(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046469
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】プラズマ源
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240327BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240327BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240327BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H05H1/46 L
H01L21/302 101G
H01L21/205
H01L21/31 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151881
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 豊
(72)【発明者】
【氏名】吉迫 裕司
(72)【発明者】
【氏名】納富 隼人
(72)【発明者】
【氏名】天立 茂樹
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA05
2G084BB33
2G084CC13
2G084DD03
2G084DD13
2G084DD22
2G084EE11
2G084EE14
2G084EE15
2G084EE17
2G084HH05
2G084HH21
2G084HH22
2G084HH28
2G084HH32
2G084HH52
5F004AA16
5F004BA20
5F004BB12
5F004BB13
5F004BC08
5F004BD04
5F004CA02
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5F004CB05
5F004DA25
5F004DA26
5F045AA08
5F045AC11
5F045AC15
5F045EE12
5F045EH01
5F045EH02
5F045EH19
5F045GB08
5F045GB15
(57)【要約】
【課題】断続的に着火を繰り返すプラズマの負荷変動による回路素子の破壊を抑制すること。
【解決手段】実施形態に係るプラズマ源は、直流電源回路の出力端における電圧値および電流値、並びに共振回路の出力端における電圧値および電流値の少なくともいずれかが、それぞれの電圧値および電流値に対応して設定される第1の閾値を超過した場合は、検出電力値が、電圧値または電流値の超過分に応じた第1の目標電力値未満の第2の目標電力値となるように直流電圧を制御し、共振回路の出力端における電圧値および電流値の少なくともいずれかが、それぞれの電圧値および電流値に対応して第1の閾値よりも高い値に設定される第2の閾値を超過した場合は、検出電力値が、予め設定された電力値であって、第2の目標電力値よりも低い第3の目標電力値となるように直流電圧を制御し、その後に、検出電力値が第1の目標電力値となるように直流電圧を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを電離させてプラズマを発生させる放電部と、前記放電部に対して電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ源であって、
前記放電部は、
内部にプラズマ発生空間を有する放電管と、
前記放電管を取り囲むコイル状の導電体を含むアンテナと、を備え、
前記高周波電源は、
直流電圧を出力する直流電源回路と、
前記直流電源回路から出力された直流電圧を無線周波数帯域の周波数を有する交流電圧に変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路から出力された交流電圧を共振現象によって電圧変換して出力する共振回路と、
前記直流電源回路、前記インバータ回路、及び前記共振回路を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記直流電源回路の出力端における検出電力値が第1の目標電力値となるように、前記直流電源回路から出力する直流電圧を制御し、
前記直流電源回路の出力端における電圧値および電流値、並びに前記共振回路の出力端における電圧値および電流値の少なくともいずれかが、それぞれの電圧値および電流値に対応して設定される第1の閾値を超過した場合は、前記検出電力値が、前記電圧値または前記電流値の超過分に応じた前記第1の目標電力値未満の第2の目標電力値となるように前記直流電圧を制御し、
前記共振回路の出力端における電圧値および電流値の少なくともいずれかが、それぞれの電圧値および電流値に対応して前記第1の閾値よりも高い値に設定される第2の閾値を超過した場合は、前記検出電力値が、予め設定された電力値であって、前記第2の目標電力値よりも低い第3の目標電力値となるように前記直流電圧を制御し、その後に、前記検出電力値が前記第1の目標電力値となるように前記直流電圧を制御する、
プラズマ源。
【請求項2】
前記第3の目標電力値は、前記高周波電源が出力可能な電力の下限値である、
請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項3】
