(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046473
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】無線電力伝送用の整流回路の特性を測定するシステム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/20 20160101AFI20240327BHJP
【FI】
H02J50/20
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151890
(22)【出願日】2022-09-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/完全ワイヤレス社会実現を目指したワイヤレス電力伝送の高周波化および通信との融合技術」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】平川 昂
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】中本 悠太
(72)【発明者】
【氏名】太田 喜元
(57)【要約】
【課題】無線電力伝送の受電側装置に搭載される整流回路を破損することなく、電力伝送波の信号が入力される大電力入力時の整流回路の特性を測定することができるシステムを提供する。
【解決手段】システムは、無線電力伝送に用いられる電力伝送波の信号が整流回路に入力された場合を想定した電力伝送波入力時特性と、電力伝送波よりも電力が小さい測定用変調波の信号が整流回路に入力された場合を想定した測定用変調波入力時特性とに基づいて決定された、測定用変調波入力時特性から電力伝送波入力時特性への写像を記憶する記憶部と、測定用変調波の信号を生成して整流回路に入力する入力部と、測定用変調波の信号を入力した整流回路から出力された出力信号の直流特性を測定する測定部と、前記出力信号の直流特性と前記写像とに基づいて、電力伝送波の信号が入力されるときの整流回路の特性を推定する推定部と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線電力伝送の受電側装置に搭載される整流回路の特性を測定するシステムであって、
前記無線電力伝送に用いられる電力伝送波の信号が前記整流回路に入力された場合を想定した電力伝送波入力時特性と、前記電力伝送波よりも電力が小さい測定用変調波の信号が前記整流回路に入力された場合を想定した測定用変調波入力時特性とに基づいて決定された、前記測定用変調波入力時特性から前記電力伝送波入力時特性への写像を記憶する記憶部と、
前記測定用変調波の信号を生成して前記整流回路に入力する入力部と、
前記測定用変調波の信号を入力した前記整流回路から出力された出力信号の直流特性を測定する測定部と、
前記出力信号の直流特性と前記写像とに基づいて、前記電力伝送波の信号が入力されるときの前記整流回路の特性を推定する推定部と、
を備える、ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1のシステムにおいて、
前記電力伝送波入力時特性と前記測定用変調波入力時特性とに基づいて前記写像を決定する写像決定部を備える、
ことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1のシステムにおいて、
前記測定用変調波及び前記整流回路からの出力信号に対する負荷の少なくとも一方を制御する制御部を備える、
ことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1のシステムにおいて、
前記電力伝送波は連続波であり、
前記測定用変調波は、所定のデューティー比で電力伝送波をパルス変調したパルス変調波であり、
前記写像の情報は、前記デューティー比の値を含む、
ことを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1のシステムにおいて、
前記整流回路から出力された出力信号を平滑化する平滑化部を備える、
ことを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかのシステムにおいて、
前記整流回路に入力された前記測定用変調波の反射率と前記整流回路からの出力信号に対する負荷の抵抗との関係を測定し、その測定結果に基づいて前記反射率が極小となる前記負荷の抵抗を整合条件として決定する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6のシステムにおいて、
前記整合条件を用いて、前記出力信号の直流特性を測定するときの前記負荷の抵抗を設定する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項6のシステムにおいて、
前記整流回路に入力された前記測定用変調波の反射率と前記負荷の抵抗との関係の測定結果に基づいて、前記整流回路に前記電力伝送波を入力したときの反射率と前記負荷の抵抗との関係を推定する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項9】
無線電力伝送の受電側装置に搭載される整流回路の特性を測定する方法であって、
