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特開2024-4646バリア放電ランプモジュール、および液体処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004646
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】バリア放電ランプモジュール、および液体処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 65/00 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H01J65/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104354
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】聶 棟興
(72)【発明者】
【氏名】出口 誠
(57)【要約】
【課題】保護管を用いる場合であっても、メンテナンス時間の短縮を図ることができるバリア放電ランプモジュール、および液体処理装置を提供することである。
【解決手段】実施形態に係るバリア放電ランプモジュールは、筒状を呈し、少なくとも一方の端部が開口した保護管と;前記保護管の内部に設けられ、紫外線を照射可能なバリア放電ランプと;前記保護管の内部に設けられ、前記バリア放電ランプを支持する複数の支持部と;前記保護管の開口側の端部と、前記保護管の開口側の端部に設けられた前記支持部と、の間に設けられ、前記バリア放電ランプと、前記保護管の内壁との間の空間に不活性ガスを封止する封止部と;を具備している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状を呈し、少なくとも一方の端部が開口した保護管と;
前記保護管の内部に設けられ、紫外線を照射可能なバリア放電ランプと;
前記保護管の内部に設けられ、前記バリア放電ランプを支持する複数の支持部と;
前記保護管の開口側の端部と、前記保護管の開口側の端部に設けられた前記支持部と、の間に設けられ、前記バリア放電ランプと、前記保護管の内壁との間の空間に不活性ガスを封止する封止部と;
を具備したバリア放電ランプモジュール。
【請求項2】
前記保護管と、前記バリア放電ランプとが、前記保護管の開口側の端部に設けられた前記支持部と、前記封止部と、により一体化されている請求項1記載のバリア放電ランプモジュール。
【請求項3】
前記不活性ガスの圧力は、1Pa以上、400kPa以下である請求項1または2に記載のバリア放電ランプモジュール。
【請求項4】
前記保護管は、SiOを含み、OH基の含有量が1ppm以上、3000ppm以下である請求項1または2に記載のバリア放電ランプモジュール。
【請求項5】
液体が供給される空間を内部に有する容器と;
前記液体が供給される空間に設けられた、請求項1記載のバリア放電ランプモジュールと;
を具備した液体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、バリア放電ランプモジュール、および液体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体に紫外線を照射すれば、液体中にある不純物を除去することができる。例えば、紫外線を水に照射すると、酸化力の強いヒドロキシルラジカルが生成される。ヒドロキシルラジカルは、水中にある全有機炭素(TOC:Total Organic Carbon)を有機酸を経て二酸化炭素に分解するので、濾過法などに比べてより純度の高い純水を製造することができる。
【0003】
また、紫外線を水に照射することで生成されたヒドロキシルラジカルは、菌やウイルスの殺菌や不活性化にも効果がある。そのため、紫外線を水に照射する技術は、前述した不純物の除去とは別に、あるいは不純物の除去とともに、水の殺菌処理などにも用いられている。
【0004】
ここで、紫外線を照射する光源としては、ピーク波長が254nmの紫外線、または、ピーク波長が185nm及び254nmの紫外線を照射する低圧水銀ランプが用いられていた。しかしながら、水の紫外線吸収係数は、波長が500nm近傍で最小となり、500nmより長波長側または短波長側へシフトするにつれて増加する。そのため、ピーク波長が172nmの紫外線を照射するバリア放電ランプ(例えば、キセノンエキシマランプ)が用いられるようになってきている。
