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特開2024-46419製品の香りに対する被験者のやみつき感判定方法、製品のやみつき性判定方法、及び複数の製品のやみつき性順序付け方法
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  • 特開-製品の香りに対する被験者のやみつき感判定方法、製品のやみつき性判定方法、及び複数の製品のやみつき性順序付け方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046419
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】製品の香りに対する被験者のやみつき感判定方法、製品のやみつき性判定方法、及び複数の製品のやみつき性順序付け方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20240327BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
A61B5/16 120
G01N33/15 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151798
(22)【出願日】2022-09-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)「2021年度 日本味と匂学会第55回大会(福岡)」での公開スライド 2021年9月22日公開 (2)「第35回におい・かおり環境学会」の要旨集の掲載部分 2022年8月22日公開 (3)「第35回におい・かおり環境学会」での公開スライド 令和4(2022)年8月30日公開
(71)【出願人】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】武井 涼
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PS01
4C038PS09
(57)【要約】
【課題】無意識のうちに評価に影響する恐れのある欲求特性等の影響を抑え、対象製品を連用した場合の継続的な嗜好性を客観的に評価し得る技術を提供すること。
【解決手段】本技術では、製品の香りに対する被験者のやみつき感を判定する方法であって、所定の期間、所定の間隔で、前記被験者が前記製品を摂取時又は使用時に、因子分析によって複数の因子に分類される、前記製品の香りを評価した時系列評価データを取得する評価データ取得工程と、得られたデータについて、所定の条件を満たす場合に、やみつき群と判定する判定工程と、を有する、被験者のやみつき感判定方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の香りに対する被験者のやみつき感を判定する方法であって、
所定の期間、所定の間隔で、前記被験者が前記製品を摂取時又は使用時に、因子分析によって複数の因子に分類される、前記製品の香りを評価した時系列評価データを取得する評価データ取得工程と、
得られたデータについて、下記の(1)及び(2)を満たす場合に、やみつき群と判定する判定工程と、
を有する、被験者のやみつき感判定方法。
(1)各因子の中で、感覚強度に関連する因子に分類される時系列評価データについて、摂取又は使用開始から所定の期間に対する、摂取又は使用終了前の所定の期間の変化量が、減少していない。
(2)各因子の中で、感覚強度に関連する因子以外の因子に分類される時系列評価データについて、摂取又は使用開始から所定の期間に対する、摂取又は使用終了から所定の期間の変化量が、上昇している。
【請求項2】
前記時系列評価データは、因子分析によって複数の因子に分類される複数の項目からなるアンケートを用いて、前記被験者が前記製品の香りを評価したデータである、請求項1に記載の被験者のやみつき感判定方法。
【請求項3】
前記アンケートは、最尤法及び斜交回転法を用いた因子分析によって、2~4の因子に分類される複数の項目からなるアンケートである、請求項2に記載の被験者のやみつき感判定方法。
【請求項4】
前記アンケートは、因子負荷量が0.4以上の複数の項目からなるアンケートである、請求項3に記載の被験者のやみつき感判定方法。
【請求項5】
前記評価データ取得工程において、時系列評価データを取得する期間は、無香の製品又は判定対象となる香りとは異なる香りを有する製品を摂取又は使用する期間を有する、請求項1に記載の被験者のやみつき感判定方法。
【請求項6】
前記被験者が前記製品を摂取若しくは使用する際、又は、前記被験者が前記製品或いは前記製品の画像を目視する際における生理学的データを取得する生理学的データ取得工程を、有し、
前記判定工程では、得られた生理学的データに基づいて、被験者のやみつき感を判定する、請求項1に記載の被験者のやみつき感判定方法。
【請求項7】
製品の香りのやみつき性を判定する方法であって、
複数の被験者における請求項1から6のいずれか一項に記載のやみつき感判定方法の前記製品に対する判定結果から、やみつき群と判定された被験者数と、やみつき群と判定されなかった被験者数を、を取得する判定人数取得工程と、
