する固体流入物が流れ易くなるので、センサ本体に固体流入物が堆積して、センサ本体の感度が低下するおそれを抑制することが可能となる。
【0011】
また、固体流入物は管渠の最深部を流れやすい。本管渠内センサ装置においては、センサ本体は管渠の最底部より上方にて固定体に固定されるので、上記特許文献2,3のように管渠の最底部にセンサが固定される場合と比較して、センサ本体に固体流入物が堆積して、センサ本体の感度が低下するおそれを抑制することが可能となる。
【0012】
本発明の第2の管渠内センサ装置は、人孔内の下部を横断する円形断面の管路の人孔側の開口部に固定されるリング状の固定体と、前記固定体の内壁面に固定され、前記管路内を流れる水に浸漬された状態で、流れる水の状態を検知するセンサ本体と、前記固定体の内壁面に固定されると共に、流れる水の上流側から下流側に向かって前記管路内方に傾斜する傾斜面を有し、当該傾斜面によって前記センサ本体の上流側を下流側に向かって覆うカバー体と、を備え、前記センサ本体がヘテロコア部を途中に有する光ファイバからなる水位センサであることを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の管渠内センサ装置によれば、本発明の第1の管渠内センサ装置と同様に、カバー体に傾斜面が存在することにより、センサ本体に固体流入物が堆積して、センサ本体の感度が低下するおそれを抑制することが可能となる。
【0014】
また、センサ本体がヘテロコア部を途中に有する光ファイバセンサであるので、センサ本体を薄厚に形成することが可能となる。これにより、センサ本体に固体流入物が堆積して、センサ本体の感度が低下するおそれを抑制することが可能となる。
【0015】
本発明の第1及び第2の管渠内センサ装置において、前記固定体は、金属又は樹脂からなる板状弾性体からなり、前記板状弾性体の外面が前記管路の内壁に弾発力で当接した状態で当該管渠内に固定されることが好ましい。
【0016】
この場合、固定体自身の弾発力の作用により固定体が管路に固定されるので、同じ固定体を直径が相違する管渠に固定することが可能となる。
【0017】
また、本発明の第1及び第2の管渠内センサ装置において、前記固定体は一部が離間する円環状であるととともに、当該離間する箇所の両端部を接続する接続部材を備え、前記接続部材は前記固定体の直径を調整可能に接続することが好ましい。
【0018】
この場合、固定体との接続箇所の間隔を相違させて、固定体と接続部材を接続させることにより、過度な弾発力が作用して管路から脱落し易くなることなく、直径の相違する管路に固定体を適切に固定することが可能となる。
【0019】
また、本発明の第1及び第2の管渠内センサ装置において、前記カバー体は、前記センサ本体の位置より上流側および下流側の端部のうち、少なくとも上流側端部が前記固定体の内壁面に固着されており、当該カバー体の固着されていない両側方より前記センサ本体内に水が流入するよう構成されていることが好ましい。
【0020】
この場合、カバー体は、上流側端部が固定体の内壁面に固着されてセンサ本体を覆うので、センサ本体に固体流入物が堆積して、センサ本体の感度が低下するおそれをより抑制することが可能となる。また、カバー体の固着されていない両側方よりセンサ本体内に水が流入するので、センサ本体が水位センサである場合、センサ本体に水位による外圧を付与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る管渠内センサ装置の模式斜視図。
【
図4】管渠内センサ装置のセンサ本体などを示す模式縦断面図。
【
図5】カバーシート60を省略した
図1のV-V線模式断面図。
【
図6A】ヘテロコア部を有する光ファイバを説明する図。
【
図6B】ヘテロコア部を有する光ファイバの模式断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係る管渠内センサ装置100について図面を参照して説明する。なお、図面は、管渠内センサ装置100及びその構成要素などを明確化するためにデフォルメされており、実際の比率を表すものではない。