前記第3の目標電力値は0Wである、
請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項4】
前記放電部で発生するプラズマは、安定状態では誘導結合プラズマとなっており、
前記第2の閾値は、
少なくとも前記誘導結合プラズマが消失したことを示す電圧値または電流値以上である、
請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項5】
前記制御部は、
前記直流電源回路の出力端における前記検出電力値が前記第3の目標電力値となるように、前記直流電源回路から出力する前記直流電圧を制御した後、前記検出電力値が前記第1の目標電力値となるように前記直流電圧を制御するときは、前記検出電力値が前記第3の目標電力値から前記第1の目標電力値へとランプアップするように前記直流電圧を制御する、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のプラズマ源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラズマ源に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいて用いられるプラズマを生成するプラズマ源が知られている。このようなプラズマ源においては、過電圧または過電流で回路素子が破壊されてしまう恐れがある。例えば特許文献1,2の技術では、電圧または電流をセンサで監視して、これらの値が或る一定以上の値にならないように制御する保護機能が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-234852号公報
【特許文献2】特開2005-191791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プラズマが不安定で断続的に点いたり消えたりを繰り返すような負荷条件では、プラズマ源から見たインピーダンスが大きく変化する。とりわけ、瞬間的にプラズマが消えて再着火するときのインピーダンス変化は急峻であり、この場合、保護制御が間に合わずに電圧または電流がオーバーシュートして回路素子の破壊に至る恐れがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑み、断続的に着火を繰り返すプラズマの負荷変動による回路素子の破壊を抑制することができるプラズマ源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態にかかるプラズマ源は、ガスを電離させてプラズマを発生させる放電部と、前記放電部に対して電力を供給する高周波電源とを備えたプラズマ源であって、前記放電部は、内部にプラズマ発生空間を有する放電管と、前記放電管を取り囲むコイル状の導電体を含むアンテナと、を備え、前記高周波電源は、直流電圧を出力する直流電源回路と、前記直流電源回路から出力された直流電圧を無線周波数帯域の周波数を有する交流電圧に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路から出力された交流電圧を共振現象によって電圧変換して出力する共振回路と、前記直流電源回路、前記インバータ回路、及び前記共振回路を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記直流電源回路の出力端における検出電力値が第1の目標電力値となるように、前記直流電源回路から出力する直流電圧を制御し、前記直流電源回路の出力端における電圧値および電流値、並びに前記共振回路の出力端における電圧値および電流値の少なくともいずれかが、それぞれの電圧値および電流値に対応して設定される第1の閾値を超過した場合は、前記検出電力値が、前記電圧値または前記電流値の超過分に応じた前記第1の目標電力値未満の第2の目標電力値となるように前記直流電圧を制御し、前記共振回路の出力端における電圧値および電流値の少なくともいずれかが、それぞれの電圧値および電流値に対応して前記第1の閾値よりも高い値に設定される第2の閾値を超過した場合は、前記検出電力値が、予め設定された電力値であって、前記第2の目標電力値よりも低い第3の目標電力値となるように前記直流電圧を制御し、その後に、前記検出電力値が前記第1の目標電力値となるように前記直流電圧を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、断続的に着火を繰り返すプラズマの負荷変動による回路素子の破壊を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるプラズマ源の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる制御回路による保護制御の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる制御回路による保護制御の他の例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかるプラズマ源による高周波電力の供給処理の手順の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態にかかるプラズマ源を詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