やみつき群と判定された被験者数が、やみつき群と判定されなかった被験者数より多い場合に、前記製品にやみつき性ありと判定する判定工程と、
を有する、製品のやみつき性判定方法。
【請求項8】
複数の製品の香りのやみつき性を順序付ける方法であって、
複数の被験者における請求項1から6のいずれか一項に記載のやみつき感判定方法の前記複数の製品に対する判定結果から、各製品それぞれのやみつき群と判定された被験者数を取得する判定人数取得工程と、
やみつき群と判定された被験者数に基づいて、複数の製品の香りのやみつき性の順序を決定する順序決定工程と、
を有する、製品のやみつき性順序付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、製品の香りに対する被験者のやみつき感を判定する方法に関する。より詳しくは、製品の香りに対する被験者のやみつき感判定方法、並びに、該やみつき感判定方法を用いた製品のやみつき性判定方法、及び複数の製品のやみつき性順序付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化粧品における香りの種類は増加傾向にあり、消費者が特定の化粧品を継続的に連用する要因として香りは重要な要素である。継続的な香りの嗜好性を客観的に評価することに考慮しなければならないが、現状では即時的、一時的な嗜好を評価している場合が多い。なかには、消費者の嗜好性を短期間で客観的な指標を用いて定量的に予測又は評価する技術も存在する。
【0003】
例えば、特許文献1には、長期間、連続的にラベルドマグニチュードスケール(LMS)の嗜好強度を測定し、当該LMS値を対数化した値を縦軸に、横軸に経時時間としたグラフから一次関数を算出し、その一次関数の傾きを嗜好持続性の指標とすることで、飲食品又は香粧品を持続的、継続的に摂取又は使用した際の飽きややみつきの度合いを客観的な指標を用いて短期間で定量的に予測・評価する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-205819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
継続的な嗜好性を正確に評価するためには、潜在的な嗜好性を把握することが重要であるが、無意識の感覚であるため短期間で評価するのは困難であると考えられる。また継続して評価する場合、使用初期段階で嗜好性を一度決定してしまうと、無意識のうちに自身のなかで好ましい匂いであると確立してしまう可能性があり、連用した場合の継続的な嗜好性を客観的に評価することが難しい場合があった。さらに、欲求特性から無意識のうちに試料に対し肯定的な評価をしてしまう可能性も否定できないと考えられる。
【0006】
そこで、本技術では、無意識のうちに評価に影響する恐れのある欲求特性等の影響を抑え、対象製品を連用した場合の継続的な嗜好性を客観的に評価し得る技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、前記課題を解決するために、具体的な評価手法について鋭意研究を行った結果、被験者から得られる評価データが、複数の因子に分類されるデータとすることにより、無意識のうちに評価に影響する恐れのある欲求特性等の影響を抑えて、対象製品を連用した場合の継続的な嗜好性を客観的に評価することに成功し、本技術を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本技術では、まず、製品の香りに対する被験者のやみつき感を判定する方法であって、
所定の期間、所定の間隔で、前記被験者が前記製品を摂取時又は使用時に、因子分析によって複数の因子に分類される、前記製品の香りを評価した時系列評価データを取得する評価データ取得工程と、
得られたデータについて、下記の(1)及び(2)を満たす場合に、やみつき群と判定する判定工程と、
を有する、被験者のやみつき感判定方法を提供する。
(1)各因子の中で、感覚強度に関連する因子に分類される時系列評価データについて、摂取又は使用開始から所定の期間に対する、摂取又は使用終了前の所定の期間の変化量が、減少していない。
(2)各因子の中で、感覚強度に関連する因子以外の因子に分類される時系列評価データについて、摂取又は使用開始から所定の期間に対する、摂取又は使用終了から所定の期間の変化量が、上昇している。
本技術に係るやみつき感判定方法において、前記時系列評価データは、因子分析によって複数の因子に分類される複数の項目からなるアンケートを用いて、前記被験者が前記製品の香りを評価したデータとすることができる。
この場合、前記アンケートは、最尤法及び斜交回転法を用いた因子分析によって、2~4の因子に分類される複数の項目からなるアンケートとすることができる。
また、前記アンケートは、因子負荷量が0.4以上の複数の項目からなるアンケートとすることができる。
前記評価データ取得工程において、時系列評価データを取得する期間には、無香の製品又は判定対象となる香りとは異なる香りを有する製品を摂取又は使用する期間があってもよい。
本技術に係るやみつき感判定方法では、前記被験者が前記製品を摂取若しくは使用する際、又は、前記被験者が前記製品或いは前記製品の画像を目視する際における生理学的データを取得する生理学的データ取得工程を、有し、
