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特開2024-46429静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法
<図1>
  • 特開-静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法 図1
  • 特開-静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046429
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20240327BHJP
   G03G 9/113 20060101ALI20240327BHJP
   G03G 9/107 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
G03G9/097 371
G03G9/097 375
G03G9/113
G03G9/107 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151819
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 洋介
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】酒井 香林
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA09
2H500AB01
2H500AB04
2H500CA32
2H500CA34
2H500CB02
2H500CB04
2H500CB10
2H500CB12
2H500EA06E
2H500EA42D
2H500EA42E
2H500EA43D
2H500EA52D
2H500FA04
(57)【要約】
【課題】シリカ粒子が外添されたトナー粒子と、キャリアとを含む静電荷像現像剤等において、画像濃度を極度に高くするような印刷をする場合においても、高温高湿下での電荷リークが抑制され、白点発生が抑制される静電荷像現像剤を提供する。
【解決手段】トナー粒子と、トナー粒子に外添されるシリカ粒子であって、モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物を含み、蛍光X線分析により測定されるモリブデン元素のNet強度とシリカ粒子中のシリコン元素のNet強度との比率(Mo/Si)が0.035以上0.45以下であるシリカ粒子と、比誘電損率が0.5以上2.0以下であるキャリアと、を含む静電荷像現像剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子と、
前記トナー粒子に外添されるシリカ粒子であって、モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物を含み、蛍光X線分析により測定される当該モリブデン元素のNet強度とシリカ粒子中のシリコン元素のNet強度との比率(Mo/Si)が0.035以上0.45以下であるシリカ粒子と、
比誘電損率が0.5以上2.0以下であるキャリアと、
を含む静電荷像現像剤。
【請求項2】
前記キャリアがフェライトからなり、当該フェライトはチタン及びジルコニウムの少なくとも一方を含む、請求項1記載の静電荷像現像剤。
【請求項3】
前記キャリアの比誘電損率は0.7以上1.7以下である、請求項2記載の静電荷像現像剤。
【請求項4】
前記フェライトが更にマンガン及びマグネシウムを含む、請求項2記載の静電荷像現像剤。
【請求項5】
前記シリカ粒子と前記キャリアの重量比(シリカ/キャリア)は、0.03以上0.15以下である、請求項1記載の静電荷像現像剤。
【請求項6】
前記モリブデン元素のNet強度と前記シリコン元素のNet強度との比率(Mo/Si)は0.10以上0.30以下である、請求項5記載の静電荷像現像剤。
【請求項7】
前記モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物が、モリブデン元素を含む四級アンモニウム塩である、請求項6記載の静電荷像現像剤。
【請求項8】
前記シリカ粒子の個数平均粒径が10nm以上100nm以下である、請求項1記載の静電荷像現像剤。
【請求項9】
前記シリカ粒子は、
シリカ母粒子と、
前記シリカ母粒子の少なくとも一部の表面を被覆し、3官能シランカップリング剤の反応生成物で構成され、かつ当該3官能シランカップリング剤の反応生成物の細孔の少なくとも一部に前記モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物が吸着した構造体と、
を有する、請求項8記載の静電荷像現像剤。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤を収容し、当該静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項11】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
請求項1~9のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤を収容し、当該静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項12】
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
請求項1~9のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁性コア粒子およびその表面をコートするキャリアコート材からなるキャリアであって、該キャリアの誘電損率ε"/誘電率ε'で示される損失正接tanδが以下の関係式:
a/b<6.5、および
0.05<c<20
(ここで、aは測定温度30℃での周波数DEFreq[Hz]:1×10時のDELoss値であり、bは測定温度30℃での周波数DEFreq[Hz]:1X10時のDELoss値であり、cは測定温度150℃での周波数DEFreq[Hz]:1×10時のDELoss値である、)
を満たすことを特徴とするキャリアが開示されている。
特許文献2には、結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有する第1のトナー粒子と第1の外添剤を含有する第1のトナー並びに第1の磁性キャリアとを少なくとも有し、第2のトナーと第2の磁性キャリアを含有する補給剤を補給しながら現像する現像方法に使用される二成分系現像剤において、上記第1のトナーは、個数平均粒径50nm以上の第1のシリカ粒子を少なくとも第1のトナー粒子100質量部に対して0.5質量部以上含有し、上記二成分系現像剤の誘電損率ε"/誘電率ε'で示される損失正接tanδにおいて、周波数2000Hzの損失正接tanδ1及び2×10Hzの損失正接tanδ2が下記式
0.06≦tanδ1(2000Hz)≦0.13
0.04≦tanδ2(2×10Hz)≦0.10
を満たすことを特徴とする二成分系現像剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-257993号公報
【特許文献2】特開2005-316057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外部環境、特に高温高湿下において、帯電したトナーとキャリアの間で電荷リークが起こり、高帯電を保持できない場合がある。キャリアの誘電損率を小さくすることで、高帯電かつ帯電保持が可能となる。ここで、画像濃度を極度に高くするような印刷では現像時の電界を高くする必要がある。しかし、電界を高くすると、磁気ブラシと像保持体との間でキャリアを起因とする放電が局所的に生じやすく、この放電部分にトナーが乗らず、印刷物に白点が現れる場合がある。
本発明は、シリカ粒子が外添されたトナー粒子と、キャリアとを含む静電荷像現像剤等において、画像濃度を極度に高くするような印刷をする場合においても、高温高湿下での電荷リークが抑制され、白点発生が抑制される静電荷像現像剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、トナー粒子と、前記トナー粒子に外添されるシリカ粒子であって、モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物を含み、蛍光X線分析により測定される当該モリブデン元素のNet強度とシリカ粒子中のシリコン元素のNet強度との比率(Mo/Si)が0.035以上0.45以下であるシリカ粒子と、比誘電損率が0.5以上2.0以下であるキャリアと、を含む静電荷像現像剤である。
請求項2の発明は、前記キャリアがフェライトからなり、当該フェライトはチタン及びジルコニウムの少なくとも一方を含む、請求項1記載の静電荷像現像剤である。
請求項3の発明は、前記キャリアの比誘電損率は0.7以上1.7以下である、請求項2記載の静電荷像現像剤である。
請求項4の発明は、前記フェライトが更にマンガン及びマグネシウムを含む、請求項2記載の静電荷像現像剤である。
請求項5の発明は、前記シリカ粒子と前記キャリアの重量比(シリカ/キャリア)は、0.03以上0.15以下である、請求項1記載の静電荷像現像剤である。
請求項6の発明は、前記モリブデン元素のNet強度と前記シリコン元素のNet強度との比率(Mo/Si)は0.10以上0.30以下である、請求項5記載の静電荷像現像剤である。
請求項7の発明は、前記モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物が、モリブデン元素を含む四級アンモニウム塩である、請求項6記載の静電荷像現像剤である。
請求項8の発明は、前記シリカ粒子の個数平均粒径が10nm以上100nm以下である、請求項1記載の静電荷像現像剤である。
請求項9の発明は、前記シリカ粒子は、シリカ母粒子と、前記シリカ母粒子の少なくとも一部の表面を被覆し、3官能シランカップリング剤の反応生成物で構成され、かつ当該3官能シランカップリング剤の反応生成物の細孔の少なくとも一部に前記モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物が吸着した構造体と、を有する、請求項8記載の静電荷像現像剤である。
請求項10の発明は、請求項1~9のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤を収容し、当該静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
請求項11の発明は、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、請求項1~9のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤を収容し、当該静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える画像形成装置である。
請求項12の発明は、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、請求項1~9のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、シリカ粒子が外添されたトナー粒子と、キャリアとを含む静電荷像現像剤等において、画像濃度を極度に高くするような印刷をする場合においても、高温高湿下での電荷リークが抑制され、白点発生が抑制される静電荷像現像剤を提供することができる。
請求項2の発明によれば、前記キャリアがフェライトからなり、当該フェライトがチタン又はジルコニウムを含まない場合と比較して、キャリアの比誘電損率が調整され、適度な帯電性を有する静電荷像現像剤を提供できる。
請求項3の発明によれば、前記キャリアの比誘電損率が0.7未満又は1.7を超える場合と比較して、キャリアが好ましい帯電性を有し、電荷リーク発生が抑制することが可能な静電荷像現像剤を提供できる。
請求項4の発明によれば、前記キャリアにおけるフェライトが、マンガン及びマグネシウムのいずれをも含まない場合と比較して、キャリアの比誘電損率が調整され、適度な帯電性を有する静電荷像現像剤を提供できる。
請求項5の発明によれば、前記シリカ粒子と前記キャリアの重量比(シリカ/キャリア)が、0.03未満又は0.15を超える場合と比較して、シリカ粒子における好ましい帯電量となり、キャリアを菌とする電荷リークが抑制された静電荷像現像剤を提供できる。
請求項6の発明によれば、前記モリブデン元素のNet強度と前記シリコン元素のNet強度との比率(Mo/Si)が0.10未満又は0.30を超える場合と比較して、シリカ粒子における帯電範囲を狭くし、電荷リークを抑制すると同時に画像の白点発生が抑制された静電荷像現像剤を提供できる。
請求項7の発明によれば、前記モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物が、モリブデン元素を含む四級アンモニウム塩でない場合と比較して、シリカ粒子の帯電分布が狭くなった静電荷像現像剤を提供できる。