(プラズマ源の構成例)
図1は、実施形態にかかるプラズマ源1の構成の一例を示す図である。プラズマ源1は、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)を発生可能に構成される。半導体プロセスにおいて、ICPは、成膜処理、エッチング処理、これらの処理で生じた排ガスの分解処理等の各種用途に用いられる。
【0011】
図1に示すように、プラズマ源1は、高周波電源10及び放電部50を備える。高周波電源10は、直流電源回路20、インバータ回路30、共振回路40、直流電圧センサ91、直流電流センサ92、高周波電圧センサ93、高周波電流センサ94、及び制御回路60を備える。
【0012】
直流電源回路20は、商用電源等の交流電源(
図1のAC)に接続される。交流電源は、例えばプラズマ源1の外部に設けられる。ただし、交流電源が、プラズマ源1または直流電源回路20の構成要素として設けられていてもよい。
【0013】
直流電源回路20は、例えば整流・平滑回路21及び昇降圧チョッパ22を備え、交流電源からの交流電圧を用いて直流電圧を出力するように構成される。プラズマ源1は、この直流電圧によって動作するように構成される。
【0014】
整流・平滑回路21は、交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換する。昇降圧チョッパ22は、整流・平滑回路21からの直流電圧を、制御回路60からの制御信号S5に応じた電圧値まで昇圧または降圧する。より具体的には、昇降圧チョッパ22は、制御信号S5に基づいて、例えば昇降圧チョッパ22内部の図示しないスイッチング素子のデューティ比を増減させることによって、出力電圧値を増減させる。
【0015】
インバータ回路30は、直流電源回路20の後段に設けられ、直流電源回路20から出力された直流電圧を交流電圧に変換するように構成される。
図1の例では、インバータ回路30の入力端は、直流電圧センサ91及び直流電流センサ92を介して、直流電源回路20の出力端に接続される。
【0016】
インバータ回路30により変換される交流電圧は、例えば2MHz程度の無線周波数(RF:Radio Frequency)帯域の周波数である。ただし、インバータ回路30により変換される交流電圧は、他の周波数を有していてもよい。また、交流電圧の周波数を、例えば2MHzを基準周波数として増減可能であってもよい。
【0017】
インバータ回路30は、制御回路60からの制御信号S6に基づいて、例えばインバータ回路30内部の図示しないスイッチング素子をスイッチングさせる。
【0018】
共振回路40は、インバータ回路30及び放電部50の間に設けられ、インバータ回路30からの交流電流を用いて共振現象により高周波電力を発生するように構成される。
図1の例では、共振回路40は、LC回路部41及びコンデンサ42を備える。
【0019】
共振回路40の入力端となるLC回路部41の入力端は、インバータ回路30の出力端に接続される。より具体的には、LC回路部41は、インダクタ411,413及びコンデンサ412,414を備える。
【0020】
インダクタ411及びコンデンサ412は、インバータ回路30と放電部50の一端部P1との間に直列接続される。インダクタ413及びコンデンサ414は、インバータ回路30と放電部50の他端部P2との間に直列接続される。
【0021】
コンデンサ42は、LC回路部41の出力端に対して、後段の放電部50と並列に接続される。ただし、共振回路40は、
図1の構成に限らない。
【0022】
放電部50は、共振回路40の後段に設けられ、放電部50が備えるアンテナ51及び放電管52に供給される高周波電力を用いてプラズマを発生させる。
図1の例では、放電部50の電力の入力端は、高周波電圧センサ93及び高周波電流センサ94を介して、共振回路40の出力端となるLC回路部41の出力端に接続される。
【0023】
アンテナ51は、例えば放電管52を取り囲むようにコイル状に形成された導電体である。
図1の例では、アンテナ51は、LC回路部41の出力端に対して、前段のコンデンサ42と並列に接続される。
【0024】
放電管52は、例えば成膜処理、エッチング処理等に用いる処理ガスを電離させたプラズマを発生させる空間を内部に有するとともに、処理ガスの流入口および流出口(不図示)を例えば両端側に有する。放電管52は、アンテナ51をプラズマから絶縁するように、例えば石英やアルミナなどの非導電性材料または誘電体を用いて管状(円筒状)の形状を有するように構成される。
【0025】
プラズマ源1の用途が排ガスの分解処理等である場合、放電管52が、半導体ウェハを処理する処理チャンバから排ガスを排出する排気ダクトの一部を構成していてもよい。この場合、半導体プロセスで使用済みの排ガスを電離させたプラズマを放電管52に発生させることにより、排ガスの分解処理が行われる。
【0026】
直流電圧センサ91及び直流電流センサ92は、直流電源回路20及びインバータ回路30の間に配置される。直流電圧センサ91は、直流電源回路20の出力電圧Vdcの電圧値を検出し、検出された出力電圧値に対応する検出信号S1を出力する。直流電流センサ92は、直流電源回路20及びインバータ回路30の間に流れる直流電流Idcの電流値を検出し、検出された電流値に対応する検出信号S2を出力する。
【0027】
