(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046413
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】不陸調整材
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20240327BHJP
E02D 5/80 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
E02D17/20 103H
E02D17/20 103Z
E02D17/20 106
E02D5/80 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151790
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】刈茅 孝一
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 朱音
(72)【発明者】
【氏名】黒田 健夫
【テーマコード(参考)】
2D041
2D044
【Fターム(参考)】
2D041GA01
2D041GC11
2D044DB51
(57)【要約】
【課題】地盤と構造物との密着性を長期的に高めることができる不陸調整材を提供する。
【解決手段】本発明に係る不陸調整材は、地盤と構造物との空隙に配置される不陸調整材であり、前記不陸調整材が、硬化性成分と、陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物とを含み、前記イオン放出性化合物が、難水溶性塩を生成可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤と構造物との空隙に配置される不陸調整材であり、
前記不陸調整材が、硬化性成分と、陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物とを含み、
前記イオン放出性化合物が、難水溶性塩を生成可能である、不陸調整材。
【請求項2】
前記難水溶性塩が、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、リン酸カルシウム、又は水酸化鉄である、請求項1に記載の不陸調整材。
【請求項3】
前記イオン放出性化合物が、陽イオンを放出可能な化合物を含み、
前記陽イオンを放出可能な化合物が、ケイ酸カルシウム、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、又は炭酸水素カルシウムである、請求項1又は2に記載の不陸調整材。
【請求項4】
前記イオン放出性化合物が、陰イオンを放出可能な化合物を含み、
前記陰イオンを放出可能な化合物が、リン酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、又は炭酸水素カルシウムである、請求項1又は2に記載の不陸調整材。
【請求項5】
前記イオン放出性化合物の表面が、コーティング剤により被覆されている、請求項1又は2に記載の不陸調整材。
【請求項6】
前記硬化性成分が、硬化性化合物、セメントミルク、又はモルタルを含む、請求項1又は2に記載の不陸調整材。
【請求項7】
発泡剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の不陸調整材。
【請求項8】
前記硬化性成分が、ポリオール化合物と、イソシアネート化合物とを含む、請求項1又は2に記載の不陸調整材。
【請求項9】
複数の木片をさらに含む、請求項1又は2に記載の不陸調整材。
【請求項10】
袋体材と、前記袋体材の内部に充填された中詰材とを備え、
前記袋体材が、熱可塑性樹脂と、前記イオン放出性化合物を含み、
前記中詰材が、前記硬化性成分を含む、請求項1又は2に記載の不陸調整材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤と構造物との空隙に配置される不陸調整材に関する。
【背景技術】
【0002】
地山の斜面崩壊や地滑りの発生を防止するために、地盤を補強する方法として、グラウンドアンカー工法が知られている。グラウンドアンカー工法とは、安定地盤に定着させたグラウンドアンカーに緊張力を与え、この緊張力を斜面上に設置した受圧板(アンカーパネル)に伝達させることにより、斜面の安定化を図る工法である。
【0003】
受圧板等の構造物を設置する地盤の表面に凹凸がある場合には、平坦に整地されることが好ましいが、急傾斜や高所での整地作業は容易ではなく、構造物と地盤との間に空隙が発生することがある。このような場合にも、地山の斜面崩壊や地滑りの発生を防止するために、構造物と地盤との密着性を高める方法が求められている。
【0004】
下記の特許文献1には、受圧板と地盤の地表面との間に介装される不陸調整マットが開示されている。上記不陸調整マットは、内部にグラウトを充填可能な第1室を有する第1マット部と、内部にグラウトを充填可能な第2室を有する第2マット部とを備え、上記第2マット部は、上記第1マット部の外側に配置されている。特許文献1には、上記第1マット部の面積が、上記第1マット部及び上記第2マット部の合計の面積100%に対して、50%~70%である旨が記載されている。
【0005】
また、下記の特許文献2には、天然の植物性繊維が互いに絡み合った一定厚みの立体構造を形成している不陸調整用のマットが開示されている。特許文献2には、施工が容易で、植物の植生を損なわないだけでなく、植物の繁茂を助長することができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-177095号公報
【特許文献2】特開2011-219938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の不陸調整材では、地震等の外部応力や、雨水及び地下水等の環境条件の変化等により、構造物と、地盤との間に、再度ひび割れや空隙が発生することがある。
【0008】
また、特許文献2に記載された不陸調整用のマットでは、植物の植栽機能を高めることで、植栽により地盤を強化する効果も期待されるが、その効果は植物に依存するため不安定である。
【0009】
従来、地盤と構造物との密着性を長期的に高めることができる不陸調整材は知られていない。
【0010】
本発明の目的は、地盤と構造物との密着性を長期的に高めることができる不陸調整材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書において、以下の不陸調整材を開示する。
【0012】
項1.地盤と構造物との空隙に配置される不陸調整材であり、前記不陸調整材が、硬化性成分と、陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物とを含み、前記イオン放出性化合物が、難水溶性塩を生成可能である、不陸調整材。
【0013】
項2.前記難水溶性塩が、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、リン酸カルシウム、又は水酸化鉄である、項1に記載の不陸調整材。
【0014】
項3.前記イオン放出性化合物が、陽イオンを放出可能な化合物を含み、前記陽イオンを放出可能な化合物が、ケイ酸カルシウム、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、又は炭酸水素カルシウムである、項1又は2に記載の不陸調整材。
【0015】
項4.前記イオン放出性化合物が、陰イオンを放出可能な化合物を含み、前記陰イオンを放出可能な化合物が、リン酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、又は炭酸水素カルシウムである、項1又は2に記載の不陸調整材。
【0016】
項5.前記イオン放出性化合物の表面が、コーティング剤により被覆されている、項1~4のいずれか1項に記載の不陸調整材。
【0017】
項6.前記硬化性成分が、硬化性化合物、セメントミルク、又はモルタルを含む、項1~5のいずれか1項に記載の不陸調整材。
【0018】
項7.発泡剤をさらに含む、項1~6のいずれか1項に記載の不陸調整材。
【0019】
項8.前記硬化性成分が、ポリオール化合物と、イソシアネート化合物とを含む、項1~7のいずれか1項に記載の不陸調整材。
【0020】
項9.複数の木片をさらに含む、項1~8のいずれか1項に記載の不陸調整材。
【0021】
項10.袋体材と、前記袋体材の内部に充填された中詰材とを備え、前記袋体材が、熱可塑性樹脂と、前記イオン放出性化合物を含み、前記中詰材が、前記硬化性成分を含む、項1~9のいずれか1項に記載の不陸調整材。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る不陸調整材は、地盤と構造物との空隙に配置される不陸調整材であり、上記不陸調整材が、硬化性成分と、陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物とを含み、上記イオン放出性化合物が、難水溶性塩を生成可能である。本発明に係る不陸調整材では、上記の構成が備えられているので、地盤と構造物との密着性を長期的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る不陸調整材を用いた不陸調整体を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る不陸調整材を用いた不陸調整体を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る不陸調整材を用いた不陸調整体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0025】
(不陸調整材)
本発明に係る不陸調整材は、地盤と構造物との空隙に配置される不陸調整材である。本発明に係る不陸調整材は、硬化性成分と、陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物(以下、「イオン放出性化合物」と記載することがある)とを含む。本発明に係る不陸調整材では、上記イオン放出性化合物が、難水溶性塩を生成可能である。
【0026】
なお、本明細書において、「難水溶性塩」とは、難水溶性塩1gを水100g中に入れ、20℃で10分間保持したときに、水に溶ける難水溶性塩の重量が0.1g以下である塩を意味する。
