(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046435
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】固形食品
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20240327BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240327BHJP
A23L 7/10 20160101ALI20240327BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L33/10
A23L7/10 H ZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151828
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田力 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】礒 百合絵
(72)【発明者】
【氏名】藤井 明彦
【テーマコード(参考)】
4B018
4B023
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE01
4B018MD05
4B018MD07
4B018MD09
4B018MD10
4B018MD28
4B018MD29
4B018MD32
4B018MD34
4B018MD35
4B018MD48
4B018MD49
4B018MD53
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF08
4B023LC09
4B023LG05
4B023LK01
4B023LK04
4B023LK07
(57)【要約】
【課題】植物由来粉末を用いつつも、良好な食感をもたらし、口腔内において口腔内菌叢の改善を有効に図ることのできる固形食品に関する。
【解決手段】次の成分(A)~(C):
(A)硝酸塩を含有する植物由来粉末
(B)炭素数4以上6以下の単糖糖アルコール
(C)セルロース又はその誘導体、澱粉又は澱粉分解物、二酸化ケイ素、脂肪酸エステル、脂肪酸塩、単糖、並びに二糖から選ばれる1種又は2種以上の添加物
を含有する固形食品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(C):
(A)硝酸塩を含有する植物由来粉末
(B)炭素数4以上6以下の単糖糖アルコール
(C)セルロース又はその誘導体、澱粉又は澱粉分解物、二酸化ケイ素、脂肪酸エステル、脂肪酸塩、単糖、並びに二糖から選ばれる1種又は2種以上の添加物
を含有する固形食品。
【請求項2】
成分(A)の硝酸換算量と成分(B)の含有量との質量比((A)硝酸/(B))が、0.005以上10以下である請求項1に記載の固形食品。
【請求項3】
成分(A)の硝酸換算量と成分(C)の含有量との質量比((A)硝酸/(C))が、0.005以上20以下である請求項1に記載の固形食品。
【請求項4】
成分(A)中における硝酸塩の含有量が、0.01質量%以上40質量%以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の固形食品。
【請求項5】
成分(B)が、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、及びソルビトールから選ばれる1種又は2種以上である請求項1~4のいずれか1項に記載の固形食品。
【請求項6】
さらに、有機酸(D1)及び炭酸塩(D2)を含有する請求項1~5のいずれか1項に記載の固形食品。
【請求項7】
成分(A)が、甘藷若葉、ケール、大麦、セロリ、小松菜、パセリ、ホウレンソウ、大根、ビーツ、ブロッコリー、ごぼう、及びアロエから選ばれる1種又は2種以上の植物由来の粉末である請求項1~6のいずれか1項に記載の固形食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、口腔内常在菌について、種々の研究がなされている。
例えば、特許文献1には、硝酸塩等の窒素源を配合することにより、ナイセリア属菌等の非病原性細菌が効率よく一酸化窒素を産生し、口腔内菌叢の細菌構成を良好なものへと制御し得ることが報告されている。
【0003】
一方、大麦やケール等の野菜から得られる粉末は、健康素材としての有用性が高いことから、これを含有する健康食品が開発されている。例えば、特許文献2には、大麦等の青汁素材と他の素材とを含有する経口組成物が開示されており、もたらされる筋芽細胞の増殖作用等により筋肉組織の維持等を試みている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/151428号明細書