高周波電圧センサ93及び高周波電流センサ94は、共振回路40及び放電部50の間に配置される。高周波電圧センサ93は、アンテナ51に印加される交流電圧Vrfの電圧値を検出し、検出された出力電圧値に対応する検出信号S3を出力する。高周波電流センサ94は、共振回路40及び放電部50の間に流れる交流電流、すなわちアンテナ51を流れる交流電流Irfの電流値を検出し、検出された電流値に対応する検出信号S4を出力する。
【0028】
制御回路60は、ハードウェア資源としてプロセッサ及びメモリを有し、メモリにロードされた制御プログラムを実行することにより、制御部としての機能を実現するように構成されている。あるいは、制御回路60は、ハードウェア資源として、制御部としての機能を実現するように構成された専用回路を有していてもよい。このような構成により、制御回路60はプラズマ源1の各部の動作を制御する。
【0029】
例えば、制御回路60は、直流電源回路20の出力電圧値を制御することが可能に構成される。これにより、アンテナ51に印加される電圧の電圧値を変化させることができる。すなわち、制御回路60は、アンテナ51に供給すべき電力値に応じた直流電力値を目標電力値とすることで、アンテナ51に供給される電力値を制御することができる。
【0030】
具体的には、制御回路60は、直流電圧センサ91の検出信号S1と直流電流センサ92の検出信号S2とに基づいて、直流電源回路20から出力される検出電力値を算出する。また、制御回路60は、検出電力値が目標電力値と等しくなるように、直流電源回路20の昇降圧チョッパ22に対して制御信号S5を送信する。昇降圧チョッパ22は、上述のように、制御信号S5に基づいて出力電圧値を増減させる。
【0031】
なお、
図1では、直流電源回路20内のスイッチング素子、及びインバータ回路30の内のスイッチング素子に駆動信号を与えるドライブアンプ等の図示および説明を省略している。また、直流電源回路20、インバータ回路30、及び制御回路60には、それぞれ図示しない電源が接続され、これらの電源からの電力が供給される。
【0032】
(プラズマ源の動作例)
次に、
図1~
図3を用いて、実施形態のプラズマ源1の動作例について説明する。まずは、引き続き
図1を用いて、プラズマを生成する場合のプラズマ源1の動作例について説明する。
【0033】
制御回路60は、例えば放電管52内に処理ガスが供給されると、プラズマ源1の各部を制御して、所望の高周波電力が得られるようアンテナ51に交流電流Irfを流す。これにより、アンテナ51のコイルの端子間の交流電圧Vrfによって処理ガスが電離されてプラズマが生成される。
【0034】
このとき生成されるプラズマは、コイルの端子間の電界によって結合しているプラズマ、すなわち容量結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)である。CCPが発生している状態で、アンテナ51の交流電流Irfをさらに増大させると、コイルの周囲に磁場が形成されて誘導電界が発生し、それによりICPが発生する。
【0035】
ICPは、成膜処理、エッチング処理、排ガス分解処理等の用途に応じて適正化されている。ICPは、例えば放電管52内に導入する処理ガスの組成、圧力、流量などのガス条件、並びにアンテナ51及び放電管52に供給される高周波電力の電力量等の各種条件によって種々に状態が変化しうる。プラズマ源1のユーザ等は、これらの条件を適宜設計可能である。
【0036】
アンテナ51及び放電管52に供給される高周波電力の例としては、2800W以上であって例えば5500Wなどとすることができる。また、処理ガスの組成としては、例えば酸素と窒素とが混合された混合ガス等でありうる。この場合の処理ガスの流量の例としては、酸素の流量を1000sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)とし、窒素の流量を100sccmなどとすることができる。あるいは、酸素の流量を1500sccmとし、窒素の流量を100sccmなどとしてもよい。
【0037】
なお、制御回路60は、上記のようなプラズマの着火制御において、直流電源回路20から出力される直流電圧値が、目標電力値に向かってランプアップされるよう制御することが好ましい。
【0038】
上記のようにプラズマが生成されると、制御回路60は、直流電圧センサ91で検出した検出信号S1と、直流電流センサ92で検出した検出信号S2とに基づいて検出電力値を算出する。検出信号S1は、直流電源回路20の出力端における電圧値の情報を含む。検出信号S2は、直流電源回路20の出力端における電流値の情報を含む。検出電力値は、検出信号S1及び検出信号S2の積によって算出され、直流電源回路20の出力端における電力値を示す。
【0039】
ここで、直流電源回路20の昇降圧チョッパ22から出力される直流電力値が増減することによって、アンテナ51に供給される電力値も増減する関係にある。また、直流電源回路20の昇降圧チョッパ22から出力される直流電力値と、アンテナ51に供給される電力値との間には相関関係がある。このため、直流電源回路20の昇降圧チョッパ22から出力される直流電力値からアンテナ51に供給される電力値を推定することができる。
【0040】
したがって、上述のように、制御回路60は、検出電力値が目標電力値になるように、直流電源回路20の昇降圧チョッパ22の出力電圧を増減させる制御を行うことにより、アンテナ51に供給する電力の電力値を調整することができる。