前記判定工程では、得られた生理学的データに基づいて、被験者のやみつき感を判定することも可能である。
【0009】
本技術では、次に、製品の香りのやみつき性を判定する方法であって、
複数の被験者における前記やみつき感判定方法の前記製品に対する判定結果から、やみつき群と判定された被験者数と、やみつき群と判定されなかった被験者数を、を取得する判定人数取得工程と、
やみつき群と判定された被験者数が、やみつき群と判定されなかった被験者数より多い場合に、前記製品にやみつき性ありと判定する判定工程と、
を有する、製品のやみつき性判定方法を提供する。
【0010】
本技術では、更に、複数の製品の香りのやみつき性を順序付ける方法であって、
複数の被験者における前記やみつき感判定方法の前記複数の製品に対する判定結果から、各製品それぞれのやみつき群と判定された被験者数を取得する判定人数取得工程と、
やみつき群と判定された被験者数に基づいて、複数の製品の香りのやみつき性の順序を決定する順序決定工程と、
を有する、製品のやみつき性順序付け方法を提供する。
【0011】
ここで、本技術の技術用語について説明する。
本技術において、被験者の「やみつき感」とは、被験者が対象製品を長期連用することにより形成される香りの嗜好をいい、対象製品に対する肯定的な依存状態であり、将来も肯定的理由により連用を求め、嗅覚情報の知覚において明確な特徴を感じることのできる心的状態をいう。
本技術において、製品の「やみつき性」とは、対象製品に対してやみつき感を感じる被験者数の動向を示す特性であり、対象製品に対してやみつき感を感じる被験者数が多いほど、やみつき性が高い製品であると判定される特性である。
本技術において、香りの「感覚強度」とは、対象となる香りに対する嗅覚情報の知覚において、明確な特徴を感じることのできる心的状態をいう。
【発明の効果】
【0012】
本技術によれば、無意識のうちに評価に影響する恐れのある欲求特性等の影響を抑え、対象製品を連用した場合の継続的な嗜好性を客観的に評価することができる。なお、本技術の効果は、ここに記載された効果に限定されず、本明細書内に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実験例2において、各因子に分類される各評価の得点に基づいて群分けした場合の各評価の得点の推移を示すグラフである。
図2】実験例3において、SCR最大振幅値を平均化した値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態を示したものであり、本技術の範囲がこれらの実施形態のみに限定されることはない。
【0015】
A.被験者のやみつき感判定方法
本技術に係る被験者のやみつき感判定方法は、評価データ取得工程と、判定工程と、を有する。また、必要に応じて、生理学的データ取得工程を行うこともできる。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0016】
(a)評価データ取得工程
評価データ取得工程は、所定の期間、所定の間隔で、前記被験者が前記製品を摂取時又は使用時に、因子分析によって複数の因子に分類される、前記製品の香りを評価した時系列評価データを取得する工程である。
【0017】
後述する実施例で示す通り、被験者から得られる評価データによっては、被験者のやみつき感を客観的かつ正確に判定できない場合がある。例えば、ポジティブな評価を直接的に反映する評価のみでは、被験者が、評価側の意向を無意識に汲み取ってしまい、要求特性や社会的望ましさの影響により、被験者のやみつき感を客観的かつ正確に判定できない可能性がある。しかしながら、本技術では、因子分析によって複数の因子に分類される評価データを用いることで、要求特性や社会的望ましさの影響を低減させ、客観的かつ正確に被験者のやみつき感を判定することができる。
【0018】
被験者が評価を行う所定の期間は、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができる。評価期間の下限値は、例えば1週間以上、好ましくは2週間以上、より好ましくは3週間以上、更に好ましくは4週間以上である。評価期間の上限値は特に限定されないが、判定効率を考慮すると、例えば8週間以下、好ましくは7週間以下、より好ましくは6週間以下、更に好ましくは5週間以下である。
【0019】
被験者が評価を行う所定の間隔も、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができる。評価間隔は、例えば4~72時間、好ましくは6~48時間、より好ましくは8~36時間、更に好ましくは12~24時間である。
【0020】
被験者が評価を行う期間、即ち、評価データ取得工程において、時系列評価データを取得する期間には、無香の製品又は判定対象となる香りとは異なる香りを有する製品を摂取又は使用する期間を設けてもよい。具体的には、例えば、判定対象となる香りXのやみつき感を判定する場合、香りXを有さない無香の製品や、香りXとは異なる香りYを有する製品を摂取又は使用する期間を設けてもよい。このように、無香の製品又は判定対象となる香りとは異なる香りを有する製品を摂取又は使用する期間を設けることで、無意識に存在する匂いの記憶が評価に影響することを防止することができ、再度、判定対象となる香りを有する製品を摂取又は使用した場合に、やみつき感を、より客観的に評価することができる。また、再度、判定対象となる香りを有する製品を摂取又は使用した場合に、再使用時の効果をより感じられると考えられる。