【特許文献2】特開2020―54252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした野菜から得られる粉末は、食感等が芳しくない傾向にあることから、上記特許文献2にも記載されるように、口腔内での滞留又は残留を回避できるよう、素早く飲み込める飲料等の剤型で提供されるのが主流である。
このように、野菜から得られる粉末の口腔内での食感を高めつつ、口腔内での有効性を十分に発揮させる技術については、依然として検討の余地がある。
【0006】
したがって、本発明は、植物由来粉末を用いつつも、良好な食感をもたらし、口腔内において口腔内菌叢の改善を有効に図ることのできる固形食品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、硝酸塩を含有する植物由来粉末とともに、特定の単糖糖アルコールと特定の添加物とを併用することにより、食感を良好なものとしつつ、口腔内において容易に拡散・滞留させて、口腔内菌叢の改善を有効に図ることのできる固形食品を見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)~(C):
(A)硝酸塩を含有する植物由来粉末
(B)炭素数4以上6以下の単糖糖アルコール
(C)セルロース又はその誘導体、澱粉又は澱粉分解物、二酸化ケイ素、脂肪酸エステル、脂肪酸塩、単糖、並びに二糖から選ばれる1種又は2種以上の添加物
を含有する固形食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の固形食品によれば、口腔内に投入した際において、口腔内において充分に溶解・拡散させつつ滞留させることが可能となるため、硝酸塩の残留量を効果的に高めることができ、口腔内菌叢の改善を有効に図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本発明において、「良好な食感」とは、口腔内に投入した際、ボソボソとするような異物感や不快感をもたらすことなく、滑らかで舌触りのよさを実感できる感触を意味する。
また、「硝酸塩の残留」とは、口腔内に投入された後、固形食品が口腔内において徐々に溶解・拡散するにしたがって、口腔内において充分に留まることを意味する。
さらに、「口腔内菌叢」とは、口腔内に生息する多種多様の細菌であって、非病原性細菌と病原性細菌とに大別される細菌により形成されてなる群集を意味する。かかる「口腔内菌叢」は、「口腔内(口内又は口腔)フローラ」又は「口腔内(口内又は口腔)マイクロバイオータ」とも称される。
【0011】
そして、口腔内菌叢を「改善」するとは、非病原性細菌が占める割合が増大することにより、或いは病原性細菌が占める割合が低減することにより、口腔内菌叢の細菌構成を変化させて、口腔内菌叢の状態を健常な口腔内環境をもたらす状態へ転じさせることを意味する。具体的には、口腔内において、ナイセリア属菌やロシア属菌の代謝を活性化等されて、その生育が選択的に促進されることにより、口腔内菌叢中におけるこれら非病原性細菌(ナイセリア属菌、又はロシア属菌)が占める割合が増大することを意味し、また病原性細菌の生育が選択的に抑制されることにより、口腔内菌叢中におけるこれらの細菌が占める割合が増大することをも意味する。
【0012】
本発明の固形食品は、成分(A)として、硝酸塩を含有する植物由来粉末を含有する。植物由来粉末とは、植物を原料とし、粉砕等の加工処理を施した後に適宜乾燥して得られる粉末であり、本発明では、そのなかでも硝酸塩を含有する粉末を成分(A)として用いるものである。
かかる成分(A)は、通常、口腔内に投入した際、独特の苦味等の不快感を伴うことから、口腔内に不要に留まらせることなく、嚥下や吐出等により口腔外へと早々に排出されがちな成分である。しかしながら、本発明の固形食品であれば、良好な食感をともなうことから、固形食品が硝酸塩を放出しながら充分に溶解・拡散するまで口腔内に留まらせることができ、口腔内における硝酸塩の残留量が効果的に高められ、口腔内菌叢の改善を有効に図ることができる。
【0013】
成分(A)としては、硝酸塩を含有するものであればよく、具体的には、例えば、甘藷若葉、ケール、大麦、セロリ、小松菜、パセリ、ホウレンソウ、大根、ビーツ、ブロッコリー、ごぼう、及びアロエから選ばれる1種又は2種以上の粉末が挙げられる。なかでも、口腔内における硝酸塩の残留量を効果的に高める観点から、甘藷若葉、ケール、セロリ、小松菜、大根から選ばれる1種又は2種以上の粉末が好ましく、甘藷若葉粉末がより好ましい。
【0014】
成分(A)中における硝酸塩の含有量は、口腔内における硝酸塩の残留量を効果的に高める観点から、成分(A)100質量%中に、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、よりさらに好ましくは1質量%以上であり、またさらに好ましくは2質量%以上であり、よりさらに好ましくは3質量%以上である。また、成分(A)中における硝酸塩の含有量は、固形食品の良好な溶解性・拡散性を確保する観点、及び良好な食感を保持する観点から、成分(A)100質量%中に、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下であり、よりさらに好ましくは20質量%以下であり、またさらに好ましくは10質量%以下であり、よりさらに好ましくは5質量%以下である。そして、成分(A)中における硝酸塩の含有量は、成分(A)100質量%中に、好ましくは0.01~40質量%であり、より好ましくは0.1~35質量%であり、さらに好ましくは0.5~30質量%であり、よりさらに好ましくは1~20質量%であり、またさらに好ましくは2~10質量%であり、よりさらに好ましくは3~5質量%である。