【0041】
ここで、目標電力値は第1の目標電力値の一例であり、例えばプラズマ源1のユーザ等により設定される高周波電力の目標値、つまり、アンテナ51に供給される所望の電力値に基づいて決定される。
【0042】
このように、直流電源回路20の出力端における検出電力値を用いてアンテナ51に供給される電力値を間接的に算出し、直流電源回路20の出力電圧を制御することで、アンテナ51に供給される電力値を所望の電力値に調整することができる。
【0043】
ところで、プラズマ源1の制御回路60は、上記のようにプラズマを生成している間に過電圧または過電流が発生した場合、プラズマ源1の回路素子が破壊されないよう保護制御を行う。実施形態の制御回路60では、発生した過電圧または過電流の大きさに応じて異なる保護制御が行われる。
【0044】
図2は、実施形態にかかる制御回路60による保護制御の一例を示す図である。
図2の例では、発生した過電圧または過電流が所定値未満の場合に行われる保護制御を示す。
【0045】
図2(a)は、直流電源回路20または共振回路40のいずれかの出力端で検出される電圧値または電流値の推移を示すグラフである。
図2(a)のグラフの横軸は時間である。
図2(a)のグラフの縦軸は、直流電圧センサ91、直流電流センサ92、高周波電圧センサ93、または高周波電流センサ94における検出信号S1~S4のいずれかである。
【0046】
図2(a)に示すように、直流電源回路20及び共振回路40の出力端でそれぞれ検出される電圧値および電流値には、直流電源回路20における目標電力値(後述する目標電力値TV1)に応じた閾値TH1がそれぞれ設定されている。閾値TH1は第1の閾値の一例である。
【0047】
高周波電力の供給中、直流電源回路20の出力端、及び共振回路40の出力端における電圧値および電流値は、プラズマの状態により常に変動している。この間、制御回路60は、直流電圧センサ91、直流電流センサ92、高周波電圧センサ93、及び高周波電流センサ94からの検出信号S1~S4が、それぞれについて設定された閾値TH1を超過していないかモニタリングする。
【0048】
ここで、プラズマが比較的緩やかに負荷変動し、これに伴って検出信号S1~S4の少なくともいずれかが閾値TH1を超過したものとする。この場合、制御回路60は、
図2(b)に示す保護制御を行う。
【0049】
図2(b)は、制御回路60による保護制御において、直流電源回路20における目標電力値が切り替わる様子を示すグラフである。
図2(b)のグラフの横軸は時間である。
図2(b)のグラフの縦軸は、直流電源回路20における目標電力値である。
【0050】
図2(b)に示すように、直流電源回路20における目標電力値は、当初、目標電力値TV1に設定されている。ここで、目標電力値TV1は、上述のように、第1の目標電力値の一例であり、例えばプラズマ源1のユーザ等により設定される高周波電力の目標値、つまり、アンテナ51に供給される所望の電力値に基づいて決定される。
【0051】
ここで、上述のように、検出信号S1~S4の少なくともいずれかが閾値TH1を超過すると、制御回路60は、直流電源回路20における目標電力値を、目標電力値TV1から目標電力値TV2へと切り替える。
【0052】
目標電力値TV2は、第2の目標電力値の一例であり、ユーザ設定に基づく任意の目標電力値TV1よりも低い値である。目標電力値TV2は、検出信号S1~S4のいずれが閾値TH1を超過したか、また、閾値TH1に対する超過分はどの程度か、によって決定される。
【0053】
例えば、直流電圧センサ91の検出信号S1、つまり、直流電源回路20の出力端における検出電圧値が閾値TH1を超過した場合、制御回路60は以下の式(1)により目標電力値TV2を算出する。
【0054】
目標電力値TV2=目標電力値TV1-検出信号S1の超過分×係数DV1…(1)
【0055】
また、直流電流センサ92の検出信号S2、つまり、直流電源回路20の出力端における検出電流値が閾値TH1を超過した場合、制御回路60は以下の式(2)により目標電力値TV2を算出する。
【0056】
目標電力値TV2=目標電力値TV1-検出信号S2の超過分×係数DV2…(2)
【0057】
また、高周波電圧センサ93の検出信号S3、つまり、共振回路40の出力端における検出電圧値が閾値TH1を超過した場合、制御回路60は以下の式(3)により目標電力値TV2を算出する。
【0058】
目標電力値TV2=目標電力値TV1-検出信号S3の超過分×係数DV3…(3)
【0059】
また、高周波電流センサ94の検出信号S4、つまり、共振回路40の出力端における検出電流値が閾値TH1を超過した場合、制御回路60は以下の式(4)により目標電力値TV2を算出する。
【0060】
目標電力値TV2=目標電力値TV1-検出信号S4の超過分×係数DV4…(4)
【0061】
ここで、検出信号S1~S4の超過分とは、閾値TH1を超過した検出信号S1~S4から、それに対応する閾値TH1を減算した値である。また、それぞれの超過分に掛け合わされる係数DV1~DV4は、直流電源回路20及び共振回路40の出力端でそれぞれ検出される電圧値および電流値に対して予めそれぞれ設定されている。これらの係数DV1~DV4は、例えばプラズマ源1における実績値に基づいて決定される。
【0062】