前記無線電力伝送に用いられる電力伝送波の信号が前記整流回路に入力された場合を想定した電力伝送波入力時特性と、前記電力伝送波よりも電力が小さい測定用変調波の信号が前記整流回路に入力された場合を想定した測定用変調波入力時特性とに基づいて決定された、前記測定用変調波入力時特性から前記電力伝送波入力時特性への写像の情報を記憶することと、
前記測定用変調波の信号を生成して前記整流回路に入力することと、
前記測定用変調波の信号を入力した前記整流回路から出力された出力信号の直流特性を測定することと、
前記出力信号の直流特性と前記写像とに基づいて、前記電力伝送波の信号が入力されるときの前記整流回路の特性を推定することと、
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
無線電力伝送の受電側装置に搭載される整流回路の特性を測定するシステムに備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
前記無線電力伝送に用いられる電力伝送波の信号が前記整流回路に入力された場合を想定した電力伝送波入力時特性と、前記電力伝送波よりも電力が小さい測定用変調波の信号が前記整流回路に入力された場合を想定した測定用変調波入力時特性とに基づいて決定された、前記測定用変調波入力時特性から前記電力伝送波入力時特性への写像の情報を記憶するためのプログラムコードと、
前記測定用変調波の信号を生成して前記整流回路に入力するためのプログラムコードと、
前記測定用変調波の信号を入力した前記整流回路から出力された出力信号の直流特性を測定するためのプログラムコードと、
前記出力信号の直流特性と前記写像とに基づいて、前記電力伝送波の信号が入力されるときの前記整流回路の特性を推定するためのプログラムコードと、
を含む、ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電力伝送(WPT)用の整流回路の特性を測定するシステム、方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無線フレームに設定された複数の無線リソースの少なくとも一部を用いて基地局と端末装置との間で通信を行う通信システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の通信システムにおいて基地局に接続して通信する端末装置として、内蔵電池から供給される電力を主に利用する携帯型の端末装置がある。この端末装置では、内蔵電池の残量が少なくなったときに内蔵電池を充電する煩雑な作業が必要である。また、内蔵電池ではなく有線接続の電源ラインから供給される電力を利用する端末装置は、そのような電源ラインを利用可能な場所での使用に制限される。このように基地局に接続して通信を行う様々な端末装置への給電をまかなうことができるような給電インフラが未整備である。
【0005】
第5世代及びその後の次世代の移動通信システムでは、基地局に接続して通信する端末装置(例えば、ユーザ装置、IoTデバイス等)が急増してくるのが予想され、膨大なトラフィックを捌く通信インフラの整備が進められている。しかしながら、上記通信を行う膨大な数の端末装置への給電をまかなうことができる給電インフラは未整備のままである。
【0006】
上記端末装置へ給電する給電インフラとして、移動通信の基地局を用いて無線電力伝送(WPT)を行うシステムが検討されている。かかるシステムの課題の一つとして、無線電力伝送の受電側装置に搭載される整流回路を破損することなく、電力伝送波の信号が入力される大電力入力時の整流回路の特性を測定することがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るシステムは、無線電力伝送の受電側装置に搭載される整流回路の特性を測定するシステムである。このシステムは、前記無線電力伝送に用いられる電力伝送波の信号が前記整流回路に入力された場合を想定した電力伝送波入力時特性と、前記電力伝送波よりも電力が小さい測定用変調波の信号が前記整流回路に入力された場合を想定した測定用変調波入力時特性とに基づいて決定された、前記測定用変調波入力時特性から前記電力伝送波入力時特性への写像を記憶する記憶部と、前記測定用変調波の信号を生成して前記整流回路に入力する入力部と、前記測定用変調波の信号を入力した前記整流回路から出力された出力信号の直流特性を測定する測定部と、前記出力信号の直流特性と前記写像とに基づいて、前記電力伝送波の信号が入力されるときの前記整流回路の特性を推定する推定部と、を備える。
【0008】
前記システムにおいて、前記電力伝送波入力時特性と前記測定用変調波入力時特性とに基づいて前記写像を決定する写像決定部を備えてもよい。
【0009】
前記システムにおいて、前記測定用変調波及び前記整流回路からの出力信号に対する負荷の少なくとも一方を制御する制御部を備えてもよい。
【0010】
前記システムにおいて、前記電力伝送波は連続波であり、前記測定用変調波は、所定のデューティー比で電力伝送波をパルス変調したパルス変調波であり、前記写像の情報は、前記デューティー比の値を含んでもよい。
【0011】
前記システムにおいて、前記整流回路から出力された出力信号を平滑化する平滑化部を備えてもよい。
【0012】