【0021】
因子分析によって分類される因子は、本技術の効果を損なわない限り、特に限定されないが、例えば、感覚強度(strength)に関連する因子、依存状態(preference)に関連する因子、連用欲求(desire of continuous use)に関連する因子等が挙げられ、この中でも、本技術では、感覚強度(strength)に関連する因子を含むことを特徴とする。
【0022】
例えば、後述する実施例で示す通り、依存状態(preference)に関連する因子に分類される評価や、連用欲求(desire of continuous use)に関連する因子に分類される評価等のポジティブな評価を直接的に反映する評価のみでは、被験者が、評価側の意向を無意識に汲み取ってしまい、要求特性や社会的望ましさの影響により、被験者のやみつき感を客観的かつ正確に判定できない可能性がある。一方、後述する実施例で示す通り、感覚強度(strength)に関連する因子に分類される評価は、ポジティブな評価を直接的に反映する評価ではないため、要求特性や社会的望ましさの影響が低く、客観的かつ正確に被験者のやみつき感を判定することができる。
【0023】
評価データ取得工程における時系列評価データの取得方法は、本技術の効果を損なわない限り、一般的な被験者からのデータ取得方法を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。時系列評価データの取得方法としては、例えば、アンケートを用いて、被験者からの評価を得る方法が挙げられる。
【0024】
アンケートを用いる場合、アンケートの内容も、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができるが、因子分析によって複数の因子に分類される複数の項目からなるアンケートを用いることが好ましい。より具体的には、感覚強度(strength)に関連する因子、依存状態(preference)に関連する因子、連用欲求(desire of continuous use)に関連する因子等に分類される複数の項目からなるアンケートを用いることが好ましい。
【0025】
アンケートの因子分析の方法も特に限定されず、一般的な因子分析方法を自由に用いることができる。因子分析方法としては、例えば、最尤法や斜交回転法が挙げられ、本技術に係るやみつき感判定方法では、最尤法及び斜交回転法を用いた因子分析によって、2~4の因子に分類されるアンケートを用いることが好ましい。
【0026】
また、本技術で用いるアンケートは、因子分析によって、因子負荷量が0.4以上の複数の項目からなるアンケートとすることが好ましい。
【0027】
アンケートの具体的な手法も、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができる。例えば、VAS(Visual Analogue Scale)法等が挙げられる。
【0028】
(b)判定工程
判定工程は、前記評価データ取得工程にて得られたデータについて、下記の(1)及び(2)を満たす場合に、やみつき群と判定する工程である。
(1)各因子の中で、感覚強度に関連する因子に分類される時系列評価データについて、摂取又は使用開始から所定の期間に対する、摂取又は使用終了前の所定の期間の変化量が、減少していない(以下、「判定条件(1)」ともいう)。
(2)各因子の中で、感覚強度に関連する因子以外の因子に分類される時系列評価データについて、摂取又は使用開始から所定の期間に対する、摂取又は使用終了から所定の期間の変化量が、上昇している(以下、「判定条件(2)」ともいう)。
【0029】
香りを連続的に嗅ぐことにより、“慣れ”が生じ、その香りを感じ難くなるのが一般的である。しかしながら、後述する実施例で示す通り、やみつき感が高い香りについては、連続的に嗅いだ場合でも、その香りを感じることが分かった。即ち、被験者が香りを感じる強度に関しては、やみつき感を有する香りについては低下しないことが分かった。
【0030】
また、前述の通り、感覚強度(strength)に関連する因子に分類される評価は、ポジティブな評価を直接的に反映する評価ではないため、要求特性や社会的望ましさの影響が低く、客観的かつ正確に被験者のやみつき感を判定することができる。
【0031】
そこで、本技術では、やみつき群であると判定するに当たり、感覚強度に関連する因子に分類される時系列評価に、減少傾向がみられない場合(判定条件(1))に、やみつき群であると判定する。
【0032】
また、後述する実施例で示す通り、依存状態(preference)に関連する因子に分類される評価や、連用欲求(desire of continuous use)に関連する因子に分類される評価等のポジティブな評価を直接的に反映する評価等は、やみつき感を有する香りの場合は、増加傾向がみられることが分かった。
【0033】