【0005】
バリア放電ランプが処理を施す液体中に設けられていれば、液体に紫外線を直接照射することができるので、液体の処理を効率よく行うことができる。しかしながら、バリア放電ランプを液体中に直接設けることはできない。そのため、液体中に設けられる保護管の内部にバリア放電ランプを収納する技術が提案されている。
【0006】
ところが、保護管を設けると、バリア放電ランプから照射された紫外線が、保護管に入射することになる。そのため、紫外線により、保護管の材料の化学的な構造が経時的に変化して、紫外線の透過率の低下、ひいては、紫外線の照度維持率の低下が生じる場合がある。
また、バリア放電ランプと保護管の内壁との間の空間に酸素があると、バリア放電ランプから照射された紫外線が減衰する。そのため、一般的には、バリア放電ランプと保護管の内壁との間の空間には、窒素ガスや希ガスなどの不活性ガスが封入されている。しかしながら、経時的に、大気中の酸素がバリア放電ランプと保護管の内壁との間の空間に侵入する場合がある。
【0007】
そのため、保護管を用いる場合には、材料の化学的な構造が変化した保護管を交換したり、不活性ガスを再充填したりするメンテナンスが必要となる。
しかしながら、液体処理装置の設置場所で、保護管の交換や不活性ガスの再充填などを行うのは困難である。そのため、メンテナンス時間が長くなり、メンテナンス費用が増加したり、液体処理装置の運転効率が低下したりするおそれがある。
そこで、保護管を用いる場合であっても、メンテナンス時間の短縮を図ることができる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-043182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、保護管を用いる場合であっても、メンテナンス時間の短縮を図ることができるバリア放電ランプモジュール、および液体処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態に係るバリア放電ランプモジュールは、筒状を呈し、少なくとも一方の端部が開口した保護管と;前記保護管の内部に設けられ、紫外線を照射可能なバリア放電ランプと;前記保護管の内部に設けられ、前記バリア放電ランプを支持する複数の支持部と;前記保護管の開口側の端部と、前記保護管の開口側の端部に設けられた前記支持部と、の間に設けられ、前記バリア放電ランプと、前記保護管の内壁との間の空間に不活性ガスを封止する封止部と;を具備している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、保護管を用いる場合であっても、メンテナンス時間の短縮を図ることができるバリア放電ランプモジュール、および液体処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係る液体処理装置を例示するための模式断面図である。
図2図1における液体処理装置のA-A線方向の模式断面図である。
図3】(a)は、バリア放電ランプを例示するための模式図である。(b)は、図3(a)におけるバリア放電ランプのB部の模式拡大図である。
図4】封止部の効果を例示するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る液体処理装置100を例示するための模式断面図である。 図2は、図1における液体処理装置100のA-A線方向の模式断面図である。
図1に示すように、液体処理装置100には、例えば、バリア放電ランプモジュール101、容器102、ホルダ103、およびシール部材104が設けられている。
なお、図1、および図2に例示をした液体処理装置100の場合には、1つのバリア放電ランプモジュール101が設けられているが、バリア放電ランプモジュール101は、複数設けることもできる。すなわち、バリア放電ランプモジュール101は、少なくとも1つ設けることができる。また、バリア放電ランプモジュール101を複数設ける場合には、例えば、ホルダ103、およびシール部材104を複数組設けることができる。
【0015】
バリア放電ランプモジュール101(バリア放電ランプ1)は、容器102の内部を流れる液体300に紫外線を照射する。この場合、液体300に水が含まれていると、照射された紫外線によりヒドロキシルラジカルが生成される。ヒドロキシルラジカルは、酸化力が強いので、液体300に含まれている全有機炭素(TOC)を分解することができる。また、ヒドロキシルラジカルにより、菌やウイルスの殺菌や不活性化を行うこともできる。