前記システムにおいて、前記整流回路に入力された前記測定用変調波の反射率と前記整流回路からの出力信号に対する負荷の抵抗との関係を測定し、その測定結果に基づいて前記反射率が極小となる前記負荷の抵抗を整合条件として決定してもよい。ここで、前記整合条件を用いて、前記出力信号の直流特性を測定するときの前記負荷の抵抗を設定してもよいし、又は、前記整流回路に入力された前記測定用変調波の反射率と前記負荷の抵抗との関係の測定結果に基づいて、前記整流回路に前記電力伝送波を入力したときの反射率と前記負荷の抵抗との関係を推定してもよい。
【0013】
本発明の他の態様に係る方法は、無線電力伝送の受電側装置に搭載される整流回路の特性を測定する方法である。この方法は、前記無線電力伝送に用いられる電力伝送波の信号が前記整流回路に入力された場合を想定した電力伝送波入力時特性と、前記電力伝送波よりも電力が小さい測定用変調波の信号が前記整流回路に入力された場合を想定した測定用変調波入力時特性とに基づいて決定された、前記測定用変調波入力時特性から前記電力伝送波入力時特性への写像の情報を記憶することと、前記測定用変調波の信号を生成して前記整流回路に入力することと、前記測定用変調波の信号を入力した前記整流回路から出力された出力信号の直流特性を測定することと、前記出力信号の直流特性と前記写像とに基づいて、前記電力伝送波の信号が入力されるときの前記整流回路の特性を推定することと、を含む。
【0014】
前記方法において、前記電力伝送波入力時特性と前記測定用変調波入力時特性とに基づいて前記写像を決定することを含んでもよい。
【0015】
前記方法において、前記測定用変調波及び前記整流回路からの出力信号に対する負荷の少なくとも一方を制御することを含んでもよい。
【0016】
前記方法において、前記電力伝送波は連続波であり、前記測定用変調波は、所定のデューティー比で電力伝送波をパルス変調したパルス変調波であり、前記写像の情報は、前記デューティー比の値を含んでもよい。
【0017】
前記方法において、前記整流回路から出力された出力信号を平滑化することを含んでもよい。
【0018】
前記方法において、前記整流回路に入力された前記測定用変調波の反射率と前記整流回路からの出力信号に対する負荷の抵抗との関係を測定し、その測定結果に基づいて前記反射率が極小となる前記負荷の抵抗を整合条件として決定することを含んでもよい。ここで、前記整合条件を用いて、前記出力信号の直流特性を測定するときの前記負荷の抵抗を設定することを含んでもよいし、又は、前記整流回路に入力された前記測定用変調波の反射率と前記負荷の抵抗との関係の測定結果に基づいて、前記整流回路に前記電力伝送波を入力したときの反射率と前記負荷の抵抗との関係を推定することを含んでもよい。
【0019】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、無線電力伝送の受電側装置に搭載される整流回路の特性を測定するシステムに備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、前記無線電力伝送に用いられる電力伝送波の信号が前記整流回路に入力された場合を想定した電力伝送波入力時特性と、前記電力伝送波よりも電力が小さい測定用変調波の信号が前記整流回路に入力された場合を想定した測定用変調波入力時特性とに基づいて決定された、前記測定用変調波入力時特性から前記電力伝送波入力時特性への写像の情報を記憶するためのプログラムコードと、前記測定用変調波の信号を生成して前記整流回路に入力するためのプログラムコードと、前記測定用変調波の信号を入力した前記整流回路から出力された出力信号の直流特性を測定するためのプログラムコードと、前記出力信号の直流特性と前記写像とに基づいて、前記電力伝送波の信号が入力されるときの前記整流回路の特性を推定するためのプログラムコードと、を含む。
【0020】
前記プログラムにおいて、前記電力伝送波入力時特性と前記測定用変調波入力時特性とに基づいて前記写像を決定するためのプログラムコードを含んでもよい。
【0021】
前記プログラムにおいて、前記電力伝送波入力時特性と前記測定用変調波入力時特性とに基づいて前記写像を決定するためのプログラムコードを含んでもよい。
【0022】
前記プログラムにおいて、前記測定用変調波及び前記整流回路からの出力信号に対する負荷の少なくとも一方を制御するためのプログラムコードを含んでもよい。
【0023】
前記プログラムにおいて、前記電力伝送波は連続波であり、前記測定用変調波は、所定のデューティー比で電力伝送波をパルス変調したパルス変調波であり、前記写像の情報は、前記デューティー比の値を含んでもよい。
【0024】
前記プログラムにおいて、前記整流回路から出力された出力信号を平滑化するためのプログラムコードを含んでもよい。
【0025】
前記プログラムにおいて、前記整流回路に入力された前記測定用変調波の反射率と前記整流回路からの出力信号に対する負荷の抵抗との関係を測定し、その測定結果に基づいて前記反射率が極小となる前記負荷の抵抗を整合条件として決定するためのプログラムコードを含んでもよい。ここで、前記整合条件を用いて、前記出力信号の直流特性を測定するときの前記負荷の抵抗を設定するためのプログラムコードを含んでもよいし、又は、前記整流回路に入力された前記測定用変調波の反射率と前記負荷の抵抗との関係の測定結果に基づいて、前記整流回路に前記電力伝送波を入力したときの反射率と前記負荷の抵抗との関係を推定するためのプログラムコードを含んでもよい。