そこで、本技術では、やみつき群であると判定するに当たり、判定条件(1)に加えて、感覚強度に関連する因子以外の因子(例えば、依存状態(preference)に関連する因子、連用欲求(desire of continuous use)に関連する因子等)に分類される時系列評価に、増加傾向がみられる場合(判定条件(2))に、やみつき群であると判定する。
【0034】
判定条件(1)及び(2)における各評価データの変化量は、摂取又は使用開始から所定の期間における各評価データに対して、摂取又は使用終了前の所定の期間における各評価データを比べた変化量である。この場合の所定の期間は、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができる。判定条件(1)及び(2)における所定の期間は、例えば2~10日間、好ましくは3~8日間、より好ましくは4~7日間である。より具体的には、例えば、判定条件(1)及び(2)における各評価データの変化量は、摂取又は使用開始から2~10日間における各評価データと、摂取又は使用終了前の2~10日間における各評価データとを比べた変化量とすることができる。変化量は、各期間の波形などの全体の傾向や平均値などを対比してもよい。
【0035】
後述する生理学的データ取得工程を行う場合、判定工程では、生理学的データ取得工程で取得した生理学的データに基づいて、被験者のやみつき感を判定することができる。例えば、被験者が製品を摂取若しくは使用する際、又は、被験者が製品或いは製品の画像を目視する際の生理学的測定値が、被験者が製品を摂取する前若しくは使用する前、又は、被験者が製品或いは製品の画像を目視する前の生理学的測定値に比べて、向上している場合に、やみつき群と判定することができる。
【0036】
(c)生理学的データ取得工程
生理学的データ取得工程は、被験者が製品を摂取若しくは使用する際、又は、被験者が製品或いは製品の画像を目視する際における生理学的データを取得する工程である。生理学的データとしては、例えば、皮膚伝導度、心拍間隔、体温、脈拍等が挙げられ、これらは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0037】
生理学的データ取得工程では、被験者が製品を摂取若しくは使用する際にのみ、生理学的データを取得することもできるし、被験者が製品或いは製品の画像を目視する際にのみ、生理学的データを取得することもできるし、被験者が製品を摂取若しくは使用する際、及び、被験者が製品或いは製品の画像を目視する際に、生理学的データを取得することもできる。
【0038】
後述する実施例で示す通り、本技術では、製品を視覚的感知した場合の生理学的な身体の変化を測定することで、当該製品の香りに対するやみつき感を判定することが可能である。前述した評価データ取得工程では、経時的な評価データを取得するため、所定の期間が必要であるが、被験者が製品或いは製品の画像を目視する際にのみ、生理学的データを取得する生理学的データ取得工程を行うことで、実際の製品を摂取若しくは使用しなくても、瞬時に被験者のやみつき感を予測することが可能である。
【0039】
生理学的データ取得工程は、前述した評価データ取得工程に加えて行うこともできるが、生理学的データ取得工程を単独で行い、得られた生理学的データに基づいて、被験者のやみつき感を判定する判定工程を行うこともできる。生理学的データに基づいて、被験者のやみつき感を判定することができれば、時系列評価データを取得する期間を省くことができるため、判定に要する期間の大幅な短縮を図ることができる。
【0040】
B.製品のやみつき性判定方法
本技術に係る製品のやみつき性判定方法は、判定人数取得工程と、判定工程と、を行う方法である。その他、本技術の効果を損なわない限り、製品のやみつき性の判定に用いることができる各種工程を行うことも可能である。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0041】
(a)判定人数取得工程
判定人数取得工程は、複数の被験者における前述したやみつき感判定方法の判定結果から、やみつき群と判定された被験者数と、やみつき群と判定されなかった被験者数を、取得する工程である。複数の被験者に対して行われるやみつき感判定方法については、前述の通りであるため、ここでは説明を割愛する。
【0042】
(b)判定工程
判定工程は、やみつき群と判定された被験者数が、やみつき群と判定されなかった被験者数より多い場合に、当該製品にやみつき性ありと判定する工程である。即ち、やみつき群と判定された被験者数が、やみつき群と判定されなかった被験者数より少ない場合には、当該製品にやみつき性なしと判定される。
【0043】
(c)その他
本技術の効果を損なわない限り、製品のやみつき性の判定に用いることができる各種工程を、前記判定人数取得工程、及び判定工程に加えて行うことができる。
【0044】
例えば、やみつき群及び/又は非やみつき群と判定された被験者の性別、年齢、人種、居住地域、健康状態、病歴等の個別データを取得する被験者個別データ取得工程を行い、対象製品に対してやみつき群及び/又は非やみつき群と判定された被験者の特徴を分析する分析工程を行うこともできる。
【0045】