請求項8の発明によれば、前記シリカ粒子の個数平均粒径が10nm未満又は100nmを超える場合と比較して、キャリアとシリカ粒子の間の接触が好適であり、電荷リークを抑えた静電荷像現像剤を提供できる。
請求項9の発明によれば、前記シリカ粒子を、シリカ母粒子の少なくとも一部の表面を被覆し、3官能シランカップリング剤の反応生成物で構成され、かつ当該3官能シランカップリング剤の反応生成物の細孔の少なくとも一部に前記窒素元素含有化合物が吸着した構造体でない場合と比較して、シリカ粒子における帯電分布を狭くすることができる静電荷像現像剤を提供できる。
請求項10、11又は12の発明によれば、シリカ粒子が外添されたトナー粒子と、キャリアとを含む静電荷像現像剤等において、画像濃度を極度に高くするような印刷をする場合においても、高温高湿下での電荷リークが抑制され、白点発生が抑制される静電荷像現像剤を適用可能なプロセスカートリッジ、画像形成装置又は画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本実施形態に係る画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、発明の実施形態を説明する。これらの説明及び実施例等は実施形態を例示するものであり、発明の範囲を限定するものではない。
本開示において、数値範囲を表す「〇〇以上〇〇以下」や「〇〇~〇〇」の記載は、特に断りのない限り、記載された上限及び下限を含む数値範囲を意味する。また、本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種類存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種類の物質の合計量を意味する。
本開示において、「静電荷像現像剤」を単に「現像剤」と記載することがあり、「静電荷像現像用キャリア」を単に「キャリア」と記載することがあり、「静電荷像現像用トナー」を単に「トナー」と記載することがある。
【0009】
本明細書において、シリカ粒子の特性の測定は、トナーから分離して実施する。トナーからシリカ粒子を分離する方法に制限はないが、例えば次の分離処理により、トナーからシリカ粒子を分離して、得られたシリカ粒子に対して実施する。
-分離処理-
0.2質量%のTriton X-100(Sigma-Aldrich社製)水溶液50gにトナー2gを分散させ、分散液に超音波ホモジナイザーUS-300T(株式会社日本精機製作所製)を用いて20℃85WATT条件で30分間以上印加した後、分散液を高速遠心分離し、上澄み液を80℃で真空乾燥させてシリカ粒子を得る。
【0010】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、
トナー粒子と、
前記トナー粒子に外添されるシリカ粒子であって、モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物を含み、蛍光X線分析により測定される前記モリブデン元素のNet強度とシリカ粒子中のシリコン元素のNet強度との比率(Mo/Si)が0.035以上0.45以下であるシリカ粒子(以下、「特定シリカ粒子」とも略する)と、
比誘電損率が0.5以上2.0以下であるキャリアと、
を含む。
【0011】
本実施態様に係る現像剤は、前記特定のキャリアとトナー粒子に前記特定シリカ粒子を外添することにより、特に高温高湿の条件下で生じやすい白点の発生を抑制することが可能である。その機序として、下記が推定される。
特に外部環境が高温高湿の条件下、帯電したトナーとキャリアの間で電荷リークが起こり、高帯電を保持できない場合がある。本実施態様のキャリアのように比誘電損率を小さくすることで、高帯電かつ帯電保持が可能となる。ここで、画像濃度を極度に高くするような印刷では現像時の電界を高くする必要がある。しかし、電界を高くすると、磁気ブラシと像保持体との間でキャリアを起因とする放電が局所的に生じやすく、この放電部分にトナーが乗らず、印刷物に白点が現れる場合がある。
一方、特定シリカ粒子はモリブデン元素を含む窒素元素含有化合物を含有する。この窒素元素由来の正電荷とモリブデンを主体とする誘電性の高さから、過度な高帯電を抑制すると共に、適度に帯電を付与できるため、現像剤の帯電が安定する。その結果、通常より比誘電損率が低い本実施態様のキャリアと特定シリカ粒子とを組み合わせることにより、キャリアに起因する電荷リークを、特定シリカ粒子が抑制することが可能となると考えられる。
なお、モリブデンは本効果において適したイオン半径を有し、他の金属では十分な効果が得られず電荷リーク抑制効果は見出されていない。
【0012】
以下、本実施形態に係るトナーについて、詳細に説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子と、外添剤とを含んで構成される。
【0013】
(トナー粒子)
トナー粒子は、結着樹脂を含む。トナー粒子は、必要に応じて、着色剤、離型剤、その他添加剤を含んでもよい。
【0014】
-結着樹脂-
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好適である。
ポリエステル樹脂としては、例えば、公知のポリエステル樹脂が挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。なお、ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0016】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0019】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000以上1,000,000以下が好ましく、7,000以上500,000以下がより好ましい。ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2,000以上100,000以下が好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0020】
ポリエステル樹脂は、周知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
なお、原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
結着樹脂の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下がさらに好ましい。
【0021】
-着色剤-
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、c系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0022】
-離型剤-
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
離型剤の含有量は、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0023】
-その他の添加剤-
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0024】
-トナー粒子の特性等-
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0025】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0026】
なお、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2、数粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として算出される。
【0027】
トナー粒子の平均円形度としては、0.950以上0.990以下が好ましく、0.957以上0.980以下がより好ましい。
トナー粒子の平均円形度は、Sysmex社製FPIA-3000で測定する。本装置では、水などに分散させた粒子をフロー式画像解析法によって測定する方式が採用されており、吸引された粒子懸濁液はフラットシースフローセルに導かれ、シース液によって偏平な試料流が形成される。その試料流にストロボ光を照射することにより、通過中の粒子は対物レンズを通して、CCD(Charge Coupled Device)カメラで、静止画像として撮像される。撮像された粒子像を、2次元画像処理して、投影面積と周囲長から円形度を算出する。円形度に関しては、少なくとも4,000個以上各々画像解析を行い、統計処理することによって平均円形度を求める。
・式:円形度=円相当径周囲長/周囲長=[2×(Aπ)1/2]/PM
上式においてAは投影面積、PMは周囲長を表す。
なお、測定にはHPFモード(高分解能モード)を使用し、希釈倍率は1.0倍とする。また、データの解析に当たっては、測定ノイズ除去の目的で、円形度解析範囲を0.40以上1.00以下の範囲とする。
【0028】
(外添剤)
トナー粒子に外添される外添剤は、特定シリカ粒子を含む。
特定シリカ粒子は、モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物を含み、蛍光X線分析により測定される前記モリブデン元素のNet強度とシリカ粒子中のシリコン元素のNet強度との比率(Mo/Si)が0.035以上0.45以下である。
【0029】
-モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物-
特定シリカ粒子は、窒素元素含有化合物を含み、当該窒素元素含有化合物は更にモリブデン元素を含む。当該窒素元素含有化合物は、後述するように特に3官能シランカップリング剤の反応生成物の細孔の少なくとも一部に吸着していることが好ましい。
モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物は、シリカ粒子の帯電分布狭化による、画像ムラ抑制、トナー飛散抑制の観点から、モリブデン元素を含む四級アンモニウム塩(特に、四級アンモニウムのモリブデン元素を含む塩)、及び四級アンモニウム塩とモリブデン元素を含む金属酸化物との混合物よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
窒素元素化合物がモリブデン元素を含むことにより、窒素元素の活性を高め、窒素元素含有化合物がシリカ粒子の最表面ではなく細孔内部に存在しても、窒素元素の正帯電性を適度に発現することができる。そのため、帯電したとき帯電分布が狭く、帯電分布の維持性も高くなり易い。その結果、画像ムラ抑制、トナー飛散抑制が実現され易くなる。そして、後述するキャリアとの組合せにより、電荷リークが抑制でき、印刷における白点発生も抑制できる。
特に、四級アンモニウムのモリブデン元素を含む塩は、陰イオンであるモリブデン元素を含むアニオンが、陽イオンである四級アンモニウムカチオンとの結合が強いため、帯電分布維持性が高まる。その結果、画像ムラ抑制、トナー飛散抑制が実現され易くなる。
【0030】
モリブデン元素を含む四級アンモニウム塩としては、[N(CH)(C1429 Mo28 4-、[N(C(CMo 2-、[N(CH(CH)(CH17CHMoO 2-、[N(CH(CH)(CH15CHMoO 2-等が挙げられる。
モリブデン元素を含む金属酸化物としては、モリブデン酸化物(三酸化モリブデン、二酸化モリブデン、Mo26)、モリブデン酸アルカリ金属塩(モリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム等)、モリブデンアルカリ土類金属塩(モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸カルシウム等)、その他複合酸化物Bi・2MoO、γ-CeMo13等)が挙げられる。
【0031】
ここで、窒素元素含有化合物として、モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物を適用する場合、特定条件でのシリカ粒子の帯電分布狭化による、画像ムラ抑制、トナー飛散抑制及び、電荷リーク抑制から白点制御の観点から、蛍光X線分析により測定される、モリブデン元素のNet強度とシリコン元素のNet強度との比率(Mo/Si)は、0.035以上0.45以下とする。当該比率は0.07以上0.32以下が好ましく、0.10以上0.30以下がより好ましい。
シリカ粒子の特定条件下の帯電分布狭化による、画像ムラ抑制、トナー飛散抑制の観点から、モリブデン元素のNet強度は、5kcps以上75kcps以下、7kcps以上50kcps以下、8kcps以上55kcps以下、又は10kcps以上40kcps以下が好ましい。
【0032】
モリブデン元素及びシリコン元素のNet強度は、次の通り測定する。
シリカ粒子約0.5gを、圧縮成形機を用いて荷重6t且つ60秒の加圧で圧縮し、直径50mm且つ厚さ2mmのディスクを作製する。このディスクを試料にして、走査型蛍光X線分析装置(XRF-1500、(株)島津製作所製)を用いて、下記の条件で定性定量元素分析を行い、モリブデン元素及びシリコン元素それぞれのNet強度(単位:kilo counts per second,kcps)を求める。