【0026】
また、前記推定などを行うプログラムには、機械学習に用いられる学習済モデルを含む。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、無線電力伝送の受電側装置に搭載される整流回路を破損することなく、電力伝送波の信号が入力される大電力入力時の整流回路の特性を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施形態に係る測定システムで特性を測定可能な整流回路を有する端末装置に基地局から送電可能な無線電力伝送システムの全体構成の一例を示す説明図。
【
図2】無線電力伝送システムの基地局から複数の端末装置へのビームフォーミングによる端末装置毎の給電の一例を示す説明図。
【
図3】無線電力伝送システムを構成する基地局及び端末装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図4】(a)は、基地局から送信されるWPT用ダミー信号を含む送信信号の無線リソース(リソースブロック)におけるWPTブロックの割り当ての一例を示す説明図である。(b)は、基地局から送信される送信信号のOFDM方式の二次変調における周波数軸上のスペクトルの一例を示す説明図である。
【
図5】(a)は、基地局から送信される通信信号のQAM方式の一次変調におけるシンボル点の配置の一例を示す説明図である。(b)は、同基地局から送信されるWPT用ダミー信号の変調におけるシンボル点の配置の一例を示す説明図である。
【
図6】実施形態に係る測定システムの構成の一例を示すブロック図。
【
図7】測定対象の整流回路にWPT用ダミー信号の連続波を入力した場合及び測定用変調波を入力した場合について計算したDC出力特性の一例を示すグラフ。
【
図8】測定用変調波として使用可能なパルス変調波の一例を示す説明図。
【
図9】測定対象の整流回路にWPT用ダミー信号の連続波を入力した場合及び測定用変調波としてパルス変調波を入力した場合について計算したDC出力特性の一例を示すグラフ。
【
図10】実施形態に係る測定システムの構成の他の例を示すブロック図。
【
図11】測定対象の整流回路にWPT用ダミー信号の連続波を入力した場合及び測定用変調波としてパルス変調波を入力した場合について計算した整流回路の反射率と負荷の抵抗との関係の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係る測定システムで測定する測定対象のRF-DC変換装置としての整流回路を用いるシステムは、移動通信の基地局から給電対象の端末装置(例えば、移動通信のUE(移動局)やIoTデバイス)に対して無線電力伝送(WPT)することができるシステムである。このシステムは、例えば、整流回路を有する受電側装置であるUEなどの端末装置への下りリンクの無線フレームに設定された複数の無線リソース(リソースブロック)のうち通信に使用されていない通信未使用の無線リソース(リソースブロック)を端末装置への無線電力伝送(WPT)に有効活用した電力伝送システムである。電力伝送システムは、基地局から端末装置への無線電力伝送(WPT)機能を有する、基地局と端末装置との間の無線通信システムであってもよい。また、実施形態のシステムは、基地局と端末装置との間の無線通信機能を有する、基地局から端末装置への無線電力伝送(WPT)システムであってもよい。
【0030】
特に、本実施形態の測定システムは、無線電力伝送システム(以下「WPTシステム」ともいう。)の端末装置等の受電側装置に設けられる整流回路の特性を測定する測定システムであり、整流回路を破損することなく、電力伝送波の信号が入力される大電力入力時の整流回路の特性を測定することができる。
【0031】
図1は、本実施形態に係る測定システムで特性を測定可能な整流回路を有する端末装置に基地局から送電可能なWPTシステムの概略構成の一例を示す説明図である。
図1において、WPTシステムは、通信エリア(セル)10Aを形成するセルラー方式の基地局10と、通信エリア10Aに在圏しているときに基地局10に接続して基地局10と無線通信可能な給電対象の端末装置(以下「UE」(ユーザ装置)ともいう。)20と、を有する。基地局10は、WPTシステムにおける送電側装置としても機能し、端末装置20は受電側装置としても機能する。
【0032】
UE20は、移動通信システムの移動局でもよいし、通信装置(例えば移動通信モジュール)と各種デバイスとを組み合わせたものであってもよい。UE20は、例えば複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナを備える。UE20はIoTデバイス(「IoT機器」ともいう。)であってもよい。
【0033】
図1において、基地局10は、多数のアンテナ素子を有する複数のアレーアンテナ110を備え、複数のUE20との間でmassive MIMO(以下「mMIMO」ともいう。)伝送方式の通信を行うことができる。mMIMOは、アレーアンテナ110を用いてデータ送受信を行うことにより大容量・高速通信を実現する無線伝送技術である。また、複数のUE20のそれぞれに対して時分割で又は同時にビーム10Bを形成するビームフォーミングを行うMU(Multi User)-MIMO伝送方式で通信を行うことができる。多素子のアレーアンテナを用いてMU-MIMO伝送を行うことにより、各UE20の通信環境に応じてUE20ごとに適切なビームを向けて通信できるため、セル全体の通信品質を改善できる。また、同一の無線リソース(時間・周波数リソース)を用いて複数のUE20との通信ができるため、システム容量を拡大することができる。