【0027】
本発明に係る不陸調整材では、上記の構成が備えられているので、地盤と構造物との密着性を長期的に高めることができる。より具体的には、本発明に係る不陸調整材を配置した箇所及びその周囲において、上記不陸調整材中の上記イオン放出性化合物がイオンを放出することにより、難水溶性塩が生成され、コンクリーションが形成される。これにより、上記不陸調整材を配置した箇所及びその周囲が緻密化され、地盤と構造物との密着性を長期的に高めることができる。本発明は、地盤の予防保全に寄与する。
【0028】
本発明に係る不陸調整材では、上記不陸調整材を配置した箇所において、上記不陸調整材が、地盤等に付着した水分等と接触した場合には、上記不陸調整材中の上記イオン放出性化合物がイオンを放出することにより、水分等と不陸調整材との接触面において、難水溶性塩を生成可能である。すなわち、本発明に係る不陸調整材は、上記不陸調整材の表面に、難水溶性塩の層を生成可能である。生成した難水溶性塩により、配置した箇所及びその周囲の強度はさらに高められる。なお、上記難水溶性塩は、通常、数カ月~数年をかけて生成すると考えられる。また、生成した難水溶性塩により、受圧板及び構造物と水分とのさらなる接触が効果的に抑えられ、構造物の劣化及び地盤の浸食を効果的に抑えることができる。
【0029】
また、本発明に係る不陸調整材は、配置する箇所(地盤)が乾燥状態であっても、湿潤状態であっても用いることができる。さらに、本発明に係る不陸調整材は、配置する箇所(地盤)から水が流出している場合であっても、用いることができる。
【0030】
上記不陸調整材は、地盤と構造物との空隙に配置されて用いられる。上記不陸調整材は、地盤と構造物との空隙に好適に用いられる。上記不陸調整材は、配置する箇所(地盤)が斜面(法面)である場合にも、用いることができる。
【0031】
上記構造物としては、受圧板、枡、マンホール、ボックスカルバート、U字溝及びプレキャストコンクリートセグメント等が挙げられる。上記不陸調整材は、受圧板用の不陸調整材であることが好ましい。上記不陸調整材は、特に、地盤と受圧板との空隙に好適に用いられる。
【0032】
上記不陸調整材は、硬化性成分を硬化させて用いられることが好ましい。上記不陸調整材における上記硬化性成分は、上記不陸調整材が地盤と構造物との空隙に配置された後に、硬化されることが好ましい。上記不陸調整材における上記硬化性成分を硬化させることにより、上記不陸調整材の硬化物(不陸調整体)が得られる。
【0033】
上記不陸調整体の形状は、特に限定されない。上記不陸調整体の形状は、配置する箇所における構造物の形状によって適宜選択することができる。
【0034】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0035】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る不陸調整材を用いた不陸調整体を模式的に示す断面図である。
【0036】
図1に示す不陸調整体1Aは、上記不陸調整材における上記硬化性成分を硬化することにより得られる。不陸調整体1Aは、地盤と構造物との空隙に配置される不陸調整材の硬化物である。不陸調整体1Aは、硬化性成分の硬化物2Aと、イオン放出性化合物3とを含む。不陸調整体1Aでは、イオン放出性化合物3が、難水溶性塩を生成可能である。
【0037】
図1に示す不陸調整体1Aでは、上記硬化性性成分の硬化物2Aは、後述するウレタン樹脂体であることが好ましく、ウレタン発泡樹脂体であることがより好ましい。すなわち、上記不陸調整材における上記硬化性成分は、後述するポリオール化合物と、イソシアネート化合物とを含むことが好ましく、ポリオール化合物と、イソシアネート化合物と、ウレタン化触媒と、発泡剤とを含むことがより好ましい。この場合には、凹凸への追従性(充填性)を良好にすることができる。
【0038】
なお、不陸調整体1A,1B,及び1Cの表面は、図示の便宜上、簡易的に示しているが、地盤及び構造物の表面の凹凸に沿って適宜変形可能である。
【0039】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る不陸調整材を用いた不陸調整体を模式的に示す断面図である。
【0040】
図2に示す不陸調整体1Bは、上記不陸調整材における上記硬化性成分を硬化することにより得られる。不陸調整体1Bは、地盤と構造物との空隙に配置される不陸調整材の硬化物である。不陸調整体1Bは、硬化性成分の硬化物2Bと、イオン放出性化合物3と、複数の木片4とを含む。不陸調整体1Bでは、イオン放出性化合物3が、難水溶性塩を生成可能である。
【0041】
図2に示す不陸調整体1Bは、複数の木片4を含む。不陸調整体1Bのような不陸調整体を得る観点からは、上記不陸調整材は、複数の木片をさらに含むことが好ましい。上記不陸調整体及び不陸調整材が複数の木片を含む場合には、事前に敷き詰めることにより施工性を良好にすることができる。
【0042】
図2に示す不陸調整体1Bでは、上記硬化性成分の硬化物2Bは、後述する硬化性化合物の硬化物、セメントミルクの硬化物、又はモルタルの硬化物であることが好ましい。すなわち、上記不陸調整材における上記硬化性成分は、後述する硬化性化合物、セメントミルク、又はモルタルを含むことが好ましい。この場合には、アンカーへの反力(圧縮弾性率)を良好にすることができる。
【0043】
上記木片としては、細分化した木材が好適に用いられる。上記木材は、新木材であってもよく、建築廃木材であってもよい。
【0044】
上記木材を細分化する方法としては、スリッター及び切断機等により切断する方法、木材をプレスする方法、及び回転ロールにより木材を圧搾する方法等が挙げられる。
【0045】
上記木片の材質は、特に限定されない。上記木片の材質としては、杉、檜、松、栂、サワラ、樫、楢、樺、ブナ、オーク、ラワン、ヒバ、栗、欅、椎、柳、及び竹等が挙げられる。上記木片は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0046】
耐久性を良好にする観点からは、上記木片は、松を含むことが好ましい。
【0047】
上記木片の形状は、特に限定されない。上記木片は、球状であってもよく、球状以外の形状であってもよく、扁平状であってもよい。
【0048】
マットの剛性を良好にする観点からは、上記木片の長径は、好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上、さらに好ましくは20mm以上であり、好ましくは100mm以下、より好ましくは80mm以下、さらに好ましくは60mm以下である。なお、上記木片の長径とは、上記木片が球状である場合には、上記木片の粒子径を示す。
【0049】
凹凸への追従性を良好にする観点からは、上記木片の短径は、好ましくは1mm以上、より好ましくは5mm以上、さらに好ましくは10mm以上であり、好ましくは60mm以下、より好ましくは40mm以下、さらに好ましくは20mm以下である。
【0050】
マットの均一性を良好にする観点からは、上記木片の厚みは、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1mm以上であり、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは2mm以下である。
【0051】
マットの均一性を良好にする観点からは、上記木片の体積は、好ましくは0.05cm3以上、より好ましくは0.1cm3以上であり、好ましくは5cm3以下、より好ましくは1cm3以下である。
【0052】
図2に示す不陸調整体1Bのような不陸調整体を得る観点からは、上記不陸調整材100重量%中、上記木片の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上であり、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、さらに好ましくは85重量%以下である。上記木片の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0053】
図2に示す不陸調整体1Bのような不陸調整体を得る観点からは、上記不陸調整材における上記硬化性成分100重量部に対して、上記木片の含有量は、好ましくは100重量部以上、より好ましくは200重量部以上、さらに好ましくは300重量部以上であり、好ましくは900重量部以下、より好ましくは700重量部以下、さらに好ましくは500重量部以下である。上記木片の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0054】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る不陸調整材を用いた不陸調整体を模式的に示す断面図である。
【0055】
図3に示す不陸調整体1Cは、上記不陸調整材における上記硬化性成分を硬化することにより得られる。不陸調整体1Cは、地盤と構造物との空隙に配置される不陸調整材の硬化物である。不陸調整体1Cは、硬化性成分の硬化物2Cと、イオン放出性化合物3と、熱可塑性樹脂5とを含む。不陸調整体1Cでは、イオン放出性化合物3が、難水溶性塩を生成可能である。
【0056】
図3に示す不陸調整体1Cは、袋体材6と、袋体材6の内部に配置された中詰部7とを備える。不陸調整体1Cでは、袋体材6が、熱可塑性樹脂5と、イオン放出性化合物3とを含む。不陸調整体1Cでは、中詰部7が、硬化性成分の硬化物2Cを含む。
【0057】
不陸調整体1Cのような不陸調整体を得る観点からは、上記不陸調整材は、袋体材と、上記袋体材の内部に充填された中詰材(中詰部)とを備え、上記袋体材が、熱可塑性樹脂と、上記イオン放出性化合物とを含み、上記中詰材が、上記硬化性成分を含むことが好ましい。この場合には、施工後(設置硬化後)の形状安定を良好にすることができる。
【0058】
図3に示す不陸調整体1Cでは、上記硬化性性成分の硬化物2Cは、後述するセメントミルクの硬化物、又はモルタルの硬化物であることが好ましい。すなわち、上記不陸調整材における上記硬化性成分は、後述するセメントミルク、又はモルタルを含むことがより好ましい。この場合には、不陸調整材の硬さや反力を良好にすることができる。
【0059】