・管電圧:40kV
・管電流:90mA
・測定面積(分析径):直径10mmφ
・測定時間:30分
・対陰極:ロジウム
【0033】
-窒素元素含有化合物の検出及び含有量-
特定シリカ粒子は、300℃以上600℃以下の範囲の温度帯で加熱した際に、窒素元素含有化合物が検出される。具体的には、例えば、次の通りである。
窒素元素含有化合物の検出には、例えば、キャリア―ガスとしてHeを用いた加熱炉式の落下型熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計を利用する。モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物は、不活性ガス下での300℃以上600℃以下の熱分解温度条件で検出することができる。具体的には0.1mg以上10mg以下のシリカ粒子を熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計に導入し、検出されるピークのMSスペクトルからモリブデン元素を含む窒素元素含有化合物の含有有無を確認することができる。
モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物の含有量は、シリカ粒子の帯電分布狭化による、画像ムラ抑制、トナー飛散抑制の観点から、シリカ粒子に対して、窒素元素換算で0.005質量%以上0.5質量%以下である。好ましくは0.05質量%以上0.4質量%以下であり、0.1質量%以上0.3質量%以下がより好ましい。
【0034】
また、窒素元素換算のモリブデン元素を含む窒素元素含有化合物の含有量は、次の通り測定する。
酸素・窒素分析装置(例えば堀場製作所社製のEMGA-920)を用いて、積算時間45秒で測定し、窒素元素の存在量をNの割合(N/Si)を得る。なお、試料前処理として、真空乾燥機で100℃24時間以上乾燥することで、アンモニア等不純物をシリカ粒子から除去しておく。
【0035】
-モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物の抽出量-
アンモニア/メタノール混合溶液によるモリブデン元素を含む窒素元素含有化合物の抽出量Xは、シリカ粒子100質量%に対して0.1質量%以上であり、窒素元素含有化合物の抽出量Xと、水による窒素元素含有化合物の抽出量Y(Xと同様にシリカ粒子100質量%に対する質量%)とが、式:Y/X<0.3を満たすことがよい。
つまり、モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物は、水に溶け難い性質、すなわち空気中の水分を吸着し難い。
モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物を含むシリカ粒子において、当該化合物が水分を吸着すると、帯電分布が広化し、また、シリカ粒子からモリブデン元素を含む窒素元素含有化合物が離脱し易くなる。
しかし、空気中の水分を吸着し難いモリブデン元素を含む窒素元素含有化合物を含むシリカ粒子は、空気中に水分が多分に存在しても(高湿度下でも)、帯電分布が広化し難く、かつ、窒素元素含有化合物が離脱し難く、狭い帯電分布が維持され易くなる。その結果、特定条件下のシリカ粒子の帯電分布狭化による、画像ムラ抑制、トナー飛散抑制が実現され易くなる。
【0036】
モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物の抽出量Xは、シリカ粒子100質量%に対して0.25質量%以上が好ましい。ただし、モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物の抽出量Xの上限は、表面張力の関係で、細孔内部へ溶液が浸透しづらく、モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物の一部は溶解せずに残ることから、例えば、6.5質量%以下である。
モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物の抽出量Xと当該化合物の抽出量Yとの比「Y/X」は、0.3未満が好ましく、0.15以下がより好ましい。ただし、比「Y/X」の下限は、理想的には、0であるが、X及びYの測定誤差範囲が±1%の範囲程度見られることから、例えば、0.01以上である。
【0037】
ここで、モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物の抽出量X及びYは、次の通り測定される。
まず、測定対象のシリカ粒子を、熱重量・質量分析装置(例えばネッチ・ジャパン 株式会社製のガスクロマトグラフ質量分析計)で400℃一定で分析し、少なくとも炭素数が1以上の炭化水素が窒素原子と共有結合した化合物の、シリカ粒子に対する質量分率の積算を測定し、W1とする。
【0038】
一方、液温25℃のアンモニア/メタノール溶液(Sigma-Aldrich社製、アンモニア/メタノールの質量比=1/5.2)30質量部に、測定対象のシリカ粒子1質量部を添加し、30分間超音波処理を行った後、シリカ粉体と抽出液を分離する。分離したシリカ粒子を真空乾燥機で100℃24時間乾燥し、熱重量・質量分析装置により、400℃一定条件で、少なくとも炭素数が1以上の炭化水素が窒素原子と共有結合した化合物のシリカ粒子に対する質量分率を測定し、W2とする。
そして、下記式で、窒素元素含有化合物の抽出量Xを算出する。
・式:X=W1-W2
【0039】
また、液温25℃の水30質量部に、測定対象のシリカ粒子1質量部を添加し、30分間超音波処理を行った後、シリカ粒子と抽出液を分離する。分離したシリカ粒子を真空乾燥機で100℃24時間乾燥し、熱重量・質量分析装置により、400℃一定条件で、少なくとも炭素数が1以上の炭化水素が窒素原子と共有結合した化合物のシリカ粒子に対する質量分率を測定し、W3とする。
そして、下記式で、モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物の抽出量Yを算出する。
・式:Y=W1-W3
【0040】
-細孔体積-
特定シリカ粒子において、350℃焼成前後における窒素ガス吸着法の細孔分布曲線から求める細孔直径1nm以上50nm以下の細孔体積を各々A及びBとしたとき、B/Aが1.2以上5以下であり、かつBが0.2cm/g以上3cm/g以下が好ましい。
特定シリカ粒子において、350℃焼成前の細孔体積Aに対する350℃焼成後の細孔体積Bとの比B/Aは、1.2以上5以下が好ましい。小さ過ぎると窒素元素含有化合物が脱離しやすく帯電持続効果が得られない傾向にあり、多すぎると窒素元素含有化合物がシリカ粒子の内部に入りすぎて静電反発不足で付着力低減効果が不足する傾向にある観点から、1.5以上4.5以下がより好ましく、2.5以上3.5以下が更に好ましい。
350℃焼成後の細孔体積Bは、0.2cm/g以上3cm/g以下が好ましいが、小さ過ぎると窒素元素含有化合物が脱離しやすく帯電持続効果が得られない傾向にあり、大きすぎると窒素元素含有化合物がシリカ粒子の内部に入りすぎて静電反発不足で付着力低減効果が不足する傾向にある観点から、0.5cm/g以上2.5cm/g以下がより好ましく、1.0cm/g以上2.0cm/g以下が更に好ましい。
350℃焼成前の細孔体積Aは、窒素元素の染み込みやすく、適度な静電反発の効果維持の観点から、0.1cm/0.9g以上cm/g以下が好ましく、0.3cm/g以上0.7cm/g以下がより好ましく、0.4cm/g以上0.6cm/g以下がさらに好ましい。
【0041】
350℃焼成は、具体的には、次の通り実施する。
窒素環境下、昇温速度10℃/分で、測定対象のシリカ粒子を350℃まで昇温し、350℃で3時間保持する。その後、昇温速度10℃/分で室温(25℃)まで冷却する。
【0042】
細孔体積は、次の通り測定する。
まず、測定対象のシリカ粒子を、液体窒素温度(-196℃)に冷却して、窒素ガスを導入し、その吸着量を定容量法又は重量法で求める。導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットすることにより吸着等温線を作成する。この吸着等温線から、BJH法の計算式により、縦軸が頻度、横軸が細孔直径で表される細孔径分布曲線を求める。
そして、得られた細孔径分布曲線から、縦軸が体積、横軸が細孔直径で表される積算細孔容積分布を求める。得られた積算細孔容積分布から、細孔直径1nm以上50nm以下の範囲の細孔容積を積算し、それを「細孔直径1nm以上50nm以下の細孔体積」とする。
【0043】
-CP/MAS NMRスペクトル-
特定シリカ粒子において、Si-CP/MAS NMRスペクトルおける化学シフト-50ppm以上-75ppm以下の範囲に観測されるシグナルの積分値Cと、化学シフト-90ppm以上-120ppm以下の範囲に観測されるシグナルの積分値Dの比率C/Eは、0.10以上0.75以下が好ましいが、シリカ粒子の帯電分布狭化による、画像ムラ抑制、トナー飛散抑制の観点から、0.12以上0.45以下がより好ましく、0.15以上0.40以下が更に好ましい。
シリカ粒子の帯電分布狭化、及び画像ムラ抑制の観点から、Si-CP/MAS NMRスペクトルの全シグナルの積分値を100%とした時の、化学シフト-50ppm以上-75ppm以下の範囲に観測されるシグナルの積分値Cの割合(Signal ratio)は、5%以上が好ましく、7%以上がより好ましい。なお、シグナルの積分値Cの割合の上限は、例えば、60%以下である。
【0044】
Si-CP/MAS NMRスペクトルは、下記条件で、核磁気共鳴分光分析法による測定を実施することで得られる。
・分光器:AVENCE300(Brunker社製)
・共鳴周波数:59.6MHz
・測定核:29Si
・測定法:CPMAS法(Bruker社標準パルクシークエンスcp.av使用)
・待ち時間:4秒
・接触時間:8ミリ秒
・積算回数:2048回
・測定温度:室温(実測値25℃)
・観測中心周波数:-3975.72Hz
・MAS回転数:7.0mm-6kHz
・基準物質:ヘキシメチルシクロトリシロキサン
【0045】
-シリカ粒子の構成-
特定シリカ粒子は、モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物を含有する。
具体的な例としては、特定シリカ粒子は、シリカ母粒子と、シリカ母粒子の少なくとも一部の表面が3官能シランカップリング剤の反応生成物で被覆され、さらに、前記反応生成物の少なくとも一部にモリブデン元素を含む窒素元素含有化合物が吸着した構造が挙げられる。前記構造を形成することで、上記細孔体積特性、上記Si-CP/MASNMRスペクトル特性を制御できる。また、後述する、疎水化度、及びOH基量も制御できる。
また、特定シリカ粒子において、前記構造の表面に、疎水化処理構造体を有していてもよい。
【0046】
-シリカ母粒子-
シリカ母粒子は、その少なくとも一部表面が、3官能シランカップリング剤の反応生成物で構成され、かつ3官能シランカップリング剤の反応生成物の細孔の少なくとも一部に窒素元素含有化合物が吸着した構造体が形成される対象となるシリカ粒子である。
シリカ母粒子としては、例えば、乾式シリカ粒子、湿式シリカ粒子が挙げられる。
乾式シリカ粒子としては、シラン化合物を燃焼させて得られる燃焼法シリカ(ヒュームドシリカ)、金属珪素粉を爆発的に燃焼させて得られる爆燃法シリカが挙げられる。
湿式シリカ粒子としては、珪酸ナトリウムと鉱酸との中和反応によって得られる湿式シリカ粒子(アルカリ条件で合成・凝集した沈降法シリカ、酸性条件で合成・凝集したゲル法シリカ粒子)、酸性珪酸をアルカリ性にして重合することで得られるコロイダルシリカ粒子(シリカゾル粒子)、有機シラン化合物(例えばアルコキシシラン)の加水分解によって得られるゾルゲル法シリカ粒子が挙げられる。
これらの中でも、シリカ母粒子としては、シリカ粒子の帯電分布狭化による、画像ムラ抑制、トナー飛散抑制の観点から、ゾルゲル法シリカ粒子が好ましい。
【0047】
-3官能シランカップリング剤の反応生成物-
3官能シランカップリング剤の反応生成物で構成された吸着構造は、低密度でかつ窒素元素含有化合物と親和性が高い構造であるため、細孔の奥深くまで窒素元素含有化合物が吸着し易く、窒素元素含有化合物の吸着量(つまり含有量)が多くなる。負帯電性を有するシリカ表面に対して正帯電性を有する窒素元素含有化合物が付着することで、過剰な負帯電を打ち消す効果が発生する。また、窒素元素含有化合物はシリカ粒子の最表面ではなく、低密度構造内部に吸着しているため、正帯電性が強くなりすぎて帯電分布が広がることを防ぎ、過剰な負帯電のみを打ち消すことで、より帯電分布の狭化が向上する。その結果、特定条件下でのシリカ粒子の帯電分布狭化による、画像ムラ抑制、トナー飛散抑制がより実現され易くなる。
【0048】
3官能シランカップリング剤の反応生成物とは、例えば、下記一般式(TA)において、ORがOH基に置換した反応生成物、ORがOH基に置換したもの同士が重縮合した反応生成物、ORがOH基に置換したものとシリカ粒子のSiOH基と重縮合した反応生成物が挙げられる。また、3官能シランカップリング剤の反応生成物は、これらはORすべて又は一部が置換した反応生成物、すべてあるいは一部が重縮合した反応生成物を含む。