なお、液体300に水が含まれていない場合であっても、紫外線により有機物を分解したり、紫外線により菌やウイルスの殺菌や不活性化を行ったりすることができる。
【0016】
図1に示すように、バリア放電ランプモジュール101は、例えば、バリア放電ランプ1、保護管10、支持部20、および支持部30を有する。
図3(a)は、バリア放電ランプ1を例示するための模式図である。
図3(b)は、図3(a)におけるバリア放電ランプ1のB部の模式拡大図である。
図3(a)、および図3(b)に示すように、バリア放電ランプ1は、例えば、発光管2、導電部3、内部電極4、アンカ5、ホルダ6、外部電極7、リード線8、およびリード線9を有する。
【0017】
発光管2は、筒状を呈し、管径に比べて全長(管軸方向の長さ)が長い形態を有する。発光管2は、例えば、円筒管とすることができる。発光管2の外径は、例えば、10mm以上、25mm以下である。発光管2の肉厚は、例えば、1mm程度である。発光管2の長さは、液体処理装置100の仕様などに応じて適宜変更することができる。例えば、発光管2の長さは、400mm程度である。
【0018】
発光管2の、管軸方向における両側の端部のそれぞれには、封止部2aが設けられている。封止部2aを設けることで、発光管2の内部空間を気密に封止することができる。封止部2aは、例えば、ピンチシール法やシュリンクシール法を用いて形成することができる。
【0019】
発光管2の外面には、突起部2bを設けることができる。突起部2bは、例えば、バリア放電ランプ1を製造する際に、発光管2の内部空間を排気したり、発光管2の内部空間に後述するガスを導入したりするために設けられる。突起部2bは、排気およびガスの導入後に、合成石英ガラスから形成された管を焼き切ることで形成されたものとすることができる。
【0020】
発光管2の内部空間には、ガスが封入されている。バリア放電ランプ1においては、内部電極4と外部電極7との間で誘電体バリア放電を行って、封入されているガスに高いエネルギー電子を与えてエキシマ励起分子を生成する。エキシマ励起分子が元に戻る際に、ガスの種類に応じて特定のピーク波長を有する光が発生する。そのため、発光管2の内部空間に封入するガスは、バリア放電ランプ1の用途に応じて適宜変更することができる。発光管2の内部空間に封入するガスは、例えば、クリプトン、キセノン、アルゴン、ネオンなどの希ガス、あるいは、複数種類の希ガスを混合させた混合ガスとすることができる。ガスには、必要に応じて、ハロゲンガスなどをさらに含めることもできる。
【0021】
発光管2の内部空間の25℃におけるガスの圧力(封入圧力)は、例えば、1.3kPa~200kPa程度である。なお、封入圧力は、気体の標準状態(SATP(Standard Ambient Temperature and Pressure):温度25℃、1bar)により求めることができる。
【0022】
例えば、水などの液体に含まれている有機物などの不純物を分解する場合には、封入するガスをキセノンとすることが好ましい。キセノンの封入圧力は、例えば、93kPa程度とすることができる。封入するガスをキセノンとすれば、ピーク波長が172nmの紫外線を発生させることができるので、不純物の分解を効果的に行うことができる。また、ピーク波長が短い紫外線が照射されるので、菌やウイルスの殺菌や不活性化にも有効である。
【0023】
発光管2の内部空間において発生した紫外線は、発光管2を介して外部に照射される。そのため、発光管2は、紫外線の透過率が高い材料から形成される。紫外線の透過率が高い材料は、例えば、合成石英ガラスなどのSiOを含む材料である。ところが、ピーク波長が172nmの紫外線がSiOを含む材料に入射すると、経時的に、材料の化学的な構造が変化する場合がある。例えば、SiOに、ピーク波長が172nmの紫外線が入射すると、SiとOの結合が切れる場合がある。そのため、バリア放電ランプ1を長時間点灯させると、発光管2の材料の化学的な構造に欠陥が生じて、紫外線の透過率の低下、ひいては、紫外線の照度維持率の低下が生じるおそれがある。
【0024】
本発明者の得た知見によれば、SiOを含む材料に含まれるOH基の量を多くすれば、紫外線の入射により、SiとOの結合が切れたとしても、化学的な構造の欠陥を修復できる。ただし、OH基の含有量を多くし過ぎると紫外線の透過率が低下する場合がある。