【0034】
また、
図1において、通信エリア10A内の一部は、基地局10から端末装置20に向けて無線電力伝送を行う無線電力伝送エリア(以下「WPTエリア」という。)10A'になっている。WPTエリア10A'は図示のように通信エリア10Aよりも狭いエリアでもよいし、通信エリア10Aと同じ又はほぼ同じサイズ及び位置のエリアであってもよい。
【0035】
WPTエリア10A'では、基地局10からの下りリンクの無線フレームを構成する複数の無線リソース(時間・周波数リソース)であるリソースブロックのうち通信に用いられていない通信未使用の無線リソース(リソースブロック)を無線電力伝送ブロックとして活用している。基地局10は、UE20への下りリンクの無線フレームにおいて、通信未使用の無線リソースである無線電力伝送ブロック(WPTブロック)に無線電力伝送用のダミー信号(以下「WPT用ダミー信号」ともいう。)を割り当てた送信信号を生成してUE20に送信する。
【0036】
特に、第5世代又はそれ以降の世代の移動通信システムにおいては、無線フレームの一部のサブキャリアのみに必要最小限の参照信号(RS)や制御信号を配置するリーンキャリアという技術が提案されており、無線フレームにおける通信未使用の無線リソースの部分を有効活用してUE20への無線電力伝送を行うことが期待される。
【0037】
基地局10とUE20との間で送受信される通信の信号の電波及び基地局10からUE20に送信されるWPT用ダミー信号を割り当てた送信信号の電波は、例えば、ミリ波又はマイクロ波である。
【0038】
図2は、WPTシステムの基地局10から複数のUE20へのビームフォーミングによるUE毎の給電の一例を示す説明図である。本実施形態において、
図2に示すように通信エリア10A内のWPTエリア10A'(前述の
図1参照)に複数のUE20(1)~20(3)が在圏し、UE毎に形成したビーム10B(1)~10B(3)を介して各UE20(1)~20(3)に給電してもよい。ビーム10B(1)~10B(3)は、例えば時分割で切り替えて形成してもよい。
【0039】
図3は、WPTシステムを構成する基地局10及び端末装置(UE)20の主要構成の一例を示すブロック図である。基地局10は、基地局装置100とアンテナ110とを備える。アンテナ110は、例えば、
図1に示すように多数のアンテナ素子を有するアレーアンテナである。アンテナ110は単数でもよいし複数であってもよい。例えば、アンテナ110は複数のセクタセルに対応させて複数配置してもよい。
【0040】
基地局装置100は、通信信号処理部120と無線処理部130とを備える。通信信号処理部120は、UE20との間で送受信される各種のユーザデータや制御情報等の信号を処理する。
【0041】
通信信号処理部120は、UE20に対する下りリンクの通信の際に、複数の無線リソースのうち通信に使用されていない通信未使用の無線リソースを用いたWPT用ダミー信号を含む下りリンクの送信信号を生成する。例えば、WPT用ダミー信号は、通信信号よりもPAPR(ピーク電力対平均電力比)(「波高比」ともいう。)が小さい変調方式で変調して生成することができる。例えば、WPT用ダミー信号は、Zadoff-Chu系列の符号を用いて変調され、時間に対して振幅が一定で位相が変化する変調信号であってもよく、また、デジタル変調方式の複数のシンボル点のうち振幅が最大又は最大近傍の複数のシンボル点で変調された信号であってもよい。また例えば、送信信号の生成は、通信信号用のQAM(直交振幅変調)やWPT用ダミー信号用のPAPRが小さい変調等の一次変調、並びに、OFDM(直交周波数多重)変調等の二次変調を含んでもよい。
【0042】
無線処理部130は、通信信号処理部120で生成した送信信号をアンテナ110からUE20に送信したり、UE20からアンテナ110を介して受信した受信信号を通信信号処理部120に出力したりする。
【0043】
UE20に対する下りリンク通信の送信信号に通信未使用の無線リソースを用いたWPT用ダミー信号を含める処理や、後述の信号の分離や信号の合成等に用いるトリガー信号の生成は、移動通信の無線フレームを構成するサブフレームに基づいて行ってもよい。
【0044】
また、UE20に対する下りリンク通信の送信信号に、通信未使用の無線リソースを用いたWPT用ダミー信号を含める処理は、基地局10が自律的に行ってもよいし、UE20からの要求若しくは指示又は外部プラットフォーム(例えば、サーバ、クラウドシステム)からの要求若しくは指示に基づいて行ってもよい。
【0045】
また、無線処理部130は、BF制御信号に基づいてアレーアンテナ110で形成される一又は複数のビームを制御する。また、無線処理部130は、通信信号処理部120で生成されたWPT用ダミー信号を含む下りリンクの送信信号を、アンテナ110を介してUE20に送信する。
【0046】
基地局10は、UE20に対する下りリンクの通信の際に、UE20毎に又は複数のUE20が属するターゲットエリアのUEグループ毎に、個別のビーム10Bを形成するビームフォーミング(BF)制御を行い、UE20毎に又はUEグループ毎に無線電力伝送を行ってもよい。UE20毎又はUEグループ毎のBF制御は、通信信号処理部120における周波数領域のデジタルBF制御で行ってもよいし、無線処理部130におけるアナログBF制御で行ってもよい。