3官能シランカップリング剤は、N(窒素)を含有しない非窒素元素含有化合物である。
具体的には、3官能シランカップリング剤としては、下記一般式(TA)で表され3官シランカップリング剤が挙げられる。
一般式(TA):R-Si(OR
【0049】
一般式(TA)中、Rは、炭素数1以上20以下の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基を表し、Rはハロゲン原子又はアルコキシ基を表す。複数のRは同じ基でもよいし、異なる基でもよい。
で表される脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、炭素数1以上20以下が好ましく、炭素数1以上18以下がより好ましく、炭素数1以上12以下が更に好ましく、炭素数1以上10以下が更に好ましい。脂肪族炭化水素基は、飽和及び不飽和のいずれでもよいが、飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0050】
飽和脂肪族炭化水素基としては、直鎖状アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、イコシル基等)、分岐鎖状アルキル基(イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2-エチルヘキシル基、ターシャリーブチル基、ターシャリーペンチル基、イソペンタデシル基等)、環状アルキル基(シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、トリシクロデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等)などが挙げられる。
【0051】
不飽和脂肪族炭化水素基としては、アルケニル基(ビニル基(エテニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-ブテニル基、1-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ドデセニル基、ペンテニル基等)、アルキニル基(エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、3-ヘキシニル基、2-ドデシニル基等)などが挙げられる。
【0052】
で表される芳香族炭化水素基は、炭素数6以上20以下が好ましく、より好ましくは炭素数6以上18以下、更に好ましくは炭素数6以上12以下、更に好ましくは炭素数6以上10以下である。
芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフタレン基、アントラセン基等が挙げられる。
【0053】
で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましい。
で表されるアルコキシ基としては、炭素数1以上10以下(好ましくは1以上8以下、より好ましくは1以上4以下)のアルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t-ブトキシ基、n-ブトキシ基、n-ヘキシロキシ基、2-エチルヘキシロキシ基、3,5,5-トリメチルヘキシルオキシ基等が挙げられる。アルコキシ基は、置換されたアルコキシ基も含む。アルコキシ基に置換し得る置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、アミド基、カルボニル基等が挙げられる。
【0054】
一般式(TA)で表される3官能シランカップリング剤は、Rが炭素数1以上20以下の飽和脂肪族炭化水素基であり、Rがハロゲン原子又はアルコキシ基である3官能シランカップリング剤が好ましい。
【0055】
3官能シランカップリング剤としては、例えば、
ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、デシルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン(以上、Rが、無置換の脂肪族炭化水素基又は無置換の芳香族炭化水素基である化合物);
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン(以上、Rが、置換された脂肪族炭化水素基又は置換された芳香族炭化水素基である化合物);
などが挙げられる。
3官能シランカップリング剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
これらの中でも、シリカ粒子の帯電分布狭化による、画像ムラ抑制、トナー飛散抑制の観点から、3官能シランカップリング剤としては、アルキルトリアルコキシシランが好ましく、一般式(TA)において、Rが炭素数1以上20以下(好ましくは炭素数1以上15以下)のアルキル基を示し、Rが炭素数1以上2以下のアルキル基を示すアルキルトリアルコキシシランがより好ましい。
【0057】
3官能シランカップリング剤の反応生成物で構成された構造体の付着量は、特定条件でのシリカ粒子の帯電分布狭化による、画像ムラ抑制、トナー飛散抑制の観点から、シリカ粒子に対して5.5質量%以上30質量%以下が好ましく、7質量%以上22質量%以下がより好ましい。
【0058】
モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物は、3官能シランカップリング剤の反応生成物の細孔の少なくとも一部に吸着していることが好ましい。
【0059】
(疎水化処理構造体)
疎水化処理構造体は、疎水化処理剤が反応した構造体である。
疎水化処理剤としては、例えば、有機ケイ素化合物が適用される。
有機ケイ素化合物としては、例えば、
メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン等の低級アルキル基を有するアルコキシシラン化合物又はハロシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するアルコキシシラン化合物;
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン等のスチリル基を有するアルコキシシラン化合物;
N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノアルキル基を有するアルコキシシラン化合物;
3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネートアルキル基を有するアルコキシシラン化合物;
ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン等のシラザン化合物;
などが挙げられる。
【0060】
(シリカ粒子の特性)
-疎水化度-
特定シリカ粒子の疎水化度は、特定条件下でのシリカ粒子の帯電分布狭化による、画像ムラ抑制、トナー飛散抑制の観点から、10%以上60%以下が好ましく、20%以上55%以下がより好ましく、28%以上53%以下がさらに好ましい。
シリカ粒子の疎水化度が10%以下であると、3官能シランカップリング剤の反応生成で構造体の被覆量が低く、窒素元素含有化合物の含有量が低減する、そのため、帯電分布が広がり易くなる。
一方、シリカ粒子の疎水化度が60%を超えると、3官能シランカップリング剤の反応生成で構造体の密度が高くなり、細孔も少なく、窒素元素含有化合物の含有量が低減する。そのため、帯電分布が広がり易くなる。その結果、シリカ粒子の帯電分布狭化による、画像ムラ抑制、トナー飛散抑制が実現され易くなる。
【0061】
シリカ粒子の疎水化度は、次の通り測定する。
イオン交換水50mlに、試料となるシリカ粒子を0.2質量%入れ、マグネティックスターラーで攪拌しながらビュレットからメタノールを滴下し、試料全量が沈んだ終点におけるメタノール-水混合溶液中のメタノール質量分率を、疎水化度として求める。
【0062】
-個数平均粒径及び個数粒度分布指標-
特定シリカ粒子の個数平均粒径は、10nm以上100nm以下が好ましく、10nm以上80nm以下がより好ましく、10nm以上70nm以下がより好ましい。
シリカ粒子の個数平均粒径が上記範囲であると、キャリアとの接触が好適であり、電荷リークが適度に調整されることで白点が抑制される。(10nmより小さいと、トナー表面やその他外添に埋もれやすく効果が出にくい。100nmより大きいと、トナーに保持されにくく、効果が出にくい。)
特定シリカ粒子の個数粒度分布指標は、1.1以上2.0以下が好ましく、1.15以上1.6以下がより好ましい。
特定シリカ粒子の個数粒度分布指標が上記範囲であると、帯電量が大きくなる傾向がある粗紛及び帯電量が小さくなる傾向がある微粉が少なく、帯電分布の狭化が実現され易くなる。その結果、シリカ粒子の帯電分布狭化による、画像ムラ抑制、トナー飛散抑制が実現され易くなる。
【0063】
ここで、シリカ粒子の個数平均粒径及び個数粒度分布指標は、次の通り測定する。
走査型電子顕微鏡(SEM)によりシリカ粒子を40,000倍で観察し、観察したシリカ粒子の画像を画像処理解析ソフトWinRoof(三谷商事(株)製)で解析し、少なくとも200個の粒子の円相当径を求める。そして、個々の粒子の個数について小径側から累積分布を描き、小径側から累積50%となる粒径、個数平均粒子径を求める。
【0064】
また、小径側から、累積84%となる粒径D84を、累積16%となる粒子径D16で除した値の平方根を「個数粒度分布指標」(GSD)と定義する。すなわち、個数粒径分布指標(GSD)=(D84/D16)0.5である。
【0065】
-円形度-
特定シリカ粒子の平均円形度は、0.60以上0.96以下が好ましく、0.70以上0.92以下がより好ましく、0.75以上0.90以下がさらに好ましい。
シリカ粒子の平均円形度が上記範囲であると、比表面積が大きく、過剰な帯電が生じやすいが、特定シリカ粒子の平均円形度が上記範囲でも、帯電分布の狭化が実現される。その結果、特定シリカ粒子の平均円形度が上記範囲でも、シリカ粒子の帯電分布狭化による、画像ムラ抑制、トナー飛散抑制が実現され易くなる。
【0066】
ここで、シリカ粒子の円形度は、次の通り測定する。
走査型電子顕微鏡(SEM)によりシリカ粒子を40,000倍で観察し、観察したシリカ粒子の画像を、画像処理解析ソフトWinRoof(三谷商事(株)製)を用いて解析し、少なくとも200個の粒子の円形度を求め、算術平均して平均円形度を算出する。
なお、円形度は、以下の式により算出する。
円形度=円相当径周囲長/周囲長=[2×(Aπ)1/2]/PM
上式において、Aは投影面積を表し、PMは周囲長を表す。
【0067】
-体積抵抗率-
特定シリカ粒子の体積抵抗率(つまり、350℃焼成前の体積抵抗率)は、1.0×10Ωcm以上1.0×1011.5Ωcm以下が好ましく、1.0×10Ωcm以上1.0×1011Ωcm以下がより好ましい。
特定シリカ粒子の体積抵抗率が上記範囲であると、窒素元素含有化合物の含有量が多く、過剰な帯電が生じ難く、帯電分布の狭化が実現され易くなる。その結果、特定条件下でのシリカ粒子の帯電分布狭化による、画像ムラ抑制、トナー飛散抑制が実現され易くなる。
【0068】
特定シリカ粒子において、350℃焼成前後におけるシリカ粒子の体積抵抗率を各々Ra及びRbとしたとき、Ra/Rbは、0.01以上0.8以下であることが好ましく、0.015以上0.6以下がより好ましい。
Ra/Rbが上記範囲であると、窒素元素含有化合物の含有量が多く、過剰な帯電が生じ難く、帯電分布の狭化が実現され易くなる。その結果、シリカ粒子の帯電分布狭化による、画像ムラ抑制、トナー飛散抑制が実現され易くなる。
【0069】
350℃焼成は、既述の通り実施する。
一方、体積抵抗率は、次の通り測定する。なお、測定環境は、温度20℃、湿度50%RHとする。
20cmの電極板を配した円形の治具の表面に、測定対象となるシリカ粒子を1mm以上3mm以下程度の厚さになるように載せ、シリカ粒子層を形成する。この上に前記同様の20cmの電極板を載せシリカ粒子層を挟み込む。シリカ粒子間の空隙をなくすため、シリカ粒子層上に載せた電極板の上に0.4MPaの圧力をかけてからシリカ粒子層の厚み(cm)を測定する。シリカ粒子層上下の両電極は、インピーダンスアナライザ(Solartron Analytical社製Iに接続されており、周波数10-3Hz以上10Hz以下を測定し、ナイキストプロット得る。これを、バルク抵抗、粒子界面抵抗及び電極接触抵抗の3種類の抵抗成分が存在すると仮定して、等価回路にフィッティングし、バルク抵抗Rを求める。
シリカ粒子の体積抵抗率(Ω・cm)の計算式は、下式に示す通りである。
・式:ρ=R/L
式中、ρはシリカ粒子の体積抵抗率(Ω・cm)、Rはバルク抵抗(Ω)、Lはシリカ粒子層の厚み(cm)をそれぞれ表す。
【0070】
(OH基量)
特定シリカ粒子において、シアーズ法で測定されるOH基量は、0.2個/nm以上5.5個/nm以下が好ましく、シリカ粒子の帯電分布狭化による、かぶり抑制、クラウド抑制及び細線再現性低下抑制の観点から、0.2個/nm以上4個/nm以下がより好ましく、0.2個/nm以上3個/nm以下がさらに好ましい。