そのため、OH基の含有量は、1ppm以上、3000ppm以下とすることが好ましい。この様にすれば、発光管2の内部空間において、ピーク波長が172nmの紫外線が発生したとしても、紫外線の透過率の低下を抑制することができ、ひいては紫外線の照度維持率の低下を抑制することができる。
【0025】
導電部3は、封止部2aの内部に設けられている。導電部3は、1つの封止部2aに対して1つ設けることができる。導電部3の平面形状は、例えば、四角形である。導電部3は、薄膜状を呈している。導電部3は、例えば、モリブデン箔から形成することができる。
【0026】
内部電極4は、例えば、コイル4a、およびレグ4bを有する。コイル4a、およびレグ4bは、一体に形成される。コイル4a、およびレグ4bは、例えば、線材を塑性加工することで形成される。線材の線径(直径)は、例えば、0.2mm~1.0mm程度である。
【0027】
コイル4a、およびレグ4bは、例えば、タングステンを主成分として含んでいる。タングステンの含有量は、例えば、50wt%以上である。この場合、タングステンにカリウムなどを添加したドープタングステンを用いれば、コイル4aの寸法安定性を高めることができる。
【0028】
コイル4aは螺旋状を呈し、発光管2の内部空間に設けられる。コイル4aは、発光管2の内部空間の中央領域を発光管2の管軸に沿って延びている。発光管2の管軸方向における隣接する線材同士の間隔P(ピッチ寸法)は、例えば、0.5mm~3.0mm程度である。また、発光管2の管軸方向と直交する方向におけるコイル4aの外径Dは、例えば、1mm~5mm程度である。
【0029】
レグ4bは、コイル4aの両側の端部のそれぞれに設けられている。レグ4bは、線状を呈し、コイル4aの端部から発光管2の管軸に沿って延びている。レグ4bの端部は、封止部2aの内部において導電部3と電気的に接続されている。レグ4bの端部の近傍は、導電部3と、レーザ溶接または抵抗溶接することができる。
【0030】
アンカ5は、発光管2の内部空間に設けられる。アンカ5の材料は、例えば、内部電極4の材料と同じとすることができる。アンカ5は、線材を塑性加工することで形成される。例えば、アンカ5の一方の端部側を、コイル4aの外面に巻き付けることができる。例えば、アンカ5の他方の端部側は、発光管2の内壁に接触させることができる。なお、アンカ5をコイル4aに取り付ける場合を例示したが、コイル4aの一部分の直径寸法を大きくしてアンカ5としてもよい。
【0031】
アンカ5は、発光管2の内部空間において、コイル4aを支持する。また、アンカ5がコイル4aに電気的に接続されることで、アンカ5が内部電極4として機能する。すなわち、アンカ5は、コイル4aを支持するサポート部材、および内部電極4の一部として機能する。
【0032】
アンカ5は、例えば、複数設けることができる。この場合、発光管2の管軸方向における隣接するアンカ5同士の間隔(アンカ5のピッチ寸法)は、例えば、10mm~40mm程度である。
【0033】
ホルダ6は、筒状を呈し、一方の端部側が封止部2aの内部に設けられ、他方の端部側が封止部2aから露出している。ホルダ6は、1つの封止部2aに対して1つ設けることができる。ホルダ6は、例えば、樹脂や、セラミックスなどの無機材料から形成される。ホルダ6は、例えば、ステアタイト(steatite)や、酸化アルミニウムなどから形成することができる。
【0034】
外部電極7は、発光管2の外部に設けられる。外部電極7の両側の端部は、例えば、ステンレス製のワイヤで発光管2の外面に取り付けることができる。外部電極7は、例えば、モネル、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、銀、金、プラチナなどの金属を用いて形成される。外部電極7は、内部電極4との間で誘電体バリア放電を発生させる。前述したように、誘電体バリア放電が生じると、発光管2の内部空間において紫外線が発生する。
【0035】
この場合、発光管2の内部空間で発生した紫外線が外部電極7を透過することができれば、紫外線を発光管2の周囲の全方位に照射することができる。そのため、外部電極7には、厚み方向を貫通する複数の孔や複数のスリットなどが設けられている。この場合、外部電極7の遮光率は10%以下とすることが好ましい。
【0036】
例えば、図3(a)に示すように、外部電極7は、メッシュ状を呈している。例えば、外部電極7は、メリヤス編組構造を有している。メリヤス編組構造に用いられる線材は、例えば、線径が0.1mm程度のモネル線である。メッシュ間隔は、例えば、縦が2.8mm程度、横が3mm程度である。
【0037】