一方、検出信号S1~S4のうち、複数の検出信号が閾値TH1を超過した場合には複数の保護がかかったものとして、それぞれの(超過量×係数)で目標電力値TV1を減算していく。例えば、検出信号S2及び検出信号S3が、それぞれについて設定された閾値TH1を超過した場合は、例えば以下の式(5)を用いて、目標電力値TV2を算出する。
【0063】
目標電力値TV2=目標電力値TV1-検出信号S2の超過分×係数DV2-検出信S3の超過分×係数DV3…(5)
【0064】
制御回路60による目標電力値TV2の算出方法は、もちろん、これに限定されるわけではなく、例えば、検出信号S1~S4のうち、複数の検出信号が閾値TH1を超過した場合には、上記の式(1)~(4)によって算出される目標電力値TV2のうちの最小値を目標電力値TV2としてもよい。
【0065】
制御回路60は、以上のように算出した目標電力値TV2に基づいて制御信号S5を生成し、直流電源回路20の昇降圧チョッパ22に対して制御信号S5を送信する。昇降圧チョッパ22は、制御信号S5に基づいて出力電圧値を増減させる。これにより、直流電源回路20の出力端における検出電力値が、算出された目標電力値TV2となるように、直流電源回路20から出力する直流電圧が制御される。
【0066】
なお、
図2(b)のグラフに緩やかなカーブで示すように、目標電力値TV1から目標電力値TV2への切り替えには所定の時間を要する。目標電力値TV2を算出し、また、電圧値または電流値の変動に、それを追従させる制御が必要になるためである。
【0067】
制御回路60は、例えばユーザにより予め設定された高周波電力の供給期間中、検出信号S1~S4のモニタリングを継続し、それらの検出信号S1~S4に応じて直流電源回路20からの直流電圧の出力制御を継続する。これにより、過電圧または過電流による回路素子の破壊を抑制しつつ、高周波電源10から出力される交流電力値が所望の値に維持される。
【0068】
図3は、実施形態にかかる制御回路60による保護制御の他の例を示す図である。
図3の例では、発生した過電圧または過電流が所定値以上の場合に行われる保護制御を示す。
【0069】
図3(a)は、共振回路40の出力端で検出される電圧値または電流値の推移を示すグラフである。
図3(a)のグラフの横軸は時間である。
図3(a)のグラフの縦軸は、高周波電圧センサ93または高周波電流センサ94における検出信号S3,S4のいずれかである。
【0070】
図3(a)に示すように、共振回路40の出力端でそれぞれ検出される電圧値および電流値には、直流電源回路20における目標電力値TV1に応じた閾値TH2がそれぞれ設定されている。閾値TH2は、第2の閾値の一例であり、閾値TH1よりも高い値に設定される。
【0071】
閾値TH2を超えるような過電圧または過電流は、例えばプラズマが不安定で断続的に点いたり消えたりを繰り返すような負荷条件で発生しうる。ここで、プラズマが消失した状態とは、ICP状態を維持できずにCCP状態となったプラズマ状態、または、CCPもが完全に消失した状態の両方を含みうる。このような負荷条件としては、例えば放電管52内における処理ガスの圧力または流量が高いガス条件のような、プラズマの維持に大きな電力を要する条件が挙げられる。
【0072】
また、プラズマが点いたり消えたりを繰り返すような負荷条件では、プラズマ源1から見たインピーダンス、つまり、高周波電源10の出力端よりも後段の機器における負荷インピーダンスが激しく変動する。とりわけ、瞬間的にプラズマが消えて再着火するときには、負荷インピーダンスの変化が急峻である。これにより、このときに生じる過電圧または過電流も大きなものとなる。
【0073】
したがって、一例として、閾値TH2は、そのときの負荷条件下において、少なくともICPが消失したことを示す電圧値または電流値以上とすることができる。あるいは、閾値TH2が、例えばICPが消失する際に生じる過電圧および過電流の実測値に基づいて決定されていてもよい。
【0074】
ここで、プラズマが不安定となって急激な負荷変動が生じ、これに伴って検出信号S3,S4の少なくともいずれかが、閾値TH1を超過するとともに閾値TH2をも超過したものとする。この場合、制御回路60は、
図3(b)に示す保護制御を行う。
【0075】
図3(b)は、制御回路60による保護制御において、直流電源回路20における目標電力値が切り替わる様子を示すグラフである。
図3(b)のグラフの横軸は時間である。
図3(b)のグラフの縦軸は、直流電源回路20における目標電力値である。
【0076】
図3(b)に示すように、直流電源回路20における当初の目標電力値は、上述の
図2の場合と同様、目標電力値TV1に設定されている。
【0077】
ここで、上述のように、検出信号S3,S4の少なくともいずれかが閾値TH1を超過すると、制御回路60は、直流電源回路20における目標電力値を、目標電力値TV1から目標電力値TV2へと切り替える上述の
図2(b)の制御を開始する。
【0078】
ただし、上述したとおり、制御回路60による、このような保護制御の動作は比較的緩慢である。したがって、目標電力値TV1から目標電力値TV2へと切り替える保護制御の途中で、閾値TH1を超過した検出信号S3または検出信号S4は、閾値TH2をも超過する。
【0079】
これにより、制御回路60は、
図2(b)の保護制御から、
図3(b)後半に示す保護制御へと切り替える。具体的には、制御回路60は、直流電源回路20における目標電力値を更に目標電力値TV3へと切り替え、その後、目標電力値TV1へとランプアップさせる。