シアーズ法で測定されるOH基量は、3官能シランカップリング剤の反応生成物で構成された構造をシリカ母粒子に形成することで上記範囲に調整できる。
【0071】
窒素元素含有化合物の吸着を阻害するOH基量を上記範囲まで低減することで、シリカ粒子の細孔(例えば、後述する吸着層の細孔)の奥深くまで、窒素元素含有化合物が入り込み易くなる。そして、窒素元素含有化合物に対する疎水性相互作用が働きシリカ粒子に対する付着力が強くなる。そのため、窒素元素含有化合物の吸着量が増す。それに加えて窒素元素含有化合物が離脱し難くなる。そのため、窒素元素含有化合物による帯電分布の狭化が向上すると共に、狭い帯電分布の維持性も向上する。その結果、シリカ粒子の帯電分布狭化による、画像ムラ抑制、トナー飛散抑制が実現され易くなる。
【0072】
また、OH基量を上記範囲まで低減することで、帯電特性の環境依存性が低くなり、いずれの環境下(特に、過剰な負帯電化が生じやすい低温低湿環境下)でも、窒素元素含有化合物による帯電分布の狭化が実現し易くなる。その結果、特定条件でシリカ粒子の帯電分布狭化による、画像ムラ抑制、トナー飛散抑制が実現され易くなる。
【0073】
OH基量は、シアーズ法で測定される。具体的には、次の通りである。
シリカ粒子1.5gを純水50gとエタノール50g混合液に加えて、超音波ホモジナイザーで2分間撹拌し、分散液を作成する。25℃の環境下で撹拌しながら、0.1mol/Lの塩酸水溶液を1.0g滴下し、試験液を得る。得られた試験液を自動滴定装置に入れ、0.01mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液による電位差滴定を実施し、滴定曲線の微分曲線を作成する。滴定曲線の微分値が1.8以上となる変曲点の内、0.01mol/L水酸化ナトリウム水溶液の滴定量が最も多くなる滴定量をHとする。
下記式を用いて、シリカ粒子の表面シラノール基密度ρ(個/nm)を算出する。式:ρ=((0.01×H-0.1)×NA/1000)/(U×SBET×1018
式中、符号の詳細は次の通りである。
H:滴定曲線の微分値が1.8以上となる変曲点の内、0.01mol/L水酸化ナトリウム水溶液の滴定量が最も多くなる滴定量
NA:アボガドロ数
U:シリカ粒子量(1.5g)
BET:シリカ粒子の比表面積(m/g) シリカ粒子の比表面積は、BET式の窒素吸着法3点法により測定する。なお、平衡相対圧は0.3とする。
【0074】
-特定シリカ粒子の製造方法-
特定シリカ粒子の製造方法の一例は、
シリカ母粒子の少なくとも一部の表面に、3官能シランカップリング剤の反応生成物で構成された構造体を形成する第一工程と、
3官能シランカップリング剤の反応生成物の細孔の少なくとも一部に、モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物を吸着させる第二工程と、
を有する。
特定シリカ粒子の製造方法は、第二工程後又は第二工程中に、シリカ母粒子の少なくとも一部の表面を被覆し、3官能シランカップリング剤の反応生成物で構成され、かつ前記3官能シランカップリング剤の反応生成物の細孔の少なくとも一部にモリブデン元素を含む窒素元素含有化合物が吸着した構造体を有するシリカ母粒子に、疎水化処理を行う第三工程をさらに有してもよい。
【0075】
以下、特定シリカ粒子の製造方法の工程を詳細に説明する。
[準備工程]
まず、シリカ母粒子を準備する工程について説明する。
準備工程としては、例えば、
(i)アルコールを含む溶媒とシリカ母粒子とを混合してシリカ母粒子懸濁液を準備する工程
(ii)シリカ母粒子をゾルゲル法により造粒してシリカ母粒子懸濁液を得る工程
等が挙げられる。
前記(i)に用いるシリカ母粒子としては、ゾルゲルシリカ粒子(ゾルゲル法により得られたシリカ粒子)、水性コロイダルシリカ粒子、アルコール性シリカ粒子、気相法により得られるフェームドシリカ粒子、溶融シリカ粒子等が挙げられる。
前記(i)に用いるアルコールを含む溶媒は、アルコール単独の溶媒であってもよいし、アルコールとその他の溶媒との混合溶媒であってもよい。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコールが挙げられる。その他の溶媒としては、水;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸セロソルブ等のセロソルブ類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;などが挙げられる。混合溶媒の場合、アルコールの割合は80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましい。
【0076】
工程(1-a)は、シリカ母粒子をゾルゲル法により造粒してシリカ母粒子懸濁液を得る工程であることが好ましい。
より具体的に、工程(1-a)は、例えば、
アルコールを含む溶媒中にアルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備するアルカリ触媒溶液準備工程と、
アルカリ触媒溶液中にテトラアルコキシシラン及びアルカリ触媒を供給して、シリカ母粒子を生成させるシリカ母粒子生成工程と、
を含むゾルゲル法であることが好ましい。
【0077】
アルカリ触媒溶液準備工程は、アルコールを含む溶媒を準備し、この溶媒とアルカリ触媒とを混合して、アルカリ触媒溶液を得る工程であることが好ましい。
【0078】
アルコールを含む溶媒は、アルコール単独の溶媒であってもよいし、アルコールとその他の溶媒との混合溶媒であってもよい。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコールが挙げられる。その他の溶媒としては、水;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸セロソルブ等のセロソルブ類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;などが挙げられる。混合溶媒の場合、アルコールの割合は80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましい。
【0079】
アルカリ触媒は、テトラアルコキシシランの反応(加水分解反応と縮合反応)を促進させるための触媒であり、例えば、アンモニア、尿素、モノアミン等の塩基性触媒が挙げられ、特にアンモニアが好ましい。
アルカリ触媒溶液におけるアルカリ触媒の濃度は、0.5mol/L以上1.5mol/L以下が好ましく、0.6mol/L以上1.2mol/L以下がより好ましく、0.65mol/L以上1.1mol/L以下がより好ましい。
【0080】
シリカ母粒子生成工程は、アルカリ触媒溶液中にテトラアルコキシシランとアルカリ触媒とをそれぞれ供給し、アルカリ触媒溶液中でテトラアルコキシシランを反応(加水分解反応と縮合反応)させて、シリカ母粒子を生成する工程である。
シリカ母粒子生成工程では、テトラアルコキシシランの供給初期にテトラアルコキシシランの反応により核粒子が生成した後(核粒子生成段階)、この核粒子の成長を経て(核粒子成長段階)、シリカ母粒子が生成する。
【0081】
テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。反応速度の制御性又は生成するシリカ母粒子の形状の均一性の観点から、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランが好ましい。
【0082】
アルカリ触媒溶液中に供給するアルカリ触媒としては、例えば、アンモニア、尿素、モノアミン、四級アンモニウム塩等の塩基性触媒が挙げられ、特にアンモニアが好ましい。テトラアルコキシシランと共に供給されるアルカリ触媒は、アルカリ触媒溶液中に予め含まれるアルカリ触媒と同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよいが、同じ種類のものであることが好ましい。
アルカリ触媒溶液中にテトラアルコキシシランとアルカリ触媒とをそれぞれ供給する供給方式は、連続的に供給する方式であってもよいし、間欠的に供給する方式であってもよい。
【0083】
シリカ母粒子生成工程において、アルカリ触媒溶液の温度(供給時の温度)は、5℃以上50℃以下が好ましく、15℃以上45℃以下がより好ましい。
【0084】
[第一工程]
第一工程では、3官能シランカップリング剤の反応生成物で構成された構造を形成する。
具体的には、第一工程では、例えば、シリカ母粒子懸濁液に、3官能シランカップリング剤を添加し、シリカ母粒子の表面に3官能シランカップリング剤を反応させ、3官能シランカップリング剤の反応生成物で構成された構造体を形成する。3官能シランカップリング剤は、3官能シランカップリング剤の官能基同士、3官能シランカップリング剤の官能基とシリカ粒子表面のOH基とが反応して、3官能シランカップリング剤の反応生成物で構成された構造体を形成する。
【0085】
3官能シランカップリング剤の反応は、3官能シランカップリング剤をシリカ母粒子懸濁液に添加後、懸濁液を撹拌しながら、加熱することで実施する。
具体的には、例えば、懸濁液を40℃以上70℃に加熱し、3官能シランカップリング剤を添加した後、撹拌する。撹拌を持続する時間は、10分間以上24時間以下が好ましく、60分間以上420分間以下がより好ましく、80分間以上300分間以下が更に好ましい。
【0086】
[第二工程]
第二工程では、3官能シランカップリング剤の反応生成物の細孔の少なくとも一部に、窒素元素含有化合物を吸着させる。
具体的には、第二工程では、まず、例えば、シリカ母粒子懸濁液に窒素元素含有化合物を添加し、例えば、20℃以上50℃以下の温度範囲で、撹拌する。それにより、窒素元素含有化合物が、3官能シランカップリング剤の反応生成物の細孔の少なくとも一部に吸着する。
【0087】
第二工程では、例えば、窒素元素含有化合物を含むアルコール液を、シリカ粒子懸濁液に添加してもよい。
アルコールは、シリカ母粒子懸濁液に含まれるアルコールと同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよいが、同じ種類であることがより好ましい。
窒素元素含有化合物を含むアルコール液において、窒素元素含有化合物の濃度は0.05質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上6質量%以下がより好ましい。
【0088】
[第三工程]
第三工程では、第二工程後又は第二工程中に、3官能シランカップリング剤の反応生成物の細孔の少なくとも一部に窒素元素含有化合物が吸着された構造体を有するシリカ母粒子に、疎水化処理を行う。
具体的には、第三工程では、例えば、前記構造体が形成されたシリカ母粒子懸濁液に、窒素元素含有化合物を添加後、疎水化処理剤を添加する。
疎水化処理剤は、疎水化処理剤の官能基同士、疎水化処理剤官能基とシリカ母粒子のOH基とが反応して、疎水化処理層を形成する。
【0089】
疎水化処理剤の反応は、3官能シランカップリング剤をシリカ母粒子懸濁液に添加後、懸濁液を撹拌しながら、加熱することで実施する。
具体的には、例えば、懸濁液を40℃以上70℃に加熱し、疎水化処理剤を添加した後、撹拌する。撹拌を持続する時間は、10分間以上24時間以下が好ましく、20分間以上120分間以下がより好ましく、20分間以上90分間以下が更に好ましい。
【0090】
[乾燥工程]
特定シリカ粒子の製造方法は、第二工程又は第三工程を実施後、懸濁液から溶媒を除去する乾燥工程を実施することがよい。なお、乾燥工程は、第二工程又は第三工程中に実施してもよい。
【0091】
乾燥は、例えば、熱乾燥、噴霧乾燥、超臨界乾燥が挙げられる。
噴霧乾燥は、市販のスプレイドライヤー(ディスク回転式やノズル式等がある)を用いた従来公知の方法で行うことができる。例えば、熱風気流中に0.2リットル/時間以上1リットル/時間以下の速度で噴霧液を噴霧することによって行われる。この際、熱風の温度は、入口温度で70℃以上400℃以下、出口温度で40℃以上120℃以下の範囲にあることが好ましい。ここで、入口温度が70℃未満であると、分散液中に含まれる固形分の乾燥が不充分となる。また400℃を超えると、噴霧乾燥時に粒子の形状が歪んでしまう。また、出口温度が40℃未満であると、固形分の乾燥度合いが悪くて装置内に付着してしまう。より好ましい入口温度は、100℃以上300℃以下の範囲である。
噴霧乾燥時のシリカ粒子懸濁液のシリカ粒子濃度は、固形分で10質量%以上30質量%以下の範囲が好ましい。
【0092】
超臨界乾燥は、超臨界流体によって溶媒を除去することにより、粒子間での表面張力が働き難く、懸濁液中に含まれる一次粒子が、凝集が抑制された状態で乾燥される。そのため、粒径の均一性が高い、シリカ粒子が得られ易くなる。
超臨界流体として用いられる物質としては、二酸化炭素、水、メタノール、エタノール、アセトン等が挙げられる。溶媒除去工程は、処理効率の観点と、粗大粒子の発生を抑制する観点とから、超臨界二酸化炭素を用いる工程であることが好ましい。
【0093】
超臨界乾燥は、具体的には、例えば以下の操作によって行う。