【0015】
成分(A)の硝酸換算量((A)硝酸)は、口腔内における硝酸塩の残留量を効果的に高める観点から、本発明の固形食品100質量%中に、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、さらに好ましくは0.6質量%以上である。また、成分(A)の硝酸換算量は、固形食品の良好な溶解性・拡散性を確保する観点、及び良好な食感を保持する観点から、本発明の固形食品100質量%中に、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。そして、成分(A)の硝酸換算量は、本発明の固形食品100質量%中に、好ましくは0.05~50質量%であり、より好ましくは0.3~30質量%であり、さらに好ましくは0.6~15質量%である。
なお、成分(A)の硝酸換算量((A)硝酸)とは、成分(A)中に含有される硝酸塩の量を元に、本発明の固形食品中における成分(A)の含有量から硝酸としての含有量を換算した値を意味する。
【0016】
本発明の固形食品は、成分(B)として、炭素数4以上6以下の単糖糖アルコールを含有する。かかる成分(B)とは、炭素数4以上6以下の単糖を原料とし、これを還元又は発酵することにより得られる糖アルコールであり、口腔内に残留する硝酸塩によって奏される口腔内菌叢の改善効果を相乗的に高めることができる。
【0017】
成分(B)としては、具体的には、例えば、エリスリトール、トレイトール、キシリトール、アラビニトール、リビトール、マンニトール、イジトール、ガラクチトール、及びソルビトールから選ばれる1種又は2種以上の糖アルコールが挙げられる。なかでも、口腔内菌叢の改善効果を有効に促進する観点から、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、及びソルビトールから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0018】
成分(B)の含有量は、口腔内菌叢の改善効果を促進する観点から、本発明の固形食品中に、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下であり、よりさらに好ましくは30質量%以下であり、またさらに好ましくは25質量%以下である。そして、成分(B)の含有量は、本発明の固形食品中に、好ましくは2~60質量%であり、より好ましくは2~50質量%であり、さらに好ましくは2~40質量%であり、よりさらに好ましくは5~30質量%であり、またさらに好ましくは10~25質量%である。
【0019】
成分(A)の硝酸換算量と成分(B)の含有量との質量比((A)硝酸/(B))は、硝酸塩による口腔内菌叢の改善効果を高める観点から、好ましくは0.005以上であり、より好ましくは0.01以上であり、さらに好ましくは0.02以上であり、よりさらに好ましくは0.05以上であり、好ましくは10以下であり、より好ましくは5以下であり、さらに好ましくは1以下である。そして、成分(A)の硝酸換算量と成分(B)の含有量との質量比((A)硝酸/(B))は、好ましくは0.005以上10以下であり、より好ましくは0.01~5であり、さらに好ましくは0.02~1であり、よりさらに好ましくは0.05~1である。
【0020】
本発明の固形食品は、成分(C)として、セルロース又はその誘導体、澱粉又は澱粉分解物、二酸化ケイ素、脂肪酸エステル、脂肪酸塩、単糖、並びに二糖から選ばれる1種又は2種以上の添加物を含有する。これにより、本発明の固形食品の口腔内における優れた溶解性・拡散性を確保し、良好な食感をもたらして本発明の固形食品の口腔内における充分な溶解・拡散を可能とし、放出される硝酸塩の残留性を有効に高めることができる。
【0021】
成分(C)のセルロースとしては、結晶セルロース、粉末セルロースが挙げられる。
成分(C)のセルロース誘導体としては、具体的には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
これらセルロース、及びセルロース誘導体のなかでも、硝酸塩の残留性を有効に高める観点から、結晶セルロース、粉末セルロースが好ましい。
【0022】
成分(C)の澱粉としては、生澱粉、アルファー化澱粉等が挙げられる。また澱粉分解物としては、澱粉を酸処理又は加熱処理して部分的に加水分解させ、低分子化した化合物であるデキストリンが挙げられる。
【0023】
成分(C)の二酸化ケイ素としては、例えば、平均粒径0.1~30μmの微粒二酸化ケイ素が挙げられる。