【0047】
図3において、UE20は、アンテナ210と無線処理部220と通信信号処理部230と電力出力部240と電池250とを含む。アンテナ210は、例えば複数のアンテナ素子を有する小型のアレーアンテナである。無線処理部220は、通信信号処理部230で生成したフィードバック情報やユーザデータ等の送信信号をアンテナ210から基地局10に送信したり、基地局10からアンテナ210を介して受信した受信信号を通信信号処理部230に出力したりする。
【0048】
無線処理部220は、基地局10から送信されたWPT用ダミー信号を含む送信信号を受信する。また、電力出力部240は、例えばRF-DC変換装置としての整流回路(整流器)241を有し、基地局10からのWPT用ダミー信号を含む送信信号を受信した受信信号の電力を、電池充電用の受電電力として出力する。電力出力部240から出力された受電電力により、電池250を充電することができる。
【0049】
図4(a)は、WPTシステムの基地局10から送信されるWPT用ダミー信号を含む送信信号の無線リソース(リソースブロック)におけるWPTブロックの割り当ての一例を示す説明図である。また、
図4(b)は、基地局10から送信される送信信号のOFDM方式の二次変調における周波数軸上のスペクトルの一例を示す説明図である。
図4(a)に示すように、WPTシステムにおける下りリンク通信及び上りリンク通信で用いられる複数の無線リソースは、周波数軸上のサブキャリアと時間軸上のスロットとにより定義される複数のリソースブロック30である。各リソースブロック30は、
図4(b)に示すように周波数軸上で互いに直交する所定帯域幅のサブキャリア33を有する。
【0050】
図4(a)の無線リソースを構成するリソースブロック30は、移動通信の無線フレームを構成する連続の複数のサブフレームに割り当てられる。図示の例では、各サブフレームは所定数(例えば20個)のリソースブロックで構成され、通信用のサブフレーム(以下「通信用フレーム」という。)F1とWPT用のサブフレーム(以下「WPT用フレーム」という。)F2が交互に位置する。通信用フレームF1は、上りリンク及び下りリンクの通信用のリソースブロック31を含み、WPT用フレームF2は、図中のクロスハッチングを付しているWPT用のリソースブロック32を含む。通信用フレームF1のリソースブロック31のうち、上りリンクの複数のリソースブロックには、ユーザデータの上りリンク通信の信号及びUE20からのWPT用のフィードバック情報の通信の信号に割り当てられ、下りリンクの複数のリソースブロックには、ユーザデータや情報の下りリンク通信の信号に割り当てられる。また、WPT用フレームF2のリソースブロック32には、下りリンクのWPT用信号が割り当てられる。
【0051】
WPTシステムでは、電力増幅器の高出力電力及び高効率の領域でWPT用ダミー信号を増幅できるように、WPT用ダミー信号として、
図5(a)及び
図5(b)に例示するようなPAPR(ピーク電力対平均電力比)が通信信号よりも低いOFDM変調信号を用いてもよい。
【0052】
図5(a)は、WPTシステムの基地局10から送信される送信信号のQAM方式の一次変調におけるシンボル点40の配置の一例を示す説明図である。
図5(a)は、64QAM方式の場合の複数のシンボル点(64値のシンボル点)の配置を示すコンスタレーションの図であり、横軸は同相チャネル成分を示し,縦軸は直交チャネル成分を示している。本実施形態において、QAM方式の複数のシンボル点40の任意のシンボル点で変調されたWPT用ダミー信号を用いることができる。例えば、QAM方式の複数のシンボル点40のうち、振幅が最大である最外周のいずれか一又は複数のシンボル点41で変調されたWPT用ダミー信号を用いてもよい。この場合は、UE20等の端末装置への伝送電力を最大化することができる。また、例えば伝送電力を最大化する必要のない場合は、最外周のシンボル点以外の任意のシンボル点で変調してもよい。例えば、UE20などの端末装置から受信したフィードバック情報に含まれる電力制御情報で指示された伝送電力に基づいて、WPT用ダミー信号の変調に用いるシンボル点を判断して選択してもよいし、UE20等の端末装置20から受信した受電端末情報に含まれる受電ビーム情報(例えばビーム方向やビーム幅の情報)、WPT電波の到来方向の情報、電池残量情報などに基づいて、WPT用ダミー信号の変調に用いるシンボル点を判断して選択してもよい。
【0053】
図5(b)は、WPTシステムの基地局10から送信されるWPTダミー信号の一次変調におけるシンボル点の配置の他の例を示す説明図である。
図5(b)のコンスタレーション図に示すように、時間に対して振幅が一定の条件で位相が変化するシンボル点42で変調されたOFDM変調信号からなるWPT用ダミー信号を用いてもよい。
図5(b)のシンボル点42でOFDM変調信号は、例えばZadoff-Chu系列の符号を用いて生成することができる。
図5(b)の変調信号で生成したWPT用ダミー信号を用いる場合も、UE20等の端末装置への伝送電力を最大化することができる。
【0054】