上記熱可塑性樹脂としては、アルキド樹脂、変性アルキド樹脂、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、エステルガム、ロジン、石油樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂、塩化ゴム、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及びウレタン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0060】
不陸面への表面の追従性を良好にする観点からは、上記熱可塑性樹脂は、軟質系樹脂(エチレン酢ビ樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、軟質ウレタン樹脂又はポリエチレン樹脂を含むことが好ましく、低密度ポリエチレン樹脂を含むことがより好ましい。低密度ポリエチレン樹脂の分子量としては重量平均分子量数万~三十万程度が望ましい。
【0061】
上記袋体材は、上記袋体材の内部に上記中詰材を注入するための注入口を有することが好ましい。
【0062】
以下、本発明に係る不陸調整材の詳細などを説明する。なお、以下の説明において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」とを示す。「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」とを示す。
【0063】
<硬化性成分>
上記硬化性成分は、硬化可能な成分である。上記硬化性成分は、23℃で液状であってもよく、23℃でペースト状であってもよく、23℃で半固形状であってもよい。上記硬化性成分としては、硬化性化合物、硬化剤、水硬性無機物質、及び気硬性無機物質等が挙げられる。上記水硬性無機物質としては、セメントミルク、モルタル、及びコンクリート等が挙げられる。上記気硬性無機物質としては、石灰、及び石膏等が挙げられる。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記硬化性成分は、硬化性化合物、セメントミルク、又はモルタルを含むことが好ましい。上記硬化性成分は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
[硬化性化合物]
上記硬化性成分は、上記硬化性化合物を含むことが好ましい。上記硬化性成分は、上記硬化性化合物と、上記硬化剤とを含むことが好ましい。上記硬化性成分は、上記硬化性化合物と上記硬化剤との混合物であることが好ましい。上記硬化性化合物、及び上記硬化剤はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
上記硬化性成分は、樹脂と溶剤とを混合した樹脂含有溶液を加熱乾燥して、溶剤を除去して得られる23℃で固体の樹脂であってもよく、モノマー溶液又はオリゴマー溶液を重合して得られる23℃で固体のポリマーであってもよく、2種以上のモノマー又は2種以上のオリゴマーを反応させて得られる23℃で固体のポリマーであってもよい。
【0066】
上記不陸調整材は、硬化性化合物を含むことが好ましい。上記不陸調整材は、上記硬化性成分として、硬化性化合物を含むことが好ましい。上記硬化性化合物としては、硬化剤との混合により硬化可能な硬化性化合物、加熱により硬化可能な熱硬化性化合物、及び光の照射により硬化可能な光硬化性化合物等が挙げられる。上記不陸調整材を地盤と構造物との空隙に充填してから硬化させる観点から、上記硬化性化合物は、上記硬化剤との混合により硬化可能な硬化性化合物であることが好ましい。上記硬化剤との混合により硬化可能な硬化性化合物は、熱硬化性化合物であってもよく、熱硬化性化合物でなくてもよい。上記硬化剤との混合により硬化可能な硬化性化合物は、例えば、硬化剤との混合により、0℃以下で硬化可能な硬化性化合物であってもよい。
【0067】
上記硬化性化合物としては、エポキシ化合物、ポリオール化合物、シリコーン化合物、フェノール化合物、ビニルエステル化合物、及びナフトキサジン化合物等が挙げられる。発泡性を良好にする観点から、上記硬化性化合物は、ポリオール化合物であることが好ましい。
【0068】
上記ポリオール化合物としては、ポリラクトンポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。上記ポリオール化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
流動性を良好にする観点から、上記ポリオール化合物は、ポリエステルポリオール、又はポリエーテルポリオールであることが好ましく、ポリエーテルポリオールであることがより好ましい。
【0070】
上記ポリオール化合物の23℃での粘度は、好ましくは100mPa・s以上、より好ましくは200mPa・s以上であり、好ましくは1500mPa・s以下、より好ましくは1000mPa・s以下である。上記ポリオール化合物の23℃での粘度が、上記下限以上及び上限以下であると、不陸調整材の硬化物(不陸調整体)の曲げ弾性率を高めることができる。
【0071】
上記ポリオール化合物の23℃での粘度は、例えば、ブルックフィールド型粘度計を用いて測定することができる。
【0072】
上記ポリオール化合物の硬化剤としては、イソシアネート化合物等が挙げられる。反応性を良好にする観点から、上記硬化性成分は、ポリオール化合物と、イソシアネート化合物とを含むことが好ましい。上記ポリオール化合物と上記イソシアネート化合物とを硬化反応させることにより、ウレタン樹脂を得ることができる。上記硬化性成分の硬化物は、ウレタン樹脂を含むことが好ましい。
【0073】
上記イソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物であることが好ましい。上記ポリイソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物、及び脂肪族ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。上記ポリイソシアネート化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0074】
上記芳香族ポリイソシアネート化合物としては、フェニレンジイソシアネート、トリレ
ンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
【0075】
上記脂環式ポリイソシアネート化合物としては、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0076】
上記脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0077】
入手が容易であり、利便性に優れることから、上記イソシアネート化合物は、ジフェニルメタンジイソシアネートであることが好ましい。
【0078】
上記ポリオール化合物と上記イソシアネート化合物とは、ウレタン結合を効率的に形成するように、適宜の配合量で用いることができる。
【0079】
上記イソシアネート化合物が有する全イソシアネート基の数の、上記ポリオール化合物が有する全活性水酸基の数に対する割合(イソシアネート化合物が有する全イソシアネート基の数×100/ポリオール化合物が有する全活性水酸基の数)を、イソシアネートインデックスとする。上記イソシアネートインデックスは、好ましくは120以上、より好ましくは200以上であり、好ましくは1000以下、より好ましくは600以下である。上記イソシアネートインデックスが上記下限以上であると、高い難燃性を示す骨格であるイソシアヌレート環がより一層効果的に形成されることから、不陸調整材及び不陸調整体の難燃性を高めることができる。また、上記イソシアネートインデックスが上記上限以下であると、イソシアヌレート環の形成を効果的に停止させることができることから、不陸調整体の曲げ弾性率を高めることができる。また、上記イソシアネートインデックスが上記下限以上及び上記上限以下であると、上記ポリオール化合物と上記イソシアネート化合物との反応効率を高めることができる。また、上記イソシアネートインデックスが上記下限以上であると、未反応のポリオール化合物又は未反応のイソシアネート化合物が少なくなり、良好な曲げ弾性率を有する不陸調整体が形成されやすい。
【0080】
上記不陸調整材は、触媒を含むことが好ましい。上記触媒としては、ウレタン化触媒、及び三量化触媒等が挙げられる。上記触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0081】
上記不陸調整材は、ウレタン化触媒を含むことが好ましい。上記ウレタン化触媒は、上記ポリオール化合物の水酸基と、上記イソシアネート化合物のイソシアネート基との反応を促進させ、ウレタン結合の形成を促進する。
【0082】
上記ウレタン化触媒としては、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫ジウラレート及びジブチルビス(オレオイルオキシ)スタンナン等の有機錫化合物、トリエチルアミン、N-メチルモルホリンビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、及びN,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン等の第3級アミン化合物、N,N,N’-トリメチルアミノエチル-エタノールアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N-メチル,N’-ジメチルアミノエチルピペラジン、並びにイミダゾール環中の第2級アミン官能基がシアノエチル基で置換されたイミダゾール化合物等が挙げられる。上記ウレタン化触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0083】
上記ウレタン化触媒は、上記ポリオール化合物と上記イソシアネート化合物とが良好に反応するように、適宜の含有量で用いることができる。上記ポリオール化合物100重量部に対して、上記ウレタン化触媒の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.02重量部以上、好ましくは1.0重量部以下、より好ましくは0.8重量部以下である。上記ウレタン化触媒の含有量が上記下限以上であると、ウレタン化反応が効果的に進行する。上記ウレタン化触媒の含有量が上記上限以下であると、上記イソシアネート化合物のイソシアネート基の三量化が阻害されにくくなる。