密閉反応器に懸濁液を収容し、次いで液化二酸化炭素を導入した後、密閉反応器を加熱すると共に高圧ポンプにより密閉反応器内を昇圧させ、密閉反応器内の二酸化炭素を超臨界状態とする。そして、密閉反応器に液化二酸化炭素を流入させ、密閉反応器から超臨界二酸化炭素を流出させることで、密閉反応器内において懸濁液に超臨界二酸化炭素を流通させる。懸濁液に超臨界二酸化炭素が流通する間に、溶媒が超臨界二酸化炭素に溶解し、密閉反応器外へ流出する超臨界二酸化炭素に同伴して溶媒が除去される。
上記の密閉反応器内の温度及び圧力は、二酸化炭素を超臨界状態にする温度及び圧力とする。二酸化炭素の臨界点が31.1℃/7.38MPaであるところ、例えば、温度40℃以上200℃以下/圧力10MPa以上30MPa以下の温度及び圧力とする。
超臨界乾燥における超臨界流体の流量は、80mL/秒以上240mL/秒以下であることが好ましい。
【0094】
得られた特定シリカ粒子に対しては、必要に応じて解砕又は篩分を行って、粗大粒子や凝集物の除去を行うことが好ましい。解砕は、例えば、ジェットミル、振動ミル、ボールミル、ピンミル等の乾式粉砕装置により行う。篩分は、例えば、振動篩、風力篩分機等により行う。
特定シリカ粒子の外添量(含有量)は、例えば、トナー粒子に対して、0.25質量%以上2.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下がより好ましい。
【0095】
-その他の外添剤-
外添剤は、特定シリカ粒子以外のその他の外添剤を併用してもよい。
その他の外添剤としては、特定シリカ粒子以外の他の無機粒子、有機粒子が挙げられる。
他の無機粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭化珪素、窒化珪素等の粒子が挙げられる。
【0096】
他の無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、他の無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0097】
有機粒子としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メラミン樹脂等の樹脂粒子)等が挙げられる。
その他の外添剤の外添量(含有量)としては、例えば、トナー粒子に対して、0.05質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3.0質量%以下がより好ましい。
【0098】
(トナーの製造方法)
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、必要に応じて、外添剤を外添することで得られる。
【0099】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0100】
具体的には、例えば、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を準備する工程(樹脂粒子分散液準備工程)と、樹脂粒子分散液中で(必要に応じて他の粒子分散液を混合した後の分散液中で)、樹脂粒子(必要に応じて他の粒子)を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0101】
以下、各工程の詳細について説明する。
なお、以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤、離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤、離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0102】
-樹脂粒子分散液準備工程-
まず、結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と共に、例えば、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
ここで、樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0103】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0104】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0105】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下がさらに好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA-700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0106】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
なお、樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0107】
-凝集粒子形成工程-
次に、樹脂粒子分散液と共に、着色剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含む凝集粒子を形成する。
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度(具体的には、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度-30℃以上ガラス転移温度-10℃以下)の温度に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
【0108】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0109】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体等が挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等が挙げられる。
キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0110】
-融合・合一工程-
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0111】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
なお、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、凝集粒子の表面にさらに樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア/シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。
【0112】
ここで、融合・合一工程終了後は、溶液中に形成されたトナー粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態のトナー粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0113】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レ-ディゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0114】
(キャリア)
以下、本実施形態に係るキャリアについて、詳細に説明する。
本実施形態に係るキャリアは、比誘電損率が0.5以上2.0以下である。比誘電損率が前記範囲であればキャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に被覆樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。
なお、磁性粉分散型キャリア、及び樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、これに被覆樹脂により被覆したキャリアであってもよい。
【0115】
芯材は、キャリアの比誘電損率を調整しやすいため、粒子状の磁性粉、つまり、磁性粒子であることが好ましい。
磁性粒子の体積平均粒径は、例えば20μm以上50μm以下であることが好ましい。
磁性粒子としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられる。
本実施形態においては、芯材の磁性粒子が下記式(1)を含むフェライトを含むことが好ましい。磁性粒子が式(1)で表されるフェライトを含むことにより、本実施形態のキャリアの比誘電損率を望ましい範囲に調整しやすい。
【0116】
(MO)(Fe 式(1)
式(1)において、kは1.20以上1.45以下の数値を表し、jは3-2kの数値を表す。Mは金属元素を表し、当該金属元素として少なくともMgを含む。
フェライトの組成比Fe:M=2:1に対して、Feを多くすることにより誘電性が高まる。そのため、式(1)においてkは1.20以上1.45以下の数値が好ましく、更に1.25以上1.30以下の数値が好ましい。
式(1)のMとしては、Mgを主体とするが、Ti、Zr、Mn、Sr、Si、Li、Ca、Sn、Cu、Zn、及びBaからなる群より選択される少なくとも一種を組み合わせてもよい。キャリアの誘電性を高め、現像剤における電荷リークを低減させる観点から、Fe1モルに対するMgの含有量は0.04モル以上0.20モル以下が好ましく、更に0.07モル以上0.15モル以下が好ましい。同じ目的でMgに加えてMnを含有してもよく、Mgと併用する場合のFe1モルに対するMnの含有量は0.002モル以上0.05モル以下が好ましく、更に0.003モル以上0.004モル以下が好ましい。
【0117】
また、Ti、Zrを含有することが好ましい。Fe増加に伴い、酸化鉄がフェライト化して結晶が成長して誘電性が高くなるが、フェライトは導電性を有するため、誘電性は高くなると同時に電気抵抗が低くなり電荷リークが発生しやすくなる。Ti,Zrが存在することにより電荷リークは抑制され、かつ、誘電性への悪影響が少ない。
Fe1モルに対するTiの含有量は0.02モル以上0.05モル以下が好ましく、更に0.03モル以上0.04モル以下が好ましい。また、Fe1モルに対するZrの含有量は0.014モル以上0.018モル以下が好ましく、更に0.0153モル以上0.016モル以下が好ましい。TiとZrは一方を含有してもよいが、併用することも可能である。
更に、Sr、Si等他の金属元素を含有することも可能である。Fe1モルに対する含有量は、0.001モル以上0.03モル以下が好ましく、更には0.003モル以上0.02モル以下が好ましい。
以上のように、各金属を選択することにより、キャリアの比誘電損率を調整することができる。
【0118】
本実施形態において、磁性粒子に含まれるフェライトの組成、及び、磁性粒子に含まれるFe1モルに対するMg、Mn、Ti、Zr等の金属の含有量は、下記方法により決定される。
蛍光X線により構成元素を特定することが出来る。また定量分析から検量線を用いて含有量を測定する。得られた含有量を原子量で割ることでモル数が得られ、その比からそれぞれのFeに対するモル比を得ることが出来る。
【0119】
本実施形態において、キャリアに使用する被覆樹脂、及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、被覆樹脂、及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。
導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0120】
ここで、芯材の表面に被覆樹脂を被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0121】
なお、特定シリカ粒子とキャリアとの質量比(シリカ/キャリア)は、シリカ粒子とキャリアとの間に適度な反発が生じ、安定した帯電特性を維持し、電荷リークを抑制する観点から、0.03以上0.15以下が好ましく、0.05以上0.12以下がより好ましく、0.07以上0.10以下が更に好ましい。
また、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0122】
<画像形成装置、画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0123】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0124】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;等の公知の画像形成装置が適用される。
本実施形態に係る画像形成装置が中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0125】