メッシュ状の外部電極7とすれば、遮光率を10%以下とするのが容易となる。また、メッシュ状の外部電極7とすれば、発光管2の外面を覆うことができるので、内部電極4との対向面積を大きくすることができる。そのため、誘電体バリア放電が、大面積にわたって安定的に生じ易くなる。
【0038】
リード線8は、少なくとも一方のホルダ6に設けることができる。リード線8の一方の端部は、例えば、ホルダ6の内部を通り、封止部2aの内部において導電部3と電気的に接続される。リード線8の一方の端部の近傍は、導電部3と、レーザ溶接または抵抗溶接することができる。また、リード線8とホルダ6との間の隙間は、封止材により封止されている。リード線8の他方の端部は、ホルダ6から露出させることができる。リード線8の他方の端部には、圧着端子やコネクタなどを接続することができる。
【0039】
リード線9の一方の端部は、ニッケルスリーブ9aを介して外部電極7と電気的に接続されている。リード線9の他方の端部には、圧着端子やコネクタなどを接続することができる。
リード線8、およびリード線9は、例えば、フッ素樹脂により被覆された電線である。リード線8、およびリード線9は、例えば、高周波電源などに電気的に接続される。高周波電源は、例えば、15kHz程度の正弦波を発生させる電源や、パルス電源などである。
【0040】
バリア放電ランプ1を液体300の処理に用いる場合には、バリア放電ランプ1を液体300の中に直接設けることができない。そのため、図1に示すように、バリア放電ランプ1は保護管10の内部に設けられる。
【0041】
保護管10は、筒状を呈し、管径に比べて全長(管軸方向の長さ)が長い形態を有する。保護管10は、例えば、円筒管とすることができる。ただし、保護管10は円筒管に限定されるわけではない。例えば、保護管10は角筒管などであってもよい。例えば、保護管10の一方の端部は塞がれ、他方の端部は開口している。保護管10の内部空間には、バリア放電ランプ1が収納される。保護管10の寸法は、収納されるバリア放電ランプ1の寸法に応じて適宜変更することができる。
【0042】
保護管10は、容器102の内部空間(液体300が供給される空間)に設けられる。図1に示すように、容器102の内壁102eと保護管10との間の空間は、処理を施す液体300が流れる流路となる。そのため、バリア放電ランプ1と保護管10を有するバリア放電ランプモジュール101を容器102の内部空間に設ければ、バリア放電ランプ1が、液体300の流路に設けられることになる。
【0043】
バリア放電ランプ1において発生した紫外線は、保護管10を介して液体300に照射される。そのため、保護管10は、紫外線の透過率が高い材料から形成されている。例えば、前述した発光管2の場合と同様に、保護管10は、合成石英ガラスなどのSiOを含む材料から形成され、OH基の含有量を1ppm以上、3000ppm以下とすることが好ましい。この様にすれば、バリア放電ランプ1からピーク波長が172nmの紫外線が照射されたとしても、紫外線の透過率の低下を抑制することができ、ひいては紫外線の照度維持率の低下を抑制することができる。
【0044】
図1に示すように、支持部20は、保護管10の内部に設けられる。支持部20は、保護管10の閉鎖された端部側に設けられる。支持部20の一方の端部には、凹部20aが設けられている。凹部20aの内部には、バリア放電ランプ1の、リード線8、およびリード線9が設けられる側とは反対側の端部が挿入される。
【0045】
支持部30は、保護管10の開口側の端部に設けられている。支持部30には、バリア放電ランプ1の軸方向に貫通する孔が設けられ、リード線8、およびリード線9を保護管10の外部に引き出すことができる様になっている。また、支持部30には、バリア放電ランプ1の、リード線8、およびリード線9が設けられる側の端部が挿入される孔30aが設けられている。
【0046】
支持部20、および支持部30は、保護管10の内壁に接触させることができる。支持部20、および支持部30は、保護管10の内部空間においてバリア放電ランプ1を支持する。この場合、支持部20、および支持部30は、保護管10と略同芯となるようにバリア放電ランプ1を支持する。
【0047】
支持部20、および支持部30は、例えば、樹脂や、セラミックスなどの無機材料から形成される。支持部20、および支持部30は、例えば、ステアタイトや、酸化アルミニウムなどから形成することができる。
【0048】