【0084】
上記三量化触媒は、イソシアネート化合物のイソシアネート基の三量化反応を促進させ、イソシアヌレート環の形成を促進する。さらに、上記三量化触媒は、樹脂成形体の燃焼時の膨張を抑制する。
【0085】
上記三量化触媒としては、芳香族化合物、カルボン酸のアルカリ金属塩、カルボン酸の4級アンモニウム塩、及び4級アンモニウム塩/エチレングリコール混合物等が挙げられる。上記芳香族化合物としては、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、及び2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等が挙げられる。上記カルボン酸のアルカリ金属塩としては、酢酸カリウム、及び2-エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。上記三量化触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0086】
上記三量化触媒は、三量化反応が良好に促進されるように、適宜の含有量で用いることができる。上記ポリオール化合物100重量部に対して、上記三量化触媒の含有量は好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、好ましくは1.0重量部以下、好ましくは0.8重量部以下である。上記三量化触媒の含有量が上記下限以上であると、ウレタン樹脂体の形成時にウレタン樹脂体の膨張を抑制しやすい。上記三量化触媒の含有量が上記上限以下であると、ウレタン結合の生成が阻害されにくくなる。
【0087】
不陸面凹凸への追従性、充填性を良好にする観点からは、上記硬化性成分の硬化物は、発泡していることが好ましく、発泡樹脂体であることが好ましく、ウレタン発泡樹脂体であることがより好ましい。現場での発泡性(施工性)を良好にする観点からは、上記不陸調整体は、発泡樹脂体を含むことが好ましく、ウレタン発泡樹脂体を含むことが好ましい。
【0088】
発泡樹脂体を得る観点から、上記不陸調整材は、発泡剤をさらに含むことが好ましい。発泡剤により上記不陸調整材を発泡させることで、発泡樹脂体を得ることができる。結果として、均一な発泡圧力が得られ、不陸面凹凸への追従性、及び充填性を良好にすることができる。
【0089】
上記発泡剤としては、水、及び有機ハロゲン化合物等が挙げられる。入手が容易であり、利便性に優れることから、上記発泡剤は水であることが好ましい。水はイソシアネート化合物と反応してCO2を発生させることにより発泡剤として作用する。上記発泡剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0090】
上記有機ハロゲン化合物としては、有機塩素化合物、有機フッ素化合物、有機臭素化合物、及び有機ヨウ素化合物等が挙げられる。上記有機ハロゲン化合物は、水素原子の全てがハロゲン原子で置換された有機ハロゲン化合物であってもよく、水素原子の一部がハロゲン原子で置換された有機ハロゲン化合物であってもよい。発泡性を良好にし、不陸調整体の熱伝導率を長期にわたり低く維持する観点からは、上記有機ハロゲン化合物は、有機塩素化合物、又は有機フッ素化合物であることが好ましい。
【0091】
上記有機塩素化合物としては、飽和有機塩素化合物、及び不飽和有機塩素化合物等が挙げられる。上記飽和有機塩素化合物としては、ジクロロエタン、プロピルクロライド、イソプロピルクロライド、ブチルクロライド、イソブチルクロライド、ペンチルクロライド、及びイソペンチルクロライド等が挙げられる。発泡性を良好にし、不陸調整体の熱伝導率を長期にわたり低く維持する観点からは、上記有機塩素化合物は、飽和有機塩素化合物であることが好ましく、炭素数が2~5の飽和有機塩素化合物であることがより好ましい。
【0092】
上記有機フッ素化合物としては、飽和有機フッ素化合物、及び不飽和有機フッ素化合物等が挙げられる。
【0093】
発泡性を良好にし、不陸調整体の熱伝導率を長期にわたり低く維持する観点からは、上記有機ハロゲン化合物は、ヒドロクロロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロカーボン、又はハイドロフルオロオレフィンであることが好ましい。
【0094】
発泡倍率は、好ましくは1.5以上であり、好ましくは10.0未満である。上記発泡倍率が上記下限以上であると、発泡樹脂体の重量が小さくなり、発泡樹脂体の取り扱いが容易になる。上記発泡倍率が上記上限以下であると、発泡樹脂体の強度の低下が抑えられる。
【0095】
なお、上記不陸調整材は、本発明の目的を阻害しない範囲で、整泡剤等を含んでいてもよい。上記整泡剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0096】
上記整泡剤とは、気泡の粗大化、不均一化を防ぎ、気泡を安定かつ良好に形成させることができる物質である。
【0097】
上記整泡剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン整泡剤、及びオルガノポリシロキサン等のシリコーン整泡剤等が挙げられる。
【0098】
上記整泡剤は、気泡を安定かつ良好に形成するように、適宜の含有量で用いることができる。気泡を安定かつ良好に形成する観点からは、上記ポリオール化合物100重量部に対して、上記整泡剤の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上、さらに好ましくは0.2重量部以上、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下、さらに好ましくは1重量部以下である。
【0099】
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、水添加ビスフェノールA型エポキシ化合物、ダイマー酸変性ビスフェノールA型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ダイマー酸型エポキシ化合物、トリエポキシプロピルイソシアヌレート(トリグリシジルイソシアヌレート)、ヒダントインエポキシ化合物、脂肪族系エポキシ化合物、ジシクロ環型エポキシ化合物、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、及びグリシジルアミン型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0100】
上記エポキシ化合物の硬化剤(エポキシ硬化剤)としては、アミン化合物、イミダゾール化合物、アミド化合物、シアノ化合物、及び酸無水物等が挙げられる。上記アミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、それらのアミンアダクト、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。上記イミダゾール化合物としては、メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、エチルイミダゾール、イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、ウンデシルイミダゾール、ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、及び2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。上記アミド化合物としては、ポリアミド等が挙げられる。上記シアノ化合物としては、ジシアンジアミド等が挙げられる。上記酸無水物としては、無水マレイン酸及びその化合物、無水フタル酸及びその化合物等が挙げられる。
【0101】
上記エポキシ化合物と上記エポキシ硬化剤とを反応させることにより、エポキシ樹脂の硬化物を得ることができる。
【0102】
本発明の効果をより一層効果的に発揮させる観点からは、上記エポキシ化合物は、ビスフェノールA型エポキシ化合物、又はビスフェノールF型エポキシ化合物であることが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮させる観点からは、上記エポキシ硬化剤は、アミン系硬化剤(アミン化合物)、又は酸系硬化剤であることが好ましい。
【0103】
上記シリコーン化合物としては、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。上記オルガノポリシロキサンの主鎖は、ジオルガノシロキサンの重合体が一般的であるが、一部枝分かれした構造又は環状の構造を有していてもよい。上記オルガノポリシロキサンが有するアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、ペテニル基、へキセニル基、オクテニル基、及びシクロへキセニル基等が挙げられる。
【0104】
上記シリコーン化合物の硬化剤(架橋剤)としては、SiH基を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、フェニルメチルハイドロジェンポリシロキサン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、及び両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0105】
上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール、及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
【0106】
上記フェノール化合物の硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミン、及びパラホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0107】
上記ビニルエステル化合物としては、エポキシ化合物と不飽和一塩基酸との反応物等が挙げられる。上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、ノボラック型ポリグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、並びに1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族系グリシジルエーテル類等が挙げられる。上記不飽和一塩基酸としては、アクリル酸及びメタクリル酸等が挙げられる。上記エポキシ化合物と、上記アクリル酸及び上記メタクリル酸との反応物としては、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0108】