【0024】
成分(C)の脂肪酸エステルとしては、ショ糖脂肪酸エステル;酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リノシール酸エステル等のグリセリン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
脂肪酸塩としては、より具体的には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、カプリル酸カルシウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、及びパルミチン酸カルシウムから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、ステアリン酸カルシウムが好ましい。
【0025】
成分(C)の単糖としては、グルコース、ガラクトース、及びフルクトース等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。また二糖としては、スクロース、ラクトース、ラクツロース、マルトース、トレハロース、イソマルトース、及びパラチノース等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0026】
かかる成分(C)としては、硝酸塩の残留性を有効に高める観点から、セルロース、二酸化ケイ素、及び脂肪酸塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、2種以上を組み合わせて用いるのがより好ましい。
【0027】
成分(C)の含有量は、良好な食感と硝酸塩の高い残留性を確保し、口腔内菌叢の改善効果を促進する観点から、本発明の固形食品中に、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、よりさらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下であり、よりさらに好ましくは20質量%以下である。そして、成分(C)の含有量は、本発明の固形食品中に、好ましくは0.5~50質量%であり、より好ましくは1~40質量%であり、さらに好ましくは1.5~30質量%であり、よりさらに好ましくは5~20質量%である。
【0028】
成分(A)の硝酸換算量と成分(C)の含有量との質量比((A)硝酸/(C))は、良好な食感をもたらす観点、及び硝酸塩の残留性を有効に高める観点から、好ましくは0.005以上であり、より好ましくは0.03以上であり、さらに好ましくは0.05以上であり、好ましくは20以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは5以下であり、よりさらに好ましくは0.5以下である。そして、成分(A)の硝酸換算量と成分(C)の含有量との質量比((A)硝酸/(C))は、好ましくは0.005以上20以下であり、より好ましくは0.03~10であり、さらに好ましくは0.05~5であり、よりさらに好ましくは0.05~0.5である。
【0029】
本発明の固形食品は、さらに有機酸(D1)及び炭酸塩(D2)を含有することができる。これら成分(D1)及び(D2)をともに含有することにより、本発明の固形食品を口腔内に投入した際に炭酸ガスを発生させて、本発明の固形食品の溶解性・拡散性を効果的に高めつつ、食感を一層良好なものとし、硝酸塩の残留性をも有効に高めることができる。
【0030】
成分(D1)としては、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスコルビン酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、アジピン酸、及びフィチン酸等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、口腔内における良好な溶解性を有する観点から、クエン酸、酒石酸、及びアスコルビン酸から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、クエン酸及び酒石酸から選ばれる1種又は2種がより好ましい。
【0031】
成分(D1)の含有量は、成分(D2)とともに有効に炭酸ガスを発生して、食感と硝酸塩の残留性と拡散性を効果的に高め、口腔内菌叢の改善を有効に図る観点から、本発明の固形食品中に、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは8質量%以上であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。そして、成分(D1)の含有量は、本発明の固形食品中に、好ましくは1~30質量%であり、より好ましくは5~25質量%であり、さらに好ましくは8~20質量%である。
【0032】