ここで、バリア放電ランプ1と、保護管10の内壁との間の空間に酸素があると、バリア放電ランプ1から照射された紫外線が減衰する。そのため、バリア放電ランプ1と、保護管10の内壁との間の空間には、窒素ガスや希ガスなどの不活性ガスが封入されている。この場合、封入するガスを窒素ガスとすれば、製造コストの低減を図ることができる。バリア放電ランプ1と、保護管10の内壁との間の空間の25℃における不活性ガスの圧力(封入圧力)は、例えば、1Pa以上、400kPa以下である。なお、封入圧力は、気体の標準状態(SATP(Standard Ambient Temperature and Pressure):温度25℃、1bar)により求めることができる。
【0049】
図1に示すように、封止部30bは、保護管10の開口側の端部と、保護管10の開口側の端部に設けられた支持部30と、の間に設けられている。封止部30bは、バリア放電ランプ1と、保護管10の内壁との間の空間に不活性ガスを封止する。
また、支持部30と、リード線8、およびリード線9との間の隙間にも封止部30bを設けることができる。支持部30と、バリア放電ランプ1の端部との間の隙間にも封止部30bを設けることができる。
封止部30bは、例えば、エポキシ系接着剤やシリコーン系接着剤が硬化することで形成されたものとすることができる。
【0050】
保護管10の開口側が、封止部30bにより封止されていれば、保護管10の外部に不活性ガスが漏れたり、保護管10の内部に空気(酸素)が侵入したりするのを抑制することができる。そのため、保護管10の内部において、酸素により紫外線が減衰するのを抑制することができるので、紫外線の照度維持率が低下するのを抑制することができる。また、保護管10の開口側が、封止部30bにより封止されていれば、保護管10の内部に液体300が侵入するのを抑制することができる。
【0051】
なお、封止部30bによる封止は、例えば、不活性ガスの雰囲気中において行うことができる。この様にすれば、バリア放電ランプ1と、保護管10の内壁との間の空間に不活性ガスを封入することができる。また、支持部30に孔を設け、孔を介して、バリア放電ランプ1と、保護管10の内壁との間の空間に不活性ガスを封入してもよい。支持部30に設けられた孔は、封止部30bにより封止することができる。
【0052】
図4は、封止部30bの効果を例示するためのグラフである。
パッキンなどの封止部材を用いて、保護管10の開口側の端部を封止すると、経時的に、保護管10の外部に不活性ガスが漏れたり、保護管10の内部に空気(酸素)が侵入したりする。また、液体300の供給装置などからの振動が、液体処理装置100に伝わる場合がある。液体処理装置100に振動が伝わると、パッキンなどの封止部材と保護管10との間に隙間が生じ易くなる。
【0053】
そのため、図4から分かるように、パッキンなどの封止部材を用いて、保護管10の開口側の端部を封止すると、経時的に、紫外線の照度維持率が低下する場合がある。
これに対して、封止部30bを用いて、保護管10の開口側の端部を封止すると、不活性ガスの封止に対する信頼性を向上させることができる。そのため、図4から分かるように、紫外線の照度維持率を維持することができる。
【0054】
なお、以上においては、保護管10の一方の端部が開口し、他方の端部が塞がれている場合を説明したが、保護管10の両側の端部が開口していてもよい。すなわち、保護管10は、少なくとも一方の端部が開口していればよい。保護管10の両側の端部が開口している場合には、保護管10の両側の端部を、支持部30および封止部30bにより封止すればよい。ただし、保護管10の他方の端部が塞がれていれば、不活性ガスの封止に対する信頼性を向上させることができる。
【0055】
図1に示すように、容器102は、筒状を呈し、例えば、断面寸法(中心軸に直交する方向の長さ)に比べて全長(中心軸方向の長さ)が長い形態を有する。容器102は、例えば、円筒状とすることができる。容器102は、例えば、ステンレスなどの金属から形成される。容器102は、液体300が供給される空間を内部に有する。容器102の内部空間には、バリア放電ランプモジュール101が設けられる。保護管10と容器102の内壁102eとの間の空間は、液体300が流れる流路となる。そのため、バリア放電ランプ1において発生した紫外線を、保護管10を介して液体300に照射することができる。
【0056】