また、例えば、前記判定人数取得工程で得られた人数データ、前記判定工程で得られた判定結果データ、被験者個別データ取得工程で得られた被験者個別データ、前記分析工程で得られた分析データ等、本技術に係る製品のやみつき性判定方法で得られるあらゆるデータを記憶する記憶工程を行い、記憶工程にて記憶されたデータを、前記判定工程における判定時や、前記分析工程における分析時に、フィードバックして利用することも可能である。
【0046】
また、記憶工程で記憶するデータベースは、例えば、クラウド上に設けて、複数のユーザーで利用することも可能である。
【0047】
C.製品のやみつき性順序付け方法
本技術に係る製品のやみつき性順序付け方法は、判定人数取得工程と、順序決定工程と、を行う方法である。その他、本技術の効果を損なわない限り、製品のやみつき性の順序付けに用いることができる各種工程を行うことも可能である。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0048】
(a)判定人数取得工程
判定人数取得工程は、複数の被験者における前記やみつき感判定方法の前記複数の製品に対する判定結果から、各製品それぞれのやみつき群と判定された被験者数を取得する工程である。具体的には、例えば、製品Aに対して前記やみつき感判定方法を複数の被験者で行った結果と、製品Bに対して前記やみつき感判定方法を複数の被験者で行った結果から、製品A及び製品Bそれぞれのやみつき群と判定された被験者数を取得する。
【0049】
(b)順序決定工程
順序決定工程では、前記判定人数取得工程にて得られたやみつき群と判定された被験者数に基づいて、複数の製品の香りのやみつき性の順序を決定する工程である。具体的には、例えば、製品Aに対してやみつき群と判定された人数が、製品Bに対してやみつき群と判定された人数よりも多い場合には、やみつき性の順番は、高い方からA→Bの順と決定される。
【0050】
なお、本技術に係る製品のやみつき性順序付け方法で順序付け可能な製品の数は特に限定されず、2種以上であれば、その上限に限りはない。
【0051】
(c)その他
本技術の効果を損なわない限り、製品のやみつき性の判定に用いることができる各種工程を、前記判定人数取得工程、及び判定工程に加えて行うことができる。例えば、前述の本技術に係る製品のやみつき性判定方法と同様に、被験者個別データ取得工程、分析工程、記憶工程等を、判定人数取得工程及び順序決定工程に加えて行うことも可能である。なお、被験者個別データ取得工程、分析工程、及び記憶工程の詳細は、前述の本技術に係る製品のやみつき性判定方法と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0052】
以上説明した本技術に係る被験者のやみつき感判定方法、本技術に係る製品のやみつき性判定方法、及び本技術に係る製品のやみつき性順序付け方法は、香りを有する製品であれば、あらゆる製品に用いることができる。香りを有する製品としては、例えば、化粧料、飲食品、医薬品、医薬部外品、洗剤、石鹸、香りを有する文房具等が挙げられる。
【0053】
また、被験者のやみつき感判定方法、本技術に係る製品のやみつき性判定方法、及び本技術に係る製品のやみつき性順序付け方法は、例えば、製品の開発時、製品に対するカウンセリング、推奨時等に、好適に用いることができる。
【0054】
また、本発明は、以下の構成を採用することも可能である。
[1]
製品の香りに対する被験者のやみつき感を判定する方法であって、
所定の期間、所定の間隔で、前記被験者が前記製品を摂取時又は使用時に、因子分析によって複数の因子に分類される、前記製品の香りを評価した時系列評価データを取得する評価データ取得工程と、
得られたデータについて、下記の(1)及び(2)を満たす場合に、やみつき群と判定する判定工程と、
を有する、被験者のやみつき感判定方法。
(1)各因子の中で、感覚強度に関連する因子に分類される時系列評価データについて、摂取又は使用開始から所定の期間に対する、摂取又は使用終了前の所定の期間の変化量が、減少していない。
(2)各因子の中で、感覚強度に関連する因子以外の因子に分類される時系列評価データについて、摂取又は使用開始から所定の期間に対する、摂取又は使用終了から所定の期間の変化量が、上昇している。
[2]
前記時系列評価データは、因子分析によって複数の因子に分類される複数の項目からなるアンケートを用いて、前記被験者が前記製品の香りを評価したデータである、[1]の被験者のやみつき感判定方法。
[3]
前記アンケートは、最尤法及び斜交回転法を用いた因子分析によって、2~4の因子に分類される複数の項目からなるアンケートである、[2]の被験者のやみつき感判定方法。
[4]
前記アンケートは、因子負荷量が0.4以上の複数の項目からなるアンケートである、[3]の被験者のやみつき感判定方法。
[5]
前記評価データ取得工程において、時系列評価データを取得する期間は、無香の製品又は判定対象となる香りとは異なる香りを有する製品を摂取又は使用する期間を有する、[1]から[4]のいずれかの被験者のやみつき感判定方法。
[6]
前記被験者が前記製品を摂取若しくは使用する際、又は、前記被験者が前記製品或いは前記製品の画像を目視する際における生理学的データを取得する生理学的データ取得工程を、有し、
前記判定工程では、得られた生理学的データに基づいて、被験者のやみつき感を判定する、[1]から[5]のいずれかの被験者のやみつき感判定方法。
[7]