【0080】
目標電力値TV3は、第3の目標電力値の一例であり、ユーザ設定に基づく任意の目標電力値TV1よりも低く、かつ、予め定められた値である。具体的には、目標電力値TV3は、目標電力値TV2よりも更に低い値であって、例えばプラズマ源1の高周波電源10の出力値が100W以下になるよう設定されている。
【0081】
また、目標電力値TV3は、好ましくは高周波電源10が出力可能な電力の下限値、より好ましくは0Wに設定されていてもよい。実施形態のプラズマ源1において、高周波電源10が出力可能な電力の下限値は、例えば直流電源回路20におけるデューティ比の5%程度となるよう設計されている。
【0082】
このように、予め定められた目標電力値TV3へと切り替えるように設計されていることで制御回路60の制御負荷が低減されて、例えば
図2(b)の例よりも、制御回路60が素早く保護制御を行うことができる。また、目標電力値TV3を、例えば100W、好ましくは高周波電源10の下限出力値、より好ましくは0Wとすることで、断続的に着火を繰り返すプラズマを一旦、消失させることができる。これにより、不安定なプラズマの状態を一旦リセットすることができる。
【0083】
また、目標電力値TV3から目標電力値TV1への切り替えタイミングは、制御回路60の動作速度の最速値、直流電源回路20の反応速度の最速値に依存していてよい。これにより、プラズマが消失している期間を極力短縮して、半導体プロセス等のプラズマ処理に影響が生じるのを抑制することができる。
【0084】
なお、目標電力値TV3から目標電力値TV1へのランプアップは、例えば上述したプラズマの着火制御時、つまり、新規にプラズマを生成する際のランプアップ制御と同様の設定にしたがって行うことができる。このように、プラズマの再着火時に目標電力値をランプアップさせる制御を行うと、プラズマの再着火時に電力制御が不安定になることを抑制できる。
【0085】
制御回路60は、例えばユーザにより予め設定された高周波電力の供給期間中、検出信号S3,S4の少なくともいずれかが閾値TH2を超過するごとに、
図3(b)に示す保護制御を繰り返す。これにより、過電圧または過電流による回路素子の破壊を抑制しつつ、安定したプラズマが維持される。
【0086】
(プラズマ源の処理例)
次に、
図4を用いて、実施形態のプラズマ源1による高周波電力の供給処理の例について説明する。
図4は、実施形態にかかるプラズマ源1による高周波電力の供給処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0087】
図4に示すように、制御回路60は、例えばユーザからの指示を受けると、目標電力値TV1の設定にしたがって、直流電源回路20、インバータ回路30、及び共振回路40等の各部を制御して、プラズマを着火させる(ステップS101)。
【0088】
プラズマ着火後、制御回路60は、ステップS102~S107の処理を繰り返し行うループ処理を開始する(Lstart)。ステップS102~S107の処理中、制御回路60は、直流電圧センサ91、直流電流センサ92、高周波電圧センサ93、及び高周波電流センサ94からの検出信号S1~S4を適宜取得して、これらの検出信号S1~S4のモニタリングを継続する。
【0089】
検出信号S1~S4のモニタリング中、制御回路60は、検出信号S1~S4の少なくともいずれかが、それと対応する閾値TH1を超過していないかを監視する(ステップS102)。いずれの検出信号S1~S4も閾値TH1を超過していなければ(ステップS102:No)、制御回路60は、検出信号S1~S4の監視を継続する。
【0090】
検出信号S1~S4の少なくともいずれかが閾値TH1を超過した場合(ステップS102:Yes)、制御回路60は、上述のいずれかの式(1)~(5)に基づいて目標電力値TV2を算出する(ステップS103)。また、制御回路60は、当初の目標電力値TV1を算出した目標電力値TV2へと切り替える保護制御を開始する(ステップS104)。
【0091】
また、制御回路60は、この間にも検出信号S1~S4のモニタリングを継続し、検出信号S3,S4の少なくともいずれかが、それと対応する閾値TH2を超過していないかを監視する(ステップS105)。いずれの検出信号S3,S4も閾値TH2を超過していなければ(ステップS105:No)、制御回路60は、目標電力値TV1を目標電力値TV2へと切り替える保護制御を継続する(ステップS104)。
【0092】
検出信号S3,S4の少なくともいずれかが閾値TH2を超過した場合(ステップS105:Yes)、制御回路60は、目標電力値TV1を目標電力値TV2へと切り替える保護制御に替えて、予め定められた目標電力値TV3へと切り替える保護制御を行う(ステップS106)。
【0093】
また、制御回路60は、引き続き、目標電力値TV3から目標電力値TV1へと切り替えるランプアップ制御を行う(ステップS107)。
【0094】
制御回路60は、高周波電力の供給期間中であるか否かを判定する(ステップS108)。ステップS108の処理において、高周波電力の供給期間中と判定された場合(ステップS108:Yes)は、ステップS102の処理に戻り、制御回路60は検出信号S1~S4の監視を継続する。一方、ステップS108の処理において、高周波電力の供給期間中ではないと判定された場合は、ループ処理を停止する(Lstop)。