容器102には、流入部102aと流出部102bを設けることができる。流入部102aは、筒状を呈し、一方の端部が容器102の内部空間と連通している。流入部102aは、少なくとも1つ設けることができる。流入部102aの他方の端部には、例えば、処理を施す液体300を供給する供給装置などを接続することができる。流出部102bは、筒状を呈し、一方の端部が容器102の内部空間に連通している。流出部102bは、少なくとも1つ設けることができる。流出部102bの他方の端部には、例えば、処理が施された液体300aが供給されるタンクや洗浄装置などを接続することができる。
【0057】
例えば、流入部102aと流出部102bは、容器102の中心軸方向に並べて設けることができる。例えば、流入部102aをバリア放電ランプ1の一方の端部の近傍に対向する位置に設けることができる。例えば、流出部102bをバリア放電ランプ1の他方の端部の近傍に対向する位置に設けることができる。この様にすれば、バリア放電ランプ1に沿って液体300を流すことができるので、バリア放電ランプ1から照射された紫外線の有効利用を図ることができる。
【0058】
容器102の一方の端部側には、バリア放電ランプモジュール101(保護管10)の、支持部20が設けられる側の端部を支持する凹部102cを設けることができる。凹部102cは、容器102の内部空間に開口している。
【0059】
容器102の他方の端部側には、支持板102dを設けることができる。支持板102dには、厚み方向を貫通する孔102d1を設けることができる。バリア放電ランプモジュール101(保護管10)は、孔102d1に挿入され、バリア放電ランプモジュール101(保護管10)の、支持部20が設けられる側の端部の近傍が支持板102dにより支持される。
【0060】
また、凹部102cの中心軸と、孔102d1の中心軸が、容器102の中心軸と重なるようになっている。この様にすれば、バリア放電ランプモジュール101を、容器102の内部空間(液体300の流路)と略同芯に設けることができる。そのため、バリア放電ランプモジュール101の周囲の流路抵抗がばらついて液体300の流速に分布が生じたり、紫外線の照射により生成された物質(例えば、ヒドロキシルラジカル)の濃度に分布が生じたりするのを抑制することができる。
【0061】
ホルダ103は、例えば、バリア放電ランプモジュール101(保護管10)の、支持部30が設けられる側の端部の近傍を保持している。例えば、ホルダ103は、板状を呈し、ネジなどの締結部材を用いて、容器102の支持板102dに取り付けられる。
【0062】
シール部材104は、環状を呈している。シール部材104には、バリア放電ランプモジュール101(保護管10)が挿入される。また、シール部材104は、ホルダ103と支持板102dの間に設けられている。シール部材104は、例えば、Oリングなどとすることができる。
【0063】
ネジなどの締結部材を用いて、ホルダ103を支持板102dに取り付けると、ホルダ103と支持板102dの間に設けられたシール部材104が弾性変形する。シール部材104が弾性変形することで、バリア放電ランプモジュール101(保護管10)と、支持板102dの孔102d1の内壁との間の隙間を封止することができる。また、シール部材104が弾性変形することで、バリア放電ランプモジュール101(保護管10)を保持することができる。
また、ネジなどの締結部材を外すことで、容器102からバリア放電ランプモジュール101を取り外すことができる。
【0064】
なお、図1においては、処理を施す液体300の流れの中にバリア放電ランプモジュール101を浸漬させる場合を例示したが、バリア放電ランプモジュール101は、流れの無い液体300に浸漬させてもよい。例えば、タンクなどに貯留した液体300にバリア放電ランプモジュール101を浸漬させてもよい。
【0065】
例えば、タンクなどの内壁に支持板102dを設け、ホルダ103とシール部材104を用いて、支持板102dにバリア放電ランプモジュール101を取り付けることができる。また、タンクなどの側壁に孔を設け、ホルダ103とシール部材104を用いて、側壁に設けられた孔にバリア放電ランプモジュール101を取り付けることもできる。この場合、バリア放電ランプモジュール101の先端は支持されていてもよいし、支持されていなくてもよい。
【0066】
ここで、一般的には、バリア放電ランプが設けられた保護管の内部は、パッキンなどの封止部材を用いて封止されている。前述した様に、パッキンなどの封止部材を用いて、保護管の内部を封止すると、経時的に、保護管の外部に不活性ガスが漏れたり、保護管の内部に空気(酸素)が侵入したりして紫外線の照度維持率が低下する場合がある。