上記構成のWPTシステムにおいて、UE20等の端末装置に搭載される整流回路の設計にあたって、整流回路に大電力のWPT用ダミー信号が入力されるときの整流回路の特性を推定するために、大電力入力条件下での整流回路の特性(以下「大電力特性」ともいう。)を測定する必要がある。しかしながら、整流回路の大電力特性を測定するためにWPTシステムに実際に使用される大電力の電力伝送波の信号であるWPT用ダミー信号(例えば、大電力の連続波の信号)を入力すると、整流回路が破損するおそれがある。
【0055】
そこで、本実施形態では、WPTシステムに実際に使用される大電力の電力伝送波の信号であるWPT用ダミー信号よりも電力が小さい測定用変調波の信号を利用することで、整流回路を破損させずに整流回路の大電力特性を測定している。
【0056】
図6は、本実施形態に係る測定システム50の構成の一例を示すブロック図である。
図6において、測定システム50は、測定用変調波入力装置510と平滑化用素子520と直流特性測定装置530とを備える。
【0057】
測定用変調波入力装置510は、測定用変調波の信号を生成して測定対象の整流回路241に入力する入力部として機能する。平滑化用素子520は、コンデンサなど等で構成され、整流回路241から出力された出力信号に残留する脈流成分を平滑化する平滑化部として機能する。平滑化用素子520は、端末装置20の電力出力部240に搭載される平滑化用素子と同一の素子又は同様な機能を有する素子であってもよい。
【0058】
直流特性測定装置530は、整流回路241の測定用変調波入力時の出力特性fm(v)から電力伝送波入力時(大電力入力時)の出力特性fc(v)への写像Fを記憶する記憶部として機能する。
【0059】
図7は、測定対象の整流回路241にWPT用ダミー信号の連続波を入力した場合及び測定用変調波を入力した場合について計算したDC出力特性の一例を示すグラフである。
【0060】
電力伝送波入力時の出力特性fc(v)は、
図7の曲線C101に示すように、無線電力伝送(WPT)に用いられるWPTダミー信号(電力伝送波の信号)が整流回路241に入力された場合を想定した電力伝送波入力時における整流回路241からの直流出力信号の電圧vと電流iとの関係を示すDC出力特性である。
【0061】
測定用変調波入力時の出力特性fm(v)は、
図7の曲線C102に示すように、電力伝送波よりも電力が小さい測定用変調波の信号(以下「測定変調信号」ともいう。)が整流回路241に入力された場合を想定した測定用変調波入力時における整流回路241からの直流出力信号の電圧vと電流iとの関係を示すDC出力特性である。
【0062】
写像Fは、例えばfc(v)=F(fm(v))の関係を満たす写像であり、電力伝送波入力時(大電力入力時)の出力特性fc(v)と、測定用変調波入力時の出力特性fm(v)とに基づいて求めることができる。
【0063】
例えば、電力伝送波入力時の出力特性fc(v)、測定用変調波入力時の出力特性fm(v)及び写像Fは、電力伝送波、測定用変調波及び整流回路241の回路構成の情報に基づき、コンピュータシミュレーションを用いて予め算出して決定することができる。
【0064】
直流特性測定装置530は、測定用変調波の信号を入力した整流回路241から平滑化用素子520を介して出力された出力信号の直流特性を測定する測定部としても機能する。
【0065】
また、直流特性測定装置530は、前記測定した出力信号の直流特性と予め求めた写像Fとに基づいて、WPTダミー信号(電力伝送波の信号)が入力されるときの大電力入力時の整流回路241の特性を推定する推定部としても機能する。
【0066】
図8は測定用変調波として使用可能なパルス変調波511の一例を示す説明図である。
図8のパルス変調波511は、連続波である電力伝送波を所定のデューティー比Dでパルス変調した変調波である。パルス変調波511の1周期をTとし、パルス変調波511の連続波が出力されているアクティブ期間(ON期間)をTonとした場合、デューティー比Dは、D=Ton/Tで表される。デューティー比Dは、例えば10[%]以上50[%]以下であってもよい。
【0067】
図9は、測定対象の整流回路241にWPT用ダミー信号の連続波を入力した場合及び測定用変調波としてデューティー比Dのパルス変調波を入力した場合について計算したDC出力特性の一例を示すグラフである。
【0068】
デューティー比Dのパルス変調波が整流回路241に入力される場合、
図9の曲線C202に示す測定用変調波入力時の出力特性fm(v)は、
図9の曲線C201に示す電力伝送波入力時の出力特性fc(v)のD倍になる。すなわち、fm(v)=Dfc(v)が成り立つので、fc(v)=F(fm(v))の関係を満たす写像Fは、1/Dである。直流特性測定装置530に記憶される写像Fの情報は、このデューティー比Dの情報又は逆数の情報を含む。
【0069】
図10は、実施形態に係る測定システム50の構成の他の例を示すブロック図である。
図10において、測定システム50は、整流回路241に入力する測定用変調波、整流回路241からの出力信号が流れる負荷531、又は、測定用変調波及び負荷531の両方を制御する制御部としての制御装置を備える。この制御により、整流回路241の特性の測定精度を高めることができる。
【0070】