【0023】
図1から
図3を参照して、地下に埋設された下水道などの管渠Aには、点検、清掃、補修などの管渠Aの維持管理のための人の出入口として人孔(マンホール)Bが設けられている。
【0024】
管渠内センサ装置100は、管渠A内に固定される固定具10と、固定具10に固定されるセンサ本体20と、固定具10に固定され、センサ本体20を覆うカバーシート30とを備えている。管渠内センサ装置100においては、固定具10を用いて管渠A内を流れる水に浸漬させた状態でセンサ本体20を固定し、この水に関する情報をセンサ本体20が検知する。
【0025】
固定具10は、管渠Aを構成する円形断面の管路Cの人孔B側の開口部内に固定される。人孔Bの底部には、水が流れる溝としてインバートDが形成されている。管渠Aは、管路Cと、管路Cに接続されたインバートDとから構成される。
【0026】
ここでは、固定具10は、展開すると1枚の薄厚の矩形板状となる板状弾性体である固定板11を有している。固定板11は本発明の固定体に相当する。固定板11は、耐水性及び耐食性に優れた金属又は樹脂の板材からなる。固定板11は、例えば、厚さが10mm以下のステンレス鋼や耐食性プラスチックの板材からなる。
【0027】
なお、固定板11は、その厚さに応じて、例えば厚さが1mm以上である場合、固定板11の水流の上流側の端部に水流の上流側から下流側に向って厚さが徐々に増加する傾斜面を設けることが好ましい。これにより、固定板11と管路Cの内壁面との間に生じる段差が水流の障壁となること、さらに、この段差に固体流入物が堆積することを抑制することが可能となる。
【0028】
固定板11の長さは、管路Cの内壁面の円周長よりも短く、かつ、例えばこの円周長の3/4以上であることが好ましい。また、一部を切り欠いたリング状(円環状)に加工されていることが好ましい。これにより、固定板11を、弾性範囲において短辺同士を接近させて、その外径を管路Cの内径より小さくして管路C内に位置させた後、この接近を解除することによって、その外周面が管路Cの内壁面に弾発力で当接した状態で管路C内に安定的に固定することが可能となる。
【0029】
なお、固定具10は、この固定板11だけからなるものであってもよい。この場合、固定具10は、管路Cの内壁面に沿って湾曲し全体としてリング状(円環状)となっており、切り欠き部は上部に設けることが好ましい。
【0030】
ただし、ここでは、固定具10は、固体板11の長手方向の両端部を所定の距離に近づけて接続するアジャスタ12を備えている。アジャスタ12により、固体板11における短辺同士の離間距離とアジャスト12との接続位置を変更して、固定板11の直径を調整することによって、管路Cの内壁面に対して固定板11を強固に押し付けることが可能となる。このため、固定板11を一部が切り欠いたリング状(円環状)に加工する場合、加工時の外径を管路Cの内径より少し小さくしてもよい。
【0031】
ここでは、固定板11の長手方向の内周面の両端部に、それぞれL字状ブラケット13が設けられている。このL字状ブラケット13は、その底辺部13aの上面が、固定板11の内周面に溶接や接着などによって固定されている。L字状ブラケット13は、金属や樹脂などの硬質材からなる。
【0032】
各L字状ブラケット13の起立辺部13bは、固定板11の人孔B側に平面を有するように、上方に向かって起立している。そして、各L字状ブラケット13の起立辺部13bに貫通孔(不図示)が形成されている。なお、L字状ブラケット13に替えて、法線方向に延びる突出片を曲げ加工などにより固定板11と一体成形してもよい。
【0033】
一方、アジャスタ12は、金属や樹脂などの硬質材からなる矩形板材であり、長手方向の両端部に複数の貫通孔12aが長手方向に間隔を開けて形成されている。そして、作業者がL字状ブラケット13の貫通孔とアジャスタ12の適切に選択した貫通孔12aとにボルト14を管路C側から挿通させ、このボルト14をナット15を用いて反対側から固定する。