また、発光管や保護管の材料を、単に、紫外線の透過率が高い材料から形成すると、紫外線により発光管や保護管の材料の化学的な構造に欠陥が生じて紫外線の照度維持率が低下する場合がある。
【0067】
そのため、定期的に、あるいは、必要に応じて、不活性ガスの再充填や、バリア放電ランプと保護管の交換を行うメンテナンスが必要となる。
ところが、液体処理装置の設置場所で、不活性ガスの再充填や、バリア放電ランプと保護管の交換を行うのは困難である。そのため、メンテナンス時間が長くなって、メンテナンス費用が増加したり、液体処理装置の運転効率が低下したりするおそれがある。
【0068】
本実施の形態に係るバリア放電ランプモジュール101においては、保護管10と、バリア放電ランプ1とが、保護管10の開口側の端部に設けられた支持部30と、封止部30bと、により一体化されている。また、バリア放電ランプ1と、保護管10の内壁との間の空間には、封止部30bにより不活性ガスが封入されている。
【0069】
そのため、液体処理装置100の設置場所で、バリア放電ランプモジュール101を単に交換すれば良い。また、バリア放電ランプモジュール101は、ネジなどの締結部材を用いて、液体処理装置100に着脱できるので、交換作業も容易である。
すなわち、本実施の形態に係るバリア放電ランプモジュール101とすれば、メンテナンス時間の短縮を図ることができる。
【0070】
また、発光管2や保護管10がSiOを含み、OH基の含有量が1ppm以上、3000ppm以下となっていれば、紫外線により、発光管2や保護管10の材料の化学的な構造に欠陥が生じるのを抑制することができる。
また、封止部30bを用いて、保護管10の開口側の端部を封止しているので、不活性ガスの封止に対する信頼性を向上させることができる。そのため、図4から分かるように、紫外線の照度維持率を維持することができる。
【0071】
すなわち、発光管2や保護管10の材料に含まれるOH基の含有量を適正な範囲内としたり、封止部30bを用いて、保護管10の開口側の端部を封止したりすれば、バリア放電ランプモジュール101の寿命を長くすることができる。
そのため、メンテナンスの回数を減らすことができるので、所定の期間における総メンテナンス時間の短縮を図ることができる。
【0072】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【0073】
例えば、本発明の1つの実施形態において、バリア放電ランプモジュール101を具備した液体処理装置100を提供することができる。前述したバリア放電ランプモジュール101に関する説明、およびバリア放電ランプモジュール101の変形例(例えば、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもので、本発明の特徴を備えているもの)は、いずれも液体処理装置100に適用することができる。
【0074】
以下、前述した実施形態に関する付記を示す。
【0075】
(付記1)
筒状を呈し、少なくとも一方の端部が開口した保護管と;
前記保護管の内部に設けられ、紫外線を照射可能なバリア放電ランプと;
前記保護管の内部に設けられ、前記バリア放電ランプを支持する複数の支持部と;
前記保護管の開口側の端部と、前記保護管の開口側の端部に設けられた前記支持部と、の間に設けられ、前記バリア放電ランプと、前記保護管の内壁との間の空間に不活性ガスを封止する封止部と;
を具備したバリア放電ランプモジュール。
【0076】
(付記2)
前記保護管と、前記バリア放電ランプとが、前記保護管の開口側の端部に設けられた前記支持部と、前記封止部と、により一体化されている付記1記載のバリア放電ランプモジュール。
【0077】
(付記3)
前記不活性ガスの圧力は、1Pa以上、400kPa以下である付記1または2に記載のバリア放電ランプモジュール。
【0078】
(付記4)
前記保護管は、SiOを含み、OH基の含有量が1ppm以上、3000ppm以下である付記1~3のいずれか1つに記載のバリア放電ランプモジュール。
【0079】
(付記5)
液体が供給される空間を内部に有する容器と;
前記液体が供給される空間に設けられた、付記1~4のいずれか1つに記載のバリア放電ランプモジュールと;
を具備した液体処理装置。
【符号の説明】
【0080】
1 バリア放電ランプ、2 発光管、4 内部電極、7 外部電極、10 保護管、20 支持部、30 支持部、30b 封止部、100 液体処理装置、101 バリア放電ランプモジュール、102 容器、103 ホルダ、104 シール部材、300 液体
図1
図2
図3
図4