なお、本実施形態において、測定用変調波入力装置510から整流回路241に入力された測定用変調波の反射率と整流回路241からの出力信号に対する負荷531の抵抗との関係を測定してもよい。また、この測定結果に基づいて反射率が極小となる負荷531の抵抗を整合条件として決定し、その整合条件を用いて、前記整流回路241からの出力信号の直流特性を測定するときの負荷531の抵抗の設定などの測定系の校正を行ってもよい。
【0071】
測定用変調波の反射率の情報は、例えば、測定用変調波入力装置510で測定して直流特性測定装置530に渡すことができる。また、整流回路241からの出力信号が流れる負荷531の抵抗は、例えば、直流特性測定装置530で測定することができる。そして、直流特性測定装置530は、測定用変調波の反射率と負荷531の抵抗との関係を測定し、その測定結果に基づいて反射率が極小となる負荷531の抵抗を、整流回路241を含む電力出力部240の整合条件として決定することできる。
【0072】
また、予め求めた写像と、整流回路241に測定用変調波の信号を入力したときの反射率に対する負荷抵抗rの特性fm(R)の測定結果とに基づいて、整流回路241に電力伝送波を入力したときの反射率と負荷の抵抗との関係を推定してもよい。
【0073】
図11は、測定対象の整流回路241にWPT用ダミー信号の連続波を入力した場合及び測定用変調波としてパルス変調波を入力した場合について計算した整流回路241の反射率Rと負荷531の抵抗rとの関係の一例を示すグラフである。
【0074】
図11において、デューティー比Dのパルス変調波が整流回路241に入力される場合、
図11の曲線C301に示す電力伝送波入力時の反射率に対する負荷抵抗rの特性fc(R)は、
図11の曲線C302に示す測定用変調波入力時の反射率に対する負荷抵抗rの特性fm(R)のD倍になる。すなわち、fc(R)=Dfm(R)が成り立つので、fc(R)=F(fm(R))の関係を満たす写像Fは、1/Dである。
【0075】
写像Fは、例えばfc(R)=F(fm(R))の関係を満たす写像であり、電力伝送波入力時(大電力入力時)の反射率に対する負荷抵抗rの特性fc(R)と、測定用変調波入力時の反射率に対する負荷抵抗rの特性fm(R)とに基づいて求めることができる。
【0076】
例えば、電力伝送波入力時の反射率に対する負荷抵抗rの特性fc(R)、測定用変調波入力時の反射率に対する負荷抵抗rの特性fm(R)及び写像Fは、電力伝送波、測定用変調波及び整流回路241の回路構成の情報に基づき、コンピュータシミュレーションを用いて予め算出することができる。
【0077】
直流特性測定装置530は、予め求めたfc(R)=F(fm(R))の関係を満たす写像と、整流回路241に測定用変調波の信号を入力したときの反射率に対する負荷抵抗rの特性fm(R)の測定結果とに基づいて、整流回路241に電力伝送波を入力したときの反射率と負荷の抵抗との関係を推定することができる。
【0078】
なお、上記実施形態では、大電力入力時の整流回路の特性として整流回路241から出力される直流の電流(i)と電圧(v)との関係を示す電流-電圧出力特性を測定する場合について説明したが、本発明は、直流の電流-電圧出力特性以外の整流回路241の特性を測定する場合にも適用することができる。
【0079】
以上、本実施形態によれば、大電力特性測定のために整流回路241にWPT用ダミー信号の連続波を入力する必要がなく、整流回路241を破損することなく、WPT用ダミー信号の連続波の信号が入力される大電力入力時の整流回路241の特性を測定することができる。
【0080】
また、本発明は、基地局10から送信された電波を受信可能な多数の端末装置20への給電をまかなうことができる給電インフラを提供できるため、持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【0081】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに測定システム、測定用変調波入力装置、直流特性測定装置、端末装置(UE、IoTデバイス)、基地局、移動局、中継装置及び制御装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0082】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、基地局装置(Node B、Node G)、端末装置、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0083】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0084】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0085】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0086】
10 :基地局
10A :通信エリア
10A' :WPTエリア
10B :ビーム
20 :端末装置
50 :測定システム
100 :基地局装置
110 :アンテナ
120 :通信信号処理部
130 :無線処理部
210 :アンテナ
220 :無線処理部
230 :通信信号処理部
240 :電力出力部
241 :整流回路
250 :電池
510 :測定用変調波入力装置
511 :パルス変調波
520 :平滑化用素子
530 :直流特性測定装置
531 :負荷