上記ビニルエステル化合物の硬化剤としては、有機過酸化物等が挙げられる。上記有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、パーベンゾエート、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、パーオキシエステル、及びパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0109】
上記硬化性成分が上記ビニルエステル化合物を含む場合に、該硬化性成分は、ラジカル重合性不飽和単量体を含んでいてもよい。上記ラジカル重合性不飽和単量体としては、スチレンモノマー、スチレンのα-,o-,m-,p-アルキル,ニトロ,シアノ,アミド,エステル誘導体、クロルスチレン、ビニルトルエン、及びジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー、ブタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、イソプレン、及びクロロプレン等のジエン類;(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-i-プロピル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸アミド及び(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド;(メタ)アクリル酸アニリド等のビニル化合物;シトラコン酸ジエチル等の不飽和ジカルボン酸ジエステル;N-フェニルマレイミド等のモノマレイミド化合物;N-(メタ)アクリロイルフタルイミドなどが挙げられる。
【0110】
[セメントミルク、及びモルタル]
上記硬化性成分は、セメントミルク、又はモルタルを含むことが好ましい。
【0111】
なお、本明細書において、「セメントミルク」とは、セメントと水(混錬用水)との混錬物を意味する。本明細書において、「セメントミルク」は、細骨材及び粗骨材を含まない。本明細書において、「モルタル」とは、セメントと細骨材と水(混錬用水)との混錬物を意味する。本明細書において、「モルタル」は、粗骨材を含まない。本明細書において、「コンクリート」とは、セメントと細骨材と粗骨材と水(混錬用水)との混錬物を意味する。本明細書において、「セメント」とは、石灰石、粘土、珪石、及び酸化鉄原料等を主原料とし、水との化学反応で硬化可能な粉体を意味する。
【0112】
上記セメントミルク、及び上記モルタルに含まれるセメントは、特に限定されない。上記セメントミルク、及び上記モルタルに含まれるセメントとしては、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、及びフライアッシュセメント等が挙げられる。上記ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメントであってもよく、特殊ポルトランドセメント(早強ポルトランドセメント)であってもよい。
【0113】
上記細骨材としては、人工骨材、及び天然骨材等が挙げられる。上記人工骨材としては、高炉スラグ、及びフライアッシュ等が挙げられる。上記天然骨材としては、砂等が挙げられる。材料コストを良好にする観点からは、上記細骨材は、砂であることが好ましい。
【0114】
上記細骨材の平均粒子径は、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.1mm以上であり、好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下である。上記細骨材の平均粒子径が上記下限以上であると、不陸調整体の強度を高めることができる。上記細骨材の平均粒子径が上記上限以下であると、上記細骨材が沈下することを抑制し、モルタルの粘度を良好にすることができる。上記細骨材の平均粒子径は、数平均粒子径であることが好ましい。
【0115】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記セメントミルク100重量%中、セメントの含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下である。
【0116】
上記セメントミルクにおいて、セメント100重量部に対して、水(混錬用水)の含有量は、好ましくは11重量部以上、より好ましくは25重量部以上、さらに好ましくは35重量部以上であり、好ましくは125重量部以下、より好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは66重量部以下である。上記水(混錬用水)の含有量が上記下限以上であると、上記セメントと水(混錬用水)とを良好に反応させることができ、不陸調整体の強度を高めることができる。上記水(混錬用水)の含有量が上記上限以下であると、上記セメントと水(混錬用水)とを均一に混合することができ、不陸調整体の強度を高めることができる。
【0117】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記モルタル100重量%中、セメントの含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上であり、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下である。
【0118】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記モルタル100重量%中、細骨材の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下である。
【0119】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記モルタルにおいて、セメント100重量部に対して、細骨材の含有量は、好ましくは11重量部以上、より好ましくは25重量部以上、さらに好ましくは40重量部以上であり、好ましくは900重量部以下、より好ましくは400重量部以下、さらに好ましくは250重量部以下である。
【0120】
上記モルタルにおいて、セメント100重量部に対して、水(混錬用水)の含有量は、好ましくは20重量部以上、より好ましくは30重量部以上、さらに好ましくは40重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは60重量部以下である。上記水(混錬用水)の含有量が上記下限以上であると、上記セメントと水(混錬用水)とを良好に反応させることができ、不陸調整体の強度を高めることができる。上記水(混錬用水)の含有量が上記上限以下であると、上記セメントと水(混錬用水)とを均一に混合することができ、不陸調整体の強度を高めることができる。
【0121】
上記不陸調整材100重量%中、上記セメントミルク、又は上記モルタルの含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上であり、好ましくは99.9重量%以下、より好ましくは99.5重量%以下、さらに好ましくは99重量%以下である。上記セメントミルク、又は上記モルタルの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0122】
図1に示す不陸調整体1Aのような不陸調整体を得る場合には、上記不陸調整材100重量%中、上記セメントミルク、又は上記モルタルの含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。
図1に示す不陸調整体1Aのような不陸調整体を得る場合には、上記不陸調整材100重量%中、上記セメントミルク、又は上記モルタルの含有量は、好ましくは99.9重量%以下、より好ましくは99.5重量%以下、さらに好ましくは99重量%以下である。上記セメントミルク、又は上記モルタルの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0123】
図2に示す不陸調整体1Bのような不陸調整体を得る場合には、上記不陸調整材100重量%中、上記セメントミルク、又は上記モルタルの含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上である。
図2に示す不陸調整体1Bのような不陸調整体を得る場合には、上記不陸調整材100重量%中、上記セメントミルク、又は上記モルタルの含有量は、好ましくは99重量%以下、より好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下である。上記セメントミルク、又は上記モルタルの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0124】
図3に示す不陸調整体1Cのような不陸調整体を得る場合には、上記中詰材100重量%中、上記セメントミルク、又は上記モルタルの含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。
図3に示す不陸調整体1Cのような不陸調整体を得る場合には、上記中詰材100重量%中、上記セメントミルク、又は上記モルタルの含有量は、好ましくは99.9重量%以下、より好ましくは99.5重量%以下、さらに好ましくは99重量%以下である。上記セメントミルク、又は上記モルタルの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0125】
上記セメントミルク又は上記モルタルが、ポルトランドセメントを含み、かつ、上記セメントミルク又は上記モルタルを硬化させる際に、ホットプレス等の加熱工程を行う場合には、上記セメントミルク、又は上記モルタルは、熱硬化性成分と併用されることが好ましい。この場合には、上記ポルトランドセメントと上記熱硬化成分とが水和したときにエトリンガイトを生成し、上記セメントミルク又は上記モルタルの硬化反応を促進させることで、硬化時間を短縮することができる。
【0126】