【0095】
(比較例)
高周波電力を出力してICP等のプラズマを生成するプラズマ源が、半導体製造プロセスに用いられることがある。このようなプラズマ源においては、高周波電力の供給中、過電圧または過電流によって回路素子が破壊されないよう、電圧値および電流値をセンサで監視して、これらが所定の閾値以上とならないように制御する保護機能が知られている。このような保護制御は、通常の安定な放電時には効果的に回路素子の破壊を抑制することができる。また、短絡による過電流に対しては、ヒューズ等の素子により過電流を遮断することで回路素子の破壊を抑制する技術も一般的である。
【0096】
しかしながら、プラズマが不安定で断続的に点いたり消えたりを繰り返すような負荷条件では、プラズマ源から見たインピーダンスが急激に変化する。負荷インピーダンスは、プラズマの着火時と消失時とで大きく変化するためである。特に、瞬間的にプラズマが消えて再着火するときのインピーダンス変化は急峻であり、上述の通常時の保護制御が間に合わずに回路素子が破壊されてしまう場合がある。
【0097】
上記課題に対し、制御回路の動作速度を高めることで対策しようとすると、プラズマ源の制御系を設計し直す必要があり、開発に長期間を要してしまう。また、応答速度の速いセンサ、及びクロック周波数が高い回路素子等は一般に高価であり、高額なプラズマ減となってしまう。一方、ヒューズ等の素子による対策を採った場合には、ヒューズによる過電流の遮断が発生するたびに素子交換を行わなければならず、プラズマ源の稼働率が低下してしまう。
【0098】
実施形態のプラズマ源1によれば、共振回路40の出力端における電圧値および電流値の少なくともいずれかが、閾値TH1よりも高い閾値TH2を超過した場合は、直流電源回路20の出力端における検出電力値が、予め設定された目標電力値TV3となるように直流電圧を制御し、その後に、上記検出電力値がユーザ設定に基づく目標電力値TV1となるように直流電圧を制御する。
【0099】
これにより、制御回路60は、例えば目標電力値TV3の算出処理を行うことなく素早く保護制御を行うことができる。このため、急激な負荷インピーダンスの変動にも対応することができ、断続的に着火を繰り返すプラズマの負荷変動による回路素子の破壊を抑制することができる。
【0100】
また、制御回路60による上記保護制御は、プラズマ源1に搭載するソフトウェアの変更で対応可能である。したがって、種々のプラズマ源1に上記手法を適用することができる。また、プラズマ源1の制御系のハードウェアを変更する必要が無く、開発期間を短縮することができる。また、応答速度の速い高価な機器を用いる必要がないので、プラズマ源1のコストを削減することもできる。
【0101】
また、閾値TH2を閾値TH1よりも高く設定しておくことで、安定的にプラズマが生成されているときには、目標電力値TV3へと切り替える保護制御が不用意に行われることを抑制できる。
【0102】
また、目標電力値TV3から再び目標電力値TV1へと切り替えることでプラズマ消失期間を短縮し、プラズマによるガスの分解率が極端に下がらないように連続運転をすることができる。これにより、上記のような保護制御による半導体プロセスへの影響を抑制することができる。
【0103】
実施形態のプラズマ源1によれば、目標電力値は、好ましくは高周波電源10が出力可能な電力の下限値であり、より好ましくは0Wである。これにより、不安定なプラズマを一旦消失させて、プラズマの状態をリセットすることができる。
【0104】
実施形態のプラズマ源1によれば、閾値TH2は、少なくともICPが消失したことを示す電圧値または電流値以上である。これにより、プラズマ安定時に目標電力値TV3へと切り替える保護制御が不用意に行われることをより確実に抑制することができる。
【0105】
実施形態のプラズマ源1によれば、直流電源回路20の出力端における検出電力値が目標電力値TV3から目標電力値TV1となるように直流電圧を制御するときは、上記検出電力値が目標電力値TV3から目標電力値TV1へとランプアップするように直流電圧を制御する。これにより、再度のプラズマ着火時に安定なプラズマを生成することができる。
【0106】
なお、上述の実施形態では、目標電圧値TV3を、例えば100W、好ましくは高周波電源10の下限出力値、より好ましくは0Wなどと設定することとしたが、目標電圧値TV3の設定値はこれに限られない。例えば目標電圧値TV3を、そのときの条件下でプラズマを着火させることが可能な電力値よりも低い値に設定することができる。プラズマ着火に必要な電力値は、例えばそのときの目標電力値TV1の半分程度である。したがって、目標電圧値TV3を、例えば目標電力値TV1の半分以下などと設定してもよい。
【0107】
ただし、上述のように、制御回路60における制御負荷を軽減して、保護制御を素早く行うことが可能なように、目標電圧値TV3の設定は、ときどきの高周波電力の供給条件に基づかない固定された値であることが好ましい。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0109】
1…プラズマ源、10…高周波電源、20…直流電源回路、30…インバータ回路、40…共振回路、50…放電部、51…アンテナ、52…放電管、60…制御回路、91…直流電圧センサ、92…直流電流センサ、93…高周波電圧センサ、94…高周波電流センサ。