本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して着脱するカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容した現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0126】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を説明するが、これに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0127】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づく、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して着脱するプロセスカートリッジであってもよい。
【0128】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの上方には、各ユニットを通して中間転写ベルト(中間転写体の一例)20が延設されている。中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20の内面に接する、駆動ロール22及び支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行するようになっている。支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。中間転写ベルト20の像保持面側には、駆動ロール22と対向して中間転写ベルトクリーニング装置30が備えられている。
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段の一例)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーの供給がなされる。
【0129】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成及び動作を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエローの画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。
【0130】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール(一次転写手段の一例)5Y、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(像保持体クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
【0131】
一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。各ユニットの一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスの値を変える。
【0132】
以下、第1のユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が-600V乃至-800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線が照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3からレーザ光線3Yを照射する。それにより、イエローの画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0133】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転する。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として現像され可視化される。
【0134】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で撹拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして、感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0135】
感光体1Y上のイエローのトナー画像が一次転写位置へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用し、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と逆極性の(+)極性であり、第1のユニット10Yでは制御部(図示せず)によって例えば+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは、感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0136】
第2ユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエローのトナー画像が転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0137】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と、中間転写ベルトの内面に接する支持ロール24と、中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と同極性の(-)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用し、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0138】
トナー画像が転写された記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれ、トナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0139】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体としては、記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0140】
<プロセスカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、現像手段と、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0141】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0142】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111 (現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【実施例0143】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。以下の説明において、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0144】
<トナー粒子の作製>
(トナー粒子(1))
-非晶性ポリエステル樹脂の合成-
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物〔富士フイルム和光純薬(株)製〕:
150部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物〔富士フイルム和光純薬(株)製〕:250部
・テトラプロペニルコハク酸無水物〔富士フイルム和光純薬(株)製〕:130部
・テレフタル酸〔富士フイルム和光純薬(株)製〕:100部
・トリメット酸〔富士フイルム和光純薬(株)製〕:15部
攪拌器、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、上記モノマー成分を投入し、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、ジオクタン酸スズを前記モノマー成分の合計量に対して0.3%投入した。窒素ガス気流下温度を235℃まで1時間かけて昇温し、3時間反応させ、反応容器内を10.0mmHgまで減圧し、攪拌反応させ、求められる分子量になった時点で反応を終了した。
得られた非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は61℃、重量平均分子量は42,000、酸価は13mgKOH/gであった。
【0145】
-非晶性ポリエステル樹脂分散液の調製-
・非晶性ポリエステル樹脂:100部
・メチルエチルケトン:60部
・イソプロピルアルコール:10部
撹拌機を備えた反応容器中に、上記成分を投入し、60℃にて溶解させた。溶解を確認した後、反応容器を35℃に冷却した後、10%アンモニア水溶液3.5部を添加した。
次いで、イオン交換水300部を3時間掛けて反応容器中に滴下し、ポリエステル樹脂分散液を作成した。次いで、エバポレーターにてメチルエチルケトン、並びに、イソプロピルアルコールを除去し、非晶性ポリエステル樹脂分散液を得た。
【0146】
-着色剤粒子分散液の調製-
・シアン顔料〔PigmentBlue15:3、大日精化工業(株)製〕 10部
・アニオン性界面活性剤〔ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製〕 2部
・イオン交換水 80部
上記の成分を混合し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー〔HJP30006、(株)スギノマシン製〕により1時間分散し、体積平均粒径180nm、固形分20%の着色剤粒子分散液を得た。
【0147】
-離型剤粒子分散液の調製-
・パラフィンワックス〔HNP 9、日本精鑞社製〕 50部
・アニオン性界面活性剤〔ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製〕 2部
・イオン交換水 200部
上記成分を120℃に加熱して、IKA社製、ウルトラタラックスT50で混合・分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、体積平均粒径が200nm、固形分20%の離型剤粒子分散液を得た。
【0148】
-トナー粒子(1)の作製-
・非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液 210部
・着色剤粒子水分散液 25部
・離型剤粒子分散液 30部
・ポリ塩化アルミニウム 0.4部
・イオン交換水 100部
上記の成分をステンレス製フラスコに投入し、IKA社製のウルトラタラックスを用い混合、分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら48℃まで加熱した。48℃で25分保持した後、ここに上記と同じポリエステル樹脂分散液を緩やかに70部追加した。
【0149】
その後、濃度0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて系内のpHを8.0に調整した後、ステンレス製フラスコを密閉し、攪拌軸のシールを磁力シールして攪拌を継続しながら90℃まで加熱して3時間保持した。反応終了後、降温速度を2℃/分で冷却し、濾過、イオン交換水で洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を行った。これをさらに30℃のイオン交換水3Lを用いて再分散し、15分間300rpmで攪拌・洗浄した。この洗浄操作をさらに6回繰り返し、濾液のpHが7.54、電気伝導度6.5μS/cmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo.5Aろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続してトナー粒子(1)を得た。
トナー粒子(1)の体積平均粒径(D50v)は、6.1μmであり、平均円形度は0.965であった。
【0150】
<外添剤の作製>
[シリカ粒子の作製]
-アルカリ触媒溶液の準備-
金属製攪拌棒、滴下ノズル及び温度計を備えたガラス製反応容器に、メタノール950部と表1に示す量及び濃度のアンモニア水(NHOH)を入れ、攪拌混合して、アルカリ触媒溶液を得た。
-ゾルゲル法によるシリカ母粒子の造粒-
アルカリ触媒溶液の温度を40℃に調整し、アルカリ触媒溶液を窒素置換した。次いで、アルカリ触媒溶液を攪拌しながら、表1に示す量のテトラメトキシシラン(TMOS)と、触媒(NH)濃度7.9%のアンモニア水(NHOH)124部とを、同時に滴下し、シリカ母粒子懸濁液を得た。
【0151】
-3官能シランカップリング剤の添加-
シリカ母粒子懸濁液を40℃に加熱して撹拌しながら、懸濁液に、3官能シランカップリング剤としてメチルトリメトキシラン(MTMS)を表1に示す量を添加した。その後、120分撹拌を続けて、3官能シランカプリング剤を反応させ、吸着構造を形成した。
-窒素元素含有化合物の添加-