【0034】
L字状ブラケット13は、管路Cの人孔B側の上方端面に起立部13bの裏面が当接して、管路Cに流入する水によって管渠内センサ装置100が管路C内に入り込まないように防止するストッパとして機能する。また、L字状ブラケット13は、その底辺部13cの厚さとボルト14の頭部の厚さだけしか管路Cの内周面から突出しておらず、しかも、突出位置は管路C内の上部である。そのため、この突出箇所が水流の障壁や固体流入物が堆積する要因とはならず、管路C内の底部付近に設置されるセンサ本体20の水位検知に悪影響を及ぼすことはない。
【0035】
このようにして、固定板11は、L字状ブラケット13を介してアジャスタ12により上部が離間されたリング状となっており、その直径はアジャスタ12の選択した貫通孔12aの位置に応じて定まる。管路Cの内壁面の直径に応じてアジャスタ12の貫通孔12aのいずれかを適宜選択してL字ブラケット13と接続することにより、固定板11の直径が管路Cの内壁に対応したものとなる。なお、図示しないが、両端部にそれぞれ形成された貫通孔の間隔が相違する複数本のアジャスタを用意しておき、管路Cの内壁の直径に応じて適切なアジャスタを選択するようにしてもよい。
【0036】
また、図示しないが、アジャスタ12又はL字状ブラケット13の貫通孔を長孔とすれば、固定板11を管路C内に嵌め込み易くなると共に、固定板11の直径やその管路Cの内壁面に当接する力の調整をより細かく行うことが可能となる。
【0037】
なお、固定板11は、1枚の板状弾性体である場合に限定されない。例えば、固定板11として、複数枚の板状弾性体を長尺方向に連結したものであってもよく、さらに、そのうちの一部は非弾性体ではあってもよい。
【0038】
また、本発明の固定体は、板状以外の弾性体、例えば、丸棒、角棒などの棒状、網状などであってもよい。さらに、固定体は、円環状でなくてもよく、多角形状などのリング状(輪状)であってもよい。
【0039】
さらに、固定体は、弾性体からなる場合に限定されない。例えば、固定体は、管路Cの内壁面に挿入または嵌入することが可能な形状の非弾性体であってもよい。この場合、固定具10を固定板11のみとして管路Cの内径より若干小さめに設置すると、固定体と管路Cの内壁面との間に隙間が生じ、この隙間に固体流入物が入り込むことはあるが、多少の隙間であればセンサ本体20による水位検知には悪影響を及ぼさない。なお、アジャスタ12を用いる場合には、弾性・非弾性に限らず、固定板11の離間距離を広げることにより、管路Cの内壁面に押し付け固定することが可能である。
【0040】
センサ本体20は、管路C内を流れる濁水に浸漬された状態で、この水の状態を検知する。管路C内を水と共に流れて来る粒状物やゴミ、枝、葉などの固体流入物がセンサ本体20に堆積して、良好な検知を妨げないように、センサ本体20は薄いことが好ましく、例えば、30mm以下の厚さであることが好ましい。
【0041】
以下、厚さが30mm以下と薄厚にすることが可能なセンサ本体20の一例について説明する。センサ本体20は、
図4及び
図5を参照して、ヘテロコア部HPを有する光ファイバ40と、ダイヤフラム51を有し、ヘテロコア部HPが内部に配置されたチャンバ50とを備えている。なお、以下の説明及び図面において、上下などの方向は、チャンバ50単体における方向であり、チャンバ50の固定具10への取付方向などに応じて変化する。
【0042】
センサ本体20は、ダイヤフラム51に作用する水圧を検知することができる。この水圧から水位も求まるので、センサ本体20は水位センサとして機能する。
【0043】
光ファイバ40は、
図6A及び
図6Bを参照して、入射端側の光ファイバ素線41と、出射端側の光ファイバ素線42と、光ファイバ素線41,42の間に挿入されたヘテロコア部HPとから構成されている。ヘテロコア部HPは、光ファイバ素線41,42との間に設けられ、伝送される光の一部を漏洩(リーク)する。