成分(D2)としては、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カリウム等の炭酸モノアルカリ金属塩、並びに炭酸カルシウム等の二価以上の金属の炭酸塩;炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウム等の炭酸ジアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、炭酸塩が好ましく、炭酸水素ナトリウムがより好ましい。
成分(D2)の含有量は、成分(D1)とともに有効に炭酸ガスを発生して、食感と硝酸塩の残留性とを効果的に高め、口腔内菌叢の改善を有効に図る観点から、本発明の固形食品中に、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは7質量%以上であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。そして、成分(D2)の含有量は、本発明の固形食品中に、好ましくは1~30質量%であり、より好ましくは5~25質量%であり、さらに好ましくは7~20質量%である。
【0033】
本発明の固形食品は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分のほか、例えば、酸味料、香味料、アミノ酸、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、香料、色素、乳化剤、保存料、品質安定剤等を適宜含有することができる。
【0034】
本発明の固形食品の剤型としては、常温(20℃)において固体であれば特に限定されず、例えば、粉末、顆粒、又は錠剤等が挙げられる。なかでも、硝酸塩を適切な量で確保しながら口腔内への投入を容易にする観点から、錠剤であるのが好ましく、より具体的には、タブレット状錠剤であるのがより好ましい。
【0035】
本発明の固形食品は、上記成分を混合した後、適宜常法にしたがって固形状に成形することで得られる。混合方法としては、撹拌、震盪等の適宜の方法を採用することができ、容器回転型方式や容器固定型方式による混合装置を用いてもよい。
例えば、錠剤とする場合には、公知の圧縮成型機を用い、湿式打錠又は乾式打錠により成形すればよい。
さらに、顆粒状錠剤とする場合には、噴霧造粒、流動層造粒、圧縮造粒、転動造粒、撹拌造粒、押出造粒、粉末被覆造粒等により成形すればよい。
また、タブレット状錠剤とする場合には、ロータリー式打錠機、油圧式打錠機、エキセントリック式打錠機等で成形すればよい。
【0036】
本発明の固形食品の具体例としては、例えば、キャンディ、グミ、ゼリー等の菓子食品が挙げられる。また、健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等)、医薬品、医薬部外品とすることもできる。
【0037】
本発明の固形食品1個あたりの質量(g/1個)は、用いる成分(A)の種類や固形食品の形態、及び投与しようとする硝酸塩の量の選択によっても変動し得るが、好ましくは0.3~10(g/1個)であり、より好ましくは1~5(g/1個)である。
また、本発明の固形食品が錠剤である場合、その長径は、好ましくは0.3~3cmであり、より好ましくは1~2.5cmである。
さらに、本発明の固形食品が錠剤である場合、使用性を加味しつつ口腔内菌叢の改善を効果的に図る観点から、1錠あたりの硝酸塩の含有量は、好ましくは5mg/錠以上であり、より好ましくは10mg/錠以上であり、さらに好ましくは15mg/錠以上である。
【0038】
本発明の固形食品の1日あたりの摂取量は、用いる成分(A)の種類や固形食品の形態、及び投与しようとする硝酸塩の量の選択によっても変動し得るが、口腔内における硝酸塩の適度な残留量を確保しつつ、口腔内菌叢の改善を有効に図る観点から、好ましくは1~15gであり、より好ましくは3~9gである。
【0039】
本発明の固形食品の口腔内での残留時間は、好ましくは1~20分であり、より好ましくは3~15分であり、さらに好ましくは5~10分である。
【0040】
本発明の固形食品の摂取方法は、口腔内における硝酸塩の残留量を充分に確保して、口腔内菌叢の改善を有効に図る観点から、口腔内に投入した後、本発明の固形食品が原形をとどめなくなるまで、舌等を使いながら充分に溶解又は拡散させるのが好ましい。
本発明の固形食品であれば、良好な食感をもたらすため、嚥下や吐出等により早々に口腔外へ排出する必要がなく、口腔内に留めて硝酸塩を充分な量で残留させることができ、口腔内菌叢の改善効果が大いに期待されることとなる。
【実施例0041】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0042】
[実施例1~15、比較例1~2]
表1~2に示す処方にしたがい、各成分を混合して油圧式打錠機により成形し、各タブレット状錠剤(1.5g/1錠)を得た。
得られた錠剤を用い、下記方法にしたがって各測定及び評価を行った。
結果を表1~2に示す。
なお、各錠剤において、硝酸塩の摂取量が一定(21mg/1錠)となるよう摂取した。
【0043】
《口腔内における硝酸塩の残留性》