製品の香りに対する被験者のやみつき感を判定する方法であって、
前記被験者が前記製品を摂取若しくは使用する際、又は、前記被験者が前記製品或いは前記製品の画像を目視する際における生理学的データを取得する生理学的データ取得工程と、
得られた生理学的データに基づいて、被験者のやみつき感を判定する判定工程と、
を有する、被験者のやみつき感判定方法。
[8]
所定の期間、所定の間隔で、前記被験者が前記製品を摂取時又は使用時に、因子分析によって複数の因子に分類される、前記製品の香りを評価した時系列評価データを取得する評価データ取得工程と、
得られたデータについて、下記の(1)及び(2)を満たす場合に、やみつき群と判定する判定工程と、
を有する、[7]の被験者のやみつき感判定方法。
(1)各因子の中で、感覚強度に関連する因子に分類される時系列評価データについて、摂取又は使用開始から所定の期間に対する、摂取又は使用終了前の所定の期間の変化量が、減少していない。
(2)各因子の中で、感覚強度に関連する因子以外の因子に分類される時系列評価データについて、摂取又は使用開始から所定の期間に対する、摂取又は使用終了から所定の期間の変化量が、上昇している。
[9]
前記時系列評価データは、因子分析によって複数の因子に分類される複数の項目からなるアンケートを用いて、前記被験者が前記製品の香りを評価したデータである、[8]の被験者のやみつき感判定方法。
[10]
前記アンケートは、最尤法及び斜交回転法を用いた因子分析によって、2~4の因子に分類される複数の項目からなるアンケートである、[9]の被験者のやみつき感判定方法。
[11]
前記アンケートは、因子負荷量が0.4以上の複数の項目からなるアンケートである、[10]の被験者のやみつき感判定方法。
[12]
前記評価データ取得工程において、時系列評価データを取得する期間は、無香の製品又は判定対象となる香りとは異なる香りを有する製品を摂取又は使用する期間を有する、[8]から[11]のいずれかの被験者のやみつき感判定方法。
[13]
製品の香りのやみつき性を判定する方法であって、
複数の被験者における[1]から[12]のいずれかのやみつき感判定方法の前記製品に対する判定結果から、やみつき群と判定された被験者数と、やみつき群と判定されなかった被験者数を、を取得する判定人数取得工程と、
やみつき群と判定された被験者数が、やみつき群と判定されなかった被験者数より多い場合に、前記製品にやみつき性ありと判定する判定工程と、
を有する、製品のやみつき性判定方法。
[14]
複数の製品の香りのやみつき性を順序付ける方法であって、
複数の被験者における[1]から[12]のいずれかのやみつき感判定方法の前記複数の製品に対する判定結果から、各製品それぞれのやみつき群と判定された被験者数を取得する判定人数取得工程と、
やみつき群と判定された被験者数に基づいて、複数の製品の香りのやみつき性の順序を決定する順序決定工程と、
を有する、製品のやみつき性順序付け方法。
【実施例0055】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0056】
<実験例1>
実験例1では、やみつき感の要素について、検討を行った。
【0057】
(1)実験方法
250名(18歳から28歳の男女、平均年齢18.4歳)を対象にやみつき感に関するオンライン調査を実施した。具体的には、やみつき感のある香りの化粧品をイメージしながら、下記の表1に示す36項目に対して、1(全くそう思わない)から7(非常にそう思う)の7件法で回答するように求めた。得られた回答に対しては因子分析(最尤法、プロマックス回転)を行った。
【0058】
(2)結果・考察
探索的因子分析の結果を下記の表1に示す。表1に示す通り、やみつき感は3因子構造であることが示唆された。各因子のクロンバックのアルファ係数は、Factor 1からFactor 3の順で0.91、0.92、0.86であった。各因子の内容を元に、Factor 1は「依存状態(preference)」、Factor 2は「連用欲求(desire of continuous use)」、Factor 3は「強度(strength)」と命名した。Factor 1とFactor 2には好意的表現が含まれており、かつそれぞれの平均得点は中間値を上回っていた。Factor 3は知覚強度や鮮明度に関する表現が含まれていた。このため、製品の香りに対するやみつき感は、その香りに対する肯定的な依存状態であり、連用を求め、更に、嗅覚情報の知覚において明確な香りの強度を感じることのできる状態であると言えることが示唆された。
【0059】
【表1】
【0060】
<実験例2>
実験例2では、実験例1の結果を基に、3つの因子に分類される複数の項目からなるアンケートを用いて被験者のやみつき感の評価を行った。
【0061】
(1)実験方法
50名(20歳から49歳の男女、平均24.0歳)を対象に、4週間の化粧品の香りに対する印象評価を実施した。具体的には、まず、実験初日に1、2、4週目に使用する化粧水(賦香品)、3週目に使用する化粧水(無賦香品)を配布した。被験者には配布した化粧水を毎日の入浴後に使用してもらい、使用直後にその香りについて、「依存状態(preference)」、「連用欲求(desire of continuous use)」、「強度(strength)」の3つの因子に分類される7項目(好き・嫌い・親しみやすい・強い・快・不快・覚醒度)からなるアンケートに対して、VAS(Visual Analogue Scale)法で回答するよう求めた。具体的には、100mmの線分とし、左には「全くそう思わない(0)」、右には「非常にそう思うを(100)」を配置し、評定する際には、あまり深く考えず、あてはまると思う位置に斜線をペンで引くことで評定するように求めた。