上記熱硬化性成分としては、アルミナセメント、無水石膏、及び半水石膏等が挙げられる。上記熱硬化性成分は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0127】
<イオン放出性化合物>
上記不陸調整材は、陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物(イオン放出性化合物)を含む。上記イオン放出性化合物は、難水溶性塩を生成可能である。
【0128】
上記イオン放出性化合物は、陽イオンを放出可能な化合物であってもよく、陰イオンを放出可能な化合物であってもよく、陽イオンと陰イオンとの双方を放出可能な化合物であってもよく、陽イオンを放出可能な化合物と陰イオンを放出可能な化合物との混合物であってもよい。上記イオン放出性化合物は、陽イオンを放出可能な化合物を含んでいてもよく、陰イオンを放出可能な化合物を含んでいてもよく、陽イオンを放出可能な化合物と陰イオンを放出可能な化合物とを含んでいてもよい。上記イオン放出性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0129】
上記イオン放出性化合物は、地盤等に付着した水分等との接触により、難水溶性塩を生成することが好ましい。上記不陸調整材を配置した箇所に至った水又は湿気により、上記イオン放出性化合物より陽イオン又は陰イオンが放出されることが好ましい。具体的には、上記イオン放出性化合物が陽イオンを放出可能な化合物である場合には、上記イオン放出性化合物から放出された陽イオンと、水分等に溶解した陰イオンとが化学反応し、難水溶性塩が形成されることが好ましい。上記イオン放出性化合物が陰イオンを放出可能な化合物である場合には、上記イオン放出性化合物から放出された陰イオンと、水分等に溶解した陽イオンとが化学反応し、難水溶性塩が形成されることが好ましい。また、上記イオン放出性化合物が、陽イオンと陰イオンとの双方を放出可能な化合物、又は陽イオンを放出可能な化合物と陰イオンを放出可能な化合物との混合物である場合には、上記イオン放出性化合物から放出された陽イオンと陰イオンとが、水分等を媒体に移動し、出会ったポイントで難水溶性塩が形成されることが好ましい。
【0130】
上記イオン放出性化合物は、無機塩であってもよく、イオン交換樹脂であってもよく、イオン錯体であってもよい。
【0131】
上記イオン放出性化合物としては、ケイ酸カルシウム、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、リン酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。上記イオン放出性化合物は、これらのイオン放出性化合物であることが好ましい。これらのイオン放出性化合物は、難水溶性塩をより一層効果的に生成可能である。
【0132】
上記陽イオンを放出可能な化合物としては、ケイ酸カルシウム、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、及び炭酸水素カルシウム等が挙げられる。上記陽イオンを放出可能な化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0133】
上記陽イオンを放出可能な化合物は、ケイ酸カルシウム、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、又は炭酸水素カルシウムであることが好ましい。上記陽イオンを放出可能な化合物が上記の好ましい化合物であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記陽イオンを放出可能な化合物は、酸化カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、又は乳酸バリウムであることがより好ましく、乳酸カルシウムであることがさらに好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記陽イオンを放出可能な化合物は、カルシウムイオンを放出可能な化合物であることが好ましく、有機酸カルシウム塩であることがより好ましい。上記有機酸カルシウム塩としては、酢酸カルシウム、及び乳酸カルシウム等が挙げられる。
【0134】
上記陰イオンを放出可能な化合物としては、リン酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カルシウム等が挙げられる。上記陰イオンを放出可能な化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0135】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記陰イオンを放出可能な化合物は、リン酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、又は炭酸水素カルシウムであることが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記陰イオンを放出可能な化合物は、リン酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムであることがより好ましく、炭酸水素ナトリウムであることがさらに好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記陰イオンを放出可能な化合物は、炭酸水素イオン(重炭酸イオン)又は炭酸イオンを放出可能な化合物であることが好ましい。
【0136】
上記陽イオンと陰イオンとの双方を放出可能な化合物としては、炭酸水素カルシウム等が挙げられる。
【0137】
難水溶性塩をより一層良好に生成する観点からは、上記イオン放出性化合物は、陽イオンを放出可能な化合物と陰イオンを放出可能な化合物との混合物であることが好ましく、カルシウムイオンを放出可能な化合物と炭酸水素イオン又は炭酸イオンを放出可能な化合物との混合物であることがより好ましい。
【0138】
上記難水溶性塩としては、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、及び水酸化鉄等が挙げられる。
【0139】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記難水溶性塩は、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、リン酸カルシウム、又は水酸化鉄であることが好ましく、炭酸カルシウムであることがより好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記イオン放出性化合物は、難水溶性塩として、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、リン酸カルシウム、又は水酸化鉄を生成可能であることが好ましく、炭酸カルシウムを生成可能であることがより好ましい。
【0140】
上記イオン放出性化合物は、粒子状であってもよい。上記イオン放出性化合物は、球状であってもよく、球状以外の形状であってもよく、扁平状であってもよい。上記イオン放出性化合物は、球状であることが好ましい。
【0141】
上記イオン放出性化合物の粒子径は、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは5.0μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは120μm以下である。上記イオン放出性化合物の粒子径が上記下限以上であると、不陸調整材中(
図3に示す不陸調整体1Cのような不陸調整体を得る場合には、上記袋体材中)での分散性を高めることができる。また、上記イオン放出性化合物の粒子径が上記下限以上であると、上記イオン放出性化合物が後述するコーティング剤により良好に被覆され、不陸調整材中(
図3に示す不陸調整体1Cのような不陸調整体を得る場合には、上記袋体材中)での分散性を高めることができる。上記イオン放出性化合物の粒子径が上記上限以下であると、イオン放出性化合物を含む組成物の粘度を良好にすることができる。
【0142】
上記イオン放出性化合物の粒子径は、平均粒子径であることが好ましい。上記平均粒子径は、数平均粒子径を示す。上記イオン放出性化合物の平均粒子径は、任意のイオン放出性化合物50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0143】
上記不陸調整材では、上記イオン放出性化合物の表面が、コーティング剤により被覆されていてもよい。上記イオン放出性化合物は、マイクロカプセルの内包物であってもよい。上記イオン放出性化合物が無機塩である場合に、上記不陸調整材では、上記イオン放出性化合物の表面が、コーティング剤により被覆されていることが好ましい。特に、また、上記イオン放出性化合物が無機塩である場合に、上記不陸調整材は、上記イオン放出性化合物を内包物として含有するマイクロカプセルを含むことが好ましい。上記イオン放出性化合物の表面がコーティング剤により被覆されているか、又は、上記イオン放出性化合物がマイクロカプセルの内包物であると、上記イオン放出性化合物から陽イオン又は陰イオンが放出される時期及び量を制御することができる。
【0144】
上記コーティング剤により被覆されたイオン放出性化合物は、水又は湿気等の水分が不陸調整材と接触し、該水分が上記コーティング剤の内部に拡散浸入したときに、陽イオン又は陰イオンを放出可能であることが好ましい。上記コーティング剤により被覆されたイオン放出性化合物は、上記コーティング剤中の空隙より陽イオン又は陰イオンを放出可能であってもよい。上記コーティング剤により被覆されたイオン放出性化合物は、上記コーティング剤の内部に拡散し、陽イオン又は陰イオンを放出可能であってもよい。これらの場合には、イオン放出性化合物から陽イオン又は陰イオンが放出される時期及び量をより一層良好に制御することができる。
【0145】
上記マイクロカプセルは、上記イオン放出性化合物を放出可能であることが好ましい。上記マイクロカプセルは、水又は湿気等の水分と接触したときに、マイクロカプセルを構成する膜が崩壊することが好ましい。この場合には、イオン放出性化合物から陽イオン又は陰イオンが放出される時期及び量をより一層良好に制御することができる。
【0146】