【0044】
ヘテロコア部HPは、ここでは、コア43と、その外周部に設けられたクラッド44とを有する短いシングルモード光ファイバである。例えば、コア43の径は5μmであり、クラッド44の径は125μmであり、長さは1.6mmである。一方、光ファイバ素線41,42はともに、コア45と、その外周部に設けられたクラッド46とを有する長いシングルモード光ファイバである。例えば、コア45の径は9μmであり、クラッド46の径は125μmである。このように、ヘテロコア部HPのコア径は、光ファイバ素線41,42のコア径よりも小さくなるように構成されている。
【0045】
なお、ヘテロコア部HP、光ファイバ素線41,42の双方、あるいは一方が、マルチモード光ファイバであってもよい。また、ヘテロコア部HPのコア径が、光ファイバ素線41,42のコア径よりも大きくなるように構成されていてもよい。また、ヘテロコア部HPが、光ファイバ素線41,42のコア45の屈折率あるいはクラッド46の屈折率と同等の屈折率を有する素材からなるものであってもよい。この場合も、コア45の径が、0あるいはクラッド46の径と同じである一種のヘテロコア構造であると考えることが可能である。
【0046】
ヘテロコア部HPと光ファイバ素線41,42とは、長手方向に直交する界面47でコア43,45が接合するように、同軸又は略同軸に、放電による融着などによって接合されている。なお、溶融延伸することによって、ヘテロコア部HPを形成してもよい。また、コア43,45の径が漸次変化するものであってもよい。
【0047】
このように、光ファイバ素線41,42の中途部にヘテロコア部HPが存在しているので、界面47におけるコア径の相違によって、光の一部がヘテロコア部HPのクラッド44に漏洩し、伝送される光が損失される。ヘテロコア部HP及びその近傍の光ファイバ素線41,42の曲率半径Rが小さいほど、光の損失量(リーク量)が大きくなる。
【0048】
図4及び
図5を参照して、チャンバ50は、上側フレーム52と下側フレーム53とが水密に固定されることにより、全体の外観が略直方体状となるように構成されている。これらフレーム52,53は、例えば、樹脂、金属、セラミックスなどの硬質の材料から形成されている。
【0049】
上側フレーム52と下側フレーム53とは、ヘテロコア部HPから両側に離間した部分における光ファイバ素線41,42を間に挟んだ状態で固定されている。2つのフレーム52,53が固定されたチャンバ50において、内部に密閉空間Sが形成されている。
【0050】
上側フレーム52の上側の壁部には、他の部分よりも薄厚のダイヤフラム51が形成されている。換言すれば、上側フレーム52にその厚み方向に穿った空間(密閉空間Sの一部を構成する空間)を設け、この空間の底部を撓み可能な厚さとしてダイヤフラム51を構成している。
【0051】
ダイヤフラム51は、ダイヤフラム51の上面に作用する圧力(チャンバ50外方に存在する水から受ける水圧)と密閉空間S内の内圧を受圧する受圧部であり、内圧と外圧との差圧に応じて撓む。差圧が大きいほど、ダイヤフラム51は大きく撓む。ダイヤフラム51は、所望の精度で差圧を検知することができるよう、差圧に応じて適度な撓み量が生じるように厚さを設定すればよい。
【0052】
ここでは、密閉空間Sは完全に密閉されており、その内圧は所定の内圧、例えば、大気圧に近い内圧や真空に近い内圧に設定されている。これにより、センサ本体20は、ダイヤフラム51の上面に作用する外圧と密閉空間Sの内圧との差圧を検知することになる。
【0053】
ここでは、ダイヤフラム51は、上側フレーム52の他の部分と同じ材質で形成され、上側フレーム52と一体化されている。ただし、ダイヤフラム51を上側フレーム52とは相違する材質別の部材として構成し、これらを接着剤やパッキン等のシール材などを用いて固定してもよい。