得られた錠剤を口腔内へ摂取し、摂取から5分経過した時点でイオン交換水10mLを10秒間含嗽して吐出して吐出液を採取した。次いで、簡易測定装置リフレクトクァント(登録商標、メルク社製)を用い、得られた吐出液中に含まれる硝酸濃度を測定し、測定値を元に、下記基準にしたがって硝酸塩の残留性を評価した。
A:40mg/L以上
B:30mg/L以上40mg/L未満
C:20mg/L以上30mg/L未満
D:10mg/L以上20mg/L未満
E:10mg/L未満
【0044】
《食感》
得られた錠剤を口腔内へ摂取し、摂取から5分経過するまで舌により口腔内にて舐めまわした後、下記基準にしたがって食感を評価した。
5:舌触りが非常に良く、快適な食感であった
4:舌触りが良かった
3:舌触りは良いものの、多少ボソボソとした感触があった
2:ボソボソとした感触があり、舌触りが良くなかった
1:ボソボソとした感触が強く、舌触りが悪かった
【0045】
《口中での溶け広がりの良さ》
得られた錠剤を口腔内へ摂取し、摂取から5分経過するまで舌により口腔内にて舐めまわした後、下記基準にしたがって口中での溶け広がりの良さを評価した。
5:錠剤が良好に崩壊して溶け残りがなく、口腔内で広く拡散するのを実感できた
4:錠剤が良好に崩壊して溶け残りがほぼなく、口腔内で拡散するのを実感できた
3:一部溶け残りを感じながらも錠剤が良好に崩壊し、口腔内で拡散するのを実感できた
2:錠剤があまり崩壊せず一部溶け残りを感じ、口腔内での拡散をあまり実感できなかった
1:錠剤があまり崩壊せずに溶け残り、口腔内での拡散を実感できなかった
【0046】
【0047】
【0048】
[実施例16~23、比較例3]
表3に示す処方にしたがい、実施例1と同様にして、各タブレット状錠剤(1.5g/1錠)を得た後、各測定及び評価を行った。
結果を表3に示す。
なお、各錠剤において、成分(A)の硝酸塩含有量や成分(A)の硝酸換算量を加味し、硝酸塩の摂取量が一定(11mg/1錠)となるよう摂取した。但し、比較例のみ硝酸塩の摂取量は0mg/1錠となるよう摂取した。
【0049】
【0050】
[実施例24~33、比較例4~7]
表4~5に示す処方にしたがい、実施例1と同様にして、各タブレット状錠剤(1.5g/1錠)を得た後、各測定及び評価を行った。
結果を表4~5に示す。
なお、各錠剤において、成分(A)の硝酸塩含有量や成分(A)の硝酸換算量、及び錠剤の重量を加味し、硝酸塩の摂取量が一定(21mg/1錠)となるよう摂取した。
【0051】
【0052】
【0053】
《口腔内菌叢改善効果の評価》
表8に示すタブレット状錠剤(1.7g/1錠)について、以下の方法にしたがって口腔内菌叢改善効果の評価を行った。
【0054】
1)各細菌の比率の算出
被検者6名に対し、各タブレット錠錠剤を1日3回(1回1錠)、3日間摂取させ、摂取前後の刺激時唾液中の細菌比率を比較した。なお、タブレット錠を摂取する1週間前から試験期間終了までは、指定の市販練歯磨剤及びハブラシを使用させ、タブレット錠の摂取以外の口腔内清掃行為による影響を除外した。
刺激時唾液は、市販のパラフィンワックスガムを3分間咀嚼した際、漏出した唾液を随時プラスチック容器に吐き出させて回収し、回収後速やかに-20℃の冷凍庫にて保管した。
【0055】
次いで、保管後の刺激時唾液を500μL採取し、PureLink Microbiome DNA Purification Kit(Thermo Fisher社製)を用いてゲノムDNAを抽出し、Taqmanプローブを用いたリアルタイムPCR法にて、各細菌の比率を算出した。
用いたプライマー及びTaqmanプローブ、リアルタイムPCRの反応条件を表6~7に示す。
【0056】
【0057】
【0058】
2)各細菌の相対増加率の算出
各細菌の存在割合(%)について、まずコピー数が明らかなPCR産物を標品として検量線を作成した後、各細菌のrRNA16S遺伝子のコピー数を算出し、以下の計算式により求めた。
各細菌の存在割合(%)=(各菌のコピー数)/(総細菌コピー数)×100
また、各細菌の相対増加率は、以下の計算式により求めた。
各細菌の相対増加率(%)=(3日摂取後の各細菌の存在割合)/(摂取前の各細菌の存在割合)×100
【0059】
次いで、得られたナイセリア属菌及びロシア属菌の相対増加率の値を非病原性細菌の相対増加率として、下記ランクに当てはめ、口腔内菌叢改善効果の評価の指標とした。
EランクからAランクに向けて、非病原性細菌を有効に増加させて優れた口腔内菌叢改善効果を発揮していることを意味する。
A:125%以上
B:100%以上125%未満
C:75%以上100%未満
D:50%以上75%未満
E:50%未満
【0060】
また、得られたプレボテラ属菌及びベイヨネラ属菌の相対増加率の値を歯周病関連菌の相対増加率として、下記ランクに当てはめ、口腔内菌叢改善効果の評価の指標とした。
EランクからAランクに向けて、病原性細菌の増加を有効に抑制して優れた口腔内菌叢改善効果を発揮していることを意味する。
A:50%未満
B:50%以上75%未満
C:75%以上100%未満
D:100%以上125%未満
E:125%以上
【0061】