【0062】
また、初日と最終日のみ、化粧水に対する今後の使用の意向に関してもVAS法にて回答を求めた。
【0063】
「依存状態(preference)」、「連用欲求(desire of continuous use)」、「強度(strength)」の3つの因子に分類される各評価の得点に関して、各週の平均値を算出し、この3つの因子ごとに4週目の得点が1週目から増加した者をやみつき群、減少した者を非やみつき群とした。同項目得点について2群(やみつき・非やみつき)×4期間(1週目から4週目)の分散分析(混合計画)を行った。
【0064】
(2)結果・考察
「依存状態(preference)」、「連用欲求(desire of continuous use)」、「強度(strength)」の3つの因子に分類される各評価の得点に基づいて割り当てられたやみつき群及び非やみつき群において、それぞれ「依存状態(preference)」、「連用欲求(desire of continuous use)」、「強度(strength)」の3つの因子に分類される各評価の得点の推移を図1に示す。
【0065】
図1に示す通り、いずれの因子の得点に基づいた群分けにおいても、「依存状態(preference)」の4週目の得点は、やみつき群の方が非やみつき群よりも有意に高いことが示された。これは、オンライン調査の結果同様に、やみつき感がポジティブな評価であることを示唆する。
【0066】
「依存状態(preference)」の得点に基づいて群分けした場合、4週目の「依存状態(preference)」、及び「連用欲求(desire of continuous use)」の得点で、群間差が確認されたが、「強度(strength)」の得点については、群間差が確認できなかった。
【0067】
次に、「連用欲求(desire of continuous use)」の得点に基づいて群分けした場合、4週目の「依存状態(preference)」、及び「連用欲求(desire of continuous use)」の得点で、群間差が確認された。ただし、最終日の「連用欲求(desire of continuous use)」の得点は、やみつき群の方が非やみつき群よりも有意に高い値だったのに対し、初日の「連用欲求(desire of continuous use)」の得点は非やみつき群の方がやみつき群よりも有意に高かった。これは、使用開始時のある一時点における「連用欲求(desire of continuous use)」因子に分類される評価では、被験者のやみつき感を、正確に判定・予測できない可能性を示している。
【0068】
更に、「強度(strength)」の得点に基づいて群分けした場合、4週目の「依存状態(preference)」、「連用欲求(desire of continuous use)」、及び「強度(strength)」の全ての得点において、やみつき群の方が非やみつき群よりも有意に高かった。
【0069】
これらの結果から、「依存状態(preference)」や「連用欲求(desire of continuous use)」は、製品に対するポジティブな評価を直接的に訊ねているため、要求特性や社会的望ましさの影響が懸念されることが示唆された。換言すると、被験者が、評価側の意向を無意識に汲み取り、「依存状態(preference)」因子や「連用欲求(desire of continuous use)」因子に分類される評価のみでは、被験者のやみつき感を客観的かつ正確に判定・予測できない可能性が示唆された。
【0070】
一方、「強度(strength)」は、ポジティブな評価を直接的に反映する評価ではないため、要求特性等を刺激することなく、被験者の商品に対する“やみつき感”を客観的かつ正確に判定・予測可能であると考えられる。
【0071】
<実験例3>
実験例3では、やみつき感を感じる製品を視覚的感知した際の生理学的な身体の変化の有無について調べた。
【0072】
(1)実験方法
被験者24名を対象に、各被験者がやみつき感を感じている香りの製品の画像と、やみつき感を感じていない香りの製品の画像を、各10秒6回ずつ提示し、各提示時における皮膚コンダクタンス反応(SCR(skin conductance response))を測定した。
【0073】
(2)結果・考察
各条件において、SCR最大振幅値を平均化した値を、図2のグラフに示す。図2のグラフに示す通り、やみつき感を感じている香りの製品を被験者が視覚的感知した際のSCR最大振幅値は、やみつき感を感じていない香りの製品を被験者が視覚的感知した際のSCR最大振幅値に比べて、有意に高かった。
【0074】
この結果から、製品を視覚的感知した場合の生理学的な身体の変化を測定することで、当該製品の香りに対するやみつき感を判定できる可能性が示唆された。
図1
図2