【0054】
ダイヤフラム51の下面の略中央部には、2つの支持部材54,55が間隔L0を存してその一端部側(上端部側)が固定されている。ここでは、これら支持部材54,55は、上側フレーム52の他の部分と同じ材質で形成されており、ダイヤフラム51と一体化している。
【0055】
各支持部材54,55は、それぞれが独立した角柱状の部材であり、上面が接触するダイヤフラム51の下面から下方に向かって延びるように起立している。各支持部材54,55の他端部側(下端部側)である下面に光ファイバ素線41,42の所定部分M,Nが間隔L1を隔てて固定されている。これらの固定部分M,Nの間にヘテロコア部HPが位置している。固定部分M,N間のヘテロコア部HPを含む部分の光ファイバ40であるセンサ部SPは、予め屈曲するように固定されていることが好ましい。
【0056】
また、フレーム52,53の間に挟まれた光ファイバ素線41,42は、これらフレーム52,53の間に水密に固定されている。
【0057】
図示しないが、光ファイバ40の入射端である光ファイバ素線41の入射端には、半導体発光ダイオード(LED)や半導体レーザなどの発光素子を有する光源が接続されている。光ファイバ40の出射端である光ファイバ素線42の端部には、フォトダイドード(PD)や電荷結合素子(CCD)などの受光素子を有する光パワーメータなどの受光部が接続されている。さらに、受光部には、CPUやメモリ等を備えた検知部が接続されている。なお、受光部から検知部に無線で受光信号を送信してもよい。これら光源、受光部及び検知部は、地上又はマンホール蓋の裏などに設置されている。
【0058】
以上のように構成されたセンサ本体20において、
図7に示すように、外圧が内圧より大きい場合、その差圧に応じてダイヤフラム51は下向きに凸となるように湾曲して撓む。この撓みは、上記の間隔L1は支持部材54,55の上下方向の長さに比例して拡大され、固定部分M,Nの間隔L2は初期の間隔L1(
図4参照)よりも大きくなる。よって、ダイヤフラム51に直接的にセンサ部が固定されている場合と比較して、2つの支持部材54,55に支持されたセンサ部SPの間隔Lが大きく変化するので、センサ部SPの曲率が大きく変化し、光ファイバ40を伝送する光の漏洩の割合に大きな変化が生じるため、差圧を高感度で検知することが可能となる。
【0059】
差圧によるダイヤフラム51の撓み量を大きくすれば、従来のようにダイヤフラム51の変形に応じて直接的に変形するようにセンサ部が支持されていても、高感度で差圧を検知することはできる。ただし、この場合、ダイヤフラム51を薄くするか大面積化する必要がある。しかし、ダイヤフラム51を薄くすると強度不足で破損するおそれがあり、大面積化するとチャンバ50が大型化するという問題が生じる。
【0060】
センサ本体20を、上述したヘテロコア光ファイバセンサからなるものとすることにより、センサ本体20を例えば30mm以下の薄厚に形成することが可能となる。これは、ダイヤフラム51の小さな撓みを支持部材54,55の長さによって拡大し、センサ部SPの微小な曲率の変化でもヘテロコア光ファイバでは光の漏洩の割合に大きな変化が生じるため、差圧を高感度で検知するからである。このようにセンサ本体20が薄厚であるので、センサ本体20に固体流入物が堆積して、検知感度が低下するおそれを抑制することが可能となる。
【0061】
なお、センサ本体20は上述したものに限定されない。例えば、光ファイバ素線41の中途部に光カプラを設け、光カプラで別の光ファイバを分岐させるとともに、光ファイバ素線41の端部に銀蒸着などによって鏡を形成した反射部を設けてもよい。この場合、前記分岐された光ファイバの端部が出射端となり、この出射端に受光部を接続すればよい。このような反射部を設けることにより、チャンバ50から光ファイバ素線41が延び出ることが回避され、光ファイバ40の取り回しが簡易となる。
【0062】