上記マイクロカプセルを構成する膜の材料及び上記イオン放出性化合物の表面を被覆するためのコーティング剤の材料は、上記イオン放出性化合物の種類により適宜選択することができる。上記マイクロカプセルを構成する膜の材料及び上記イオン放出性化合物の表面を被覆するためのコーティング剤の材料は、カップリング剤又は樹脂を含むことが好ましい。この場合には、不陸調整材中(
図3に示す不陸調整体1Cのような不陸調整体を得る場合には、上記袋体材中)での上記イオン放出性化合物の分散性を高め、陽イオン又は陰イオンを放出する時期及び量を良好に制御することができる。また、マイクロカプセルを構成する膜の厚みを均一にすることができ、上記イオン放出性化合物の表面をコーティング剤により均一に被覆することができる。
【0147】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、及びチタンカップリング剤等が挙げられる。
【0148】
上記樹脂としては、水溶性樹脂、熱可塑性樹脂、及び硬化性樹脂等が挙げられる。上記樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記硬化性成分が樹脂を含む場合には、上記硬化性成分に含まれる樹脂と、上記コーティング剤の材料に含まれる樹脂とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0149】
上記水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸樹脂(PLA樹脂)、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、及びメチルセルロース等が挙げられる。
【0150】
上記熱可塑性樹脂としては、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)等が挙げられる。
【0151】
上記ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体(EPDM)、イソブチレン-イソプレン共重合体、ポリスチレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及びエチレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0152】
上記硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、及び湿気硬化性樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0153】
上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、及びポリウレア樹脂等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂は、熱硬化剤と併用されてもよい。
【0154】
上記光硬化性樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、及びシリコーン樹脂等が挙げられる。上記光硬化性樹脂は、光重合開始剤と併用されてもよい。
【0155】
上記湿気硬化性樹脂としては、湿気硬化性ウレタン樹脂、及び加水分解性シリル基含有樹脂等が挙げられる。
【0156】
イオン放出性化合物から陽イオン又は陰イオンが放出される時期及び量をより一層良好に制御する観点からは、上記コーティング剤の材料に含まれる樹脂は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、ポリオレフィン樹脂を含むことがより好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含むことがさらに好ましい。イオン放出性化合物から陽イオン又は陰イオンが放出される時期及び量をより一層良好に制御する観点からは、上記コーティング剤の材料に含まれる樹脂は、エチレン-酢酸ビニル共重合体であることが特に好ましい。
【0157】
上記マイクロカプセルを構成する膜の厚み及び上記コーティング剤による被覆層の厚みは、特に限定されない。イオン放出性化合物から陽イオン又は陰イオンが放出される時期及び量をより一層良好に制御する観点からは、上記マイクロカプセルを構成する膜の厚み及び上記コーティング剤の被覆層の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは200μm以下である。
【0158】
上記不陸調整材100重量%中、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは45重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。上記イオン放出性化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、地盤と構造物との密着性を長期的に高めることができる。
【0159】
図1に示す不陸調整体1Aのような不陸調整体を得る場合には、上記不陸調整材100重量%中、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上である。
図1に示す不陸調整体1Aのような不陸調整体を得る場合には、上記不陸調整材100重量%中、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは45重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。上記イオン放出性化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、地盤と構造物との密着性を長期的に高めることができる。
【0160】
図1に示す不陸調整体1Aのような不陸調整体を得る場合には、上記硬化性成分100重量部に対して、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは3重量部以上、より好ましくは5重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上、特に好ましくは20重量部以上である。
図1に示す不陸調整体1Aのような不陸調整体を得る場合には、上記硬化性成分100重量部に対して、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは70重量部以下である。上記イオン放出性化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、地盤と構造物との密着性を長期的に高めることができる。
【0161】
図1に示す不陸調整体1Aのような不陸調整体を得る場合には、上記不陸調整材100重量%中、上記イオン放出性化合物及び上記コーティング剤の合計の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。上記イオン放出性化合物及び上記コーティング剤の合計の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、地盤と構造物との密着性を長期的に高めることができる。上記イオン放出性化合物及び上記コーティング剤の合計の含有量が上記上限以下であると、上記不陸調整材の粘度を良好にすることができる。
【0162】
図2に示す不陸調整体1Bのような不陸調整体を得る場合には、上記不陸調整材100重量%中、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上である。
図2に示す不陸調整体1Bのような不陸調整体を得る場合には、上記不陸調整材100重量%中、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは45重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。上記イオン放出性化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、地盤と構造物との密着性を長期的に高めることができる。
【0163】
図2に示す不陸調整体1Bのような不陸調整体を得る場合には、上記硬化性成分100重量部に対して、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは3重量部以上、より好ましくは5重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上、特に好ましくは20重量部以上である。
図2に示す不陸調整体1Bのような不陸調整体を得る場合には、上記硬化性成分100重量部に対して、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは70重量部以下である。上記イオン放出性化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、地盤と構造物との密着性を長期的に高めることができる。
【0164】
図2に示す不陸調整体1Bのような不陸調整体を得る場合には、上記不陸調整材100重量%中、上記イオン放出性化合物及び上記コーティング剤の合計の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。上記イオン放出性化合物及び上記コーティング剤の合計の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、地盤と構造物との密着性を長期的に高めることができる。上記イオン放出性化合物及び上記コーティング剤の合計の含有量が上記上限以下であると、上記不陸調整材の粘度を良好にすることができる。
【0165】
図3に示す不陸調整体1Cのような不陸調整体を得る場合には、上記不陸調整材100重量%中、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上、特に好ましくは2重量%以上である。
図3に示す不陸調整体1Cのような不陸調整体を得る場合には、上記不陸調整材100重量%中、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。上記イオン放出性化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、地盤と構造物との密着性を長期的に高めることができる。
【0166】