詳細を次に示す窒素元素含有化合物TP-415又はn-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドを表1に記載した量を用い、ブタノールで希釈したアルコール液を作製した。
TP-415:[N(CH)(C14292 Mo28 4-(N,N-Dimethyl-N-tetradecyl-1-tetradecanaminium,hexa-μ-oxotetra-μ3-oxodi-μ5-oxotetradecaoxooctamolybdate(4-)(4:1)保土谷化学工業社製
次に、窒素元素含有化合物をブタノールで希釈したアルコール液を懸濁液に添加した。この際、アルコール液の添加は、シリカ母粒子懸濁液の固形分100部に対して窒素元素含有化合物の部数が表1に示す量となるように行った。次いで、30℃で100分間攪拌し、窒素元素含有化合物を含む懸濁液を得た。
-乾燥-
続いて、反応槽に、懸濁液を、300質量部収容し、攪拌しながらCOを入れ、反応槽内を150℃、圧力15Mpaまで昇温昇圧した。温度と圧力を維持した状態で攪拌しながら、COを流量5L/minにて流入及び流出させた。その後、120分間かけて溶媒を除去し、シリカ粒子A-1~A-13を得た。
【0152】
【表1】
【0153】
<シリカ粒子の評価>
得られたシリカ粒子の下記特性について、既述の方法に従って測定した。各シリカ粒子について測定値を表1に記載した。
・個数平均粒径(表中、「平均粒径」と表記。)
・平均円形度
・窒素元素換算の窒素元素化合物の含有量(表中、「N含有量(N元素換算)」と表記。)
・蛍光X線分析により測定される、モリブデン元素のNet強度とシリコン元素のNet強度との比率(表中、「Mo/Si」と表記。)
【0154】
<キャリア芯材の作製>
(フェライト粒子の作製)
表2に記載する量のフェライト材料を混合し、湿式ボールミルを用いて10時間混合及び粉砕を行った。次に、スプレードライヤーにより造粒し、乾燥した、次いでロータリーキルンを用いて900℃、6時間の仮焼成1を行った。得られた仮焼成1の仮焼成物を、湿式ボールミルにより2時間粉砕し、平均粒径2μmとした後、更にスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、次いでロータリーキルンを用いて950℃、6時間の仮焼成2を行った。得られた仮焼成2の仮焼成物を、湿式ボールミルにより5時間粉砕し、平均粒径を5μmとした後、更にスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、続いて表2に記載する温度の電気炉で5時間の焼成を行った。焼成後、解砕工程、分級工程を得て粒径約35μmのフェライト粒子1~9を得た。
【0155】
<キャリア1の作製>
・トルエン 14部
・イソプロピルアルコール 4部
・シクロヘキシルメタクリレート(平均分子量Mw 5万) 2部
・カーボンブラックVXC72(キャボット製) 0.2部
上記成分を10分間スターラーで撹拌させて、分散した被覆液を調製し、次に、この被覆液と100部のフェライト粒子1とを真空脱気型ニーダーに入れて、60℃において30分撹拌した後、さらに加温しながら減圧して脱気し、乾燥させることによりキャリア1を得た。
<キャリア2~9の作製>
フェライト粒子1に代えて、フェライト粒子2~9をそれぞれ100部使用する以外はキャリア1と同様にして、キャリア2~9を得た。
【0156】
<キャリア粒子の評価>
トナー粒子(1)と各キャリアとを、トナー比率8%として混合した測定用現像剤を、厚さ5mmとなるように圧縮成型し、次にWayneKerr社製LCRメーターにて 6KHz、5V(RSM)の条件で比誘電損率を測定し、表2に記載した。また、フェライト粒子1~9の詳細組成について、表3に記載した。
【0157】
【表2】
【0158】
【表3】
【0159】
<現像剤の作製>
トナー粒子(1)100部に、表4に示す種類のシリカ粒子(外添剤)を、表4に記載したトナー中のシリカ量となるように添加し、ヘンシェルミキサーで撹拌周速30m/secで15分間混合し、各実施例、比較例のトナーを得た。
得られた各トナーとキャリア1~9とを、表4に記載した「現像剤中のトナー割合」となる割合でVブレンダーに入れ、20分間撹拌し、実施例1~21、比較例1~4それぞれの現像剤を得た。各現像剤におけるシリカとキャリアの重量比(シリカ/キャリア)を表4に記載する。
【0160】
<白点発生評価>
実施例1~21、比較例1~4の各現像剤について、DocuCentreColor400CP(富士フイルムビジネスイノベーション社製)を用い、25℃、15%RH条件下において、白紙印刷を100枚行った。続いて、速度を半分とするモード10cm四方のベタ印刷を10枚実施し、10枚の画像中の白点(色抜け)の数をカウントした。
各実施例、比較例における白点数と下記基準に基づく判定を表4に記載する。なお、許容できるのは評価A及びBである。
―評価基準―
A:白点数0~1
B:白点数2~4
C:白点数5以上
表4に示すように、実施例の現像剤を用いた印刷では白点の発生が抑制されることがわかった。
【0161】
【表4】
【0162】
(付記)
(((1)))
トナー粒子と、
前記トナー粒子に外添されるシリカ粒子であって、モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物を含み、蛍光X線分析により測定される当該モリブデン元素のNet強度とシリカ粒子中のシリコン元素のNet強度との比率(Mo/Si)が0.035以上0.45以下であるシリカ粒子と、
比誘電損率が0.5以上2.0以下であるキャリアと、
を含む静電荷像現像剤。
(((2)))
前記キャリアがフェライトからなり、当該フェライトはチタン及びジルコニウムの少なくとも一方を含む、(((1)))記載の静電荷像現像剤。
(((3)))
前記キャリアの比誘電損率は0.7以上1.7以下である、(((1)))又は(((2)))記載の静電荷像現像剤。
(((4)))
前記フェライトが更にマンガン及びマグネシウムを含む、(((2)))又は(((3)))記載の静電荷像現像剤。
(((5)))
前記前記シリカ粒子と前記キャリアの重量比(シリカ/キャリア)は、0.03以上0.15以下である、(((1)))から(((4)))のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤。
(((6)))
前記モリブデン元素のNet強度と前記シリコン元素のNet強度との比率(Mo/Si)は0.10以上0.30以下である、(((1)))から(((5)))のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤。
(((7)))
前記モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物が、モリブデン元素を含む四級アンモニウム塩である、(((1)))から(((6)))のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤。
(((8)))
前記シリカ粒子の個数平均粒径が10nm以上100nm以下である、(((1)))から(((7)))のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤。
(((9)))
前記シリカ粒子は、
シリカ母粒子と、
前記シリカ母粒子の少なくとも一部の表面を被覆し、3官能シランカップリング剤の反応生成物で構成され、かつ当該3官能シランカップリング剤の反応生成物の細孔の少なくとも一部に前記モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物が吸着した構造体と、
を有する、(((8)))記載の静電荷像現像剤。
(((10)))
(((1)))から(((9)))のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤を収容し、当該静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
(((11)))
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
(((1)))から(((9)))のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤を収容し、当該静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
(((12)))
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
(((1)))から(((9)))のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【0163】
(((1)))の発明によれば、シリカ粒子が外添されたトナー粒子と、キャリアとを含む静電荷像現像剤等において、画像濃度を極度に高くするような印刷をする場合においても、高温高湿下での電荷リークが抑制され、白点発生が抑制される静電荷像現像剤を提供することができる。
(((2)))の発明によれば、前記キャリアがフェライトからなり、当該フェライトがチタン又はジルコニウムを含まない場合と比較して、キャリアの比誘電損率が調整され、適度な帯電性を有する静電荷像現像剤を提供できる。
(((3)))の発明によれば、前記キャリアの比誘電損率が0.7未満又は1.7を超える場合と比較して、キャリアが好ましい帯電性を有し、電荷リーク発生が抑制することが可能な静電荷像現像剤を提供できる。
(((4)))の発明によれば、前記キャリアにおけるフェライトが、マンガン及びマグネシウムのいずれをも含まない場合と比較して、キャリアの比誘電損率が調整され、適度な帯電性を有する静電荷像現像剤を提供できる。
(((5)))の発明によれば、前記シリカ粒子と前記キャリアの重量比(シリカ/キャリア)が、0.03未満又は0.15を超える場合と比較して、シリカ粒子における好ましい帯電量となり、キャリアを菌とする電荷リークが抑制された静電荷像現像剤を提供できる。
(((6)))の発明によれば、前記モリブデン元素のNet強度と前記シリコン元素のNet強度との比率(Mo/Si)が0.10未満又は0.30を超える場合と比較して、シリカ粒子における帯電範囲を狭くし、電荷リークを抑制すると同時に画像の白点発生が抑制された静電荷像現像剤を提供できる。
(((7)))の発明によれば、前記モリブデン元素を含む窒素元素含有化合物が、モリブデン元素を含む四級アンモニウム塩でない場合と比較して、シリカ粒子の帯電分布が狭くなった静電荷像現像剤を提供できる。
(((8)))の発明によれば、前記シリカ粒子の個数平均粒径が10nm未満又は100nmを超える場合と比較して、キャリアとシリカ粒子の間に適度な反発が生じ、帯電が安定した静電荷像現像剤を提供できる。
(((9)))の発明によれば、前記シリカ粒子を、シリカ母粒子の少なくとも一部の表面を被覆し、3官能シランカップリング剤の反応生成物で構成され、かつ前記3官能シランカップリング剤の反応生成物の細孔の少なくとも一部に前記窒素元素含有化合物が吸着した構造体でない場合と比較して、シリカ粒子における帯電分布を狭くすることができる静電荷像現像剤を提供できる。
(((10)))、 (((11)))又は (((12)))の発明によれば、シリカ粒子が外添されたトナー粒子と、キャリアとを含む静電荷像現像剤等において、画像濃度を極度に高くするような印刷をする場合においても、高温高湿下での電荷リークが抑制され、白点発生が抑制される静電荷像現像剤を適用可能なプロセスカートリッジ、画像形成装置又は画像形成方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0164】
1Y、1M、1C、1K 感光体(像保持体の一例)
2Y、2M、2C、2K 帯電ロール(帯電手段の一例)
3 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
4Y、4M、4C、4K 現像装置(現像手段の一例)
5Y、5M、5C、5K 一次転写ロール(一次転写手段の一例)
6Y、6M、6C、6K 感光体クリーニング装置(像保持体クリーニング手段の一例)8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト(中間転写体の一例)
22 駆動ロール
24 支持ロール
26 二次転写ロール(二次転写手段の一例)
28 定着装置(定着手段の一例)
30 中間転写ベルトクリーニング装置(中間転写体クリーニング手段の一例)
P 記録紙(記録媒体の一例)
【0165】
107 感光体(像保持体の一例)
108 帯電ロール(帯電手段の一例)
109 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
111 現像装置(現像手段の一例)
112 転写装置(転写手段の一例)
113 感光体クリーニング装置(像保持体クリーニング手段の一例)
115 定着装置(定着手段の一例)
116 取り付けレール
117 筐体
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ
300 記録紙(記録媒体の一例)
図1
図2