また、光ファイバ素線42の端部にOTDR(Optical time-domain reflectometer)装置を接続して、OTDR装置から入射されたセンサ光の後方へのレイリー散乱光をOTDR装置自身が計測するものであってもよい。
【0063】
また、ヘテロコア部HPを有する光ファイバ40以外の光ファイバとして、長周期光ファイバグレーティングを用いてもよい。この場合、光ファイバの屈曲度合に応じて共鳴波長のシフトを生じるので、光ファイバにおける伝送光のスペクトルに基づいて、差圧を検知することが可能となる。
【0064】
なお、センサ本体20は、ヘテロコア部HPを有さない光ファイバを用いた水位センサ、例えば、ファブリペロー干渉計やファイバ・ブラッグ・グレーティング(Fiber Bragg Grating:FBG)を用いた光ファイバ式水位センサであってもよい。また、センサ本体20は、MEMS圧力センサなどの他の形式の水位センサであってもよい。
【0065】
また、センサ本体20は、水位センサに限定されず、浸漬されている水の何らかの状態を検知するものであればよく、例えば、水温センサ、pHセンサ、流量センサなどであってもよい。
【0066】
さらに、センサ本体20は、その上面がカバーシート30により覆われている。カバーシート30は本発明のカバー体に相当する。カバーシート30は、センサ本体20を覆った状態で固定板11の内壁面に固定されている。
【0067】
カバーシート30は、ここでは、薄厚の耐食性及び耐水性に優れた樹脂シートである。カバーシート30は、特に摩擦係数が小さいものであることが好ましいので、PTFE(四フッ化エチレン樹脂、商品面テフロン(登録商標))シートなどであることが好ましい。
【0068】
センサ本体20は、台座61を介して固定板11の内壁面に固定されている。ここでは、台座61及びカバーシート30にそれぞれ形成された貫通孔を挿通するボルト62が固定板11に形成されたネジ穴に螺合することにより、固定板11の内壁面に台座61が固定され、台座61の両端部にカバーシート30の両端部が固定される。ただし、固定板11、台座61及びカバーシート30は接着や溶接などにより固定してもよい。
【0069】
台座61の下面は、ここでは、平面状であり、これに固定される固定板11の内壁面の部分も平面状となり、管路Cとの内壁面との間に隙間が生じる。ただし、この隙間は微小であるので、固体流入物が大量に堆積して、センサ本体20による検知感度に悪影響を及ぼすことはない。なお、台座61の下面は、固定板11の湾曲した内面に沿った曲面状であってもよい。
【0070】
そして、センサ本体20に形成された貫通孔を挿通するボルト63が台座61に形成されたネジ穴に螺合することにより、台座61の上面にセンサ本体20が固定される。ただし、センサ本体20と台座61とは接着や溶接などにより固定してもよい。
【0071】
このようにカバーシート30がセンサ本体20の上方を覆うことにより、水流はカバーシート30の上面に沿って流れ、センサ本体20には直接的には水流がかからないので、センサ本体20に固体流入物が堆積することの防止を図ることが可能となる。
【0072】
なお、カバーシート30は、流れる水の上流側から下流側に向かって管路Cの内方(上方)に傾斜する傾斜面31を有し、この傾斜面31によってセンサ本体20の上流側を下流側に向かって覆っていればよい。これにより、センサ本体20に固体流入物が堆積することの防止を図ることが可能となる。すなわち、カバーシート30は、センサ本体20の上面を全面に亘って覆う必要はない。
【0073】
そして、カバーシート30は、ここでは、センサ本体20の側方を覆っていない。これにより、センサ本体20のダイヤフラム51に水圧が作用するので、カバーシート30はセンサ本体20の水位検知に影響を及ぼさない。
【0074】
なお、台座61の厚さが例えば1mm以上である場合、台座61の水流の上流側の端部に水流の上流側から下流側に向って厚さが徐々に増加するに斜面を設けることが好ましい。これにより、台座61と固定板11の内壁面との間に生じる段差が水流の障壁となること、また、この段差に固体流入物が堆積することの抑制を図ることが可能となる。