図3に示す不陸調整体1Cのような不陸調整体を得る場合には、上記袋体材100重量%中、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上である。
図3に示す不陸調整体1Cのような不陸調整体を得る場合には、上記袋体材100重量%中、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは45重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。上記イオン放出性化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、地盤と構造物との密着性を長期的に高めることができる。
【0167】
図3に示す不陸調整体1Cのような不陸調整体を得る場合には、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは3重量部以上、より好ましくは5重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上、特に好ましくは20重量部以上である。
図3に示す不陸調整体1Cのような不陸調整体を得る場合には、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは70重量部以下である。上記イオン放出性化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、地盤と構造物との密着性を長期的に高めることができる。
【0168】
図3に示す不陸調整体1Cのような不陸調整体を得る場合には、上記硬化性成分100重量部に対して、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは3重量部以上、より好ましくは5重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上、特に好ましくは20重量部以上である。
図3に示す不陸調整体1Cのような不陸調整体を得る場合には、上記硬化性成分100重量部に対して、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは70重量部以下である。上記イオン放出性化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、地盤と構造物との密着性を長期的に高めることができる。
【0169】
図3に示す不陸調整体1Cのような不陸調整体を得る場合には、上記袋体材100重量%中、上記イオン放出性化合物及び上記コーティング剤の合計の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。上記イオン放出性化合物及び上記コーティング剤の合計の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、地盤と構造物との密着性を長期的に高めることができる。
【0170】
<他の成分>
上記不陸調整材は、必要に応じて、上記硬化性成分、上記イオン放出性化合物、上記コーティング剤、上記発泡剤、及び上記木片以外の他の成分を含んでいてもよい。上記受圧板の材料は、必要に応じて、上記受圧板本体の材料、上記イオン放出性化合物、及び上記コーティング剤以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、反応触媒、反応促進剤、架橋剤、吸水剤、酸化防止剤、及び着色剤等が挙げられる。
【0171】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0172】
以下の材料を用意した。
【0173】
(硬化性成分)
セメントA(太平洋セメント社製「普通ポルトランドセメント」)
セメントB(太平洋セメント社製「高炉B種セメント」)
細骨材(塚田陶管社製「コンクリート用粉砂A」、平均粒子径0.05mm)
混錬用水
ポリエーテルポリオール(住化コベストロウレタン社製「9158」、23℃での粘度500mPa・s)
ジフェニルメタンジイソシアネート(東ソー社製「ポリメリックMDI」、23℃での粘度200mPa・s)
ウレタン化触媒1(ジブチル錫ジマレート)
ウレタン化触媒2(3級アミン化合物、東ソー社製「TOYOCAT-DB30」)
発泡剤(水)
整泡剤(シリコンオイル、東レダウシリコン社製「SZ-1729」)
【0174】
(イオン放出性化合物)
塩化カルシウム(富士フイルム和光純薬社製、平均粒子径107μm)
炭酸水素ナトリウムA(富士フイルム和光純薬社製、平均粒子径5mm品を粉砕し、100μm以下の粒子を分級したもの)
炭酸水素ナトリウムB(富士フイルム和光純薬社製、平均粒子径107μm)
乳酸カルシウム(ナカライテスク社製、平均粒子径50μm)
炭酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製、平均粒子径100μm)
酢酸カルシウム(富士フイルム和光純薬社製、平均粒子径10μm)
【0175】
(コーティング剤)
エチレン-酢酸ビニル共重合体(東ソー社製「EVAウルトラセン#636」)
【0176】
(木片)
松間伐材(樹皮付き、群馬県産)を、長さ約1.5m~2.0mに切断した。MORBARK社製「タブグラインダー モデル1000」(60mm角スクリーン)を用いて、切断した松間伐材を破砕して、木片(長さ60mm以下)を得た。
【0177】
(熱可塑性樹脂)
ポリエチレン樹脂(東ソー社製「低密度PE ペトロセン#360」)
【0178】
(実施例1)
ポリエーテルポリオール100重量部と、ジブチル錫ジマレート0.1重量部と、3級アミン化合物0.3重量部と、発泡剤(水)0.12重量部と、整泡剤0.3重量部と、塩化カルシウム10重量部と、炭酸水素ナトリウムA10重量部とを混合して、第1の組成物を得た。また、第2の組成物としてジフェニルメタンジイソシアネート140重量部を用意した。
【0179】
得られた第1の組成物に、第2の組成物を添加して、30秒間撹拌し、不陸調整材を得た。得られた不陸調整材を、20Lのプラ容器内に充填して、23℃及び50%RHの条件で、大気圧下で静置して、試験体A(ウレタン発泡樹脂体)を得た。
【0180】
(実施例2)
ジフェニルメタンジイソシアネート80重量部と、炭酸ナトリウム10重量部と、酢酸カルシウム10重量部とを混合して、混合物を得た。木片100重量部と、得られた混合物7重量部とをドラムブレンダーで混合して、不陸調整材を得た。
【0181】
得られた不陸調整材を、容器(幅50cm×奥行50cm)内に木片がランダムに配向するように積層した。その後、180℃及び1MPaの条件で厚み方向に圧縮し、マット状の試験体B(密度0.2g/cm3~0.3g/cm3)を得た。
【0182】
(実施例3)
セメントA20kgと、混錬用水10kgとを混錬して、セメントミルク30kgを得た。
【0183】
炭酸水素ナトリウムBと、エチレン-酢酸ビニル共重合体とを、押出機で溶融混合し、ストランド状に押出して、ペレット化した後に冷凍粉砕、分級することにより、炭酸水素ナトリウムの表面の一部以上がエチレン-酢酸ビニル共重合体により被覆された平均粒子径50μmの粉体を得た。同様に、酢酸カルシウムと、エチレン-酢酸ビニル共重合体とを、押出機で溶融混合し、ストランド状に押出して、ペレット化した後に冷凍粉砕、分級することにより、酢酸カルシウムの表面の一部以上がエチレン-酢酸ビニル共重合体により被覆された平均粒子径50μmの粉体を得た。上記各粉体100重量%中、エチレン-酢酸ビニル共重合体の含有量は、50重量%であった。セメントミルク100kgに、得られた各粉体5kgずつを混合して、混合物を得た。木片100重量部と、得られた混合物20重量部とをドラムブレンダーで混合して、不陸調整材を得た。
【0184】
得られた不陸調整材5kgを、23℃及び1MPaの条件で圧縮後取り出し、室内で養生硬化し、マット状の試験体C(密度0.2g/cm3~0.3g/cm3)を得た。
【0185】
(実施例4)
ポリエチレン樹脂80重量部と、炭酸水素ナトリウムB10重量部と、乳酸カルシウム10重量部とを、押出機を用いて溶融混合し、押出機先端に取り付けたTダイからフィルム上に押出して、幅1m×厚さ1mmのフィルムを得た。得られたフィルムを幅方向に重ねるように折り合わせ、両端及び長さ方向の一端を加熱融着して、熱可塑性樹脂とイオン放出性化合物とを含む袋体材(周長1m、長さ50cm)を得た。
【0186】
また、セメントB20kgと、細骨材20kgと、混錬用水20kgとを混錬して、モルタル(中詰材)60kgを得た。得られたモルタル(中詰材)を、得られた袋体材の開口部から注入して、注入後、袋体部の開口部を再度加熱融着して、不陸調整材を得た。
【0187】
得られた不陸調整材を、23℃及び60%RHの条件で28日間静置して硬化させ、試験体Dを得た。
【0188】
(比較例1)
イオン放出性化合物を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、試験体Eを得た。
【0189】
(比較例2)
イオン放出性化合物を用いなかったこと以外は、実施例2と同様にして、試験体Fを得た。
【0190】
(比較例3)
イオン放出性化合物及びコーティング剤を用いなかったこと以外は、実施例3と同様にして、試験体Gを得た。
【0191】
(比較例4)
イオン放出性化合物を用いなかったこと以外は、実施例4と同様にして、試験体Hを得た。
【0192】
(評価)
(1)難水溶性塩の生成
実施例1~4及び比較例1~4で得られた試験体を、湿潤した珪砂の表面上に配置して、1ヵ月静置した。その後、各試験体の下面と、各試験体の周囲の珪砂の表面とに、粒子が析出しているか否かを目視で詳細に観察した。
【0193】
実施例1~4では、試験体の表面と、試験体の周囲の珪砂の表面との双方において、粒子が析出していた。一方、比較例1~4では、試験体の表面と、試験体の周囲の珪砂の表面との双方において、粒子が析出していなかった。表面に粒子が析出している試験体では、走査型電子顕微鏡を用いて観察すると、緻密な結晶構造をもつ粒子(炭酸カルシウムのカルサイト構造)の集合体が観察された。
【0194】
すなわち、実施例1~4では、難水溶性塩の生成が確認され、比較例1~4では、難水溶性塩の生成が確認されなかった。
【符号の説明】
【0195】
1A,1B,1C…不陸調整体
2A,2B,2C…硬化性成分の硬化物
3…イオン放出性化合物
4…木片
5…熱可塑性樹脂
6…袋体材
7…中詰部