【0075】
上述したセンサ本体20の一例において、光ファイバ40の光ファイバ素線41,42は、固定板11の内壁面に固定された部分を介して、地上などに設置された上記光源及び受光部に向かって延びる。この固定板11の内壁面に固定された光ファイバ素線41,42は、配線を防水する際などに使用されるシリコーンコーキングなどのコーキング71によって覆うことが好ましい。これにより、光ファイバ素線41,42に固体流入物が大量に堆積することが防止され、センサ本体20による検知感度に悪影響を及ぼすことの抑制を図ることが可能となる。
【0076】
なお、コーキング71に覆われて固定板11の内壁面に固定される光ファイバ41,42の延びる方向は、
図1に示すように、固定板11の長尺方向(水流と直交する方向)に平行な方向であっても、固定板11の短尺方向(水流と平行な方向)に平行な方向であってもよい。
【0077】
また、上述したセンサ本体20の一例において、不図示の通気パイプなどを介して密閉空間Sと外気を連通してもよい。この通気パイプなども光ファイバ素線41,42と共にコーキング71によって覆うことが好ましい。
【0078】
さらに、センサ本体20が、光ファイバ式のセンサでない場合、このセンサ本体20から地上などに設置される検知関連装置に向かって延びる各種ケーブルなども、固定板11の内壁面に固定される部分はコーキング71で覆えばよい。
【0079】
固体流入物うち、その大半を占める水より比重の高い粒子状物は管路Cの最深部を流れ中央を流れる。そこで、本管渠内センサ装置100においては、センサ本体20は、管路Cの底部位置における最底部より上方にて、固定板11の内壁面に固定されている。
【0080】
ここで、管渠A(管路C)の底部位置とは、管渠A(管路C)の下半内周面における開き角120度の弧長部分を指し、センサ本体20の固定位置は水が殆ど流れていないと判断できる又はそう判断しても管理上支障を来さない高さ位置である。例えば、センサ本体20は、管路Cの底部位置における最底部より、センサ本体20の厚さの半分以上、あるいは、センサ本体20の厚さ以上上方にて、固定板11の内壁面に固定されている。これにより、上記特許文献2,3のように管路Cの最底部にセンサが固定される場合と比較して、センサ本体20に固体流入物が堆積、接触して、センサ本体20の感度が低下するおそれを抑制することが可能となる。
【0081】
また、管路Cは円形断面であるため、上記した底部位置の範囲においては、センサ本体20の設置高さに比して断面左右方向への移動距離が長く、必要最低限の高さを確保して上で上記した固体流体物との接触をより高い確率で回避することができる。
【0082】
なお、本発明は実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の固定体として、上記特許文献1~3に記載されたものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10…固定具、 11…固定板(固定体)、 12…アジャスタ(接続部材)、 12a…貫通孔、 13…L字状ブラケット、 13a…底辺部、 13b…起立辺部、 14…ボルト、 15…ナット、 20…センサ本体、 30…カバーシート(カバー体)、 31…傾斜面、 40…光ファイバ、 41…出射端側の光ファイバ素線、 42…入射端側の光ファイバ素線、 43,45…コア、 44,46…クラッド、 47…界面、 50…チャンバ、 51…ダイヤフラム、 52…上側フレーム、 53…下側フレーム、 54,55…支持部材、 61…台座、 62,63…ボルト、 71…コーキング、 100…管渠内センサ装置、 A…管渠、 B…人孔、 C…管路、 D…インバート、 HP…ヘテロコア部、 M,N…固定部分、 S…密閉空間、 SP…センサ部。